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特許7583953極紫外線フォトマスク上でのルテニウム酸化物還元のための方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】極紫外線フォトマスク上でのルテニウム酸化物還元のための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/24 20120101AFI20241107BHJP
   G03F 1/50 20120101ALI20241107BHJP
【FI】
G03F1/24
G03F1/50
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2023550199
(86)(22)【出願日】2022-02-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-20
(86)【国際出願番号】 US2022015554
(87)【国際公開番号】W WO2022182510
(87)【国際公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-10-23
(31)【優先権主張番号】63/153,753
(32)【優先日】2021-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ウー, バンチウ
(72)【発明者】
【氏名】マハムレー, カリード
(72)【発明者】
【氏名】ダガン, エリヤフ シュロモ
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-215555(JP,A)
【文献】特開2012-199576(JP,A)
【文献】特表2016-528734(JP,A)
【文献】国際公開第2019/124321(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/137077(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00-1/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
極紫外線(EUV)フォトマスク上でルテニウム酸化物を還元するための方法であって、
ルテニウム(Ru)酸化物層を有する上面を有するRuキャッピング層を有する前記EUVフォトマスクを、摂氏約100度から摂氏約150度の温度に加熱すること、
EUVフォトマスク処理チャンバの中に還元剤ガスを流すこと、及び
前記還元剤ガスと前記Ruキャッピング層上の前記Ru酸化物層との間の還元反応を増加させるために、前記EUVフォトマスク処理チャンバをプロセス圧力に加圧することを含む、方法。
【請求項2】
前記プロセス圧力は、ゼロから約150psiである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プロセス圧力は、ゼロから約1500psiである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記EUVフォトマスク処理チャンバは、円筒形状チャンバであり、前記プロセス圧力は、ゼロから約2500psiである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記プロセス圧力は、前記EUVフォトマスク処理チャンバの中への前記還元剤ガス、及び前記EUVフォトマスク処理チャンバから外への廃ガスの流れを調節することによって得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記還元剤ガスは、一酸化炭素ガス、メタンガス、又は水素ガスである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記還元剤ガスと共にキャリアガスを流すことを更に含み、前記キャリアガスは、高濃度の爆発性還元剤ガスの揮発性を低減させる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
極紫外線(EUV)フォトマスク上でルテニウム酸化物を還元するための方法であって、
還元剤ガスとキャリアガスを遠隔プラズマ生成器の中に流すこと、
RF電源を使用して前記遠隔プラズマ生成器内でプラズマを生成すること
前記遠隔プラズマ生成器からEUVフォトマスク処理チャンバの中にガスを流すこと、及び
前記EUVフォトマスクを摂氏約100度から摂氏約150度の温度に加熱すること
を含み、
遠隔プラズマは、前記EUVフォトマスクの自己バイアスを発生させるために、前記EUVフォトマスクの上方で生成され、前記EUVフォトマスク処理チャンバ内の前記ガスは、ルテニウム(Ru)酸化物層をRu金属に還元するために、Ruキャッピング層上の前記ルテニウム酸化物層と反応する、方法。
【請求項9】
前記EUVフォトマスク処理チャンバは、減圧下で動作する、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記遠隔プラズマ生成器内の前記プラズマは、誘導結合プラズマである、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記還元剤ガスは、一酸化炭素ガス又はメタンガスであり、前記キャリアガスは、アルゴンガス、ヘリウムガス、又は窒素ガスである、請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記RF電源は、13.56MHzの周波数で動作する、請求項に記載の方法。
【請求項13】
前記還元剤ガスは、水素ガスであり、前記遠隔プラズマは、原子水素の前記Ruキャッピング層の中への注入を防止するように、約5eVの自己バイアス電力レベルを提供しながら、持続可能なレベルに調整される、請求項に記載の方法。
【請求項14】
極紫外線(EUV)フォトマスク上でルテニウム酸化物を還元するための方法であって、
還元剤ガスとキャリアガスを、EUVフォトマスク処理チャンバ内の大気圧(AP)プラズマ生成器の中に流すこと、
RF電源を使用して前記APプラズマ生成器を用いて前記EUVフォトマスクの上方にプラズマを生成すること
前記還元剤ガスと前記キャリアガスを、前記プラズマの中に及び前記EUVフォトマスクの上面の上に流すこと、並びに
前記EUVフォトマスクを摂氏約100度から摂氏約150度の温度に加熱すること
を含み、
前記還元剤ガスは、ルテニウム(Ru)酸化物層をRu金属に還元するために、Ruキャッピング層上の前記ルテニウム酸化物層と反応する、方法。
【請求項15】
前記APプラズマ生成器内の前記プラズマは、誘電体バリア放電プラズマである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記還元剤ガスは、一酸化炭素ガス、メタンガス、又は水素ガスであり、前記キャリアガスは、アルゴンガス、ヘリウムガス、又は窒素ガスである、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記RF電源は、13.56MHzの周波数で動作する、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
極紫外線(EUV)フォトマスク上のルテニウム(Ru)酸化物を還元するための装置であって、
フォトマスク支持体に取り付けられたフォトマスク支持本体を有するEUVフォトマスク処理チャンバであって、前記フォトマスク支持本体がEUVフォトマスク(存在するときには)を支持する、EUVフォトマスク処理チャンバ、
前記EUVフォトマスク処理チャンバに流体接続された還元剤ガス供給源、
前記EUVフォトマスク(存在するときには)を摂氏約100度から摂氏約150度の範囲に加熱するように構成された前記フォトマスク支持本体内のヒータ電極、
前記EUVフォトマスク処理チャンバの中に入る還元剤ガスを制御する第1のバルブ、
前記EUVフォトマスク処理チャンバから出る廃ガスを制御する第2のバルブ、及び
前記EUVフォトマスク処理チャンバの内側の圧力を調整するために、前記第1のバルブと前記第2のバルブを調節するコントローラを備え、
前記圧力は、ゼロpsiから2500psiまで調整可能であり、前記コントローラによって、前記EUVフォトマスク上のRuキャッピング層上のRu酸化物を還元する還元速度を制御するように調整される、装置。
【請求項19】
極紫外線(EUV)フォトマスク上のルテニウム(Ru)酸化物を還元するための装置であって、
フォトマスク支持体に取り付けられたフォトマスク支持本体を有するEUVフォトマスク処理チャンバであって、前記フォトマスク支持本体がEUVフォトマスク(存在するときには)を支持する、EUVフォトマスク処理チャンバ、
前記EUVフォトマスク処理チャンバに流体接続された還元剤ガス供給源、
前記EUVフォトマスク処理チャンバに流体接続されたキャリアガス供給源
前記EUVフォトマスク処理チャンバに流体接続された遠隔プラズマ生成器、及び
前記EUVフォトマスク(存在するときには)を摂氏約100度から摂氏約150度の範囲に加熱するように構成された、前記フォトマスク支持本体内のヒータ電極を備え、
前記遠隔プラズマ生成器は、プラズマが前記遠隔プラズマ生成器内で生成されるときに、還元剤ガスが前記還元剤ガス供給源から、キャリアガスが前記キャリアガス供給源から、前記遠隔プラズマ生成器を通って流れることを可能にし、その後、前記EUVフォトマスク上のRuキャッピング層上のRu酸化物を還元するために、前記EUVフォトマスク(存在するときには)と相互作用するよう、前記還元剤ガス、前記キャリアガス、及び前記プラズマが、前記EUVフォトマスク処理チャンバの中に流れることを可能にするように構成されている、装置。
【請求項20】
前記遠隔プラズマ生成器内の前記プラズマに印加される電力を調節することによって、又は前記ヒータ電極への電力を調整することによって前記EUVフォトマスク(存在するときには)の温度を調節することによって、前記Ru酸化物の還元速度を調節するコントローラを更に備える、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
極紫外線(EUV)フォトマスク上のルテニウム(Ru)酸化物を還元するための装置であって、
フォトマスク支持体に取り付けられたフォトマスク支持本体を有するEUVフォトマスク処理チャンバであって、前記フォトマスク支持本体がEUVフォトマスク(存在するときには)を支持する、EUVフォトマスク処理チャンバ、
前記EUVフォトマスク処理チャンバに流体接続された還元剤ガス供給源、
前記EUVフォトマスク処理チャンバに流体接続されたキャリアガス供給源
前記EUVフォトマスク処理チャンバ内の大気圧(AP)プラズマ生成器、及び
前記EUVフォトマスク(存在するときには)を摂氏約100度から摂氏約150度の範囲に加熱するように構成された、前記フォトマスク支持本体内のヒータ電極を備え、
前記APプラズマ生成器は、誘電体バリア放電プラズマが、前記EUVフォトマスクの真上に前記APプラズマ生成器によって生成されるときに、還元剤ガスが前記還元剤ガス供給源から、キャリアガスが前記キャリアガス供給源から、前記APプラズマ生成器を通って流れることを可能にし、その後、前記EUVフォトマスク上のRuキャッピング層上のRu酸化物を還元するために、前記還元剤ガスと前記キャリアガスが、前記EUVフォトマスクの上面の上に流れることを可能にするように構成されている、装置。
【請求項22】
前記APプラズマ生成器内の前記誘電体バリア放電プラズマに印加される電力を調整することによって、又は前記ヒータ電極への電力を調整することによって前記EUVフォトマスク(存在するときには)の温度を調節することによって、前記Ru酸化物の還元速度を調節するコントローラを更に備える、請求項21に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本原理の実施形態は、広くは、半導体製造に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] 電子デバイスのサイズを小さくするために、半導体産業では、しばしば、極紫外線(EUV)リソグラフィが使用される。EUV技術の主な欠点は、露光ツールやEUVフォトマスクなどの消耗品に多額の費用がかかることである。EUVには、より長い波長よりも強く吸収される非常に短い波長が含まれる。EUVリソグラフィでは、モリブデンとシリコンの層を交互に複数重ねて光を反射させることによって機能するフォトマスクを使用する。典型的な構成では、EUVフォトマスクが、ブラッグ回折によってEUV光を反射する40個以上の交互層を使用する。複数の交互層を保護するために、ルテニウムの薄いキャッピング層が上に形成される。使用中、フォトレジストはEUV光の吸収によって加熱され、炭化水素、水、及び酸素のガス放出を引き起こす可能性がある。本発明者らは、EUVフォトマスクのルテニウムキャッピング層が、リソグラフィの使用やフォトマスクの製造プロセス中に酸化され、フォトマスクの反射率が低下することを観察した。
【0003】
[0003] したがって、本発明者らは、EUVフォトマスクのルテニウムキャッピング層上に形成される酸化物を還元し、フォトマスクの性能及び寿命を延ばすための方法及び装置を提供した。
【発明の概要】
【0004】
[0004] EUVフォトマスクのルテニウムキャッピング層上の酸化物形成を低減させるための方法及び装置。
【0005】
[0005] 幾つかの実施形態では、極紫外線(EUV)フォトマスク上のルテニウム酸化物を還元する方法が、ルテニウム(Ru)酸化物層を有する上面を有するRuキャッピング層を有するEUVフォトマスクを、摂氏約100度からおよそEUVフォトマスクの熱収支(thermal budget)までの温度に加熱すること、EUVフォトマスク処理チャンバの中に還元剤ガスを流すこと、及び、還元剤ガスとRuキャッピング層上のRu酸化物層との間の還元反応を増加させるために、EUVフォトマスク処理チャンバをプロセス圧力に加圧することを含み得る。
【0006】
[0006] 幾つかの実施形態では、該方法が、プロセス圧力がゼロから約150psiである場合、プロセス圧力がゼロから約1500psiである場合、EUVフォトマスク処理チャンバが円筒形状チャンバであり、プロセス圧力がゼロから約2500psiである場合、プロセス圧力が、EUVフォトマスク処理チャンバの中への還元剤ガス、及びEUVフォトマスク処理チャンバから外への廃ガスの流れを調節することによって得られる場合、還元剤ガスが、一酸化炭素ガス、メタンガス、又は水素ガスであり、還元剤ガスと共にキャリアガスを流す場合、キャリアガスが、高濃度の爆発性還元剤ガスの揮発性を低減させる場合、並びに/又は、EUVフォトマスクの熱収支が、摂氏約150度である場合を更に含み得る。
【0007】
[0007] 幾つかの実施形態では、EUVフォトマスク上のルテニウム酸化物を還元する方法が、還元剤ガスとキャリアガスを遠隔プラズマ生成器の中に流すこと、RF電源を使用して遠隔プラズマ生成器内でプラズマを生成すること、及び遠隔プラズマ生成器からEUVフォトマスク処理チャンバの中にガスを流すことを含み得る。その場合、遠隔プラズマは、EUVフォトマスクの自己バイアスを発生させるために、EUVフォトマスクの上方で生成され、EUVフォトマスク処理チャンバ内のガスは、Ru酸化物層をRu金属に還元するために、Ruキャッピング層上のルテニウム酸化物層と反応する。
【0008】
[0008] 幾つかの実施形態では、該方法が、EUVフォトマスク処理チャンバが減圧下で動作する場合、遠隔プラズマ生成器内のプラズマが誘導結合プラズマである場合、還元剤ガスが一酸化炭素ガス又はメタンガスであり、キャリアガスがアルゴンガス、ヘリウムガス、又は窒素ガスである場合、RF電源が13.56MHzの周波数で動作する場合、還元剤ガスが水素ガスであり、遠隔プラズマが、約5eVの自己バイアス電力レベルを提供しながら、持続可能なレベルに調整され、それによって、Ruキャッピング層の中への原子水素の注入が防止される場合、EUVフォトマスクを摂氏約100度からおよそEUVフォトマスクの熱収支までの温度に加熱する場合、及び/又は、EUVフォトマスクの熱収支が、摂氏約150度である場合を更に含み得る。
【0009】
[0009] 幾つかの実施形態では、EUVフォトマスク上のルテニウム酸化物を還元する方法が、還元剤ガスとキャリアガスを、EUVフォトマスク処理チャンバ内の大気圧(AP)プラズマ生成器の中に流すこと、RF電源を使用してAPプラズマ生成器を用いてEUVフォトマスクの上方にプラズマを生成すること、並びに、還元剤ガスとキャリアガスを、プラズマの中に及びEUVフォトマスクの上面の上に流すことを含み得る。その場合、還元剤ガスは、ルテニウム(Ru)酸化物層をRu金属に還元するために、Ruキャッピング層上のルテニウム酸化物層と反応する。
【0010】
[0010] 幾つかの実施形態では、該方法は、EUVフォトマスクを摂氏約100度からおよそEUVフォトマスクの熱収支までの温度に加熱することを更に含み得る。その場合、EUVフォトマスクの熱収支は、摂氏約150度であり、APプラズマ生成器内のプラズマは、誘電体バリア放電プラズマであり、還元剤ガスは、一酸化炭素ガス、メタンガス、若しくは水素ガスであり、キャリアガスは、アルゴンガス、ヘリウムガス、若しくは窒素ガスであり、及び/又は、RF電源は、13.56MHzの周波数で動作する。
【0011】
[0011] 幾つかの実施形態では、EUVフォトマスク上のルテニウム酸化物を還元するための装置が、フォトマスク支持体に取り付けられたフォトマスク支持本体を有するEUVフォトマスク処理チャンバであって、フォトマスク支持本体がEUVフォトマスク(存在するときには)を支持する、EUVフォトマスク処理チャンバ、EUVフォトマスク処理チャンバに流体接続された還元剤ガス供給源、EUVフォトマスク(存在するときには)を摂氏約100度から摂氏約150度の範囲に加熱するように構成されたフォトマスク支持本体内のヒータ電極、EUVフォトマスク処理チャンバの中に入る還元剤ガスを制御する第1のバルブ、EUVフォトマスク処理チャンバから出る廃ガスを制御する第2のバルブ、及び、EUVフォトマスク処理チャンバの内側の圧力を調整するために、第1のバルブと第2のバルブを調節するコントローラを備え得る。その場合、圧力はゼロpsiから2500psiまで調整可能であり、コントローラによって、EUVフォトマスク上のRuキャッピング層上のRu酸化物を還元する還元速度を制御するように調整される。
【0012】
[0012] 幾つかの実施形態では、EUVフォトマスク上のルテニウム酸化物を還元するための装置が、フォトマスク支持体に取り付けられたフォトマスク支持本体を有するEUVフォトマスク処理チャンバであって、フォトマスク支持本体がEUVフォトマスク(存在するときには)を支持する、EUVフォトマスク処理チャンバ、EUVフォトマスク処理チャンバに流体接続された還元剤ガス供給源、EUVフォトマスク処理チャンバに流体接続されたキャリアガス供給源、及びEUVフォトマスク処理チャンバに流体接続された遠隔プラズマ生成器を備え得る。その場合、遠隔プラズマ生成器は、プラズマが遠隔プラズマ生成器内で生成されるときに、還元剤ガスが還元剤ガス供給源から、キャリアガスがキャリアガス供給源から、遠隔プラズマ生成器を通って流れることを可能にし、その後、EUVフォトマスク上のRuキャッピング層上のRu酸化物を還元するために、EUVフォトマスク(存在するときには)と相互作用するよう、還元剤ガス、キャリアガス、及びプラズマが、EUVフォトマスク処理チャンバの中に流れることを可能にするように構成されている。
【0013】
[0013] 幾つかの実施形態では、装置が、Ru酸化物の還元速度を改良するために、EUVフォトマスク(存在するときには)を摂氏約100度から摂氏約150度の範囲に加熱するように構成されたフォトマスク支持本体内のヒータ電極と、遠隔プラズマ生成器内のプラズマに印加される電力を調節することによって、又はヒータ電極への電力を調整することによってEUVフォトマスク(存在するときには)の温度を調節することによって、Ru酸化物の還元速度を調節するコントローラとを更に含み得る。
【0014】
[0014] 幾つかの実施形態では、EUVフォトマスク上のルテニウム酸化物を還元するための装置が、フォトマスク支持体に取り付けられたフォトマスク支持本体を有するEUVフォトマスク処理チャンバであって、フォトマスク支持本体がEUVフォトマスク(存在するときには)を支持する、EUVフォトマスク処理チャンバ、EUVフォトマスク処理チャンバに流体接続された還元剤ガス供給源、EUVフォトマスク処理チャンバに流体接続されたキャリアガス供給源、及びEUVフォトマスク処理チャンバ内の大気圧(AP)プラズマ生成器を備え得る。その場合、APプラズマ生成器は、誘電体バリア放電プラズマが、EUVフォトマスクの真上にAPプラズマ生成器によって生成されるときに、還元剤ガスが還元剤ガス供給源から、キャリアガスがキャリアガス供給源から、APプラズマ生成器を通って流れることを可能にし、その後、EUVフォトマスク上のRuキャッピング層上のRu酸化物を還元するために、還元剤ガスとキャリアガスがEUVフォトマスクの上面の上に流れることを可能にするように構成されている。
【0015】
[0015] 幾つかの実施形態では、該装置が、Ru酸化物の還元速度を改良するために、EUVフォトマスク(存在するときには)を摂氏約100度から摂氏約150度の範囲に加熱するように構成されたフォトマスク支持本体内のヒータ電極、及び/又は、コントローラであって、APプラズマ生成器内の誘電体バリア放電プラズマに印加される電力を調節することによって、又はヒータ電極への電力を調整することによってEUVフォトマスク(存在するときには)の温度を調節することによって、Ru酸化物の還元速度を調節するコントローラを含み得る。
【0016】
[0016] 他の更なる実施形態が、以下で説明される。
【0017】
[0017] 上記で簡潔に要約されており、かつ以下で詳述する本原理の実施形態は、付随する図面に示している本原理の例示的な実施形態を参照することにより理解されうる。しかし、本原理は他の等しく有効な実施形態を許容し得ることから、付随する図面は、本原理の典型的な実施形態のみを例示しており、故に、範囲を限定するものと見なすべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】[0018] 本原理の幾つかの実施形態による、EUVフォトマスクの上面図及び断面図を示す。
図2】[0019] 本原理の幾つかの実施形態による、Ru酸化物の還元の方法である。
図3】[0020] 本原理の幾つかの実施形態による、フォトマスク処理チャンバの断面図を描く。
図4】[0021] 本原理の幾つかの実施形態による、Ru酸化物の還元の方法である。
図5】[0022] 本原理の幾つかの実施形態による、フォトマスク処理チャンバの断面図を示す。
図6】[0023] 本原理の幾つか実施形態による、Ru酸化物の還元の方法である。
図7】[0024] 本原理の幾つかの実施形態による、フォトマスク処理チャンバの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[0025] 理解を容易にするために、可能な場合には、図に共通する同一の要素を指し示すのに同一の参照番号を使用した。図は縮尺どおりではなく、分かりやすくするために簡略化されていることがある。一実施形態の要素及び特徴は、更なる記述がなくとも、その他の実施形態に有益に組み込まれてよい。
【0020】
[0026] 本方法及び装置は、極紫外線(EUV)リソグラフィにおいて使用されるEUVフォトマスクの寿命及び性能の延長を可能にする。EUVフォトマスクのルテニウム(Ru)キャッピング層上の酸化物を還元することによって、フォトマスクの反射率が向上し、Ruキャッピング層の抵抗率が低下するため、EUVフォトマスクの性能が安定し、寿命が延びる。ルテニウム酸化物は、露光ツールにおけるEUV吸収中又はEUVフォトマスク製造中に加熱されたフォトレジスト材料から水や酸素がガス放出することによって形成されることがある。EUVフォトマスクは非常に高価であり、ルテニウムキャッピング層は使用中に損傷しやすいため、フォトマスクの寿命を延ばすことでEUV関連製造の総費用を劇的に削減できる可能性がある。Ru酸化物からRu金属への還元反応は、活性化エネルギーを克服するために高温を必要とするので、EUVフォトマスク上では困難である。しかし、EUVフォトマスクの熱収支は摂氏約150度である。本発明者らは、水素によるRu酸化物の還元が室温以上で自発的に起こることを見出したが、反応速度論的に、水素を使用するのは水素の使用を実用化するのに遅すぎるし、場合によっては水素がRuキャッピング層を損傷する可能性もある。本発明者らは、特定の還元剤ガス、圧力、及び温度を使用することにより、必要な運動エネルギーを提供し、フォトマスクの熱収支を維持しながら、商業環境での使用を可能にするのに十分な時間効率で、EUVフォトマスク上のRu酸化物の還元を可能にする幾つかの技法を発見した。
【0021】
[0027] 図1のトップダウンビュー100Aでは、代表的なEUVフォトマスク114が示されている。単純化された例として、限定を意味するものではないが、EUVフォトマスク114は、EUV露光ツール(図示せず)においてEUV光によって露光される正方形/矩形118のクロスハッチパターン120を有する。ビュー100Bでは、EUVフォトマスク114の一部分の断面図が示されている。例えば、基板102は、ブラッグ反射器112を形成するために、基板102上に堆積された交互のシリコン層104とモリブデン層106とを有する。シリコン層104は、スペーサ層として機能し、モリブデン層106は、吸収層として機能する。モリブデン以外の材料も、同様に使用されてよい。モリブデンは酸化されやすいため、ブラッグ反射器112を保護するためにRuキャッピング層108が使用される。Ruキャッピング層108は、厚さが約2nmから3nmであってよい。図1の一実施例では、Ruキャッピング層108の上面にRu酸化物層110が形成されている(例えば、露光ツール使用中など)。Ru酸化物層110は、EUV光の吸収体となり、ブラッグ反射器112の反射率を低下させる。Ru酸化物層110の還元は、反射率性能を回復させ、EUVフォトマスク114の寿命も向上させることになる。
【0022】
[0028] 図2では、Ru酸化物還元の方法200が、図3の断面図300における装置を使用して説明される。ブロック202では、EUVフォトマスク114が、摂氏約100度から摂氏約150度の温度に加熱される。温度範囲の上限は、EUVフォトマスク114の熱収支によって制限される。EUVフォトマスク114の熱収支が摂氏150度よりも高い場合、温度範囲はより高い熱収支まで拡張され得る。温度が高ければ高いほど、より多くの運動エネルギーが供給され、Ru酸化物の還元速度が高くなり、より高いスループット(処理時間の短縮)が可能になる。温度範囲の下限は、還元反応を開始し維持するための最小運動エネルギーを提供するのに必要な最低温度によって制御される。本発明者らは、Ru酸化物還元の活性化のための運動エネルギーを提供するには、摂氏約100度で十分であることを見出した。幾つかの実施形態では、EUVフォトマスク114が、フォトマスク処理チャンバ302内のフォトマスク支持体304のフォトマスク支持本体306内に埋め込まれたヒータ電極310によって加熱されてよい。ヒータ電極310は、AC電源308によって電気的に加熱されてよい。
【0023】
[0029] ブロック204では、還元剤ガス316(酸化物還元剤)及び必要であれば任意選択的なキャリアガス318が、フォトマスク処理チャンバ302の中へ、EUVフォトマスク114にわたり共に流される320。廃ガスが、フォトマスク処理チャンバ302にガスが入るのとは反対側で、フォトマスク処理チャンバ302から流出する322。任意選択的なキャリアガス318は、アルゴン、ヘリウム、又は窒素などといった不活性ガスであってよいが、これらには限定されない。幾つかの実施形態では、本発明者らが、還元剤ガス316が一酸化炭素(CO)、メタン(CH4)、又は水素(H2)ガスであってもよいことを見出した。任意選択的なキャリアガス318は、COとCH4の場合は不要であるが、高濃度のH2による爆発の可能性を防止するために、H2が使用されるときには必要である。幾つかの実施形態では、他の還元剤が使用されてもよい。還元剤ガス316は、Ruキャッピング層108の上面からRu酸化物及び四酸化物をRu金属に還元する。酸化物が、二酸化炭素を生成するように酸素原子と一酸化炭素ガスが結合する温度まで加熱されたときに、COガスはRu酸化物と反応し、Ru酸化物をRu金属に還元する。CH4ガスはRu酸化物と反応して二酸化炭素ガスを生成し、加熱されたRu酸化物は酸素供与体として働き、Ru酸化物をRu金属に還元する。H2ガスはRu酸化物と反応して水(H20)を生成し、加熱されたRu酸化物は酸素供与体として働き、Ru酸化物をRu金属に還元する。
【0024】
[0030] ブロック206では、フォトマスク処理チャンバ302の圧力を調整することによって、還元の速度が調整される。圧力は、ガス入口流量を調整する第1のバルブ312を調整し、ガス出口流量を調整する第2のバルブ314を調整することによって制御される。入口流量が高く、出口流量が低いと、フォトマスク処理チャンバ302内の圧力が上昇し、それに応じて圧力を調整することができる。幾つかの実施形態では、圧力がゼロから約150psiまで調整される。この上限は、フォトマスク処理チャンバ302を安全に使用することに基づいており、適切なチャンバ設計により、還元速度を更に高めるために、より高く調整することができる。幾つかの実施形態では、圧力がゼロから約1500psiまで調整されてよい。幾つかの実施形態では、円筒型の圧力チャンバがフォトマスク処理チャンバ302用に使用される場合、圧力はゼロから2500psiまで調整されてよい。
【0025】
[0031] コントローラ324は、直接制御を使用して、又は代替的にフォトマスク処理チャンバ302に関連付けられたコンピュータ(又はコントローラ)を制御することによって、フォトマスク処理チャンバ302の動作を制御する。動作では、コントローラ324が、システムからのデータ収集及びフィードバックを可能にして、フォトマスク処理チャンバ302の性能を最適化する。例えば、コントローラ324は、EUVフォトマスクの加熱、還元剤ガスと任意選択的なキャリアガスの濃度及び流量、並びに、フォトマスク処理チャンバ302内の圧力を制御及び調整するためのバルブ作動などを制御してよい。コントローラ324は、概して、中央処理装置(CPU)326、メモリ328、及びサポート回路330を含む。CPU326は、工業設定で使用され得る汎用コンピュータプロセッサの任意の形態であってよい。サポート回路330は、従来、CPU326に結合され、キャッシュ、クロック回路、入出力サブシステム、電力供給源などを備えてよい。上述された方法などのソフトウェアルーチンは、メモリ328内に記憶されてよく、CPU326によって実行されたときに、CPU326を専用コンピュータ(コントローラ324)に変換してよい。ソフトウェアルーチンはまた、フォトマスク処理チャンバ302から遠隔に位置付けられた第2のコントローラ(図示せず)によって記憶及び/又は実行されてもよい。
【0026】
[0032] メモリ328は、指示命令を含むコンピュータ可読ストレージ媒体の形態を採り、該指示命令は、CPU326によって実行されると、半導体プロセス及び装備の動作を促進する。メモリ328内の指示命令は、本原理の方法を実装するプログラムなどのプログラム製品の形態を採る。プログラムコードは、幾つかの異なるプログラミング言語のうちのいずれか1つに適合してよい。一実施例では、本開示が、コンピュータシステムと共に使用されるコンピュータ可読ストレージ媒体に記憶されたプログラム製品として実装されてよい。プログラム製品の(1以上の)プログラムは、複数の態様(本明細書で説明される方法を含む)の機能を規定する。例示的なコンピュータ可読記憶媒体には、情報が永久的に記憶される書込み不能な記憶媒体(例えば、CD-ROMドライブ、フラッシュメモリ、ROMチップ、又は任意の種類のソリッドステート不揮発性半導体メモリによって読み出し可能なCD-ROMディスクなどのコンピュータ内の読出し専用メモリデバイス)、及び変更可能な情報が記憶される書き込み可能な記憶媒体(例えば、ディスケットドライブ若しくはハードディスクドライブ内のフロッピーディスク又は任意の種類のソリッドステートランダムアクセス半導体メモリ)が含まれるが、これらに限定されない。本明細書で説明される方法の機能を指示するコンピュータ可読指示命令を運ぶときには、このようなコンピュータ可読ストレージ媒体が、本原理の態様となる。
【0027】
[0033] 図4では、Ru酸化物還元の方法400が、図5の断面図500における装置を使用して説明される。ブロック402では、EUVフォトマスク114が、任意選択的に、摂氏約100度から摂氏約150度の温度に加熱される。温度範囲の上限は、EUVフォトマスク114の熱収支によって制限される。EUVフォトマスク114の熱収支が摂氏150度よりも高い場合、温度範囲はより高い熱収支まで拡張され得る。温度が高ければ高いほど、より多くの運動エネルギーが供給され、Ru酸化物の還元速度が高くなり、より高いスループットが可能になる。温度範囲の下限は、還元反応を開始し維持するための最小運動エネルギーを提供するのに必要な最低温度によって制御される。本発明者らは、Ru酸化物の還元を活性化するための運動エネルギーを提供するのに、摂氏約100度は十分であることを見出した。幾つかの実施形態では、EUVフォトマスク114が、フォトマスク処理チャンバ502内のフォトマスク支持体504のフォトマスク支持本体506内に埋め込まれた任意選択的なヒータ電極510によって加熱されてよい。任意選択的なヒータ電極510は、AC電源508によって電気的に加熱されてよい。任意選択的なヒータ電極510を使用するか否かは、Ru酸化物の還元速度に依存する。プラズマ出力によって還元速度が十分に高いときに、任意選択的なヒータ電極510は必要ない。
【0028】
[0034] ブロック404では、還元剤ガス516とキャリアガス518が、遠隔プラズマ生成器532の中に共に流される520。ブロック406では、プラズマが遠隔プラズマ生成器532によって生成される。遠隔プラズマ生成器532は、プラズマパイプ534内の遠隔プラズマ生成器532内で誘導結合プラズマ又はトロイダルプラズマ(toroidal plasma)を生成するための1以上のコイル540を有する。プラズマ電源542は、プラズマ536を生成するために、遠隔プラズマ生成器532にRF電力を供給する。幾つかの実施形態では、RF電力が13.56MHzの周波数で動作する。RF電力が高いほど、プラズマ536内により多くのエネルギーが提供され、その後、フォトマスク処理チャンバ502内で生じる酸化物還元に、より多くのエネルギーが提供される。RF電力が高すぎる場合、生成された熱がEUVフォトマスク114の熱収支を超える可能性があり、及び/又はEUVフォトマスク114にアーク放電損傷を引き起こす可能性がある。
【0029】
[0035] ブロック408では、Ru酸化物と反応して、Ru酸化物をRu金属に還元するために、還元剤ガス及びキャリアガスが、フォトマスク処理チャンバの中に流れる。還元剤ガス516は、プラズマ536内で解離し、還元剤ガス516及びキャリアガス518と共にプラズマパイプ534を通ってフォトマスク処理チャンバ502の中に流れるイオン又は中性子を生成してよい。遠隔プラズマ538が、フォトマスク処理チャンバ502内に存在するが、典型的には、遠隔プラズマ生成器532内で生成されるプラズマ536よりもはるかに弱い。遠隔プラズマ538は、EUVフォトマスク114に自己バイアスを誘起し、Ru酸化物からRu金属への還元を助ける。EUVフォトマスク114の自己バイアスにより、EUVフォトマスク114のRu酸化物の上面にイオン及び/又は中性子が衝突する。衝突は弱くてもよいが、衝突はRu酸化物の還元を促進するのに十分であり、還元速度の増加を支援し、Ru酸化物の層を徐々に除去する。フォトマスク処理チャンバ502は、処理中に減圧下に保持される。次いで、廃ガスが、フォトマスク処理チャンバ502から流出する522。
【0030】
[0036] 任意選択的なキャリアガス518は、アルゴン、ヘリウム、又は窒素などといった不活性ガスであってよいが、これらに限定されない。幾つかの実施形態では、本発明者らが、還元剤ガス516が一酸化炭素(CO)、メタン(CH4)、又は水素(H2)ガスであってもよいことを見出した。幾つかの実施形態では、他の還元剤が使用されてもよい。酸化物が、二酸化炭素を生成するように酸素原子と一酸化炭素ガスが結合する温度まで加熱されたときに、COガスはRu酸化物と反応し、Ru酸化物をRu金属に還元する。CH4ガスはRu酸化物と反応して二酸化炭素ガスを生成し、加熱されたRu酸化物は酸素供与体として働き、Ru酸化物をRu金属に還元する。H2ガスはRu酸化物と反応して水(H20)を生成し、加熱されたRu酸化物は酸素供与体として働き、Ru酸化物をRu金属に還元する。本発明者らは、還元剤ガスがH2であるときに、H2はプラズマ536によって原子状水素(H)に解離することを見出した。次いで、原子状水素は、EUVフォトマスク114に衝突することになり、特定の条件下ではRuキャッピング層の中にHを注入し、損傷を引き起こす可能性がある。原子状水素は剥離を引き起こすことも知られており、Ruキャッピング層を剥離させる可能性がある。本発明者らは、水素ガスを使用するには、処理環境を注意深く制御する必要があることを発見した。幾つかの実施形態では、遠隔プラズマを使用して実現される自己バイアス電力は、概して、約10電子ボルト(eV)から約20eVである。自己バイアス電力を5eV未満に制御できるようにプラズマを調整すれば、原子状水素の注入を防止することができる。しかし、本発明者らは、自己バイアス電力が5eV以下ではプラズマが不安定になり、持続性がないことを発見した。5eVに近いがそれより上になるように厳密に制御及び監視することで、Ruキャッピング層への水素注入を起こすことなく持続可能なプラズマが得られる可能性があり、幾つか条件下では水素の使用が可能になる。
【0031】
[0037] コントローラ524は、直接制御を使用して、又は代替的にフォトマスク処理チャンバ502に関連付けられたコンピュータ(又はコントローラ)を制御することによって、フォトマスク処理チャンバ502の動作を制御する。動作では、コントローラ524が、システムからのデータ収集及びフィードバックを可能にし、フォトマスク処理チャンバ502の性能を最適化する。例えば、コントローラ524は、EUVフォトマスクの加熱、還元剤ガスと任意選択的なキャリアガスの濃度及び流量、プラズマ出力及びその後の自己バイアス電力などを制御してよい。コントローラ524は、概して、中央処理装置(CPU)526、メモリ528、及びサポート回路530を含む。CPU526は、工業設定で使用され得る汎用コンピュータプロセッサの任意の形態であってよい。サポート回路530は、従来、CPU526に結合され、キャッシュ、クロック回路、入出力サブシステム、電力供給源などを備えてよい。上述された方法などのソフトウェアルーチンは、メモリ528内に記憶されてよく、CPU526によって実行されたときに、CPU526を専用コンピュータ(コントローラ524)に変換してよい。ソフトウェアルーチンはまた、フォトマスク処理チャンバ502から遠隔に位置付けられた第2のコントローラ(図示せず)によって記憶及び/又は実行されてもよい。
【0032】
[0038] メモリ528は、指示命令を含むコンピュータ可読ストレージ媒体の形態を採り、該指示命令は、CPU526によって実行されると、半導体プロセス及び装備の動作を促進する。メモリ528内の指示命令は、本原理の方法を実装するプログラムなどのプログラム製品の形態を採る。プログラムコードは、幾つかの異なるプログラミング言語のうちのいずれか1つに適合してよい。一実施例では、本開示が、コンピュータシステムと共に使用されるコンピュータ可読ストレージ媒体に記憶されたプログラム製品として実装されてよい。プログラム製品の(1以上の)プログラムは、複数の態様(本明細書で説明される方法を含む)の機能を規定する。例示的なコンピュータ可読記憶媒体には、情報が永久的に記憶される書込み不能な記憶媒体(例えば、CD-ROMドライブ、フラッシュメモリ、ROMチップ、又は任意の種類のソリッドステート不揮発性半導体メモリによって読み出し可能なCD-ROMディスクなどのコンピュータ内の読出し専用メモリデバイス)、及び変更可能な情報が記憶される書き込み可能な記憶媒体(例えば、ディスケットドライブ若しくはハードディスクドライブ内のフロッピーディスク又は任意の種類のソリッドステートランダムアクセス半導体メモリ)が含まれるが、これらに限定されない。本明細書で説明される方法の機能を指示するコンピュータ可読指示命令を運ぶときには、このようなコンピュータ可読ストレージ媒体が、本原理の態様となる。
【0033】
[0039] 図6では、Ru酸化物還元の方法600が、図7の断面図700における装置を使用して説明される。ブロック602では、EUVフォトマスク114が、任意選択的に、摂氏約100度から摂氏約150度の温度に加熱される。温度範囲の上限は、EUVフォトマスク114の熱収支によって制限される。EUVフォトマスク114の熱収支が摂氏150度よりも高い場合、温度範囲はより高い熱収支まで拡張され得る。温度が高ければ高いほど、より多くの運動エネルギーが供給され、Ru酸化物の還元速度が高くなり、より高いスループットが可能になる。温度範囲の下限は、還元反応を開始し維持するための最小運動エネルギーを提供するのに必要な最低温度によって制御される。本発明者らは、Ru酸化物還元のための運動エネルギーを提供するのに、摂氏約100度は十分に高いことを見出した。幾つかの実施形態では、EUVフォトマスク114が、フォトマスク処理チャンバ702内のフォトマスク支持体704のフォトマスク支持本体706内に埋め込まれたヒータ電極710によって加熱されてよい。ヒータ電極710は、AC電源708によって電気的に加熱されてよい。任意選択的なヒータ電極710を使用するか否かは、Ru酸化物の還元速度に依存する。プラズマ出力によって還元速度が十分に高いときに、任意選択的なヒータ電極710は必要ない。
【0034】
[0040] ブロック604では、還元剤ガス716とキャリアガス718が、EUVフォトマスクの上面758に近接する大気圧(AP)プラズマ生成器750を介して、フォトマスク処理チャンバ702の中に矢印720と共に流される。ブロック606では、誘電体バリア放電(DBD)プラズマ754が、APプラズマ生成器750によって生成され、Ru酸化物をRu金属に還元する。プラズマ電源756は、DBDプラズマ754を生成するために、APプラズマ生成器750にRF電力を供給する。幾つかの実施形態では、RF電力が13.56MHzの周波数で動作する。RF電力が高いほど、DBDプラズマ754内により多くのエネルギーが提供され、Ru酸化物により多くのエネルギーを提供することができる。RF電力が高すぎる場合、APプラズマ生成器750が、EUVフォトマスク114の上面758に近接するため、生成された熱が、EUVフォトマスク114の熱収支を超える可能性があり、及び/又はEUVフォトマスク114にアーク放電損傷を引き起こす可能性がある。次いで、廃ガスが、フォトマスク処理チャンバ702から矢印722のように流出する。キャリアガス718は、アルゴン、ヘリウム、又は窒素などといった不活性ガスであってよいが、これらに限定されない。幾つかの実施形態では、本発明者らが、還元剤ガス716が一酸化炭素(CO)、メタン(CH4)、又は水素(H2)ガスであってもよいことを見出した。幾つかの実施形態では、他の還元剤が使用されてもよい。酸化物が、二酸化炭素を生成するように酸素原子と一酸化炭素ガスが結合する温度まで加熱されたときに、COガスはRu酸化物と反応し、Ru酸化物をRu金属に還元する。CH4ガスはRu酸化物と反応して二酸化炭素ガスを生成し、加熱されたRu酸化物は酸素供与体として働き、Ru酸化物をRu金属に還元する。H2ガスはRu酸化物と反応して水(H20)を生成し、加熱されたRu酸化物は酸素供与体として働き、Ru酸化物をRu金属に還元する。APプラズマガスは、遠隔減圧プラズマよりも平均自由行程がはるかに小さいため、H2注入なしでの衝突は低いが、衝突エネルギーは還元剤によるRu酸化物の還元を促進するのに十分高い。
【0035】
[0041] コントローラ724は、直接制御を使用して、又は代替的にフォトマスク処理チャンバ702に関連付けられたコンピュータ(又はコントローラ)を制御することによって、フォトマスク処理チャンバ702の動作を制御する。動作では、コントローラ724が、システムからのデータ収集及びフィードバックを可能にし、フォトマスク処理チャンバ702の性能を最適化する。例えば、コントローラ324は、EUVフォトマスクの加熱、還元剤ガスと任意選択的なキャリアガスの濃度及び流量、プラズマを生成するために供給されるRF電力などを制御してよい。コントローラ724は、概して、中央処理装置(CPU)726、メモリ728、及びサポート回路730を含む。CPU726は、工業設定で使用され得る汎用コンピュータプロセッサの任意の形態であってよい。サポート回路730は、従来、CPU726に結合され、キャッシュ、クロック回路、入出力サブシステム、電力供給源などを備えてよい。上述された方法などのソフトウェアルーチンは、メモリ728内に記憶されてよく、CPU726によって実行されたときに、CPU726を専用コンピュータ(コントローラ724)に変換してよい。ソフトウェアルーチンはまた、フォトマスク処理チャンバ702から遠隔に位置付けられた第2のコントローラ(図示せず)によって記憶及び/又は実行されてもよい。
【0036】
[0042] メモリ728は、指示命令を含むコンピュータ可読ストレージ媒体の形態を採り、該指示命令は、CPU726によって実行されると、半導体プロセス及び装備の動作を促進する。メモリ728内の指示命令は、本原理の方法を実装するプログラムなどのプログラム製品の形態を採る。プログラムコードは、幾つかの異なるプログラミング言語のうちのいずれか1つに適合してよい。一実施例では、本開示が、コンピュータシステムと共に使用されるコンピュータ可読ストレージ媒体に記憶されたプログラム製品として実装されてよい。プログラム製品の(1以上の)プログラムは、複数の態様(本明細書で説明される方法を含む)の機能を規定する。例示的なコンピュータ可読記憶媒体には、情報が永久的に記憶される書込み不能な記憶媒体(例えば、CD-ROMドライブ、フラッシュメモリ、ROMチップ、又は任意の種類のソリッドステート不揮発性半導体メモリによって読み出し可能なCD-ROMディスクなどのコンピュータ内の読出し専用メモリデバイス)、及び変更可能な情報が記憶される書き込み可能な記憶媒体(例えば、ディスケットドライブ若しくはハードディスクドライブ内のフロッピーディスク又は任意の種類のソリッドステートランダムアクセス半導体メモリ)が含まれるが、これらに限定されない。本明細書で説明される方法の機能を指示するコンピュータ可読指示命令を運ぶときには、このようなコンピュータ可読ストレージ媒体が、本原理の態様となる。
【0037】
[0043] 本原理による複数の実施形態は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又はそれらの任意の組み合わせで実装されてよい。また、複数の実施形態は、1以上のコンピュータ可読媒体を用いて記憶された指示命令として実装されてよく、該指示命令は、1以上のプロセッサによって読み取られ、実行されてよい。コンピュータ可読媒体は、マシン(例えば、コンピューティングプラットフォーム、又は1以上のコンピューティングプラットフォーム上で実行される「仮想マシン」)によって読み取り可能な形態で情報を記憶又は送信するための任意の機構を含んでよい。例えば、コンピュータ可読媒体は、任意の適切な形態の揮発性又は不揮発性メモリを含んでよい。幾つかの実施形態では、コンピュータ可読媒体は、非一時的なコンピュータ可読媒体を含んでよい。
【0038】
[0044]上記は本原理の実施形態を対象としているが、本原理の基本的な範囲から逸脱しなければ、本原理の他の実施形態及び更なる実施形態が考案され得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7