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7584277高吸水性ポリマーの溶解成分を含む廃液の処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】高吸水性ポリマーの溶解成分を含む廃液の処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/52 20230101AFI20241108BHJP
   C02F 1/56 20230101ALI20241108BHJP
   C02F 3/00 20230101ALI20241108BHJP
   B01D 21/01 20060101ALI20241108BHJP
   B09B 3/70 20220101ALI20241108BHJP
【FI】
C02F1/52 H
C02F1/56 H
C02F3/00 Z
B01D21/01 107B
B01D21/01 102
B09B3/70
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020181754
(22)【出願日】2020-10-29
(65)【公開番号】P2022072367
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【弁理士】
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100192463
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 剛規
(74)【代理人】
【識別番号】100169328
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 健治
(72)【発明者】
【氏名】小西 孝義
(72)【発明者】
【氏名】坂東 健司
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一充
(72)【発明者】
【氏名】森田 英二
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 真平
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-116569(JP,A)
【文献】特開2019-131789(JP,A)
【文献】特開2011-050899(JP,A)
【文献】特開2009-125712(JP,A)
【文献】特開2017-193819(JP,A)
【文献】特開2014-217835(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F1/52-56、72-78、3/00-34
B01D21/01
B09B1/00-5/00
B09C1/00-10
B29B17/00-04
C08J11/00-28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高吸水性ポリマーの溶解成分を含む廃液の処理方法であって、
高吸水性ポリマーを酸化分解することにより得られた、前記廃液に溶解している前記高吸水性ポリマーの溶解成分と、前記廃液に分散しているパルプ繊維を含む分散成分とを含む廃液を準備する廃液準備ステップ、
前記廃液に凝集剤を添加し、前記溶解成分及び前記分散成分を含む凝集物を形成する凝集物形成ステップ、
前記廃液から、前記凝集物を回収する凝集物回収ステップ、
を含
前記廃液準備ステップの前に、前記高吸水性ポリマーをオゾンにより酸化分解し、前記高吸水性ポリマーの前記溶解成分を形成する、酸化処理ステップをさらに含むことを特徴とする、前記処理方法。
【請求項2】
前記廃液が、前記溶解成分と、前記分散成分とを、それらの合計質量に基づいて、50質量%以上且つ99質量%以下と、1質量%以上且つ50質量%以下との比率で含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記廃液が、前記溶解成分と、前記分散成分とを、それらの合計質量に基づいて、5質量%以上且つ50質量%未満と、50質量%超且つ95質量%以下との比率で含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記廃液準備ステップにおいて、前記溶解成分及び前記分散成分の比率の異なる2種以上の水溶液を混合することにより、前記廃液を形成する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記凝集剤が、無機凝集剤と、高分子凝集剤とを含み、
前記凝集物形成ステップにおいて、前記廃液に前記無機凝集剤を添加し、次いで、前記廃液に前記高分子凝集剤を添加する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記無機凝集剤を添加した後且つ前記高分子凝集剤を添加する前に、pH調整剤を添加する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記pH調整剤が、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化マンガン、水酸化鉄(II)、水酸化亜鉛、水酸化銅、及び水酸化アルミニウム、並びにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記高分子凝集剤が、アニオン系高分子凝集剤である、請求項5~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記分散成分が、使用済みの衛生用品を構成する部材である、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記衛生用品を構成する部材が、パルプ繊維、不織布、高吸水性ポリマー、フィルム、糞便、並びにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記凝集物形成ステップの後に、前記廃液を微生物で処理する微生物処理ステップをさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高吸水性ポリマーの溶解成分を含む廃液の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
使用済みの吸収性物品、例えば、使用済みの吸収性物品をリサイクルする検討が行われている。
例えば、特許文献1には、パルプ繊維および高分子吸収材を含む使用済み衛生用品からパルプ繊維を回収する方法であって、該方法が、使用済み衛生用品をオゾン水に浸漬して、高分子吸収材を分解する工程、分解した高分子吸収材が溶けたオゾン水を排出して、高分子吸収材が取り除かれた衛生用品の残渣を得る工程、および高分子吸収材が取り除かれた衛生用品の残渣を、消毒薬を含む水溶液中または水中で攪拌することにより、衛生用品の残渣を洗浄するとともに衛生用品の残渣を構成要素に分解する工程を含むことを特徴とする方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-217835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の方法では、高分子吸収材を、オゾンを用いて分解することを特徴の1つとする。
本願発明者らが確認したところ、分解された高分子吸収材を含む廃液を、排水規制に適合するように、例えば、微生物を用いて処理するためには、微生物の負荷が大きく、それに伴い、処理の長時間化、微生物処理槽の大型化等が必要であることが分かった。
従って、本開示は、簡易に高吸水性ポリマーの溶解成分を回収することができる、高吸水性ポリマーの溶解成分を含む廃液を処理する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示者らは、高吸水性ポリマーの溶解成分を含む廃液の処理方法であって、高吸水性ポリマーを酸化分解することにより得られた、上記廃液に溶解している上記高吸水性ポリマーの溶解成分と、上記廃液に分散している分散成分とを含む廃液を準備する廃液準備ステップ、上記廃液に凝集剤を添加し、上記溶解成分及び上記分散成分を含む凝集物を形成する凝集物形成ステップ、上記廃液から、上記凝集物を回収する凝集物回収ステップを含むことを特徴とする処理方法を見出した。
【発明の効果】
【0006】
本開示の、高吸水性ポリマーの溶解成分を含む廃液を処理する方法は、高吸水性ポリマーの溶解成分を簡易に回収することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
具体的には、本開示は以下の態様に関する。
[態様1]
高吸水性ポリマーの溶解成分を含む廃液の処理方法であって、
高吸水性ポリマーを酸化分解することにより得られた、上記廃液に溶解している上記高吸水性ポリマーの溶解成分と、上記廃液に分散している分散成分とを含む廃液を準備する廃液準備ステップ、
上記廃液に凝集剤を添加し、上記溶解成分及び上記分散成分を含む凝集物を形成する凝集物形成ステップ、
上記廃液から、上記凝集物を回収する凝集物回収ステップ、
を含むことを特徴とする、上記処理方法。
【0008】
上記廃液処理方法は、所定の廃液準備ステップと、所定の凝集物形成ステップと、所定の凝集物回収ステップとを含む。
上記廃液準備ステップでは、廃液が、高吸水性ポリマーの溶解成分とともに、廃液に分散している分散成分をさらに含む。従って、凝集物形成ステップにおいて、上記分散成分を核として、上記高吸水性ポリマーの溶解成分を凝集させることができる。
以上より、上記廃液処理方法は、高吸水性ポリマーの溶解成分を簡易に回収することができる。
【0009】
[態様2]
上記廃液が、上記溶解成分と、上記分散成分とを、それらの合計質量に基づいて、50質量%以上且つ99質量%以下と、1質量%以上且つ50質量%以下との比率で含む、態様1に記載の方法。
【0010】
上記廃液処理方法では、分散成分を所定の比率で含むため、上記分散成分を核として、上記高吸水性ポリマーの溶解成分を凝集させることができる。従って、上記廃液処理方法は、高吸水性ポリマーの溶解成分を簡易に回収することができる。
【0011】
[態様3]
上記廃液が、上記溶解成分と、上記分散成分とを、それらの合計質量に基づいて、5質量%以上且つ50質量%未満と、50質量%超且つ95質量%以下との比率で含む、態様1に記載の方法。
【0012】
上記廃液処理方法では、溶解成分よりも、分散成分が多いため、上記分散成分を核として、上記高吸水性ポリマーの溶解成分をより凝集させやすくなる。従って、上記廃液処理方法は、高吸水性ポリマーの溶解成分を簡易に回収することができる。
【0013】
[態様4]
上記廃液準備ステップにおいて、上記溶解成分及び上記分散成分の比率の異なる2種以上の水溶液を混合することにより、上記廃液を形成する、態様1~3のいずれか一項に記載の方法。
【0014】
上記廃液処理方法では、廃液準備ステップにおいて、溶解成分及び分散成分の比率の異なる2種以上の水溶液を混合することにより、上記廃液を形成する。従って、上記凝集物形成ステップにおいて、上記分散成分を核とする凝集物をより確実に形成することができる。その結果、上記廃液処理方法は、高吸水性ポリマーの溶解成分を簡易に回収することができる。
【0015】
[態様5]
上記凝集剤が、無機凝集剤と、高分子凝集剤とを含み、
上記凝集物形成ステップにおいて、上記廃液に上記無機凝集剤を添加し、次いで、上記廃液に上記高分子凝集剤を添加する、
態様1~4のいずれか一項に記載の方法。
【0016】
上記廃液処理方法では、凝集物形成ステップにおいて、無機凝集剤、次いで、高分子凝集剤を添加する。従って、上記廃液処理方法は、高吸水性ポリマーの溶解成分を簡易に回収することができる。
【0017】
[態様6]
上記無機凝集剤を添加した後且つ上記高分子凝集剤を添加する前に、pH調整剤を添加する、態様5に記載の方法。
【0018】
上記廃液処理方法では、無機凝集剤を添加した後且つ高分子凝集剤を添加する前に、pH調整剤を添加する。従って、上記廃液処理方法は、高吸水性ポリマーの溶解成分を簡易に回収することができる。
【0019】
[態様7]
上記pH調整剤が、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化マンガン、水酸化鉄(II)、水酸化亜鉛、水酸化銅、及び水酸化アルミニウム、並びにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、態様6に記載の方法。
【0020】
上記廃液処理方法では、pH調整剤が、所定の成分から選択される。従って、上記pH調整剤が、中和剤としてpHを調整するのみならず、多価金属イオン(カチオン)が、分散成分、特にマイナスに荷電する分散成分を電気的に中和し、凝集を促すことができる。その結果、上記廃液処理方法は、高吸水性ポリマーの溶解成分を簡易に回収することができる。
【0021】
[態様8]
上記高分子凝集剤が、アニオン系高分子凝集剤である、態様5~7のいずれか一項に記載の方法。
上記廃液処理方法では、高分子凝集剤が、アニオン系高分子凝集剤である。従って、上記廃液処理方法は、高吸水性ポリマーの溶解成分を簡易に回収することができる。
【0022】
[態様9]
上記廃液準備ステップの前に、上記高吸水性ポリマーを酸化分解し、上記高吸水性ポリマーの上記溶解成分を形成する、酸化処理ステップをさらに含む、態様1~8のいずれか一項に記載の方法。
【0023】
上記廃液処理方法は、廃液準備ステップの前に、所定の酸化処理ステップを含む。
高吸水性ポリマーは、その機能上、高い親水性を有するのが一般的である。そのような高い親水性を有する高吸水性ポリマーを酸化分解し、高吸水性ポリマーの溶解成分を形成すると、高吸水性ポリマーの溶解成分が、カルボキシル基、ヒドロキシル基、エーテル基等の親水基を有するため、親水性がより高くなり、より凝集させにくくなる傾向がある。
上記廃液処理方法は、そのような親水性の高く、凝集させにくい高吸水性ポリマーの溶解成分であっても、簡易に回収することができる。
【0024】
[態様10]
上記分散成分が、使用済みの衛生用品を構成する部材である、態様1~9のいずれか一項に記載の方法。
上記廃液処理方法では、分散成分が、使用済みの衛生用品を構成する部材である。従って、廃棄物を利用して、高吸水性ポリマーの溶解成分を簡易に回収することができる。
【0025】
[態様11]
上記衛生用品を構成する部材が、パルプ繊維、不織布、高吸水性ポリマー、フィルム、糞便、並びにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、態様10に記載の方法。
【0026】
上記廃液処理方法では、衛生用品を構成する部材が、所定の物から選択される。従って、廃棄物を利用して、高吸水性ポリマーの溶解成分を簡易に回収することができる。
【0027】
[態様12]
上記凝集物形成ステップの後に、上記廃液を微生物で処理する微生物処理ステップをさらに含む、態様1~11のいずれか一項に記載の方法。
上記方法では、凝集物回収ステップの後に、所定の微生物処理ステップをさらに含むので、微生物処理ステップを効率よく実施することができる。
【0028】
本開示の高吸水性ポリマーの溶解成分を含む廃液の処理方法(以下、単に「廃液処理方法」と称する場合がある)について、以下、詳細に説明する。
本開示の廃液処理方法は、以下のステップを含む。
・高吸水性ポリマーを酸化分解することにより得られた、上記廃液に溶解している上記高吸水性ポリマーの溶解成分と、上記廃液に分散している分散成分とを含む廃液を準備する廃液準備ステップ(以下、単に「廃液準備ステップ」と称する場合がある)
・上記廃液に凝集剤を添加し、上記溶解成分及び上記分散成分を含む凝集物を形成する凝集物形成ステップ(以下、単に「凝集物形成ステップ」と称する場合がある)
・上記廃液から、上記凝集物を回収する凝集物回収ステップ(以下、単に「凝集物回収ステップ」と称する場合がある)
【0029】
本開示の廃液処理方法は、任意ステップとして、以下のステップを含む。
・上記廃液準備ステップの前の、上記高吸水性ポリマーを酸化分解し、上記高吸水性ポリマーの上記溶解成分を形成する、酸化処理ステップ(以下、単に「酸化処理ステップ」と称する場合がある)
・上記凝集物形成ステップの後の、上記廃液を微生物で処理する微生物処理ステップ(以下、単に「微生物処理ステップ」と称する場合がある)
【0030】
<廃液準備ステップ>
廃液準備ステップでは、高吸水性ポリマーを酸化分解することにより得られた、廃液に溶解している高吸水性ポリマーの溶解成分と、廃液に分散している分散成分とを含む廃液を準備する。
【0031】
上記廃液は、廃液に溶解している高吸水性ポリマーの溶解成分と、廃液に分散している分散成分とを含む。
上記高吸水性ポリマーの溶解成分は、酸化分解することにより得られる。
上記高吸水性ポリマーとしては、特に限定されず、例えば、衛生用品に含まれる物が挙げられる。上記衛生用品としては、例えば、紙おむつ、尿取りパッド、生理用ナプキン、ベッドシート、ペットシート等が挙げられる。
上記衛生用品は、例えば、液透過性シートと、液不透過性シートと、それらの間に配置された、上記高吸水性ポリマーを含む吸収体とを備えている。上記吸収体は、高吸水性ポリマーに加えて、パルプ繊維を含むことができる。
【0032】
上記高吸水性ポリマーとしては、上記衛生用品の技術分野で公知のものが挙げられ、例えば、デンプン系、セルロース系、合成ポリマー系の高吸水性ポリマーが挙げられる。デンプン系又はセルロース系の高吸水性ポリマーとしては、例えば、デンプン-アクリル酸(塩)グラフト共重合体、デンプン-アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物等が挙げられる。合成ポリマー系の高吸水性ポリマーとしては、例えば、ポリアクリル酸塩系、ポリスルホン酸塩系、無水マレイン酸塩系、ポリアクリルアミド系、ポリビニルアルコール系、ポリエチレンオキシド系、ポリアスパラギン酸塩系、ポリグルタミン酸塩系、ポリアルギン酸塩系、デンプン系、セルロース系等の高吸水性ポリマー(SAP,Super Absorbent Polymer)等が挙げられる。
【0033】
上記廃液に含まれる高吸水性ポリマーの溶解成分は、高吸水性ポリマーを、例えば、酸化剤を含む水溶液に浸漬することにより得ることができる。当該工程については、後述の酸化処理ステップにおいて説明する。
高吸水性ポリマーを酸化分解することにより得られる、高吸水性ポリマーの溶解成分は、元の高吸水性ポリマーよりも分子量が小さくなっているとともに、元の高吸水性ポリマーが有していた親水基、例えば、カルボキシル基を有している。また、高吸水性ポリマーの溶解成分は、酸化により生じた、カルボキシル基、ヒドロキシル基、エーテル基等の親水基を有するため、親水性が非常に高く、凝集させにくい傾向がある。
【0034】
上記分散成分としては、後述の凝集物形成ステップ凝集物の核となり得るものであれば、特に制限されない。上記高吸水性ポリマーが、衛生用品に含まれるものである場合には、衛生用品を構成する部材であることができる。それにより、廃棄物を利用して、高吸水性ポリマーの溶解成分を簡易に回収することができる。
【0035】
上記衛生用品を構成する部材としては、例えば、液透過性シートを構成しうる部材(例えば、布帛、フィルム)液不透過性シートを構成しうる部材(例えば、フィルム)、吸収体(例えば、吸収コア及びコアラップ)を構成しうる部材(例えば、布帛、高吸水性ポリマー、パルプ繊維)、着衣に粘着させるための粘着剤、上記部材を接合するための接着剤、糞便等が挙げられる。それにより、廃棄物を利用して、高吸水性ポリマーの溶解成分を簡易に回収することができる。
【0036】
本明細書では、上記溶解成分と、上記分散成分とは、以下の通り区画される。
JIS K 0102:2016「工業廃水試験方法」の「14.懸濁物質及び蒸発残留物」に従い、「a)懸濁物質」及び「c)溶解性蒸発残留物」が、それぞれ、上記分散成分及び溶解成分に該当する。
なお、上記試験では、ろ過材として、「有機性ろ過膜」を選択する。
【0037】
上記廃液は、上記溶解成分を、上記分散成分と同等以上含む(以下、「溶解成分リッチ」と称する場合がある)第1廃液であることができる。例えば、第1廃液は、上記溶解成分及び分散成分を、それらの合計質量に基づいて、好ましくは50質量%以上且つ99質量%以下及び1質量%以上且つ50質量%以下、より好ましくは65質量%以上且つ95質量%以下及び5質量%以上且つ35質量%以下、そしてさらに好ましくは75質量%以上且つ95質量%以下及び5質量%以上且つ25質量%以下の比率で含むことができる。それにより、上記分散成分を核として、上記高吸水性ポリマーの溶解成分を凝集させることができる。
【0038】
上記廃液は、上記分散成分を、上記溶解成分よりも多く含む(以下、「分散成分リッチ」と称する場合がある)第2廃液であることができる。例えば、第2廃液は、上記溶解成分及び分散成分を、それらの合計質量に基づいて、例えば、5質量%以上且つ50質量%未満及び50質量%超且つ95質量%以下、好ましくは5質量%以上且つ40質量%以下及び60質量%以上且つ95質量%以下、そしてより好ましくは5質量%以上且つ35質量%以下及び65質量%以上且つ95質量%以下の比率で含むことができる。それにより、凝集物の核となり得る分散成分の比率が増えるため、次の凝集物形成ステップで、凝集物を形成しやすくなる。
【0039】
上記廃液準備ステップでは、上記溶解成分及び上記分散成分の比率の異なる2種以上の水溶液(例えば、廃液)を混合することにより、上述の比率を有する廃液(第1廃液又は第2廃液)を形成することができる。
例えば、分散成分リッチの第1水溶液(例えば、上述の第2廃液の比率を有する第1水溶液)に、溶解成分リッチの第2水溶液(例えば、上述の第1廃液の比率を有する第2水溶液)を混合することにより、新たな比率を有する廃液(例えば、上述の第1廃液の比率を有する新たな廃液、又は上述の第2廃液の比率を有する新たな廃液)を形成することができる。
【0040】
また、溶解成分リッチの第1水溶液(例えば、上述の第1廃液の比率を有する第1水溶液)に、分散成分リッチの第2水溶液(例えば、上述の第2廃液の比率を有する第2水溶液)を混合することにより、新たな比率を有する廃液(例えば、上述の第1廃液の比率を有する新たな廃液、又は上述の第2廃液の比率を有する新たな廃液)を形成することができる。
【0041】
<酸化処理ステップ>
本開示の廃液処理方法では、酸化処理ステップは、任意ステップである。
上記酸化処理ステップでは、廃液準備ステップの前に、高吸水性ポリマーを酸化分解し、高吸水性ポリマーの溶解成分を形成する。
上記酸化処理ステップでは、例えば、高吸水性ポリマーを、酸化剤を含む酸化剤含有水溶液で処理し、高吸水性ポリマーを酸化分解し、酸化分解された高吸水性ポリマーを酸化剤含有水溶液に溶解させることにより、高吸水性ポリマーの溶解成分を含む廃液を形成することができる。
【0042】
上記酸化剤としては、オゾン(例えば、オゾン含有ガス)、過酸化水素、二酸化塩素、過酢酸、次亜塩素酸ナトリウム等が挙げられる。
上記酸化処理ステップとしては、例えば、特開2014-217835号公報、特開2016-881号公報、特開2019-007119号公報、特開2019-085447号公報、特開2019-108639号公報、特開2019-108640号公報等に記載の工程が挙げられる。
【0043】
<凝集物形成ステップ>
上記凝集物形成ステップでは、上記廃液に凝集剤を添加し、上記溶解成分及び上記分散成分を含む凝集物を形成する。
上記凝集剤は、特に制限されず、無機凝集剤、高分子凝集剤(ノニオン系高分子凝集剤、アニオン系高分子凝集剤、カチオン系高分子凝集剤)等が挙げられる。
【0044】
上記無機凝集剤としては、例えば、ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、ポリ硫酸第二鉄等が挙げられる。
上記無機凝集剤は、その種類によっても異なるが、廃液に、好ましくは1,000~40,000ppm、そしてより好ましくは2,000~30,000ppmの濃度で添加される。凝集作用の観点からである。なお、上記無機凝集剤の濃度は、上記溶解成分の濃度(量)によって変化し、溶解成分の濃度が高くなるほど(量が増えるほど)、上記無機凝集剤の濃度は高くなる傾向にある。
【0045】
上記ノニオン系高分子凝集剤としては、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、グアーガム、デンプン、水溶性尿素樹脂等が挙げられる。
上記アニオン系高分子凝集剤としては、ポリアクリル酸ソーダ・ポリアクリルアミドの部分加水分解物、カルボキシメチルセルロース-ナトリウム塩、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0046】
上記カチオン系高分子凝集剤としては、例えば、ポリアクリルアミドのカチオン変性物(マンニッヒ変性物、ホフマン変性物など)、キトサン、ポリビニルイミダシリン、ポリジアリルアミン、ポリエチレンイミン、ポリビニルピリジン、カチオン化デンプン、エピクロルヒドリン-アミン縮金物、8級窒素含有(メタ)アクリレート又は(メタ)アクリルアミドと酸との塩(共)重合体、4級窒素含有(メタ)アクリレート又は(メタ)アクリルアミド(共)重合体、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0047】
上記高分子凝集剤としては、上記アニオン系高分子凝集剤が好ましい。アニオン系高分子凝集剤は、カチオン系である無機凝集剤と併用することにより、高吸水性ポリマーの溶解成分を簡易に回収しやすくなる。
【0048】
上記高分子凝集剤は、その種類によっても異なるが、廃液に、好ましくは1ppm以上、そしてより好ましくは3ppm以上の濃度で添加される。凝集作用の観点からである。なお、上記高分子凝集剤の濃度の上限は、特に制限されるものではないが、廃液の粘度等を考慮すると、30,000ppmが挙げられる。
【0049】
上記凝集剤として、上記無機凝集剤及び高分子凝集剤を併用する場合には、上記廃液に、上記無機凝集剤を添加し、次いで、上記廃液に上記高分子凝集剤を添加することが好ましい。それにより、高吸水性ポリマーの溶解成分を簡易に回収することができる。
【0050】
上記凝集物形成ステップでは、凝集物の形成を促進するため、上記廃液に、pH調整剤を添加することができる。
上記pH調整剤としては、酸、アルカリ等が挙げられる。
上記アルカリとしては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の水酸化物、塩等が挙げられる。
【0051】
上記アルカリとしては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化マンガン、水酸化鉄(II)、水酸化亜鉛、水酸化銅、及び水酸化アルミニウム、並びにそれらの塩、例えば、炭酸塩、例えば、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸水素ルビジウム、炭酸セシウム、炭酸水素セシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸マンガン、炭酸水素マンガン、炭酸鉄(II)、炭酸水素鉄(II)、炭酸亜鉛、炭酸水素亜鉛、炭酸銅、炭酸水素銅、並びに炭酸アルミニウム及び炭酸水素アルミニウム等が挙げられる。
【0052】
上記pH調整剤は、必要に応じて廃液に添加することができるが、上記凝集剤として、上記無機凝集剤及び高分子凝集剤を併用する場合には、上記pH調整剤は、上記無機凝集剤を添加した後且つ上記高分子凝集剤を添加する前に添加することが好ましい。それにより、廃液のpHを、高分子凝集剤が作用しやすくなるpHに調整することができる。
【0053】
高分子凝集剤の種類にもよるが、上記pH調整剤は、廃液のpHを、好ましくは5.0~9.0、そしてより好ましくは6.0~8.0とするように添加される。それにより、高吸水性ポリマーの溶解成分を簡易に回収することができる。
【0054】
<凝集物回収ステップ>
上記凝集物回収ステップでは、上記廃液から、上記凝集物を回収する。
上記凝集物は、当技術分野で公知の方法、例えば、ベルトプレス脱水機、スクリュープレス脱水機等を用いて回収することができる。
【0055】
<微生物処理ステップ>
本開示の廃液処理方法では、微生物処理ステップは、任意ステップである。
上記微生物処理ステップでは、上記凝集物形成ステップの後に、上記廃液を微生物で処理する。微生物で処理することにより、廃液を排出規制に適合させやすくなる。
微生物処理ステップは、当技術分野で公知の方法、例えば、特開2016-123973号公報に従って実施することができる。
【実施例
【0056】
以下、例を挙げて本開示を説明するが、本開示はこれらの例に限定されるものではない。
[製造例1]
ポリアクリル酸ナトリウム系の高吸水性ポリマー1質量部と、脱イオン水99質量部とを混合した第1水溶液を形成し、第1水溶液を、以下の条件でオゾン処理し、1質量%の高吸水性ポリマーの溶解成分を含む簡易廃液Aを準備した。
・酸化剤:オゾン含有ガス
・オゾン含有ガス中のオゾン濃度:200g/m3
・形態:ナノバブル
・処理時間:30分
・pH:7.0
なお、簡易廃液Aには、分散成分[a)懸濁物質]は含まれていなかったため、簡易廃液Aは、高吸水性ポリマーの溶解成分を、1.0質量%の濃度で含んでいた。
【0057】
[製造例2]
パルプ繊維(針葉樹パルプ繊維)1質量部と、脱イオン水99質量部とを混合した第2水溶液を形成し、第2水溶液を、以下の条件でオゾン処理した。
・酸化剤:オゾン含有ガス
・オゾン含有ガス中のオゾン濃度:200g/m3
・形態:ナノバブル
・処理時間:30分
・pH:7.0
オゾン処理後の第2水溶液を、ナイロン255メッシュでろ過し、ろ液を簡易廃液Bとした。なお、簡易廃液Bは、分散成分として、パルプ繊維を0.01質量%の濃度で含んでいた。
【0058】
[実施例1]
300mLビーカーに、簡易廃液A(溶解成分)と、簡易廃液B(分散成分)とを、簡易廃液Aに由来する溶解成分と、簡易廃液Bに由来する分散成分の質量比とが、99:1となるように混合し、第1廃液を形成した。第1廃液に、無機凝集剤として、ポリテツ(日鉄鉱業株式会社製,ポリ硫酸第二鉄を含む)を11,000ppm(第1廃液に対する)の濃度で添加し、次いで、第1廃液に、pH調整剤として水酸化カルシウムを添加し、pHを7.0に調整し、次いで、第1廃液に、アニオン系高分子凝集剤として、サンフロックAH-400P(三洋化成工業株式会社製,ポリアクリル酸-ポリアクリルアミド共重合体)を、10ppm(第1廃液に対する)の濃度で添加した。
【0059】
凝集剤を添加後の第1廃液を、以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
[ろ過速さ]
◎:ろ過が非常に速い
○:ろ過が速い
×:ろ過が遅い又はろ過できない。
【0060】
[ろ液の清澄性]
◎:ろ液が透明である。
○:ろ液が少し濁っている。
×:ろ液が濁っている。
【0061】
[実施例2~4]
無機凝集剤、pH調整剤及び高分子凝集剤を、表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2~4を実施した。結果を表1に示す。
なお、表1におけるAS-110Pは、三洋化成工業株式会社製のアニオン系高分子凝集剤、サンフロックAS-110P(ポリアクリル酸-ポリアクリルアミド共重合体)である。
【0062】
[比較例1]
廃液を、表1に示すとおりの廃液No.2とした以外は、実施例3と同様にして、比較例1を実施した。結果を表1に示す。
なお、廃液No.2は、表1に記載の無機凝集剤、pH調整剤及び高分子凝集剤と異なる無機凝集剤、pH調整剤及び高分子凝集剤についても検討を行ったが、凝集させることはできなかった。
【0063】
【表1】
【0064】
[実施例5~9]
廃液、無機凝集剤、pH調整剤及び高分子凝集剤を、表2に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例5~9を実施した。結果を表2に示す。
また、凝集物の直径を目視評価した。結果を表2に示す。
【0065】
【表2】