(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】生中華麺及びその製造方法並びに生中華麺の変色防止方法。
(51)【国際特許分類】
A23L 7/109 20160101AFI20241108BHJP
【FI】
A23L7/109 C
(21)【出願番号】P 2021017162
(22)【出願日】2021-02-05
【審査請求日】2023-07-21
(31)【優先権主張番号】P 2020059229
(32)【優先日】2020-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000226976
【氏名又は名称】日清食品ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 直人
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-278448(JP,A)
【文献】特開平08-242793(JP,A)
【文献】特開昭57-036954(JP,A)
【文献】特開2018-166470(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/109-7/113
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸一水素カルシウムの水和物を含
み、袋に封入された生中華麺であって、
前記生中華麺は、主原料粉の重量に対してリン酸一水素カルシウムの水和物を0.15~0.5重量%含み、
前記生中華麺は、チルド帯で保存されることを特徴とする生中華麺。
【請求項2】
リン酸一水素カルシウムの水和物を含み、袋に封入された生中華麺であって、
前記生中華麺は、主原料粉の重量に対してリン酸一水素カルシウムの水和物を
1~2.5重量%含
み、
前記生中華麺は、常温で保存されることを特徴とする生中華麺。
【請求項3】
主原料粉にリン酸一水素カルシウムの水和物を添加し粉体混合した粉体に、かんすいを溶解した練り水を加えてミキサーで混捏し、麺生地を作製した後、製麺
し、必要により打ち粉を付与するか、麺の表面を乾燥した後、袋に密封し、チルド帯または常温で保存することを特徴とする生中華麺の製造方法。
【請求項4】
主原料粉の重量に対してリン酸一水素カルシウムの水和物を0.15~2.5重量%添加することを特徴とする請求項3記載の生中華麺の製造方法。
【請求項5】
リン酸一水素カルシウムの水和物を麺に添加することを特徴とする生中華麺の変色抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生中華麺及びその製造方法並びに生中華麺の変色防止方法に関する。
【0002】
従来、小麦粉などの主原料粉とかんすいを含む練り水とを混捏し、作製した麺生地から製麺した生中華麺が多数上市されている。これらは、ラーメン店等ですぐに消費されるものもあれば、10℃以下のチルド帯で1月程度の賞味期限を有するチルド生中華麺や、低加水によって常温で1月程度の賞味期限を有するお土産用の生中華麺などがある。
【0003】
このうち、チルド生中華麺やお土産用の生中華麺は、保存期間が長くなるほど麺が褐色っぽく変色し、食感は、表面が硬く芯の弾力に欠けた硬脆い食感となるといった課題があった。
【0004】
麺の変色防止を目的とした先行技術文検討しては、特許文献1または2が知られている。特許文献1は、中華麺の鮮明な黄色を持続的に変色が少なく、安価に得る方法として、ルチンと、特定の水溶性抗酸化剤にかんすい、貝殻焼成カルシウムの1種又は2種を混合することを特徴とする、中華麺着色用黄色色素の製剤が記載されている。
【0005】
また、特許文献2は、小麦粉を原料とする加工食品における、製造時における色調の維持、すなわち経時的な黄色みの退色を効率的に防止し、品質を保持するための技術として、リン酸、酢酸、フマル酸、リンゴ酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、およびアジピン酸、並びにそれらの塩から選ばれる1種または2種以上の酸成分と、退色抑制成分とを含む、小麦粉を原料とする加工食品用の品質保持剤が記載されている。
【0006】
しかしながら、これらの技術をもってしてもチルドや常温で長期保存する生中華麺の変色や食感の劣化を充分に抑制できなかった。
【0007】
また、カルシウム塩を麺に使用する技術として、特許文献3~5の技術が知られている。特許文献3は、本発明はかんすいを含有しない中華用麺として燐酸カルシウムを含有するpH10以上の水を小麦粉に対し25~50重量パーセント含むことを特徴とする中華用麺が記載されている。
【0008】
また、特許文献4には、生中華麺が本来有する「腰」の強い独特の粘りと歯ごたえがより一層向上し、長期保存性を兼ね備えた麺類を提供する技術として、麺類の製造方法であって、下記の工程、すなわち、(1) 小麦粉もしくは小麦粉と澱粉を主成分とする原料粉に、必要に応じてアルカリ剤、食塩等を加えて水とを混練し、外層用の麺生地を調製し、(2) 小麦粉もしくは小麦粉と澱粉を主成分とする原料粉、アルギン酸および/またはアルギン酸塩、アルカリ剤、必要に応じて食塩等を加えて、水とを混練し、中性乃至弱アルカリ性のpHを呈する内層用麺生地を調製し、(3) 前記内層用生地と外層用生地をロール圧延等の常法により各々麺帯とし、これらを更に複合圧延することにより、外層/内層/外層からなる麺帯とし、常法により麺線として、(4) 前記麺線をα化処理と同時、又はα化処理後に酸液処理して、麺線pHを酸性域に調整し、次いで、(5) 前記酸処理した麺線を包装密封した後、加熱殺菌処理する工程、からなる三層生麺類の製造方法において、前記の内層用麺生地の調製時の混練時において、カルシウム及び/又はカルシウム塩を添加することを特徴とする三層生麺類の製造方法が記載されている。
【0009】
また、特許文献5には、食感を損なうことなく、ミネラル成分強化即席麺・チューイングガム・ビスケット・ホットケーキプレミックス・プロセスチーズ・水産練り製品等の各種食品組成物を与える食品添加剤として、 特定の一次粒子の平均粒径、凝集性、シャープネス、各種粘性、チキソ性、BET比表面積、吸水性を有する無機系粒子からなる食品添加剤が記載されている。
【0010】
これらの文献は、カルシウム塩をかんすいの代わりとして使用するか、アルギン酸と反応させてアルギン酸カルシウムゲルを作製するために使用されるか、栄養強化のために使用されることが記載されているだけである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開平10-108646号公報
【文献】特開2012-10658号公報
【文献】特開平8-280344号公報
【文献】特開平6-209731号公報
【文献】特開2002-369666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、長期保存における変色や食感の劣化が抑制された生中華麺を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明者は、チルド生中華麺やお土産用の生中華麺の長期保存における変色や食感の劣化を抑制する方法について鋭意研究した結果、偶然にも本発明を見出し本発明に至った。
【0014】
すなわち、リン酸一水素カルシウムの水和物を含むことを特徴とする生中華麺である。
【0015】
また、本発明に係る生中華麺のリン酸一水素カルシウムの水和物の含有量としては、主原料粉の重量に対して0.15~2.5重量%であることが好ましい。
【0016】
また、本発明に係る生中華麺の製造方法としては、主原料粉にリン酸一水素カルシウムの水和物を添加し粉体混合した粉体に、かんすいを溶解した練り水を加えてミキサーで混捏し、麺生地を作製した後、製麺することが好ましい。
【0017】
また、本発明に係る生中華麺の製造方法としては、主原料粉の重量に対してリン酸一水素カルシウムを0.15~2.5重量%添加することが好ましい。
【0018】
また、麺にリン酸一水素カルシウムの水和物を添加することによって、長期保存における生中華麺の変色が抑制できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、長期保存における変色や食感の劣化が抑制された生中華麺を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載に限定されるものではない。また、本発明に係る生中華麺は、蒸しや茹でなどの加熱処理がされていないチルド帯または常温保存の生中華麺を指す。
【0021】
1.麺原料配合
本発明に係る生中華麺には、通常の中華麺の原料が使用できる。すなわち、主原料粉としては、小麦粉並びに馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉及びコーンスターチ等の各種澱粉が挙げられ、単独で使用しても、または混合して使用してもよい。前記澱粉として、生澱粉、α化澱粉、並びにアセチル化澱粉、エーテル化澱粉、及び架橋澱粉等の加工澱粉を使用することもできる。
【0022】
また、本発明では、これら主原料粉に対して中華麺の製造において一般に使用されている食塩、かんすいなどのアルカリ剤、各種増粘剤、グルテン、卵白、麺質改良剤、食用油脂、カロチン色素等の各種色素及び保存料等を添加することができる。これらは、主原料粉と一緒に粉体で添加しても、練り水に溶かすか懸濁させて添加してもよい。このうち、かんすいとしては、中華麺独特の風味を付与し、腰のある食感を出すために、炭酸ナトリウムや炭酸カリウムなどの炭酸塩を使用することが好ましく、主原料粉に対して1~2重量%添加することが好ましい。また、麺のpHを高くし、保存性を向上させるために、かんすいに加えて焼成カルシウムなどのアルカリ剤を添加することもできる。
【0023】
また、本発明においては、リン酸一水素カルシウムの水和物を添加する。リン酸一水素カルシウムの水和物は、水にほとんど溶解しないため、主原料粉と一緒に粉体混合して麺に添加することが好ましい。リン酸一水素カルシウムは、無水物と水和物(二水和物)とが存在するが、原因は不明だが、無水物には変色や食感変化といった経時的な劣化に対して抑制効果はなく、水和物のみに抑制効果がある。また、様々なカルシウム塩を検討した結果、経時的な変色を抑制する効果があるものは存在するものの、食感への影響やかんすい臭などの風味への影響があり、また、経時的な食感の劣化を抑えられず、リン酸一水素カルシウムの水和物が、食感や風味への影響が少なく、経時的な変色や食感劣化を抑える上で最も効果的であった。
【0024】
リン酸一水素カルシウムの水和物の添加量としては、主原料粉に対して、0.15~2.5重量%が好ましい。チルド生中華麺の場合、10℃以下で保存されているため、常温保存の生中華麺よりも褐変の度合いが弱く、主原料粉に対して0.15重量%以上から経時的な変色や食感の劣化を抑える効果が確認できる。お土産用の常温保存の生中華麺の場合は、褐変の度合いが強く、主原料粉に対して1重量%以上から経時的な変色や食感の劣化を抑える効果が確認できる。しかしながら、主原料粉に対して2.5重量%よりも多くなると麺の食感に影響がある。
【0025】
2.混捏工程
本発明に係る麺生地(ドウ)の作製方法は、常法に従って行えばよい。すなわち、バッチミキサー、フロージェットミキサー、真空ミキサー等で、主原料粉とリン酸一水素カルシウムの水和物を含む粉体と炭酸ナトリウム又は/及び炭酸カリウムを溶解した練り水とが均一に混ざるように混捏すればよく、そぼろ状のドウを作製すればよい。
【0026】
3.製麺工程
次いで作製したドウから麺線を作製する。作製方法としては、常法に従って行えばよく、エクストルーダ等を用いてドウを押し出して麺線を作製する方法や、ドウをロールにより粗麺帯とした後、複合等により麺帯化し、さらにロールにより複数回圧延し、所定の麺帯厚とした後、切刃と呼ばれる切出しロールにより麺帯を切出し、麺線を作製する方法が挙げられる。麺帯を作製してから麺線を作製する場合、エクストルーダを用いて麺帯を作製した後、圧延、切出しを行ってもよく、また、複数の麺帯を合わせて多層構造を持つ麺帯を作製した後、圧延、切出しを行ってもよい。エクストルーダ等を用いて押出し麺帯又は押出し麺線を作製する場合は、減圧下で行うことが好ましい。
【0027】
4.その他
作製した生麺は、必要により打ち粉を行うか、麺の表面を乾燥した後、ポリエチレンやポリプロピレン等の袋に封入し、チルド帯の生中華麺や常温保存の生中華麺とすることができる。袋に封入した生麺は、スープや具材と共に袋や箱に入れ、店頭で販売することができる。
【0028】
以下に実施例を挙げて本実施形態をさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0029】
<実験1>常温保存可能な生中華麺での検討
(実施例1)
中力粉1000gからなる主原料粉1Kgに卵白粉10g、グルテン5g、焼成カルシウム1.5g、リン酸一水素カルシウムの水和物10gを粉体混合し、食塩10g、かんすい製剤(炭酸ナトリウム6:炭酸カリウム4)12g、70%アルコール製剤50g、60%乳酸ナトリウム15g、トレハロース5g、クチナシ色素1gを水280gに溶解した練り水を加え、常圧ミキサーにて15分間混捏し、ドウを作製した。
【0030】
作製したドウを複合して麺帯を作製し、20分熟成した後、ロール圧延にて1.5mmまで麺帯を圧延し、16番角のロール切刃にて麺帯を切断し、麺線とした。
【0031】
次いで作製した麺線1食110gに対してサゴ澱粉の酸化澱粉からなる打ち粉4gをし、ポリエチレンの袋に密封し、生中華麺サンプルを作製した。
【0032】
(実施例2)
リン酸一水素カルシウムの水和物の添加量を15gとする以外は、実施例1の方法に従って、生中華麺サンプルを作製した。
【0033】
(実施例3)
リン酸一水素カルシウムの水和物の添加量を20gとする以外は、実施例1の方法に従って、生中華麺サンプルを作製した。
【0034】
(実施例4)
リン酸一水素カルシウムの水和物の添加量を25gとする以外は、実施例1の方法に従って、生中華麺サンプルを作製した。
【0035】
(比較例1)
リン酸一水素カルシウムの水和物の添加量を添加しない以外は、実施例1の方法に従って、生中華麺サンプルを作製した。
【0036】
(比較例2)
リン酸一水素カルシウムの水和物の代わりにリン酸三カルシウムとする以外は、実施例2の方法に従って、生中華麺サンプルを作製した。
【0037】
(比較例3)
リン酸一水素カルシウムの水和物の代わりにリン酸一水素カルシウムの無水物とする以外は、実施例2の方法に従って、生中華麺サンプルを作製した。
【0038】
実験1の各試験区の作製した生中華麺を40℃で7日間置き、強制劣化させ、5人のベテランパネラーにより評価を行った。
【0039】
各試験区の色の変化について評価を行った。色については、強制劣化前後のサンプルの色の差を目視で確認し、変色抑制効果について評価を行うだけでなく、色彩色差計(コニカミノルタ製:型番CR-410)でa値を測定し、劣化前後の差を測定し、数値として変色が抑えられているかを確認した。目視による変色抑制評価は、比較例1の強制劣化前後のサンプルを基準とし、強制劣化前の比較例1と同等のものを5、強制劣化後の比較例1を1として、強制劣化前の比較例1よりやや劣るが概ね良好なものを4、強制劣化前の比較例1より劣るが概ね可なものを3、強制劣化後の比較例1より良いが悪いものを2、強制劣化後の比較例1と同等で悪いものを1として評価した。
【0040】
また、試験サンプルの官能評価については、各生中華麺サンプルを沸騰水1500ml入れ、3分間茹で調理し、湯切りした後、予め用意した醤油ラーメンスープに喫食し、評価を行った。
【0041】
かんすい臭の官能評価については、強制劣化前のサンプルで行い、強制劣化前の比較例1を基準として、比較例1と同等なものを5、比較例1に劣るがかんすい臭を感じ概ね良好なものを4、比較例1に劣るがかんすい臭を感じ概ね可なものを3、比較例1に劣りかんすい臭を僅かに感じるが弱いものを2、かんすい臭をほとんど感じないものを1とした。なお、かんすい臭については、強制劣化による差はほとんどなかった。
【0042】
食感の官能評価については、食感について行い、強制劣化前後の比較例1のサンプルを基準とし、強制劣化前の比較例1と同等のものを5、強制劣化後の比較例1を1として、強制劣化前の比較例1よりやや劣るが概ね良好なものを4、強制劣化前の比較例1より劣るが概ね可なものを3、強制劣化後の比較例1より良いが悪いものを2、強制劣化後の比較例1と同等で悪いものを1として評価した。
【0043】
実験1の評価結果を下記表1に示す。
【0044】
【0045】
実施例1~4及び比較例1で示すようにリン酸一水素カルシウムの水和物を添加することで、強制劣化による変色が抑えられることから生中華麺を長期保存した際においても変色を抑えられることが示唆された。また、強制劣化による食感の劣化についても、リン酸一水素カルシウムの水和物を添加することで抑制されることから、生中華麺を長期保存した際においても食感の劣化を抑えられることが示唆された。しかしながら、リン酸一水素カルシウムの水和物の添加量が多ければ多い程、強制劣化による変色は抑えられるが、かんすい臭が弱くなり、食感が柔らかくなる傾向が認められることから、常温保存の生中華麺の場合、リン酸一水素カルシウムの水和物の添加量としては、主原料粉に対して1~2.5重量%となるように添加することが好ましい。
【0046】
実施例2、比較例2及び比較例3で示すように、同様のリン酸カルシウム類であるリン酸三カルシウム及びリン酸一水素カルシウムの無水物を添加した結果、強制劣化による変色がやや抑えられるものの、リン酸一水素カルシウムの水和物の方が強制劣化による変色を抑える効果が高かった。また、強制劣化による食感の劣化についてもリン酸三カルシウムやリン酸一水素カルシウムの無水物には、食感の劣化を抑える効果はなく、リン酸一水素カルシウムの水和物特有の効果であることがわかった。
【0047】
<実験2>チルド生中華麺での検討
(実施例5)
中力粉1000gからなる主原料粉1Kgに卵白粉10g、グルテン5g、焼成カルシウム1.5g、リン酸一水素カルシウムの水和物1.5gを粉体混合し、食塩10g、かんすい製剤(炭酸ナトリウム6:炭酸カリウム4)12g、70%アルコール製剤50g、60%乳酸ナトリウム15g、トレハロース5g、クチナシ色素1gを水280gに溶解した練り水を加え、常圧ミキサーにて15分間混捏し、ドウを作製した。
【0048】
作製したドウを複合して麺帯を作製し、20分熟成した後、ロール圧延にて1.5mmまで麺帯を圧延し、16番角のロール切刃にて麺帯を切断し、麺線とした。
【0049】
次いで作製した麺線1食110gに対してサゴ澱粉の酸化澱粉からなる打ち粉4gをし、ポリエチレンの袋に密封し、生中華麺サンプルを作製した。
【0050】
(実施例6)
リン酸一水素カルシウムの水和物の添加量を3gとする以外は、実施例6の方法に従って、生中華麺サンプルを作製した。
【0051】
(実施例7)
リン酸一水素カルシウムの水和物の添加量を5gとする以外は、実施例6の方法に従って、生中華麺サンプルを作製した。
【0052】
(比較例4)
リン酸一水素カルシウムの水和物を添加しない以外は、実施例5の方法に従って、生中華麺サンプルを作製した。
【0053】
実験2の各試験区で作製した生中華麺を4℃で30日間置き、5人のベテランパネラーにより評価を行った。
【0054】
各試験区の保存後の色について評価を行った。色については、チルド生中華麺の場合、常温保存の生中華麺と比べ色差計で差が出るほどの変化が確認できず、目視による変色抑制評価のみを行った。比較例4の保存前後のサンプルを基準とし、比較例4の保存前と同程度のものを◎、比較例4の保存後のサンプルよりも良いが、比較例4の保存前のサンプルに劣るものを○、比較例4の保存後のサンプルと同程度のものを△、比較例4の保存後のサンプルよりも悪いものを×とした。
【0055】
また、試験サンプルの官能評価については、各生中華麺サンプルを沸騰水1500ml入れ、4分間茹で調理し、湯切りした後、予め用意した醤油ラーメンスープに喫食し、評価を行った。
【0056】
かんすい臭の官能評価については、強制劣化前のサンプルで行い、強制劣化前の比較例4を基準として、比較例4と同等なものを◎、比較例4にやや劣るが良好なものを○、比較例4に劣るものを△、比較例4に著しく劣り弱いものを×とした。なお、かんすい臭については、保存劣化による差はほとんどなかった。
【0057】
食感の官能評価については、食感について行い、保存前後の比較例4のサンプルを基準とし、保存前の比較例4と同等のものを◎、保存前の比較例4にやや劣るが保存後の比較例4よりも良好なものを○、保存後の比較例4と同等なものを△、保存後の比較例4に劣るものを×とした。
【0058】
実験2の評価結果を下記表2に示す。
【0059】
【0060】
チルド生中華麺においては、常温保存の生中華麺ほどではないが、長期保存により麺が
変色し、食感もぼそつくが、実施例5~7で示すように、リン酸一水素カルシウム(二水
和物)を添加することで、無添加の時よりも保存後の色調は改善した。添加量としては、
主原料粉に対して0.15重量%以上添加することにより目視で色調が明らかに改善し
た。また、食感についても主原料粉に対して0.15重量%以上添加することにより、無
添加の時よりも保存後のぼそぼそした食感が改善した。チルド中華麺は、常温保存の生中
華麺と比べ、少量でも保存中の色や食感劣化の改善効果がみられ、また、少量添加である
ため、添加による風味の悪化や食感悪化がみられない。添加量に関しては、主原料粉に対
して0.15重量%以上、より好ましくは0.3重量%以上の範囲で設定すればよいと考
える。