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特許7584649半導体ウェハの表面上の未知の粒子を分類する方法
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  • 特許-半導体ウェハの表面上の未知の粒子を分類する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-07
(45)【発行日】2024-11-15
(54)【発明の名称】半導体ウェハの表面上の未知の粒子を分類する方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20241108BHJP
   G01N 23/2252 20180101ALI20241108BHJP
【FI】
H01L21/66 J
G01N23/2252
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023527412
(86)(22)【出願日】2021-10-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-15
(86)【国際出願番号】 EP2021079647
(87)【国際公開番号】W WO2022096318
(87)【国際公開日】2022-05-12
【審査請求日】2023-07-03
(31)【優先権主張番号】20206421.8
(32)【優先日】2020-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599119503
【氏名又は名称】ジルトロニック アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Siltronic AG
【住所又は居所原語表記】Einsteinstrasse 172,81677 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルップ,ルドルフ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレス,ゼバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ヒンターライトナー,ロベルト
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-124982(JP,A)
【文献】特開2001-068518(JP,A)
【文献】実開昭63-100838(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
G01N 23/2252
G01N 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウェハの表面上の未知の粒子を分類するための方法であって、
既知の化学組成および異なるサイズの粒子のテストウェハへの適用、既知の化学組成の複数の粒子のサイズの確認、および既知の化学組成の複数の粒子のエネルギー分散型x線分光法のスペクトルの記録、それに続くそれからの実質的な含有量のそれぞれの確認、および前記既知の化学組成の粒子のサイズおよび実質的含有量に対する最良適合曲線のフィッティング、加えて、未知の粒子の粒子サイズの確認および前記未知の粒子のエネルギー分散型x線分光法のスペクトルの記録、およびそれからの、半導体ウェハ上の前記未知の粒子の前記実質的含有量の判定、ならびに前記未知の粒子の前記サイズおよび前記実質的含有量と前記最良適合曲線との比較の結果としての前記未知の粒子の分類を含む、方法。
【請求項2】
前記最良適合曲線は直線である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記テストウェハはシリコンを含む、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記半導体ウェハはシリコンを含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
未知の粒子のサイズは、電子顕微鏡によって判断される、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
既知の粒子のサイズは、電子顕微鏡によって判断される、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
既知の化学組成の粒子はSiOを含む、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハ上の小さな異物粒子を分類する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
単結晶半導体ウェハは、現代のエレクトロニクスの基礎である。前記半導体ウェハ上の構成要素の製造中、今日非常に複雑な熱的操作およびコーティング工程が行われる。
【0003】
半導体ウェハ、特にシリコン半導体ウェハは、典型的には、まず、フロートゾーン法(FZ)またはチョクラルスキー法(CZ)によって単結晶ロッドを引き上げることによって製造される。したがって製造されたロッドは、ワイヤソー、内径ソーまたはバンドソーなどの、この目的に適したソーによって結晶片に分割され、次いでこれらの結晶片は、典型的にはワイヤソーまたは内径ソーにおいて半導体ウェハに加工される。
【0004】
さらなる機械的、化学機械的、および/または化学的ステップの後、エピタキシャル層が、任意選択肢的に、CVDによって適用されてもよい。
【0005】
このようにして製造されたこれらの半導体ウェハは、その後、さらなる構成要素処理に利用可能にされる。
【0006】
構成要素処理におけるデザインルールの狭小化のため、粒子は、プロセスおよび洗浄における開発に関連して、ウェハ製造における主な否定的品質の特徴である。形状、位置、および化学組成は、通常、汚染粒子の起源に対する示唆を与え、したがって、改善されたプロセスにおいてそれらの発生率を低減する可能性を示す。
【0007】
半導体ウェハの望ましくない汚染を構成する粒子は、典型的には、SEM(走査型電子顕微鏡)によって撮像される。SEMとEDX(エネルギー分散型X線分光法)との組み合わせは、この文脈において、粒子の位置、サイズおよび形状、ならびに化学組成の同時決定を可能にする技術を提供する。
【0008】
このタイプの分析は、200nmを超える範囲を有する粒子に極めて適している。
より小さい範囲を有する粒子は、粒子の構造に関する情報が存在しないか、または大きな誤差によって影響を受けるので、分類することが非常に困難である。
【0009】
粒子サイズがSEM解像度の限界に近づくほど、粒子を分類することはより厳しくなる。技術的な理由から、EDX分析の分解能限界はSEM分解能の分解能限界よりも低い。
【0010】
しかしながら、構成要素処理における継続的な小型化の結果として、より小さい粒子は、半導体構成要素製造における問題をますます引き起こすので、ますます注目されている。したがって、製造プロセスにおいてこれらの粒子を回避することは非常に重要である。
【0011】
現在特に興味深い粒径のサイズ範囲は、約15nm~200nmの範囲である。
このサイズの粒子は、もはや従来技術で広く行われている技術では分類できない。
【0012】
従来技術/問題の説明
特許明細書JP 2006 303 134 A2には、半導体ウェハの表面に気相の弱酸を付与し、付着した異物を粒子カウンタで検出することにより、半導体ウェハ表面の異物を可視化する分析技術が記載されている。
【0013】
この特許明細書に開示された方法の欠点は、小粒子を実際に「可視」、言い換えれば検出可能または計数可能にすることができるが、粒子の起源に関するいかなる情報も導出することはできないことである。
【0014】
特許出願US2005 062 959AAには、分析対象の小粒子をモノマーの重合核とし、その後、重合により大きくされた粒子を粒子カウンタで分析する方法が記載されている。
【0015】
この特許も、粒子の検出に関し、粒子の構造に関する情報は、この方法で隠されたままである。さらに、この方法は間接的な方法であり、粒子の位置のみを測定することができる。
【0016】
特許明細書US5 715 052 Aは、小粒子の小領域が、追加の光を用いて、異なる光学条件を用いて、繰り返し分析される方法を記載している。
【0017】
実際、この特許明細書の支援を受けて、粒子をそれらの内部構造によって分類することは可能である。しかしながら、記載される方法は、調査中の粒子が、使用される顕微鏡の分解能より小さいと、すぐに失敗する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
研究のための微小粒子の場合、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いても、粒子の内部構造を解明することはもはや可能ではないため、目的を達成することはできない。
【0019】
したがって、主に、唯一の可能な分類は、エネルギー分散型x線分光法(EDX)のスペクトルを使用するものである。
【0020】
ここでの問題は、分析可能なEDX測定信号は、調査中の粒子が小さいほど、小さくなることである。周囲条件(例えば、増大する基板表面/体積信号成分の影響)は、測定結果にますます大きな影響を及ぼし、したがって、正しい分類をより困難にする。
【0021】
比較的小さいSiまたはSiO粒子の場合、例えば、EDXスペクトルによる直接分類は不可能であり、その理由は、この場合、粒子の自然酸化物および周囲の自然酸化物が測定信号に著しく影響を及ぼすからである。
【0022】
別の有意な影響は、基板体積(相互作用体積)から生じる高信号成分であり、これは、基板体積に対する有効粒子体積の好ましくない比のため、粒子体積から生じる小画分を抑制する。
【0023】
したがって、本発明の目的は、従来技術において利用可能な技術の欠点がない技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
この目的は、特許請求の範囲に記載の方法によって達成される。
本発明の方法の上記の実施形態に関連して特定される特徴は、本発明による製品に対応して入れ替えることができる。逆に、本発明による製品の上記実施形態に関連して特定される特徴は、本発明の方法に対応して入れ替えることができる。本発明による実施形態のこれらおよび他の特徴は、図面の説明および特許請求の範囲において明らかにされる。個々の特徴は、本発明の実施形態として別々にまたは組み合わせて実現されてもよい。さらに、それらは、それら自体の権利において保護可能な有利な実施形態を説明し得る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】エネルギー分散型x線分光法のスペクトルから得られた酸素測定値(EDX、1に標準化された単位での光子数)を、基板(この特定の場合ではシリコン半導体ウェハ)上に位置する球状粒子の測定された直径の関数として示す。白丸で示されるデータ点は、意図的に適用されたSiO粒子に由来する値である。網掛け領域は、これらの粒子については酸素含有量は直径に対して線形依存性を示すという仮定で、SiO粒子が95%の確率で位置するはずである信頼領域を示す。黒丸は、酸素含有量と粒径との間に有意な依存性を示さない粒子に関する。図中、これらの粒子がある領域は、前述の信頼領域とは著しく異なる。白い三角形によって表されるデータ点は、明らかに酸素含有量とその直径との間に一定の依存性を示す粒子に由来するが、それにもかかわらず、そのデータ点は、SiO粒子ついて上記で定義された信頼領域の外側にある。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の詳細な説明および実施例
本発明では、既知の化学組成および異なるサイズの粒子が、基板(テストウェハ)の表面に適用される。この基板は、好ましくはシリコンを含む。
【0027】
粒子は、好ましくは粒子を含有する懸濁液によってテストウェハに塗布される。懸濁液に含まれる粒子は、好ましくは、15nm~3000nmの非常に限定されたサイズ範囲を有する。外来物質含有量(望ましくない不純物)が最小限であることも保証されるべきである。
【0028】
粒子懸濁液は、散乱レーザ光システム用の較正ウェハの製造と同様に適用されてもよい。この場合の粒子懸濁液は、全領域にわたって、または好ましくはスポット(部分領域)において実施されてもよい。この場合、粒子カウンタの使用は有用である場合がある。
【0029】
粒子の正しい分類のための適切な基準は、既知のサイズおよび化学組成の標準粒子である。標準化された粒子は、アルミニウム、銅またはイットリウムなどの非常に多種多様な異なる化学組成で市販されている。
【0030】
使用される粒子は、好ましくは、同じ化学組成を有するが、異なるサイズを有し、使用される粒子のサイズ分布は、非常に好ましくは20nm~100nmである。
【0031】
粒子がテストウェハに塗布された後、ある数の粒子のサイズが確認され、エネルギー分散型x線分光法のスペクトルが記録される。両方の情報項目が記憶される。
【0032】
エネルギー分散型x線分光法は、例えば、EDAX Elite Super EDX Detectoを伴う70mm、Zeiss Auriga 60 SEM-EDX機器を用いて、5keV、作動距離:6.1mm、オリフィス30μm、EDX積分時間:10秒の設定で測定されてもよい。しかしながら、任意の他の同等の機器も使用されてもよい。
【0033】
既知の化学組成の粒子のサイズは、好ましくは、電子顕微鏡(走査型電子顕微鏡)を使用して測定される。
【0034】
この文脈における「サイズ」は、粒子について判断された直径を指し、等価的に、それはまた、粒子の面積またはそれから直接導出される大きさを指してもよい。
【0035】
得られたスペクトルは、好ましくは、それらが所望の物質の実質的な含有量を生成するように、分析される。これは、スペクトルにおいて化学物質に特徴的な対応するピークを分析することによって行われてもよい。
【0036】
SiO粒子を使用することが特に好ましいが、その場合、酸素含有量およびサイズが判断される。しかしながら、他の既知の化学組成を有する他の粒子もまた、同じ目的のために使用され得る。
【0037】
実質的含有量は、好ましくは、サイズ(例えば、直径)の関数としてプロットされ、このプロットは、実質的含有量とサイズとの間の数学的関係を最良適合曲線の形態で生成する、最良適合曲線を判断するために使用される。
【0038】
未知の化学組成の粒子のサイズおよび化学組成の両方は、好ましくはシリコンを含む半導体ウェハの表面上で確認される。
【0039】
この場合、エネルギー分散型x線分光法を用いることが好ましい。未知の粒子のサイズは、好ましくは電子顕微鏡(SEM)を用いて確認される。
【0040】
図1は、例えば、エネルギー分散型x線分光法によって標準化されたSiO粒子の酸素含有量を直径の関数として示す(白丸)。酸素含有量と直径との間の比例関係を示すために、線形最良適合曲線をフィッティングした。信頼領域を、データ点の95%がこの領域内に位置するように、確認することも可能である。
【0041】
図1に示す未知の化学組成の粒子(黒丸、白三角)の測定点の位置は、粒子の構造に関するデータなしに、化学組成に関する情報を提供することができる。
【0042】
例えば黒丸によって示されるデータは、粒子の酸素含有量がそれらのサイズとは明らかに大きく無関係であることを示す。
【0043】
本発明者らはここで、SiO粒子が高い確率でこれらの粒子の起源として除外され得ることを認識した。したがって、これらの粒子は「非SiO粒子」と分類されるであろう。
【0044】
SiO粒子の信頼領域内にあるデータ点については、それらもSiO粒子である可能性が高いと仮定することができる。したがって、分類は「SiO粒子」と読まれる。
【0045】
明らかにSiOの信頼範囲内に収まらず、サイズとは無関係の酸素含有量もないデータ点(例えば、図1の白三角形)については、これらは球形でない特定の酸素含有量を有する粒子であるか、またはこれらはおそらく真性の酸化物層を有する粒子であると仮定され得る。この情報も、目的が粒子の発生の起源を判断することである場合に、有用であり得る。この種の粒子も、「非SiO粒子」として分類される。
【0046】
本発明者らは、未知の粒子が位置する半導体ウェハが特定の酸化物層、例えば自然酸化物層を担持すると仮定できる場合に、記載の手順が特に有利であることを認識した。この酸化物層は、エネルギー分散型x線分光法に影響を与える。粒子のサイズに関する追加の情報を通して、および既知の粒子についての最良適合曲線との比較を通して、この測定誤差はわずかな否定的影響しか示さない。
【0047】
類似のアプローチを、異なる化学組成の粒子でも、例えば、それらの推定起源を判断するために、同様に行うことができる。
【0048】
例示的な実施形態の上記の説明は、例示として理解されるべきである。それとともになされる開示は、一方では、当業者が本発明およびその付随する利点を理解することを可能にし、他方では、当業者の理解は、説明される構造および方法の明白な修正ならびに変更に及ぶ。本発明は、したがって、特許請求の範囲の保護の範囲は、すべてのそのような修正および変更、ならびに均等物も網羅することを意図している。
図1