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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】高分子複合体およびそれを含む成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 1/00 20060101AFI20241111BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20241111BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20241111BHJP
   C08K 3/10 20180101ALI20241111BHJP
【FI】
C08L1/00
C08K3/00
C08L101/00
C08K3/10
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2023554899
(86)(22)【出願日】2022-07-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-01
(86)【国際出願番号】 KR2022010239
(87)【国際公開番号】W WO2023018030
(87)【国際公開日】2023-02-16
【審査請求日】2023-09-07
(31)【優先権主張番号】10-2021-0107616
(32)【優先日】2021-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0077702
(32)【優先日】2022-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ミンスン・パク
(72)【発明者】
【氏名】チ・スン・パク
(72)【発明者】
【氏名】デヒョン・ファン
(72)【発明者】
【氏名】クワン・ソン・ジョン
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-201767(JP,A)
【文献】特開2012-087199(JP,A)
【文献】特開2015-199658(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子マトリックス、
第1無機粒子、
第1マイクロセルロース繊維、並びに
ナノフィブリルおよび第2無機粒子を含む第2マイクロセルロース繊維を含む、高分子複合体。
【請求項2】
前記第1無機粒子および前記第2無機粒子の合計は、前記高分子複合体100重量部に対して1~30重量部である、請求項1に記載の高分子複合体。
【請求項3】
前記第1無機粒子は、前記高分子複合体100重量部に対して0.1~20重量部で含まれる、請求項1または2に記載の高分子複合体。
【請求項4】
前記第1マイクロセルロース繊維と、前記ナノフィブリルおよび第2無機粒子を含む第2マイクロセルロース繊維とは1:0.1~1:3の重量比で含まれる、請求項1に記載の高分子複合体。
【請求項5】
前記第2無機粒子は、前記第2マイクロセルロース繊維100重量部に対して10~40重量部で含まれる、請求項1に記載の高分子複合体。
【請求項6】
前記第1マイクロセルロース繊維は10μm~40μmの直径および0.1mm~3mmの長さを有する、請求項1に記載の高分子複合体。
【請求項7】
前記ナノフィブリルは前記第2マイクロセルロース繊維の表面に結合され、
前記第2無機粒子は前記ナノフィブリルと結合するか、前記第2マイクロセルロース繊維の表面または内部に結合される、請求項1に記載の高分子複合体。
【請求項8】
前記第1無機粒子は、酸化チタン、酸化亜鉛、窒化ホウ素、および硫酸バリウムからなる群より選択される1種以上の無機粒子を含む、請求項1に記載の高分子複合体。
【請求項9】
前記第1無機粒子は50nm~1000nmの平均粒径を有する無機粒子である、請求項1に記載の高分子複合体。
【請求項10】
前記第2無機粒子は、銅、亜鉛、カルシウム、アルミニウム、鉄、銀、白金、パラジウム、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、オスミウム、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、マグネシウム、ストロンチウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、およびガリウムからなる群より選択される1種以上の金属粒子あるいは酸化シリコン粒子を含む、請求項1に記載の高分子複合体。
【請求項11】
前記第2無機粒子は、直径が0.01μm~10μmである球形粒子;一軸直径が0.01μm~10μmであり、他の一軸直径が0.02μm~30μmである柱状粒子;またはこれらの混合物を含む、請求項1に記載の高分子複合体。
【請求項12】
記第2マイクロセルロース繊維は1μm~30μmの直径を有し;前記ナノフィブリルは10nm~400nmの直径を有する、請求項1に記載の高分子複合体。
【請求項13】
前記高分子マトリックスは、ポリエチレン、ポリエチレン系共重合体、ポリプロピレン、ポリプロピレン系共重合体、ナイロン-6、ナイロン-66、アラミド、ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、スチレン-マレイン酸無水物共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、およびポリカーボネートからなる群より選択される1種以上の高分子樹脂を含む、請求項1に記載の高分子複合体。
【請求項14】
前記高分子マトリックス30~80重量%;前記第1無機粒子0.1~20重量%;前記第1マイクロセルロース繊維5~40重量%;および前記ナノフィブリルおよび第2無機粒子を含む第2マイクロセルロース繊維1~30重量%を含む、請求項1に記載の高分子複合体。
【請求項15】
前記高分子複合体からなるASTM D638-5規格の試験片に対してASTM D638-5の標準試験法に従って測定された、25MPa以上の引張強度を有する、請求項1に記載の高分子複合体。
【請求項16】
前記高分子複合体からなる大きさ80mm×10mm×4mmの試験片に対してISO 178の標準試験法に従って測定された、60MPa以上の曲げ強度を有する、請求項1に記載の高分子複合体。
【請求項17】
前記高分子複合体からなるASTM D256規格のノッチ付きサイズ63.5mm×12.7mm×3.2mmの試験片に対してASTM D256の標準試験法に従って測定された、20J/m以上のアイゾット衝撃強度を有する、請求項1に記載の高分子複合体。
【請求項18】
請求項1に記載の高分子複合体を含む、成形品。
【請求項19】
前記成形品は、自動車用内外装材である、請求項18に記載の成形品。
【請求項20】
前記成形品は、ダッシュボード(dashboard)、ドアトリム(door trim)、バッテリートレイ(battery tray)、バンパー(bumper)、ラッゲージトリム(luggage trim)、ドアオープニングトリム(door opening trim)、ヘッドライナー(headliner)、リアシェルフ(rear shelf)、トノカバー(tonneau cover)、サンバイザー(sun visor)、アシストグリップ(assist grip)、コンソールボックス(console box)、フェンダーパネル(fender panel)、オイルパン(oil pan)、ホイールハウス(wheel house)、サイドスカート(side skirt)、ガーニッシュ(garnish)、電装部品(electric parts)、エンジンカバー(engine cover)、シートベルトカバー(seat belt cover)、スイッチボタン(switch button)、およびセンターフェイシア(center facia)からなる群より選択される1種以上の自動車用内外装材である、請求項18に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2021年8月13日付の韓国特許出願第10-2021-0107616号および2022年6月24日付の韓国特許出願第10-2022-0077702号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、無機粒子およびセルロース繊維を含む高分子複合体およびそれを含む成形品に関する。
【背景技術】
【0003】
パルプ(Pulp)は木材(wood)、繊維作物(fiber crops)、古紙、またはぼろきれ(rags)などからセルロース繊維を化学的または機械的に分離して得られたリグノセルロース繊維物質(lignocellulosic fibrous material)である。セルロース繊維は主に製紙分野に使用されており、ナノセルロースの原材料として活用されている。
【0004】
ナノセルロースは高分子との複合化により高分子の物性を改善するための研究に応用されている。補強材としてグラスファイバーが適用されたものとは異なり、環境に優しいナノセルロースが適用された高分子複合体はリサイクルが容易であるという長所がある。
【0005】
しかし、セルロース繊維からナノセルロースを製造する工程は複雑で多くのコストがかかる。そして、セルロース繊維は高分子との複合化過程で高い工程温度により劣化する問題がある。また、セルロース繊維およびナノセルロースは高分子複合体内で凝集(aggregation)しやすいので、ナノスケールで分散させることは非常に難しく、そのため十分な補強効果を得にくい限界がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、補強材としてセルロース繊維を含み、環境に優しくかつ優れた機械的物性を示すことができる高分子複合体を提供する。
【0007】
また、本発明は、前記高分子複合体を含む成形品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、本発明の実施形態による高分子複合体およびそれを含む成形品について説明する。
【0009】
本明細書で明示的な言及がない限り、専門用語は単に特定の実施例を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。
【0010】
本明細書で使用される単数形は文脈上明らかに逆の意味を示さない限り複数形も含む。
【0011】
本明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素、成分および/または群の存在や付加を除外させるものではない。
【0012】
本明細書における「ナノ繊維」または「ナノフィブリル」は、ナノメートルスケールの直径を有する繊維を意味し、「マイクロ繊維」はマイクロメートルスケールの直径を有する繊維を意味する。例えば、前記マイクロ繊維は前記ナノ繊維の束からなるものであり得る。本明細書における各種繊維およびフィブリルの「直径」はその断面で最も長い長さの直径を意味する。
【0013】
本明細書における「パルプ」は木材(wood)、繊維作物(fiber crops)、古紙またはぼろきれ(rags)などからセルロース繊維を化学的または機械的に分離して得られたリグノセルロース繊維物質(lignocellulosic fibrous material)を意味する。
【0014】
本明細書における「パルプ繊維」、「セルロース繊維」または「マイクロセルロース繊維」はセルロースからなるマイクロ繊維を意味する。本明細書における「セルロースナノ繊維」または「ナノセルロース繊維」はセルロースからなるナノ繊維を意味する。
【0015】
本明細書における「フィブリル化」はマイクロセルロース繊維の内部組織を形成するナノフィブリルが解れてマイクロセルロース繊維上にナノフィブリルが毛羽立つ現象を意味する。
【0016】
本明細書における「フィブリル化されたセルロース繊維」は前記フィブリル化によりマイクロセルロース繊維上にナノメートルスケールの直径を有するナノフィブリルが毛羽立った状態のマイクロセルロース繊維を意味する。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、
高分子マトリックス、
第1無機粒子、
第1マイクロセルロース繊維、並びに
ナノフィブリルおよび第2無機粒子を含む第2マイクロセルロース繊維を含む、高分子複合体が提供される。
【0018】
プラスチックの補強材料として生分解性を有し、環境に優しい天然高分子材料であるセルロースナノ繊維が最近注目を浴びている。しかし、マイクロセルロース繊維をナノ化(微細化)してナノ繊維を得る工程は複雑で多くのコストがかかり、セルロースナノ繊維を補強材として含む高分子複合体のコストを上昇させる問題を招いている。
【0019】
本発明者らは研究を重ねた結果、セルロース繊維上に無機粒子を成長させて得られるフィブリル化されたセルロース繊維は、セルロース繊維をナノ化して得られるナノセルロースと同等程度の高分子補強効果を示すことができることが確認された。
【0020】
特に、前記フィブリル化されたセルロース繊維と改質されないマイクロセルロース繊維の混合物を補強材として含む高分子複合体は、改質されないマイクロセルロース繊維のみを補強材として含む高分子複合体に比べて優れた機械的物性を示し、かつ優れた価格競争力を有し得る。さらに、前記高分子複合体に適正量の無機粒子を適用することによって機械的強度の低下なしに色相を改善することができる。
【0021】
前記高分子複合体は、前記高分子マトリックス内に分散した前記第1無機粒子、前記第1マイクロセルロース繊維、並びに前記ナノフィブリルおよび第2無機粒子を含む第2マイクロセルロース繊維を含む。
【0022】
前記高分子マトリックスは、高分子樹脂であり得る。
【0023】
一例として、前記高分子マトリックスは、ポリオレフィン、ポリアミド、スチレン系重合体、およびポリカーボネートからなる群より選択される1種以上の高分子を含み得る。
【0024】
具体的には、前記高分子マトリックスは、ポリエチレン、ポリエチレン系共重合体、ポリプロピレン、およびポリプロピレン系共重合体などのポリオレフィン;ナイロン-6およびナイロン-66などの脂肪族ポリアミド;アラミドなどの芳香族ポリアミド;ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、スチレン-マレイン酸無水物共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、およびスチレン-ブタジエン-スチレン共重合体などのスチレン系重合体;ビスフェノールA、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールまたはこれらの混合物を含むポリオールとホスゲンを重合させたポリカーボネートなどであり得る。
【0025】
好ましくは、前記高分子マトリックスは、ポリエチレン、ポリエチレン系共重合体、ポリプロピレン、ポリプロピレン系共重合体、ナイロン-6、ナイロン-66、アラミド、ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、スチレン-マレイン酸無水物共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、およびポリカーボネートからなる群より選択される1種以上の高分子樹脂を含み得る。
【0026】
本発明の実施形態によれば、前記高分子複合体は前記高分子マトリックス上に分散した前記第1無機粒子を含む。
【0027】
前記第1無機粒子は前記高分子複合体の機械的物性を低下させず、かつ改善された色相を発現させるために添加することができる。一例として、セルロース繊維を含む高分子複合体は薄い黄色または濃い黄色を帯びることが一般的であるが、前記第1無機粒子を適用することで前記高分子複合体の白色度を向上させることができる。
【0028】
前記第1無機粒子は高屈折率を有する無機粒子を適用することができる。好ましくは、前記第1無機粒子は、酸化チタン、酸化亜鉛、窒化ホウ素、および硫酸バリウムからなる群より選択される1種以上の無機粒子を含み得る。
【0029】
前記第1無機粒子は50nm~1000nm、あるいは100nm~1000nm、あるいは100nm~500nmである平均粒径を有する無機粒子であり得る。前記高分子複合体に前記第1無機粒子が効率的に含まれるようにするために、前記第1無機粒子は50nm以上あるいは100nm以上の平均粒径を有することが好ましい。ただし、過度に大きい無機粒子は前記高分子複合体で欠陥(defect)として作用して機械的物性が劣化する。したがって、前記第1無機粒子は1000nm以下あるいは500nm以下の平均粒径を有することが好ましい。
【0030】
前記第1無機粒子は、前記高分子複合体100重量部に対して0.1~20重量部で含まれる。前記第1無機粒子による前記効果の発現のために、前記第1無機粒子は、前記高分子複合体100重量部に対して0.1重量部以上、あるいは1重量部以上、あるいは2重量部以上で含まれることが好ましい。ただし、過剰の無機粒子は前記高分子マトリックスとの相溶性を阻害し、これによって高分子複合体の機械的物性が低下し得る。したがって、前記第1無機粒子は、前記高分子複合体100重量部に対して20重量部以下、あるいは18重量部以下、あるいは16重量部以下で含まれることが好ましい。具体的には、前記第1無機粒子は、前記高分子複合体100重量部に対して0.1~20重量部、あるいは1~20重量部、あるいは1~18重量部、あるいは2~18重量部、あるいは2~16重量部で含まれる。
【0031】
本発明の実施形態によれば、前記高分子複合体は、前記高分子マトリックス上に分散した前記第1マイクロセルロース繊維を含む。
【0032】
前記第1マイクロセルロース繊維は、針葉樹、広葉樹などの木材から得られる天然セルロース繊維であり得る。一例として、前記第1マイクロセルロース繊維は苛性ソーダ、硫酸ソーダなどを使用して針葉樹や広葉樹などの天然原料からセルロース以外の成分を溶かして得ることができる。
【0033】
前記第1マイクロセルロース繊維は、後述する第2マイクロセルロース繊維(フィブリル化されたマイクロセルロース繊維)に比べてフィブリル化されていない状態のマイクロセルロース繊維を意味する。
【0034】
前記第1マイクロセルロース繊維は、10μm~40μmの直径および0.1mm~3mmの長さを有するものであり得る。具体的には、前記第1マイクロセルロース繊維は10μm~40μm、あるいは15μm~40μm、あるいは15μm~35μm、あるいは15μm~30μmの直径;および0.1mm~3mm、あるいは0.1mm~2.5mm、あるいは0.2mm~2.5mm、あるいは0.2mm~2mmの長さを有するものであり得る。
【0035】
前記第1マイクロセルロース繊維は湿式法または乾式法により得られる。非制限的な例として、セルロース原料を蒸留水に投入し、湿式状態でミキサーで数回粉砕した後、減圧濾過して前記第1マイクロセルロース繊維が得られる。
【0036】
本発明の実施形態によれば、前記高分子複合体は、前記高分子マトリックス上に分散した前記第2マイクロセルロース繊維をさらに含む。
【0037】
前記第2マイクロセルロース繊維は、針葉樹、広葉樹などの木材から得られる天然セルロース繊維であり得る。
【0038】
一般的にマイクロセルロース繊維のフィブリル化(fibrillation)は、叩解(beating)などの工程によりセルロース繊維の膜およびその内部組織を形成する比較的大きなフィブリルが解れてその表面に微細なフィブリルが毛羽立つ現象を意味する。
【0039】
本発明において、前記第2マイクロセルロース繊維は、セルロース繊維上に第2無機粒子を成長させることによってセルロース繊維をフィブリル化したものである。すなわち、本発明において、前記ナノフィブリルおよび第2無機粒子を含む前記第2マイクロセルロース繊維は、マイクロセルロース繊維上の前記第2無機粒子の成長により前記第2マイクロセルロース繊維を形成するフィブリルの一部が解れるか解繊された状態の繊維であり得る。
【0040】
図1の(a)は、フィブリル化されていないマイクロセルロース繊維、および(b)は、ナノフィブリルおよび無機粒子を含むマイクロセルロース繊維を拡大して模式的に示す図である。
【0041】
図1の(a)中、フィブリル化されていないマイクロセルロース繊維100は、マイクロメートルスケールの直径を有する繊維である。図1の(b)を参照すると、セルロース繊維上に無機粒子を成長させると、マイクロセルロース繊維100’を形成するフィブリルの一部が前記無機粒子20の成長により解れてマイクロセルロース繊維100’上にナノフィブリル11が毛羽立った状態の繊維が形成される。また、前記無機粒子20の成長によるフィブリル化により前記マイクロセルロース繊維100’の内部にも前記ナノフィブリル11が存在し得る。
【0042】
一例として、前記第2マイクロセルロース繊維は、ナノフィブリルおよび第2無機粒子を含む。ここで、前記ナノフィブリルは、前記第2マイクロセルロース繊維の表面に結合するか、その内部に存在し得る。そして、前記第2無機粒子は、前記ナノフィブリルと結合するかまたは前記第2マイクロセルロース繊維の表面または内部に結合している。
【0043】
前記ナノフィブリルおよび第2無機粒子を含む前記第2マイクロセルロース繊維で、前記第2マイクロセルロース繊維は1μm以上;および30μm以下、あるいは25μm以下、あるいは20μm以下、あるいは15μm以下、あるいは10μm以下の直径を有するものであり得る。具体的には、前記第2マイクロセルロース繊維は1μm~30μm、あるいは1μm~25μm、あるいは1μm~20μm、あるいは1μm~15μm、あるいは1μm~10μmの直径を有するものであり得る。
【0044】
そして、前記ナノフィブリルおよび第2無機粒子を含む前記第2マイクロセルロース繊維で、前記ナノフィブリルは10nm以上、あるいは20nm以上、あるいは30nm以上、あるいは40nm以上、あるいは50nm以上;および400nm以下、あるいは350nm以下、あるいは300nm以下、あるいは250nm以下、あるいは200nm以下、あるいは150nm以下、あるいは100nm以下の直径を有するものであり得る。具体的には、前記ナノフィブリルは10nm~400nm、あるいは10nm~350nm、あるいは10nm~300nm、あるいは20nm~300nm、あるいは20nm~250nm、あるいは30nm~250nm、あるいは30nm~200nm、あるいは40nm~200nm、あるいは40nm~150nm、あるいは50nm~150nm、あるいは50nm~100nmの直径を有するものであり得る。
【0045】
前記第2マイクロセルロース繊維および前記ナノフィブリルの長さは特に制限されない。
【0046】
前記ナノフィブリルおよび第2無機粒子を含む前記第2マイクロセルロース繊維は、マイクロセルロース繊維、第2無機粒子前駆体および溶媒を含む混合物に還元剤、触媒、リガンド、またはこれらの混合物を添加して、セルロース繊維上に分布した第2無機粒子前駆体から第2無機粒子を成長させる工程により製造することができる。
【0047】
一例として、前記工程ではマイクロセルロース繊維、第2無機粒子前駆体および溶媒を含む混合物を準備する。
【0048】
前記溶媒としては、前記第2無機粒子前駆体を溶解させることができ、マイクロセルロース繊維を膨潤させることができる化合物を使用することができる。一例として、前記溶媒としては、水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどの低級アルコール)、ジメチルスルホキシド、水酸化ナトリウム水溶液、アンモニア水溶液、尿素水溶液、またはこれらの混合物を使用することができる。
【0049】
前記溶媒は、マイクロセルロース繊維100重量部に対して1000~10000重量部で使用することができる。前記溶媒の含有量の範囲内でマイクロセルロース繊維が十分に膨潤され、前記第2無機粒子前駆体の流動性が確保され、前記第2無機粒子前駆体が前記マイクロセルロース繊維上に均一に分散することができる。
【0050】
前記マイクロセルロース繊維上に成長する第2無機粒子の種類によって多様な物性を有する高分子複合体を提供することができる。すなわち、前記第2無機粒子前駆体は、高分子複合体に付与しようとする物性に応じて適宜選択することができる。非制限的な例として、高分子複合体に抗菌性および耐熱性を付与する目的であれば酸化亜鉛を成長させ得る第2無機粒子前駆体を選択することができる。
【0051】
一例として、前記第2無機粒子としては銅、亜鉛、カルシウム、アルミニウム、鉄、白金、パラジウム、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、オスミウム、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデンおよびガリウムからなる群より選択される1種以上の元素を含み得る。前記無機粒子の成分は1種または2種以上であり得る。例えば、前記第2無機粒子は上述した金属粒子であるか、これらの酸化物、窒化物または硫化物であり得る。
【0052】
前記第2無機粒子前駆体としては銅、亜鉛、カルシウム、アルミニウム、鉄、白金、パラジウム、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、オスミウム、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデンおよびガリウムからなる群より選択される1種以上の元素の塩を使用することができる。前記塩は酢酸塩、塩化塩、硝酸塩などであり得る。また、前記第2無機粒子前駆体としてはテトラエチルオルトシリケート(TEOS)などの酸化シリコン前駆体を使用することができる。
【0053】
前記第2無機粒子の含有量は、前記第2マイクロセルロース繊維100重量部に対して10~40重量部であり得る。具体的には、前記第2無機粒子の含有量は、前記第2マイクロセルロース繊維100重量部に対して10重量部以上、あるいは15重量部以上;および40重量部以下、あるいは35重量部以下、あるいは30重量部以下であり得る。好ましくは、前記第2無機粒子の含有量は、前記マイクロセルロース繊維100重量部に対して10~40重量部、あるいは10~35重量部、あるいは15~35重量部、あるいは15~30重量部であり得る。そのため、前記混合物に含まれる前記第2無機粒子前駆体の含有量は、前記第2マイクロセルロース繊維上に最終的に生成される第2無機粒子の含有量が前記範囲を満たすように制御することができる。このような含有量の範囲内でマイクロセルロース繊維に第2無機粒子前駆体が均一に分布して十分なフィブリル化を誘導することができ、向上した機械的物性の発現を可能にする。
【0054】
前記混合物は、前記溶媒に前記第2無機粒子前駆体を溶解させた後、マイクロセルロース繊維を添加して準備する。前記混合物を攪拌してマイクロセルロース繊維を膨潤させると同時に膨潤されたマイクロセルロース繊維上に前記第2無機粒子前駆体が均一に分布するようにする。前記第2無機粒子前駆体は、水素結合またはイオン結合により前記マイクロセルロース繊維上に付着する。
【0055】
前記混合物に添加される還元剤、触媒およびリガンドの種類および含有量は添加された第2無機粒子前駆体および成長させようとする第2無機粒子の種類および含有量に応じて適宜選択することができる。一例として、前記還元剤としては、水酸化ナトリウム(NaOH)、金属ハイドライド系、ボロヒドリド系、ボラン系、シラン系、ヒドラジン、またはヒドラジド系の還元剤を使用することができる。前記触媒としては、アンモニアまたは尿素などを使用することができる。前記リガンドとしては、ベンゼン-1,3,5-トリカルボキシレートを使用することができる。
【0056】
図2および図3は、本発明の一製造例による前記第2無機粒子の成長によりフィブリル化されたマイクロセルロース繊維に対する走査型電子顕微鏡(SEM)イメージである。
【0057】
図2の(a)のイメージを参照すると、マイクロセルロース繊維上に第2無機粒子が成長してフィブリル化が起こったことを確認することができる。図2の(b)のイメージは、前記(a)のイメージの一部をさらに拡大して観察したものである。
【0058】
図3を参照すると、前記マイクロセルロース繊維上には前記第2無機粒子の成長による(a)金属元素(亜鉛)、および(b)酸素が均一に分布していることを確認することができる。
【0059】
前記工程により前記ナノフィブリルおよび第2無機粒子を含む前記第2マイクロセルロース繊維が得られる。
【0060】
本発明の実施形態によれば、前記マイクロセルロース繊維に含まれた前記第2無機粒子は0.01μm以上、あるいは0.03μm以上、あるいは0.05μm以上;および10μm以下、あるいは7μm以下、あるいは5μm以下である直径を有することができる。好ましくは、前記第2無機粒子は0.01μm~10μm、あるいは0.03μm~7μm、あるいは0.05μm~5μmである直径を有することができる。
【0061】
前記第2マイクロセルロース繊維上に含まれた前記第2無機粒子の粒径が過度に大きい場合、前記第2無機粒子が欠陥(defect)として作用して高分子複合体の機械的物性が低下し得る。したがって、前記第2無機粒子の粒径は10μm以下、あるいは7μm以下、あるいは5μm以下であることが好ましい。
【0062】
そして、前記第2無機粒子の成長によるマイクロセルロース繊維のフィブリル化効果が発現し、かつ機械的物性の向上のために、前記第2無機粒子の粒径は0.01μm以上、あるいは0.03μm以上、あるいは0.05μm以上であることが好ましい。
【0063】
前記第2無機粒子は0.01μm~10μmである直径を有する球形粒子であり得る。また、前記第2無機粒子は0.01μm~10μmである一軸直径と0.02μm~30μmである他の一軸直径を有する柱状粒子であり得る。前記第2無機粒子の直径は、走査型電子顕微鏡を用いて測定することができる。非制限的な例として、走査型電子顕微鏡を用いて20個の第2無機粒子に対する直径、短軸径、または長軸径をそれぞれ測定した後、その最大値および最小値を除いて計算した平均値を得ることができる。
【0064】
本発明の実施形態によれば、前記第2無機粒子は、前記第2マイクロセルロース繊維100重量部に対して10重量部以上、あるいは15重量部以上;および40重量部以下、あるいは35重量部以下、あるいは30重量部以下で含まれ得る。好ましくは、前記第2無機粒子は、前記第2マイクロセルロース繊維100重量部に対して10~40重量部、あるいは10~35重量部、あるいは15~35重量部、あるいは15~30重量部で含まれ得る。
【0065】
前記第2無機粒子の成長によるマイクロセルロース繊維のフィブリル化効果および機械的物性が十分に発現できるようにするために、前記第2無機粒子は、前記第2マイクロセルロース繊維100重量部に対して10重量部以上、あるいは15重量部以上で含まれることが好ましい。
【0066】
ただし、前記第2無機粒子が前記第2マイクロセルロース繊維に過剰に含まれる場合、前記高分子マトリックスとの相溶性が低下し、これによって高分子複合体の機械的物性が劣化し得る。したがって、前記第2無機粒子は、前記第2マイクロセルロース繊維100重量部に対して40重量部以下、あるいは35重量部以下、あるいは30重量部以下で含まれることが好ましい。
【0067】
優れた機械的物性の確保のために、前記第1無機粒子および前記第2無機粒子の合計は、前記高分子複合体100重量部に対して1重量部以上であることが好ましい。ただし、過剰の無機粒子は前記高分子マトリックスとの相溶性を阻害し、これによって高分子複合体の機械的物性が低下し得る。したがって、前記第1無機粒子および前記第2無機粒子の合計は、前記高分子複合体100重量部に対して30重量部以下であることが好ましい。
【0068】
例えば、前記第1無機粒子および前記第2無機粒子の合計は、前記高分子複合体100重量部に対して1重量部以上、2.5重量部以上、あるいは5重量部以上;および30重量部以下、あるいは25重量部以下、あるいは20重量部以下、あるいは15重量部以下で含まれることが好ましい。具体的には、前記第1無機粒子および前記第2無機粒子の合計は前記高分子複合体100重量部に対して1~30重量部、あるいは2.5~30重量部、あるいは2.5~25重量部、あるいは5~25重量部、あるいは5~20重量部、あるいは5~15重量部で含まれる。
【0069】
本発明の実施形態によれば、前記第1マイクロセルロース繊維と、前記ナノフィブリルおよび第2無機粒子を含む前記第2マイクロセルロース繊維とは1:0.1~1:3の重量比で前記高分子複合体に含まれ得る。
【0070】
すなわち、高分子複合体の製造コストを下げ、かつ機械的物性の改善のために、前記第2マイクロセルロース繊維は前記第1マイクロセルロース繊維を基準として0.1倍以上、あるいは0.2倍以上の重量比で前記高分子複合体に含まれることが好ましい。
【0071】
ただし、前記第1マイクロセルロース繊維に比べて前記第2マイクロセルロース繊維の含有量が過度に高くなる場合、前記高分子複合体に含まれる無機粒子の総量が相対的に増加し、これによって高分子複合体の機械的物性が低下し得る。したがって、前記第2マイクロセルロース繊維は前記第1マイクロセルロース繊維を基準として3倍以下、あるいは2.5倍以下、あるいは2倍以下、あるいは1.5倍以下、あるいは1.2倍以下、あるいは1倍以下の重量比で前記高分子複合体に含まれることが好ましい。
【0072】
好ましくは、前記第1マイクロセルロース繊維と前記第2マイクロセルロース繊維とは、1:0.1~1:3、あるいは1:0.1~1:2.5、あるいは1:0.1~1:2、あるいは1:0.1~1:1.5、あるいは1:0.2~1:1.5、あるいは1:0.2~1:1.2、あるいは1:0.2~1:1の重量比で前記高分子複合体に含まれる。
【0073】
本発明の一実施形態によれば、前記高分子複合体は、
前記高分子マトリックス30~80重量%、
前記第1無機粒子0.1~20重量%、
前記第1マイクロセルロース繊維5~40重量%;および
前記ナノフィブリルおよび第2無機粒子を含む前記第2マイクロセルロース繊維1~30重量%を含み得る。
【0074】
本発明の他の一実施形態によれば、前記高分子複合体は、
前記高分子マトリックス35~75重量%、
前記第1無機粒子1~15重量%、
前記第1マイクロセルロース繊維10~35重量%;および
前記ナノフィブリルおよび第2無機粒子を含む前記第2マイクロセルロース繊維2.5~25重量%を含み得る。
【0075】
本発明のさらに他の一実施形態によれば、前記高分子複合体は、
前記高分子マトリックス40~70重量%、
前記第1無機粒子2.5~15重量%、
前記第1マイクロセルロース繊維15~30重量%;および
前記ナノフィブリルおよび第2無機粒子を含む前記第2マイクロセルロース繊維5~20重量%を含み得る。
【0076】
適量のマトリックスを含む高分子複合体を提供できるようにするために、前記高分子マトリックスは前記高分子複合体に30重量%以上あるいは35重量%以上で含むことが好ましい。そして、本発明による向上した機械的物性の発現のために、前記高分子マトリックスは、前記高分子複合体に80重量%以下、あるいは75重量%以下で含まれることが好ましい。具体的には、前記高分子マトリックスは前記高分子複合体に30~80重量%、あるいは30~75重量%、あるいは35~75重量%、あるいは40~70重量%で含まれる。
【0077】
本発明による向上した機械的物性と改善された色相の発現のために、前記第1無機粒子は前記高分子複合体に0.1重量%以上、あるいは1重量%以上、あるいは2.5重量%以上で含まれることが好ましい。ただし、過量の無機粒子は前記高分子マトリックスとの相溶性を阻害し、これによって高分子複合体の機械的物性が低下し得る。したがって、前記第1無機粒子は前記高分子複合体に20重量%以下、あるいは17.5重量%以下、あるいは15重量%以下で含まれることが好ましい。具体的には、前記第1無機粒子は前記高分子複合体に0.1~20重量%、あるいは0.1~17.5重量%、あるいは1~17.5重量%、あるいは1~15重量%、あるいは2.5~15重量%で含まれ得る。
【0078】
本発明による向上した機械的物性の発現のために、前記第1マイクロセルロース繊維は、前記高分子複合体に5重量%以上、あるいは10重量%以上、あるいは15重量%以上で含まれることが好ましい。ただし、過量の補強材は前記高分子マトリックスとの相溶性を阻害し、これによって高分子複合体の機械的物性が低下し得る。したがって、前記第1マイクロセルロース繊維は、前記高分子複合体に40重量%以下、あるいは35重量%以下、あるいは30重量%以下で含まれることが好ましい。具体的には、前記第1マイクロセルロース繊維は前記高分子複合体に5~40重量%、あるいは5~35重量%、あるいは10~35重量%、あるいは10~30重量%、あるいは15~30重量%で含まれ得る。
【0079】
そして、本発明による向上した機械的物性と改善された色相の発現のために、前記ナノフィブリルおよび第2無機粒子を含む前記第2マイクロセルロース繊維は前記高分子複合体に1重量%以上、あるいは2.5重量%以上、あるいは5重量%以上で含まれることが好ましい。ただし、過剰の補強材は前記高分子マトリックスとの相溶性を阻害し、これによって高分子複合体の機械的物性が低下し得る。したがって、前記ナノフィブリルおよび第2無機粒子を含む前記第2マイクロセルロース繊維は前記高分子複合体に30重量%以下、あるいは25重量%以下、あるいは20重量%以下で含まれることが好ましい。具体的には、前記第2マイクロセルロース繊維は前記高分子複合体に1~30重量%、あるいは1~25重量%、あるいは2.5~25重量%、あるいは2.5~20重量%、あるいは5~20重量%で含まれる。
【0080】
一方、前記高分子複合体は、前記高分子マトリックス上に分散した相溶化剤をさらに含むことができる。前記相溶化剤は、前記高分子マトリックスと前記第1マイクロセルロース繊維および前記第2マイクロセルロース繊維が互いによく配合されるように助ける成分である。
【0081】
前記相溶化剤としては、前記高分子マトリックスの具体的な種類を考慮して、本発明の属する技術分野で知られているものを使用することができる。
【0082】
好ましくは、前記相溶化剤は変性ポリオレフィンであり得る。前記変性ポリオレフィンは、不飽和カルボン酸またはその誘導体としてポリオレフィンを変性した樹脂を意味する。
【0083】
前記変性ポリオレフィンを形成する前記ポリオレフィンは、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、およびヘプテンなどの鎖状オレフィン;シクロペンテン、シクロヘキセン、および1,3-シクロペンタジエンなどの環状オレフィン;スチレンなどの芳香族環で置換されたオレフィンであり得る。
【0084】
前記変性ポリオレフィンを形成する前記不飽和カルボン酸は、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、アコニット酸、およびこれらの無水物であり得る。
【0085】
非制限的な例として、前記変性ポリオレフィンはマレイン酸無水物で0.1~10重量%がグラフトされたポリプロピレンまたはポリエチレンであり得る。
【0086】
このような変性ポリオレフィンは、セルロース繊維の高分子マトリックスに対する相溶性をより一層向上させて高分子複合体の機械的物性をさらに向上させることができる。
【0087】
適切な相溶性が発現できるようにするために、前記相溶化剤は、前記高分子複合体に0.1重量%以上、あるいは1重量%以上、あるいは5重量%以上で含まれる。ただし、過剰の相溶化剤は、前記高分子複合体の機械的物性を劣化させ得る。したがって、前記相溶化剤は、前記高分子複合体に15重量%以下、あるいは10重量%以下で含まれることが好ましい。具体的には、前記相溶化剤は、前記高分子複合体に0.1~15重量%、あるいは1~15重量%、あるいは1~10重量%、あるいは5~10重量%で含まれる。
【0088】
本発明の実施形態によれば、前記高分子複合体は、上述した成分をミキサーで混合した後に硬化して得られる。また、前記第1無機粒子、前記第1マイクロセルロース繊維、および前記ナノフィブリルおよび第2無機粒子を含む前記第2マイクロセルロース繊維を混合した補強材混合物を準備し、前記補強材混合物を前記高分子マトリックスと混合する方法で前記高分子複合体を準備する。非制限的な例として、上述した成分を100~180℃のバッチミキサで混合した後、ペレット形態のマスターバッチを製造し、前記マスターバッチを押出機に投入して押出および射出することによって前記高分子複合体が得られる。
【0089】
本発明の実施形態によれば、前記高分子複合体は上述した成分を含むことで、環境に優しくかつ向上した機械的物性を示すことができる。
【0090】
一例として、前記高分子複合体は、前記高分子複合体からなるASTM D638-5規格のドッグボーン(dog-bone)形態の試験片(またはダンベル形態の試験片(dumbbell-shaped specimen))に対してASTM D638-5の標準試験法に従って測定された、25MPa以上あるいは50MPa以上の引張強度を有することができる。好ましくは、前記高分子複合体は、25MPa~70MPa、あるいは30MPa~70MPa、あるいは30MPa~65MPa、あるいは40MPa~65MPa、あるいは50MPa~65MPaの前記引張強度を示すことができる。
【0091】
ASTM D638はプラスチックの引張特性を決めるための標準試験法を提供する。前記高分子複合体に対する引張特性はASTM D638の試験片タイプ5により行われる。ASTM D638は前記試験片に引張力を加え、応力下で試験片の引張特性を測定することで行われる。これは通常の引張試験機で前記試験片が破損(降伏または破断)するまで1~500mm/minの範囲の一定の引張速度で行われる。前記引張強度は、前記試験片が降伏または破断するまで加わる力の量である。
【0092】
さらに他の一例として、前記高分子複合体は、前記高分子複合体からなる大きさ80mm×10mm×4mmの試験片に対してISO 178の標準試験法に従って測定された、60MPa以上の曲げ強度を有することができる。好ましくは、前記高分子複合体は60MPa~95MPa、あるいは60MPa~90MPa、あるいは62.5MPa~90MPa、あるいは62.5MPa~89MPaの前記曲げ強度を示すことができる。
【0093】
また、前記高分子複合体は、前記高分子複合体からなる大きさ80mm×10mm×4mmの試験片に対してISO 178の標準試験法に従って測定された、2.0GPa以上の曲げ弾性率を有することができる。好ましくは、前記高分子複合体は2.0GPa~4.0GPa、あるいは2.0GPa~3.8GPa、あるいは2.5GPa~3.8GPa、あるいは2.5GPa~3.5GPaの前記曲げ弾性率を示すことができる。
【0094】
ISO 178は三点曲げ試験を行ってプラスチックに対する曲げ特性を決める標準試験法を提供する。三点曲げ試験は両端から自由に支持する長方形試験片の中間点(midpoint)に力を加える。この時、加えられた力はロードセル(load cell)により測定され、それによるたわみ(resulting deflection)はクロスヘッド変位(crosshead displacement)または直接ストレイン測定装置(direct strain measurement device)により測定される。これは通常の曲げ試験機で前記試験片に1~500mm/minの範囲の一定の速度で力を加えて行われる。前記曲げ強度(flexural strength)は曲げ試験中に得られた最大曲げ応力(maximum flexural stress)である。前記曲げ応力は適用された荷重、スパン(span)、試験片の幅、および試験片の厚さの関数として、曲げ試験機により測定される。
【0095】
さらに他の一例として、前記高分子複合体は、ASTM D256規格のノッチ付き63.5mm×12.7mm×3.2mmの試験片に対してASTM D256の標準試験法(23℃、hammer head 3.00J)に従って測定された、20J/m以上のアイゾット衝撃強度を有することができる。具体的には、前記高分子複合体は、20J/m以上、あるいは24J/m以上、あるいは25J/m以上;および50J/m以下、あるいは45J/m以下、あるいは40J/m以下、あるいは35J/m以下の前記アイゾット衝撃強度を有することができる。好ましくは、前記高分子複合体は20J/m~50J/m、あるいは20J/m~45J/m、あるいは24J/m~45J/m、あるいは25J/m~45J/m、あるいは25J/m~40J/m、あるいは25J/m~35J/mの前記アイゾット衝撃強度を示すことができる。
【0096】
さらに他の一例として、前記高分子複合体は25MPa~70MPaである前記引張強度、60MPa~95MPaである前記曲げ強度、および20J/m~50J/mである前記アイゾット衝撃強度を有することができる。
【0097】
さらに他の一例として、前記高分子複合体は30MPa~65MPaである前記引張強度、60MPa~90MPaである前記曲げ強度、および24J/m~45J/mである前記アイゾット衝撃強度を有することができる。
【0098】
さらに他の一例として、前記高分子複合体は50MPa~65MPaである前記引張強度、62.5MPa~89MPaである前記曲げ強度、および20J/m~35J/mである前記アイゾット衝撃強度を有することができる。
【0099】
さらに他の一例として、前記高分子複合体は50MPa~65MPaである前記引張強度、65MPa~89MPaである前記曲げ強度、および25J/m~35J/mである前記アイゾット衝撃強度を有することができる。
【0100】
一方、本発明の他の一実施形態によれば、高分子複合体を含む成形品が提供される。
【0101】
前記成形品は、前記高分子複合体を含むことで、環境に優しくかつ優れた機械的物性を示すことができる。
【0102】
前記成形品は、前記高分子複合体を原料として使用して通常の加工方法で製造することもできる。例えば、前記成形品は、前記高分子複合体を含む原料組成物を使用して射出成形、押出成形、カレンダー成形などにより得られる。
【0103】
一例として、前記高分子複合体を含む成形品は、射出成形により製造することができる。可塑化段階と流動段階により溶融した前記高分子複合体をプランジャー(plunger)により金型のキャビティ(cavity)に満たし、それを固める冷却段階を経る。前記金型には圧力センサ、温度センサ、ホットランナシステム(hot runner system)などが備えられる。溶融した材料を固めるための冷却ラインが別に存在し得る。プランジャーが後退し、エジェクタピンを用いて固まった成形品が金型から分離される。
【0104】
好ましくは、前記成形品は、自動車用内装材または自動車用外装材などの自動車用軽量素材であり得る。例えば、前記成形品は、ダッシュボード(dashboard)、ドアトリム(door trim)、バッテリートレイ(battery tray)、バンパー(bumper)、ラッゲージトリム(luggage trim)、ドアオープニングトリム(door opening trim)、ヘッドライナー(headliner)、リアシェルフ(rear shelf)、トノカバー(tonneau cover)、サンバイザー(sun visor)、アシストグリップ(assist grip)、コンソールボックス(console box)、フェンダーパネル(fender panel)、オイルパン(oil pan)、ホイールハウス(wheel house)、サイドスカート(side skirt)、ガーニッシュ(garnish)、電装部品(electric parts)、エンジンカバー(engine cover)、シートベルトカバー(seat belt cover)、スイッチボタン(switch button)、およびセンターフェイシア(center facia)からなる群より選択される1種以上の自動車用内外装材であり得る。
【0105】
また、前記成形品は、家電製品の内外装材、包装材など多様な分野に適用することができる。
【発明の効果】
【0106】
本発明による高分子複合体は、補強材としてセルロース繊維を含み、環境に優しくかつ優れた機械的物性を示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
図1】(a)フィブリル化されていないマイクロセルロース繊維、および(b)ナノフィブリルおよび第2無機粒子を含むマイクロセルロース繊維を拡大して模式的に示す図である。
図2】製造例2による、第2無機粒子の成長によりフィブリル化されたセルロース繊維に対する走査型電子顕微鏡(SEM)イメージである。
図3】製造例2による、第2無機粒子の成長によりフィブリル化されたセルロース繊維に対する走査型電子顕微鏡(SEM)イメージである。
図4】(a)製造例3によるフィブリル化されたマイクロセルロース繊維と、(b)製造例4による粒子と複合化された微細化セルロース繊維のSEMイメージを比較して示す図である。
図5図4による(a)と(b)をさらに高倍率で撮影したSEMイメージである。
図6】ASTM D638のタイプ5(Type V)による引張強度測定用dog-bone形態の試験片(またはdumbbell-shaped specimen)の規格を示す図である(単位:mm)。
【発明を実施するための形態】
【0108】
以下、本発明の具体的な実施例により発明の作用、効果についてより具体的に説明する。ただし、これは発明の理解を助けるための例示として提示されたものであり、発明の権利範囲はこれによっていかなる意味でも限定されない。
【実施例
【0109】
製造例1
(第1マイクロセルロース繊維の準備)
セルロース原料として広葉樹クラフトパルプ(セルロース繊維)を準備した。蒸留水1000gに前記パルプ20gを投入し、湿式状態でミキサーで3回粉砕した後に減圧濾過して第1マイクロセルロース繊維(15μm~30μmである直径および0.2mm~2mmの長さ)を準備した。
【0110】
製造例2
(ナノフィブリルおよび第2無機粒子を含む第2マイクロセルロース繊維の製造)
セルロース原料として広葉樹クラフトパルプ(セルロース繊維)を準備した。蒸留水1000gに酢酸亜鉛20gを溶解した水溶液を準備した。前記水溶液に前記パルプ20gを添加し、500rpmで2時間攪拌して混合物を得た。
【0111】
前記混合物に還元剤として水酸化ナトリウム(NaOH)7.2gを常温で添加し、500rpmで2時間攪拌してパルプ上に第2無機粒子(ZnO)を成長させた。前記第2無機粒子の含有量は、前記パルプ100重量部に対して27重量部であることが確認された。
【0112】
走査型電子顕微鏡(SEM)により確認した結果、図2の(a)のように第2無機粒子(ZnO)が成長したパルプ部分はフィブリル化が起こったことを確認することができた。SEMイメージを分析した結果、前記第2無機粒子は約0.1μm~1μmの粒径を有することが確認された。
【0113】
前記方法でナノフィブリルおよび第2無機粒子を含むマイクロセルロース繊維を得た。
【0114】
製造例3
(ナノフィブリルおよび第2無機粒子を含む第2マイクロセルロース繊維の製造)
セルロース原料として針葉樹クラフトパルプ繊維(セルロース繊維)を準備した。蒸留水1000gに酢酸亜鉛20gを溶解した水溶液に前記パルプ繊維20gを添加し、500rpmで2時間攪拌して混合物を準備した。前記混合物で、膨潤されたパルプ繊維上には酢酸亜鉛が水素結合やイオン結合により付着した。
【0115】
前記混合物に水酸化ナトリウム(NaOH)3.6gを常温で添加し、500rpmで2時間攪拌してパルプ繊維上に第2無機粒子(ZnO)を成長させた。前記第2無機粒子の含有量は、前記パルプ100重量部に対して15重量部であることが確認された。
【0116】
走査型電子顕微鏡により確認した結果、図4の(a)および図5の(a)のように、粒子(ZnO)が成長したパルプ繊維部分はフィブリル化が起こったことを確認することができた。
【0117】
前記方法でナノフィブリルおよび第2無機粒子を含むマイクロセルロース繊維を得た。
【0118】
製造例4
(微細化セルロース繊維の製造)
セルロース原料として前記実施例1と同じ針葉樹クラフトパルプ繊維を準備した。2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル-1-オキシラジカル(TEMPO)を触媒として用いて前記パルプ繊維の表面を酸化して、酸化パルプを得た。
【0119】
前記酸化パルプ1gを99gの蒸留水に分散させ、ミキサーで30分間微細化(解繊)処理して濃度1%の微細化セルロース水分散液を得た。
【0120】
蒸留水1000gに酢酸亜鉛20gを溶解した酢酸亜鉛水溶液を準備した。水酸化ナトリウム(NaOH)3.6gを蒸留水10mlに溶解して水酸化ナトリウム水溶液を準備した。
【0121】
前記微細化セルロース水分散液100gを15℃下で攪拌しながら前記酢酸亜鉛水溶液50mlおよび前記水酸化ナトリウム水溶液10mlを添加し、500rpmで2時間攪拌して酸化亜鉛(ZnO)粒子と微細化セルロースの複合体を製造した。
【0122】
走査型電子顕微鏡を用いて確認した結果、図4の(b)および図5の(b)のように、製造例4による酸化亜鉛粒子と微細化セルロースの前記複合体は微細化セルロースの間の結合力と凝集が強いためナノ繊維が固まっており、粒子の分散度が劣ることを確認することができた。
【0123】
実施例1
バッチミキサ(Batch mixer)に前記製造例1による第1マイクロセルロース繊維20重量%、前記製造例2によるナノフィブリルおよび第2無機粒子を含む第2マイクロセルロース繊維10重量%、ポリプロピレン55重量%、第1無機粒子(酸化チタン、平均粒径350nm)5重量%、および相溶化剤10重量%を投入し、180℃で20分間混合してペレット形態にマスターバッチを製造した。前記相溶化剤としてはマレイン酸無水物でグラフトされたポリプロピレン(maleic anhydride-grafted polypropylene)が使用された。
【0124】
前記マスターバッチをツインスクリュー押出機に投入してコンパウンディング工程を行って押出した。前記押出により得られた混合物を再び射出機に投入した後に射出して高分子複合体の試験片と成形品(自動車用ラッゲージトリム)を得た。
【0125】
実施例2
バッチミキサ(Batch mixer)に前記製造例1による第1マイクロセルロース繊維15重量%、前記製造例2によるナノフィブリルおよび第2無機粒子を含む前記第2マイクロセルロース繊維15重量%、ポリプロピレン55重量%、第1無機粒子(酸化チタン、平均粒径350nm)5重量%、および相溶化剤10重量%を投入したことを除いて、前記実施例1と同様の方法で高分子複合体の試験片と成形品を得た。
【0126】
実施例3
前記製造例2によるナノフィブリルおよび第2無機粒子を含む前記第2マイクロセルロース繊維の代わりに前記製造例3によるナノフィブリルおよび第2無機粒子を含む前記第2マイクロセルロース繊維を使用したことを除いて、前記実施例1と同様の方法で高分子複合体の試験片と成形品を得た。
【0127】
実施例4
バッチミキサ(Batch mixer)に前記製造例1による第1マイクロセルロース繊維25重量%、前記製造例2によるナノフィブリルおよび第2無機粒子を含む前記第2マイクロセルロース繊維5重量%、ポリプロピレン55重量%、第1無機粒子(酸化チタン、平均粒径350nm)5重量%、および相溶化剤10重量%を投入し、180℃で20分間混合してペレット形態にマスターバッチを製造した。前記相溶化剤としてはマレイン酸無水物でグラフトされたポリプロピレン(maleic anhydride-grafted polypropylene)が使用された。
【0128】
前記マスターバッチをツインスクリュー押出機に投入してコンパウンディング工程を行って押出した。前記押出により得られた混合物を再び射出機に投入した後射出して高分子複合体の試験片と成形品(自動車用ラッゲージトリム)を得た。
【0129】
実施例5
バッチミキサ(Batch mixer)に前記製造例1による第1マイクロセルロース繊維20重量%、前記製造例2によるナノフィブリルおよび第2無機粒子を含む前記第2マイクロセルロース繊維10重量%、ポリプロピレン57.5重量%、第1無機粒子(酸化チタン、平均粒径350nm)2.5重量%、および相溶化剤10重量%を投入したことを除いて、前記実施例1と同様の方法で高分子複合体の試験片と成形品を得た。
【0130】
実施例6
バッチミキサ(Batch mixer)に前記製造例1による第1マイクロセルロース繊維20重量%、前記製造例2によるナノフィブリルおよび第2無機粒子を含む前記第2マイクロセルロース繊維10重量%、ポリプロピレン52.5重量%、第1無機粒子(酸化チタン、平均粒径350nm)7.5重量%、および相溶化剤10重量%を投入したことを除いて、前記実施例1と同様の方法で高分子複合体の試験片と成形品を得た。
【0131】
実施例7
バッチミキサ(Batch mixer)に前記製造例1による第1マイクロセルロース繊維20重量%、前記製造例2によるナノフィブリルおよび第2無機粒子を含む前記第2マイクロセルロース繊維10重量%、ポリプロピレン50重量%、第1無機粒子(酸化チタン、平均粒径350nm)10重量%、および相溶化剤10重量%を投入したことを除いて、前記実施例1と同様の方法で高分子複合体の試験片と成形品を得た。
【0132】
実施例8
バッチミキサ(Batch mixer)に前記製造例1による第1マイクロセルロース繊維30重量%、前記製造例2によるナノフィブリルおよび第2無機粒子を含む前記第2マイクロセルロース繊維15重量%、ポリプロピレン40重量%、第1無機粒子(酸化チタン、平均粒径350nm)5重量%、および相溶化剤10重量%を投入したことを除いて、前記実施例1と同様の方法で高分子複合体の試験片と成形品を得た。
【0133】
実施例9
バッチミキサ(Batch mixer)に前記製造例1による第1マイクロセルロース繊維15重量%、前記製造例2によるナノフィブリルおよび第2無機粒子を含む前記第2マイクロセルロース繊維20重量%、ポリプロピレン50重量%、第1無機粒子(酸化チタン、平均粒径350nm)10重量%、および相溶化剤5重量%を投入したことを除いて、前記実施例1と同様の方法で高分子複合体の試験片と成形品を得た。
【0134】
比較例1
バッチミキサ(Batch mixer)に前記製造例1による第1マイクロセルロース繊維20重量%、前記製造例2によるナノフィブリルおよび第2無機粒子を含む前記第2マイクロセルロース繊維10重量%、ポリプロピレン60重量%、および相溶化剤10重量%を投入したことを除いて、前記実施例1と同様の方法で高分子複合体の試験片と成形品を得た。
【0135】
比較例2
バッチミキサ(Batch mixer)に前記製造例1に使用された広葉樹クラフトパルプ(セルロース繊維)を水に浸して膨潤させたもの30重量%、ポリプロピレン60重量%および相溶化剤10重量%を投入したことを除いて、前記実施例1と同様の方法で高分子複合体の試験片と成形品を得た。
【0136】
比較例3
バッチミキサ(Batch mixer)に前記製造例2によるナノフィブリルおよび第2無機粒子を含む前記第2マイクロセルロース繊維30重量%、ポリプロピレン60重量%、および相溶化剤10重量%を投入したことを除いて、前記実施例1と同様の方法で高分子複合体の試験片と成形品を得た。
【0137】
比較例4
バッチミキサ(Batch mixer)に前記製造例4による微細化セルロース繊維30重量%、ポリプロピレン60重量%および相溶化剤10重量%を投入したことを除いて、前記実施例1と同様の方法で高分子複合体の試験片と成形品を得た。
【0138】
試験例
(1)繊維の直径
走査型電子顕微鏡を用いて製造例によるセルロース繊維の直径を測定した。
【0139】
具体的には、マイクロセルロース繊維の場合、各サンプル当たりマイクロ繊維10個の直径を測定して最大値および最小値を除いて範囲で表示し;ナノフィブリルの場合、各サンプル当たりナノフィブリル20個の直径を測定して最大値および最小値を除いて範囲で表示した。
【0140】
しかも、実施例とは異なり、製造例4はパルプ繊維を微細化(解繊)処理した後に粒子と複合化したもので、下記表1中、製造例4のナノフィブリルの直径は、粒子と複合化した後の微細化セルロースの直径を意味する。
【0141】
(2)引張試験
ASTM D638の試験片タイプ5(Type V)の規格による以下の試験片(図6)を準備した。前記試験片は23℃の温度および50%の相対湿度に調整された恒温恒湿室に24時間放置した後、引張試験に提供された。
【0142】
前記試験片に対してインストロン(Instron)社製の万能試験機(UTM)を用いてASTM D638の標準試験法に従って引張強度(MPa)、引張弾性率(GPa)および破断伸び率(%)を測定した。ASTM D638の標準試験法に基づいて前記試験片を両端で掴むグリップ(grip)の間隔は25.4mmに設定してクロスヘッド速度5mm/minの一定の引張速度下で行われた。
【0143】
(3)曲げ試験
ISO 178の標準試験法に従って80mm×10mm×4mm規格の試験片を準備した。前記試験片は23℃の温度および50%の相対湿度に調整された恒温恒湿室に24時間放置した後、曲げ試験に提供された。
【0144】
前記試験片に対してインストロン(Instron)社製の万能試験機(UTM)を用いてISO 178の標準試験法に従って曲げ強度(MPa)、曲げ弾性率(GPa)および曲げ破断変形(%)を測定した。ISO 178に基づいて、三点曲げ試験治具を用いて支持スパン(a supports span)を46mmに設定し、クロスヘッド速度5mm/minの試験条件で曲げ試験を行った。
【0145】
(4)衝撃強度
ASTM D256規格のノッチ付きサイズ63.5mm×12.7mm×3.2mmの試験片を準備した。前記試験片に対してDigital impact tester(QM(700A)、QMESYS製造)を用いてASTM D256の標準試験法(23℃、hammer head 3.00J)によりアイゾット衝撃強度を測定した。
【0146】
【表1】
【0147】
【表2】
【0148】
【表3】
【0149】
【表4】
【0150】
上記表2~4を参照すると、前記実施例による高分子複合体は、前記比較例による高分子複合体に比べて同等または向上した引張物性を有し、かつ優れた衝撃強度および曲げ特性を有することが確認された。
【0151】
製造例4で製造されたセルロース繊維は、微細化セルロース上に粒子が成長しているにも関わらず、比較例4で高分子マトリックスと複合化する場合、むしろ微細化セルロースと粒子の再凝集が過度に発生した。再凝集により劣った分散性を示した比較例4の試験片は全般的に劣った物性を示した。
【符号の説明】
【0152】
100、100’ マイクロセルロース繊維
11 ナノフィブリル
20 第2無機粒子
図1(a)】
図1(b)】
図2(a)】
図2(b)】
図3(a)】
図3(b)】
図4(a)】
図4(b)】
図5(a)】
図5(b)】
図6