(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】非焼成塊成鉱、非焼成塊成鉱の製造方法および非焼成塊成鉱を用いた製鉄方法
(51)【国際特許分類】
C22B 1/243 20060101AFI20241108BHJP
【FI】
C22B1/243
(21)【出願番号】P 2020132567
(22)【出願日】2020-08-04
【審査請求日】2023-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100136777
【氏名又は名称】山田 純子
(72)【発明者】
【氏名】秋山 友宏
(72)【発明者】
【氏名】能村 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】趙 一雄
(72)【発明者】
【氏名】アデ クルニアワン
(72)【発明者】
【氏名】阿部 圭佑
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104263919(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104263918(CN,A)
【文献】特開平03-006334(JP,A)
【文献】実開昭52-115601(JP,U)
【文献】特開昭62-020835(JP,A)
【文献】特開2007-270260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00 - 61/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化鉄含有物質と、常温で固体であ
って、化学式:R
1
-NH-CO-NH-R
2
(NH基と結合するR
1
、R
2
は、水素、炭素数が1~5の鎖式炭化水素基、炭素数が3~5の脂環式炭化水素基、または炭素数が6~9の芳香族炭化水素基であって、R
1
とR
2
は同一であってもよいし、異なっていてもよい。)で示される尿素結合含有化合物とを含
み、前記尿素結合含有化合物と前記酸化鉄含有物質の質量比は、1:1~1:24の範囲内である、非焼成塊成鉱。
【請求項2】
前記尿素結合含有化合物は尿素である、請求項1に記載の非焼成塊成鉱。
【請求項3】
前記酸化鉄含有物質は断片状であり、かつその円相当粒径は1.0mm以下である、請求項1または2に記載の非焼成塊成鉱。
【請求項4】
前記尿素結合含有化合物の割合は、非焼成塊成鉱の断面積に占める割合で20~65面積%である、請求項1~3のいずれかに記載の非焼成塊成鉱。
【請求項5】
非焼成塊成鉱の断面の任意の観察視野0.4mm×0.5mmを、走査型電子顕微鏡を用いて倍率200倍で撮影して得られたEDS元素マッピングにおいて、任意に0.4mm以上の測定直線を描いた際に、前記測定直線が、前記尿素結合含有化合物と重複している箇所が、5箇所以上存在する、請求項1~
4のいずれかに記載の非焼成塊成鉱。
【請求項6】
前記酸化鉄含有物質は、Fe
2O
3の含有量が50質量%以上である、請求項1~
5のいずれかに記載の非焼成塊成鉱。
【請求項7】
非焼成塊成鉱の断面積に占める空隙の割合は、5面積%以下である、請求項1~
6のいずれかに記載の非焼成塊成鉱。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれかに記載の非焼成塊成鉱の製造方法であって、
酸化鉄含有物質を含む酸化鉄含有物質原料と
、化学式:R
1
-NH-CO-NH-R
2
(NH基と結合するR
1
、R
2
は、水素、炭素数が1~5の鎖式炭化水素基、炭素数が3~5の脂環式炭化水素基、または炭素数が6~9の芳香族炭化水素基であって、R
1
とR
2
は同一であってもよいし、異なっていてもよい。)で示される尿素結合含有化合物を含む尿素結合含有化合物原料を含む原料組成物を
、前記尿素結合含有化合物と前記酸化鉄含有物質の質量比が、1:1~1:24の範囲内となるように混合して混合物を得る混合工程、および
前記混合物を圧縮して塊状に成型する圧縮成型工程
を含む、非焼成塊成鉱の製造方法。
【請求項9】
前記圧縮成型工程において、40MPa以下の圧力で圧縮する、請求項
8に記載の非焼成塊成鉱の製造方法。
【請求項10】
前記圧縮成型工程において、前記圧縮は60分間以下行う、請求項
8または
9に記載の非焼成塊成鉱の製造方法。
【請求項11】
前記混合工程よりも後であって前記圧縮成型工程の終了前に、前記混合物を加熱する、請求項
8~
10のいずれかに記載の非焼成塊成鉱の製造方法。
【請求項12】
前記加熱の温度を、50℃以上、120℃未満とする、請求項
11に記載の
非焼成塊成鉱の製造方法。
【請求項13】
前記圧縮成型工程において、前記混合物を加熱しながら圧縮する、請求項
11または
12に記載の非焼成塊成鉱の製造方法。
【請求項14】
前記酸化鉄含有物質原料は、ふるい下の粒度が1mm未満の粉末である、請求項
8~
13のいずれかに記載の非焼成塊成鉱の製造方法。
【請求項15】
前記尿素結合含有化合物原料は、ふるい下の粒度が1mm未満の粉末である、請求項
8~
14のいずれかに記載の非焼成塊成鉱の製造方法。
【請求項16】
請求項1~
7のいずれかに記載の非焼成塊成鉱を用いた製鉄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非焼成塊成鉱、非焼成塊成鉱の製造方法および非焼成塊成鉱を用いた製鉄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄法として主流を占めているのは高炉を用いた製鉄方法である。高炉を用いた製鉄方法では、高炉へ装入する鉄源として、塊鉱石を用いる他、主原料の鉄鉱石粉とその他の副原料を混合し、焼成または非焼成により得られる塊成鉱が用いられる。該塊成鉱には、取扱容易性、すなわち高炉へ輸送しやすく、かつ高炉内において、コークス等と交互に堆積させたときに、高炉内気流を確保できるだけの隙間を確保できる、つまり上記堆積に耐え得る高い強度を有していることが求められる。
【0003】
例えば特許文献1には、高炉用鉱石原料の製造方法として、焼結鉱の製造に際して発生する5mm以下の焼結粉を含み、この焼結粉に少なくとも有機バインダーを含む結合材を加えて混練したのち成形し、その後、予備養生と蒸気養生との2段階にわたる養生処理を行って非焼成塊成鉱とする技術が示されている。
【0004】
また特許文献2には、焼結原料に、該焼結原料を塊状にして強度を持たせるためのバインダーを添加して造粒または成形し、焼成する高炉用原料の焼結鉱の製造方法であって、前記バインダーとして、水溶性フェノール樹脂、水ガラス、ポリイミド、ポリシロキサン、コロイダルシリカの少なくとも1種を、前記焼結原料100質量部に対し、2~12質量部添加して、前記焼結原料と混合・攪拌した後、造粒または成形することを特徴とする高炉用原料の焼結鉱の製造方法が示されている。
【0005】
さらに特許文献3には、反応器内に製鉄原料とアンモニアとを供給し、還元反応させることにより鉄を製造する製鉄方法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-030113号公報
【文献】特開2011-047006号公報
【文献】特開2011-179089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、少なくとも有機バインダーを用いているが、該有機バインダーを用いた場合、高強度を確保することが難しいと考えられる。また特許文献2においても、バインダーとして、水溶性フェノール樹脂、水ガラス、ポリイミド、ポリシロキサン、コロイダルシリカの少なくとも1種を用いているが、この場合も強度確保が難しいと考えられる。
【0008】
更に、高炉による製鉄技術は効率的であると考えられているが、石炭を多量に用いるため、地球温暖化の原因の一つであるCO2の排出量が多いこと、また上記石炭が不足しているといった問題がある。従来の塊成鉱では、石炭またはこれを原料とする炭剤が還元剤として含まれているが、該石炭の使用を極力低減することが求められている。炭剤の使用を抑制する観点から、特許文献3の技術が提案されている。ただし作業環境性の観点から、別の手段を検討することが求められている。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、高強度を示し、かつ石炭の使用が抑制でき、結果としてCO2発生や粉じん発生の抑制に寄与し、更には作業環境性にも優れた非焼成塊成鉱と、該非焼成塊成鉱の製造方法と、該非焼成塊成鉱を用いた製鉄方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の態様1は、酸化鉄含有物質と、常温で固体である尿素結合含有化合物とを含む、非焼成塊成鉱である。
【0011】
本発明の態様2は、前記尿素結合含有化合物が尿素である、態様1に記載の非焼成塊成鉱である。
【0012】
本発明の態様3は、前記酸化鉄含有物質が断片状であり、かつその円相当粒径は1.0mm以下である、態様1または2に記載の非焼成塊成鉱である。
【0013】
本発明の態様4は、前記尿素結合含有化合物の割合が、非焼成塊成鉱の断面積に占める割合で20~65面積%である、態様1~3のいずれかに記載の非焼成塊成鉱である。
【0014】
本発明の態様5は、前記尿素結合含有化合物と前記酸化鉄含有物質の質量比が、1:1~1:24の範囲内である、態様1~4のいずれかに記載の非焼成塊成鉱である。
【0015】
本発明の態様6は、非焼成塊成鉱の断面の任意の観察視野0.4mm×0.5mmを、走査型電子顕微鏡を用いて倍率200倍で撮影して得られたEDS元素マッピングにおいて、任意に0.4mm以上の測定直線を描いた際に、前記測定直線が、前記尿素結合含有化合物と重複している箇所が、5箇所以上存在する、態様1~5のいずれかに記載の非焼成塊成鉱である。
【0016】
本発明の態様7は、前記酸化鉄含有物質が、Fe2O3の含有量が50質量%以上である、態様1~6のいずれかに記載の非焼成塊成鉱である。
【0017】
本発明の態様8は、非焼成塊成鉱の断面積に占める空隙の割合が、5面積%以下である、態様1~7のいずれかに記載の非焼成塊成鉱。
【0018】
本発明の態様9は、態様1~8のいずれかに記載の非焼成塊成鉱の製造方法であって、
酸化鉄含有物質原料と尿素結合含有化合物原料を含む原料組成物を混合して混合物を得る混合工程、および
前記混合物を圧縮して塊状に成型する圧縮成型工程
を含む、非焼成塊成鉱の製造方法である。
【0019】
本発明の態様10は、前記圧縮成型工程において、40MPa以下の圧力で圧縮する、態様9に記載の非焼成塊成鉱の製造方法である。
【0020】
本発明の態様11は、前記圧縮成型工程において、前記圧縮は60分間以下行う、態様9または10に記載の非焼成塊成鉱の製造方法である。
【0021】
本発明の態様12は、前記混合工程よりも後であって前記圧縮成型工程の終了前に、前記混合物を加熱する、態様9~11のいずれかに記載の非焼成塊成鉱の製造方法である。
【0022】
本発明の態様13は、前記加熱の温度を、50℃以上、120℃未満とする、態様12に記載の塊成鉱の製造方法である。
【0023】
本発明の態様14は、前記圧縮成型工程において、前記混合物を加熱しながら圧縮する、態様12または13に記載の非焼成塊成鉱の製造方法である。
【0024】
本発明の態様15は、前記酸化鉄含有物質原料が、ふるい下の粒度が1mm未満の粉末である、態様9~14のいずれかに記載の非焼成塊成鉱の製造方法である。
【0025】
本発明の態様16は、前記尿素結合含有化合物原料が、ふるい下の粒度が1mm未満の粉末である、態様9~15のいずれかに記載の非焼成塊成鉱の製造方法である。
【0026】
本発明の態様17は、態様1~8のいずれかに記載の非焼成塊成鉱を用いた製鉄方法である。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、高強度を示し、かつ石炭の使用が抑制されてCO2と粉じん発生の抑制に寄与し、かつ作業環境性にも優れた非焼成塊成鉱と、該非焼成塊成鉱の製造方法と、該非焼成塊成鉱を用いた製鉄方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、実施例における圧壊強度測定に用いた荷重測定器の模式図である。
【
図2】
図2は、実施例におけるSEM写真と、EDS(Energy Dispersive x-ray Spectroscopy)元素マッピングである。
【
図3】
図3は、実施例における非焼成塊成鉱中の尿素の分散の程度を評価したEDS元素マッピングである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明者らは、高強度を有し、石炭の使用が抑制されてCO2と粉じん発生の抑制に寄与し、かつ作業環境性にも優れた非焼成塊成鉱を得るべく鋭意研究を行った。その結果、酸化鉄含有物質と共に、常温で固体である尿素結合含有化合物を含む非焼成塊成鉱とすれば、尿素結合含有化合物が酸化鉄含有物質間の強固な接着バインダーとして作用し、高強度を確保できること、更に、酸化鉄含有物質と尿素結合含有化合物が直接接触する箇所において、酸化鉄含有物質と尿素結合含有化合物との間で、後に詳述するような固相反応プロセス(還元反応)が生じて、酸化鉄含有物質の還元が促進されることを見出した。また、本発明の非焼成塊成鉱は、上記CO2と粉じん発生の抑制、および優れた作業環境性に加え、焼成しないことによる省エネルギー効果を期待することができる。以下、本発明の非焼成塊成鉱、該非焼成塊成鉱の製造方法、および該非焼成塊成鉱を用いた製鉄方法について説明する。
【0030】
まずは本発明の非焼成塊成鉱について、該非焼成塊成鉱を構成する尿素結合含有化合物と酸化鉄含有物質から説明する。
【0031】
(非焼成塊成鉱に含まれる尿素結合含有化合物)
本発明の非焼成塊成鉱は、酸化鉄含有物質と共に、常温で固体である尿素結合含有化合物を含む。常温で固体である尿素結合含有化合物を含むことにより、非焼成塊成鉱の強度を確保できる。尿素結合含有化合物は、酸化鉄含有物質、例えば鉄鉱石粉末同士が結合し、ペレットやブリケットなどに塊状化する接着効果を有する。この様に尿素結合含有化合物で結合することで、非焼成塊成鉱の強度は高くなり、かつ還元剤としての尿素結合含有化合物と、酸化鉄含有物質との接触面積が増大するため、還元反応が促進される。つまり、尿素結合含有化合物はバインダー兼還元剤としての役割を有する。また、尿素結合含有化合物は常温で固体であるため、貯蔵、輸送等を含む作業性が良好である。
【0032】
尿素結合含有化合物は、化学式ではR1-NH-CO-NH-R2と示される。該化学式は、尿素結合(-NH-CO-NH-)を有し、NH基と結合するR1、R2は、水素または炭素数が1~5の鎖式炭化水素基、炭素数が3~5の脂環式炭化水素基、炭素数が6~9の芳香族炭化水素基であって、R1とR2は同一であってもよいし、異なっていてもよい。前記鎖式炭化水素基は、直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和のアルキル基が含まれる。例えば、上記尿素結合含有化合物として、尿素、メチル尿素、エチル尿素、ブチル尿素、ペンチル尿素(N-アミル尿素)、ジメチル尿素、ジエチル尿素、フェニル尿素、トリル尿素等が挙げられる。
【0033】
前記尿素結合含有化合物は、尿素であることが好ましい。尿素((NH2)2CO)は、酸化鉄の還元に十分寄与する化合物である。例えば酸化鉄がFe2O3の場合、下記式(1)~(3)の反応が生じうる。これらの反応は、(1)、(2)、(3)の順に高い温度で生じる固相反応プロセスである。
9Fe2O3+CH4N2O=6Fe3O4+CO2+2H2O+N2・・・(1)
3Fe2O3+CH4N2O=6FeO+CO2+2H2O+N2・・・(2)
Fe2O3+CH4N2O=2Fe+CO2+2H2O+N2・・・(3)
【0034】
尿素は、室温では白色粉末であるが加熱とともに軟化する。尿素は、軟化に伴って粘結性能が発揮されやすく、上述した、酸化鉄含有物質、例えば鉄鉱石粉末同士が結合し、ペレットやブリケットなどに塊状化する接着効果を十分に発揮する。この様に尿素で結合することで、非焼成塊成鉱の強度は高くなり、かつ還元剤としての尿素と、酸化鉄含有物質との接触面積が十分に増大するため、上述した様な還元反応が促進される。
【0035】
また、尿素はアンモニアとCO2から合成され、製造過程でCO2を消費することから、前述したセメントと異なり、原料の調製を含めてCO2の低減に寄与する。また、人体に対して無害であり、無臭かつ常温で固体であるため、高い作業容易性を有する。
【0036】
更に尿素は、水素を4/60=約6質量%含有し、加熱により熱分解(CH4N2O=2H2(g)+CO(g)+N2(g))して水素やCOガスを発生させる。これら水素やCOは還元性ガスであり、かつ燃焼性ガスでもあるため、尿素は、固体の水素還元材料または固体の水素燃料であるといえる。また、セメントがスラグ量を増大させる原因となるのに対し、尿素は、加熱により熱分解しガス状になるためスラグ量が一切増大しないというメリットを有する。
【0037】
更に尿素は、地球上の生物が大量に排出する物質でもあるため、資源として尿素は豊富に存在する。この尿素を、排出物の再利用として用いることができれば、非焼成塊成鉱を安価に供給することができると考えられる。
【0038】
以上のことから、尿素結合含有化合物として好ましくは尿素を用いることにより、焼成することなく塊成鉱の高強度化、石炭の使用抑制によるCO2と粉じんの発生抑制、および非焼成による省エネルギーを実現でき、なおかつ安価でスラグ量の増大しない塊成鉱製造技術の確立に寄与できる。
【0039】
本発明の非焼成塊成鉱における尿素結合含有化合物の形態は特に限定されないが、酸化鉄含有物質と密着させて上述した高強度や固相反応プロセスの促進を図る観点からは、後記の実施例に示す通り、非焼成塊成鉱の断面を顕微鏡で観察したときに、尿素結合含有化合物が、例えば断片状の酸化鉄含有物質の周囲を取り巻くように存在していることが好ましい。またEDSで観察したときに、前記尿素結合含有化合物の割合は、非焼成塊成鉱の断面積に占める割合で20面積%以上であることが好ましく、より好ましくは30面積%以上、更に好ましくは35面積%以上、より更に好ましくは40面積%以上である。一方、高強度を確保すること、及び高炉へ酸化鉄含有物質をより多く供給させる観点から、前記観察視野における尿素結合含有化合物の占める割合は、65面積%以下であることが好ましく、より好ましくは60面積%以下である。
【0040】
(非焼成塊成鉱に含まれる酸化鉄含有物質)
酸化鉄含有物質は、酸化鉄を含んでいるものであればよい。尿素結合含有化合物との接触面積を増加させて、高強度化と前述の還元反応を促進させる観点からは、酸化鉄含有物質が断片状であることが好ましい。断片状には、例えば球状、楕円状、針状、多角形状のものも含まれる。
【0041】
例えば非焼成塊成鉱の断面を後記の実施例に示す通り顕微鏡で観察したときに、観察視野内における酸化鉄含有物質の円相当粒径が、1.0mm以下であることが好ましく、より好ましくは0.5mm以下、更に好ましくは0.3mm以下、より更に好ましくは0.1mm(100μm)以下、特に好ましくは80μm以下である。前記酸化鉄含有物質の平均粒子径の下限は、例えば1μmとすることができる。
【0042】
本発明の非焼成塊成鉱を構成する酸化鉄含有物質は、例えばFe2O3が主成分、すなわちFe2O3の含有量が50質量%以上、更には60質量%以上含まれていてもよい。または、本発明の非焼成塊成鉱を構成する酸化鉄含有物質は、Fe3O4またはFeOが主成分、すなわちFe3O4が50質量%以上、または、FeOが50質量%以上含まれたものであってもよい。例えば鉄鉱石の場合、前記酸化鉄以外に、Al2O3やSiO2等の酸化物が含まれうる。
【0043】
前記尿素結合含有化合物と前記酸化鉄含有物質の質量比は、1:1~1:24の範囲内であることが好ましい。前記尿素結合含有化合物と前記酸化鉄含有物質の質量比を1:24以下とすることで、酸化鉄含有物質中の酸化鉄の還元を促進させることができるため好ましい。また、酸化鉄含有物質と尿素結合含有化合物の接着効果が高まり、高強度の達成に寄与する。前記質量比は、より好ましくは1:20以下、更に好ましくは1:10以下、より更に好ましくは1:5以下である。一方、高強度確保と非焼成塊成鉱における酸化鉄の比率を高める観点から、前記質量比は1:1以上とすることが好ましい。例えば前記尿素結合含有化合物と前記酸化鉄含有物質の質量比は3:8(=1:2.67)とすることが挙げられる。
【0044】
非焼成塊成鉱の断面の任意の観察視野0.4mm×0.5mmを、走査型電子顕微鏡を用いて倍率200倍で撮影して得られたEDS元素マッピングにおいて、任意に0.4mm以上の測定直線を描いた際に、前記測定直線が、前記尿素結合含有化合物と重複している箇所が、5箇所以上存在することが好ましい。前記測定直線が、前記尿素結合含有化合物と重複している箇所が多いほど、尿素結合含有化合物が十分分散していることを示す。尿素結合含有化合物が十分分散していれば、該断片状の酸化鉄含有物質と尿素結合含有化合物が接触する体積が増加し、接着作用が増加して高強度に寄与するとともに、酸化鉄含有物質と尿素結合含有化合物の間での還元反応が促進されるため好ましい。前記測定直線が、前記尿素結合含有化合物と重複している箇所は、好ましくは7箇所以上、より好ましくは10箇所以上である。
【0045】
(非焼成塊成鉱に含まれる他の成分)
本発明の非焼成塊成鉱は、前記酸化鉄含有物質と、尿素結合含有化合物が含まれていればよい。本発明の非焼成塊成鉱は、前記酸化鉄含有物質と尿素結合含有化合物からなる場合の他、本発明の目的を損なうことなく、強度の更なる向上や被還元性の改善を目的として、更に他の成分を少量含んでいてもよい。他の成分として、例えば、ポルトランドセメント、アルミナセメント、高炉セメント等のセメント(主成分2CaO・SiO2)や、粉コークス、一般炭、無煙炭、コークスダスト等の炭剤、その他の無機バインダー、有機バインダーなどが挙げられる。
【0046】
前記セメントの使用は、非焼成のプロセスでペレットやブリケット等を容易に製造できるが、セメントを多く含むと、鉄品位が低下しスラグ量が増大するといった問題がある。またセメントの製造そのものに多くのエネルギーを要するため、セメントの製造工程も含めると省エネルギーとは言い難い。よって、スラグの増大抑制、省エネルギーを図る観点からは、セメントを極力抑制することが好ましく、スラグの増大防止と省エネルギーの実現の観点からは、セメント量がゼロであることが好ましい。
【0047】
前記セメントを含めた他の成分の割合は、例えば非焼成塊成鉱の断面を、後記の実施例に示す通り顕微鏡で観察したときに、非焼成塊成鉱の全体に占める割合で、10面積%以下であることが好ましく、より好ましくは5面積%以下、特に好ましくは0面積%、すなわち他の成分を含まないことである。
【0048】
本発明の非焼成塊成鉱として、酸化鉄含有物質と、尿素結合含有化合物とからなる非焼成塊成鉱とすれば、十分な高強度を示し、かつ酸化鉄含有物質と尿素結合含有化合物の還元反応が促進されやすく、かつ加熱により熱分解してもガス状になるためスラグ量は一切増加せず、更には石炭の使用低減によるCO2削減・粉じんの抑制にも寄与する。更にこの様な有益な非焼成塊成鉱を、安価かつエネルギー消費を抑えて提供することができる。
【0049】
本発明の非焼成塊成鉱は、上記の通り酸化鉄含有物質と尿素結合含有化合物を含んでいればよく、その他の条件は問わない。
【0050】
例えば非焼成塊成鉱のサイズとして、塊成物の体積に相当する真球を模擬したときに、この真球の直径で9~30mm程度、更には15~30mm程度とすることができる。また形状として、ペレット、ブリケット等とすることができる。
【0051】
本発明の非焼成塊成鉱は、空隙が存在していてもよい。しかし、圧壊強度を高める観点および、酸化鉄含有物質と尿素結合含有化合物を密着させて還元反応を促進させる観点からは、非焼成塊成鉱に占める空隙は、少ない方が好ましく、後述するようなSEM写真またはEDS元素マッピングを観察したときに、例えば5面積%以下に抑えられていることが好ましく、より好ましくは3面積%以下である。最も好ましくは0面積%である。
【0052】
本発明の塊成鉱は、後記の実施例に記載の方法で圧壊強度を測定したときに、室温での圧壊強度600N以上を確保することができ、更には800N以上、より更には900N以上、特には1000以上の実用に十分適用できる強度を示す。
【0053】
(非焼成塊成鉱の製造方法)
本発明の非焼成塊成鉱の製造方法は、
尿素結合含有化合物原料と酸化鉄含有物質原料を含む原料組成物を混合して混合物を得る混合工程、および
前記混合物を圧縮して塊状に成型する圧縮成型工程
を含む。以下、各工程について説明する。
【0054】
1.原料
まず尿素結合含有化合物原料と酸化鉄含有物質原料を含む原料組成物を用意する。原料組成物に含まれる各原料について、以下に説明する。
【0055】
(尿素結合含有化合物原料)
尿素結合含有化合物原料は、市販品を使用する他、アンモニアとCO2から120℃で合成することもできる。この場合、尿素結合含有化合物製造時にCO2を消費できるため、CO2削減の観点から有効である。また、生物の排出物をリサイクルして利用することもできる。尿素結合含有化合物原料における尿素結合含有化合物の純度は90%以上であることが好ましく、より好ましくは95%以上である。
【0056】
前記尿素結合含有化合物原料は、ふるい下の粒度が1mm未満の粉末であることが好ましい。前記ふるい下の粒度は、例えば、更に500μm未満とすることができ、更には250μm未満とすることができる。なお、尿素結合含有化合物粉末は、酸化鉄含有物質粉末よりも強度が小さく、圧縮する工程で粉砕や溶融が生じ、酸化鉄含有物質粉末の周辺に分散するため、厳密に制御しなくてもよい。また、酸化鉄含有物質粉末と尿素結合含有化合物粉末の粒径の比率についても特に問わず、例えば、尿素結合含有化合物粉末のふるい下の粒度が酸化鉄含有物質粉末のふるい下の粒度と同じまたはそれ以下とすることができる。
【0057】
前記尿素結合含有化合物原料は、原料組成物に占める割合で、例えば5質量%以上であることが好ましく、より好ましくは10質量%以上である。一方、50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは30質量%以下である。
【0058】
(酸化鉄含有物質原料)
上記酸化鉄含有物質原料として、例えばFe2O3を主成分とする原料が挙げられる。または酸化鉄含有物質原料として、Fe3O4またはFeOが主成分、すなわちFe3O4またはFeOが50質量%以上を占める鉄鉱石等の酸化鉄含有物質原料も使用できる。前記酸化鉄含有物質原料として、鉄鉱石、砂鉄、製鉄プロセスにおいて多量に発生するダスト、スラッジ、製鉄廃棄物等が挙げられる。例えばFe2O3が50質量%以上含まれる鉄鉱石として、例えばリオドセ鉄鉱石が挙げられる。
【0059】
前記酸化鉄含有物質原料は、例えば平均粒子径が1~3mm程度の塊状の原料も使用できるが、好ましくはふるい下の粒度が1mm未満の粉末である。前記ふるい下の粒度は、より好ましくは500μm未満、更に好ましくは250μm未満である。
【0060】
前記酸化鉄含有物質原料は、原料組成物に占める割合で、例えば50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは70質量%以上である。一方、96質量%以下であることが好ましく、より好ましくは90質量%以下である。
【0061】
(他の成分原料)
原料組成物は、前記尿素結合含有化合物原料と酸化鉄含有物質原料の他、他の成分原料を含んでいてもよい。他の成分原料として、前述した例えば、ポルトランドセメント、アルミナセメント、高炉セメント等のセメントや、粉コークス、一般炭、無煙炭、コークスダスト等の炭剤、その他の無機バインダー、有機バインダーが挙げられる。これらの他の成分原料は、原料組成物に占める割合で、例えば10質量%以下に抑えられていることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、更に好ましくは3質量%以下、特には0質量%である。
【0062】
本発明の非焼成塊成鉱の製造方法は、前記原料が、他の原料と混合する前に、上記好ましい粒度となるよう粉砕する工程や、ふるいにかける工程が設けられていてもよい。
【0063】
2.製造工程
上記各原料を秤量し、これらを混合して混合物を得る。前記混合は、ミキサーの他、転動ボールミル、遊星ボールミル等のボールミルを用いてもよい。混合により得られた混合物を圧縮機に装入し、圧縮成型を行って塊成鉱を得る。この前記混合物を圧縮する工程において、100MPa以下の圧力で圧縮することが好ましい。前記圧力は、尿素結合含有化合物原料と酸化鉄含有物質原料の接着力を高めて強度を確保する観点から、20MPa以上とすることがより好ましい。上記圧力は高ければ高いほど好ましいが、圧力が高すぎても上記接着力を高める効果は飽和するため、上記圧力は上述の通り40MPa以下とすることがより好ましい。原料の混合工程と混合物の圧縮工程の雰囲気は、いずれも大気雰囲気とした。
【0064】
前記圧縮は、十分強度の高い非焼成塊成鉱を得るため5分間以上行うことが好ましい。前記圧縮時間は、より好ましくは10分間以上である。一方、圧縮時間が長すぎても、圧縮による効果は飽和し、生産性の低下を招く。よって圧縮時間は、60分間以下とすることが好ましく、より好ましくは30分間以下である。圧縮は、後述の実施例に示す通り上から加圧して成型する方式の他、ブリケット製造装置の様に2つのロールにより両サイドから圧縮して成型する方式であってもよい。また押出し成型により、加圧して成型する方式であってもよい。
【0065】
本発明の非焼成塊成鉱は、前記混合工程よりも後に加熱することなく、前記圧縮を行うことによって製造できるが、尿素結合含有化合物の接着効果を促進させ、より強固な非焼成塊成鉱を得る観点からは、前記混合工程よりも後であって圧縮成型工程の終了前に、加熱を行うことが好ましい。
【0066】
加熱を行う態様として、例えば、
(a)前記混合物を得る工程の後、圧縮前に昇温させ、前記混合物が下記の好ましい温度にある状態を保持しながら圧縮する方法
(b)前記混合物を得る工程の後、圧縮前に下記の好ましい温度で加熱し、加熱を終了してから直ぐに圧縮を行う方法・
(c)前記混合物を得る工程の後、圧縮前に下記の好ましい温度で加熱し、該温度を保持しながら圧縮する方法
などがあげられる。好ましくは(a)または(c)の様に、混合物を圧縮する工程において、前記混合物を加熱しながら圧縮するのがよい。
【0067】
前記加熱により混合物の温度を、50℃以上、120℃未満とすることが好ましい。前記温度を50℃以上とすることによって、上述した尿素結合含有化合物の接着促進効果を十分得ることができる。前記加熱温度は、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは70℃以上である。一方、上記温度が高すぎると、尿素結合含有化合物が分解しやすく、上記尿素結合含有化合物の効果を発現することが難しくなる。よって、加熱を行う場合は、混合物の温度を120℃未満とすることが好ましく、より好ましくは100℃以下、更に好ましくは80℃以下である。
【0068】
上記温度で保持する時間は、十分強度の高い非焼成塊成鉱を得るため、5分間以上行うことが好ましい。上記温度で保持する時間は、より好ましくは10分間以上である。一方、加熱時間が長すぎても、加熱による効果は飽和し、生産性の低下を招く。よって上記温度で保持する時間は、60分間以下とすることが好ましく、より好ましくは30分間以下である。上記温度で保持する時間は、上記加熱を圧縮と共に行う場合、上記圧縮時間と同じとすることができる。
【0069】
(非焼成塊成鉱を用いた製鉄方法)
本発明には、本発明の非焼成塊成鉱を用いた製鉄方法も含まれる。好ましくは製鉄方法として、高炉法に適用すれば、高強度を有しているため、本発明の非焼成塊成鉱製造場所から高炉までの輸送、および高炉内に堆積させたときに、塊成鉱の形状を維持でき、結果として、還元性ガス等の高炉内通気を良くし、還元反応を促進させることができる。また、高炉内で本発明の非焼成塊成鉱が加熱されることによって、非焼成塊成鉱内の酸化鉄含有物質と尿素結合含有化合物の間での還元反応、特には、上述した式(1)~(3)の様な尿素による還元反応が促進される。その結果、省エネルギーと、石炭原料使用の抑制による省資源、CO2や粉じん発生の削減を達成することができる。
【実施例】
【0070】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、前述および後述する趣旨に合致し得る範囲で、適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0071】
1.サンプル作製
表1に示す成分組成の原料鉄鉱石(Fe2O3が主成分のリオドセ鉄鉱石)を粉砕し、ふるいにかけてふるい下の粒度が106μm未満の鉄鉱石粉末を得た。また、キシダ化学株式会社製の尿素も粉砕し、ふるいにかけてふるい下の粒度が106μm未満の尿素粉末を得た。
【0072】
そして、前記鉄鉱石粉末と、前記尿素粉末を、質量比で8:3(組成物全体に占める尿素の割合が27.3質量%)となるように秤量し、前記鉄鉱石粉末と尿素粉末の混合を、転動ボールミルを用い、回転速度100rpmで1時間の混合を行って混合物を得た。前記質量比は、Feまでの還元を期待して、下記式(4)の両論比から決定したものである。
Fe2O3+CH4N2O=2Fe+N2(g)+2H2O(g)+2(g)・・・(4)
【0073】
前記混合物をダイスに充填して、圧粉成型を次の通り行った。
図1は、混合物の圧粉成型に用いた一軸プレス装置を模式的に示したものである。前記混合物3gを秤量して、一軸プレス装置1のダイス2と支持台3で構成された空間に充填させ、上パンチ4を装着させた後、充填物(混合物)5の方へ移動させ加圧した。本実施例では、40MPaに加圧した状態で、前記充填物5の温度を50℃または80℃まで昇温し、30分間保持した。なお、一定時間経過後に加圧を止め、その後すぐに加熱も終了した。前記加熱後は冷却して、塊成鉱として高さが約1.3~1.5cmで直径約10mmの円柱状の圧粉成型体を得た。なお、本実施例における装置は、充填物近辺温度を制御しており、装置の設定温度はほぼ混合物の温度であった。
【0074】
【0075】
得られた圧粉成型体を用い、次の様にして、断面を観察するとともに、圧壊強度の測定を行った。
【0076】
(断面の観察)
50℃で圧縮させて得た圧粉成型体と、80℃で圧縮させて得た圧粉成型体のそれぞれについて、円柱状の圧粉成型体のほぼ直径位置を加圧方向、即ち高さ方向に切断して、切断面の中央部をSEM-EDSで観察した。その写真を
図2に示す。
図2の上段はSEM写真を示し、
図2の下段はEDS元素マッピングを示す。EDS元素マッピングにおいて、濃いグレー部分は、尿素を構成するC(炭素)の存在を示し、薄いグレー部分は、鉄鉱石を構成するFeの存在を示し、黒部分は、前記尿素と鉄鉱石以外を示す。なお、
図2において、50℃と80℃のSEM写真の明度が異なるが、これは測定時の明度自動調整によるものである。
【0077】
(圧壊強度の測定)
圧壊強度の測定は、荷重測定器(MINEBEA 製型式 LTS-1kNB-S50、仕様;最大試験力1kN、試験速度5mm/min、速度精度;設定速度の±3%)を用い、大気雰囲気下、室温で1000Nとなるまで、円筒型試料の上部から徐々に荷重を増加して圧縮する圧縮試験を行い、上記圧粉成型体1個が圧潰したときの荷重を「最大荷重」として求めた。その結果を表2に示す。なお、上記荷重測定器の最大荷重が1000Nであるため、値がほぼ1000Nに近い例は、1000Nでも圧壊していないことを意味する。なお、従来品として工業用焼結鉱について、同様の測定を行ったところ835.7Nで圧壊した。
【0078】
【0079】
上記圧壊強度の測定結果から、本発明の塊成鉱は、取り扱い性がよく、かつ高炉へ装入後も、高炉内の通気を十分確保できる圧粉成型体が得られた。なお、本発明の非焼成塊成鉱はアンモニアを使用していないため、作業環境性にも優れている。
【0080】
また、上記
図2の写真から、本発明の非焼成塊成鉱は、微細に分散した鉄鉱石粉末の周囲を尿素が取り巻いていることがわかる。更に
図3は、前記
図2における80℃で圧縮させて得た圧粉成型体のEDS元素マッピングである。この
図3に示す通り、本発明の非焼成塊成鉱は、断面の観察視野0.4mm×0.5mmを倍率200倍で撮影したときに、尿素の比較的少ない領域に約0.4mmの測定直線を描いた場合であっても、前記測定直線が、前記尿素結合含有化合物と重複している箇所は7箇所であり、尿素は、鉄鉱石粉末中に十分分散していた。
【0081】
本発明では、尿素がバインダーとなって、鉄鉱石粉末を接着させているため、上記高強度が得られたと考えられる。また、鉄鉱石粉末に隣接して尿度が存在していることから、高炉内において、鉄鉱石の上述した還元が促進されると考えられる。また、本実施例では、酸化鉄含有物質以外に、尿素のみ用いており、該尿素は、加熱により熱分解しガス状になるためスラグ量は一切増大しない。
【符号の説明】
【0082】
1 一軸プレス装置
2 ダイス
3 支持台
4 上パンチ
5 充填物(混合物)