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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20241108BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20241108BHJP
   C08K 9/06 20060101ALI20241108BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20241108BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20241108BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/36
C08K9/06
C08L63/00 C
H01L23/30 R
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020176729
(22)【出願日】2020-10-21
(65)【公開番号】P2022067877
(43)【公開日】2022-05-09
【審査請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(72)【発明者】
【氏名】浜坂 剛
(72)【発明者】
【氏名】全 載完
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-105857(JP,A)
【文献】特開2016-121294(JP,A)
【文献】特開2018-107157(JP,A)
【文献】特開2013-040298(JP,A)
【文献】特開2005-022915(JP,A)
【文献】特開2014-012763(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08G 59/00-59/72
H01L 23/29-23/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェニル基を有するシランカップリング剤によって表面処理された第1の球状シリカ粒子(A)、フェニル基を有するシランカップリング剤によって表面処理された第2の球状シリカ粒子(B)、及び樹脂(C)を含有し、
前記第1の球状シリカ粒子(A)が、レーザー回折散乱法により測定される体積基準での累積50%径(D50)が0.3μm~1.0μmであり、
前記第2の球状シリカ粒子(B)が、レーザー回折散乱法により測定される体積基準での累積50%径(D50)が0.1μm~0.2μmであり、
前記球状シリカ粒子(A)と(B)との合計の配合量が、前記樹脂(C)100質量部に対して50質量部から900質量部であり、
かつ(A)と(B)との合計を100質量%とした際、(B)の割合が5~30質量%であり、
前記シランカップリング剤が、フェニルトリメトキシシランまたはフェニルトリエトキシシランであるアンダーフィル剤用の液体状樹脂組成物。
【請求項2】
前記樹脂(C)が、エポキシ樹脂である、請求項1に記載の液体状樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の液体状樹脂組成物からなる半導体用封止材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、特に半導体封止材に好適に用いられる樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高性能化、小型軽量化に伴い、搭載される半導体パッケージの形態も、高集積化、高密度化、薄型化が進んでいる。このような半導体パッケージの実用化には、集積回路の設計とともに、その設計に適した封止材の開発が必要不可欠である。
【0003】
例えば、半導体チップ(半導体素子)を配線基板に実装する技術に、フリップチップ実装がある。フリップチップ実装は、半導体チップの表面に突起状電極(バンプ)を形成することにより、この表面を配線基板に向けて直接接続させる実装方法である。接続した半導体チップおよび配線基板、およびバンプを保護するため、アンダーフィル剤と呼ばれる封止樹脂が半導体チップと配線基板との間に充填される。
【0004】
アンダーフィル剤には主にエポキシ樹脂が用いられる。エポキシ樹脂、半導体チップ、および配線基板は、それぞれ異なる線膨張係数を有する。そのため、接続部が応力を吸収できないと、当該接続部にクラックが発生することがある。このクラックの発生を抑えるため、アンダーフィル剤には、シリカなどの線膨張係数の比較的小さいフィラーを分散させている。この際、封止材の線膨張係数を抑えるため、低膨張率フィラーの充填量を高くすることが求められている。
【0005】
一方、半導体素子微細化の進展の中、封止材を流すべきギャップが狭まってきており、フィラーサイズ径を小さくする必要があり、粒子径が0.1μm以上かつ1.0μm以下程度の非晶質シリカ粉末が用いられてきた。しかしながら、粒径の小さなフィラーは比表面積が大きくなるため、一般に凝集性が強くなり、分散性が悪く、樹脂組成物とした際に、樹脂組成物の粘度が高くなり、ギャップへ十分に浸透しないという浸透不良を生じることがわかってきた。
【0006】
前記隙間への浸透不良を解決するために、粒子径が0.1μm以上かつ1.0μm以下の範囲にありながら、凝集性が著しく弱く、分散性に優れており、分散粒子径が小さくて、なおかつ分散時の粒度分布が狭い親水性乾式シリカ粉末を用いた樹脂組成物が提案されている(特許文献1)。
【0007】
一方、凝集性の高いシリカ粉末を表面処理することで、樹脂への分散性が向上しうることが提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2014-152048号公報
【文献】特開2014-201461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載のシリカ粉末を用いた樹脂組成物では、隙間部への浸透性は向上するものの、シリカ粉末の分散粒子径が小さいため、樹脂組成物への増粘効果を誘起し、粘度が高くなる課題が残されていた。
【0010】
一方、特許文献2において、シリカを表面処理することで樹脂への分散性は向上しうるものの、未だ樹脂組成物の粘度特性が十分ではなく、さらなる粘度特性の向上が求められていた。
【0011】
したがって、本発明の目的は、粒子径の小さなシリカフィラーを高い配合割合で配合し、流動性に優れた樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行い、フェニル系のカップリング剤で表面処理されており、かつ各々異なる粒径を持つシリカを用いることにより、粘度特性に優れる樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明は、フェニル基を有するシランカップリング剤によって表面処理された第1の球状シリカ粒子(A)、フェニル基を有するシランカップリング剤によって表面処理された第2の球状シリカ粒子(B)、及び樹脂(C)を含有し、
前記第1の球状シリカ粒子(A)が、レーザー回折散乱法により測定される体積基準での累積50%径(D50)が0.3μm~1.0μmであり、
前記第2の球状シリカ粒子(B)が、レーザー回折散乱法により測定される体積基準での累積50%径(D50)が0.1μm~0.2μmであり、
前記球状シリカ粒子(A)と(B)との合計の配合量が、前記樹脂(C)100質量部に対して50質量部から900質量部であり、
かつ(A)と(B)の合計を100質量%とした際、(B)の割合が5~30質量%であり、
前記シランカップリング剤が、フェニルトリメトキシシランまたはフェニルトリエトキシシランであるアンダーフィル剤用の液体状樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、粘度特性に優れた樹脂組成物を提供することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0016】
本発明の樹脂組成物は、2種類の球状シリカ及び樹脂を必須成分として有する。以下、樹脂組成物を構成する各成分について説明する。
【0017】
<第1の球状シリカ粒子>
本発明の樹脂組成物で用いられる第1の成分は、フェニル基を有するシランカップリング剤によって表面処理された球状シリカ粒子であり、該球状シリカ粒子はレーザー回折散乱法により測定される体積基準での累積50%径(以下、「D50」と記す)が0.3μm~1.0μmの範囲にある。本発明においては、このような球状シリカ粒子を第1の球状シリカ粒子と称する。
【0018】
当該第1の球状シリカ粒子は、フェニル基を有するシランカップリング剤によって表面処理されている必要がある。即ち、シリカ粒子の表面にフェニル基が存在している必要がある。このフェニル基(Phと略記する場合がある)は、Ph-Si-のように直接ケイ素原子に結合していても良いし、ケイ素原子との間にスペーサー的な有機基が挟まっていても良い。また当該フェニル基は、その水素原子の1個又は複数個が他の基で置換されていてもよい。
【0019】
当該第1の球状シリカ粒子における炭素量は、0.01質量%~2質量%であることが好ましく、0.03質量%~1質量%であることがより好ましい。該炭素量は、表面処理の程度を示す代表的な評価指標である。その炭素量の測定は、燃焼酸化法による微量炭素分析装置を用いて実施すれば良い。具体的には、球状シリカ粒子試料を酸素雰囲気中で1350℃に加熱し、得られた炭素量を単位質量当たりに換算して求める。なお、測定に供するシリカ粒子は、前処理として80℃で加熱し、系内を減圧にすることによって空気中で吸着した水分等を除いた後、前記炭素含有量の測定に供する。一般に、表面処理剤はシリカの表面だけを改質し、連通孔のない内部は改質しない(そもそも接触できない)ので、炭素量の増加量が、表面炭素量と見なしてもよい。
【0020】
本発明において第1の球状シリカ粒子のD50が0.3μmより小さな場合、樹脂組成物の粘度が上昇し、流動性が悪化する。また、D50が1.0μmより大きなシリカ粒子である場合、狭ギャップの隙間への浸透性が悪化する。好ましくは0.5μm以下である。なお、狭ギャップの隙間への浸透性をさらに向上させるために、実質的に1.0μm以上のシリカ粒子が含まれていないことが特に好ましい。この場合、D50は0.7μm以下である。
【0021】
本発明における第1の球状シリカ粒子は、その形状が球状である。ここで、球状であるとはシリカ粒子の平均円形度が0.8以上であることを意味する。該平均円形度は0.85以上であることが好ましい。なお上記平均円形度とは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、観察したSEM像を得、画像解析により個々の粒子について下記式(1)によって定義される値C(円形度)を求め、この円形度Cを2000個以上の粒子について相加平均値として出した値である。
【0022】
C=4πS/L2 (1)
[式(1)において、Sは当該シリカ粒子が画像中に占める面積(投影面積)を表す。Lは画像中における当該粒子の外周部の長さ(周囲長)を表す。]
該平均円形度が1に近くなるほど、粒子は真球に近い形状となる。
【0023】
上記のような物性を持つ第1の球状シリカ粒子は、上記特性を満足するものであれば、その製造方法が限定されるものではないが、好適には以下の方法で製造できる。即ち、WO/2020/175160に記載されるような珪素化合物を燃焼させる「乾式法(燃焼法などともいう)」により製造した球状シリカを、公知の方法でフェニル基を有するシランカップリング剤で表面処理する方法である。
【0024】
なお、シランカップリング剤による表面処理の前後でD50が変化することは実質的にないため、乾式法での球状シリカ製造時の条件を調製するなどして、表面処理前にD50を0.3~1.0μmとしておけばよい。
【0025】
フェニル基を有するシランカップリング剤により表面処理する方法は特に制限されず公知の方法を適宜選択・採用すればよく、いわゆる乾式、湿式のいずれでもよく、またバッチ式、連続式のいずれでもよい。また、反応装置も流動床式、固定庄式、あるいは攪拌器、混合器、さらに、静置式であってもよい。なかでも、反応の均一性や促進性を考慮すれば、流動床式、攪拌器、混合器などでシリカ粒子を流動させて反応させることがより好ましい様態である。
【0026】
第1のシリカ粒子を製造する際に用いるフェニル基を有するシランカップリング剤の量は特に制限されないが、少なすぎると表面処理が不十分となり、多すぎるとシリカ粉末表面に対する存在量が過剰になりすぎ、凝集塊が生成する傾向が強くなる。そのため、使用するシランカップリング剤の量は、シリカ粒子100質量部に対して、0.05~80質量部とすることが好ましく、0.1~40質量部とすることがより好ましく、0.5~5質量部とすることが最も好ましい。
【0027】
第1の球状シリカ粒子を製造するために用いるフェニル基を有するシランカップリング剤としては、シリカ粒子の表面にフェニル基を導入できるシランカップリング剤であれば特に限定されず、例えば、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。なお本発明におけるシランカップリング剤としては、ここに列記したようなアルコキシ基を加水分解性基として持つものに限定されず、加水分解性基が他の基である化合物も含む。そのような化合物としては、例えば、フェニルトリクロロシラン等が挙げられる。
【0028】
樹脂組成物の保存安定性や、コスト、製造のし易さや精製の容易さ(シリカへの不純物混入)等を考慮すると、これらのシランカップリング剤の中でもフェニルトリメトキシシランおよびフェニルトリエトキシシランが特に好ましい。
【0029】
<第2の球状シリカ粒子>
本発明で用いられる第2の成分は、フェニル基を有するシランカップリング剤によって表面処理された球状シリカであり、該球状シリカ粒子はD50が、0.1μm~0.2μmの範囲にある。本発明においては、このような球状シリカ粒子を第2の球状シリカ粒子と称する。
【0030】
当該第2の球状シリカ粒子も、フェニル基を有するシランカップリング剤によって表面処理されている必要がある。即ち、シリカ粒子の表面にフェニル基が存在している必要がある。このフェニル基(Phと略記する場合がある)は、Ph-Si-のように直接ケイ素原子に結合していても良いし、ケイ素原子との間にスペーサー的な有機基が挟まっていても良い。また当該フェニル基は、その水素原子の1個又は複数個が他の基で置換されていてもよい。
【0031】
当該第2の球状シリカ粒子における炭素量は、0.01質量%~3質量%であることが好ましく、0.05質量%~2質量%であることがより好ましい。
【0032】
充填性を向上させる観点から、第2のシリカ粒子のサイズは0.2μm以下であることが好ましい。一方、D50が0.1μm未満の球状シリカは入手が困難な場合が多く、よって0.1μm以上であることが経済的観点から好ましい。
【0033】
本発明における第2の球状シリカ粒子もまた、第1の球状シリカ粒子と同様にその形状が球状である。
【0034】
第2の球状シリカ粒子の製造方法は、シランカップリング剤で処理する球状シリカ粒子として、D50が0.1~0.2μmのものを用いる以外は、第1の球状シリカ粒子の製造方法と特に変わるところはない。なおD50が0.1~0.2μmの球状シリカは特開2008-019157に開示のある乾式法で製造できる。こちらも表面処理前にD50を0.1~0.2μmとしておけばよい。
【0035】
第2の球状シリカ粒子は、レーザー回折散乱法を用いて測定した体積基準での粒度分布にける変動係数(C.V.値)が、樹脂中への分散性の向上と、樹脂組成物の粘度特性を向上の観点から、35%~50%であることが好ましい。
【0036】
なお本発明における第1の球状シリカ粒子、第2の球状シリカ粒子におけるレーザー回折散乱法による測定は、球状シリカ粒子0.1gを電子天秤ではかりとり、エタノール約40mLを加え、超音波ホモジナイザーを用いて、出力40W、処理時間2分で分散させて得られる分散液を測定試料として得られる値である。
【0037】
<樹脂>
本発明の樹脂組成物における第3の成分は樹脂(C)である。当該樹脂(C)として、エポキシ樹脂、ケイ素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂(メタクリル樹脂)、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。本発明の樹脂組成物を半導体封止材として用いる場合には、エポキシ樹脂が好ましい。
【0038】
エポキシ樹脂としては、1分子中にエポキシ基を2個以上有するオリゴマー、ポリマーが好適である。例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのうち一つを単独で、あるいは複数を混合して用いればよい。
【0039】
<その他>
本発明の樹脂組成物は、上記3成分を必須とするが、これら以外にも、その樹脂組成物の目的・用途に応じて、当該目的・用途において公知の各種成分を含んでいてもよい。
【0040】
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、上記した3つの成分、即ち、第1の球状シリカ粒子(A)、第2の球状シリカ粒子(B)、および樹脂(C)を含み、且つ第1の球状シリカ粒子(A)および第2の球状シリカ粒子(B)の合計配合量が、樹脂(C)100質量部に対して50質量部から900質量部の範囲にある。好ましくは80質量部から800質量部の範囲である。さらには、第1の球状シリカ(A)と第2の球状シリカ(B)の合計を100質量%とした際、(B)が球状シリカ粒子全体に占める割合が5~30質量%である。樹脂組成物に対する球状シリカ粒子(A)および(B)の配合割合及び球状シリカ粒子(B)が球状シリカ粒子全体に占める割合を前記範囲とすることによって、線膨張係数が低く、且つ粘度特性及び狭ギャップの隙間への浸透性に優れた樹脂組成物が得られる。
【0041】
上記のような配合成分からなる本発明の樹脂組成物は、粘度特性に優れる。その理由は明確ではないが、以下のように推察される。D50が0.3μm~1.0μmの球状シリカ粒子とD50が0.1μm~0.2μmの球状シリカ粒子が共にフェニル基を有するシランカップリング剤で表面処理されていることで、シリカ粒子と樹脂との濡れ性が向上する。また、D50が0.3μm~1.0μmの球状シリカ粒子をD50が0.1μm~0.2μmの球状シリカ粒子を所定の割合で併用することで、シリカ粒子全体としての流動性が向上する。これらの理由から、樹脂組成物の流動性が向上し、その結果として樹脂組成物の粘度特性が向上する。
【0042】
<樹脂組成物の作製方法>
本発明の樹脂組成物の製造方法は特に限定されないが、例えば、第1の球状シリカ粒子(A)、第2の球状シリカ粒子(B)、および樹脂(C)並びに必要に応じて用いられるその他の成分を一括して又は別々に、撹拌、混合、分散等させることにより得ることができる。これらの成分の混合、撹拌、分散等のための装置としては、特に限定されるものではなく、撹拌装置、加熱装置等を備えたライカイ機、3本ロールミル、ボールミル、プラネタリーミキサー、ビーズミルなどが挙げられる。これらの装置を用いて上記成分を混合し、混練し、必要に応じて脱泡することによって樹脂組成物を得ることができる。
【実施例
【0043】
以下、本実施形態における実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。
【0044】
<第1の球状シリカ粒子の製造>
WO2020/175160記載の乾式法で製造されたD50が0.36μmの球状シリカ粒子を準備した。表面処理混合器として、ロッキングミキサー(愛知電気製RM-30)を用い、当該球状シリカ粒子(2.97kg)、表面処理剤としてフェニルトリメトキシシラン(信越シリコーン製 KBM-103、14.70g、25μmol/g)をベリスタポンプ(ATTA製 SJ-1211 II-H)を用い2mL/min供給し、混合しながら室温から40℃まで20分で昇温後、60分間40℃で維持した。その後、150℃まで60分で昇温後、150℃で180分間維持した。加熱・混合を停止し冷却し、第1の球状シリカ粒子(A)を得た。
【0045】
<第2の球状シリカ粒子の製造>
特開2008-019157記載の乾式法で製造したD50が0.12μm及びD50が0.11μmの球状シリカ粒子を準備した。これら球状シリカ粒子を用い、表面処理剤量を表1に記載のように変更した以外は、第1の球状シリカ粒子の製造法と同様に実施し、第2の球状シリカ粒子(B-1)及び(B-2)を得た。
【0046】
製造した球状シリカ粒子の各物性の評価方法は以下の通りである。
【0047】
(1)BET比表面積
柴田理化学社製比表面積測定装置SA-1000を用い、窒素吸着BET1点法によりBET比表面積S(m/g)を測定した。
【0048】
(2)レーザー回折散乱法による体積基準粒度分布
50mLのガラス瓶に球状シリカ粒子約0.1gを電子天秤ではかりとり、エタノールを約40ml加え、超音波ホモジナイザー(BRANSON製、Sonifier 250)を用いて、40W・10分の条件で分散させた後、球状シリカ粒子の体積基準50%径(D50)(μm)及び変動係数(C.V.)をレーザー回折散乱法粒度分布測定装置(ベックマンコールター社製、LS 13 320)により測定した。
【0049】
(3)表面炭素量測定
燃焼酸化法(堀場製作所社製、EMIA-511)により球状シリカ粒子の炭素量(質量%)を測定した。具体的には、球状シリカ粒子試料を酸素雰囲気中で1350℃に加熱し、得られた炭素量を単位質量当たりに換算して求めた。なお、測定に供する球状シリカ粒子は、前処理として80℃で加熱し、系内を減圧にすることによって空気中で吸着した水分等を除いた後、前記炭素量の測定に供する。
【0050】
表1に前記方法でカップリング剤処理して得た各球状シリカ粒子の物性を示す。
【0051】
【表1】
実施例1~4,比較例1
これらシリカを用いて樹脂組成物を調製し、その粘度特性を評価した。樹脂組成物の調製法と粘度特性測定法は以下の通りである。
【0052】
(4)樹脂組成物調製法
表2に記載の割合の球状シリカ粒子(A)および(B)18gをビスフェノールA+F型エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル製、ZX-1059)12gに加え、手練りした。手練りした樹脂組成物を自転公転式ミキサー(THINKY製、あわとり練太郎 AR-500)により予備混練した(混練:1000rpm、8分、脱泡:2000rpm、2分)。予備混練後の樹脂組成物を、25℃恒温水槽内にて保管後、三本ロール(アイメックス社製、BR-150HCV ロール径φ63.5)を用いて混練した。混練条件は、混練温度を25℃、ロール間距離を20μm、混練回数を8回として行った。得られた樹脂組成物を、真空ポンプ(佐藤真空製TSW-150)を用いて減圧下、30分間脱泡した。
【0053】
(5)粘度測定
前記混練樹脂組成物をレオメータ(Thermo Fisher Scientific社製、HAAKE MARS40)を用いて粘度を測定した。なお、測定温度は25℃、使用センサーはC35/1(コーンプレート型 直径35mm、角度1°、材質チタン)とした。
【0054】
また、レオメータを用いて25℃で測定されるせん断速度が1s-1における粘度の値を、せん断速度が10s-1における粘度の値で除した値を樹脂組成物のTI(チクソトロピックインデックス)値とした。
【0055】
表2に、各実施例、および各比較例における結果を示す。なお、粘度は測定温度が25℃、せん断速度が1s-1における値である。
【0056】
【表2】
実施例1から4において、粘度、TI値ともに、第2の球状シリカ粒子を含まない比較例1より良好であった。