(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】表面処理剤、及び、建築物外壁の塗布方法
(51)【国際特許分類】
C09D 183/04 20060101AFI20241111BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20241111BHJP
B05D 1/36 20060101ALI20241111BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20241111BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20241111BHJP
E04F 13/02 20060101ALI20241111BHJP
C09D 7/65 20180101ALN20241111BHJP
【FI】
C09D183/04
B05D7/00 L
B05D7/00 P
B05D1/36 Z
B05D7/24 302Y
B05D7/24 303A
C09D5/00 D
E04F13/02 J
C09D7/65
(21)【出願番号】P 2020025026
(22)【出願日】2020-02-18
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】506416400
【氏名又は名称】シーカ テクノロジー アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100166637
【氏名又は名称】木内 圭
(72)【発明者】
【氏名】高原 英之
(72)【発明者】
【氏名】神田 彩香
(72)【発明者】
【氏名】中松 隼人
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-108671(JP,A)
【文献】特開2019-156892(JP,A)
【文献】特開平05-005090(JP,A)
【文献】特開平10-226726(JP,A)
【文献】特開2002-120332(JP,A)
【文献】特開2006-182979(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-10/00
C09D 101/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シーリング材が充填された目地を有する建築物外壁を水系塗料で塗装する際に、前記シーリング材を予め表面処理するための表面処理剤であって、
前記表面処理剤は、有機溶剤と、可塑剤と、下記式(1)で表される単位を有する重合体とを含有し、
前記有機溶剤の含有量が前記表面処理剤100質量%に対して10~70質量%であり、
前記可塑剤の含有量が前記表面処理剤100質量%に対して5~20質量%であり、
前記重合体の含有量が前記表面処理剤100質量%に対して20~70質量%である、表面処理剤(ただし、ポリイソシアネート化合物
を含むものを除く)。
【化1】
式(1)中、R
1は、炭化水素基を表す。
【請求項2】
前記重合体が、下記式(2)で表される重合体である、請求項1に記載の表面処理剤。
【化2】
式(2)中、R
1は、炭化水素基を表す。R
2は、水素原子又は置換基を表す。mは、2以上の整数を表す。
【請求項3】
前記式(1)又は(2)中、R
1が、メチル基、エチル基又はブチル基である、請求項1又は2に記載の表面処理剤。
【請求項4】
シーリング材が充填された目地を有する建築物外壁を準備する準備工程と、
前記目地に充填されたシーリング材の表面に請求項1~3のいずれか1項に記載の表面処理剤を塗布する、表面処理工程と、
前記表面処理剤が塗布されたシーリング材を含む建築物外壁に水系塗料を塗布する、塗装工程とを備える、建築物外壁の塗装方法。
【請求項5】
前記表面処理工程において、前記表面処理剤を塗布する量が、0.1~0.5kg/m
2である、請求項4に記載の建築物外壁の塗布方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理剤、及び、建築物外壁の塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物外壁を塗装する場合、タイル等の建築材の表面とともに、目地に充填されたシーリング材の表面も塗装する場合がある。そのため、塗料(塗料層)の密着性は、建築材との間だけでなく、シーリング材との間も重要となる。このようななか、例えば、特許文献1には、特定のシーリング材を用いることでシーリング材に対する塗料の密着性を向上させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
昨今、環境や健康等の観点から、建築物外壁の塗料として水系塗料の使用が増えてきている。
このようななか、本発明者らが特許文献1等を参考に、シーリング材が充填された目地を有する建築物外壁を水系塗料で塗装したところ、シーリング材部分の塗料層の密着性(以下、単に「塗料密着性」とも言う)は必ずしも十分とは言えないことが明らかになった。
【0005】
そこで、本発明は、上記実情を鑑みて、シーリング材が充填された目地を有する建築物外壁を水系塗料で塗装する塗装方法であって、塗料密着性に優れる塗装方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、シーリング材の表面を特定の表面処理剤で表面処理することによって上記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明者らは、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
【0007】
(1) シーリング材が充填された目地を有する建築物外壁を水系塗料で塗装する際に、上記シーリング材を予め表面処理するための表面処理剤であって、
後述する式(1)で表される単位を有する重合体を含有する、表面処理剤。
(2) 上記重合体が、後述する式(2)で表される重合体である、上記(1)に記載の表面処理剤。
(3) 上記式(1)又は(2)中、R1が、メチル基、エチル基又はブチル基である、上記(1)又は(2)に記載の表面処理剤。
(4) さらに、有機溶剤及び可塑剤からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、上記(1)~(3)のいずれかに記載の表面処理剤。
(5) シーリング材が充填された目地を有する建築物外壁を準備する準備工程と、
上記目地に充填されたシーリング材の表面に上記(1)~(4)のいずれかに記載の表面処理剤を塗布する、表面処理工程と、
上記表面処理剤が塗布されたシーリング材を含む建築物外壁に水系塗料を塗布する、塗装工程とを備える、建築物外壁の塗装方法。
(6) 上記表面処理工程において、上記表面処理剤を塗布する量が、0.1~0.5kg/m2である、上記(5)に記載の建築物外壁の塗布方法。
【発明の効果】
【0008】
以下に示すように、本発明によれば、シーリング材が充填された目地を有する建築物外壁を水系塗料で塗装する塗装方法であって、塗料密着性に優れる塗装方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の塗布方法の好適な態様の一部の工程を示す模式的断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の塗布方法の好適な態様の一部の工程を示す模式的断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の塗布方法の好適な態様の一部の工程を示す模式的断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の塗布方法の好適な態様の一部の工程を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の建築物外壁の塗装方法、及び、本発明の表面処理剤について説明する。
なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
また、各成分は、1種を単独でも用いても、2種以上を併用してもよい。ここで、各成分について2種以上を併用する場合、その成分について含有量とは、特段の断りが無い限り、合計の含有量を指す。
【0011】
[1]塗布方法
本発明の建築物外壁の塗布方法(以下、単に「本発明の塗装方法」とも言う)は、下記(1)~(3)の工程を備える。なお、本発明の塗装方法は下記(1)~(3)の工程以外の工程を備えていてもよい。
【0012】
(1)準備工程
シーリング材が充填された目地を有する建築物外壁を準備する工程
(2)表面処理工程
上記目地に充填されたシーリング材の表面に後述する式(1)で表される単位を有する重合体(以下、「特定重合体」とも言う)を含有する表面処理剤(以下、「特定表面処理剤」とも言う)を塗布する工程
(3)塗布工程
上記表面処理剤が塗布されたシーリング材を含む建築物外壁に水系塗料を塗布する工程
【0013】
本発明の塗装方法はこのような構成をとるため、上述した効果が得られるものと考えられる。その理由は明らかではないが、およそ以下のとおりと推測される。
上述のとおり、本発明の塗装方法では、表面処理工程において、目地に充填されたシーリング材の表面に特定表面処理剤を塗布する。その後、塗装工程において、表面処理されたシーリング材に水系塗料を塗布する。ここで、シーリング材に表面に塗布された特定表面処理剤は特定重合体を含有し、また、後述のとおり、特定重合体はカルビルオキシシリル基を有するため、表面処理されたシーリング材に水系塗料が塗布されると、上記カルビルオキシシリル基は加水分解してシラノール基を生成する。生成されたシラノール基は水との親和性が高いため、表面処理されたシーリング材に水系塗料が十分に濡れ、結果として、優れた塗料密着性を示すものと推測される。
【0014】
[図面を用いた説明]
最初に図面を用いて、本発明の塗布方法について説明する。
【0015】
図1~4は、本発明の塗布方法の好適な態様を工程順に示す模式的断面図である。
【0016】
〔準備工程〕
図1は、建築物外壁10の模式的断面図である。建築物外壁10において、下地1の一方の面には、複数の建築材2(タイル等)が貼り付けられている。そして、隣り合う建築材2の間には目地3が存在する。
まず、
図1の目地3にシーリング材を充填する。このようにして、
図2に示されるように、シーリング材4が充填された目地を有する建築物外壁11を準備する。
【0017】
〔表面処理工程〕
次いで、目地に充填されたシーリング材4の表面aに後述する表面処理剤(特定表面処理剤)を塗布する。このようにして、
図3に示されるように、目地に充填されたシーリング材が、表面処理剤が塗布された(表面処理された)シーリング材5となる。
【0018】
〔塗装工程〕
そして、表面処理されたシーリング材5を含む建築物外壁12に水系塗料(下塗材、上塗材)を塗布する。このようにして、
図4に示されるように、建築物外壁に塗料層6が形成される。このようにして、水系塗料で塗装された建築物外壁13が得られる。
【0019】
以下、各工程について説明する。
【0020】
[準備工程]
準備工程は、シーリング材が充填された目地を有する建築物外壁を準備する工程である。
【0021】
〔シーリング材〕
上記シーリング材は特に制限されず従来公知のシーリング材を使用することができる。
シーリング材の具体例としては、シリコーン系シーリング材、変成シリコーン系シーリング材、ポリウレタン系シーリング材、ポリサルファイド系シーリング材等が挙げられ、なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、ポリウレタン系シーリング材(特に、2成分形)、ポリサルファイド系シーリング材(特に、2成分形)が好ましい。
【0022】
[表面処理工程]
表面処理工程は、上述した準備工程で準備された建築物外壁において、目地に充填されたシーリング材の表面に後述する式(1)で表される単位を有する重合体(特定重合体)を含有する表面処理剤(特定表面処理剤)を塗布する工程である。
【0023】
〔特定表面処理剤〕
表面処理工程で使用される特定表面処理剤は、下記式(1)で表される単位を有する重合体(特定重合体)を含有する。
【0024】
<特定重合体>
上述のとおり、特定重合体は、下記式(1)で表される単位を有する重合体である。
上記特定重合体は、本発明の効果がより優れる理由から、下記式(1)で表される単位を少なくとも2つ有する重合体であることが好ましく、下記式(1)で表される単位を少なくとも3つ有する重合体であることがより好ましい。下記式(1)で表される単位の数の上限は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、1,000以下であることが好ましく、500以下であることがより好ましく、100以下であることがさらに好ましい。
上記特定重合体は、本発明の効果がより優れる理由から、ポリシロキサンであることが好ましい。
【0025】
(式(1)で表される単位)
【0026】
【0027】
式(1)中、R1は、炭化水素基を表す。
上記炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、またはこれらを組み合わせた基などが挙げられる。
上記脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。上記脂肪族炭化水素基の具体例としては、直鎖状または分岐状のアルキル基(特に、炭素数1~30)、直鎖状または分岐状のアルケニル基(特に、炭素数2~30)、直鎖状または分岐状のアルキニル基(特に、炭素数2~30)などが挙げられる。
上記芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などの炭素数6~18の芳香族炭化水素基などが挙げられる。
上記炭化水素基は、本発明の効果がより優れる理由から、脂肪族炭化水素基(特に、炭素数1~5)であることが好ましく、直鎖状の脂肪族炭化水素基(特に、炭素数1~5)であることがより好ましく、メチル基、エチル基及びブチル基であることがさらに好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
複数存在するR1は同一であっても異なっていてもよい。
【0028】
特定重合体の全繰り返し単位のうち、上記式(1)で表される単位が占める割合は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましく、90モル%以上であることがさらに好ましい。
【0029】
(その他の単位)
特定重合体は上記式(1)で表される単位以外の単位を有していてもよい。そのような単位としては、例えば、-(Si(OR1)(R3)-O)-や-(Si(R3)2-O)-が挙げられる。ここで、R1の定義、具体例及び好適な態様は上記式(1)中のR1と同じである。また、R3は炭化水素基を表す。炭化水素基の具体例及び好適な態様は上記式(1)中のR1と同じである。複数存在するR3は同一であっても異なっていてもよい。
【0030】
(分子量)
特定重合体の重量平均分子量(Mw)は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、500~100,000であることが好ましく、1,000~10,000であることがより好ましい。
なお、上記重量平均分子量は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定値をもとにした標準ポリスチレン換算値である。
【0031】
(好適な態様)
上記特定重合体は、下記式(2)で表される重合体であることが好ましい。
【0032】
【0033】
式(2)中、R1は、炭化水素基を表す。R2は、水素原子又は置換基を表す。mは、2以上の整数を表す。
【0034】
上述のとおり、式(2)中、R1は、炭化水素基を表す。
上記炭化水素基の具体例及び好適な態様は、上述した式(1)中のR1と同じである。
複数存在するR1は同一であっても異なっていてもよい。
【0035】
上述のとおり、式(2)中、R2は、水素原子又は置換基を表す。
上記置換基は1価の置換基であれば特に制限されないが、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アミノ基、メルカプト基、アシル基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、シリル基、ヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基などが挙げられる。
上記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
上記ヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基のヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子などが挙げられる。
上記ヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基の具体例及び好適な態様は、上述した式(1)中のR1と同じである。
上記R2は、本発明の効果がより優れる理由から、炭化水素基であることが好ましく、脂肪族炭化水素基(特に、炭素数1~5)であることがより好ましく、直鎖状の脂肪族炭化水素基(特に、炭素数1~5)であることがさらに好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
複数存在するR2は同一であっても異なっていてもよい。
【0036】
上述のとおり、式(2)中、mは、2以上の整数を表す。
上記mは、本発明の効果がより優れる理由から、3~200の整数であることが好ましく、6~100の整数であることがより好ましく、8~50の整数であることがさらに好ましい。
【0037】
(含有量)
特定表面処理剤において、特定重合体の含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましく、20質量%以上であることが特に好ましい。特定重合体の含有量の上限は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、90質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることがさらに好ましい。
【0038】
<任意成分>
特定表面処理剤は、上述した特定重合体以外の成分を含有していてもよい。
そのような成分としては、例えば、有機溶剤、可塑剤等が挙げられる。
【0039】
(有機溶剤)
上記有機溶剤は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、酢酸エステルが好ましく、酢酸エチルがより好ましい。
【0040】
特定表面処理剤において、上記有機溶剤の含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、10~90質量%であることが好ましく、30~80質量%であることがより好ましく、50~70質量%であることがさらに好ましい。
【0041】
(可塑剤)
上記可塑剤は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、ゴムであることが好ましく、塩化ゴムであることがより好ましい。
【0042】
特定表面処理剤において、上記可塑税の含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、1~50質量%であることが好ましく、5~20質量%であることがより好ましい。
【0043】
〔表面処理剤の塗布〕
目地に充填されたシーリング材の表面に特定表面処理剤を塗布する方法は特に制限されない。特定表面処理剤を塗布した後に乾燥させてもよいし、乾燥させなくてもよい。
【0044】
<塗布量>
特定表面処理剤の塗布量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、0.1~0.5kg/m2であることが好ましく、0.1~0.3kg/m2であることがより好ましい。
【0045】
〔塗装工程〕
塗布工程は、上述した表面処理工程で特定表面処理剤が塗布されたシーリング材を含む建築物外壁に水系塗料を塗布する工程である。
【0046】
<水系塗料>
上記水系塗料は、溶剤又は分散剤が水である塗料であれば特に制限されない。水系塗料の具体例としては、シリコーン系、ウレタン系、エポキシ系、フッ素系、アクリル系等の水系塗料(特に、水系樹脂塗料)が挙げられる。水系塗料は下塗材と上塗材からなるものが好ましい。
【0047】
[2]表面処理剤
本発明の表面処理剤は、シーリング材が充填された目地を有する建築物外壁を水系塗料で塗装する際に、上記シーリング材を予め表面処理するための表面処理剤であって、上述した式(1)で表される単位を有する重合体を含有する、表面処理剤である。
表面処理剤については上述のとおりである。
【実施例】
【0048】
以下、実施例により、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0049】
[表面処理剤の調製]
下記表1に示される各成分を同表に示される割合(質量部)で混合することで、各表面処理剤を調製した。
【0050】
[実施例1~
4、比較例5及び実施例6~8]
下記のとおり、シーリング材が充填された目地を有する建築物外壁を水系塗料で塗装した。下記塗装方法は、
図1に示される塗装方法に該当する。
【0051】
〔準備工程〕
建築物外壁10の目地3に2成分形ポリサルファイド系シーリング材を充填し、20℃で7日間養生し、硬化させた。このようにして、シーリング材4が充填された目地を有する建築物外壁11を準備した。
【0052】
〔表面処理工程〕
その後、シーリング材4の表面aに表1に示される表面処理剤を同表に示される塗布量で塗布した。
【0053】
〔塗装工程〕
次いで、表面処理剤が塗布されたシーリング材5を含む建築物外壁12に水系塗料(下塗材)としてエスケー化研社製水性ミラクシーラーエコクリアーを塗布した。そして、水系塗料(下塗材)を塗布してから4時間後に、塗布された水系塗料(下塗材)に水系塗料(上塗材)としてエスケー化研社製水性弾性セラミシリコンを塗布した。このようにして、建築物外壁に塗料層6を形成した。
【0054】
[比較例1]
表面処理工程を行わなかった点以外は、上述した実施例1~4、比較例5及び実施例6~8と同様の手順に従って塗装した。すなわち、表面処理剤が塗布されていないシーリング材4を含む建築物外壁11に実施例1~4、比較例5及び実施例6~8と同様に水系塗料を塗布した。
【0055】
[塗料密着性]
各実施例及び比較例の方法で塗装した各建築物外壁のシーリング材部分の塗料層について、塗装工程から7日後(20℃)に、JIS K5600-5-6に準じて碁盤目試験(25マス)を行った。そして、下記評価基準に従って、塗料密着性を評価した。○であれば塗料密着性に優れると言える。塗料密着性の観点から、残った碁盤目の数が多い程好ましい。
○:残った碁盤目の数が20~25
△:残った基盤目の数が8~19
×:残った碁盤目の数が0~7
【0056】
【0057】
表1中の各成分の詳細は以下のとおりである。
・MS51:三菱ケミカル社製MKCシリケートMS51(上述した式(2)で表される重合体。ここで、R1:メチル基、R2:メチル基、m:8~12、SiO2含有量:51.0~53.0質量%、重量平均分子量:800~1100)
・MS56:三菱ケミカル社製MKCシリケートMS56(上述した式(2)で表される重合体。ここで、R1:メチル基、R2:メチル基、m:15~24、SiO2含有量:55.5~57.5質量%、重量平均分子量:1450~2250)
・MS57:三菱ケミカル社製MKCシリケートMS57(上述した式(2)で表される重合体。ここで、R1:メチル基、R2:メチル基、m:24~29、SiO2含有量:57.5~59.5質量%、重量平均分子量:2250~2700)
・MS58B30:三菱ケミカル社製MKCシリケートMS58B30(上述した式(2)で表される重合体。ここで、R1:メチル基又はブチル基(メチル基/ブチル基=70/30(モル比)、R2:メチル基又はブチル基(メチル基/ブチル基=70/30(モル比)、m:22~28、SiO2含有量:49.0~55.0質量%、重量平均分子量:2650~3250)
・酢酸エチル:酢酸エチル
・ペルグート:バイエル社製ペルグートS170(塩化ゴム)
【0058】
表1から分かるように、シーリング材の表面を上述した特定表面処理剤で表面処理してから水系塗料を塗布した実施例1~4、比較例5及び実施例6~8は、いずれも優れた塗料密着性を示した。なかでも、特定表面処理剤における特定重合体の含有量が20質量%以上である実施例1~4及び実施例6~8は、より優れた塗料密着性を示した。
一方、シーリング材を表面処理せずに水系塗料を塗布した比較例1は、塗料密着性が不十分であった。
【符号の説明】
【0059】
1 下地
2 建築材
3 目地
4 シーリング材
5 表面処理されたシーリング材
6 塗料層
10、11、12、13 建築物外壁
a シーリング材4の表面