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特許7583868ペリクルフレーム及びペリクルアセンブリ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】ペリクルフレーム及びペリクルアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/64 20120101AFI20241107BHJP
【FI】
G03F1/64
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023106669
(22)【出願日】2023-06-29
(62)【分割の表示】P 2020519071の分割
【原出願日】2018-08-28
(65)【公開番号】P2023129431
(43)【公開日】2023-09-14
【審査請求日】2023-07-25
(31)【優先権主張番号】17198755.5
(32)【優先日】2017-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】デュイズ,アントン,ウィルヘルムス
(72)【発明者】
【氏名】ナザレヴィッチ,マキシム,アレクサンドロヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】ノッテンブーム,アーノウド,ウィレム
(72)【発明者】
【氏名】ピーター,マリア
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ツヴォル,ピーター-ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ヴレス,デイビッド,フェルディナンド
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-107747(JP,A)
【文献】国際公開第2016/079051(WO,A2)
【文献】特開2017-083791(JP,A)
【文献】特開2016-090784(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0309404(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2007-0087967(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0184956(US,A1)
【文献】特開2014-098913(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2007-0087968(KR,A)
【文献】国際公開第2016/043292(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/62-1/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペリクルを支持するためのペリクルフレームであって、
第1の表面と、前記第1の表面とは反対側の第2の表面と、
前記第1及び第2の表面の間に設けられた構造と、
を備え、
前記第1及び第2の表面並びに前記構造は、それらの間に、前記フレームを形成する材料が存在しない少なくとも1つの体積を少なくとも部分的に画定し、
前記フレームは、前記フレームをパターニングデバイスに取り付けるための複数の係合機構を備え、前記係合機構は、前記フレームの1つ以上の側面に沿って配置され、
各係合機構は、前記フレームの面内で、前記フレームの側面に対して斜めに配向されている、
ペリクルフレーム。
【請求項2】
前記1つ以上の側面は1対の支持側面を備え、前記複数の係合機構は前記1対の支持側面に沿って配置される、請求項に記載のペリクルフレーム。
【請求項3】
前記支持側面の各々に沿って2つの係合機構が配置される、請求項に記載のペリクルフレーム。
【請求項4】
前記複数の係合機構の各々は前記フレームの中心点と対向する、請求項1からのいずれか1項に記載のペリクルフレーム。
【請求項5】
前記フレームの前記1対の支持側面は、リソグラフィ装置で使用される際にスキャン方向に沿って配向される、請求項又はに記載のペリクルフレーム。
【請求項6】
前記構造は、前記フレームの側面の長さの少なくとも一部に沿って中空管を備える、請求項1からのいずれか1項に記載のペリクルフレーム。
【請求項7】
前記構造は、前記1対の支持側面に沿って中空管を備える、請求項又はに記載のペリクルフレーム。
【請求項8】
前記構造は、前記支持側面を接続する1対の自由側面を備え、前記構造の前記自由側面は、I字形断面を有する、請求項に記載のペリクルフレーム。
【請求項9】
前記係合機構は、前記係合機構の実質的に中心の位置で取り付け部材を着脱可能に固定できるように構成されている、請求項1からのいずれか1項に記載のペリクルフレーム。
【請求項10】
前記係合機構は、1対の第1の板バネと、前記第1の板バネにそれぞれ接続された1対の第2の板バネと、を備え、各板バネは概ね同一の方向に延出している、請求項に記載のペリクルフレーム。
【請求項11】
前記ペリクルフレームは4つの係合機構を備え、前記係合機構のうちの2つは前記フレームの第1の側面に配置され、前記係合機構のうちの2つは前記フレームの第2の側面に配置され、前記第2の側面は前記第1の側面の反対側にあり、各係合機構は前記フレームの中心点と実質的に対向する、請求項に記載のペリクルフレーム。
【請求項12】
前記ペリクルフレーム又は前記複数の係合機構は、アルミニウム、窒化アルミニウム、ベリリウム、又はベリリウム化合物を含む、請求項1からのいずれか1項に記載のペリクルフレーム。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載のペリクルフレーム及びペリクルを備えるペリクルアセンブリであって、前記ペリクルは、アルミニウム、窒化アルミニウム、ベリリウム、又はベリリウム化合物から作製されたペリクル境界を任意選択的に備える、ペリクルアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
[0001] 本出願は、2017年10月27日に出願されたEP出願第17198755.5号の優先権を主張する。これは援用により全体が本願に含まれる。
【0002】
[0002] 本発明は、ペリクルフレーム及びペリクルアセンブリに関する。ペリクルアセンブリは、ペリクルと、このペリクルを支持するためのペリクルフレームと、を含み得る。ペリクルは、リソグラフィ装置用のパターニングデバイスと共に使用するのに適したものであり得る。本発明は特に、EUVリソグラフィ装置及びEUVリソグラフィツールに関連付けて使用されるが、この使用は排他的ではない。
【背景技術】
【0003】
[0003] リソグラフィ装置は、所望のパターンを基板に適用するように構築された機械である。リソグラフィ装置は、例えば集積回路(IC)の製造に使用可能である。リソグラフィ装置は例えば、パターニングデバイス(例えばマスク)からのパターンを、基板上に設けられた放射感応性材料(レジスト)の層に投影することができる。
【0004】
[0004] 基板にパターンを投影するためリソグラフィ装置が用いる放射の波長は、その基板上に形成することができるフィーチャの最小サイズを決定する。4~20nm内の波長を有する電磁放射であるEUV放射を用いたリソグラフィ装置を使用すると、従来のリソグラフィ装置(例えば193nmの波長の電磁放射を使用できる)よりも小さいフィーチャを基板上に形成することができる。
【0005】
[0005] リソグラフィにおけるペリクルの使用は周知であり、充分に確立されている。DUVリソグラフィ装置における典型的なペリクルは、パターニングデバイスから離間して位置付けられた膜であり、使用時にリソグラフィ装置の焦点面の外にある。ペリクルはリソグラフィ装置の焦点面の外にあるので、ペリクル上に到達する汚染粒子はリソグラフィ装置の焦点外にある。従って、汚染粒子の像は基板に投影されない。もしもペリクルが存在しなかったら、パターニングデバイス上に到達した汚染粒子は基板に投影され、投影されるパターンに欠陥を発生させる。
【0006】
[0006] EUVリソグラフィ装置でペリクルを使用することが望ましい場合がある。EUVリソグラフィは、典型的に真空において実行されること及びパターニングデバイスが透過型でなく反射型であることがDUVリソグラフィとは異なる。
【0007】
[0007] 従来技術に伴う1つ以上の問題を克服又は軽減するペリクルフレーム及び/又はペリクルアセンブリを提供することが望ましい。本明細書に記載されている本発明の実施形態は、EUVリソグラフィ装置において使用され得る。また、本発明の実施形態は、DUVリソグラフィ装置及び/又は別の形態のリソグラフィツールにおいても使用され得る。
【発明の概要】
【0008】
[0008] 本発明の第1の態様によれば、ペリクルを支持するためのペリクルフレームが提供される。このフレームは、第1の表面と、第1の表面とは反対側の第2の表面と、第1及び第2の表面の間に設けられた構造と、を備え、第1及び第2の表面並びに構造は、それらの間に、フレームを形成する材料が存在しない少なくとも1つの体積(volume)を少なくとも部分的に画定する。
【0009】
[0009] これは、フレームを形成する材料が存在しない体積を備えないフレームに比べてフレームの重量が低減し得る、及び/又は固有振動数が上昇し得るという利点を有することができる。これにより、異なる材料を用いたフレームの形成が可能となる。異なる材料を使用することで、膜の熱膨張係数(CTE)を更にぴったり一致させることができ、ペリクル製造中の熱応力の低減が可能となる。
【0010】
[00010] フレームの少なくとも1つの部分は、フレームの少なくとも1つの他の部分とは異なる断面プロファイルを有し得る。フレームの周囲において、又はフレームの少なくとも1つの部分と少なくとも1つの他の部分とで、体積の分布が異なる場合がある。これは、例えばフレームの曲げ剛性及び/又はフレームのねじれ剛性のようなフレームの剛性に実質的に寄与しないフレームの部分に体積を配置することができるという利点を有し得る。
【0011】
[00011] フレームの少なくとも1つの部分と少なくとも1つの他の部分とで、第1及び第2の表面の間に設けられている構造の形態及び/又は体積の量が異なる場合がある。
【0012】
[00012] 体積は、少なくとも1つの空隙、空間、中空、ポケット、又はチャンバを画定するか又は含むことができる。
【0013】
[00013] 体積は、フレームの周縁部の少なくとも一部に延出し得る。
【0014】
[00014] 体積は空である(open)場合がある。
【0015】
[00015] 体積は、第1及び第2の表面の間でマトリックス状体積に構成され得る。
【0016】
[00016] 構造は、第1及び第2の表面を接続する少なくとも第1の壁を含み得る。
【0017】
[00017] フレームは、第1の壁とは反対側の、第1及び第2の表面を接続する第2の壁を含み得る。体積は、第1及び第2の表面を通って又は第1及び第2の表面の間に延出している。
【0018】
[00018] 第1及び第2の表面並びに第1及び第2の壁は、フレームの側面の長さの少なくとも一部に沿って中空管を形成し得る。
【0019】
[00019] 第1及び第2の表面並びに第1の壁は、フレームの側面の長さの少なくとも一部に沿ってI字形断面を形成し得る。
【0020】
[00020] フレームの側面は、パターニングデバイスに直接取り付けられておらずパターニングデバイスに取り付け可能でもない自由側面であり得る。
【0021】
[00021] フレームの側面は、パターニングデバイスに取り付け可能に構成されている支持側面であり得る。
【0022】
[00022] 第1の表面及び第2の表面のうち少なくとも1つは連続的であり得る。
【0023】
[00023] 第1の表面及び第2の表面のうち少なくとも1つは、少なくとも1つのくぼみを有し得る。
【0024】
[00024] フレームは、フレームをパターニングデバイスに取り付けるための少なくとも1つの係合機構を備え得る。これは、フレームにおいて損傷を与える可能性のある熱応力の発生を回避するので有利である。
【0025】
[00025] フレームの側面は支持側面であり、中空管はフレームの自由側面から係合機構まで延出し得る。
【0026】
[00026] フレームは複数の係合機構を備え、各係合機構は、位置付けられているフレームの側面に対して垂直な方向から外れて配向され得る。これは、パターニングデバイスに対するフレームの熱膨張を可能とする利点を有し、パターニングデバイスに応力が蓄積するのを防止することに役立ち得る。
【0027】
[00027] 各係合機構はフレームの中心点と実質的に対向し得る。
【0028】
[00028] 係合機構は、係合機構の実質的に中心の位置で取り付け部材を着脱可能に固定できるように構成され得る。これは、ねじれを低減する利点を有することができる。
【0029】
[00029] 係合機構は、1対の第1の板バネと、第1の板バネにそれぞれ接続された1対の第2の板バネと、を備え得る。各板バネは概ね同一の方向に延出し得る。
【0030】
[00030] 第1の板バネと第2の板バネとの間に中間部を位置付けることができる。
【0031】
[00031] 第1の板バネ及び第2の板バネの長さは、1.5:1から2.5:1の比を有し得る。
【0032】
[00032] 第1の板バネは弾性的に可撓性の係合アームを含み、2つの係合アームの間にビームが位置付けられ、ビームは係合機構の幅の半分にわたって延出し得る。これは、取り付け部材のための空間を提供する利点を有し得る。
【0033】
[00033] ペリクルフレームは、アルミニウム及び/又は窒化アルミニウムのうち少なくとも1つから作製され得る。
【0034】
[00034] 本発明の第2の態様によれば、ペリクルを支持するためのペリクルフレームを製造する方法が提供される。この方法は、フレーム材料からペリクルフレームを形成することであって、フレームは、第1の表面と、第1の表面とは反対側の第2の表面と、第1及び第2の表面の間の構造と、を備える、ことと、第1及び第2の表面の間に、フレーム材料が存在しない少なくとも1つの体積を形成することと、を含む。
【0035】
[00035] 少なくとも1つの体積は、第1及び第2の表面の間でフレーム材料の少なくとも1つの体積を除去することによって形成され得る。
【0036】
[00036] 方法は更に、フレームの剛性、フレームの曲げ剛性、及び/又はフレームのねじれ剛性に実質的に寄与しないフレームの部分において体積を形成することを含み得る。
【0037】
[00037] フレーム材料は、アルミニウム及び窒化アルミニウムのうち少なくとも1つから形成され得る。
【0038】
[00038] 本発明の第3の態様によれば、上述したようなペリクルフレーム及びペリクルを備えるペリクルアセンブリが提供される。
【0039】
[00039] ペリクルアセンブリはペリクル境界を更に備え得る。これは、ペリクルにおける応力を低減する利点を有し得る。
【0040】
[00040] ペリクル境界及びペリクルフレームは同一の材料とすることができる。
【0041】
[00041] ペリクル境界は、アルミニウム及び/又は窒化アルミニウムのうち少なくとも1つから作製され得る。
【0042】
[00042] ペリクルフレームは、アルミニウム及び/又は窒化アルミニウムのうち少なくとも1つから作製され得る。
【0043】
[00043] ペリクルフレームは係合機構を備え得る。
【0044】
[00044] 係合機構を保持するためのブロックは、ペリクルフレームと同一の材料から形成され得る。
【0045】
[00045] 本発明の第4の態様によれば、4つの係合機構を備えるペリクルフレームが提供される。各係合機構はフレームの中心点と実質的に対向する。これは、パターニングデバイスに対するフレームの熱膨張を可能とする利点を有し、パターニングデバイスに応力が蓄積するのを防止することに役立ち得る。
【0046】
[00046] 本発明の第5の態様によれば、係合機構を備えるペリクルフレームが提供される。係合機構は、係合機構の実質的に中心で取り付け部材を着脱可能に固定できるように構成されている。これは、ねじれを低減する利点を有することができる。
【0047】
[00047] 上述したか又は以下の記載で言及される1つ以上の態様を1つ以上の他の態様又は特徴と組み合わせてもよいことは認められよう。
【図面の簡単な説明】
【0048】
[00048] これより、添付の概略図を参照して単に一例として本発明の実施形態を説明する。
【0049】
図1】ペリクルアセンブリを含むリソグラフィ装置を備えたリソグラフィシステムを概略的に示す。
図2A】ペリクルアセンブリ及びパターニングデバイスを示す。
図2B】ペリクルアセンブリ及びパターニングデバイスを示す。
図3】ペリクルアセンブリ及びパターニングデバイスの断面を概略的に示す。
図4】ペリクルフレームの上面図を概略的に示す。
図5A-5F】図4で切り取った断面及び詳細な断面を概略的に示す。
図6A】フレームの斜視図を概略的に示す。
図6B】フレームの断面の斜視図を概略的に示す。
図7】係合機構の上面図を概略的に示す。
図8A図7のラインA-Aで切り取った係合機構の断面を概略的に示す。
図8B図7のラインB-Bで切り取った係合機構の断面を概略的に示す。
図9】係合機構の斜視図を概略的に示す。
図10図9のラインC-Cで切り取った係合機構の断面の斜視図を概略的に示す。
図11A】取り付け部材の端面図を概略的に示す。
図11B図11Aの取り付け部材の側面図を概略的に示す。
図12図9のラインC-Cで切り取った係合機構の断面の側面図を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
[00049] 図1は、本発明の一実施形態に従ったペリクルアセンブリ15を含むリソグラフィシステムを示す。リソグラフィシステムは、放射源SO及びリソグラフィ装置LAを備えている。放射源SOは、極端紫外線(EUV)放射ビームBを発生するように構成されている。リソグラフィ装置LAは、照明システムILと、パターニングデバイスMA(例えばマスク)を支持するよう構成された支持構造MTと、投影システムPSと、基板Wを支持するよう構成された基板テーブルWTと、を備えている。照明システムILは、放射ビームBがパターニングデバイスMAに入射する前にこれを調節するよう構成されている。投影システムは、放射ビームB(この時点でマスクMAによってパターン付与されている)を基板Wに投影するよう構成されている。基板Wは、以前に形成されたパターンを含む場合がある。これが当てはまる場合、リソグラフィ装置は、パターン付与された放射ビームBを、基板W上に以前に形成されたパターンと位置合わせする。
【0051】
[00050] 放射源SO、照明システムIL、及び投影システムPSは全て、外部環境から隔離できるように構成及び配置することができる。放射源SO内に、大気圧より低い圧力のガス(例えば水素)を提供してもよい。照明システムIL及び/又は投影システムPS内に、真空を提供してもよい。照明システムIL及び/又は投影システムPS内に、大気圧よりも充分に低い圧力の少量のガス(例えば水素)を提供してもよい。
【0052】
[00051] 図1に示されている放射源SOは、レーザ生成プラズマ(LPP:laser produced plasma)源と呼ぶことができるタイプである。例えばCOレーザとすることができるレーザ1は、レーザビーム2によって、燃料放出器3から与えられるスズ(Sn)等の燃料にエネルギを堆積するよう配置されている。以下の記載ではスズに言及するが、任意の適切な燃料を使用すればよい。燃料は、例えば液体の形態とすることや、例えば金属又は合金とすることが可能である。燃料放出器3は、例えば小滴の形態のスズを、プラズマ形成領域4へ向かう軌道に沿って誘導するよう構成されたノズルを備えることができる。レーザビーム2はプラズマ形成領域4においてスズに入射する。レーザエネルギのスズへの堆積は、プラズマ形成領域4においてプラズマ7を生成する。プラズマイオンの脱励起及び再結合の間に、プラズマ7からEUV放射を含む放射が放出される。
【0053】
[00052] EUV放射は、近法線入射放射コレクタ5(時として、より一般的に法線入射放射コレクタと称される)によって収集及び合焦される。コレクタ5は、EUV放射(例えば13.5nmのような所望の波長を有するEUV放射)を反射するよう配置された多層構造を有し得る。コレクタ5は、2つの楕円焦点を有する楕円構成を有することができる。第1の焦点はプラズマ形成領域4にあり、第2の焦点は以下で検討するように中間焦点6にあり得る。
【0054】
[00053] レーザ1は放射源SOから離れた場所にあり得る。これが当てはまる場合、レーザビーム2は、レーザ1から放射源SOへ、例えば適切な誘導ミラー及び/又はビームエキスパンダ及び/又は他の光学系を含むビームデリバリシステム(図示せず)を用いて渡すことができる。レーザ1及び放射源SOは共に放射システムと見なすことができる。
【0055】
[00054] コレクタ5によって反射された放射は放射ビームBを形成する。放射ビームBは、ポイント6で合焦されてプラズマ形成領域4の像を形成し、これは照明システムILのための仮想放射源として作用する。放射ビームBが合焦されるポイント6を中間焦点と呼ぶことができる。放射源SOは、中間焦点6が放射源の閉鎖構造9の開口8に又は開口8の近くに位置するように配置されている。
【0056】
[00055] 放射ビームBは、放射源SOから、放射ビームを調節するよう構成された照明システムIL内に進む。照明システムILは、ファセットフィールドミラーデバイス10及びファセット瞳ミラーデバイス11を含むことができる。ファセットフィールドミラーデバイス10及びファセット瞳ミラーデバイス11は共に、放射ビームBに所望の断面形状と所望の角度強度分布を与える。放射ビームBは、照明システムILから出射し、支持構造MTによって保持されたパターニングデバイスMAに入射する。パターニングデバイスMAは、ペリクルフレーム17(記載の残り部分ではフレームと称される)によって所定位置に保持されたペリクル19によって保護されている。ペリクル19及びフレーム17は共にペリクルアセンブリ15を形成する。パターニングデバイスMA(例えばマスクとすることができる)は、放射ビームBを反射しパターン付与する。照明システムILは、ファセットフィールドミラーデバイス10及びファセット瞳ミラーデバイス11に加えて又はこれらの代わりに、他のミラー又はデバイスを含むことも可能である。
【0057】
[00056] パターニングデバイスMAから反射した後、パターン付与された放射ビームBは投影システムPSに入射する。投影システムは、基板テーブルWTによって保持された基板Wに放射ビームBを投影するよう構成された複数のミラーを備えている。投影システムPSは、放射ビームに縮小率を適用することで、パターニングデバイスMA上の対応するフィーチャよりも小さいフィーチャの像を形成できる。例えば、縮小率4を適用することができる。図1において投影システムPSは2つのミラーを有するが、投影システムは任意の数のミラー(例えば6個のミラー)を含むことができる。
【0058】
[00057] 図1に示されている放射源SOは、図示されていないコンポーネントを含み得る。例えば、放射源内にスペクトルフィルタを提供することができる。スペクトルフィルタは、EUV放射に対して実質的に透過性であるが、赤外線放射のような他の波長の放射を実質的に阻止することができる。
【0059】
[00058] 上記で簡単に述べたように、ペリクルアセンブリ15は、パターニングデバイスMAに隣接して設けられているペリクル19を含む。放射ビームBが照明システムILからパターニングデバイスMAに近付く時、及びパターニングデバイスMAにより反射されて投影システムPSの方へ向かう時の双方でペリクル19を通過するように、ペリクル19は放射ビームBの経路内に提供されている。ペリクル19は、EUV放射に対して実質的に透明である(が、少量のEUV放射を吸収する)薄膜を含む。本明細書において、EUV透明ペリクル又はEUV放射に対して実質的に透明な膜とは、ペリクル19がEUV放射の少なくとも65%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくはEUV放射の少なくとも90%に対して透過性であることを意味する。ペリクル19は、粒子汚染からパターニングデバイスMAを保護するように機能する。ペリクル19は、本明細書においてEUV透明ペリクルと呼ぶことができる。ペリクル19はケイ化モリブデン(MoSi)から作製され得る。MoSiはシリコンよりも迅速に冷却されるので、高温ではシリコンよりも強い。他の例では、シリコンのような他の材料からペリクルを作製することも可能である。
【0060】
[00059] リソグラフィ装置LA内部に清潔な環境を維持するよう努力しても、リソグラフィ装置LA内部には粒子が存在する可能性がある。ペリクル19がなければ、粒子はパターニングデバイスMA上に堆積し得る。パターニングデバイスMA上の粒子は、放射ビームBに付与されるパターン、従って基板Wに転写されるパターンに悪影響を及ぼす恐れがある。ペリクル19は、パターニングデバイスMA上に粒子が堆積するのを防止するため、パターニングデバイスMAとリソグラフィ装置LA内の環境との間のバリアを与える。
【0061】
[00060] 使用時、ペリクル19は、ペリクル19の表面に入射する粒子が放射ビームBの焦点面内に存在しないよう充分な距離だけパターニングデバイスMAから離して位置決めされている。ペリクル19とパターニングデバイスMAとの間のこの分離は、ペリクル19の表面上の粒子が放射ビームBにパターンを付与する程度を低減するように機能する。粒子が放射ビームB内に存在するが、放射ビームBの焦点面内でない位置にある(すなわちパターニングデバイスMAの表面でない)場合、粒子の像は基板Wの表面において焦点が合わない。いくつかの実施形態では、ペリクル19とパターニングデバイスMAとの間の分離は例えば2mm~3mmの間とすればよい(例えば約2.5mm)。いくつかの実施形態では、以下で更に詳しく記載されるように、ペリクル19とパターニングデバイスとの間の分離は調節可能とすることができる。
【0062】
[00061] 図2Aは、ペリクルアセンブリ15及びパターニングデバイスMAの斜視図である。ペリクルアセンブリ15は、フレーム17と、ペリクル境界20を持たないペリクル19と、を含むことができる(図2Bを参照のこと)。ペリクル19はフレーム17上に直接形成することができる。パターニングデバイスMAはパターン付与された表面21を有する。
【0063】
[00062] 他の例では、ペリクルアセンブリは境界20も含むことができる。図2Bは、ペリクルアセンブリ15A及びパターニングデバイスMAの斜視図である。ペリクルアセンブリ15Aは、ペリクル19と、フレーム17と、ペリクル境界20と、を含み得る。境界20は任意選択的に、ペリクル19と一体的であるか、ペリクル19内に含まれるか、又はペリクル19とは物理的に別個とすることができる。境界20はペリクル19の主要部よりも著しく厚い場合があり、ペリクル19の外周全体に位置付けることができる。フレーム17に取り付けられるのはこの境界20である。フレーム17は、境界20を介してペリクル19の周囲部でペリクル19を支持する。境界20はフレーム17にのり付けか、又は別の方法で取り付けることができる。記載されている例では、フレーム17は、境界20を持たないペリクル19又は境界20を備えたペリクル19のいずれかと共に使用できる。
【0064】
[00063] 図3は、ペリクルアセンブリ15及びパターニングデバイスMAの概略図を断面で更に詳しく示す。汚染粒子26が概略的に示されている。汚染粒子26はペリクル19に入射し、ペリクル19によって保持される。ペリクル19は、マスクMAのパターン付与された表面21から充分に遠くで汚染粒子26を保持するので、汚染粒子26がリソグラフィ装置LAによって基板に結像されることはない。本発明の一実施形態に従ったペリクルアセンブリは、(パターニングデバイス上の)マスクパターンをペリクルによって汚染から保護し、マスクを用いて生成されるパターンが使用中に実質的に欠陥のない状態を保つことを可能とする。他の例では、ペリクルアセンブリ15A(すなわち境界20を備えている)を同様に使用することができる。
【0065】
[00064] ペリクルアセンブリ15Aは、境界20を提供する基板に直接ペリクル19を堆積することによって構築できる。ペリクル19の膜を堆積した後、基板を選択的にバックエッチして(back-etch)基板の中央部を除去すると共に外周部のみを残すことで、ペリクル19を支持する境界20を形成すればよい。
【0066】
[00065] 他の例では、最初にエッチストップ(例えばSiO)を堆積し、次いでペリクルコア材料を、次いで別のエッチストップ(例えばSiO)を堆積することができる。シリコンウェーハ材料をエッチングによってエッチストップまで除去すればよい。次いで、シリコンもケイ化モリブデンMoSiも攻撃しない異なるエッチャントを用いて、エッチストップをエッチングによって除去すればよい。これにより自立膜(freestanding membrane)(ペリクル)が残される。ペリクル19は、例えば15~50nmのオーダーの厚さを有し得る。他の例では、フレーム17を提供する基板に直接ペリクル19を堆積することによってペリクルアセンブリ15を構築できる。
【0067】
[00066] ペリクル19は、あるレベルの「プレストレス(pre-stress)」(すなわち、使用されていない時にペリクル19内に存在するあるレベルの応力)を必要とする。ペリクル19内のプレストレスによって、ペリクル19は、スキャン動作中に温度及びガス圧の変化のため生じる圧力差に耐えることができる。しかしながら、プレストレスが大きすぎる場合、ペリクルアセンブリ15の全体的な寿命が短くなる。従って、ペリクル19に対する所与の圧力において(z方向の)偏向を制限するため、ペリクル19に最小限のプレストレスを(図示されているx-z面内で)与えることが望ましい。z方向のペリクル19の偏向が大きすぎる場合、ペリクル19は破壊する及び/又はペリクル19の周辺エリアの他のコンポーネントに接触する可能性がある。
【0068】
[00067] ペリクル19の応力は、ペリクル19が形成されている材料の最大引張応力(ultimate tensile stress)又は降伏強度よりも著しく小さいことが好ましいので、ペリクル19のプレストレスは限定されていることが好ましい。ペリクル19の寿命及び信頼性を増大させるため、プレストレスと最大引張応力との間の差は、できる限り大きくなければならない。
【0069】
[00068] プレストレスをペリクル19に組み込むため、化学量論、水素化、結晶サイズの制御、ドーピング、及びペリクル19を基板に堆積する時の熱膨張係数(CTE)の選択的な不整合を含む1つ以上の機構を使用できる。また、ペリクル19は複数の層を含むことも可能である(例えば、水素ラジカルからペリクル19を保護するためのキャッピング層)。ペリクルアセンブリ15のペリクル19部分のこれらの層のCTE不整合と、ペリクル19の異なる層が堆積されるヘテロエピタキシのプロセスに起因して、多層ペリクル19の各層の応力はそれぞれ異なる可能性がある。
【0070】
[00069] 使用時のペリクル19内の張力は、上述したように加えられたプレストレスによってある程度支配される。また、ペリクル19内の所望の張力を達成するように、ペリクル19の境界20への取り付けを制御することも可能である。例えば、ペリクル19内の所望の張力を達成するため、ペリクル19の境界20への取り付け中に又は取り付け後にペリクル19内の張力を測定し、この測定値に応じて張力を調整することができる。ペリクル19内の張力は、例えばペリクル19を伸ばすように境界20のコンポーネントに外向きの力を加えることによって維持できる。ペリクル19内の張力は、例えばフレームとペリクルとの間の熱膨張係数の差を用いて維持できる。
【0071】
[00070] 例示されている実施形態は、フレームをパターニングデバイスMAの前面に取り付けることを示しているが、他の例では、フレームをパターニングデバイスMAの他の部分に取り付けてもよい。例えば、フレームをパターニングデバイスMAの側面に取り付けることができる。これは、例えばフレームとパターニングデバイスMAの側面との間に解放可能に係合できる取り付けを提供するサブマウントを用いて達成できる。代替的な構成では、フレームをパターニングデバイスMAに取り付けるため、パターニングデバイスMAの側面のいくつかの取り付け位置とパターニングデバイスMAの前面のいくつかのの取り付け位置とを組み合わせてもよい。取り付けは、例えばフレームとパターニングデバイスMAを解放可能に係合するサブマウントによって提供できる。
【0072】
[00071] ペリクル19内の所望の張力を達成するように、フレーム17のパターニングデバイスMAへの取り付けを制御することができる。例えば、ペリクル19内の所望の張力を達成するため、フレーム17のパターニングデバイスMAへの取り付け中にペリクル19内の張力を測定し、この測定値に応じて張力を調整すればよい。
【0073】
[00072] フレーム17は、フレーム17をパターニングデバイスMAに着脱可能に取り付けられる(すなわち、フレーム17をパターニングデバイスMAに取り付け可能であると共にパターニングデバイスMAから取り外し可能である)ように構成された係合機構22を含み得る。係合機構22は、フレーム17のブロック23(図4を参照のこと)に配置することができる。係合機構22は、パターニングデバイスMA上に提供された取り付け部材24と係合するように構成されている。取り付け部材24は、例えばパターニングデバイスMAから延出している突起又はスタッドとすればよい。係合機構22は、例えばこの突起と係合してフレーム17をパターニングデバイスMAに固定するロック部材32(図7を参照のこと)を含み得る。
【0074】
[00073] 複数の係合機構22及びこれらに関連付けられた取り付け部材24を提供できる。係合機構22は、フレーム17の周囲に分散させることができる(例えば、フレームの一方側に2つの係合機構22A、22B、フレームの反対側に2つの係合機構22C、22D)。関連付けられた取り付け部材は、パターニングデバイスMAの周囲部に分散させることができる。係合機構22は、フレーム17のブロック23(図4を参照のこと)に配置することができる。
【0075】
[00074] 次に図4を参照すると、フレーム17の上面図が示されている。フレーム17には4つの係合機構22A~22Dが設けられている。各係合機構22は、フレーム17の周囲部の各側面の残り部分に対して半径方向外側に突出しているフレーム17の各ブロック23に配置することができる。各係合機構22A~22Dは、(以下で記載されるように)パターニングデバイスMAから延出している各取り付け部材24A~24Dを受容するよう構成されている。この例のフレーム17は4つの側面を有する。フレーム17の一方側30Aに2つの係合機構22A、Bが設けられ、フレーム17の反対側に2つの係合機構22C、22Dが設けられている。これらの側面を支持側面30A、30Bと呼ぶ。支持側面30A、30Bを接続し、係合機構22A~22Dを持たない他の2つの側面を、自由側面30C、30Dと呼ぶ。4つのフレーム側面の各々に1つの係合機構があるといった他の組み合わせも可能である。係合機構22は、リソグラフィ装置で使用される際にスキャン方向に沿って配向される(図3及び図4では従来の表記に従ってy方向として示されている)フレーム17の側面に設けられている。しかしながら、係合機構は、リソグラフィ装置で使用される際にスキャン方向に対して垂直に配向される(図3及び図4では従来の表記に従ってx方向として示されている)フレーム17の側面に設けてもよい。
【0076】
[00075] 係合機構22A~22Dによって受容される取り付け部材24A~24D(突起)は、パターニングデバイスMAの前面すなわちパターン付与された表面21に配置することができる。これに加えて又はこの代わりに、突起をパターニングデバイスの側面に配置してもよい。突起は、パターニングデバイスの側面から垂直方向に延出することができる。そのような構成において、突起の各々は、パターニングデバイスの側面への堅固な接合を容易にするため平坦な横面を有し得る。
【0077】
[00076] 各係合機構22A~22Dは、例えばx-y面内でフレーム17の中心点CPと実質的に対向するように、フレームの側面に対して斜めに配向することができる。この場合、中心点CPはフレーム17の幾何学的中心である。すなわち各係合機構22A~22Dは、フレーム17の中心と概ね対向するように、フレーム17の側面に対する垂直な配向から回転している。このため、係合機構22Aは係合機構22Dと対向し、係合機構22Bは係合機構22Cと対向する。図4において各係合機構から引かれたラインは中心点CDで交差する。これによって2つの対称面が形成され、フレーム17の中心点CDに熱的な中心が生じる。これにより、パターニングデバイスMAに対するフレーム17の熱的な膨張が可能となると共に、パターニングデバイスMAに応力が蓄積されるのを防止する。他の例では、係合機構22をフレーム17の中心点CPと対向するまでは回転させない場合がある。この場合、応力蓄積低減の利点はそれほど大きくないものの、熱膨張の可能性は同様に増大させることができる。
【0078】
[00077] 再び図3を参照すると、フレーム17は、第1の表面17Aと、この第1の表面17Aとは反対側の第2の表面17Bと、を有し得る。第1及び第2の表面17A、17Bは連続的とすることができる。ペリクル19、又は、適用できる場合には境界20は、全周にわたってフレームの第1の表面17Aと接触し得る。他の例では、第1及び/又は第2の表面17A、17Bは、少なくとも1つのくぼみ又は複数のくぼみ(図示せず)を有し得る。図3において、第1の表面17Aは上面であり、第2の表面17Bは下面である。ペリクル19の使用中に、第1の表面17Aが下向きであり第2の表面17Bが上向きである場合があるが、ここで使用される用語は単に理解を助けるためのものであり、使用時に第1及び第2の表面17A、17Bが面する方向は異なるか又は逆であることもある。
【0079】
[00078] フレーム17は、第1及び第2の表面17A、17Bの間に設けられてこれらを接続及び分離する構造18を含み得る。構造18は、空隙、空間、中空、ポケット、チャンバ等の体積28A~28Cを少なくとも部分的に画定する。
【0080】
[00079] 一例において、構造18は第1の壁17Cを含む。第1の壁17Cはフレーム17の内周部に位置付けられ、フレーム17の周縁部の少なくとも一部に延出することができる。複数の例において、第1の壁17Cはフレーム17の内周部と外周部との間に位置付けられ、フレーム17の周縁部の少なくとも一部に延出することができる。第1の壁17Cは、フレーム17の周縁部の少なくとも一部において又はフレーム17の周縁部全体にわたって連続的であり得る。フレーム17は、第1及び第2の表面17A、17Bを接続する第2の壁17Dを有することができる。第2の壁17Dはフレーム17の外周部に位置付けられ、フレーム17の周縁部の少なくとも一部に延出し得る。複数の例において、第2の壁17Dはフレーム17の内周部と外周部との間に位置付けられ、フレーム17の周縁部の少なくとも一部に延出することができる。第2の壁17Dは、フレーム17の周縁部の少なくとも一部において又はフレーム17の周縁部全体にわたって連続的であり得る。複数の例において、第1及び/又は第2の壁17C、17Dは第1及び第2の表面17A、17Bに対して概ね垂直に又は斜めに延出している。
【0081】
[00080] 図5Aから図5F図4の断面を示す。図5Aから図5Dに示されているように、フレーム17内には、フレーム17から材料が除去されたか又は失われている体積28A~28Cが提供されている。すなわち、第1及び第2の表面17A、17Bは、フレーム17を形成する材料が存在しない複数の体積28を第1及び第2の表面17A、17Bの間に少なくとも部分的に画定する。複数の例では、フレーム17は体積28内に材料が存在しない状態で形成されている場合がある。体積28は、例えば空気、プロセスガス、もしくは真空のような環境に開放するか、又は閉鎖することができる。他の例では、体積28にフレーム17の材料とは異なる材料を充填することができる。例えば体積28に、フレーム17の残りの大部分が形成される材料よりも密度が低い材料を充填できる。
【0082】
[00081] フレーム17の周縁部に沿った様々な位置に多数の体積28を位置付けることができる。これらの体積28は、相互につなげて更に大きい体積を形成するか、又は第1及び第2の壁17C、17Dによって分離してもよい。すなわち、第1及び第2の表面17A、17Bの間に体積28の格子を形成することができる。
【0083】
[00082] 更に、フレームの少なくとも1つの部分は、フレームの少なくとも1つの他の部分とは異なる断面プロファイルを有することができる。具体的には、例えばこれらの位置において所望の機械的及び熱的な特性を与えるため、フレームの少なくとも1つの部分と少なくとも1つの他の部分とで、第1及び第2の表面17A、17Bの間に設けられている構造18の形態(例えば、壁17C、17Dの数、壁17C、17Dの相対的な配置等)並びに構造18に対する体積28の相対的な量は任意選択的に異なっている。例えば、フレーム17の少なくとも1つの部分はI字形の断面を有し、フレーム17の少なくとも1つの他の部分は四角形又は中空管の断面を有し得る。
【0084】
[00083] 図5Bは自由側面30Cの側面図を示し、これは、支持側面30A、30Bが少なくとも部分的にくり抜かれてy方向に延出する空の管構造(すなわち中空管)を形成することを示している。中空管内の空の空間が体積28Aである。これは図5Eに更に詳しく示されている。中空管はねじり剛性を与える。第1及び第2の表面17A、17B並びに第1及び第2の壁17C、17Dは、フレーム17の支持側面30Aの長さの少なくとも一部に沿って中空管を形成する。体積28Aは、第1及び第2の壁17C、17Dを通って又はこれらの間に延出していると考えることができる。好ましくは、中空管は支持側面30Aにおいて自由側面30Cから係合機構22Aまで延出している。他の例では、中空管は支持側面30Aにおいて自由側面30Cから係合機構22Aを保持しているブロック23まで延出し得る。中空管は、支持側面30A、30Bの一方又は双方の全長に沿って延出し得る。中空管は、支持側面30A、30Bの一方又は双方の長さの一部のみに沿って延出し得る。他の例では、中空管は自由側面30C、30Dの一方又は双方の少なくとも一部に沿って延出し得る。他の例では、必要なねじり剛性が与えられるならば、支持側面30A、30Bの一方又は双方の断面は別の形状又は中空管以外の中空構造であってもよい。
【0085】
[00084] 図5C図4のラインD-Dで切り取った断面を示し、これは、自由側面30C、30Dがx方向に延出するI字形断面を有することを示している。これは図5Fに更に詳しく示されている。I字形断面は曲げ剛性を与える。第1及び第2の表面17A、17B並びに第1の壁17Cは、自由側面30Cの長さの少なくとも一部に沿ってI字形断面を形成する。このI字形断面のため、2つの体積28Bが第1の壁17Cの両側において側面30Cの長さの少なくとも一部に沿ってx方向に延出している。好ましくは、I字形断面は自由側面30Cにおいて支持側面30Aから支持側面30Bまで延出している。I字形断面は、自由側面30C、30Dの一方又は双方の全長に沿って延出し得る。他の例では、I字形断面は、自由側面30C、30Dの一方又は双方の長さの少なくとも一部のみに沿って延出し得る。他の例では、I字形断面は、支持側面30A、30Bの一方又は双方の少なくとも一部に沿って延出し得る。他の例では、必要な曲げ剛性が与えられるならば、自由側面30C、30Dの一方又は双方の断面はI字形以外の別の形状であってもよい。
【0086】
[00085] 図5AはラインC-Cで切り取った断面を示し、これは、支持側面30A上のブロック23のうち少なくとも1つにおいて体積28Cが除去されていることを示す。これは図5Dに更に詳しく示されている。体積28Cを画定する第1及び第2の表面17A、17Bは基準表面として必要とされるだけである。すなわち、体積28Cは強度又は剛性のための材料を有する必要はない。ブロック23の周囲部に延出している第2の壁17Dを使用するので、体積28Cは第2の壁17Dまでx方向に延出していると考えられる。他の例では、体積28Cはx方向で第2の壁17Dを通って、フレーム17の内周部における第1の壁17Cまで到達し得る。体積28Cは、第2の壁17D及び内壁17Cを通って延出することで、支持側面30Aの全体又は一部をx方向に延出し得る。ブロック23における体積28Cは任意の適切な大きさとすればよく、フレーム17の別の部分に位置付けてもよい。すなわち体積28Cは、フレーム17の周縁部の任意の位置で、第1及び/又は第2の壁17C、17Dを通るように又はこれらの間に延出し得る。
【0087】
[00086] 図4は、ブロック23の外側のかどが除去されていることを示す。すなわち、標準的なフレームでは存在するはずのブロック23のかどから材料を除去することができる。これは、上述したような係合機構22の回転のために、このエリアではもはやブロック23のサポートが必要ないからである。
【0088】
[00087] 図6Aは、ブロック23に位置付けられた4つの係合機構22A~22Dを備えるフレーム17の斜視図を示す。体積28A~28Cが、支持側面30A、30B及び自由側面30C、30Dに示されている。
【0089】
[00088] 図6Bは、フレーム17の平面断面の斜視図を示す。体積28A~28Cが更に詳しく示されている。体積28Aは、支持側面30Aにおいて自由側面30Cから係合機構22Aを保持しているブロック23まで延出する中空管として示されている。別の体積28Aは、支持側面30Bにおいて自由側面30Cから係合機構22Cを保持しているブロック23まで延出する中空管として示されている。更に別の体積28Aは、支持側面30Aにおいて自由側面30Dから係合機構22Bを保持しているブロック23まで延出する中空管として示されている。別の体積28Aは、支持側面30Bにおいて自由側面30Dから係合機構22Dを保持しているブロック23まで延出する中空管として示されている。
【0090】
[00089] 体積28Bは、自由側面30C、30Dにおいて支持側面30Aから支持側面30Bまで延出するI字形断面の両側に沿って延出して示されている。体積28Cは、ブロック23の周囲部の外側から第2の壁17Dまで延出して示されている。すなわち、体積28Cは三角形のキャビティの形態をとっている。
【0091】
[00090] 図4及び図5Aから図5Fに関連付けて記載されているように、フレーム17の材料は体積28においてフレーム17から除去されているか、又は、フレーム17の製造時に材料は体積28に含まれていなかった。体積28におけるフレーム17の材料の除去は、フライス加工やエッチング等、当技術分野において既知の任意の方法によって実行できる。他の例では、3Dプリント等によって、体積28A~28Cに材料を配置することなくフレームを製造できる。すなわち、これらの体積には材料が存在しない。フレーム17の材料が存在しない体積28は、これらの体積28に材料を有するフレーム17と比べて、フレーム17の重量が軽くなっていることを意味する。更に、体積28にフレーム17の材料が存在しないので、フレーム17の固有振動数は上昇している。
【0092】
[00091] ペリクルは、すでに結晶シリコン(c-Si)ウェーハ上に直接製造されている。上述したのと同様に、これを実行するには、(例えば約300nmの)SiOx層の上に薄い層を直接堆積し、これをシリコンウェーハ上に堆積し、選択的にかつ異方的にc-Siをバックエッチすることによって膜(ペリクル)を自立させる。このため、c-Siのフレームが残り、この上に、自立膜(例えば11cm×14cm、厚さは15~50nmのオーダー)が載っている。
【0093】
[00092] 上に膜を成長させる基板は、ペリクル内に最終的に残る応力に影響を及ぼす。製造プロセスにおいて熱応力を最小限に抑えることが重要である。これが重要であるのは、応力を最小限に抑えることが、ペリクルの有用性、ロバスト性、及び寿命の増大につながるからである。応力が大きければ大きいほど、ペリクルは故障する可能性が高くなる。製造時の応力を最小限に抑えるため、基板の熱膨張係数(CTE)と形成されている膜のCTEを一致させることが好ましい。上述のように、ペリクルの作製には結晶シリコンが用いられている。一例として、結晶シリコンウェーハの熱膨張係数(CTE)が多結晶コアのCTEと一致する場合(2.6μm/m/Kと、~4μm/m/K)、製造プロセスにおいてあまり大きい熱応力は加わらない。
【0094】
[00093] 高CTE材料の境界20をペリクル19に接合することによってペリクル19内の応力を低減できるので、境界20を用いることは有利である。約7~8μm/m/K以上のCTEは、ペリクルに対して高いCTEであると考えられる。これは、フレーム17とペリクル19との間のCTE誘起応力を、境界20とペリクル19との間のCTE誘起応力に切り換える。このため、境界20、フレーム17、及びブロック23を、同一の材料で提供することが有利である。境界20をフレーム17の材料と同一の材料とすることができる。ブロック23をフレーム17の材料と同一の材料とすることができる。
【0095】
[00094] 膜のCTEの増大は、応力が増大することを意味する。多くの場合、結晶シリコン基板は膜のCTEと一致させることができないので、結晶シリコン基板の使用は適切でない。
【0096】
[00095] シリコンは比較的高い比弾性率(specific modulus)(すなわちヤング率/密度)を有し、比較的高い熱伝導率を有する。このため、シリコンは軽量かつ剛性のエンジニアリングのために良好な構造物である。
【0097】
[00096] フレーム材料にシリコン以外の材料を使用すると、ペリクルアセンブリ15に必要な仕様を得ることに関して問題が生じる。これらの仕様は、例えばペリクルフレームの固有周波数、ペリクルアセンブリの最大重量、アセンブリ内の温度変動等であり得る。
【0098】
[00097] 上述の位置に配置された体積28を有するペリクルフレーム17を構築すると、フレーム17と、いくつかの例ではペリクルの境界20とにおいて、シリコンの代わりに他の材料を使用できる。すなわち、フレーム17の材料が存在しない体積28を有することは、必要な仕様(固有振動数、重量等)内でペリクルアセンブリ15を構築できることを意味する。
【0099】
[00098] フレーム17及び/又は境界20を結晶シリコンで作製することができる。フレーム17及び/又は境界20をアルミニウムで作製することができる。フレーム17及び/又は境界20を窒化アルミニウムで作製することができる。この記載はペリクルアセンブリを形成する材料に関してアルミニウム及び窒化アルミニウムに言及するが、例えばベリリウム又はその化合物のような他の材料も使用できる。
【0100】
[00099] ペリクル19のフレーム17及び/又は境界20に異なる材料(アルミニウム又は窒化アルミニウム)を使用することは、膜CTEを更にぴったり一致させ得ることを意味する。これによって、ペリクル19の製造中の熱応力が低減する。例えば、ペリクル19をMoSi(比較的高いCTE材料である)で形成し、フレーム17をアルミニウム又は窒化アルミニウムを用いて作成することができる。これにより、フレーム17とペリクル19との間のCTEを更にぴったり一致させて、ペリクル19の製造中の熱応力を低減することが可能となる。
【0101】
[000100] アルミニウム又は窒化アルミニウムはシリコンよりも低いヤング率を有し、アルミニウムのヤング率は窒化アルミニウムよりも低い。これは、同一の密度ならば、アルミニウム又は窒化アルミニウムはシリコンよりも剛性が低いことを意味する。アルミニウムは窒化アルミニウムよりもヤング率が低いので、アルミニウムで作製されたフレームは、材料が存在しない体積から著しい利点を得ることができ、これに対して、窒化アルミニウムで作製されたフレームは、材料が存在しない体積からあまり利点を得られない場合がある。しかしながら、アルミニウム又は窒化アルミニウムのいずれかで作製されたフレームの設計は同一又は同様であり(すなわち材料が存在しない同一の体積を有する)、それに応じて固有周波数は増大する。
【0102】
[000101] 材料が存在しない体積28は特定のエリア内にあるので、フレーム17の剛性(ねじり剛性であるか曲げ剛性であるかにかかわらず)が著しく低下することはない。これは、アルミニウムがシリコンと同様の密度を有する場合、アルミニウム又は窒化アルミニウムのフレーム17において要求される重量に必要な剛性が達成されることを意味する。従って、剛性に比較的寄与しないフレーム17の体積28が除去されている。材料が存在しない体積28は、フレーム17の剛性を著しく低減させることはない。フレーム17の剛性はフレーム17に対する負荷と合致する(align with)。
【0103】
[000102] フレーム17の剛性は特定の方向において特定の位置で必要である。例えばフレーム17の自由側面30C、30Dでは、ペリクルフレームの面(x-y面)内で剛性が必要であり、従ってこのエリアではI字形断面が用いられる。体積28は、フレーム17の曲げ剛性を大きく低減させることはない。例えばフレーム17の支持側面30A、30Bでは、ねじり剛性が必要であるので、このエリアでは中空管が用いられる。体積28は、フレーム17のねじり剛性を大きく低減させることはない。
【0104】
[000103] 堆積プロセスから発生する応力は、望ましい応力(例えばプレストレス)から分離させることができる。例えば、微細構造によって理想的な寿命が得られるが応力が小さすぎる場合、所望のバランスを得るようにこの構造を調整することができる。
【0105】
[000104] フレーム17の材料が特定の位置で体積28から除去されている例を示したが、フレーム17の任意の部分において体積から材料を除去することによりフレーム17の重量を低減できることは認められよう。更に、I字形断面及び中空管を例として示したが、ねじり剛性であるか曲げ剛性であるかにはかかわらずフレームの必要な剛性を与えるため、他の断面形状を使用してもよいことは認められよう。
【0106】
[000105] 一例では、材料としてアルミニウムを使用し、図4図5Aから図5Fに示されたフレームを用いて、フレーム17、境界20、ブロック23、及び取り付け部材24の重量を、14グラム(アルミニウムから作製された標準的なフレームを用いた重量である)から10グラムに低減させることができる。
【0107】
[000106] 上述のように、フレーム17における特定の位置で体積28内のフレーム17の材料を除去すると、フレーム17の固有振動数が上昇する。一例では、材料としてアルミニウムを使用すると共に図4図5Aから図5Fに示されたフレームを使用すると、最低固有振動数は405Hzであるが、これに対して、シリコンで作製された標準的なフレームでは355Hzである。
【0108】
[000107] 図7は、フレーム17のブロック23に固定された係合機構22の上面図を示す。この例において、係合機構22はフレーム17の側面に対する直角の配向から回転しているが、他の例では、係合機構をx方向に位置合わせしてもよい。係合機構22A~22Dは、x及びy方向への移動が可能である(図4を参照のこと)。係合機構22は、取り付け部材24(図示されていない)に係合できるように構成されている。取り付け部材24は、例えばパターニングデバイスMAにのり付けするか、又は他の接合手段(光学的接触、磁力、又はファンデルワールス力等)によって取り付けることができる。
【0109】
[000108] 係合機構22及び取り付け部材24は、ペリクルフレームとパターニングデバイスとの間にギャップG(スリットと考えることができる)があるように、ペリクルフレーム17をパターニングデバイスMAに対して浮かせる(図3を参照のこと)。ギャップGは、何らかの移動制限コンポーネントによって維持することができる。ギャップGは、外部環境とペリクル及びパターニングデバイス間の空間との間の圧力の均一化を可能とするよう充分に広くすることができる。また、ギャップGは、外部環境からペリクル及びパターニングデバイス間の空間へ汚染粒子が進入する可能性のあるルートに望ましい制限を与えるよう充分に狭くすることができる。ギャップGは、外部環境とペリクル及びパターニングデバイス間の空間との間の圧力の均一化を可能とするため、例えば少なくとも100ミクロンとすればよい。ギャップGは、例えば500ミクロン未満、より好ましくは300ミクロン未満とすればよい。ギャップGは、例えば200ミクロン~300ミクロンとすればよい。
【0110】
[000109] 係合機構22は、取り付け部材24に対してロックするよう構成されたロック部材32を有する。ロック部材32は、中間部36から概ねy方向に延出している2つの第1の板バネの形態である2つの弾性的に可撓性の係合アーム34を有する。これらの係合アーム34は、取り付け部材24を載置する表面を与える。中間部36は概ねx方向に延出している。中間部36は、同様に概ねy方向に延出しているが係合アーム34よりも延出距離が大きい2つの第2の板バネの形態である2つの追加の弾性的に可撓性の係合アーム38に接続されている。第1の板バネ34及び第2の板バネ38の長さは、1.5:1~2.5:1の間の比を有し、例えば2:1の比を有する。これによって、載置表面を有する取り付け部材(又はスタッド)をできる限り水平に維持する。
【0111】
[000110] 2つの係合アーム34間にビーム40が位置付けられ、中間部36に対して係合部材22の反対側から概ねy方向に延出している。ビーム40は、係合アーム34に対して取り付け部材24を固定するための止め具として機能する。概ねy方向に延出しているビーム40によって、取り付け部材24のための空間が与えられる。従って、係合機構22のビーム40は、取り付け部材24を係合機構22内へ挿入することを可能とする距離だけ延出している。ビーム40は、係合部材22の幅の半分以上にわたって延出し得る。
【0112】
[000111] 図8Aは、図7のラインA-Aで切り取った係合機構22の断面を概略的に示す。図8Bは、図7のラインB-Bで切り取った係合機構22の断面を概略的に示す。
【0113】
[000112] 図9は、フレーム17のブロック23に固定された係合機構22の斜視図を概略的に示す。
【0114】
[000113] 図10は、図9のラインC-Cで切り取った係合機構22の断面の斜視図を概略的に示す。
【0115】
[000114] 図11Aは、係合機構22をパターニングデバイスMAにロックするため使用される取り付け部材24(スタッド)の端面図である。図11Bは、係合機構22をパターニングデバイスMAにロックするため使用される取り付け部材24(スタッド)の側面図である。他の例では、取り付け部材は別の形状及び大きさを有し得る。
【0116】
[000115] 図12は、図9のラインC-Cで切り取った係合機構22の断面の側面図を概略的に示す。取り付け部材24はパターニングデバイスMA(図示せず)から延出し、パターニングデバイスMAに固定されている。ロック部材32を用いてフレーム17をパターニングデバイスMAにロックするには、フレーム17を取り付け部材24に対して押圧し、次いで係合機構22を押し下げて、フレーム17を所定位置に嵌め込むための空間を生成する。具体的には、取り付け部材24を係合機構22に対して矢印Dの方向に移動させる。その後、係合機構22の中間部36を矢印Eの方向に下方へ押す(図7のz方向)と、次いで係合機構22の2つの係合アーム34が押し下げられる。
【0117】
[000116] 係合アーム34を下方へ押した状態で、取り付け部材24をビーム40の止め具の下方の所定位置に嵌め込むための空間が係合機構22に生成される。これを行うため、フレーム17、従って係合機構22を、矢印Fの方向に移動させる。これは事実上、取り付け部材24が係合機構22に対して破線矢印Gの方向に移動するということである。すると取り付け部材24はロック位置となる。
【0118】
[000117] 一度、中間部36、従って係合アーム34が解放されると、すなわち矢印Eの方向にそれらを押していた力が除去されると、取り付け部材24はビーム40の止め具と係合アーム34との間に挟まれる。従って係合機構22は取り付け部材24にロックされ、係合機構22がフレーム17に固定されていると共に取り付け部材24がパターニングデバイスMAに固定されているので、フレーム17はパターニングデバイスMAにロックされる。上述のロックプロセスは、係合機構22A~22Dの各々について実行できる。
【0119】
[000118] 係合機構22の構成は、係合機構22の中心に係合機構22が装着されて望ましくないねじれを回避するという利点を有する。従って係合機構22は、係合機構22の実質的に中心の位置で取り付け部材24を着脱可能に固定できるように構成されている。これとは対照的に、標準的な係合機構は、係合機構の側面の近くに位置付けられた支持アームを有し、望ましくないねじれが生じる。
【0120】
[000119] 係合機構22に取り付け部材24が固定され、係合機構22はフレーム17がx方向及びy方向の双方に曲がることを可能とするので、ペリクル19の製造中の応力を低減できる。係合機構22A~22D及び取り付け部材24によって与えられる移動/柔軟性により、温度変化が生じた場合に必要に応じてペリクルフレーム17はパターニングデバイスMAに対して曲がることができる。これは、ペリクルフレーム17において損傷を与える可能性のある熱応力の発生を回避するので有利である。
【0121】
[000120] 一実施形態において、本発明はマスク検査装置の形態をとることができる。マスク検査装置は、EUV放射を用いてマスクを照明し、結像センサを用いてマスクから反射した放射を監視することができる。結像センサによって受光された像を用いて、マスクに欠陥が存在するか否かを判定する。マスク検査装置は、EUV放射源からEUV放射を受光すると共に、これをマスクへ誘導される放射ビームに形成するよう構成された光学系(例えばミラー)を含み得る。マスク検査装置は更に、マスクから反射したEUV放射を収集すると共に、結像センサにおいてマスクの像を形成するよう構成された光学系(例えばミラー)を含み得る。マスク検査装置は、結像センサにおけるマスクの像を解析すると共に、その解析からマスクに欠陥が存在するか否かを判定するよう構成されたプロセッサを含み得る。プロセッサは更に、マスクがリソグラフィ装置によって使用される場合、検出されたマスク欠陥が、基板に投影される像において許容できない欠陥を発生させるか否かを判定するよう構成できる。
【0122】
[000121] 一実施形態において、本発明はメトロロジ装置の形態をとることができる。メトロロジ装置を用いて、基板上にすでに存在するパターンに対する基板上のレジストに形成された投影パターンのアライメントを測定することができる。相対的なアライメントのこの測定をオーバーレイと呼ぶことがある。メトロロジ装置は、例えばリソグラフィ装置のすぐ隣に配置することができ、基板(及びレジスト)が処理される前にオーバーレイを測定するため使用できる。
【0123】
[000122] 本文ではリソグラフィ装置の文脈において本発明の実施形態に特に言及したが、本発明の実施形態は他の装置で使用することも可能である。本発明の実施形態は、マスク検査装置、メトロロジ装置、又はウェーハ(もしくは他の基板)もしくはマスク(もしくは他のパターニングデバイス)のような物体を測定もしくは処理する任意の装置の一部を形成し得る。これらの装置は概してリソグラフィツールと呼ぶことができる。そのようなリソグラフィツールは、真空条件又は周囲(非真空)条件を使用できる。
【0124】
[000123] 「EUV放射」という用語は、4~20nmの範囲内、例えば13~14nmの範囲内の波長を有する電磁放射を包含すると見なすことができる。EUV放射は、10nm未満の波長、例えば4~10nmの範囲内、例えば6.7nm又は6.8nmの波長を有し得る。
【0125】
[000124] 図1及び図2はレーザ生成プラズマLPP源としての放射源SOを示しているが、任意の放射源を用いてEUV放射を生成することができる。例えば、放電を用いて燃料(例えばスズ)をプラズマ状態に変換することにより、EUV放出プラズマを生成できる。このタイプの放射源を放電生成プラズマ(DPP:discharge produced plasma)源と呼ぶことができる。放射源の一部を形成するか、又は電気的接続を介して放射源SOに接続されている別個の要素である電源によって、放電を生成すればよい。
【0126】
[000125] 本文ではICの製造においてリソグラフィ装置を使用することに特に言及したが、本明細書に記載されるリソグラフィ装置は他の用途を有し得ることは理解されよう。考えられる他の用途には、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用ガイダンス及び検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッド等の製造が含まれる。
【0127】
[000126] 上記では光学リソグラフィの文脈において本発明の実施形態を使用することに特に言及したが、本発明は、例えばインプリントリソグラフィのような他の用途に使用することができ、文脈上許される場合、光学リソグラフィに限定されないことは認められよう。インプリントリソグラフィでは、パターニングデバイスにおけるトポグラフィが、基板上に生成されるパターンを画定する。パターニングデバイスのトポグラフィを基板に供給されたレジスト層に押圧し、その後、電磁放射、熱、圧力、又はそれらの組み合わせを使用することによってレジストを硬化させる。レジストの硬化後、レジストからパターニングデバイスを移動させると、そこにパターンが残る。
【0128】
[000127] 本発明の特定の実施形態について上述したが、記載した以外の態様で本発明を実施してもよいことは認められよう。上記の説明は例示であって限定ではないことが意図される。従って、以下に述べる特許請求の範囲から逸脱することなく、記載した本発明に変更を実行してもよいことは、当業者には認められよう。
図1
図2A
図2B
図3
図4-5C】
図5D
図5E
図5F
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11A
図11B
図12