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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】体液吸収用シート
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/511 20060101AFI20241108BHJP
   A61F 13/15 20060101ALI20241108BHJP
   A61F 13/512 20060101ALI20241108BHJP
   D04H 1/4374 20120101ALI20241108BHJP
   B32B 5/26 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
A61F13/511 400
A61F13/15 357
A61F13/512 200
D04H1/4374
B32B5/26
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020152307
(22)【出願日】2020-09-10
(65)【公開番号】P2022046325
(43)【公開日】2022-03-23
【審査請求日】2023-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【弁理士】
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100192463
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 剛規
(74)【代理人】
【識別番号】100169328
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 健治
(72)【発明者】
【氏名】出谷 耕
(72)【発明者】
【氏名】木村 明寛
(72)【発明者】
【氏名】衛藤 友美
【審査官】佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-200860(JP,A)
【文献】特開2002-020957(JP,A)
【文献】国際公開第2018/167882(WO,A1)
【文献】特開2019-042400(JP,A)
【文献】特開平10-085258(JP,A)
【文献】特開平04-061857(JP,A)
【文献】特開2009-215667(JP,A)
【文献】特開昭61-176346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15-13/84
A61L 15/16-15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と第2面とを有する体液吸収用シートであって、
互いに熱融着された複数の熱融着性繊維を含み、一方の面が前記第1面を構成する不織布層と、
複数の親水性繊維を含み、一方の面が前記不織布層の他方の面に隣接し、他方の面が前記第2面を構成する親水性繊維層と、
を備え、
平面視で、前記第1面に分散的に配置された複数の低坪量部と、前記複数の低坪量部の各々に隣接する少なくとも一つの高坪量部と、を有し、
前記複数の低坪量部の少なくとも一つは、前記第1面から前記第2面まで貫通する貫通孔を有し、かつ、前記不織布層及び前記親水性繊維層を含み、
前記親水性繊維層の前記複数の親水性繊維の一部は、それぞれ前記不織布層を貫通して前記高坪量部の前記第1面に露出し、
前記高坪量部における前記低坪量部の近傍の領域の方が、前記高坪量部における前記低坪量部から離れた離間領域よりも、前記第1面に露出している前記親水性繊維が多い、
体液吸収用シート。
【請求項2】
前記第1面に露出している前記複数の親水性繊維の一部は、前記第1面から、厚さ方向の外側に向って突出する複数の突出親水性繊維を含む、
請求項1に記載の体液吸収用シート。
【請求項3】
前記複数の突出親水性繊維の一部は、前記第1面から、前記厚さ方向の外側に向って凸な弧状に突出している、
請求項2に記載の体液吸収用シート。
【請求項4】
前記不織布層は、熱融着しない複数の非熱融着性繊維を更に含み、
前記不織布層における前記複数の非熱融着性繊維の割合は50質量%未満である、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の体液吸収用シート。
【請求項5】
前記複数の熱融着性繊維より、前記複数の親水性繊維の方が、繊度が小さい、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の体液吸収用シート。
【請求項6】
前記複数の親水性繊維は、再生セルロース繊維を含む、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の体液吸収用シート。
【請求項7】
第1面と第2面とを有する体液吸収用シートの製造方法であって、
互いに熱融着された複数の熱融着性繊維を含み、一方の面が前記第1面を構成する不織布層を準備する工程と、
メッシュ状の支持体の表面に前記不織布層の一方の面が接し、前記不織布層の他方の面に複数の親水性繊維を含む繊維ウェブの一方の面が接するように、前記支持体に前記不織布層及び前記繊維ウェブを載置する載置工程と、
前記不織布層上に載置された前記繊維ウェブの他方の面に向かって水流を噴射し、前記複数の親水性繊維を前記複数の熱融着性繊維に交絡させて、前記複数の親水性繊維を含み、一方の面が前記不織布層の他方の面に隣接し、他方の面が前記第2面を構成する親水性繊維層を形成する交絡工程と、
を備え、
前記交絡工程において、
平面視で、前記第1面に分散的に配置された複数の低坪量部と、前記複数の低坪量部の各々に隣接する少なくとも一つの高坪量部と、が形成され、
前記複数の低坪量部の少なくとも一つは、前記第1面から前記第2面まで貫通する貫通孔を有し、かつ、前記不織布層及び前記親水性繊維層を含み、
前記親水性繊維層の前記複数の親水性繊維の一部は、それぞれ前記不織布層を貫通して前記高坪量部の前記第1面に露出し、
前記高坪量部における前記低坪量部の近傍の領域の方が、前記高坪量部における前記低坪量部から離れた離間領域よりも、前記第1面に露出している前記親水性繊維が多い、
体液吸収用シートの製造方法。
【請求項8】
前記支持体は、前記不織布層の側に突出する複数の突出部を有する、
請求項7に記載の体液吸収用シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体液吸収用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
吸収性物品の表面シートのような体液吸収用シートが知られている。例えば、特許文献1には、第1面と第2面とを有し、セルロース系繊維から形成された織物と、織物の第1面に交絡によって一体化された繊維ウェブと、を備える吸収性物品用の透液性シートが開示されている。この透液性シートでは、繊維ウェブの構成繊維が、織物の構成糸と構成糸との間(網目)を通って、織物の第2面とほぼ面一又はそれよりも厚さ方向の外側へ延在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の透液性シートでは、織物を構成する構成糸が、セルロース系繊維を撚って形成された撚糸である。したがって、構成糸には、セルロース系繊維同士の間の空隙が少ないため、体液を吸収(透過させる際の一時的な吸収を含む)するための容量が少なくなる。それゆえ、透液性シートの肌側の表面に体液(例示:尿、経血、汗)が排出されたとき、構成糸内に体液を吸収するのに時間が掛かり易くなる。よって、透液性シート全体としても体液を吸収するのに時間が掛かり易くなる。
【0005】
また、透液性シートでは、保水性のセルロース系繊維の撚糸が、第2面、すなわち肌側の表面に存在している。したがって、透液性シートに体液が吸収されても、肌側の表面のセルロース系繊維の撚糸に保持された体液により、表面がべたべたした状態になり易く、そのリウェットが生じ易くなる。
【0006】
本発明の目的は、表面に排出された体液を吸収するのに掛かる時間が短く、体液が表面から素早く捌け、体液が表面に戻り難い体液吸収用シート、すなわち、吸収性能(吸汗性、吸収速度)が高く、液捌け性が高く、リウェットし難い体液吸収用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の態様は次のとおりである。(1)第1面と第2面とを有する体液吸収用シートであって、互いに熱融着された複数の熱融着性繊維を含み、一方の面が前記第1面を構成する不織布層と、複数の親水性繊維を含み、一方の面が前記不織布層の他方の面に隣接し、他方の面が前記第2面を構成する親水性繊維層と、を備え、前記親水性繊維層の前記複数の親水性繊維の一部は、それぞれ前記不織布層を貫通して前記第1面に露出している、体液吸収用シート。
【0008】
本発明の他の態様は次のとおりである。(2)第1面と第2面とを有する体液吸収用シートの製造方法であって、互いに熱融着された複数の熱融着性繊維を含み、一方の面が前記第1面を構成する不織布層を準備する工程と、メッシュ状の支持体の表面に前記不織布層の一方の面が接し、前記不織布層の他方の面に複数の親水性繊維を含む繊維ウェブの一方の面が接するように、前記支持体に前記不織布層及び前記繊維ウェブを載置する載置工程と、前記不織布層上に載置された前記繊維ウェブの他方の面に向かって水流を噴射し、前記複数の親水性繊維を前記複数の熱融着性繊維に交絡させて、前記複数の親水性繊維を含み、一方の面が前記不織布層の他方の面に隣接し、他方の面が前記第2面を構成する親水性繊維層を形成する交絡工程と、を備え、前記交絡工程において、前記親水性繊維層の前記複数の親水性繊維の一部は、それぞれ前記不織布層を貫通して前記第1面に露出する、体液吸収用シートの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、表面に排出された体液を吸収するのに掛かる時間が短く、体液が表面から素早く捌け、体液が表面に戻り難い体液吸収用シート、すなわち吸収性能(吸汗性、吸収速度)が高く、液捌け性が高く、リウェットし難い体液吸収用シートを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る体液吸収用シートを用いた吸収性物品の構成例を示す平面図である。
図2図1のII-II線に沿う断面図である。
図3】実施形態に係る体液吸収用シートの構成例を示す平面図及び断面図である。
図4】実施形態に係る体液吸収用シートの製造方法で用いる支持体の構成例を示す平面図及び断面図である。
図5】実施形態に係る体液吸収用シートの製造方法を説明する模式図である。
図6】実施形態に係る体液吸収用シートの製造過程を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態は、以下の態様に関する。
[態様1]
第1面と第2面とを有する体液吸収用シートであって、互いに熱融着された複数の熱融着性繊維を含み、一方の面が前記第1面を構成する不織布層と、複数の親水性繊維を含み、一方の面が前記不織布層の他方の面に隣接し、他方の面が前記第2面を構成する親水性繊維層と、を備え、前記親水性繊維層の前記複数の親水性繊維の一部は、それぞれ前記不織布層を貫通して前記第1面に露出している、体液吸収用シート。
【0012】
本体液吸収用シートでは、不織布層の複数の熱融着性繊維が互いに熱融着されており、かつ、親水性繊維層の複数の親水性繊維の一部がそれぞれ不織布層を貫通して表面(第1面)に露出している。
それゆえ、不織布層が複数の熱融着性繊維による骨格構造を維持できるので、不織布層内に熱融着性繊維同士間の空隙を多く保持できる。そして、表面に排出された体液を、複数の親水性繊維により不織布層内の熱融着性繊維同士間の空隙へ素早く導くことができ、更に親水性繊維層へ素早く導くことができる。したがって、体液吸収用シートでは、表面に排出された体液を短時間で吸収し易くでき、体液を表面から素早く捌け易くできる。
また、体液吸収用シートでは、複数の親水性繊維の一部が、それぞれ不織布層を貫通して表面に露出している。言い換えれば、複数の親水性繊維が束にならずに、分散しつつ、不織布層を貫通して第1面に達している。そのため、体液吸収用シートに体液が吸収され、複数の親水性繊維に体液が保持されたとしても、表面の複数の親水性繊維に保持された体液により表面がべたべたすることや、リウェットが生じることを、起こり難くすることができる。
したがって、体液吸収用シートでは、体液が表面に戻り難くすることができる。
よって、体液吸収用シートにより、吸収性能(吸汗性、吸収速度)が高く、液捌け性が高く、リウェットし難くすることができる。
【0013】
[態様2]
平面視で、前記第1面に分散的に配置された複数の低坪量部と、前記複数の低坪量部の各々に隣接する少なくとも一つの高坪量部と、を有し、前記複数の親水性繊維の一部は、前記高坪量部の前記第1面に露出している、態様1に記載の体液吸収用シート。
本体液吸収用シートでは、複数の親水性繊維の一部は、高坪量部の第1面に露出している。それにより、表面に排出された体液を、露出した親水性繊維により、体液を吸収し易い高坪量部の不織布層へ素早く導き、更に高坪量部の親水性繊維層へ素早く導くことができる。したがって、体液吸収用シートでは、表面に排出された体液をより短時間で吸収し易くでき、体液を表面からより素早く捌け易くできる。また、体液吸収用シートでは、複数の低坪量部を有している。ここで、低坪量部では、吸収され、保持され得る体液の量が少ない。そのため、体液吸収用シートに体液が吸収されても、複数の低坪量部の分だけ、表面の親水性繊維に保持された体液により表面がべたべたすることや、リウェットが生じることを、より起こり難くすることができる。
【0014】
[態様3]
前記高坪量部における前記低坪量部の近傍の領域の方が、前記高坪量部における前記低坪量部から離れた離間領域よりも、前記第1面に露出している前記親水性繊維が多い、態様2に記載の体液吸収用シート。
本体液吸収用シートでは、高坪量部における低坪量部の近傍の領域の方が、高坪量部における低坪量部から離れた離間領域よりも、第1面に露出している親水性繊維が多くなっている。このように、高坪量部と比較して相対的に体液を吸収し難い低坪量部の近傍に親水性繊維を多く配置することで、低坪量部での吸収の遅れを補助することができる。
【0015】
[態様4]
前記複数の低坪量部の少なくとも一つは、前記第1面から前記第2面まで貫通する貫通孔を有する、態様2又は3に記載の体液吸収用シート。
本体液吸収用シートでは、複数の低坪量部の少なくとも一つは、第1面から第2面まで貫通する貫通孔を有している。それにより、表面(第1面)に排出された体液を、貫通孔を介して、一気に第2面側の親水性繊維層へ移行させることができる。それにより、表面に排出された体液を短時間で吸収し易くでき、体液を表面から素早く捌け易くできる。
【0016】
[態様5]
前記第1面に露出している前記複数の親水性繊維の一部は、前記第1面から、厚さ方向の外側に向って突出する複数の突出親水性繊維を含む、態様1乃至4のいずれか一項に記載の体液吸収用シート。
本体液吸収用シートでは、第1面に露出している複数の親水性繊維の一部のうちの少なくとも一部が、第1面から、厚さ方向の外側に向って突出する複数の突出親水性繊維を含んでいる。そのため、複数の突出親水性繊維により、肌の表面に存在する微量の体液も、素早く捕らえることができ、不織布層へ素早く導き、更に親水性繊維層へ素早く導くことができる。
【0017】
[態様6]
前記複数の突出親水性繊維の一部は、前記第1面から、前記厚さ方向の外側に向って凸な弧状に突出している、態様5に記載の体液吸収用シート。
本体液吸収用シートでは、複数の突出親水性繊維の一部が、第1面から、外側に向って凸な弧状に突出している。そのため、その突出親水性繊維の弧の略頂部から二方向へ体液を引き込むことができるので、体液を不織布層へ、より素早く導き、更に親水性繊維層へ、より素早く導くことができる。また、その突出親水性繊維のうちの使用者の肌に当接する部分は、繊維の弧の頂部であり、繊維の先端部ではないため、使用者が肌への違和感などを覚えることを抑制できる。
【0018】
[態様7]
前記不織布層は、熱融着しない複数の非熱融着性繊維を更に含み、前記不織布層における前記複数の非熱融着性繊維の割合は50質量%未満である、態様1乃至6のいずれか一項に記載の体液吸収用シート。
本体液吸収用シートでは、不織布層が、熱融着しない複数の非熱融着性繊維を50質量%未満で有している。そのため、不織布層において、複数の熱融着性繊維により骨格構造を維持しつつ、複数の非熱融着性繊維により変形の自由度を高めることができる。それにより、不織布層において、熱融着性繊維同士間の空隙を広く保持して、体液を不織布層へ素早く導く構造を維持しつつ、不織布層、延いては体液吸収用シートを柔らかくすることができ、体液吸収用シートの使用感を良好にできる。
【0019】
[態様8]
前記複数の熱融着性繊維より、前記複数の親水性繊維の方が、平均繊維径が小さい、態様1乃至7のいずれか一項に記載の体液吸収用シート。
本体液吸収用シートでは、複数の熱融着性繊維より、複数の親水性繊維の方が、平均繊維径が細い。熱融着性繊維の平均繊維径が太いことにより、不織布層が複数の熱融着性繊維による骨格構造をより維持し易く、熱融着性繊維同士間の空隙を広く保持し易くできる。更に、親水性繊維の平均繊維径が細いことにより、第1面に露出した親水性繊維に体液が保持されたとしても、表面がべたべたすることや、リウェットが生じることを、より起こり難くすることができる。
【0020】
[態様9]
前記複数の親水性繊維は、再生セルロース繊維を含む、態様1乃至8のいずれか一項に記載の体液吸収用シート。
本体液吸収用シートでは、複数の親水性繊維は、再生セルロース繊維を含んでいる。ここで、再生セルロース繊維は再生繊維であるため、品質が均一で吸水性に優れている。そのため、体液吸収用シートでは、表面に排出された体液をより短時間で吸収し易くでき、体液を表面からより素早く捌け易くできる。
【0021】
[態様10]
第1面と第2面とを有する体液吸収用シートの製造方法であって、互いに熱融着された複数の熱融着性繊維を含み、一方の面が前記第1面を構成する不織布層を準備する工程と、メッシュ状の支持体の表面に前記不織布層の一方の面が接し、前記不織布層の他方の面に複数の親水性繊維を含む繊維ウェブの一方の面が接するように、前記支持体に前記不織布層及び前記繊維ウェブを載置する載置工程と、前記不織布層上に載置された前記繊維ウェブの他方の面に向かって水流を噴射し、前記複数の親水性繊維を前記複数の熱融着性繊維に交絡させて、前記複数の親水性繊維を含み、一方の面が前記不織布層の他方の面に隣接し、他方の面が前記第2面を構成する親水性繊維層を形成する交絡工程と、を備え、前記交絡工程において、前記親水性繊維層の前記複数の親水性繊維の一部は、それぞれ前記不織布層を貫通して前記第1面に露出する、体液吸収用シートの製造方法。
【0022】
本体液吸収用シートの製造方法では、メッシュ状の支持体に、互いに熱融着された複数の熱融着性繊維を含む不織布層と、複数の親水性繊維を含む繊維ウェブと、を順次載置し、繊維ウェブ側から水流交絡を行っている。
不織布層では熱融着性繊維が予め熱融着されているので、水流交絡しても、熱融着性繊維による骨格構造を維持できる。それにより、製造された体液吸収用シートにおいて、熱融着性繊維同士間の空隙を広く保持できると共に、表面に排出された体液を、複数の親水性繊維により不織布層へ素早く導き、更に親水性繊維層へ素早く導くことができる。
また、繊維ウェブ側から水流を噴射しているので、繊維ウェブの親水性繊維を、不織布層を貫通させて第1面に達するように交絡できる。それにより、製造された体液吸収用シートにおいて、体液吸収用シートに体液が吸収されても、表面の複数の親水性繊維に保持された体液により表面がべたべたすることや、リウェットが生じることを、起こり難くすることができる。
よって、吸収性能(吸汗性、吸収速度)が高く、液捌け性が高く、リウェットし難くすることができる体液吸収用シートを製造することができる。
【0023】
[態様11]
前記支持体は、前記不織布層の側に突出する複数の突出部を有する、態様10に記載の体液吸収用シートの製造方法。
本体液吸収用シートの製造方法では、支持体は、不織布層の側に突出する複数の突出部を有している。そのため、交絡工程では、噴射された水流が突出部に衝突することにより、不織布層の熱融着性繊維が水流でかき分けられ易くなる。それにより、熱融着性繊維が水流でかき分けられたところに、繊維ウェブの親水性繊維を進入し易くすることができる。それにより、より容易に、親水性繊維の一部を、それぞれ不織布層を貫通して第1面に露出させることができる。
【0024】
以下、本発明の実施形態に係る体液吸収用シート及び体液吸収用シートの製造方法について説明する。
【0025】
本実施形態では、体液吸収用シートを生理用ナプキンの表面シートに適用した例を説明する。ただし、本発明の主題の範囲を逸脱しない限り、本発明の体液吸収用シートは他の吸収性物品にも適用可能である。他の吸収性物品としては、例えばパンティライナー、失禁パッド、使い捨ておむつ、マスク、汗とりシート、母乳パッド、ペット用おむつ、ペットシート、ドリップシートなどが挙げられる。また、本発明の主題の範囲を逸脱しない限り、本発明の体液吸収用シートは吸収性物品における他の部材にも適用可能である。他の部材としては、補助シート、コアラップ、外装シートなどが挙げられる。
【0026】
まず、実施形態に係る体液吸収用シートについて説明する。図1図2は実施形態に係る体液吸収用シートを用いた生理用ナプキン1の構成例を示す図である。図1は生理用ナプキン1を展開した状態を示す平面図であり、図2図1のII-II線に沿った断面図である。生理用ナプキン1は、互いに直交する長手方向L、幅方向W及び厚さ方向Tを有する。図1に描かれた生理用ナプキン1では、図の上側及び下側をそれぞれ長手方向Lの前側及び後側とし、左側及び右側をそれぞれ幅方向Wの左側及び右側とし、紙面に対して手前側及び奥側をそれぞれ厚さ方向Tの上側及び下側とする。生理用ナプキン1は、幅方向Wの中心を通り長手方向Lに延びる長手方向中心線CL(仮想線)と、長手方向Lの中心を通り幅方向Wに延びる幅方向中心線CW(仮想線)とを有する。長手方向中心線CLに向かう向き及び側をそれぞれ幅方向Wの内向き及び内側とし、遠ざかる向き及び側をそれぞれ幅方向Wの外向き及び外側とする。一方、幅方向中心線CWに向かう向き及び側をそれぞれ長手方向Lの内向き及び内側とし、遠ざかる向き及び側をそれぞれ長手方向Lの外向き及び外側とする。長手方向L及び幅方向Wを含む平面上に置いた生理用ナプキン1を厚さ方向Tの上側から見ることを平面視といい、平面視で把握される形状を平面形状という。長手方向L及び幅方向Wを含む平面内の任意の方向を平面方向という。装着者が生理用ナプキン1を装着したとき、厚さ方向Tにて相対的に装着者の肌面に近い側及び遠い側となる側をそれぞれ肌側及び非肌側という。これら定義は、生理用ナプキン1の各資材にも共通に用いられる。
【0027】
本実施形態では、生理用ナプキン1(ウイング部を除く)は、平面視で、長手方向Lに長く幅方向Wに短い略矩形の形状で、長手方向Lの両端辺は略半円形の形状を有する。なお、生理用ナプキン1の形状は、長手方向Lに長く幅方向Wに短ければ特に制限されず、例えば角丸長方形、楕円形、瓢箪型、及び砂時計型が挙げられる。生理用ナプキン1は、略矩形の形状の部分から幅方向Wの両外側に延出する一対のウイング部9を備える。ウイング部9は略台形の形状を有する。なお、その形状は例えば半円形や半楕円形でもよい。
【0028】
本実施形態では、生理用ナプキン1は、表面シートとしての体液吸収用シート2と、補助シート5と、吸収体4と、裏面シート3と、着衣固定部7と、を備える。表面シートとして機能する体液吸収用シート2は、液透過性のシートであり、本実施形態では生理用ナプキン1の肌側の表面を構成する。その詳細は後述される。補助シート5は、液透過性のシートであり、本実施形態では体液吸収用シート2の非肌側に積層される。吸収体4は、液吸収性及び液保持性の材料であり、体液吸収用シート2(及び補助シート5)と裏面シート3との間に位置する。裏面シート3は、液不透過性のシートであり、本実施形態では生理用ナプキン1の非肌側の表面を構成する。着衣固定部7は、生理用ナプキン1を下着の肌側面に接着する粘着剤であり、本実施形態では裏面シート3の非肌側の表面に位置する。したがって、生理用ナプキン1では、体液吸収用シート2と補助シート5と吸収体4と裏面シート3と着衣固定部7とが厚さ方向Tにこの順に積層される。なお、生理用ナプキン1は、裏面シート3の非肌側に外装シートを更に備えてもよい。
【0029】
本実施形態では、生理用ナプキン1は、一対のサイドシート6と、一対の着衣固定部8と、を更に備える。一対のサイドシート6は、親水性又は撥水性のシートであり、本実施形態では補助シート5における幅方向Wの両側に位置する。一対のサイドシート6は、幅方向Wの内側に、長手方向Lに沿って延びる一対の防漏壁16を含んでいる。一対の防漏壁16の各々は、幅方向Wの外側の端部を固定端16E1とされ、補助シート5と接合し、内側の端部を自由端16E2とされ、部材と非接合しない。防漏壁16は、自由端16E2に、長手方向Lに沿って延びる弾性部材を有してもよい。幅方向Wにおいて、体液吸収用シート2の幅方向Wの端縁2Eは、幅方向Wに対向する防漏壁16の固定端16E1及び自由端16E2から離間しており、したがって、平面視で、体液吸収用シート2と一対の防漏壁16との間に補助シート5が露出している。一対の着衣固定部8は、一対のウイング部9を下着の非肌側面に接着する粘着剤であり、本実施形態では一対のウイング部9における裏面シート3の非肌側の表面に位置する。
【0030】
本実施形態では、生理用ナプキン1は、長手方向Lの略中央に位置し、長手方向Lに延びる一対の圧搾溝12及び一対の圧搾溝13と、長手方向Lの前方及び後方にそれぞれ位置する圧搾溝11及び圧搾溝14と、長手方向L及び幅方向Wの略中央に点状の複数の圧搾溝15と、を備える。それら圧搾溝11~15は、体液吸収用シート2と補助シート5と吸収体4とが厚さ方向Tに圧搾され形成される。なお、圧搾溝11~15の形状は任意であり、生理用ナプキン1は、圧搾溝11~15少なくとも一つを備えなくてもよい。
【0031】
本実施形態では、体液吸収用シート2は、長手方向Lに長く幅方向Wに短い略矩形の形状で、長手方向Lの両端辺が略半円形の形状を有し、肌側の表面である第1面2S1と非肌側の表面である第2面2S2とを有している。補助シート5は、長手方向Lに長く幅方向Wに短い略矩形の形状で、長手方向Lの両端辺が略半円形の形状を有する。補助シート5は、体液吸収用シート2と比較して幅方向Wにやや大きい形状を有する。したがって、補助シート5の幅方向Wの長さ(幅)は、体液吸収用シート2の幅方向Wの長さ(幅)よりも大きい。そして、平面視で、補助シート5の幅方向Wの両端部の各々は、体液吸収用シート2の幅方向Wの両端縁2Eの各々の外側に延出し、一対のサイドシート6と接着剤や熱融着等で接合されている。なお、体液吸収用シート2は、幅方向Wの長さ(幅)が、補助シート5と同程度又はそれより大きくてもよい。その場合、平面視で、体液吸収用シート2の幅方向Wの両端部の各々は、一対のサイドシート6に接合される。なお、生理用ナプキン1は、補助シート5を備えなくてもよい。
【0032】
本実施形態では、体液吸収用シート2、補助シート5、吸収体4及び裏面シート3の各々は互いに接着剤で接合され、裏面シート3の周辺部分と補助シート5の長手方向Lの外側部分及び一対のサイドシート6の幅方向Wの外側部分とは互いに接着剤で接合される。
【0033】
図3は、実施形態に係る体液吸収用シートの構成例を示す平面図及び断面図である。図3(a)は平面図であり、図3(b)は図3(a)のIIIb-IIIb線に沿った断面図である。体液吸収用シート2は、互いに熱融着された複数の熱融着性繊維を含み、一方の面が第1面2S1を構成する不織布層2aと、複数の親水性繊維を含み、一方の面が不織布層2aの他方の面に隣接し、他方の面が第2面2S2を構成する親水性繊維層2bと、を備えている。親水性繊維層2bの複数の親水性繊維の一部は、それぞれ不織布層2aを貫通して第1面2S1に露出している。なお、体液吸収用シート2は、第2面2S2側に他の繊維層(例示:親水性繊維層)を更に備えてもよい。
【0034】
不織布層2aに含まれる複数の熱融着性繊維は、熱融着性繊維同士が互いに接する箇所で熱融着により互いに接合した複数の接合点(融着点)を有している。このような、複数の接合点(融着点)を有する不織布層2aは、複数の熱融着性繊維による骨格構造(マトリックス)を保持していると見ることができる。一方、親水性繊維層2bに含まれる複数の親水性繊維の一部は、それぞれ骨格構造を有する不織布層2aを貫通して、不織布層2a側の第1面2S1に露出している。言い換えれば、複数の親水性繊維が束にならずに、骨格構造の中を分散しつつ、不織布層2aを貫通して第1面2S1に達している。なお、不織布層2aに含まれる複数の熱融着性繊維は、ほとんど親水性繊維層2bを貫通せず、したがって、親水性繊維層2b側の第2面2S2にはほとんど露出していない。本実施形態では、不織布層2aの熱融着性繊維は第2面2S2には露出していない。
【0035】
不織布層2aの熱融着性繊維は、熱融着性を有する繊維であれば、特に制限されない。熱融着性繊維としては、例えば、熱可塑性樹脂繊維が挙げられる。熱可塑性樹脂繊維は、熱可塑性樹脂を含む繊維であれば、特に制限されない。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポチエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ乳酸(PLA)等のポリエステル系樹脂、6-ナイロン等のポリアミド系樹脂などの公知の樹脂が挙げられ、これらの樹脂は単独で使用しても、二種類以上の樹脂を併用してもよい。また、このような熱可塑性樹脂からなる繊維の構造は、特に制限されず、例えば、芯鞘型繊維、サイド・バイ・サイド型繊維、島/海型繊維等の複合繊維;中空タイプの繊維;扁平、Y字形、C字形等の異形断面型繊維;潜在捲縮又は顕在捲縮の立体捲縮繊維;水流、熱、エンボス加工等の物理的負荷により分割する分割繊維などが挙げられ、これらの構造を有する繊維は単独で使用しても、二種類以上の繊維を併用してもよい。本実施形態では、熱融着性繊維としては、PET/PE芯鞘型複合繊維である。
【0036】
親水性繊維層2bの親水性繊維は、親水性を有する繊維であれば、特に制限されない。親水性繊維としては、親水処理をした上記の熱可塑性樹脂繊維や、保水性繊維や、それらの組み合わせが挙げられる。保水性繊維としては、例えば、セルロース系繊維が挙げられる。セルロース系繊維としては、セルロースを含む繊維であれば、特に制限はなく、例えば、天然セルロース繊維、再生セルロース繊維、精製セルロース繊維及び半合成セルロース繊維が挙げられる。天然セルロース繊維としては、植物繊維、例えば、種子毛繊維(例示:コットン)、じん皮繊維(例示:麻)、葉脈繊維(例示:マニラ麻)、果実繊維(例示:やし)が挙げられる。コットンとしては、例えば、ヒルスツム種コットン(例示:アップランドコットン)、バルバデンセ種コットン、アルボレウム種コットン及びヘルバケウム種コットンが挙げられる。また、コットンとしては、オーガニックコットン、プレオーガニックコットン(商標)でもよい。ただし、オーガニックコットンは、GOTS(Global Organic Textile Standard)の認証を受けたコットンを意味する。再生セルロース繊維としては、レーヨン、例えば、ビスコースから得られるビスコースレーヨン、ポリノジック及びモダール、セルロースの銅アンモニア塩溶液から得られる銅アンモニアレーヨン(「キュプラ」とも称される)等の繊維が挙げられる。精製セルロース繊維としては、リヨセル、具体的には、パルプを、N-メチルモルホリンN-オキシドの水溶液に溶解させて紡糸原液(ドープ)とし、N-メチルモルホリンN-オキシドの希薄溶液中に押出して繊維としたものが挙げられる。精製セルロースは、例えば、テンセル(商標)として市販されている。半合成セルロース繊維としては、半合成セルロース、例えば、アセテート繊維、例えば、トリアセテート及びジアセテート等の繊維が挙げられる。中でも、保水性及び肌触りの観点から、天然セルロース繊維が好ましく、コットンがより好ましく、ヒルスツム種コットンが更に好ましい。本実施形態では、親水性繊維としては再生セルロース繊維のレーヨンである。
【0037】
体液吸収用シート2は、不織布層2aと親水性繊維層2bとが互いに交絡(例示:水流交絡)され形成されているので、それぞれの層を構成する繊維の一部はもう一方の層へ混入している。特に、親水性繊維層2bの複数の親水性繊維の一部は、それぞれ不織布層2aを貫通して第1面2S1に露出している。本実施形態では、第1面2S1に露出する親水性繊維の一部は、第1面2S1から、厚さ方向Tの外側(上側)に向って突出する複数の突出親水性繊維30pを含んでいる。それら複数の突出親水性繊維30pの一部は、第1面2S1から、厚さ方向Tの外側(上側)に向って凸な弧状(例示:山の形、ヘアピンの形、ループの形)に突出していてもよい。
【0038】
別の実施形態では、不織布層2aは、熱融着性繊維の他に熱融着しない複数の非熱融着性繊維を更に含んでいる。不織布層2aにおける複数の非熱融着性繊維の割合は、50質量%未満である。不織布層2aにおける骨格構造の維持と変形の自由度とを両立させる観点からである。その割合は、好ましくは、10~40質量%である。非融着性繊維としては、例えば、上記の親水性繊維が挙げられ、好ましくは再生セルロース繊維であり、より好ましくはレーヨンである。なお、複数の非熱融着性繊維は、親水性繊維層2bから混入した親水性繊維とは別である。
【0039】
不織布層2aの熱融着性繊維の繊度は、特に制限されず、例えば1~10dtexが挙げられる。不織布層2aの熱融着性繊維は短繊維及び長繊維(例示:スパンメルト不織布)のどちらでも良い。熱融着性繊維が短繊維の場合での繊維長は、特に制限されず、例えば2~80mmが挙げられる。2mm未満の場合、体液吸収用シート2製造中に、繊維長が短過ぎて繊維同士が交絡し難くなり、強度、厚みがでない。80mmを超える場合、体液吸収用シート2製造中に、繊維長が長過ぎて繊維同士が絡まり易くなり、不織布を均一に形成し難くなる。熱融着性繊維の繊維長としては、10~60mmが好ましく、20~40mmがより好ましい。それに対応して、熱融着性繊維の平均繊維長は、例えば15~50mmが挙げられ、20~45mmが好ましく、25~40mmがより好ましい。熱融着性繊維が長繊維の場合、不織布層2aにおいて、繊維の端部が少なくなり、滑らかで強度が強くなる。
【0040】
なお、不織布層2aが複数の非熱融着性繊維を含む場合、非熱融着性繊維の繊度、繊維長、平均繊維長も、熱融着性繊維の交絡に悪影響を与えない観点から、熱融着性繊維と同程度(0.5~4倍の範囲内)が好ましい。ただし、本実施形態では非熱融着性繊維は用いない。
【0041】
親水性繊維層2bの親水性繊維の繊度は、特に制限されず、例えば1~8dtexが挙げられる。ただし、不織布層2aの熱融着性繊維と親水性繊維層2bの親水性繊維との絡み合いの容易性などの観点から、親水性繊維層2bの親水性繊維の繊度は、不織布層2aの熱融着性繊維の繊度よりも小さい(細い繊維径である)ことが好ましい。親水性繊維層2bの親水性繊維の繊維長は、特に制限されず、例えば1~60mmが挙げられる。1mm未満の場合、体液吸収用シート2製造中に、繊維長が短過ぎて繊維同士が交絡し難く、繊維が不織布層2a側へ突出し難くなる。60mmを超える場合、体液吸収用シート2製造中に、繊維同士が絡まって均一な層を形成し難くなる。親水性繊維の繊維長としては、25~55mmが好ましく、35~50mmがより好ましい。親水性繊維の平均繊維長は、それに対応して、例えば3~55mmが挙げられ、30~50mmが好ましく、35~45mmがより好ましい。
【0042】
なお、親水性繊維層2bは、親水性繊維以外の繊維を、含んでもよい。親水性繊維層2bにおける親水性繊維以外の繊維の繊度、繊維長、平均繊維長も、親水性繊維の交絡に悪影響を与えない観点から、親水性繊維と同程度(0.5~4倍の範囲内)が好ましい。ただし、本実施形態では親水性繊維以外の繊維は用いない。
【0043】
不織布層2a及び親水性繊維層2bの各々の厚さは、特に制限されないが、例えば0.1~4mmが挙げられ、0.2~3mmが好ましく、0.2~2mmがより好ましい。また、体液吸収用シート2の厚みは、特に制限されないが、例えば0.2~6mmが挙げられ、0.4~4mmが好ましく、0.5~3mmがより好ましい。主に吸収性能等(下限)と着用感等(上限)との観点からである。
【0044】
不織布層2a及び親水性繊維層2bの各々の坪量は、特に制限されないが、例えば5~300g/mが挙げられ、8~200g/mが好ましく、10~100g/mがより好ましい。また、体液吸収用シート2の坪量は、特に制限されないが、例えば10~500g/mが挙げられ、15~300g/mが好ましく、20~200g/mがより好ましい。主に吸収性能等(下限)と着用感等(上限)との観点からである。
【0045】
不織布層2aと親水性繊維層2bとは、交絡により互いに接合されている。その交絡方法、すなわち、体液吸収用シート2の製造方法については後述される。
【0046】
本実施形態において、体液吸収用シート2の吸収性能(吸汗性、吸収速度)、液捌け性、及びリウェットの性能は以下のとおりである。吸汗性については、後述される試験方法において、1回目、2回目共に0.05g以上であることが好ましく、0.08g以上であることが好ましい。吸収速度については、後述される試験方法において、1回目、2回目共に10秒以下であることが好ましく、5秒以下であることがより好ましい。液捌け性については、後述される試験方法において、1回目、2回目共に25秒以下であることが好ましく、20秒以下であることがより好ましい。リウェットの性能については、後述される試験方法において、0.8g以下、20%以下であることが好ましく、0.5g以下、15%以下がより好ましい。
【0047】
本実施形態では、図3に示すように、体液吸収用シート2は、平面視で、第1面2S1に分散的に配置された複数の低坪量部LBと、複数の低坪量部LBの各々に隣接する少なくとも一つの高坪量部HBと、を有している。本実施形態では、平面視で、低坪量部LBが第1面2S1に縦・横それぞれ概ね所定間隔で配置され、高坪量部HBが第1面2S1に複数の低坪量部LBの各々を囲むように配置されている。すなわち、平面視で、高坪量部HBの中に、複数の低坪量部LBが概ね格子状に分散されて配置されている。ただし、複数の低坪量部LBと少なくとも一つの高坪量部HBとの関係はその例に限定されず、例えば、高坪量部HBの中に、複数の低坪量部LBが概ね互い違いな千鳥状の格子状に分散されて配置されていてもよいし、複数の低坪量部LBと複数の高坪量部HBとが、互い違いに概ね市松模様のように並んでいてもよい。
【0048】
ここで、低坪量部LBは、高坪量部HBよりも坪量の小さい部分であり、具体的には、平面視で、高坪量部HBの最大坪量の1/2以下の坪量を有する領域をいう。本実施形態では、低坪量部LBの平面視の形状は略円形であるが、この例に制限されず、例えば、略楕円形、略矩形(角が丸い場合を含む)、略菱形(角が丸い場合を含む)などでもよい。また、高坪量部HBの平面視の形状も、同様に、この例に制限されず、上記の各種の形状でもよい。また、高坪量部HB及び低坪量部LBの各々は、いずれも厚さ方向Tに概ね連続しており、したがって、いずれも厚さ方向Tに不織布層2a及び親水性繊維層2bを含んでいる。本実施形態では、複数の低坪量部LBの少なくとも一つは、坪量がゼロの部分を含んでおり、すなわち、第1面2S1から第2面2S2まで貫通する貫通孔Hを含んでいる。
【0049】
体液吸収用シート2の第2面2S2側に位置する親水性繊維層2bの複数の親水性繊維30の一部は、体液吸収用シート2の第1面2S1側に位置する不織布層2aの高坪量部HBを貫通している。したがって、親水性繊維層2bの複数の親水性繊維30の一部は、高坪量部HBの複数の熱融着性繊維20の間を通って、第1面2S1に露出している。親水性繊維30が貫通する高坪量部HBの部分における厚さ方向Tに垂直な断面は、概ね一定である必要はなく、特に限定されるものではない。
【0050】
本実施形態では、親水性繊維層2bの複数の親水性繊維30の一部は、第1面2S1において、低坪量部LBの方よりも高坪量部HBにおいて多く露出している。特に、本実施形態では、高坪量部HBにおける低坪量部LBの近傍の近傍領域HB1の方が、高坪量部HBにおける低坪量部LBから離れた離間領域HB2よりも、第1面2S1に露出している親水性繊維30が多くなっている。
【0051】
本実施形態では、第1面2S1に露出している複数の親水性繊維30の一部は、第1面2S1から、厚さ方向Tの外側に向って突出する複数の突出親水性繊維30pを含んでいる。ただし、親水性繊維30が第1面2S1から厚さ方向Tの外側に突出するとは、第1面2S1における厚さ方向Tの最も外側に位置する熱融着性繊維20よりも外側に親水性繊維30が位置することをいう。その複数の突出親水性繊維30pの一部は、第1面2S1から、厚さ方向Tの外側に向って凸な弧状に突出している。ただし、親水性繊維30が第1面2S1から厚さ方向Tの外側に向って凸な弧状に突出するとは、例えば、親水性繊維30が厚さ方向Tの外側に向って、頂部を有する山の形の外縁を描くように、あるいは、頂部を有するヘアピンの形やループの形を描くように突出する場合を含んでいる。
【0052】
次に、実施形態に係る体液吸収用シートの製造方法について説明する。図4図6は、実施形態に係る体液吸収用シートの製造方法を説明する図である。図4(a)は、その製造方法で用いる支持体50の構成例を示す平面図であり、図4(b)は図4(a)におけるIVb-IVb線に沿った断面図である。図5(a)~図5(c)は、体液吸収用シートの製造方法の各工程を説明する模式図である。図6は、体液吸収用シートの製造過程を説明する模式図である。ただし、いずれの図においても個々の繊維は明示されていない。
【0053】
体液吸収用シート2である体液吸収用シート102は、不織布層2aとなる不織布層102aと、親水性繊維層2bとなる繊維ウェブ102b’とを交絡することで製造される。図4は、その交絡のとき、不織布層102aと繊維ウェブ102b’とを積層して載置する支持体50の構成例を示している。支持体50は、メッシュ状の支持部材で形成されており、不織布層102a及び繊維ウェブ102b’が載置される側の表面に設けられた複数の突出部51と、複数の突出部51に隣接する複数の貫通口52と、を有している。本実施形態では、支持体50は、細線状の支持部材(例示:樹脂線、金属線)が平織網状又は綾織網状に配置されたメッシュで形成されている。この場合、突出部51は、メッシュにおける、細線状の支持部材が相対的に上方へ突出した部分である。貫通口52は、メッシュにおける、網目の部分である。なお、支持体50の構成は、この例に限定されず、例えば、支持板(例示:樹脂板、金属板)に複数の貫通口を設け、支持板の表面における貫通口の無い箇所に複数の突出部を設けた支持体が挙げられる。
【0054】
本実施形態に係る、第1面102S1と第2面102S2とを有する体液吸収用シート102の製造方法は、以下のとおりである。
【0055】
まず、互いに熱融着された複数の熱融着性繊維を含み、一方の面が第1面102S1を構成する不織布層102aを準備する(準備工程)。不織布層102aは、例えば、複数の熱融着性繊維を含む繊維を用いてウェブを形成し、エアスルー法により、そのウェブの複数の熱融着性繊維同士を互いに接点で熱融着させることで形成される。ただし、そのウェブは、カード法、メルトブローン法、スパンボンド法、エアレイド法などで形成できる。不織布層102aは、複数の熱融着性繊維による骨格構造(マトリックス)を有しており、実質的には不織布層2aである。
【0056】
次いで、図5(a)に示すように、メッシュ状の支持体50の表面に、不織布層102aの一方の面が接し、不織布層102aの他方の面に、複数の親水性繊維を含む繊維ウェブ102b’の一方の面が接するように、支持体50に不織布層102a及び繊維ウェブ102b’を載置する(載置工程)。ただし、繊維ウェブ102b’は、複数の親水性繊維を含む繊維を用いて、カード法、エアレイド法などで形成できる。それにより、不織布層102a及び繊維ウェブ102b’を備える体液吸収用シート102’は、その第1面102S1が支持体50に接するように、支持体50に載置される。
【0057】
次いで、図5(b)に示すように、不織布層102a上に載置された繊維ウェブ102b’の他方の面(体液吸収用シート102’の第2面102S2)に向かって水流wを噴射し、繊維ウェブ102b’の複数の親水性繊維を不織布層102aの複数の熱融着性繊維に交絡させる。それにより、複数の親水性繊維を含み、一方の面が不織布層102aの他方の面に隣接し、他方の面が第2面102S2を構成する親水性繊維層102bが形成される(交絡工程)。すなわち、不織布層102a及び親水性繊維層102bを備える体液吸収用シート102が形成される。その交絡工程において、親水性繊維層102bの複数の親水性繊維の一部は、その水流交絡により、それぞれ不織布層102aを貫通して第1面102S1に露出することになる。なお、ここでは交絡方法として、水流交絡(例示:スパンレース法又はウォータージェット法)を用いているが、交絡方法はこの例に制限されず、他の交絡方法、例えばスチームジェット法、ニードルパン法を用いてもよい。
【0058】
ただし、水流交絡の条件としては、搬送速度:10m/min.水流の単位時間当たりの量:0.05~0.2m/min,水流の圧力:7MPa(第1ノズル)+10MPa(第2ノズル)、第1、第2ノズルのノズル口径:80~120μm、ノズルピッチ:0.5~2mm、2~4列、とした。水流交絡後に得られたシートを120~130℃で乾燥した。
【0059】
このとき、本実施形態では、図5(c)に示すように、水流wのうち、第2面102S2における支持体50の支持部材(例示:樹脂線、金属線)の上方領域に噴射された水流は、繊維ウェブ102b’から不織布層102aへ厚さ方向に移動するに連れて、金属線の上方領域から、貫通口52の上方領域へ横方向に移動する。そして、貫通口52の上方領域へ移動した水流は、支持体50の貫通口52付近の上方領域に噴射された水流と共に、貫通口52を介して、支持体50の裏側へ送出される。その際、噴射された水流が突出部51に衝突することにより、不織布層102aの熱融着性繊維20が水流でかき分けられ易くなる。それにより、熱融着性繊維20が水流でかき分けられたところに、繊維ウェブ102b’の親水性繊維30を進入し易くできる。そして、繊維ウェブ102b’が親水性繊維層102bとなり、不織布層102aと親水性繊維層102bをと備える体液吸収用シート102が形成される。
【0060】
その際、支持体50(の突出部51)の表面が、不織布層102aの第1面102S1と接しているため、支持体50の突出部51の上方領域に噴射された水流wは、支持体50(の突出部51)の表面に平行な方向、すなわち第1面102S1に平行な方向に向かい易くなる。その結果、突出部51の上方領域に位置する親水性繊維30や熱融着性繊維20は、貫通口52の方向へ移動するように交絡される。そのため、貫通口52の上方領域の繊維は、元々貫通口52の上方領域に存在した繊維に加えて、突出部51の上方領域に位置する繊維が加わるため、図6に示すように、繊維が多くなる。そのため、主に貫通口52の上方領域の付近やその周辺領域に高坪量部HBが形成される。一方、支持体50の突出部51の上方領域の繊維は、貫通口52の上方領域に移動してしまうため、図6に示すように、繊維が少なくなる。そのため、主に突出部51の上方領域の付近、に低坪量部LB、更には貫通孔Hが形成される。
【0061】
以上の製造方法により、実施形態に係る体液吸収用シート102、すなわち図1図3を参照して説明された構成を有する体液吸収用シート2が製造される。
【0062】
本体液吸収用シート2では、不織布層2aの複数の熱融着性繊維20が互いに熱融着されており、かつ、親水性繊維層2bの複数の親水性繊維30の一部がそれぞれ不織布層2aを貫通して表面、すなわち第1面2S1に露出している。
それゆえ、不織布層2aが複数の熱融着性繊維20による骨格構造を維持できるので、不織布層2a内に熱融着性繊維20同士間の空隙を多く保持できる。そして、第1面2S1に排出された体液を、複数の親水性繊維30により不織布層2a内の熱融着性繊維20同士間の空隙へ素早く導くことができ、更に親水性繊維層2bへ素早く導くことができる。したがって、体液吸収用シート2では、第1面2S1に排出された体液を短時間で吸収し易くでき、体液を第1面2S1から素早く捌け易くできる。
また、体液吸収用シート2では、複数の親水性繊維30の一部が、それぞれ不織布層2aを貫通して第1面2S1に露出している。言い換えれば、複数の親水性繊維30が束にならずに、分散しつつ、不織布層2aを貫通して第1面2S1に達している。そのため、体液吸収用シート2に体液が吸収され、複数の親水性繊維30に体液が保持されたとしても、第1面2S1の複数の親水性繊維30に保持された体液により表面がべたべたすることや、リウェットが生じることを、起こり難くすることができる。
したがって、体液吸収用シート2では、体液が第1面2S1に戻り難くすることができる。よって、体液吸収用シート2により、吸収性能(吸汗性、吸収速度)が高く、液捌け性が高く、リウェットし難くすることができる。
【0063】
本実施形態の好ましい態様では、体液吸収用シート2において、複数の親水性繊維30の一部は、高坪量部HBの第1面2S1に露出している。それにより、第1面2S1に排出された体液を、露出した親水性繊維30で体液を吸収し易い高坪量部HBの不織布層2aへ素早く導き、更に高坪量部HBの親水性繊維層2bへ素早く導くことができる。したがって、体液吸収用シート2では、第1面2S1に排出された体液をより短時間で吸収し易くでき、体液を第1面2S1からより素早く捌け易くできる。また、体液吸収用シート2では、複数の低坪量部LBを有している。ここで、低坪量部LBでは、吸収され、保持され得る体液の量が少ない。そのため、体液吸収用シート2に体液が吸収されても、複数の低坪量部LBの分だけ、表面の親水性繊維30に保持された体液により表面がべたべたすることや、リウェットが生じることを、より起こり難くすることができる。
【0064】
本実施形態の好ましい態様では、体液吸収用シート2において、高坪量部HBにおける低坪量部LBの近傍の近傍領域HB1の方が、高坪量部HBにおける低坪量部LBから離れた離間領域HB2よりも、第1面2S1に露出している親水性繊維30が多くなっている。このように、高坪量部HBにおける(高坪量部HBと比較して相対的に体液の吸収が遅い)低坪量部LBの近傍に親水性繊維30を多く配置することで、低坪量部LBでの吸収の遅れを補助することができる。
【0065】
本実施形態の好ましい態様では、体液吸収用シート2において、複数の低坪量部LBの少なくとも一つは、第1面2S1から第2面2S2まで貫通する貫通孔Hを有している。それにより、第1面2S1に排出された体液を、低坪量部LBの貫通孔Hを介して、一気に第2面2S2側の親水性繊維層2bへ移行させることができる。それにより、第1面2S1に排出された体液を短時間で吸収し易くでき、体液を第1面2S1から素早く捌け易くできる。
【0066】
本実施形態の好ましい態様では、体液吸収用シート2において、第1面2S1に露出している複数の親水性繊維30の一部のうちの少なくとも一部が、第1面2S1から、厚さ方向Tの外側に向って突出する複数の突出親水性繊維30pを含んでいる。そのため、複数の突出親水性繊維30pにより、肌の表面に存在する微量の体液(例示:汗)も、素早く捕らえることができ、不織布層2aへ素早く導き、更に親水性繊維層2bへ素早く導くことができる。
【0067】
本実施形態の好ましい態様では、体液吸収用シート2において、複数の突出親水性繊維30pの一部が、第1面2S1から、外側に向って凸な弧状に突出している。そのため、その突出親水性繊維30pの弧の略頂部から二方向へ体液を引き込むことができるので、体液を不織布層2aへ、より素早く導き、更に親水性繊維層2bへ、より素早く導くことができる。また、その突出親水性繊維30pのうちの使用者の肌に当接する部分は、凸な弧状の繊維における弧の頂部であり、繊維の先端部ではないため、使用者が肌への違和感などを覚えることを抑制できる。
【0068】
別の実施形態の好ましい態様では、体液吸収用シート2において、不織布層2aが、熱融着しない複数の非熱融着性繊維(図示されず)を50質量%未満で有している。その場合、不織布層2aにおいて、複数の熱融着性繊維20により骨格構造を維持しつつ、複数の非熱融着性繊維により変形の自由度を高めることができる。それにより、不織布層2aにおいて、熱融着性繊維20同士間の空隙を広く保持して、体液を不織布層2aへ素早く導く構造を維持しつつ、不織布層2a、延いては体液吸収用シート2を柔らかくすることができ、体液吸収用シート2の使用感を良好にできる。
【0069】
本実施形態の好ましい態様では、体液吸収用シート2において、複数の熱融着性繊維20より、複数の親水性繊維30の方が、繊度が小さい。熱融着性繊維20の平均繊維径が太いことにより、不織布層2aが複数の熱融着性繊維20による骨格構造をより維持し易く、熱融着性繊維20同士間の空隙を広く保持し易くできる。更に、親水性繊維30の平均繊維径が細いことにより、第1面2S1に露出した親水性繊維30に体液が保持されたとしても、第1面2S1がべたべたすることや、リウェットが生じることを、より起こり難くすることができる。
【0070】
本実施形態の好ましい態様では、体液吸収用シート2において、複数の親水性繊維30は、再生セルロース繊維を含んでいる。ここで、再生セルロース繊維は再生繊維であるため、品質が均一で吸水性に優れている。そのため、体液吸収用シート2では、第1面2S1に排出された体液をより短時間で吸収し易くでき、体液を第1面2S1からより素早く捌け易くできる。
【0071】
本体液吸収用シートの製造方法では、メッシュ状の支持体50に、互いに熱融着された複数の熱融着性繊維20を含む不織布層102aと、複数の親水性繊維30を含む繊維ウェブ102b’と、を順次載置し、繊維ウェブ102b’側から水流交絡を行っている。
その際、不織布層102aでは熱融着性繊維20が予め熱融着されているので、水流交絡しても、熱融着性繊維20による骨格構造を維持できる。それにより、製造された体液吸収用シート2(102)において、熱融着性繊維20同士間の空隙を広く保持できると共に、第1面2S1に排出された体液を、複数の親水性繊維30により不織布層2aへ素早く導き、更に親水性繊維層2bへ素早く導くことができる。
また、繊維ウェブ102b’側から水流を噴射しているので、繊維ウェブ102b’の親水性繊維30を、不織布層102aを貫通させて第1面2S1に達するように交絡できる。それにより、製造された体液吸収用シート2(102)において、体液吸収用シート2に体液が吸収されても、第1面2S1の複数の親水性繊維30に保持された体液により第1面2S1がべたべたすることや、リウェットが生じることを、起こり難くすることができる。よって、吸収性能(吸汗性、吸収速度)が高く、液捌け性が高く、リウェットし難くすることができる体液吸収用シート2を製造することができる。
【0072】
本実施形態の好ましい態様では、体液吸収用シートの製造方法において、支持体50は、不織布層102aの側に突出する複数の突出部51を有している。そのため、交絡工程では、噴射された水流が突出部51に衝突することにより、不織布層102aの熱融着性繊維20が水流でかき分けられ易くなる。それにより、熱融着性繊維20が水流でかき分けられたところに、繊維ウェブ102b’の親水性繊維30を進入し易くすることができる。それにより、より容易に、親水性繊維30の一部を、それぞれ不織布層102aを貫通して第1面2S1に露出させることができる。
【0073】
ただし、低坪量部及び高坪量部の測定方法は以下のとおりである。
(1)体液吸収用シートを250mm×200mmの大きさに切り出して試料とする。
(2)試料の下に黒画用紙を敷く。
(3)Canon Inc.製のimegeRUNNER ADVANCE C553F II を用いて、試料の画像(サイズ:250mm×200mm)をJPEGデータとして取り込む。
(4)Scalar corporation製 USB Digital Scale ver. 1.1.0 を用いて試料の画像(JPEGデータ)の2値化を行う。
(4-1)USB Digital Scaleで試料の画像を開く。
(4-2)画像から測定範囲(1000×500pixels)を切り抜く。
(4-3)切り抜いた画像を2値化する。ただし、2値化の閾値を90に設定する。
(4-4)2値化された画像のうち、幅2~1000pixel×高さ2~500pixelの範囲において、黒色部分をカウントする。黒色部分(黒色の中に、略直線状に橋架けした白部分を含む)を低坪量部とし、白色部分を高坪量部とする。
【0074】
不織布層や親水性繊維層(親水性繊維として保水性繊維を用いた場合)での繊維の種類及び割合は以下のようにして測定される。
すなわち、親水性繊維及び熱融着性繊維をそれぞれ別の色で着色することで、繊維の種類の割合を測定する。(1)体液吸収用シートを70mm×70mmの大きさに切り出して試料とする。(2)試薬カヤステインQ(KayastainQ)(株式会社色染社)にて着色処理を行うことにより、親水性繊維のみ青色に染め、熱融着性繊維のみ黄色に着色する。(3)株式会社キーエンス製のデジタルマイクロスコープVHX-100にて、試料の第1面2S1(不織布層2a)から見たときの青色と黄色の割合を50mm×50mmの範囲で測定することで、第1面2S1における繊維の種類と割合が得られる(図3(a))。一方、第2面2S2(親水性繊維層2b)から見たときの青色と黄色の割合を50mm×50mmの範囲で測定することで、親水性繊維層2bにおける繊維の種類と割合とする。なお、着色後の試料を厚さ方向に沿って(平面方向に垂直に)切断することで、断面での繊維の種類及び割合が得られる(図3(b))。
【0075】
不織布層や親水性繊維層での繊維の繊維長及び平均繊維長は、JIS L 1015:2010の附属書Aの「A7.1 繊維長の測定」の「A7.1.1 A法(標準法)目盛りが付いたガラス板上で個々の繊維の長さを測定する方法」に従って測定される。なお、上記方法は、1981年に発行されたISO 6989に相当する試験方法である。
【0076】
不織布層、親水性繊維層及び体液吸収用シートの坪量は以下の測定方法に従って測定される。一層分の各層又はシートを作製し、その各層を10cm×10cmの大きさに切り出して試料とし、100℃以上の雰囲気での乾燥処理後に質量を測定する。次いで、測定した質量を試料の面積で割り算して試料の坪量を算出する。10個の試料の坪量を平均した値を各層又はシートの坪量とする。
【0077】
不織布層、親水性繊維層及び体液吸収用シートなどのシート部材の厚さは、(株)大栄科学精器製作所製 THICKNESS GAUGE UF-60を用いて測定される。UF-60の測定面の直径は44mmであり、UF-60はシート部材に0.3kPaの圧力を加え、その厚みを測定する。別々の3か所の位置で測定したシート部材の厚さの平均値を、シート部材の厚さとする。
【実施例
【0078】
以下、実施例に基づき、本発明を説明するが、本発明は本実施例に限定されない。本実施例では、体液吸収用シートを作製し、その強度を測定した。
【0079】
(a)試料
実施例1の試料として、図3を参照して説明された体液吸収用シートであって、不織布層は、繊維の種類:PE/PET、繊度・繊維長:2.2dtex×44mm、繊維の割合:100%、坪量:20g/mであり、親水性繊維層は、繊維の種類:レーヨン、繊度・繊維長:1.4dtex×38mm、繊維の割合:100%、坪量:30g/mであるシートを作製した。また、実施例2の試料として、図3を参照して説明された体液吸収用シートであるが、不織布層は、PE/PET、5.6dtex×51mm、100%、20g/mであり、親水性繊維層は、レーヨン、1.4dtex×38mm、100%、30g/mであるシートを作製した。なお、実施例1、2の体液吸収用シートは、図4図6を参照して説明された製造方法で製造された。一方、比較例1の試料としては、不織布層と親水性繊維層とは積層されているが、実施例1、2と異なり、親水性繊維層の親水性繊維は、不織布層を貫通して不織布層側の表面に露出していないシートを作製した。すなわち、不織布層は、PE/PET、3.4dtex×40mm、100%、20g/mであり、親水性繊維層は、レーヨン、1.4dtex×38mm、100%、30g/mであるシートを作製した。
【0080】
(b)評価方法
体液吸収用シートの吸汗性、吸収速度、液捌け性及びリウェットの試験により、実施例1、2、比較例1、の試料を評価した。
【0081】
ただし、体液吸収用シートの吸汗性の試験方法は以下のとおりである。
(1)ストップウォッチ、1mlマイクロピペット、重り(35×50mm:525g)、ろ紙(35×50mm:10枚)、人工尿(イオン交換水2.0L、尿素40.0g、塩16.0g、マグネシウム1.6g、カルシウム0.6g、青粉0.1g)、エアレイド不織布(OUK45(王子キノクロス社製):30×50mm、5枚)、を準備する。ただし、人工尿は、汗を模擬している。
(2)体液吸収用シートを100mm×100mmの大きさに切り出して試料とする。
(3)試料の質量を測定する。
(4)エアレイド不織布を5枚重ねたものにマイクロピペットで人工尿1mlを均等にかける。
(5)試料に、人工尿を塗った側が接するようにエアレイド不織布(5枚重ね)を載せ、その上に重りを載置する。
(6)重りの載置後、2分経過したら、試料の質量を測定する(g:1回目)。
(7)同じ試料に、新しく人工尿1mlをかけたエアレイド不織布を、人工尿を塗った側が接するように載せ、その上に重りを載置する。
(8)重りの載置後、2分経過したら、試料の質量を測定する(g:2回目)。
【0082】
体液吸収用シートの吸収速度、液捌け性及びリウェットの試験方法は以下のとおりである。
(1)マイクロピペット1000~5000μL、重り(35×50mm:525g)、ろ紙(35×50mm:10枚)、穴あきアクリル板(長さ200mm×幅100mm×厚さ8mm、長さ方向及び幅方向の中央に長さ40mm×幅10mmの略矩形状で両短辺が半円形の穴あり)、ストップウォッチ2個、馬血、を準備する。
(2)体液吸収用シートを100mm×100mmの大きさに切り出して試料とする。
(3)試料の中央部に穴あきアクリル板を重ねる。
(4)マイクロピペットを使って馬血2mlを試料に滴下すると同時に、ストップウォッチ2個をスタートさせる。1個は浸透速度(吸収速度)用であり、もう1個は液捌け速度用である。
(5)穴の試料上とアクリル板の穴のまわりから液がなくなったときを浸透終了時と判断して、浸透速度(吸収速度)用のストップウォッチの時間を記録する(秒:1回目)。
(6)試料とアクリル板との間の液が捌けたときを液捌け終了時と判断して、液捌け速度用のストップウォッチの時間を記録する(秒:1回目)。
(7)スタートから30秒後に、マイクロピペットを使って2回目の馬血2mlを試料に滴下する。(その時点で、液捌けしていなくても2回目をスタートさせる。)
(8)穴の試料上とアクリル板の穴のまわりから液がなくなったときを浸透終了時と判断して、浸透速度(吸収速度)用のストップウォッチの時間を記録する(秒:2回目)。
(9)試料とアクリル板との間の液が捌けたときを液捌け終了時と判断して、液捌け速度用のストップウォッチの時間を記録する(秒:2回目)。
(10)スタートから1分30秒後に、アクリル板を取り除き、試料の馬血を滴下した箇所上に、予め質量を測定されたろ紙10枚を載置し、ろ紙10枚上に重りを載置する。
(11)スタートから2分30秒後に、試料から重り及びろ紙を取り除き、ろ紙の質量を測定する。
(12)試料上に載置後のろ紙の質量から、載置前のろ紙の質量を減算して、リウェットを求め(g)、吸収させた馬血の量(4ml≒4g)に対する割合を求める(%)。
【0083】
(3)評価結果
評価結果は、以下の表1のとおりである。
【表1】
【0084】
実施例1/実施例2の試料の吸汗性は、1回目が0.10g/0.42g、2回目が0.13g/0.38gであり、共に0.05g以上であることが分かった。すなわち、汗を良く吸収する性質があることが分かった。一方、比較例1の試料の吸汗性は、1回目が0.00g、2回目が0.02gであり、共に0.05g未満であることが分かった。すなわち、汗を吸収する性質がほとんどないことが分かった。
【0085】
実施例1/実施例2の試料の吸収速度は、1回目が2.5秒/2.2秒、2回目が3.6秒/2.8秒であり、共に10秒以下であることが分かった。すなわち、体液の吸収速度が高いことが分かった。一方、比較例1の試料の吸汗性は、1回目が30秒以上、2回目が18.1秒であり、共に10秒を超えることが分かった。すなわち、体液の吸収速度が非常に低いことが分かった。
【0086】
実施例1/実施例2の試料の液捌け性は、1回目が17.6秒/12.5秒、2回目が18.6秒/14.4秒であり、共に25秒以下であることが分かった。すなわち、体液の液捌け性が高いことが分かった。一方、比較例1の試料の液捌け性は、1回目が30秒以上、2回目が30秒以上であり、共に25秒を超えることが分かった。すなわち、体液の液捌け性が非常に低いことが分かった。
【0087】
実施例1/実施例2の試料のリウェットは、0.44/0.38g、11.6%/9.6%であり、0.8g以下、20%以下であることが分かった。すなわち、リウェットが生じ難い性質があることが分かった。一方、比較例1の試料のリウェットは、0.98g、24.5%であり、0.8g超、20%超であることが分かった。すなわち、リウェットが生じ易い性質があることが分かった。
【0088】
本発明の吸収性物品は、上述した各実施形態に制限されることなく、本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内において、適宜組合せや変更等が可能である。
【符号の説明】
【0089】
2 体液吸収用シート
2a 不織布層
2b 親水性繊維層
2S1 第1面
2S2 第2面
20 熱融着性繊維
30 親水性繊維
図1
図2
図3
図4
図5
図6