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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】光学積層体及び表示装置
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/022 20190101AFI20241108BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20241108BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20241108BHJP
   G02B 5/00 20060101ALI20241108BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
B32B7/022
B32B27/34
B32B27/36
G02B5/00 Z
G02F1/1335
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023017869
(22)【出願日】2023-02-08
(62)【分割の表示】P 2021047073の分割
【原出願日】2020-08-12
(65)【公開番号】P2023053064
(43)【公開日】2023-04-12
【審査請求日】2023-07-25
(31)【優先権主張番号】P 2019195586
(32)【優先日】2019-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122297
【弁理士】
【氏名又は名称】西下 正石
(72)【発明者】
【氏名】片 ボラム
(72)【発明者】
【氏名】宋 ▲ビョン▼▲フン▼
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-014255(JP,A)
【文献】特開2018-28573(JP,A)
【文献】特開2011-039363(JP,A)
【文献】特開2003-227936(JP,A)
【文献】特開2018-091974(JP,A)
【文献】国際公開第2017/082375(WO,A1)
【文献】特開2009-075473(JP,A)
【文献】特開2012-237965(JP,A)
【文献】特開2018-111754(JP,A)
【文献】特開2017-126061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
G02B 5/30
G02F 1/1335
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面板と少なくとも一つの粘着剤層と耐衝撃層とを有する光学積層体であって、
該耐衝撃層が30~140μmの厚さを有し、
該耐衝撃層が3.0~7.0GPaの引張弾性率を有し、
温度25℃、屈曲速度30rpm及び屈曲半径1.00mmの条件下で前面板を内側にして180°曲げ伸ばしを行う連続屈曲性試験において、15万回以上の耐屈曲回数を示
該粘着剤層として第1粘着剤層及び第2粘着剤層を含み、前面板の内部方向に、第1粘着剤層、耐衝撃層、及び第2粘着剤層を、この順に備え、
該第2粘着剤層は25℃で0.01~0.80MPaの貯蔵弾性率を有する、光学積層体。
【請求項2】
100~500μmの厚さを有する、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項3】
第1及び第2粘着剤層と耐衝撃層とが、80~200μmの合計厚さを有する、請求項1又は2に記載の光学積層体。
【請求項4】
前記耐衝撃層の材料が、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド系樹脂及びポリエステル系樹脂からなる群から選択される、請求項1~のいずれか一項に記載の光学積層体。
【請求項5】
前記第1粘着剤層と第2粘着剤層とが、15/85~85/15の厚さ比rを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の光学積層体。
【請求項6】
請求項1~のいずれか一項に記載の光学積層体と、光学積層体の内部方向に表示ユニットとを備える、表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学積層体及び表示装置に関し、詳しくは、表示パネルの表示面をカバーする光学積層体、及び該光学積層体を有する表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、可撓性を有する屈曲性表示装置が注目を集めている。屈曲性表示装置は、曲面及び屈曲面等の平面ではない面上にも設置することができる。また、屈曲性表示装置は、折り畳んだり巻物形状としたりすることで、携帯性を向上させることができる。かかる屈曲性表示装置においては、その表示面をカバーする光学積層体にも屈曲性が要求される。
【0003】
屈曲性表示装置に使用される光学積層体には、屈曲性のみならず、耐衝撃性が要求される。さらにこれらに加え、光学積層体の薄型化、軽量化が実用上の理由のみならず、コスト削減や省資源からも望まれている。
【0004】
特許文献1には、その片面に保護層が形成された基材、第1透明粘着層、及び第1バッファー層を有する光学積層体が記載されている(要約)。該光学積層体と表示パネルとを粘着シートにより接合したサンプルは、耐衝撃性、耐屈曲性が良好とされている(段落[0118]、段落[0125])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-55098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の光学積層体は、未だそれらの特性、特に耐屈曲性は十分なものとは言い難く、それゆえ、耐屈曲性がより向上した光学積層体の登場が所望される。
【0007】
本発明は上記の問題を解決するものであり、その目的とするところは、耐屈曲性、耐衝撃性に優れた光学積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前面板と少なくとも一つの粘着剤層と耐衝撃層とを有する光学積層体であって、該耐衝撃層が5~140μmの厚さを有する光学積層体を提供する。
【0009】
ある一形態において、前記光学積層体は、100~500μmの厚さを有する。
【0010】
ある一形態において、前記耐衝撃層は、0.1~10GPaの引張弾性率を有する。
【0011】
ある一形態において、前記光学積層体は、前面板の内部方向に、第1粘着剤層、耐衝撃層、及び第2粘着剤層を、この順に備える。
【0012】
ある一形態において、第1及び第2粘着剤層と耐衝撃層とが、80~200μmの合計厚さを有する。
【0013】
ある一形態において、前記耐衝撃層の材料は、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド系樹脂及びポリエステル系樹脂からなる群から選択される。
【0014】
ある一形態において、前記第1粘着剤層と第2粘着剤層とが、15/85~85/15の厚さ比rを有する。
【0015】
ある一形態において、前記光学積層体は、温度25℃、屈曲速度30rpm及び屈曲半径1.00mmの条件下で前面板を内側にして180°曲げ伸ばしを行う連続屈曲性試験において、15万回以上の耐屈曲回数を示す。
【0016】
また、本発明は、前記いずれかの光学積層体と、光学積層体の内部方向に表示ユニットとを備える表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、優れた耐屈曲性、耐衝撃性を有し、さらにはより薄型の光学積層体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の光学積層体の構造の一例を示す断面図である。
図2】本発明の表示装置の構造の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[光学積層体]
図1は、本発明の光学積層体の構造の一例を示す断面図である。図1に示す光学積層体10は、前面板1、第1粘着剤層2、耐衝撃層3、及び第2粘着剤層4を、視認側からこの順に備える。
【0020】
光学積層体の面方向の形状は、例えば方形形状であってよく、好ましくは長辺と短辺とを有する方形形状であり、より好ましくは長方形である。光学積層体の面方向の形状が長方形である場合、長辺の長さは、例えば10~1400mmであってよく、好ましくは50~600mmである。短辺の長さは、例えば5~800mmであり、好ましくは30~500mmであり、より好ましくは50~300mmである。光学積層体を構成する各層は、角部がR加工されたり、端部が切り欠き加工されたり、穴あき加工されたりしていてもよい。
【0021】
光学積層体の厚さは、好ましくは100~500μmである。光学積層体の厚さをこの範囲に調節することで、耐衝撃性を維持しながら耐屈曲性を向上させやすくなる。光学積層体の厚さは、より好ましくは100~200μmであり、さらに好ましくは120~190μmである。ある一形態において、光学積層体の厚さは、120~300μm、好ましくは130~200μm、より好ましくは135~200μmである。光学積層体の厚さを上記範囲に調節することで、良好な耐衝撃性及び良好な屈曲性が得られる。
【0022】
[前面板]
光学積層体の前面板1は、図1を参照して、光学積層体の前面に位置する。図1において、上方向は、光学積層体が視認される外部方向を示し、下方向は、光学積層体が表示ユニット等に被着される内部方向を示す。
【0023】
前面板1は、光が透過可能な板状体であれば材料及び厚さは限定されることはないが、耐衝撃性及び屈曲性の観点から樹脂製の板状体(例えば樹脂板、樹脂シート、樹脂フィルム等)を用いることが好ましい。前面板は1層のみから構成されてよく、2層以上から構成されていてもよい。
【0024】
前面板1が樹脂製の板状体である場合、材料としては、例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート及びポリエチル(メタ)アクリレート等のアクリル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン及びポリスチレン等のポリオレフィン系樹脂;トリアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレート、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース及びアセチルプロピオニルセルロース等のセルロース系樹脂;エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール及びポリビニルアセタール等のポリビニル系樹脂;ポリスルホン及びポリエーテルスルホン等のスルホン系樹脂;ポリエーテルケトン及びポリエーテルエーテルケトン等のケトン系樹脂;ポリエーテルイミド;ポリカーボネート系樹脂;ポリエステル系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリアミドイミド系樹脂;及びポリアミド系樹脂等が挙げられる。これらの高分子は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。中でも強度及び透明性向上の観点から、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、又はポリアミド系樹脂を用いることが好ましい。
【0025】
ポリカーボネート系樹脂とは、カルボナート基を有する繰り返し構造単位を含む重合体のことである。ポリカーボネート系樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型ポリカーボネート、3価フェノールを重合させた分岐ポリカーボネート、脂肪族又は芳香族ジカルボン酸及び脂肪族又は脂環族2価アルコールを共重合させた共重合ポリカーボネート等が挙げられ、本発明に係る実施形態においてはこれらの中から適宜選択して用いることができる。
【0026】
ポリエステル系樹脂とは、エステル結合を有する繰り返し構造単位を含む重合体のことである。ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリシクロへキサンジメチルテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチルナフタレート等が挙げられ、本発明に係る実施形態においてはこれらの中から適宜選択して用いることができる。
【0027】
本明細書において、ポリイミド系樹脂とは、ポリイミド及びポリアミドイミドから選択されるいずれか1つ以上を含む重合体を表す。ポリイミドとは、イミド基を有する繰返し構造単位を含む重合体を表し、ポリアミドイミドとは、イミド基を有する繰り返し構造単位とアミド基を有する繰り返し構造単位とを含む重合体を表す。また、ポリアミド系樹脂とは、アミド基を有する繰返し構造単位を含む重合体を表す。
【0028】
本実施形態に係るポリイミド系樹脂は、式(10)で表される繰り返し構造単位を有する。ここで、Gは4価の有機基を表し、Aは2価の有機基を表す。G及び/又はAは、異なる2種類以上の式(10)で表される繰り返し構造単位を含んでいてもよい。また、本実施形態に係るポリイミド系樹脂は、得られる透明樹脂フィルムの各種物性を損なわない範囲で、式(11)、式(12)、及び式(13)のいずれかで表される繰り返し構造単位のいずれか1つ以上を含んでいてもよい。
【0029】
ポリイミド系樹脂の主な構造単位が式(10)で表される繰り返し構造単位であると、透明樹脂フィルムの強度及び透明性の観点で好ましい。本実施形態に係るポリイミド系樹脂において、式(10)で表される繰り返し構造単位は、ポリイミド系樹脂の全繰り返し構造単位に対し、好ましくは40モル%以上であり、より好ましくは50モル%以上であり、さらに好ましくは70モル%以上であり、さらにより好ましくは90モル%以上であり、とりわけ好ましくは98モル%以上である。式(10)で表される繰り返し構造単位は100モル%であってもよい。
【0030】
【化1】
【0031】
G及びGは、互いに独立に、4価の有機基を表し、好ましくは炭素数4~40の4価の有機基を表す。前記有機基は、炭化水素基又はフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよく、その場合、炭化水素基及びフッ素置換された炭化水素基の炭素数は好ましくは1~8である。G及びGとしては、式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)、式(26)、式(27)、式(28)又は式(29)で表される基並びに4価の炭素数6以下の鎖式炭化水素基が挙げられる。式(20)~式(29)中の*は結合手を表し、Zは、単結合、-O-、-CH-、-CH-CH-、-CH(CH)-、-C(CH-、-C(CF-、-Ar-、-SO-、-CO-、-O-Ar-O-、-Ar-O-Ar-、-Ar-CH-Ar-、-Ar-C(CH-Ar-又は-Ar-SO-Ar-を表す。Arはフッ素原子で置換されていてもよい炭素数6~20のアリーレン基を表し、具体例としてはフェニレン基が挙げられる。得られる透明樹脂フィルムの黄色度を抑制しやすいことから、G及びGとしては、好ましくは式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)、式(26)又は式(27)で表される基が挙げられる。
【0032】
【化2】
【0033】
は3価の有機基を表し、好ましくは炭素数4~40の3価の有機基を表す。前記有機基は、炭化水素基又はフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよく、その場合、炭化水素基及びフッ素置換された炭化水素基の炭素数は好ましくは1~8である。Gとしては、式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)、式(26)、式(27)、式(28)又は式(29)で表される基の結合手のいずれか1つが水素原子に置き換わった基並びに3価の炭素数6以下の鎖式炭化水素基が挙げられる。式(20)~式(29)中のZの例は、Gに関する記述におけるZの例と同じである。
【0034】
は2価の有機基を表し、好ましくは炭素数4~40の2価の有機基を表す。前記有機基は、炭化水素基又はフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよく、その場合、炭化水素基及びフッ素置換された炭化水素基の炭素数は好ましくは1~8である。Gとしては、式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)、式(26)、式(27)、式(28)又は式(29)で表される基の結合手のうち、隣接しない2つが水素原子に置き換わった基及び炭素数6以下の2価の鎖式炭化水素基が挙げられる。式(20)~式(29)中のZの例は、Gに関する記述におけるZの例と同じである。
【0035】
の有機基としては、式(20’)、式(21’)、式(22’)、式(23’)、式(24’)、式(25’)、式(26’)、式(27’)、式(28’)及び式(29’):
【0036】
【化3】
[式(20’)~式(29’)中、Wは、式(20)~式(29)において定義したZと同義であり、*は、式(20)~式(29)において定義した通りである]で表される2価の有機基がより好ましい。
【0037】
ポリイミド系樹脂が、Gが上記の式(20’)~式(29’)のいずれかで表される構成単位を有する場合、特にZが後述する式(101’)で表される構成単位を有する場合、ポリイミド系樹脂は、該構成単位に加えて、次の式(100):
【0038】
【化4】
[式(100)中、Rは、互いに独立に、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基又は炭素数6~12のアリール基を表し、Rは、R又は-C(=O)-*を表し、*は結合手を表す]
で表されるカルボン酸由来の構成単位をさらに有していてよい。この構造単位を有するポリイミド系樹脂は、透明樹脂フィルムを製造する際に使用する樹脂ワニスの流動性を高めやすいため好ましい。
【0039】
において、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基及び炭素数6~12のアリール基としては、それぞれ、後述の式(101)において例示のものが挙げられる。構成単位(100)としては、具体的には、R及びRがいずれも水素原子である構成単位(ジカルボン酸化合物に由来する構成単位)、Rがいずれも水素原子であり、Rが-C(=O)-*を表す構成単位(トリカルボン酸化合物に由来する構成単位)等が挙げられる。
【0040】
ポリイミド系樹脂は、Gとして複数種のGを含んでよく、複数種のGは、互いに同一であっても異なっていてもよい。特に、光学フィルムのマンドレル試験後のヘーズを低減しやすく、かつ降伏点歪及び弾性率を高めやすい観点から、Gが好ましくは式(101):
【0041】
【化5】
[式(101)中、
3a及びR3bは、互いに独立に、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、又は炭素数6~12のアリール基を表し、R3a及びR3bに含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよく、
Wは、互いに独立に、単結合、-O-、-CH-、-CH-CH-、-CH(CH)-、-C(CH-、-C(CF-、-SO-、-S-、-CO-又は-N(R)-を表し、Rは水素原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12の1価の炭化水素基を表し、
sは0~4の整数であり、
tは0~4の整数であり、
uは0~4の整数であり、
*は結合手を表す]
で表され、より好ましくは式(101’):
【0042】
【化6】
[式(101’)中、R3a、R3b、s、t、u、W及び*は、式(101)において定義した通りである]
で表される、構成単位を少なくとも有することが好ましい。
【0043】
式(101)及び式(101’)において、Wは、互いに独立に、単結合、-O-、-CH-、-CH-CH-、-CH(CH)-、-C(CH-、-C(CF-、-SO-、-S-、-CO-又は-N(R)-を表し、光学フィルムの耐屈曲性の観点から、好ましくは-O-又は-S-を表し、より好ましくは-O-を表す。
【0044】
3a及びR3bは、互いに独立に、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、又は炭素数6~12のアリール基を表す。炭素数1~6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、2-メチル-ブチル基、3-メチル-ブチル基、2-エチル-プロピル基、n-ヘキシル基等が挙げられる。炭素数1~6のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。炭素数6~12のアリール基としては、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基等が挙げられる。光学フィルムのマンドレル試験後のヘーズを低減しやすく、かつ降伏点歪及び弾性率を高めやすい観点から、R3a及びR3bは、互いに独立に、好ましくは炭素数1~6のアルキル基又は炭素数1~6のアルコキシ基を表し、より好ましくは炭素数1~3のアルキル基又は炭素数1~3のアルコキシ基を表す。ここで、R3a及びR3bに含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0045】
は水素原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12の1価の炭化水素基を表す。炭素数1~12の1価の炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、2-メチル-ブチル基、3-メチル-ブチル基、2-エチル-プロピル基、n-ヘキシル、n-ヘプチル基、n-オクチル基、tert-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等が挙げられ、これらはハロゲン原子で置換されていてもよい。
前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0046】
式(101)及び式(101’)中のt及びuは、互いに独立に、0~4の整数であり、好ましくは0~2の整数、より好ましくは0又は1である。
【0047】
前記A、A、A及びAはいずれも2価の有機基を表し、好ましくは炭素数4~40の2価の有機基を表す。前記有機基は、炭化水素基又はフッ素置換された炭素数1~8の炭化水素基で置換されていてもよく、その場合、炭化水素基及びフッ素置換された炭化水素基の炭素数は好ましくは1~8である。A、A、A及びAとしては、それぞれ式(30)、式(31)、式(32)、式(33)、式(34)、式(35)、式(36)、式(37)又は式(38)で表される基、これらがメチル基、フルオロ基、クロロ基又はトリフルオロメチル基の1種類以上で置換された基、及び炭素数6以下の鎖式炭化水素基が挙げられる。
【0048】
式(30)~式(38)中の*は結合手を表し、Z、Z及びZは、互いに独立して、単結合、-O-、-CH-、-CH-CH-、-CH(CH)-、-C(CH-、-C(CF-、-S-、-SO-、-CO-又は-N(R)-を表す。ここで、Rはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12の炭化水素基を表す。ここで、Rはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12の炭化水素基を表す。ZとZ、及び、ZとZは、それぞれ、各環に対して好ましくはメタ位又はパラ位に位置する。
【0049】
【化7】
【0050】
本発明において、透明樹脂フィルムを形成する樹脂組成物は、ポリアミド系樹脂であってもよい。本実施形態に係るポリアミド系樹脂は、式(13)で表される繰り返し構造単位を主とする重合体である。ポリアミド系樹脂におけるG及びAの好ましい例及び具体例は、ポリイミド系樹脂におけるG及びAの好ましい例及び具体例と同じである。
前記ポリアミド系樹脂は、G及び/又はAが異なる2種類以上の式(13)で表される繰り返し構造単位を含んでいてもよい。
【0051】
ポリイミド系樹脂は、例えば、ジアミンとテトラカルボン酸化合物(テトラカルボン酸二無水物等)との重縮合により得ることができ、例えば、特開2006-199945号公報又は特開2008-163107号公報に記載されている方法にしたがって合成することができる。ポリイミドの市販品としては、三菱瓦斯化学(株)製ネオプリム(登録商標)、河村産業(株)製KPI-MX300F等が挙げられる。
【0052】
ポリイミド系樹脂の合成に用いられるテトラカルボン酸化合物としては、芳香族テトラカルボン酸及びその無水物、好ましくはその二無水物等の芳香族テトラカルボン酸化合物、及び脂肪族テトラカルボン酸及びその無水物、好ましくはその二無水物等の脂肪族テトラカルボン酸化合物等が挙げられる。テトラカルボン酸化合物は、無水物の他、テトラカルボン酸クロリド化合物等のテトラカルボン酸化合物誘導体であってもよく、これらは単独で又は2種以上を組合せて使用できる。
【0053】
芳香族テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、非縮合多環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物、単環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物及び縮合多環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。非縮合多環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシフェニル)プロパン二無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDAと記載することがある)、1,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、4,4’-(p-フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、4,4’-(m-フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物が挙げられる。また、単環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物が、縮合多環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0054】
これらの中でも、好ましくは4,4’-オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシフェニル)プロパン二無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)、1,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、4,4’-(p-フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物及び4,4’-(m-フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物が挙げられ、より好ましくは4,4’-オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物及び4,4’-(p-フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組合せて使用できる。
【0055】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、環式又は非環式の脂肪族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物とは、脂環式炭化水素構造を有するテトラカルボン酸二無水物であり、その具体例としては、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物等のシクロアルカンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物及びこれらの位置異性体が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組合せて使用できる。非環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-ペンタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。また、環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物及び非環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物を組合せて用いてもよい。
【0056】
テトラカルボン酸化合物の中でも、透明樹脂フィルムの引張弾性率、耐屈曲性、及び光学特性を向上しやすい観点から、好ましくは前記脂環式テトラカルボン酸二無水物又は非縮合多環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。より好ましい具体例としては、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組合せて使用できる。
【0057】
本実施形態に係るポリイミド系樹脂は、得られる透明樹脂フィルムの各種物性を損なわない範囲で、上記のポリイミド合成に用いられるテトラカルボン酸の無水物に加えて、テトラカルボン酸、トリカルボン酸化合物、ジカルボン酸化合物、それらの無水物及びそれらの誘導体をさらに反応させたものであってもよい。
【0058】
トリカルボン酸化合物としては、芳香族トリカルボン酸、脂肪族トリカルボン酸及びそれらの類縁の酸クロリド化合物、酸無水物等が挙げられ、これらは2種以上を併用してもよい。その具体例としては、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸の無水物、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸の酸クロリド化合物、2,3,6-ナフタレントリカルボン酸-2,3-無水物、フタル酸無水物と安息香酸とが単結合、-CH-、-C(CH-、-C(CF-、-SO-又はフェニレン基で連結された化合物が挙げられる。
【0059】
ジカルボン酸化合物としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸及びそれらの類縁の酸クロリド化合物、酸無水物等が挙げられ、これらは2種以上を併用してもよい。
その具体例としては、テレフタル酸;イソフタル酸;ナフタレンジカルボン酸;4,4’-ビフェニルジカルボン酸;3,3’-ビフェニルジカルボン酸;炭素数8以下である鎖式炭化水素、のジカルボン酸化合物及び2つの安息香酸骨格が-CH-、-S-、-C(CH-、-C(CF-、-O-、-N(R)-、-C(=O)-、-SO-又はフェニレン基で連結された化合物が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組合せて使用できる。ここで、Rはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12の炭化水素基を表す。
【0060】
ジカルボン酸化合物としては、好ましくはテレフタル酸;イソフタル酸;4,4’-ビフェニルジカルボン酸;3,3’-ビフェニルジカルボン酸;及び2つの安息香酸骨格が-CH-、-C(=O)-、-O-、-N(R)-、-SO-又はフェニレン基で連結された化合物であり、より好ましくは、テレフタル酸;4,4’-ビフェニルジカルボン酸;及び2つの安息香酸骨格が-O-、-N(R)-、-C(=O)-又は-SO-で連結された化合物である。これらは単独で又は2種以上を組合せて使用できる。
【0061】
テトラカルボン酸化合物、トリカルボン酸化合物、及びジカルボン酸化合物の合計に対する、テトラカルボン酸化合物の割合は、好ましくは40モル%以上であり、より好ましくは50モル%以上であり、さらに好ましくは70モル%以上であり、よりさらに好ましくは90モル%以上であり、とりわけ好ましくは98モル%以上である。
【0062】
ポリイミド系樹脂の合成に用いられるジアミンとしては、脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン又はそれらの混合物が挙げられる。なお、本実施形態において「芳香族ジアミン」とは、アミノ基が芳香環に直接結合しているジアミンを表し、その構造の一部に脂肪族基又はその他の置換基を含んでいてもよい。芳香環は単環でも縮合環でもよく、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環及びフルオレン環等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中でも、好ましくはベンゼン環が挙げられる。また「脂肪族ジアミン」とは、アミノ基が脂肪族基に直接結合しているジアミンを表し、その構造の一部に芳香環やその他の置換基を含んでいてもよい。
【0063】
脂肪族ジアミンの具体例としては、ヘキサメチレンジアミン等の非環式脂肪族ジアミン及び1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ノルボルナンジアミン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン等の環式脂肪族ジアミン等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組合せて使用できる。
【0064】
芳香族ジアミンの具体例としては、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、2,4-トルエンジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、1,5-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン等の、芳香環を1つ有する芳香族ジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’-ジメチルベンジジン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニル(TFMBと記載することがある)、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-アミノ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-アミノ-3-クロロフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-アミノ-3-フルオロフェニル)フルオレン等の、芳香環を2つ以上有する芳香族ジアミンが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組合せて使用できる。
【0065】
芳香族ジアミンとしては、好ましくは4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’-ジメチルベンジジン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニル(TFMB)、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニルが挙げられ、より好ましくは4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’-ジメチルベンジジン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニル(TFMB)、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニルが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組合せて使用できる。
【0066】
前記ジアミンは、フッ素系置換基を有することもできる。フッ素系置換基としては、トリフルオロメチル基等の炭素数1~5のパーフルオロアルキル基、及び、フルオロ基が挙げられる。
【0067】
上記ジアミンの中でも、高透明性及び低着色性の観点からは、好ましくはビフェニル構造を有する芳香族ジアミンからなる群から選択される1種以上が挙げられ、その具体例としては2,2’-ジメチルベンジジン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニル(TFMB)及び4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニルからなる群から選択される1種以上が挙げられる。さらに好ましくはビフェニル構造及びフッ素系置換基を有するジアミンが挙げられ、その具体例としては2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニル(TFMB)が挙げられる。
【0068】
ポリイミド系樹脂は、ジアミンと、テトラカルボン酸化合物(酸クロリド化合物、テトラカルボン酸二無水物等のテトラカルボン酸化合物誘導体を含む)との重縮合で形成される、式(10)で表される繰り返し構造単位を含む縮合型高分子である。出発原料としては、これらに加えて、さらにトリカルボン酸化合物(酸クロリド化合物、トリカルボン酸無水物等のトリカルボン酸化合物誘導体を含む)及びジカルボン酸化合物(酸クロリド化合物等の誘導体を含む)を用いることもある。また、ポリアミド系樹脂は、ジアミンと、ジカルボン酸化合物(酸クロリド化合物等の誘導体を含む)との重縮合で形成される、式(13)で表される繰り返し構造単位を含む縮合型高分子である。
【0069】
式(10)及び式(11)で表される繰り返し構造単位は、通常、ジアミン類及びテトラカルボン酸化合物から誘導される。式(12)で表される繰り返し構造単位は、通常、ジアミン及びトリカルボン酸化合物から誘導される。式(13)で表される繰り返し構造単位は、通常、ジアミン及びジカルボン酸化合物から誘導される。ジアミン、テトラカルボン酸化合物、トリカルボン酸化合物及びジカルボン酸化合物の具体例は、上述のとおりである。
【0070】
ジアミンと、テトラカルボン酸化合物等のカルボン酸化合物とのモル比は、ジアミン1.00molに対して、好ましくはテトラカルボン酸0.9mol以上1.1mol以下の範囲で適宜調節できる。高い耐折性を発現するためには得られるポリイミド系樹脂が高分子量であることが好ましいことから、ジアミン1.00molに対してテトラカルボン酸0.98mol以上1.02molであることがより好ましく、0.99mol以上1.01mol以下であることがさらに好ましい。
【0071】
また、得られる透明樹脂フィルムの黄色度を抑制する観点から、得られる高分子末端に占めるアミノ基の割合が低いことが好ましく、ジアミン1.00molに対してテトラカルボン酸化合物等のカルボン酸化合物は1.00mol以上であることが好ましい。
【0072】
ジアミン及びカルボン酸化合物(たとえば、テトラカルボン酸化合物)の分子中のフッ素数を調整して、得られるポリイミド系樹脂中のフッ素量を、ポリイミド系樹脂の質量を基準として、1質量%以上、5質量%以上、10質量%以上、20質量%以上とすることができる。フッ素の割合が高いほど原料費が高くなる傾向があることから、フッ素量の上限は40質量%以下であることが好ましい。フッ素系置換基は、ジアミン又はカルボン酸化合物のいずれに存在してもよく、両方に存在してもよい。フッ素系置換基を含むことにより特にYI値が低減される場合がある。
【0073】
本実施形態に係るポリイミド系樹脂は、異なる種類の複数の上記の繰り返し構造単位を含む共重合体でもよい。ポリイミド系樹脂の標準ポリスチレン換算の重量平均分子量は、通常100,000~800,000である。ポリイミド系樹脂の重量平均分子量が大きいと、成膜した際の屈曲性が向上することから、好ましくは200,000以上であり、より好ましくは250,000以上であり、さらに好ましくは280,000以上である。また、適度な濃度及び粘度のワニスが得られ、成膜性が向上する傾向があることから、好ましくは750,000以下であり、より好ましくは600,000以下であり、さらに好ましくは500,000以下である。異なる重量平均分子量のポリイミド系樹脂を2種類以上組合せて用いてもよい。さらに物性を損なわない範囲で、他の高分子材料を混合してもよい。
【0074】
ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂は、含フッ素置換基を含むことにより、フィルム化した際の引張弾性率が向上するとともに、YI値が低減される傾向を示す。フィルムの引張弾性率が高いと、キズ及びシワ等の発生が抑制される傾向がある。フィルムの透明性の観点から、ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂は、含フッ素置換基を有することが好ましい。含フッ素置換基の具体例としては、フルオロ基及びトリフルオロメチル基が挙げられる。
【0075】
ポリイミド系樹脂及びポリイミド系樹脂とポリアミド系樹脂との混合物におけるフッ素原子の含有量は、それぞれ、ポリイミド系樹脂の質量又はポリイミド系樹脂の質量とポリアミド系樹脂の質量との合計を基準として、好ましくは1質量%以上40質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以上40質量%以下である。フッ素原子の含有量が上記の範囲であると、フィルム化した際のYI値をより低減し、透明性をより向上することができる傾向がある。
【0076】
本発明において、透明樹脂フィルムを構成する樹脂組成物におけるポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂の含有量は、樹脂組成物の固形分に対して、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上、さらにより好ましくは70質量%以上であり、100質量%であってもよい。ポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂の含有量が上記下限値以上であると、透明樹脂フィルムの屈曲性が良好である。なお、固形分とは、樹脂組成物から溶媒を除いた成分の合計量のことをいう。
【0077】
ポリイミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂のイミド化率は、好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、さらに好ましくは96%以上である。光学フィルム及び/又は光学積層体の光学的均質性を高めやすい観点から、イミド化率が上記の下限以上であることが好ましい。また、イミド化率の上限は100%以下である。イミド化率は、ポリイミド樹脂又はポリアミドイミド樹脂中のテトラカルボン酸化合物に由来する構成単位のモル量の2倍の値に対する、ポリイミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂中のイミド結合のモル量の割合を示す。なお、ポリイミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂がトリカルボン酸化合物を含む場合には、ポリイミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂中のテトラカルボン酸化合物に由来する構成単位のモル量の2倍の値と、トリカルボン酸化合物に由来する構成単位のモル量との合計に対する、ポリイミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂中のイミド結合のモル量の割合を示す。また、イミド化率は、IR法、NMR法等により求めることができ、例えば、NMR法においては、実施例に記載の方法により測定できる。
【0078】
本発明において、透明樹脂フィルムを形成する樹脂組成物は、上記ポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂に加えて、無機粒子等の無機材料をさらに含有していてもよい。無機材料として、シリカ粒子、チタン粒子、水酸化アルミニウム、ジルコニア粒子、チタン酸バリウム粒子等の無機粒子、また、オルトケイ酸テトラエチル等の4級アルコキシシラン等のケイ素化合物が挙げられる。ワニスの安定性、無機材料の分散性の観点から、好ましくはシリカ粒子、水酸化アルミニウム、ジルコニア粒子、さらに好ましくはシリカ粒子である。
【0079】
無機材料粒子の平均一次粒子径は、好ましくは10~100nm、より好ましくは10~90nm、さらに好ましくは10~50nm、さらにより好ましくは10~30nmである。シリカ粒子の平均一次粒子径が100nm以下であると透明性が向上する傾向がある。シリカ粒子の平均一次粒子径が10nm以上であると、シリカ粒子の凝集力が弱まるために取り扱い易くなる傾向がある。
【0080】
本発明においてシリカ粒子は、溶媒等にシリカ粒子を分散させたシリカゾルであっても、気相法で製造したシリカ微粒子粉末を用いてもよいが、ハンドリングが容易であることから液相法で製造したシリカゾルであることが好ましい。
【0081】
透明樹脂フィルム中のシリカ粒子の平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)による観察で求めることができる。透明樹脂フィルムを形成する前のシリカ粒子の粒度分布は、市販のレーザー回折式粒度分布計により求めることができる。
【0082】
本発明において、樹脂組成物が無機材料を含有する場合、その含有量は、樹脂組成物の固形分に対して、好ましくは0.001質量%以上90質量%以下であり、より好ましくは0.001質量%以上60質量%以下であり、さらに好ましくは0.001質量%以上40質量%以下である。樹脂組成物における無機材料の含有量が上記の範囲内であると、透明樹脂フィルムの透明性及び機械的強度を両立させやすい傾向がある。なお、固形分とは、樹脂組成物から溶剤を除いた成分の合計量のことをいう。
【0083】
透明樹脂フィルムを構成する樹脂組成物は、以上説明した成分に加えて、他の成分をさらに含有していてもよい。他の成分としては、例えば、酸化防止剤、離型剤、光安定剤、ブルーイング剤、難燃剤、滑剤及びレベリング剤が挙げられる。
【0084】
本発明において樹脂組成物がポリイミド系樹脂等の樹脂成分及び無機材料以外の他の成分を含む場合、その他の成分の含有量は、透明樹脂フィルムの総質量に対して好ましくは0.001%以上20質量%以下であり、より好ましくは0.001%以上10質量%以下である。
【0085】
本発明において透明樹脂フィルムは、例えば、前記テトラカルボン酸化合物、前記ジアミン及び前記のその他の原料から選択して反応させて得られる、ポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂の反応液、必要に応じて無機材料及びその他の成分を含む樹脂組成物に、溶媒を加えて混合及び撹拌することにより調製される樹脂ワニスから製造することができる。前記樹脂組成物において、ポリイミド系樹脂等の反応液に変えて、購入したポリイミド系樹脂等の溶液、購入した固体のポリイミド系樹脂等の溶液を用いてもよい。
【0086】
樹脂ワニスを調製するために用い得る溶媒としては、ポリイミド系樹脂等の樹脂成分を溶解又は分散させ得るものを適宜選択することができる。樹脂成分の溶解性、塗布性及び乾燥性等の観点からは、溶媒の沸点は、好ましくは120~300℃、より好ましくは120~270℃、さらに好ましくは120~250℃、特に好ましくは120~230℃である。かかる溶媒としては、具体的に例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶媒;γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン等のラクトン系溶媒;シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸ブチル、酢酸アミル等の酢酸エステル系溶媒;ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒等が挙げられる。中でも、ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂に対する溶解性に優れることから、N,N-ジメチルアセトアミド(沸点:165℃)、γ-ブチロラクトン(沸点:204℃)、N-メチルピロリドン(沸点:202℃)、酢酸ブチル(沸点:126℃)、シクロペンタノン(沸点:131℃)及び酢酸アミル(沸点:149℃)からなる群から選択される溶媒が好ましい。溶媒として、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。なお、2種以上の溶媒を用いる場合には、用いる溶媒の中で最も沸点の高い溶媒の沸点が上記範囲に入るよう溶媒の種類を選択することが好ましい。
【0087】
溶媒の量は、樹脂ワニスの取り扱いが可能な粘度になるように選択すればよく、特に制限はないが、例えば樹脂ワニス全量に対して、好ましくは50~95質量%、より好ましくは70~95質量%、さらに好ましくは80~95質量%である。
【0088】
本発明の透明樹脂フィルムは、上記樹脂ワニスを支持体上に塗工して、プレ乾燥することにより、得られる。透明樹脂フィルムは、支持体上に剥離可能に積層される。剥離可能であるということは、フィルムとして形状を維持でき、かつ、破断することなく支持体から剥離できることを意味する。具体的には、プレ乾燥にて適当量の溶媒が残留するように乾燥することを意味する。ここで残留溶媒量が多すぎると、フィルムとしての形状が維持できなくなり、また、残留溶媒量が少なすぎると支持体との密着性が高くなりすぎ剥離時に破断する。適切な残留溶媒量は、透明樹脂フィルムの樹脂組成物、溶媒、支持体の種類に依存して変わるものであり、適宜調整する必要がある。ただし、通常、透明樹脂フィルム中の溶媒の含有量は、透明樹脂フィルムの総質量に対して0.1質量%以上である。透明樹脂フィルム中の溶媒含有量の上限値は、フィルムとして形状を維持できる範囲であれば特に限定されるものではないが、通常、透明樹脂フィルムの総質量に対して50質量%以下である。
【0089】
樹脂製の板状体の厚さは、好ましくは10~200μmである。樹脂製の板状体の厚さをこの範囲に調節することで、耐衝撃性を維持しながら耐屈曲性を向上させやすくなる。
樹脂製の板状体の厚さは、より好ましくは20~100μmであり、さらに好ましくは30~80μmである。
【0090】
上記透明樹脂フィルムの黄色度(YI値)は、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.7以下、さらに好ましくは2.5以下、特に好ましくは2.0以下である。光学積層体の黄色度が上記の上限以下であると透明性を向上させやすく、例えば表示装置の前面板に使用した場合に視認性を高めやすい。黄色度は、通常-5以上、好ましくは-2以上、より好ましくは0以上、さらに好ましくは0.3以上、さらに好ましくは0.5以上、特に好ましくは0.7以上である。黄色度(YI)は、JIS K 7373:2006に準拠して、紫外可視近赤外分光光度計を用いて300~800nmの光に対する透過率測定を行い、3刺激値(X、Y、Z)を求め、YI=100×(1.2769X-1.0592Z)/Yの式に基づいて算出できる。
【0091】
透明樹脂フィルムの全光線透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは89%、ことさらに好ましくは90%以上である。全光線透過率が上記の下限以上であると、前面板を画像表示装置に組み込んだ際に視認性を高めやすい。
全光線透過率の上限は、通常100%以下である。なお、全光線透過率は、例えばJIS K 7361-1:1997に準拠してヘーズコンピュータを用いて測定できる。
【0092】
透明樹脂フィルムのヘーズは、好ましくは3.0%以下、より好ましくは2.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下、さらにより好ましくは0.5%以下、特に好ましくは0.3%以下である。透明樹脂フィルムのヘーズが上記の上限以下であると透明性が良好となり、例えば画像表示装置の前面板に使用した場合に、画像の視認性を高めやすい。
またヘーズの下限は通常0.01%以上である。なお、ヘーズは、JIS K 7136:2000に準拠してヘーズコンピュータを用いて測定できる。
【0093】
前面板1は、基材フィルムの少なくとも一方の面にハードコート層を設けて硬度をより向上させたフィルムであってよい。基材フィルムとしては、上記樹脂からできたフィルムを用いることができる。ハードコート層は、基材フィルムの一方の面に形成されていてもよいし、両方の面に形成されていてもよい。ハードコート層を設けることにより、硬度及びスクラッチ性を向上させた樹脂フィルムとすることができる。ハードコート層は、例えば紫外線硬化型樹脂の硬化層である。紫外線硬化型樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アミド系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられる。ハードコート層は、強度を向上させるために、添加剤を含んでいてもよい。添加剤は限定されることはなく、無機系微粒子、有機系微粒子、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0094】
光学積層体が表示装置に用いられる場合、前面板1は、表示装置におけるウィンドウフィルムとしての機能を有していてよい。前面板1は、ブルーライトカット機能、視野角調整機能等を有するものであってもよい。前面板1は、表示装置の最表面を構成する層であることができる。
【0095】
前面板1の厚さは、好ましくは20~220μmである。前面板1の厚さをこの範囲に調節することで、耐衝撃性を維持しながら耐屈曲性を向上させやすくなる上、硬度を付与することもできる。前面板1の厚さは、より好ましくは35~110μmであり、さらに好ましくは40~70μmである。
【0096】
前面板1の引張弾性率は、好ましくは3GPa以上であり、より好ましくは4GPa以上であり、さらに好ましくは5GPa以上である。前面板1の引張弾性率は、好ましくは10GPa以下であり、より好ましくは9GPa以下である。引張弾性率が上記の下限値以上であると、外部から衝撃を受けた場合、前面板に凹み等の欠陥が生じにくくなると共に、前面板の強度を高めやすい。また、引張弾性率が上記の上限値以下であると、前面板の耐屈曲性を向上させやすい。引張弾性率は、MD(Machine Direction、フィルムの成形方向)、またはTD(Transverse Direction、MDに垂直方向)の少なくとも一方で上記範囲を満たせばよく、両方で上記範囲を満たすことが好ましい。
【0097】
[粘着剤層]
粘着剤層は、光学積層体を構成する非粘着性層の間、又は光学積層体を構成する非粘着性層と表示ユニット等の被着物との間に位置する。粘着剤層は、その両側に存在する部材同士を結合する層である。ある一形態においては、図1を参照して、光学積層体10は第1粘着剤層2と、第2粘着剤層4とを、有する。第1粘着剤層2は、前面板1と後述の耐衝撃層3との間に位置し、両者を結合する。第2粘着剤層は、耐衝撃層3の内部表面上に位置し、耐衝撃層と被着物を結合する。被着物としては、例えば、表示ユニットの偏光板、円偏光板、タッチセンサ等が挙げられる。各粘着剤層は、同じ材料からなるものであっても、異なる材料からなるものであってもよい。
【0098】
粘着剤層は、(メタ)アクリル系、ゴム系、ウレタン系、エステル系、シリコーン系、ポリビニルエーテル系のような樹脂を主成分とする粘着剤組成物で構成することができる。中でも、透明性、耐候性、耐熱性等に優れる(メタ)アクリル系樹脂をベースポリマーとする粘着剤組成物が好ましい。粘着剤組成物は、活性エネルギー線硬化型、熱硬化型であってもよい。
【0099】
粘着剤組成物に用いられる(メタ)アクリル系樹脂(ベースポリマー)としては、例えば、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルのような(メタ)アクリル酸エステルの1種又は2種以上をモノマーとする重合体又は共重合体が好ましく用いられる。ベースポリマーには、極性モノマーを共重合させることが好ましい。極性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートのような、カルボキシル基、水酸基、アミド基、アミノ基、エポキシ基等を有するモノマーが挙げられる。
【0100】
粘着剤組成物は、上記ベースポリマーのみを含むものであってもよいが、通常は架橋剤をさらに含む。架橋剤としては、2価以上の金属イオンであって、カルボキシル基との間でカルボン酸金属塩を形成するもの;ポリアミン化合物であって、カルボキシル基との間でアミド結合を形成するもの;ポリエポキシ化合物やポリオールであって、カルボキシル基との間でエステル結合を形成するもの;ポリイソシアネート化合物であって、カルボキシル基との間でアミド結合を形成するものが挙げられ、好ましくはポリイソシアネート化合物が挙げられる。
【0101】
活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物とは、紫外線や電子線のような活性エネルギー線の照射を受けて硬化する性質を有しており、活性エネルギー線照射前においても粘着性を有してフィルム等の被着体に密着させることができ、活性エネルギー線の照射により硬化して密着力の調整ができる性質を有する粘着剤組成物である。活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、紫外線硬化型であることが好ましい。活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、ベースポリマー、架橋剤に加えて、活性エネルギー線重合性化合物をさらに含む。
さらに必要に応じて、光重合開始剤や光増感剤等を含有させることもある。
【0102】
粘着剤組成物は、光散乱性を付与するための微粒子、ビーズ(樹脂ビーズ、ガラスビーズ等)、ガラス繊維、ベースポリマー以外の樹脂、粘着性付与剤、充填剤(金属粉やその他の無機粉末等)、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、着色剤、消泡剤、腐食防止剤、光重合開始剤等の添加剤を含んでいてよい。
【0103】
上記粘着剤組成物の有機溶剤希釈液を基材上に塗布し、乾燥させることにより形成することができる。活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物を用いた場合は、形成された粘着剤層に、活性エネルギー線を照射することにより所望の硬化度を有する硬化物とすることができる。
【0104】
粘着剤層は粘弾性を有し、光学積層体に加えられる衝撃を緩和する機能を有する。本発明の光学積層体では、粘着剤層の特性を適宜調節することで、前面に加えられる衝撃に対する光学積層体の耐衝撃性を向上させる。つまり、光学積層体の表面に衝撃が加えられた場合でも、タッチセンサ層や光学積層体がカバーする表示パネルの配線及び素子等が破損し難くなる。
【0105】
発明者の検討により、粘着剤層の弾性、厚さ及び位置が光学積層体の耐衝撃性に関係することが明らかになった。粘着剤層による衝撃緩和効果は、粘着剤層の貯蔵弾性率が低いほど大きくなる。また、粘着剤層による衝撃緩和効果は、粘着剤層が厚いほど大きくなる。そして、粘着剤層による上記衝撃緩和効果は、粘着剤層の位置が表示パネルに近いほど有効性が大きくなる。
【0106】
粘着剤層は、好ましくは25℃で0.01~0.80MPaの貯蔵弾性率を有する。粘着剤層の貯蔵弾性率が0.01MPa未満であると、光学積層体の耐衝撃性が低下し、0.80MPaを超えると光学積層体の屈曲性が低下する。
粘着剤層の25℃での貯蔵弾性率は、好ましくは0.02~0.75MPaであり、より好ましくは0.03~0.70MPaであり、さらに好ましくは0.05~0.3MPa以下であり、0.1~0.25MPaであってもよい。
【0107】
一つの粘着剤層の厚さは、好ましくは5~100μmである。粘着剤層の厚さが5μm以上であると、光学積層体の耐衝撃性が向上し、また100μm以下であると光学積層体の屈曲性が向上する。一つの粘着剤層の厚さは、好ましくは5~100μmであり、より好ましくは15~85μmである。
【0108】
光学積層体が備える粘着剤層の合計厚さは、好ましくは10~200μmである。粘着剤層の合計厚さが10μm以上であると、光学積層体の耐衝撃性が向上し、200μm以下であると光学積層体の屈曲性が向上する。
光学積層体が備える粘着剤層の合計厚さは、好ましくは30~150μmであり、より好ましくは40~120μmである。
【0109】
光学積層体が、図1に示すとおり、例えば、前面板1、第1粘着剤層2、耐衝撃層3、及び第2粘着剤層4を、視認側からこの順に備えるものである場合、第1粘着剤層の厚さbと第2粘着剤層の厚さcの比(b/c)は、15/85~85/15であることが好ましい。比率rが15/85以上であると、光学積層体の屈曲性が向上し、また85/15以下であると光学積層体の耐衝撃性が向上する。比率は、好ましくは25/75~85/15であり、より好ましくは30/70~80/20である。
【0110】
好ましい一形態において、第1及び第2の粘着剤層と後述する耐衝撃層との合計厚さが100~190μmである範囲にある。粘着剤層と耐衝撃層との合計厚さが100μm以上であることで光学積層体の耐衝撃性が向上し、また190μm以下であることで光学積層体の屈曲性が向上する。前記合計厚さは、好ましくは120~190μm、より好ましくは135~190μmである。また、ある一形態において、第1及び第2の粘着剤層と後述する耐衝撃層との合計厚さは80~200μm、好ましくは80~150μmであってよい。前記合計厚さを上記範囲に調節することで、良好な耐衝撃性及び良好な屈曲性が得られる。
【0111】
[耐衝撃層]
耐衝撃層3は前面板の内部方向に位置し、表示装置の前面に衝撃が加えられた場合に、その衝撃を緩和して、表示パネルの配線及び素子等の破損を防止する機能を有する。耐衝撃層3は、好ましくは光学積層体の耐屈曲性を向上させる機能を有する。
【0112】
材料を屈曲させた場合、材料に加えられた変形エネルギーが閾値に達することで、その材料には、破断、クラック又はシワ等の損傷が生じる。
【0113】
そのため、耐衝撃層は、変形エネルギーに対する許容能が大きい材料が好ましく、例えば、堅くて粘り強い(すなわちタフネスが大きい)熱可塑性樹脂が好ましい。かかる樹脂としては、例えば、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられる。さらに本発明は、表示装置に使用することを目的としていることから、透光性に優れた(好ましくは光学的に透明な)樹脂を使用することが好ましい。
【0114】
耐衝撃層は、好ましくは0.1~10GPaの引張弾性率を有する。耐衝撃層の引張弾性率が0.1GPa以上であると、光学積層体の耐衝撃性が向上し、また10GPa以下であると光学積層体の屈曲性が向上する。耐衝撃層の引張弾性率は、好ましくは1.0~8.0GPaであり、より好ましくは3.0~7.0GPaである。引張弾性率は、MD(Machine Direction、フィルムの成形方向)、またはTD(Transverse Direction、MDに垂直方向)の少なくとも一方で上記範囲を満たせばよく、両方で上記範囲を満たすことが好ましい。
【0115】
耐衝撃層は、位相差フィルムや輝度向上フィルムのような光学機能を併せ持つ耐衝撃層であってもよい。例えば、上記熱可塑性樹脂からなるフィルムを延伸(一軸延伸又は二軸延伸等)したり、該フィルム上に液晶層等を形成したりすることにより、任意の位相差値が付与された位相差フィルムとすることができる。
【0116】
耐衝撃層は5~140μmの厚さを有する。耐衝撃層の厚さが5μm以上であると光学積層体の耐衝撃性が向上し、また140μm以下であると光学積層体の屈曲性が向上する。耐衝撃層の厚さは、好ましくは10~120μmであり、より好ましくは30~110μmであり、さらに好ましくは35~105μmであり、40~100μmであってもよい。
【0117】
[光学積層体の製造方法]
本発明の光学積層体は、粘着剤層を使用して前面板と耐衝撃層とを結合し、耐衝撃層の内部側表面に粘着剤層を形成することにより、製造される。又は、耐衝撃層の内部側表面に粘着剤層を形成し、粘着剤層を使用して耐衝撃層と前面板とを結合することによっても、本発明の光学積層体は製造される。
【0118】
前面板と耐衝撃層とを結合する方法としては、一方の層の結合する表面に粘着剤層を形成した後に他方の層を積層すればよく、又は、両方の層の結合する表面にそれぞれ粘着剤層を形成した後、粘着剤層同士を合わせてもよい。層の結合する表面に粘着剤層を形成する方法は、上述の通り粘着剤組成物を使用して形成してよく、又は独立して取扱うことができるシート状粘着剤を準備して、これを表面に貼り付けることで形成してもよい。
【0119】
光学積層体は、優れた耐屈曲性を有する。ここでいう耐屈曲性とは、180°屈曲させてもとに戻した場合に、屈曲部で破断が生じないことを意味する。屈曲させる際の屈曲半径は、例えば、5mm以下、好ましくは3mm以下、より好ましくは1mm以下である。
屈曲させる際の屈曲速度は、例えば、30~60rpm、好ましくは30rpm以下である。屈曲速度が遅い場合に、耐屈曲回数が低下する場合があるが、本発明における光学積層体は、屈曲速度が遅い場合においても高い耐屈曲性を有する。
【0120】
光学積層体は、屈曲部が破断するまで、前面板を内側にして連続的に180°曲げ伸ばしを行う連続屈曲性試験を行った場合に、通常10万回以上、好ましくは15万回以上、より好ましくは20万回以上の耐屈曲回数を示す。この場合、連続屈曲試験の条件は、温度25℃、屈曲速度30rpm及び屈曲半径1.00mmである。
【0121】
[表示装置]
図2は、本発明の表示装置の構造の一例を示す、断面図である。表示装置20は、その前面(視認側)に配置された光学積層体10と、表示ユニット5とを有する。表示ユニットは、視認側表面を内側にして折り畳み可能に構成されたものであってもよく、巻回可能に構成されたものであってもよい。また、表示ユニットは、タッチパネル方式の表示装置として構成されたものであってもよい。表示ユニットの具体例としては、表示素子の表示面上にタッチセンサ層及び偏光層を形成した積層体が挙げられる。表示素子の具体例としては、液晶表示素子、有機EL表示素子、無機EL表示素子、プラズマ表示素子、電界放射型表示素子が挙げられる。
【0122】
表示装置20は、スマートフォン、タブレット等のモバイル機器、テレビ、デジタルフォトフレーム、電子看板、測定器や計器類、事務用機器、医療機器、電算機器等として用いることができる。
【実施例
【0123】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。本実施例中、物質を配合する割合の単位「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
【0124】
<製造例1>
ポリアミドイミド樹脂の合成
窒素ガス雰囲気下、セパラブルフラスコに撹拌翼を備えた反応容器と、オイルバスとを準備した。オイルバスに設置した反応容器に、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)45部と、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)768.55部とを投入した。反応容器内の内容物を室温で撹拌しながらTFMBをDMAcに溶解させた。反応容器内に4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)19.01部をさらに投入し、反応容器内の内容物を室温で3時間撹拌した。4,4’-オキシビス(ベンゾイルクロリド)(OBBC)4.21部、次いでテレフタロイルクロリド(TPC)17.30部を反応容器に投入し、反応容器内の内容物を室温で1時間撹拌した。反応容器内に4-メチルピリジン4.63部と無水酢酸13.04部とをさらに投入し、反応容器内の内容物を室温で30分間撹拌した。撹拌した後、オイルバスを用いて容器内温度を70℃に昇温し、70℃に維持してさらに3時間撹拌し、反応液を得た。得られた反応液を室温まで冷却し、大量のメタノール中に糸状に投入し、沈殿物を析出させた。析出した沈殿物を取り出し、メタノール中に6時間浸漬した後、メタノールで洗浄した。100℃にて沈殿物の減圧乾燥を行い、ポリアミドイミド樹脂1を得た。得られたポリアミドイミド樹脂1の重量平均分子量は400,000、イミド化率は99.0%であった。
【0125】
<製造例2>
前面板用光学フィルムの製造
製造例1で得られたポリアミドイミド樹脂(TPC/6FDA/OBBC/TFMB=60/30/10/100)をγ-ブチロラクトン(GBL)で希釈し、GBL置換シリカゾルを加えて十分に混合することで、樹脂/シリカ粒子混合ワニスを得た。その際、樹脂とシリカ粒子の濃度が9.7質量%となるように混合ワニスを調製した。得られたポリアミドイミドワニスを目開き10μmのフィルターでろ過した後、ポリエステル基材(東洋紡(株)製「A4100」(商品名))の平滑面上に自立膜の厚さが45μmとなるように塗布し、流涎成形し、ワニスの塗膜を成形した。この時、線速度は0.8m/分であった。ワニスの塗膜を、80℃で10分加熱し、さらに100℃で10分加熱し、さらに90℃で10分加熱した。その後、塗膜を200℃で25分、加熱(ポストベーク)することにより、厚さ40μm、全光線透過率=89.9(%)、YI=1.6、Haze=0.2(%)のポリイミドフィルムを得た。
【0126】
<製造例3>
ハードコート用光硬化性樹脂組成物の調製
トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学工業(株)製「A-TMPT」(商品名))28.4質量部、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業(株)製「A-TMMT」(商品名))28.4質量部、光重合開始剤として、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF製「Irgacure」(登録商標) 184)1.8質量部、レベリング剤(ビックケミージャパン(株)製「BYK」(登録商標)-307)0.1質量部、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル(東京化成工業(株)製)39質量部を撹拌混合し、光硬化性樹脂組成物を得た。
【0127】
<製造例4>
前面板の製造
製造例2で製造したポリアミドイミドフィルム(光学フィルム)の片面に、製造例3で調製した光硬化性樹脂組成物を乾燥後の厚さが10μmとなるようにロール・ツー・ロール方式で塗工した。その後、80℃のオーブンで3分間乾燥を行い、紫外線を照射して硬化させることで、前面板を得た。紫外線の照射は、高圧水銀灯を用い、積層光量が500mJ/cmとなるように行った。前面板におけるハードコート層の厚さは10μmであった。得られた前面板(ハードコート層を含む)の引張弾性率は6.5GPaであった。
【0128】
<製造例5>
ポリイミド(PI)樹脂の合成
セパラブルフラスコにシリカゲル管、撹拌装置及び温度計を取り付けた反応器と、オイルバスとを準備した。このフラスコ内に、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)75.52gと、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニル(TFMB)54.44gとを投入した。これを400rpmで撹拌しながらN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)519.84gを加え、フラスコの内容物が均一な溶液になるまで撹拌を続けた。続いて、オイルバスを用いて容器内温度が20~30℃の範囲になるように調整しながらさらに20時間撹拌を続け、反応させてポリアミック酸を生成させた。30分後、撹拌速度を100rpmに変更した。20時間撹拌後、反応系温度を室温に戻し、DMAc649.8gを加えてポリマー濃度が10質量%となるように調整した。さらに、ピリジン32.27g、無水酢酸41.65gを加え、室温で10時間撹拌してイミド化を行った。反応容器からポリイミドワニスを取り出した。得られたポリイミドワニスをメタノール中に滴下して再沈殿を行い、得られた粉体を加熱乾燥して溶媒を除去し、固形分として透明ポリイミド系樹脂を得た。得られたポリイミド系樹脂のGPC測定を行ったところ、重量平均分子量は360,000であった。
【0129】
<製造例6>
耐衝撃層用ポリイミド(PI)フィルムの製造
製造例5で得られたポリイミド樹脂(6FDA/TFMB=100/100)をGBL/DMAc=10/90比で希釈して濃度15.7質量%のポリイミドワニスを調製した。得られたポリイミドワニスを目開き10μmマイクロメートルのフィルターでろ過した後、ポリエステル基材(東洋紡(株)製「A4100」(商品名))の平滑面上に自立膜の厚さが85μmとなるようにアプリケーターを用いて塗布し、50℃で30分間、次いで140℃で15分間乾燥後、得られた塗膜をポリエステル基材から剥離して、自立膜を得た。自立膜を金枠に固定し、さらに大気下、200℃で40分間乾燥し、厚さ80μmのポリイミドフィルム(光学フィルム)を得た。
【0130】
<実施例1>
光学積層体の製造
耐衝撃層として製造例6で得た厚さ80μm、引張弾性率4.0GPaのポリイミド(PI)フィルムを準備した。第1粘着剤層として厚さ25μm、25℃での貯蔵弾性率0.1MPaの(メタ)アクリル系透明粘着シート(OCA)を準備した。第2粘着剤層として厚さ25μm、25℃での貯蔵弾性率0.1MPaの(メタ)アクリル系透明粘着シートを準備した。
【0131】
製造例4で得た前面板と耐衝撃層とを、第1粘着剤層を介して積層した。耐衝撃層の第1粘着剤層を積層していない表面上に第2粘着剤層を積層して、光学積層体を得た。
【0132】
<実施例2>
耐衝撃層として、ポリイミドフィルムの代わりに厚さ80μm、引張弾性率4.6GPaのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(商品名:SH82、SKC社製)を使用したこと以外は実施例1と同様にして、光学積層体を作製した。
【0133】
<実施例3>
第2粘着層として、厚さ50μm、25℃での貯蔵弾性率0.1MPaの(メタ)アクリル系透明粘着シートを使用したこと以外は実施例2と同様にして、光学積層体を作製した。
【0134】
<実施例4>
第2粘着層として、厚さ85μm、25℃での貯蔵弾性率0.1MPaの(メタ)アクリル系透明粘着シートを使用したこと以外は実施例2と同様にして、光学積層体を作製した。
【0135】
<実施例5>
第1粘着層として、厚さ50μm、25℃での貯蔵弾性率0.1MPaの(メタ)アクリル系透明粘着シートを使用したこと以外は実施例2と同様にして、光学積層体を作製した。
【0136】
<実施例6>
第1粘着層として、厚さ85μm、25℃での貯蔵弾性率0.1MPaの(メタ)アクリル系透明粘着シートを使用したこと以外は実施例2と同様にして、光学積層体を作製した。
【0137】
<実施例7>
耐衝撃層として、ポリイミドフィルムの代わりに厚さ38μm、引張弾性率4.6GPaのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを使用したこと以外は実施例1と同様にして、光学積層体を作製した。
【0138】
<実施例8>
耐衝撃層として、ポリイミドフィルムの代わりに厚さ100μm、引張弾性率4.6GPaのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを使用したこと以外は実施例1と同様にして、光学積層体を作製した。
【0139】
<比較例1>
耐衝撃層として、ポリイミドフィルムの代わりに厚さ150μm、引張弾性率0.03GPaのポリウレタン(PU)フィルムを使用したこと以外は実施例1と同様にして、光学積層体を作製した。
【0140】
<前面板用光学フィルムの光学特性評価>
〔フィルムの黄色度〕
光学フィルムの黄色度(Yellow Index:YI値)を、コニカミノルタ(株)製分光測色計CM-3700Aを用いて測定した。具体的には、サンプルがない状態でバックグランド測定を行った後、光学積層体をサンプルホルダーにセットして、300~800nmの光に対する透過率測定を行い、3刺激値(X、Y、Z)を求め、下記式に基づいてYI値を算出した。
【0141】
YI=100×(1.2769X-1.0592Z)/Y
【0142】
〔全光線透過率〕
JIS K 7105:1981に準拠して、スガ試験機(株)製の全自動直読ヘーズコンピュータHGM-2DPにより、全光線透過率(Tt)を測定した。
【0143】
〔ヘーズ(Haze)〕
JIS K 7136:2000に準拠して、実施例及び比較例で得られた光学フィルムを30mm×30mmの大きさにカットし、ヘーズコンピュータ(スガ試験機(株)製、「HGM-2DP」)を用いてヘーズ(%)を測定した。
【0144】
<光学積層体の性能評価>
〔耐衝撃性試験〕
実施例1~8及び比較例1で作製した光学積層体を、石定盤((株)ユニセイキ製、一級)上の厚さ125μmのポリイミド基板の上に設置した。光学積層体は、前面板が上方となるように設置した。なお、光学積層体とポリイミド基板(厚さ125μm)との間には圧力測定フィルム(富士フイルム(株)製「プレスケール」(登録商標)、グレード:HS(商品名))を挟んだ。重りは、質量が5.6gであり、試料に衝突する面が直径0.75mmの円状であるものを準備した。この重りを高さ10cmの位置から垂直に3回落下させた。圧力画像解析システム(富士フイルム(株)製「FPD-8010J」(商品名))により落下部の感圧紙の変色から底面応力を測定し、3回の測定値の平均値を求め、以下のよう耐衝撃性を評価した。
【0145】
◎…非常に良好:73MPa以下
〇…良好:73MPaを超え、77MPa以下
△…やや良好:77MPaを超え、85MPa以下
×…不良:85MPaを超える
【0146】
〔耐屈曲性試験〕
屈曲性試験は温度25℃において行った。実施例及び比較例で得られた光学積層体を、ダンベルカッターを用いて10mm幅の大きさにカットした。カットした光学積層体を、前面板を内側にして曲げられるように面状態無負荷U字伸縮試験機(ユアサシステム機器(株)製「DMLHB-FS」(商品名))の治具にセットして、対向する前面板間の距離が2.0mmとなるように(屈曲半径1mm)、180°屈曲させては伸ばす操作を繰り返し行った。屈曲速度は30rpmとした。光学積層体が破断したときの屈曲回数(耐屈曲回数)を耐屈曲性の指標として以下のように評価した。
【0147】
◎…非常に良好:耐屈曲回数が20万回以上
〇…良好:耐屈曲回数が15万回以上、20万回未満
△…やや良好:耐屈曲回数が10万回以上、15万回未満
×…不良:耐屈曲回数が10万回未満
【0148】
〔粘着剤層の貯蔵弾性率〕
粘弾性測定装置(Anton Paar社製「MCR-301」(商品名))を使用して測定した。実施例及び比較例で用いたものと同じ粘着剤層を幅20mm×長さ20mmに裁断し、厚さが150μmとなるように複数枚積層した。積層された粘着剤層をガラス板に接合後、測定チップと接着した状態で-20℃から100℃の温度領域で周波数1.0Hz、変形量1%、昇温速度5℃/分の条件下で測定を行い、25℃における貯蔵弾性率値を確認した。
【0149】
〔引張弾性率〕
実施例及び比較例で用いた耐衝撃層、及び前面板を、ダンベルカッターを用いて10mm×100mmの短冊状にカットし、サンプルを得た。(株)島津製作所製オートグラフAG-ISを用い、チャック間距離50mm、引張速度10mm/分の条件で、該サンプルの応力-歪曲線(Stress-Strain曲線)を測定し、その傾きから耐衝撃層の引張弾性率を算出した。引張弾性率の測定は、温度23℃、相対湿度55%の環境で行った。
【0150】
〔層の厚さの測定方法〕
各層の厚さは、接触式膜厚測定装置((株)ニコン製「MS-5C」(商品名))を用いて測定した。ただし、偏光子層及び配向膜については、レーザー顕微鏡(オリンパス(株)製「OLS3000」(商品名))を用いて測定した。上記結果を表1に示す。
【0151】
【表1】
【符号の説明】
【0152】
1…前面板、
2…第1粘着剤層、
3…耐衝撃層、
4…第2粘着剤層、
5…表示ユニット、
10…光学積層体、
20…表示装置。
図1
図2