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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】成膜方法および成膜装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/24 20060101AFI20241108BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20241108BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20241108BHJP
   H10K 71/16 20230101ALI20241108BHJP
【FI】
C23C14/24 G
C23C14/24 J
C23C14/24 K
H05B33/14 A
H05B33/10
H10K71/16 166
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020195186
(22)【出願日】2020-11-25
(65)【公開番号】P2022083696
(43)【公開日】2022-06-06
【審査請求日】2023-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】緒方 俊宏
(72)【発明者】
【氏名】宮本 宏寿
(72)【発明者】
【氏名】安川 英宏
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-019369(JP,A)
【文献】国際公開第2017/222009(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0026009(KR,A)
【文献】特開2018-003151(JP,A)
【文献】特開2019-083311(JP,A)
【文献】特開2019-019370(JP,A)
【文献】特開2018-198232(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C14/00-14/58
H10K50/00-99/00
H05B33/00-33/28
44/00
45/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の周縁部を支持面の上で支持する支持部と、前記支持部と対向して前記周縁部を押圧する押圧部と、を有する基板保持手段と、
前記周縁部を押圧している押圧状態、または、前記基板から離間している離間状態となるように、前記押圧部を駆動する駆動手段と、
マスクを保持するマスク保持手段と、
前記基板の被成膜面に沿った平面において、前記基板と前記マスクの相対位置を調整する位置調整を行う位置調整手段と、
前記平面に交差する第1方向において前記基板と前記マスクの相対距離を変化させるように、前記基板保持手段と前記マスク保持手段の少なくともいずれかを移動させる移動手段と、
前記マスクを介して前記基板の前記被成膜面に成膜を行う成膜手段と、
を備える成膜装置を用いた成膜方法であって、
前記成膜装置に搬入された前記基板が前記支持部に支持され、かつ、前記マスクと接触していない状態で、前記駆動手段が前記押圧部を前記押圧状態とする第1の押圧工程と、
前記第1の押圧工程の後に、前記押圧部が前記押圧状態のままで前記移動手段が前記基板保持手段と前記マスク保持手段の少なくともいずれかを移動させて、前記支持部の前記支持面が、前記第1方向において前記マスクの表面と同じ高さとなる位置、または、前記マスクの表面よりも低い位置に来るようにする第1の移動工程と、
前記第1の移動工程の後に、前記基板の少なくとも一部が前記マスクに接触した状態で、前記駆動手段が前記押圧部を前記離間状態とする第1の離間工程と、
前記第1の離間工程の後に、前記駆動手段が前記押圧部を前記押圧状態とする第2の押圧工程と、
前記第2の押圧工程の後に、前記移動手段が、前記基板保持手段と前記マスク保持手段の少なくともいずれかを移動させて、前記基板と前記マスクの前記相対距離を第1の距離とする第2の移動工程と、
前記第2の移動工程の後に、前記位置調整手段が前記基板の被成膜面に沿った平面において前記基板と前記マスクの相対位置を調整する第1の位置調整を行う工程と、
前記第1の位置調整を行う工程の後に、前記移動手段が、前記基板の少なくとも一部が前記マスクに接触した状態となり、かつ、前記押圧部が前記離間状態となるように、前記移動手段が前記基板と前記マスクの前記相対距離を変化させるとともに、前記駆動手段が
前記押圧部を駆動する第2の離間工程と、
前記第2の離間工程の後に、前記駆動手段が、前記押圧部を前記押圧状態とする第3の押圧工程と、
前記第3の押圧工程の後に、前記移動手段が、前記基板保持手段と前記マスク保持手段の少なくともいずれかを移動させて、前記基板と前記マスクの前記相対距離を前記第1の距離よりも短い第2の距離とする第3の移動工程と、
前記第3の移動工程の後に、前記位置調整手段が第2の位置調整を行う工程と、
前記第2の位置調整を行う工程の後に、前記成膜手段が前記マスクを介して前記基板の前記被成膜面に成膜を行う成膜工程と、
を有することを特徴とする成膜方法。
【請求項2】
前記成膜装置が冷却部をさらに備え、
前記成膜工程の前に、前記冷却部が、前記基板の被成膜面と反対側の面に当接する工程を有することを特徴とする請求項1記載の成膜方法。
【請求項3】
前記成膜工程では、前記駆動手段が前記押圧部を前記押圧状態に維持したまま、前記成膜手段が成膜を行う
ことを特徴とする請求項1または2に記載の成膜方法。
【請求項4】
前記成膜工程では、前記駆動手段が前記押圧部を前記離間状態に維持したまま、前記成膜手段が成膜を行う
ことを特徴とする請求項1または2に記載の成膜方法。
【請求項5】
請求項1からのいずれか1項に記載の成膜方法を用いて電子デバイスを製造する、電子デバイスの製造方法。
【請求項6】
基板の周縁部を支持面の上で支持する支持部と、前記支持部と対向して前記周縁部を押圧する押圧部と、を有する基板保持手段と、
前記周縁部を押圧している押圧状態、または、前記基板から離間している離間状態となるように、前記押圧部を駆動する駆動手段と、
マスクを保持するマスク保持手段と、
前記基板の被成膜面に沿った平面において、前記基板と前記マスクの相対位置を調整する位置調整を行う位置調整手段と、
前記平面に交差する第1方向において前記基板と前記マスクの相対距離を変化させるように、前記基板保持手段と前記マスク保持手段の少なくともいずれかを移動させる移動手段と、
前記マスクを介して前記基板の前記被成膜面に成膜を行う成膜手段と、
を備える成膜装置であって、
前記成膜装置に搬入された前記基板が前記支持部に支持され、かつ、前記マスクと接触していない状態で、前記駆動手段が前記押圧部を前記押圧状態とする第1の押圧動作を行い、
前記第1の押圧動作の後に、前記押圧部が前記押圧状態のままで前記移動手段が前記基板保持手段と前記マスク保持手段の少なくともいずれかを移動させて、前記支持部の前記支持面が、前記第1方向において前記マスクの表面と同じ高さとなる位置、または、前記マスクの表面よりも低い位置に来るようにする第1の移動を行い、
前記第1の移動の後に、前記基板の少なくとも一部が前記マスクに接触した状態で、前記駆動手段が前記押圧部を前記離間状態とする第1の離間動作を行い、
前記第1の離間動作の後に、前記駆動手段が前記押圧部を前記押圧状態とする第2の押圧動作を行い、
前記第2の押圧動作の後に、前記移動手段が、前記基板保持手段と前記マスク保持手段
の少なくともいずれかを移動させて、前記基板と前記マスクの前記相対距離を第1の距離とする第2の移動を行い、
前記第2の移動の後に、前記位置調整手段が前記基板の被成膜面に沿った平面において前記基板と前記マスクの相対位置を調整する第1の位置調整を行い、
前記第1の位置調整の後に、前記移動手段が、前記基板の少なくとも一部が前記マスクに接触した状態となり、かつ、前記押圧部が前記離間状態となるように、前記移動手段が前記基板と前記マスクの前記相対距離を変化させるとともに、前記駆動手段が前記押圧部を駆動する第2の離間動作を行い、
前記第2の離間動作の後に、前記駆動手段が、前記押圧部を前記押圧状態とする第3の押圧動作を行い、
前記第3の押圧動作の後に、前記移動手段が、前記基板保持手段と前記マスク保持手段の少なくともいずれかを移動させて、前記基板と前記マスクの前記相対距離を前記第1の距離よりも短い第2の距離とする第3の移動を行い、
前記第3の移動の後に、前記位置調整手段が第2の位置調整を行い、
前記第2の位置調整の後に、前記成膜手段が前記マスクを介して前記基板の前記被成膜面に成膜を行う
ことを特徴とする成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜方法および成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示装置や液晶表示装置などの表示装置が広く用いられている。中でも、パネルディスプレイとして有機ELディスプレイを用いる有機EL表示装置は、応答速度、視野角、薄型化などの特性が優れており、モニタ、テレビ、スマートフォン等に好適に用いられている。
【0003】
このようなパネルディスプレイの製造工程においては、多くの場合、基板とマスクの位置合わせ(アライメント)を行い、マスクを介して基板に成膜材料が成膜される。例えば有機ELディスプレイの場合、成膜装置内で、画素パターンが形成されたマスクと基板を位置合わせし、マスクを介して有機材料や金属材料を成膜することにより、基板上の所望の位置に所望のパターンで機能層や電極金属層を形成する。典型的には、基板の周縁部をクランプにより挟持し、基板とマスクの面を平行にした状態で、基板を平面内で移動させることでアライメントを行う。
【0004】
特許文献1(国際公開第2017/222009号)には、マスク台に載置されたマスクの上方で、周縁部を挟持された基板をマスクに対して相対的に移動させてアライメントを行う技術が開示されている。特許文献1では、大まかな位置合わせを行う第1のアライメント(ラフアライメント)と、高精度な第2のアライメント(ファインアライメント)という二段階のアライメントを行っている。そして、第1のアライメントと第2のアライメントの間に、基板がマスクに接触した状態で基板の挟持を解放することで、基板の歪みを矯正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2017/222009号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、基板の大型化、薄型化が進んでおり、基板の自重による撓みの影響が大きくなっている。また、成膜領域を基板中央部に設ける関係上、基板を挟持できるのは基板の周縁部に限られている。そのため、基板の周縁部(例えば対向する一対の辺部)を基板保持手段で挟持した状態で基板をマスクに載置すると、周縁部を挟持された基板は、基板の自重で撓んだ中央部とマスクとが接触した際に自由な動きが妨げられ、基板に歪みが生じる。この歪みにより、マスクと基板との間に隙間が生じ、マスクと基板との密着性が低下することで、膜ボケ等の原因となる。基板がマスクに接触した状態で基板の挟持を解放することで、基板の歪みを解消し、マスクと基板との密着性を向上させることができる。
【0007】
特許文献1では、基板がマスクに接触した状態で基板の挟持を解放する際に、基板を支持する支持部の支持面が、マスクの基板と接触する面より高い位置にある。本願発明者らは、基板の挟持を解放する際の支持面の位置が、基板の歪みが解消される際に基板がずれる量に影響しうることを見出した。すなわち、特許文献1に記載の方法には、基板のずれ量を低減する余地がある。基板のずれ量が小さければ、後に行われるアライメントの初期位置のばらつきが小さくなり、結果として、短時間でアライメントを行うことができる。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、アライメントの所要時間を短縮しつつ、マスクと基板の密着性を高めるような成膜方法および成膜装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の構成を採用する。すなわち、
基板の周縁部を支持面の上で支持する支持部と、前記支持部と対向して前記周縁部を押圧する押圧部と、を有する基板保持手段と、
前記周縁部を押圧している押圧状態、または、前記基板から離間している離間状態となるように、前記押圧部を駆動する駆動手段と、
マスクを保持するマスク保持手段と、
前記基板の被成膜面に沿った平面において、前記基板と前記マスクの相対位置を調整する位置調整を行う位置調整手段と、
前記平面に交差する第1方向において前記基板と前記マスクの相対距離を変化させるように、前記基板保持手段と前記マスク保持手段の少なくともいずれかを移動させる移動手段と、
前記マスクを介して前記基板の前記被成膜面に成膜を行う成膜手段と、
を備える成膜装置を用いた成膜方法であって、
前記成膜装置に搬入された前記基板が前記支持部に支持され、かつ、前記マスクと接触していない状態で、前記駆動手段が前記押圧部を前記押圧状態とする第1の押圧工程と、
前記第1の押圧工程の後に、前記押圧部が前記押圧状態のままで前記移動手段が前記基板保持手段と前記マスク保持手段の少なくともいずれかを移動させて、前記支持部の前記支持面が、前記第1方向において前記マスクの表面と同じ高さとなる位置、または、前記マスクの表面よりも低い位置に来るようにする第1の移動工程と、
前記第1の移動工程の後に、前記基板の少なくとも一部が前記マスクに接触した状態で、前記駆動手段が前記押圧部を前記離間状態とする第1の離間工程と、
前記第1の離間工程の後に、前記駆動手段が前記押圧部を前記押圧状態とする第2の押圧工程と、
前記第2の押圧工程の後に、前記移動手段が、前記基板保持手段と前記マスク保持手段の少なくともいずれかを移動させて、前記基板と前記マスクの前記相対距離を第1の距離とする第2の移動工程と、
前記第2の移動工程の後に、前記位置調整手段が前記基板の被成膜面に沿った平面において前記基板と前記マスクの相対位置を調整する第1の位置調整を行う工程と、
前記第1の位置調整を行う工程の後に、前記移動手段が、前記基板の少なくとも一部が前記マスクに接触した状態となり、かつ、前記押圧部が前記離間状態となるように、前記移動手段が前記基板と前記マスクの前記相対距離を変化させるとともに、前記駆動手段が前記押圧部を駆動する第2の離間工程と、
前記第2の離間工程の後に、前記駆動手段が、前記押圧部を前記押圧状態とする第3の押圧工程と、
前記第3の押圧工程の後に、前記移動手段が、前記基板保持手段と前記マスク保持手段の少なくともいずれかを移動させて、前記基板と前記マスクの前記相対距離を前記第1の距離よりも短い第2の距離とする第3の移動工程と、
前記第3の移動工程の後に、前記位置調整手段が第2の位置調整を行う工程と、
前記第2の位置調整を行う工程の後に、前記成膜手段が前記マスクを介して前記基板の前記被成膜面に成膜を行う成膜工程と、
を有することを特徴とする成膜方法である。
【0010】
本発明は、また、以下の構成を採用する。すなわち、
基板の周縁部を支持面の上で支持する支持部と、前記支持部と対向して前記周縁部を押圧する押圧部と、を有する基板保持手段と、
前記周縁部を押圧している押圧状態、または、前記基板から離間している離間状態となるように、前記押圧部を駆動する駆動手段と、
マスクを保持するマスク保持手段と、
前記基板の被成膜面に沿った平面において、前記基板と前記マスクの相対位置を調整する位置調整を行う位置調整手段と、
前記平面に交差する第1方向において前記基板と前記マスクの相対距離を変化させるように、前記基板保持手段と前記マスク保持手段の少なくともいずれかを移動させる移動手段と、
前記マスクを介して前記基板の前記被成膜面に成膜を行う成膜手段と、
を備える成膜装置であって、
前記成膜装置に搬入された前記基板が前記支持部に支持され、かつ、前記マスクと接触していない状態で、前記駆動手段が前記押圧部を前記押圧状態とする第1の押圧動作を行い、
前記第1の押圧動作の後に、前記押圧部が前記押圧状態のままで前記移動手段が前記基板保持手段と前記マスク保持手段の少なくともいずれかを移動させて、前記支持部の前記支持面が、前記第1方向において前記マスクの表面と同じ高さとなる位置、または、前記マスクの表面よりも低い位置に来るようにする第1の移動を行い、
前記第1の移動の後に、前記基板の少なくとも一部が前記マスクに接触した状態で、前記駆動手段が前記押圧部を前記離間状態とする第1の離間動作を行い、
前記第1の離間動作の後に、前記駆動手段が前記押圧部を前記押圧状態とする第2の押圧動作を行い、
前記第2の押圧動作の後に、前記移動手段が、前記基板保持手段と前記マスク保持手段の少なくともいずれかを移動させて、前記基板と前記マスクの前記相対距離を第1の距離とする第2の移動を行い、
前記第2の移動の後に、前記位置調整手段が前記基板の被成膜面に沿った平面において前記基板と前記マスクの相対位置を調整する第1の位置調整を行い、

前記第1の位置調整の後に、前記移動手段が、前記基板の少なくとも一部が前記マスクに接触した状態となり、かつ、前記押圧部が前記離間状態となるように、前記移動手段が前記基板と前記マスクの前記相対距離を変化させるとともに、前記駆動手段が前記押圧部を駆動する第2の離間動作を行い、
前記第2の離間動作の後に、前記駆動手段が、前記押圧部を前記押圧状態とする第3の押圧動作を行い、
前記第3の押圧動作の後に、前記移動手段が、前記基板保持手段と前記マスク保持手段の少なくともいずれかを移動させて、前記基板と前記マスクの前記相対距離を前記第1の距離よりも短い第2の距離とする第3の移動を行い、
前記第3の移動の後に、前記位置調整手段が第2の位置調整を行い、 前記第2の位置調整の後に、前記成膜手段が前記マスクを介して前記基板の前記被成膜面に成膜を行う
ことを特徴とする成膜装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アライメントの所要時間を短縮しつつ、マスクと基板の密着性を高めるような成膜方法および成膜装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】成膜装置を含む電子デバイスの製造ラインの模式図
図2】成膜装置の内部構成を示す断面図
図3】成膜装置における基板の挟持装置を示す斜視図
図4】実施例1における処理の流れを示すフロー図
図5】実施例1における基板搬入時の様子を示す断面図
図6】実施例1におけるアライメントの様子を示す断面図
図7】実施例1におけるアライメントの様子を示す続きの断面図
図8】実施例1におけるアライメントの様子を示す続きの断面図
図9】実施例1におけるアライメントの様子を示す続きの断面図
図10】電子デバイスの製造方法を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態を説明する。ただし、以下の記載は本発明の好ましい構成を例示的に示すものにすぎず、本発明の範囲はそれらの構成に限定されない。また、以下の説明における、装置のハードウェア構成及びソフトウェア構成、処理フロー、製造条件、寸法、材質、形状などは、特に記載がない限りは、本発明の範囲をこれに限定しようとする趣旨ではない。
【0014】
基板に所望のパターンの膜を形成する際には、膜の形状に適したマスクパターンを有するマスクを用いる。複数のマスクを用いることで、成膜される各層を任意に構成できる。基板上の所望の位置に膜を形成するために、基板等とマスクの相対位置を精度良くアライメントする必要がある。
【0015】
本発明は、上記のように基板とマスクをアライメントする構成に好適に用いられる。したがって本発明は、基板とマスクのアライメント装置またはアライメント方法として捉えられる。本発明はまた、かかるアライメント装置またはアライメント方法を用いた成膜装置または成膜方法としても捉えられる。本発明はまた、かかる成膜装置または成膜方法を用いた電子デバイスの製造装置または電子デバイスの製造方法としても捉えられる。本発
明はまた、上記の各装置の制御方法としても捉えられる。
【0016】
本発明は、基板の表面にマスクを介して所望のパターンの薄膜材料層を形成する場合に好ましく適用できる。基板の材料としては、ガラス、樹脂、金属、シリコンなど任意のものを利用できる。成膜材料としては、有機材料、無機材料(金属、金属酸化物)など任意のものを利用できる。本発明の技術は、典型的には、電子デバイスや光学部材の製造装置に適用される。特に、有機ELディスプレイやそれを用いた有機EL表示装置、薄膜太陽電池、有機CMOSイメージセンサなどの有機電子デバイスに好適である。ただし本発明の適用対象はこれに限られない。
【0017】
<実施例1>
(電子デバイスの製造ライン)
図1は、電子デバイスの製造ラインの構成を模式的に示す平面図である。このような製造ラインは、成膜装置を含む成膜システムと言える。ここでは、有機ELディスプレイの製造ラインについて説明する。有機ELディスプレイを製造する場合、製造ラインに所定のサイズの基板を搬入し、有機ELや金属層の成膜を行った後、基板のカットなどの後処理工程を実施する。
【0018】
図1に示すように、製造ラインの成膜クラスタ1は、中央に配置される搬送室130と、搬送室130の周囲に配置される成膜室110およびマスクストック室120を含む。成膜室110は成膜装置を含み、基板10に対する成膜処理が行われる。マスクストック室120は使用前後のマスクが収納される。搬送室130内に設置された搬送ロボット140は、基板10やマスク220を搬送室130に搬入および搬出する。搬送ロボット140は、例えば、多関節アームに基板10やマスク220を保持するロボットハンドが取り付けられたロボットである。
【0019】
パス室150は、基板搬送方向において上流側から流れてくる基板10を搬送室130に搬送する。バッファ室160は、搬送室130での成膜処理が完了した基板10を下流側の他の成膜クラスタに搬送する。搬送ロボット140は、パス室150から基板10を受け取ると、複数の成膜室110のうちの一つに搬送する。搬送ロボット140はまた、成膜処理が完了した基板10を成膜室110から受け取り、バッファ室160に搬送する。パス室150のさらに上流側や、バッファ室160のさらに下流側には、基板10の方向を変える旋回室170が設けられる。成膜室110、マスクストック室120、搬送室130、バッファ室160、旋回室170などの各チャンバは、有機EL表示パネルの製造過程で高真空状態に維持される。
【0020】
(成膜装置)
図2は、成膜装置の構成を示す断面図である。複数の成膜室110それぞれには、成膜装置108(蒸着装置とも呼ぶ)が設けられている。成膜装置108は、搬送ロボット140との基板10の受け渡し、基板10とマスク220の相対的な位置関係を調整するアライメント(位置合わせ)、マスク上への基板10の固定、成膜(蒸着)などの一連の成膜プロセスを行う。
【0021】
以下の説明においては、鉛直方向をZ方向とするXYZ直交座標系を用いる。XYZ直交座標系において、成膜時に基板が水平面(XY平面)と平行となるよう固定された場合、矩形の基板10の対向する二組の辺のうち、一組の辺が延伸する方向をX方向、他の一組の辺が延伸する方向をY方向とする。また、Z軸まわりの回転角をθで表す。
【0022】
成膜装置108は、真空チャンバ200を有する。真空チャンバ200の内部は、真空雰囲気、または、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気に維持されている。真空チャンバ20
0の内部には、基板保持ユニット210、マスク220、マスク台221、冷却板230、および蒸発源240が設けられる。
【0023】
基板保持ユニット210(基板保持手段)は、搬送ロボット140から受け取った基板10を支持するホルダとしての機能を有する。マスク220は、例えばメタルマスクであり、基板上に形成される薄膜パターンに対応する開口パターンを持つ。マスク220は、マスク支持ユニットである枠状のマスク台221(マスク保持手段)の上に設置されている。本実施例の構成では、マスク上に基板10が位置決めされて支持されたのち、成膜が行われる。
【0024】
冷却板230(冷却部)は、成膜を行うときに、基板10の、マスク220と接触する面(被成膜面)とは反対側の面に当接し、成膜時の基板10の温度上昇を抑える板状部材である。冷却板230が基板10を冷却することにより、有機材料の変質や劣化が抑制される。冷却板230は、マグネット板を兼ねていてもよい。マグネット板とは、磁力によってマスク220を引き付けることで、成膜時の基板10とマスク220の密着性を高める部材である。なお、基板10とマスク220の密着性を高めるために、基板保持ユニット210が基板10とマスク220を両方とも保持して、アクチュエータ等により密着させても良い。
【0025】
蒸発源240は、蒸着材料を収容するルツボ等の容器、ヒータ、シャッタ、駆動機構、および蒸発レートモニタなどから構成される成膜手段である。ここでは成膜源として蒸発源240を用いる蒸着装置を示したが、これには限定されない。例えば成膜装置108が、成膜源としてスパッタリングターゲットを用いるスパッタリング装置であってもよい。
【0026】
真空チャンバ200の外側上部には、基板Zアクチュエータ250、クランプZアクチュエータ251、冷却板Zアクチュエータ252が設けられる。各アクチュエータは例えば、モータとボールねじ、モータとリニアガイドなどで構成される。真空チャンバ200の外側上部にはさらに、アライメントステージ280が設けられている。
【0027】
基板Zアクチュエータ250(移動手段)は、基板保持ユニット210全体をZ軸方向に駆動して昇降させる。これにより、基板10の被成膜面に沿った平面に交差する方向(交差方向であり、典型的には基板10の被成膜面の平面に垂直な方向。「第1方向」とも呼ぶ)において、基板10とマスク220の相対距離が変化する。クランプZアクチュエータ251(駆動手段)は、基板保持ユニット210の押圧具を駆動して開閉させる。
【0028】
冷却板Zアクチュエータ252(冷却駆動手段)は、冷却板230を駆動して昇降させる。成膜の前には、冷却板Zアクチュエータ252が冷却板230を下降させ、基板10の被成膜面と反対側の面に接触させる。なお、成膜時に冷却板230が基板10を抑え込むことにより、基板10の周縁部を挟持しなくても位置ずれが起きないという副次的な効果も得られる。冷却板230を下降させるタイミングや距離は、基板10の移動を妨げない範囲であれば限定されるものではなく、成膜時に基板10に当接できればよい。また、必ずしも冷却板230を一度に移動させる必要はなく、例えば第1のアライメント時に基板10に接触しない範囲である程度下降させておき、第2のアライメント後の成膜開始前に基板10に当接させてもよい。
【0029】
(アライメントのための構成)
アライメントステージ280は、基板10をXY方向に移動させ、またθ方向に回転させてマスク220との位置を変化させる、アライメント装置である。アライメントステージ280は、基板10の被成膜面に沿った平面において基板10とマスク220の相対位置を調整する、位置調整手段である。アライメントステージ280は、真空チャンバ20
0に接続されて固定されるチャンバ固定部281、XYθ移動を行うためのアクチュエータ部282、基板保持ユニット210と接続される接続部283を備える。なお、アライメントステージ280と基板保持ユニット210を合わせてアライメント装置と考えてもよい。また、アライメンドステージ280と基板保持ユニット210に、さらに制御部270を加えてアライメント装置だと考えても良い。
【0030】
アクチュエータ部282としては、Xアクチュエータ、Yアクチュエータおよびθアクチュエータを積み重ねられたアクチュエータを用いてもよい。また、複数のアクチュエータが協働するUVW方式のアクチュエータを用いてもよい。いずれの方式のアクチュエータ部282であっても、制御部270から送信される制御信号に従って駆動し、基板10をX方向およびY方向に移動させ、θ方向に回転させる。制御信号は、積み重ね方式のアクチュエータであればXYθ各アクチュエータの動作量を示し、UVW方式のアクチュエータであればUVW各アクチュエータの動作量を示す。
【0031】
アライメントステージ280は基板保持ユニット210をXYθ移動させる。なお、本実施例では基板10の位置を調整する構成としたが、マスク220の位置を調整する構成や、基板10とマスク220両方の位置を調整する構成でもよく、基板10とマスク220を相対的に位置合わせできればよい。
【0032】
真空チャンバ200の外側上部には、光学撮像を行って画像データを生成する第1のカメラ260(ラフアライメントカメラ)と第2のカメラ261(ファインアライメントカメラ)が設けられている。第1のカメラ260と第2のカメラ261は、真空チャンバ200に設けられた窓を通して撮像を行う。チャンバ内の気密を保持するために、真空用の封止窓を用いる。本実施例のように二段階アライメントが実行される場合、最初に低解像だが広視野のラフアライメント用のカメラである第1のカメラ260を用いた第1のアライメント(ラフアライメント、第1の位置調整)が行われる。続いて、狭視野だが高解像のファインアライメント用のカメラである第2のカメラ261を用いた第2のアライメント(ファインアライメント、第2の位置調整)が行われる。
【0033】
本実施例では、第1のカメラ260は、基板10およびマスク220の中央部を撮像できる位置に設置される。第1のカメラ260の撮像領域には、基板表面の第1の基板アライメントマーク103と、マスク表面の第1のマスクアライメントマークが含まれる。また第2のカメラ261は、成膜位置に配置された基板10およびマスク220の隅部を撮像できる位置に設置される。第2のカメラ261の撮像領域には、基板表面の第2の基板アライメントマーク104と、マスク表面の第2のマスクアライメントマークが含まれる。本実施例では、基板10およびマスク220の四隅に対応するように、4台の第2のカメラ261を設けている。ただし、アライメントマークの数および設置場所、ならびに、カメラの数、設置場所および種類は、この例に限定されない。
【0034】
制御部270は、第1のアライメントのときは第1のカメラ260による撮像画像データを解析し、パターンマッチング処理などの手法により、第1の基板アライメントマーク、第1のマスクアライメントマークの位置情報を取得する。制御部270は、第1の基板アライメントマークと第1のマスクアライメントマークの位置ずれ量に基づき、基板10を移動させるXY方向、距離および角度θを算出する。そして、算出された移動量を、アライメントステージ280の各アクチュエータが備えるステッピングモータやサーボモータ等の駆動量に変換し、制御信号を生成する。
【0035】
制御部270は同様に、第2のアライメントのときは第2のカメラ261による撮像画像データを解析し、第2の基板アライメントマーク、第2のマスクアライメントマークの位置情報を取得し、基板10を移動させる方向、距離および角度を算出する。
【0036】
典型的には、各基板アライメントマークはフォトリソグラフィーによって基板上に形成され、各マスクアライメントマークは機械加工によりマスク上に形成される。ただし、マークの形成方法はこれらに限られず、材料や目的に応じて選択できる。また、マークの形状やサイズは、カメラの性能や画像解析の能力に応じて設定できる。
【0037】
制御部270は、他にも、アクチュエータ部282の各アクチュエータの動作制御によるアライメント制御、基板10およびマスク220の搬出入制御、成膜制御、その他様々な制御を行う。制御部270は、例えば、プロセッサ、メモリ、ストレージ、I/Oなどを有するコンピュータにより構成可能である。この場合、制御部270の機能は、メモリ又はストレージに記憶されたプログラムをプロセッサが実行することにより実現される。コンピュータとしては、汎用のパーソナルコンピュータを用いてもよいし、組込型のコンピュータ又はPLC(programmable logic controller)を用いてもよい。あるいは、制御部270の機能の一部又は全部をASICやFPGAのような回路で構成してもよい。なお、成膜装置ごとに制御部270が設けられていてもよいし、1つの制御部270が複数の成膜装置を制御してもよい。
【0038】
(基板保持ユニット)
図3の斜視図を参照して、基板保持ユニット210の構成例を説明する。基板保持ユニット210は、基板10の各辺を支持する複数の支持具300(支持部)が設けられた支持枠体301と、各支持具300との間で基板10を挟み込む複数の押圧具302(押圧部)が設けられたクランプ部材303を有する。一対の支持具300と押圧具302が1つの挟持機構305を構成する。クランプZアクチュエータ251の駆動を受けて、押圧具302は、対応する支持具300に対向して基板10の周縁部を押圧する押圧状態と、基板10から離間した離間状態とに駆動される。ただし、挟持機構305の数や配置はこれに限られず、クランプZアクチュエータ251の駆動を受けて、基板10を押圧して保持した状態(押圧状態)と、基板10の押圧が解除されて解放された状態(離間状態)とにできればよい。本明細書では、押圧具302の押圧状態および離間状態にそれぞれ対応して、基板10が押圧状態または離間状態であるとも表現する。なお本実施例において、押圧が解除された状態であっても、基板10が支持具300に載置されて支持された状態であれば、基板10をZ方向もしくはXY方向に移動、またはθ方向に回転させることが可能である。
【0039】
アライメントステージ280が、基板10を支持した状態の基板保持ユニット210に駆動力を伝達することにより、基板10のマスク220に対する相対位置が調整される。基板10のZ方向移動においては、基板Zアクチュエータ250が駆動して基板保持ユニット210を移動させ、基板10を昇降させる。これにより、基板10とマスク220が接近または離間する。基板10のXY移動またはθ回転においては、アライメントステージ280が基板10をXY方向に並進移動、またはθ方向に回転移動させる。アライメント時に基板10が移動するのは、基板が配置されたXY平面内であり、当該平面はマスクが配置された平面と略平行である。すなわち、基板10のXY移動およびθ回転のときには基板10とマスク220のZ方向の距離は変化せず、XY平面内において基板10の位置が変化する。これにより、基板10とマスク220が面内で位置合わせされる。
【0040】
(処理フロー)
図面を参照しながら処理の流れを説明する。図4は、基板10とマスク220のアライメント処理の工程を示すフロー図である。図5図8は、成膜装置内部のうちアライメントに関連する構成を模式的に示す断面図であり、フローの進行に応じた状態の変化を示している。本フローは、成膜室110において基板10とマスク220がアライメントされる様子を説明する。なお、第1のカメラ260、第2のカメラ261、冷却板230およ
び搬送ロボット140については、説明に必要な場合のみ図示する。
【0041】
図5は、成膜室内部を簡略化して示した断面図である。説明の便宜上、成膜室内部において基板10のマスク220に対するZ方向高さh(基板10が撓んでいる場合および基板10の一部がマスクに接触している場合は、支持されている基板周縁部の高さ)を次のように定義する。基板10がマスク台221に設置されたマスク220と密着する密着高さを、h0とする。高さh0では成膜も行われる。基板10が搬入されたときの受け入れ高さを、hcとする。第1のアライメントを行う高さを、hrとする。高さhrのときの基板10とマスク220のZ方向距離を、第1の距離とする。第2のアライメントのための撮像を行う高さを、hf1とする。第2のアライメントのXYθ移動を行う高さを、hf2とする。hf2は、基板10が垂下していてもマスク220と接触しないように設定される。高さhf2のときの基板10とマスク220のZ方向距離を、第2の距離とする。
【0042】
本フローは、マスクストック室120からマスク220が搬入されマスク台221に設置された状態から開始する。ステップS101において、搬送ロボット140が、パス室150から成膜室110に基板10を搬入する。搬送ロボット140は支持具300に基板10の周縁部(端部)を載置すると、成膜室110から退避する。これにより図6(a)に示すように、基板10が受け入れ高さhcにおいて支持具300により支持された状態となる。支持具300に基板10の周縁部が載置された時が、支持具300が基板10の周縁部の支持を開始する時である。
【0043】
ステップS102において、基板保持ユニットの押圧具302が下方に移動し、支持具300との間で基板周縁部を挟持し、図6(b)に示すように基板10をクランプ状態とする(第1の押圧工程、第1の押圧動作)。なお、このクランプは、必ずしも基板10が搬入されてすぐに行う必要は無いが、基板10とマスク220とが接触していない状態で行うものとする。
【0044】
ステップS103において、図6(c)に示すように、基板Zアクチュエータが駆動して、基板10を支持具300と押圧具302により押圧し挟持した状態の基板保持ユニット210を下降させる(第1の移動工程、第1の移動)。このとき、支持具300による支持面のZ方向での高さは、マスク220の表面(上面)の高さ以下とする。図示例では支持面とマスク表面を同じ高さとしている。支持面をマスク220の表面より低い位置まで移動させてもよい。この時点では、S102でのクランプにより基板周縁部が挟持された押圧状態にあるため、マスク220からの応力を受けた基板10の周縁部が外側に逃げることができない。
【0045】
このようにS103では、基板10がマスク220に向かって相対的に移動する向きにおいて、支持具300による支持面が、マスク220の表面と重なるか、マスク220の表面よりも前方に来るように、基板Zアクチュエータが駆動する。このようにする理由は、基板10の垂下をなくして基板10とマスク220の接触領域を広げることにより、後の工程で基板周縁部を解放したときの歪み軽減効果を高めるためである。
【0046】
ステップS104において、図7(a)に示すように、基板保持ユニットの押圧具302が上方に移動し、基板10を押圧状態から離間状態に移行させる(第1の離間工程、第1の離間動作)。このとき、自由になった周縁部が外部に進出可能となった基板10は、マスク220の表面に沿う形状に伸展する。
【0047】
ステップS105において、図7(b)に示すように、基板保持ユニットの押圧具302が下方に移動し、基板10を挟持し押圧する(第2の押圧工程、第2の押圧動作)。以
上の一連の処理により、基板10の歪みが軽減された状態で基板10がクランプされる。続いて基板10が高さhrに移動し(第2の移動工程、第2の移動)、第1のアライメントが行われる(第1の位置調整工程、第1の位置調整)。そして、基板10が高さhf1からhf2に移動する過程で(第3の移動工程、第3の移動)、第2のアライメントが行われる(第2の位置調整工程、第2の位置調整)。言い換えると、アライメント処理を行う前に基板10とマスク220が全面的に密着した状態を作ってからクランプを行うことで、基板の歪み軽減効果を大きくできる。また、本ステップの後工程では基板を押圧状態としたままとすることにより、基板10の移動中のずれ防止や、成膜時の位置ずれ防止の効果も得られる。
【0048】
ステップS106において、基板Zアクチュエータが駆動して、基板10をクランプした状態の基板保持ユニット210を上昇させ、基板10を第1のアライメント高さhrまで移動させる。そして、第1のアライメントを実行する。すなわち、図7(c)に示すように基板10が高さhrに移動させた状態で、第1のカメラ260により基板10およびマスク220の中央部に設けられたアライメントマークを撮像する。
【0049】
制御部270は、画像を解析して基板10とマスク220のアライメントマーク同士の距離や角度に基づき、位置ずれ量を算出する。そして図8(a)に示すように、アライメントステージ280が基板10をXY移動およびθ回転させて位置ずれを大まかに修正する。アライメントステージ280の操作が終わると、第1のカメラ260がアライメントマークを再度撮像し、制御部270が、マーク同士の位置ずれ量が所定の閾値を超えるかどうかを判定する。閾値を超える場合はアライメントステージ280による位置合わせを再度行う。このように位置ずれ量が閾値以内に収まるまで位置合わせを繰り返すことで、第1のアライメントが完了する。
【0050】
ステップS107において、図8(b)に示すように、基板Zアクチュエータが駆動して、基板10をクランプした状態の基板保持ユニット210を下降させ、基板10を高さhf1まで移動させる。そして第2のカメラ261が、基板10およびマスク220の隅部に設けられたアライメントマークを撮像する。
【0051】
ステップS108において、図8(c)に示すように、基板Zアクチュエータが駆動して、基板10をクランプした状態の基板保持ユニット210を上昇させ、基板10を高さhf2まで移動させる。制御部270は、高さhf1で撮影した画像を解析して基板10とマスク220のアライメントマークの位置ずれ量を算出する。そしてアライメントステージ280が基板10をXY移動およびθ回転させる。第2のアライメントの場合、位置ずれ量が所定の閾値の範囲内に収まるまで、基板10の高さhf2への移動、アライメントステージ280による操作、基板10の高さhf1への移動、および、第2のカメラ261による撮像と位置ずれ量の算出処理を繰り返す。これにより、位置ずれを精密に修正できる。
【0052】
第2のアライメントによって基板10とマスク220の位置ずれ量が閾値以内となると、処理はステップS109に進む。基板Zアクチュエータが駆動して、基板10をクランプした状態の基板保持ユニット210を下降させ、基板10を高さh0まで移動させる。これにより、図9(a)に示すように、支持具300の支持面に支持された基板10の高さとマスク220の高さが一致する。
なお、この工程の後に、成膜前のアライメント精度計測を行ってもよい。例えば、第2のカメラ261を用いて基板10およびマスク220の隅部のアライメントマークを撮像し、位置ずれ量を所定の閾値と比較して許容範囲内かどうかを判定し、許容範囲外であれば再び第2のアライメントに移行する。
【0053】
ステップS110において、図9(b)に示すように、冷却板Zアクチュエータ252が駆動して、冷却板230を下降させて基板10に密着させる。これにより、基板10とマスク220のアライメント処理、および、マスク220上への基板10の載置処理が完了する。そして、蒸発源240が熱せられて成膜材料が飛翔し、マスク220を介して基板10に付着することにより、基板10の下面にマスクパターンに対応した膜が形成される(成膜工程)。成膜完了後、搬送ロボット140は成膜済みの基板10を搬出する。
ステップ110の成膜は、クランプZアクチュエータ251が押圧具300を押圧状態に維持したまま行われる。アライメント処理の開始前に、基板10の少なくとも一部(典型的には、自重で撓んだ基板10の中央部)がマスク220に接触し、かつ、基板周縁部のクランプが解放された状態とした場合、押圧状態のまま成膜することで、成膜中のマスクずれが低減される。
【0054】
上記の一連の工程によれば、アライメント処理の開始前に、基板10の少なくとも一部(典型的には、自重で撓んだ基板10の中央部)がマスク220に接触し、かつ、基板周縁部のクランプが解放された状態が実現する。するとマスク220からの応力による基板10の伸展が、基板保持ユニット210により阻害されることなく基板周縁部まで進んでいく。これにより、基板10をマスク220に良好に沿わせることができる。この状態で基板周縁部を挟持することにより、後続処理における基板10とマスク220の密着度が向上する。
【0055】
ここで、基板の周縁部を解放およびクランプすることは、基板10の歪みを取り除く効果があり、特に本実施例のように、基板10の支持面の高さをマスク220の表面の高さより低くしての解放およびクランプにより、歪み解消の効果が高まる。一方で、基板10の位置を変化させてしまい、結果としてアライメントの所要時間を長期化してしまう場合があった。しかし本実施例では、基板周縁部の掴み直し処理の後に、基板10の移動距離が大きい第1のアライメントが実行されるため、基板10の位置の変化を素早く吸収することができ、アライメントの所要時間を短縮することができる。以上、本実施例のアライメント装置によれば、基板10とマスク220の密着性を高める効果を減じることなく、アライメントの所要時間を短縮することができる。したがって、基板10の歪みが解消された膜ボケ等のない良好な成膜を、高い生産性で実現できる。
【0056】
<変形例1>
上記記載では、基板の掴み直しによる歪み解消を行った後、基板保持ユニット210が基板周縁部をクランプすると、そのクランプ状態を維持したまま第1のアライメントおよび第2のアライメントを行っていた。しかし本発明はこれに限られない。
【0057】
本変形例では、第1のアライメントと第2のアライメントの間にも、基板10の少なくとも一部がマスク220と接触した状態で、基板周縁部の解放とクランプを行う。例えば図4のフローで説明した実施例1の場合であれば、ステップS104で第1のアライメントを行った後に、基板Zアクチュエータが駆動して、基板10をクランプした状態の基板保持ユニット210を下降させ、基板10の一部をマスク220に接触させる。そして、基板保持ユニット210による基板のクランプを解除する(第2の離間工程)。その結果、マスク220からの応力を受けた基板10が周縁部に向かって伸展する。そして、再度基板がクランプされる(第3の押圧工程)。
【0058】
本変形例によれば、基板10とマスク220の密着度をさらに向上させることができる。また第1のアライメント中などに発生した基板の歪みを解消できる。
【0059】
<変形例2>
上記各実施例では、アライメントが完了した後も、基板保持ユニット210が基板周縁
部をクランプしたまま成膜処理を行っていた。しかし本発明はこれに限られない。
【0060】
本変形例では、第2のアライメントが完了した後に、基板保持ユニット210が基板周縁部の一部のクランプ(例えば、基板10のうち対向する二辺をクランプする場合の、一辺側のクランプ)を解除したり、押圧具302による挟持力を弱めたりしてもよい。そして、基板Zアクチュエータが駆動して基板保持ユニット210を下降させ、基板10をマスク220との密着高さd0まで下降させることで、基板10をマスク220に載置する。この載置時に、クランプが解除された、あるいは、挟持力が弱められた基板10の周縁部が外側に逃げられるので、基板10がマスク220に沿って伸展する。その結果、例えば第2のアライメント中に生じた基板10の撓みを解消して基板10とマスク220の密着度をより向上させることができる。続いて冷却板230を基板10に接触させ、蒸発源240を用いた成膜を行う。このとき、冷却板230が基板10の位置ずれを抑制するため、成膜を精度良く実行できる。
【0061】
<変形例3>
上記各実施例では、第1のアライメントの前に、ステップS103からステップ105の動作が行われる。しかし、複数回のアライメントが行われる場合には、少なくとも1回のアライメントの前に、ステップS102からステップ105の動作が行われても良い。例えば、本変形例では、図4に示される各工程が、ステップS101、ステップS102、ステップS106、ステップS103、ステップS104、ステップS105、ステップS107の順で行われる。ステップS108以降は、上記実施例と同じである。
【0062】
<変形例4>
上記各実施例では、マスク220を固定し、基板10をZ方向移動させて高さを変更するとともに、平面内でXY移動およびθ回転させて位置を調整していた。しかし、本発明はこれに限定されない。
【0063】
例えば、基板10はチャンバ内に固定し、マスク220を昇降させる成膜装置108を用いても良い。その場合、基板10を支持する基板保持手段はZ方向において固定されるとともに、マスク220を保持して昇降させるマスク保持手段が設けられる。また例えば、基板10とマスク220の双方が移動可能であってもよい。
【0064】
これらの場合であっても、第1のアライメントの開始前に基板10の少なくとも一部がマスク220に接触し、かつ基板周縁部のクランプが解除された状態にすることで、基板10とマスク220の密着度を高めることができる。
【0065】
<実施例2>
(有機電子デバイスの製造方法)
本実施例では、アライメント装置を備える成膜装置を用いた有機電子デバイスの製造方法の一例を説明する。以下、有機電子デバイスの例として有機EL表示装置の構成及び製造方法を例示する。まず、製造する有機EL表示装置について説明する。図10(a)は有機EL表示装置60の全体図、図10(b)は一つの画素の断面構造を表している。
【0066】
図10(a)に示すように、有機EL表示装置60の表示領域61には、発光素子を複数備える画素62がマトリクス状に複数配置されている。発光素子のそれぞれは、一対の電極に挟まれた有機層を備えた構造を有している。なお、ここでいう画素とは、表示領域61において所望の色の表示を可能とする最小単位を指している。本図の有機EL表示装置の場合、互いに異なる発光を示す第1発光素子62R、第2発光素子62G、第3発光素子62Bの組合せにより画素62が構成されている。画素62は、赤色発光素子と緑色発光素子と青色発光素子の組合せで構成されることが多いが、黄色発光素子とシアン発光
素子と白色発光素子の組み合わせでもよく、少なくとも1色以上であれば特に制限されるものではない。
【0067】
図10(b)は、図10(a)のA-B線における部分断面模式図である。画素62は、基板10上に、第1電極(陽極)64と、正孔輸送層65と、発光層66R,66G,66Bのいずれかと、電子輸送層67と、第2電極(陰極)68と、を備える有機EL素子を有している。これらのうち、正孔輸送層65、発光層66R,66G,66B、電子輸送層67が有機層に当たる。また、本実施形態では、発光層66Rは赤色を発する有機EL層、発光層66Gは緑色を発する有機EL層、発光層66Bは青色を発する有機EL層である。
【0068】
発光層66R,66G,66Bは、それぞれ赤色、緑色、青色を発する発光素子(有機EL素子と記述する場合もある)に対応するパターンに形成されている。また、第1電極64は、発光素子ごとに分離して形成されている。正孔輸送層65と電子輸送層67と第2電極68は、複数の発光素子62R,62G,62Bと共通で形成されていてもよいし、発光素子毎に形成されていてもよい。なお、第1電極64と第2電極68とが異物によってショートするのを防ぐために、第1電極64間に絶縁層69が設けられている。さらに、有機EL層は水分や酸素によって劣化するため、水分や酸素から有機EL素子を保護するための保護層Pが設けられている。
【0069】
次に、電子デバイスとしての有機EL表示装置の製造方法の例について具体的に説明する。まず、有機EL表示装置を駆動するための回路(不図示)および第1電極64が形成された基板10を準備する。
【0070】
次に、第1電極64が形成された基板10の上にアクリル樹脂をスピンコートで形成し、アクリル樹脂をリソグラフィ法により、第1電極64が形成された部分に開口が形成されるようにパターニングし絶縁層69を形成する。この開口部が、発光素子が実際に発光する発光領域に相当する。
【0071】
次に、絶縁層69がパターニングされた基板10を第1の成膜装置に搬入し、基板保持ユニットにて基板を保持し、正孔輸送層65を、表示領域の第1電極64の上に共通する層として成膜する。正孔輸送層65は真空蒸着により成膜される。実際には正孔輸送層65は表示領域61よりも大きなサイズに形成されるため、高精細なマスクは不要である。ここで、本ステップでの成膜や、以下の各レイヤーの成膜において用いられる成膜装置は、上記各実施例のいずれかに記載された成膜装置である。
【0072】
次に、正孔輸送層65までが形成された基板10を第2の成膜装置に搬入し、基板保持ユニットにて保持する。基板とマスクとのアライメントを行い、基板をマスクの上に載置し、基板10の赤色を発する素子を配置する部分に、赤色を発する発光層66Rを成膜する。本例によれば、マスクと基板とを良好に重ね合わせることができ、高精度な成膜を行うことができる。
【0073】
発光層66Rの成膜と同様に、第3の成膜装置により緑色を発する発光層66Gを成膜し、さらに第4の成膜装置により青色を発する発光層66Bを成膜する。発光層66R、66G、66Bの成膜が完了した後、第5の成膜装置により表示領域61の全体に電子輸送層67を成膜する。電子輸送層67は、3色の発光層66R、66G、66Bに共通の層として形成される。
【0074】
電子輸送層67までが形成された基板をスパッタリング装置に移動し、第2電極68を成膜し、その後プラズマCVD装置に移動して保護層Pを成膜して、有機EL表示装置6
0が完成する。
【0075】
絶縁層69がパターニングされた基板10を成膜装置に搬入してから保護層Pの成膜が完了するまでは、水分や酸素を含む雰囲気にさらしてしまうと、有機EL材料からなる発光層が水分や酸素によって劣化してしまうおそれがある。従って、本例において、成膜装置間の基板の搬入搬出は、真空雰囲気または不活性ガス雰囲気の下で行われる。
【0076】
本実施例に係るアライメント装置、成膜装置または電子デバイスの製造方法によれば、アライメントの所要時間を短期化しつつ、成膜時の基板とマスクの位置合わせの精度が向上するので、良好な成膜が可能となる。
【符号の説明】
【0077】
210:基板保持ユニット、221:マスク台、250:基板Zアクチュエータ、251:クランプZアクチュエータ、280:アライメントステージ、300:支持具、302:押圧具
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