(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】乳化組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 47/02 20060101AFI20241111BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20241111BHJP
A61K 8/27 20060101ALI20241111BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20241111BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20241111BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20241111BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20241111BHJP
A61K 31/05 20060101ALI20241111BHJP
A61K 31/245 20060101ALI20241111BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20241111BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20241111BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20241111BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
A61K47/02
A61K8/06
A61K8/27
A61K8/34
A61K8/44
A61K9/06
A61K9/10
A61K31/05
A61K31/245
A61P17/00
A61P29/00
A61P31/04
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2018239208
(22)【出願日】2018-12-21
【審査請求日】2021-11-11
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】小森園 正彦
【合議体】
【審判長】藤原 浩子
【審判官】前田 佳与子
【審判官】池上 京子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-197201(JP,A)
【文献】特開2018-197202(JP,A)
【文献】特開2018-197203(JP,A)
【文献】特開2017-088512(JP,A)
【文献】特表2012-522753(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K9/00-9/72
A61K31/00-31/80
A61K47/00-47/69
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ウフェナマート、(B)イソプロピルメチルフェノール、(C)酸化亜鉛、
(E)鉱物油、脂肪酸アルキルエステル、及び高級アルコール、(F)ノニオン性界面活性剤
、並びに多価アルコールを含有することを特徴とする、
水中油型の乳化組成物。
【請求項2】
前記(C)成分の含有量が0.1~50重量%である、請求項1に記載の乳化組成物。
【請求項3】
前記(A)成分1重量部当たり、前記(C)成分が0.02~10重量部の比率で含まれる、請求項1又は2に記載の乳化組成物。
【請求項4】
前記(B)成分1重量部当たり、前記(C)成分が1~500重量部の比率で含まれる、請求項1~3のいずれかに記載の乳化組成物。
【請求項5】
水中油型の乳化組成物中に、(A)ウフェナマート、(B)イソプロピルメチルフェノール、
(E)鉱物油、脂肪酸アルキルエステル、及び高級アルコール、(F)ノニオン性界面活性剤
並びに多価アルコールと共に、(C)酸化亜鉛を配合することを特徴とする、
水中油型の乳化組成物の乳化安定化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウフェナマート及びイソプロピルメチルフェノールを含有する乳化組成物に関する。より詳細には、本発明は、ウフェナマート及びイソプロピルメチルフェノールを含んでいながらも、優れた乳化安定性を備える乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
乳化組成物は、水溶性成分と脂溶性成分を配合でき、様々な製剤処方に対応できると共に、皮膚に適用した際の使用感も優れているため、外用医薬品や化粧料の分野において汎用されている。また、乳化組成物では脂溶性成分の経皮吸収性が良好となるため、様々な脂溶性成分が有効成分として乳化組成物に配合されている。
【0003】
ウフェナマートは、非ステロイド系抗炎症剤として、医薬品又は医薬部外品の皮膚外用剤に配合して用いられている。ウフェナマートは脂溶性成分であり、例えば、特許文献1には、ウフェナマートにヘパリンを配合した乳化状態の皮膚外用組成物が開示されている。
【0004】
また、イソプロピルメチルフェノールは、広範な殺菌力と高い安全性を有し、抗菌剤として洗浄料及び皮膚外用剤に配合して用いられている。イソプロピルメチルフェノールも脂溶性成分であり、例えば、特許文献2には、ポリエーテル変性シリコーンと、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマーと、パルミチン酸2-エチルヘキシルと、制汗剤と、殺菌剤と、水とを含む乳化デオドラント組成物において、好ましい殺菌剤としてイソプロピルメチルフェノールが配合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-199709号公報
【文献】国際公開第2016/052277号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ウフェナマート及びイソプロピルメチルフェノールは、それぞれ、乳化組成物に用いられていることが知られているが、ウフェナマート及びイソプロピルメチルフェノールの両方を含む乳化組成物の保存安定性についてはこれまで検討されていない。本発明者は、ウフェナマート及びイソプロピルメチルフェノールの両方を含む乳化組成物の保存安定性について検討したところ、高温条件下の保存により乳化組成物から水相の分離が生じるという課題に直面した。
【0007】
そこで、本発明は、ウフェナマート及びイソプロピルメチルフェノールを含んでいながらも、優れた乳化安定性を備える乳化組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意検討を行ったところ、ウフェナマート及びイソプロピルメチルフェノールを含む乳化組成物において、酸化亜鉛を配合することで、優れた乳化安定性が備わることを見出した。本発明は、この知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0009】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (A)ウフェナマート、(B)イソプロピルメチルフェノール、及び(C)酸化亜鉛を含有することを特徴とする、乳化組成物。
項2. 前記(C)成分の含有量が0.1~50重量%である、項1に記載の乳化組成物。
項3. 前記(A)成分1重量部当たり、前記(C)成分が0.02~10重量部の比率で含まれる、項1又は2に記載の乳化組成物。
項4. 前記(B)成分1重量部当たり、前記(C)成分が1~500重量部の比率で含まれる、項1~3のいずれかに記載の乳化組成物。
項5. 水中油型である、項1~4のいずれかに記載の乳化組成物。
項6. 乳化組成物中に、(A)ウフェナマート及び(B)イソプロピルメチルフェノールと共に、(C)酸化亜鉛を配合することを特徴とする、乳化組成物の乳化安定化方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の乳化組成物は、ウフェナマート及びイソプロピルメチルフェノールを含んでいながらも、優れた乳化安定性を奏することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.乳化組成物
本発明の乳化組成物は、(A)ウフェナマート(以下、「(A)成分」とも記載する)、(B)イソプロピルメチルフェノール(以下、「(B)成分」とも記載する)、及び(C)酸化亜鉛(以下、「(C)成分」とも記載する)を含有することを特徴とする。以下、本発明の乳化組成物について詳述する。
【0012】
(A)ウフェナマート
本発明の乳化組成物は、(A)成分としてウフェナマートを含有する。ウフェナマートは、フルフェナム酸ブチルとも称され、脂溶性の非ステロイド性抗炎症薬として公知の成分である。ウフェナマートは、乳化組成物中でイソプロピルメチルフェノールと共存すると、高温での保存により乳化状態が安定せず水相の分離が生じるが、本発明の乳化組成物では、高温保存後において優れた乳化安定性が奏される。
【0013】
本発明の乳化組成物において、(A)成分の含有量については、付与すべき薬効等に応じて適宜設定されるが、例えば1~20重量%、好ましくは2~10重量%、更に好ましくは3~7重量%が挙げられる。
【0014】
(B)イソプロピルメチルフェノール
本発明の乳化組成物は、(B)成分としてイソプロピルメチルフェノールを含有する。イソプロピルメチルフェノールは、3-メチル-4-イソプロピルフェノール、又はシメン-5-オールとも称され、脂溶性の殺菌剤として公知の成分である。イソプロピルメチルフェノールは、乳化組成物中でウフェナマートと共存すると、高温での保存により乳化状態が安定せず水相の分離が生じるが、本発明の乳化組成物では、高温保存後において優れた乳化安定性が奏される。
【0015】
本発明の乳化組成物における(B)成分の配合量は特に限定されず、付与すべき薬効に応じて適宜決定することができるが、例えば0.01~1重量%、好ましくは0.05~0.5重量%、より好ましくは0.07~0.3重量%が挙げられる。
【0016】
(C)酸化亜鉛
本発明の乳化組成物は、(C)成分として酸化亜鉛を含有する。酸化亜鉛は、抗炎症剤、紫外線散乱剤、又は収斂剤として公知の成分である。酸化亜鉛は、乳化組成物の安定性を向上させる成分として知られていないが、本発明の乳化組成物中でウフェナマート及びイソプロピルメチルフェノールと共に配合させることによって、ウフェナマート及びイソプロピルメチルフェノールの共存による高温保存後の水相分離を抑制し、優れた乳化安定性を発現させることを可能にする。
【0017】
本発明の乳化組成物において、(C)成分の含有量としては例えば0.1~50重量%が挙げられる。より一層優れた乳化安定性を得る観点から、(C)成分の含有量としては、好ましくは0.5~30重量%、より好ましくは0.5~10重量%、更に好ましくは1.5~8重量%が挙げられる。
【0018】
本発明の乳化組成物において、(A)成分に対する(C)成分の比率については、(A)成分及び(C)成分の上記各含有量に応じて定まるが、より一層優れた乳化安定性を得る観点から、例えば、(A)成分1重量部当たり、(C)成分が例えば0.02~10重量部、好ましくは0.1~5重量部、より好ましくは0.2~5重量部、更に好ましくは0.25~3重量部、一層好ましくは0.28~2重量部、特に好ましくは0.3~1重量部が挙げられる。
【0019】
本発明の乳化組成物において、(B)成分に対する(C)成分の比率については、(B)成分及び(C)成分の上記各含有量に応じて定まるが、より一層優れた乳化安定性を得る観点から、例えば、(B)成分1重量部当たり、(C)成分が例えば1~500重量部、好ましくは5~100重量部、より好ましくは10~100重量部、更に好ましくは13~80重量部、一層好ましくは14~60重量部、特に好ましくは15~50重量部が挙げられる。
【0020】
本発明の乳化組成物において、(A)成分及び(B)成分の総和に対する(C)成分の比率については、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の上記各含有量に応じて定まるが、より一層優れた乳化安定性を得る観点から、例えば、(A)成分及び(B)成分の総和1重量部当たり、(C)成分が例えば0.05~5重量部、好ましくは0.1~5重量部、より好ましくは0.2~5重量部、更に好ましくは0.25~3重量部、一層好ましくは0.25~2重量部、特に好ましくは0.28~1重量部が挙げられる。
【0021】
(D)水
本発明の乳化組成物は、乳化状態において水相を形成するために、水(以下、「(D)成分」とも記載する)を含有する。
【0022】
本発明の乳化組成物における(D)成分の含有量については、乳化タイプ及び製剤形態に応じて適宜設定すればよいが、例えば15~90重量%、好ましくは30~90重量%が挙げられる。より一層優れた乳化安定性を得る観点からは、本発明の乳化組成物における(D)成分の含有量としては、より好ましくは30~80重量%、更に好ましくは30~70重量%、一層好ましくは30~65重量%が挙げられる。
【0023】
また、本発明の乳化組成物は、優れた乳化安定性により高温保存後の水相分離を抑制する優れた乳化安定性を備えているため、本来的に水相分離がより一層生じやすい、水を多く含む場合であっても、優れた乳化安定性を備えさせることが可能になる。このような本発明の効果を鑑みれば、本発明の乳化組成物の好適な一態様として、水の含有量が比較的多い乳化組成物が挙げられる。より具体的には、本発明の乳化組成物における(D)成分含有量の好適な例として、好ましくは55重量%以上、より好ましくは55~90重量%、更に好ましくは58~90重量%が挙げられる。
【0024】
(E)油分
本発明の乳化組成物は、乳化状態において油相を形成するために、油分(以下、「(E)成分」とも記載する)を含有する。
【0025】
本発明で使用される油分については、薬学的又は香粧学的に許容されるものであることを限度として特に制限されないが、例えば、植物油、動物油、鉱物油、コレステロール、脂肪酸アルキルエステル、脂肪酸、高級アルコール、シリコーンオイル等が挙げられる。これらの油脂性基剤の中でも、より一層優れた乳化安定性を得る観点から、好ましくは、鉱物油、脂肪酸アルキルエステル、高級アルコールが挙げられる。
【0026】
植物油としては、具体的には、オリーブ油、小麦胚芽油、こめ油、サフラワー油、大豆油、つばき油、とうもろこし油、なたね油、ごま油、ひまし油、ひまわり油、綿実油、落花生油、ホホバ油、硬化油、アボガド油、ウイキョウ油、チョウジ油、ハッカ油、ユーカリ油、レモン油、オレンジ油、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、コメヌカロウ、木ロウ、ライスワックス、等が挙げられる。これらの植物油は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0027】
動物油としては、具体的には、ラード、魚油、スクワラン、蜜蝋等が挙げられる。これらの動物油は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0028】
鉱物油としては、具体的には、パラフィン、水添ポリイソブテン、流動パラフィン、ゲル化炭化水素(プラスチベース等)、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン等が挙げられる。これらの炭化水素は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの炭化水素の中でも、より一層優れた乳化安定性を得る観点から、好ましくは、流動パラフィン、ワセリンが挙げられる。
【0029】
脂肪酸アルキルエステルとしては、例えば、炭素数4~30の脂肪酸と炭素数1~34のアルコールのエステルが挙げられ、具体的には、アジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、セバシン酸ジエチル、オレイン酸エチル等が挙げられる。これらの脂肪酸アルキルエステルは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの脂肪酸アルキルエステルの中でも、より一層優れた乳化安定性を得る観点から、好ましくは、ミリスチン酸イソプロピルが挙げられる。
【0030】
脂肪酸としては、例えば、炭素数4~30の脂肪酸が挙げられ、具体的には、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、セバシン酸、オレイン酸、リノール酸等が挙げられる。これらの脂肪酸は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
高級アルコールとしては、例えば、炭素数6~34の1価アルコールが挙げられ、具体的には、ミリスチルアルコール、セチルアルコール(セタノール)、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ラノリンアルコール等が挙げられる。これらの高級アルコールは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの高級アルコールの中でも、より一層優れた乳化安定性を得る観点から、好ましくは、セチルアルコール(セタノール)、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコールが挙げられる。
【0032】
シリコーンオイルとしては、具体的には、メチルポリシロキサン、架橋型メチルポリシロキサン、環状シリコーン、アルキル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、アクリルシリコーン、フェニル変性シリコーン等が挙げられる。これらのシリコーンオイルは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0033】
これらの油分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0034】
本発明の乳化組成物における(E)成分の含有量については、乳化タイプ及び製剤形態に応じて適宜設定すればよいが、例えば0.5~20重量%、好ましくは10~20重量%、更に好ましくは12~17重量%が挙げられる。
【0035】
(F)界面活性剤
本発明の乳化組成物は、乳化状態とするために界面活性剤(以下、「(F)成分」とも記載する)を含む。界面活性剤としては、薬学的又は香粧学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。これらの界面活性剤の中でも、乳化安定性をより一層向上させるという観点から、好ましくはノニオン性界面活性剤が挙げられる。
【0036】
ノニオン性界面活性剤としては、具体的には、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;ソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート、ペンタ-2-エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン、テトラ-2-エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン等);グリセリン脂肪酸エステル類(例えば、モノ綿実油脂肪酸グリセリル、モノエルカ酸グリセリル、セスキオレイン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、α,α’-オレイン酸ピログルタミン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリンリンゴ酸等);プロピレングリコール脂肪酸エステル類(例えば、モノステアリン酸プロピレングリコール等);グリセリンアルキルエーテル;ステアレス-2;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンテトラオレエート等);ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル類(例えば、ポリオキシエチレンソルビットモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビットモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビットペンタオレエート、ポリオキシエチレンソルビットモノステアレート等);ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類(例えば、ポリオキシエチレングリセリンモノステアレート、ポリオキシエチレングリセリンモノイソステアレート、ポリオキシエチレングリセリントリイソステアレート等);ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類(例えば、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンジステアレート、ポリオキシエチレンモノジオレエート、ジステアリン酸エチレングリコール等);ポリオキシエチレンアルキルエーテル類(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレン2-オクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレンコレスタノールエーテル等);プルロニック型類(例えば、プルロニック等);ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンアルキルエーテル類(例えば、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン-セチルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン-2-デシルテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンモノブチルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン水添ラノリン、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレングリセリンエーテル等);ステアレス-21等が挙げられる。
【0037】
これらのノニオン性界面活性剤の中でも、乳化安定性をより一層向上させるという観点から、好ましくはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、グリセリンポリグリセリン脂肪酸類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類が挙げられ、より好ましくは、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、モノステアリン酸グリセリル、ポリオキシエチレンモノステアレートが挙げられる。
【0038】
これらの界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0039】
本発明の乳化組成物において、(F)成分の含有量については、使用する界面活性剤の種類等に応じて適宜設定すればよいが、例えば0.5~7重量%、好ましくは1~5重量%、より好ましくは2~5重量%が挙げられる。
【0040】
その他の成分
本発明の乳化組成物は、前述する成分の他に、必要に応じて、通常使用される他の添加剤が含まれていてもよい。このような添加剤としては、例えば、多価アルコール、増粘剤、pH調節剤、緩衝剤、可溶化剤、キレート剤、防腐剤、保存剤、酸化防止剤、安定化剤、香料、着色料等が挙げられる。
【0041】
多価アルコールとしては、薬学的又は香粧学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール(BG)、エチレングリコール、イソプレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等の2価アルコール;グリセリン等の3価アルコール、マクロゴール4000、マクロゴール6000等のポリエチレングリコール等が挙げられる。これらの多価アルコールは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの多価アルコールの中でも、乳化安定性をより一層向上させるという観点から、好ましくは2価アルコール、3価アルコールが挙げられ、より好ましくは1,3-ブチレングリコール(BG)、グリセリンが挙げられる。本発明の乳化組成物において、多価アルコールを含有させる場合、その含有量については、使用する多価アルコールの種類等に応じて適宜設定すればよいが、例えば1~20重量%、好ましくは5~15重量%、より好ましくは10~15重量%が挙げられる。
【0042】
更に、本発明の乳化組成物は、前述する成分の他に、薬学的又は香粧学的な生理機能を発揮できる薬効成分が、必要に応じて含まれていてもよい。このような薬効成分としては、例えば、ステロイド剤(デキサメタゾン、塩酸デキサメタゾン、酢酸デキサメタゾン、塩酸ヒドロコルチゾン、吉草酸プレドニゾロン、酢酸プレドニゾロン等)、抗ヒスタミン剤(ジフェンヒドラミン、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン等)、局所麻酔剤(リドカイン、ジブカイン、プロカイン、テトラカイン、ブピバカイン、メピバカイン、クロロプロカイン、プロパラカイン、メプリルカイン又はこれらの塩)、安息香酸アルキルエステル(例えばアミノ安息香酸エチル、塩酸パラブチルアミノ安息香酸ジエチルアミノエチル)、オルソカイン、オキセサゼイン、オキシポリエントキシデカン、ロートエキス、ペルカミンパーゼ、テシットデシチン等)、抗炎症剤(アラントイン、サリチル酸、サリチル酸グリコール、サリチル酸メチル、インドメタシン、フェルビナク、ジクロフェナクナトリウム、ロキソプロフェンナトリウム等)、殺菌剤(塩化ベンザルコニウム、塩化デカリニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、イソプロピルメチルフェノール、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、アンモニア水、スルファジアジン、乳酸、フェノール等)、鎮痒剤(クロタミトン、チアントール等)、皮膚保護剤(コロジオン、ヒマシ油等)、血行促進成分(ノニル酸ワニリルアミド、ニコチン酸ベンジルエステル、カプサイシン、トウガラシエキス等)、ビタミン類(ビタミンA,B,C,D等)、ムコ多糖類(コンドロイチン硫酸ナトリウム、グルコサミン、ヒアルロン酸等)等が挙げられる。これらの薬効成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、本発明の乳化組成物において、これらの薬効成分を含有させる場合、その含有量については、使用する薬効成分の種類、期待する効果等に応じて適宜設定すればよい。
【0043】
製剤形態・用途
本発明の乳化組成物の乳化タイプは、油中水型又は水中油型のいずれであってもよい。本発明の乳化組成物は、優れた乳化安定性により高温保存後の水相分離を抑制する優れた乳化安定性を備えているため、本発明では、本来的に水相分離がより一層生じやすい、水中油型のような水を多く含む場合であっても、優れた乳化安定性を備えさせることが可能になる。このような本発明の効果を鑑みれば、本発明の乳化組成物の好ましい乳化タイプは、水の含有量が比較的多い水中油型である。
【0044】
本発明の乳化組成物は、化粧料、外用医薬部外品、外用医薬品等の外用剤として使用することができる。本発明の乳化組成物の製品形態については、特に制限されないが、例えば、クリーム剤、軟膏剤、乳液剤、ゲル剤、油剤、ローション剤、リニメント剤、エアゾール剤等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、クリーム剤、軟膏剤、乳液剤、ローション剤が挙げられ、より好ましくは、クリーム剤、乳液剤、ローション剤が挙げられる。
【0045】
製造方法
本発明の乳化組成物は、乳化タイプに応じて、公知の乳化製剤の製剤化手法に従って製造することができる。例えば、本発明の乳化組成物の製造方法としては、含有させる成分を水溶性成分と油性成分に分けて、水溶性成分を含む水相と、油性成分を含む油相とを調製し、これらを公知の手法に従って乳化させる方法が挙げられる。
【0046】
2.乳化安定化方法
上述するように、酸化亜鉛は、ウフェナマート及びイソプロピルメチルフェノールを含む乳化組成物において、高温保存後における優れた乳化安定性を発現させる。従って、本発明は、更に、ウフェナマート及びイソプロピルメチルフェノールを含む乳化組成物の乳化安定化方法であって、乳化組成物中に、(A)ウフェナマート及び(B)イソプロピルメチルフェノールと共に、(C)酸化亜鉛を配合することを特徴とする、乳化組成物の乳化安定化方法を提供する。
【0047】
本発明の乳化安定化方法において、乳化安定化とは、高温保存後において乳化組成物からの水相の分離を抑制することをいう。乳化安定化のより好ましい態様においては、高温保存後において乳化組成物からの水相の分離を抑制することに加えて、乳化状態の均一性、つまりエマルジョン中の液滴が分散媒中に均一に分散した状態も保たれる。
【0048】
本発明の乳化安定化方法において、使用する(A)成分~(C)成分の種類や含有量、配合される他の成分の種類や含有量、乳化組成物の製剤形態等については、前記「1.乳化組成物」の場合と同様である。
【実施例】
【0049】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0050】
試験例1
表1に示す組成の乳化組成物を調製した。具体的には、表1に示す(I)の各成分を65~75℃で加熱混合し、固形分を溶解させた混合物に、65~75℃でウフェナマート及びイソプロピルメチルフェノールを加えて溶解させた油相と、表1に示す(II)の各成分を65~75℃に加熱した混合物に、65~75℃で酸化亜鉛を加えて混合した水相とをそれぞれ混合し、得られた油相に水相を加えてホモミキサーを用いて乳化させ、更に35℃まで撹拌冷却することにより、クリーム状の水中油型乳化組成物を製造した。
【0051】
得られた各乳化組成物40gを、ガラス瓶(バイアルNo.7、50mL、透明)に充填し、密封して、高温保存条件である50℃で1週間保存した。保存後の各乳化組成物を目視にて観察し、以下の基準に基づいて乳化安定性を評価した。結果を表1に示す。
◎:乳化状態が均一であり、水相の分離も認められなかった。
○:クリーミング傾向があったが、水相の分離は認められなかった。
×:水相の分離が認められた。
なお、クリーミング傾向とは、乳化状態の不均一状態をいい、具体的には、生成したエマルジョン中の液滴が、分散媒との比重差によって浮上又は沈降する過程にある状態をいう。
【0052】
【0053】
表1から明らかなように、ウフェナマート及びイソプロピルメチルフェノールとが共存する乳化組成物(比較例1)は高温保存後において水相が分離したため、乳化状態に顕著な不安定性が認められた。なお、比較例1において、さらにウフェナマートおよびイソプロピルメチルフェノールのいずれかを欠く場合は、比較例1のような乳化状態の顕著な不安定性は認められない。これに対し、ウフェナマート及びイソプロピルメチルフェノールとが共存する乳化組成物に対して更に酸化亜鉛を加えた場合(実施例1~4)には、優れた乳化安定性が得られたことが分かった。この乳化安定性の向上効果は、同量の塩化亜鉛を用いる参考例1及び2と実施例1との対比にみられるとおり、乳化状態に顕著な不安定性が認められないウフェナマート及びイソプロピルメチルフェノールのいずれか一方を含む乳化組成物に対して塩化亜鉛を用いた場合(参考例1及び2)よりも、乳化状態が顕著に不安定性であるウフェナマート及びイソプロピルメチルフェノールの両方を含む乳化組成物に対して塩化亜鉛を用いた場合(実施例1)の方が好ましい乳化安定性が得られるほどに格別優れたものであった。