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  • 特許-菓子、複合菓子、及び菓子の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】菓子、複合菓子、及び菓子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23G 3/44 20060101AFI20241111BHJP
   A23G 3/42 20060101ALI20241111BHJP
   A23G 3/34 20060101ALI20241111BHJP
   A23G 3/54 20060101ALI20241111BHJP
   A21D 2/26 20060101ALI20241111BHJP
   A21D 2/10 20060101ALI20241111BHJP
   A23L 33/17 20160101ALI20241111BHJP
   A23L 33/21 20160101ALI20241111BHJP
【FI】
A23G3/44
A23G3/42
A23G3/34 102
A23G3/54
A21D2/26
A21D2/10
A23L33/17
A23L33/21
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020097949
(22)【出願日】2020-06-04
(65)【公開番号】P2021185892
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-05-26
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年5月26日 森永製菓株式会社が「in バープロテインベイクドビター」を全国販売することをウェブサイトにてニュースリリースした。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年5月26日~令和2年6月4日 森永製菓株式会社が「in バープロテインベイクドビター」を配布し、又は卸した。
(73)【特許権者】
【識別番号】000006116
【氏名又は名称】森永製菓株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】岡藤 洋子
(72)【発明者】
【氏名】高橋 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】高野 俊彦
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-279352(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108157447(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110623039(CN,A)
【文献】特開2019-187366(JP,A)
【文献】特開2019-187370(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G 3/00-3/56
A21D 2/00-17/00
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質及び食物繊維を含有する菓子であって、前記タンパク質の含有量が20質量%以上50質量%以下であり、前記食物繊維の含有量が2質量%以上30質量%以下であり、糖質の含有量が20質量%以下であり、前記食物繊維は重合度3~9の難消化性オリゴ糖を含むものであり、前記食物繊維に占める前記重合度3~9の難消化性オリゴ糖の割合が該食物繊維100質量部に対して60質量部以上であることを特徴とする菓子。
【請求項2】
原料として、少なくともタンパク質素材及び食物繊維素材を用いてなるものである、請求項1記載の菓子。
【請求項3】
前記食物繊維素材は、フルクトオリゴ糖を含有する素材、難消化性グルカンを含有する素材、イヌリンを含有する素材、及びポリデキストロースを含有する素材からなる群から選ばれた1種又は2種以上の素材である、請求項2記載の菓子。
【請求項4】
前記タンパク質素材は、大豆タンパク質を含有する素材及び乳タンパク質を含有する素材からなる群から選ばれた1種又は2種以上の素材である、請求項2又は3記載の菓子。
【請求項5】
原料として、更に糖質素材を用いてなるものである、請求項2~4のいずれか1項に記載の菓子。
【請求項6】
前記糖質素材は、単糖又は二糖の非還元糖を含有する素材及びグリセリロールを含有する素材からなる群から選ばれた1種又は2種以上の素材である、請求項5記載の菓子。
【請求項7】
粒状風味材を含有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の菓子。
【請求項8】
水分活性が0.70以下である、請求項1~7のいずれか1項に記載の菓子。
【請求項9】
焼成された菓子である、請求項1~8のいずれか1項に記載の菓子。
【請求項10】
請求項1~8のいずれかに記載の菓子が、他の菓子と接合されてなる複合菓子。
【請求項11】
焼成された複合菓子である、請求項10記載の複合菓子。
【請求項12】
タンパク質及び食物繊維を含有する菓子生地であって、前記タンパク質の含有量が20質量%以上50質量%以下であり、前記食物繊維の含有量が2質量%以上30質量%以下であり、糖質の含有量が20質量%以下であり、前記食物繊維は重合度3~9の難消化性オリゴ糖を含むものであり、前記食物繊維に占める前記重合度3~9の難消化性オリゴ糖の割合が該食物繊維100質量部に対して60質量部以上である該菓子生地を調製し、前記菓子生地を所定形状に成形することを特徴とする菓子の製造方法。
【請求項13】
前記菓子生地の所定形状への成形が、押出成形によるものである、請求項12記載の菓子の製造方法。
【請求項14】
前記菓子生地を所定形状に成形した後、更に焼成する工程を含む、請求項12又は13記載の菓子の製造方法。
【請求項15】
前記菓子生地を、他の菓子生地と接合したうえ所定形状に成形することで、前記菓子生地からなる菓子と前記他の菓子生地からなる菓子とからなる複合菓子を得る、請求項12~14のいずれか1項に記載の菓子の製造方法。
【請求項16】
前記菓子生地を、他の菓子生地と接合したうえ所定形状に成形した後、更に焼成する工程を含む、請求項15記載の菓子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手軽に栄養補給するのに適した菓子、複合菓子、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリアルバーやグラノーラバーなど、特定の栄養素や食物繊維などを手軽に栄養補給できるようにしたバー成形食品が知られている。運動中や仕事中などにも素早く喫食することができることから、その食行為自体を楽しむことにもつながっている。近年ではタンパク質の補給を目的としたバー成形食品への要望も高まりつつある。
【0003】
バー成形食品に関し、例えば、特許文献1には、少なくとも15重量%以上の完全穀粒と、約35重量%以上のバインダーと、約5重量%以上の配合コーティング剤とを含むシリアルバーであって、前記シリアルバーは、少なくとも約5重量%以上のタンパク質、約5重量%以上の繊維、およびバー28グラムあたり少なくとも120カロリー以下を提供するのに有効であり、前記シリアルバーは、約0.4から約0.6のAwを有することを特徴とするシリアルバーが開示されている(特許文献1の請求項1参照)。
【0004】
しかしながら、特許文献1では、完全穀粒をバー成形食品の形態とするための成形適性や保形性の確保のために、糖シラップからなるバインダーの結着力に依拠していた。この場合、バインダーには砂糖や水飴が含まれているので、甘味の強い製品となり、甘すぎない風味のものを提供しづらいという側面があった。また、バインダー部の食感としてはヌガー状や飴状の食感となってしまうという側面があった。更に、特許文献1では、タンパク質を、押出し大豆タンパク質ナゲットの形態で配合していた(特許文献1の実施例参照)。このような形態であると、得られるバー成形食品にはそのナゲット部が硬く残ってしまい、食感に悪影響があるという側面があった。
【0005】
一方、例えば、特許文献2には、架橋処理をした小麦澱粉とタンパク質粉末を配合した焼成食品生地を用いることを特徴とする焼成食品の製造方法の発明が開示されている。そして、タンパク質含有量を増加させると生地の粘りが低下して伸展性が低下し、成形性が悪くなるところ、小麦由来の架橋澱粉を配合することにより、焼成食品生地の物性及び乳化状態を向上させることができ、既存の製造設備において、製造上の問題を引き起こすことなく、タンパク質含有量が高く、かつ良好な焼成食品を製造できる、と記載されている(特許文献2の段落0003、0008参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-130018号公報
【文献】国際公開第2008/093611号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明者らが検討したところ、菓子にタンパク質を高含有に配合し、なお且つ糖質制限を試みると、生地の成形性や得られる菓子の食感に問題が生じることが明らかとなった。この点、特許文献2でも、具体的に実施例として調製されているのは、所定量以上で砂糖及び小麦粉を配合した生地を焼成してなる焼成食品であった。よって、糖質制限の目的や小麦アレルギーの問題などから、砂糖や小麦粉の摂取を避けたいという需要者の要望に応えきれない側面があった。
【0008】
したがって、本発明の目的は、タンパク質を高含有に配合してなお且つ糖質を抑えた場合であっても、小麦粉を主体とした菓子の形態や、糖シラップからなるバインダーの結着力に依拠した形態とすることなく、生地の成形性が良好で、硬すぎないソフトな食感を呈する菓子を得る方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、その第1の観点において、タンパク質及び食物繊維を含有する菓子であって、前記タンパク質の含有量が20質量%以上50質量%以下であり、前記食物繊維の含有量が2質量%以上30質量%以下であり、糖質の含有量が20質量%以下であり、前記食物繊維は重合度3~9の難消化性オリゴ糖を含むものであり、前記食物繊維に占める前記重合度3~9の難消化性オリゴ糖の割合が該食物繊維100質量部に対して60質量部以上であることを特徴とする菓子を提供するものである。
【0011】
本発明による菓子においては、原料として、少なくともタンパク質素材及び食物繊維素材を用いてなるものであることが好ましい。
【0012】
本発明による菓子においては、前記食物繊維素材は、フルクトオリゴ糖を含有する素材、難消化性グルカンを含有する素材、イヌリンを含有する素材、及びポリデキストロースを含有する素材からなる群から選ばれた1種又は2種以上の素材であることが好ましい。
【0013】
本発明による菓子においては、前記タンパク質素材は、大豆タンパク質を含有する素材及び乳タンパク質を含有する素材からなる群から選ばれた1種又は2種以上の素材であることが好ましい。
【0014】
本発明による菓子においては、原料として、更に糖質素材を用いてなるものであることが好ましい。
【0015】
本発明による菓子においては、前記糖質素材は、単糖又は二糖の非還元糖を含有する素材及びグリセリロールを含有する素材からなる群から選ばれた1種又は2種以上の素材であることが好ましい。
【0016】
本発明による菓子においては、該菓子は粒状風味材を含有することが好ましい。
【0017】
本発明による菓子においては、該菓子は水分活性が0.70以下であることが好ましい。
【0018】
本発明による菓子においては、該菓子は焼成された菓子であることが好ましい。
【0019】
本発明は、その第2の観点において、上記の菓子が、他の菓子と接合されてなる複合菓子を提供するものである。
【0020】
本発明による複合菓子においては、該複合菓子は焼成された複合菓子であることが好ましい。
【0021】
本発明は、その第3の観点において、タンパク質及び食物繊維を含有する菓子生地であって、前記タンパク質の含有量が20質量%以上50質量%以下であり、前記食物繊維の含有量が2質量%以上30質量%以下であり、糖質の含有量が20質量%以下であり、前記食物繊維は重合度3~9の難消化性オリゴ糖を含むものであり、前記食物繊維に占める前記重合度3~9の難消化性オリゴ糖の割合が該食物繊維100質量部に対して60質量部以上である該菓子生地を調製し、前記菓子生地を所定形状に成形することを特徴とする菓子の製造方法を提供するものである。
【0022】
本発明による菓子の製造方法においては、前記菓子生地の所定形状への成形が、押出成形によるものであることが好ましい。
【0023】
本発明による菓子の製造方法においては、前記菓子生地を所定形状に成形した後、更に焼成する工程を含むことが好ましい。
【0024】
本発明による菓子の製造方法においては、前記菓子生地を、他の菓子生地と接合したうえ所定形状に成形することで、前記菓子生地からなる菓子と前記他の菓子生地からなる菓子とからなる複合菓子を得るものであることが好ましい。
【0025】
本発明による菓子の製造方法においては、前記菓子生地を、他の菓子生地と接合したうえ所定形状に成形した後、更に焼成する工程を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、タンパク質及び食物繊維を含有し、その食物繊維として特定の重合度の難消化性オリゴ糖の占める割合が所定割合以上のものを含有せしめたので、タンパク質を高含有に配合してなお且つ糖質を抑えた場合であっても、小麦粉を主体とした菓子の形態や、糖シラップからなるバインダーの結着力に依拠した形態とすることなく、生地の成形性が良好で、硬すぎないソフトな食感を呈する菓子が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】硬度測定に使用したクサビ形プランジャーの形状を示す概略構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明により提供される菓子は、タンパク質及び食物繊維を含有し、そのタンパク質の含有量が20質量%以上50質量%以下であり、その食物繊維の含有量が2質量%以上30質量%以下である。タンパク質の含有量としては、場合によっては、23質量%以上48質量%以下の範囲となってもよく、25質量%以上45質量%以下の範囲となってもよい。また、食物繊維の含有量としては、場合によっては、5質量%以上28質量%以下の範囲となってもよく、7質量%以上25質量%以下の範囲となってもよい。一方、任意に糖質を含有してもよく、この場合、その糖質の含有量は20質量%以下である。糖質の含有量としては、場合によっては、0.1質量%以上18質量%以下の範囲となってもよく、1質量%以上15質量%以下の範囲となってもよい。
【0029】
ただし、本発明により提供される菓子においては、食物繊維は、重合度3~9の難消化性オリゴ糖を含むものであり、その食物繊維に占める重合度3~9の難消化性オリゴ糖の割合が、食物繊維100質量部に対して60質量部以上である。難消化性オリゴ糖の割合としては、場合によっては、食物繊維100質量部に対して65質量部以上99質量部以下の範囲となってもよく、食物繊維100質量部に対して68質量部以上95質量部以下の範囲となってもよい。
【0030】
本発明により提供される菓子は、菓子の原料として用いられる一般の食品素材を用いて調製することが可能である。すなわち、主にタンパク質の源となるタンパク質素材、主に食物繊維の源となる食物繊維素材、主に糖質の源となる糖質素材、主に脂質の源となる脂質素材などの食品素材を用いて調製することが可能である。
【0031】
本発明により提供される菓子に含有されるタンパク質の源となるタンパク質素材としては、例えば、大豆タンパク質を含有する素材、乳タンパク質を含有する素材、コラーゲンを含有する素材などが挙げられる。ただし、これらの種類のタンパク質を含有する素材に限られない。タンパク質素材は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上のものを組み合わせて用いてもよい。
【0032】
具体的に、大豆タンパク質を含有する素材としては、大豆、脱脂大豆粉、濃縮大豆蛋白質、分離大豆蛋白質、豆乳等の原料から所定条件下で抽出した抽出物、大豆パウダーなどが挙げられる。このような大豆タンパク質素材としては、例えば、不二製油株式会社製の「フジプロAL」、「フジプロSEH」、「プロリーナ700」、「プロリーナ800」、「プロリーナ900」等が大豆パウダーとして市販されているので、そのような市販の素材を用いてもよい。また、特開平8-173052号公報や特開平9-121780号公報には大豆タンパク質を含有する素材の調製方法が記載されているので、そのような公知の方法に準じて調製して用いてもよい。
【0033】
また、乳タンパク質を含有する素材としては、ホエイ蛋白濃縮物(WPC)、ホエイ蛋白分離物(WPI)、ホエイ蛋白加水分解物(WPH)などが挙げられる。このようなホエイ素材としては、例えば、フォンテラ社製の「WPC392」、「WPC472」、「WPI894」、「WPH817」等がホエイパウダーとして市販されているので、そのような市販の素材を用いてもよい。また、乳タンパク質を含有する素材としては、カゼインカルシウム、カゼインナトリウム、カゼインカリウム、カゼインマグネシウム、酸カゼイン、レンネットカゼイン、カゼインペプチド、ミセラカゼイン等であってもよい。このようなカゼイン素材としては、例えば、FrieslandCampina DMV社製の「Excellion Calcium Caseinate S」等がカゼインカルシウムとして、FrieslandCampina DMV社製の「Excellion Sodium Caseinate S」等がカゼインナトリウムとして、それぞれ市販されているので、そのような市販の素材を用いてもよい。
【0034】
また、コラーゲンを含有する素材としては、例えば、牛骨、牛皮、豚皮、魚骨等のコラーゲン含有原料からの酸性もしくは中性条件下での熱水抽出物、ゼラチン、コラーゲンペプチド(アミノ酸が2つ以上結合)などが挙げられる。なお、一般にコラーゲンは分子量が大きいとゲル化能が強く、菓子の生地の物性や食感に影響があるので、これを避けるにはコラーゲンペプチドを用いることが好ましい。コラーゲンペプチドの分子量は、重量平均分子量として500~15000程度が適当であり、500~10000程度がより典型的である。コラーゲンペプチドの重量平均分子量が500未満であるとペプチドによる苦味が強くなり、15000を超えると粘度が高くなるので、いずれも好ましくない。コラーゲンペプチドの重量平均分子量は、例えば、パギイ法(写真用ゼラチン試験法 第10版 写真用ゼラチン試験法合同審議会)等により測定することができる。
【0035】
なお、本発明における限定されない任意の態様においては、上記タンパク質素材の形状としては、菓子生地への混合のしやすさや、得られる菓子の食感の観点から、粉状の素材を用いることが好ましい。その粒度としては、粒径100μm以下のものが80質量%以上含まれていることが好ましく、粒径60μm以下のものが90質量%以上含まれていることがより好ましい。
【0036】
本発明により提供される菓子に含有される食物繊維の源となる食物繊維素材としては、例えば、ポリデキストロース、イヌリン、難消化性デキストリン、難消化性グルカン、等の難消化性の多糖類や、フルクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖等の難消化性オリゴ糖類などが挙げられる。食物繊維素材は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上のものを組み合わせて用いてもよい。
【0037】
ただし、上述したように、本発明においては、菓子に含まれる食物繊維に占める重合度3~9の難消化性オリゴ糖の割合が、食物繊維100質量部に対して60質量部以上である必要があり、場合によっては、食物繊維100質量部に対して65質量部以上99質量部以下の範囲である必要があり、更に場合によっては、食物繊維100質量部に対して68質量部以上95質量部以下の範囲である必要がある。そのように、菓子に含まれる食物繊維に占める重合度3~9の難消化性オリゴ糖の割合を特定の範囲となるように調製するには、例えば、フルクトオリゴ糖素材として市販されている帝人社製の「イヌリアLF92」や、難消化性グルカン素材として市販されている日本食品化工社製の「フィットファイバー#80」や、イヌリン素材として市販されているオラフティ社製の「オラフティHSI」、「オラフティP95」や、ポリデキストロース素材として市販されているダニスコジャパン社製の「ライテスウルトラ」、「ライテスIII」、「ライテスHF」や、テイトアンドライル社製の「スターライトIII」、「スターライトエリート」などが、上記食物繊維素材として例示される。すなわち、これらの食物繊維素材の1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いて菓子に配合することにより、随意に、上記の条件を満たすようにすることが容易となる。また、そのような食物繊維素材に含まれる食物繊維の平均分子量の目安としては、2000以下の範囲内となるようにすることが好ましく、1500以下の範囲内がより好ましい。ただし、本発明により提供される菓子には、重合度3~9の難消化性オリゴ糖の割合が特定範囲を満たすような食物繊維素材でなくとも、その他の食物繊維素材を配合することに、特に制限はなく、菓子の食物繊維の全体量に占める重合度3~9の難消化性オリゴ糖の割合が上記の特定範囲となればよい。
【0038】
本発明により提供される菓子に含有される糖質の源となる糖質素材としては、例えば、砂糖、ショ糖、蜂蜜、水飴、コーンシロップ、ブドウ糖、麦芽糖、異性化糖、トレハロース、各種オリゴ糖、更には、ソルビトール、マルチトール、マンニトール、イノシトール、キシリトール、オリゴ糖アルコール等の糖アルコール、グリセリロールなどが挙げられる。なかでも、生地の結合性を高めたり、水分活性を抑制したりする観点からは、単糖又は二糖の非還元糖やグリセリロールなどを用いることが好ましい。糖質素材は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上のものを組み合わせて用いてもよい。
【0039】
本発明により提供される菓子においては、任意に脂質を含有してもよい。その場合、脂質の含有量は30質量%以下であることが典型的である。脂質の含有量としては、場合によっては、0.1質量%以上28質量%以下の範囲となってもよく1質量%以上25質量%以下の範囲となってもよい。
【0040】
本発明により提供される菓子に含有される脂質の源となる脂質素材としては、食用として使用可能な脂質素材であればよく、特に制限はない。例えば、植物性油脂、動物性油脂、それらの加工油脂のいずれでもよい。また、油脂の融点も特に限定されず、液状油脂、固形油脂のいずれでもよい。例えば、マーガリン、ショートニング、オリーブ油、サフラワー油、コーン油、やし油、カカオ脂、パーム油などが挙げられる。なかでも、より良好な風味を付与するためには、マーガリン、バター、ショートニング等の加工食用油脂などが好ましく例示される。
【0041】
本発明により提供される菓子においては、必要な場合には、その所望する製品形態に応じて、適宜、上記に説明した以外の他の素材も配合し得る。例えば、食塩、ビタミン、アミノ酸、甘味料、香料、調味料、粒状風味材、乳化剤、粘調剤、膨化剤、pH調整剤、卵製品、乳製品などを配合し得る。
【0042】
例えば、乳製品としては、脱脂粉乳、全粉乳、練乳、生乳、濃縮乳、発酵乳、クリームなどが挙げられる。
【0043】
例えば、粒状風味材としては、レーズン、クランベリー、カレンズ、ブルーベリー、プルーン、イチジク、アプリコット、オレンジピール、イチゴ、キウイ、リンゴ、マンゴー、パイナップル、パパイヤ、バナナ、ニンジン、カボチャ、オニオン、サツマイモ、ジャガイモ等のドライフルーツ・ドライベジタブル、カシューナッツ、マカダミアナッツ、ピーナッツ、クルミ、ヘイゼルナッツ、ピスタチオ、クリ、ヒマワリの種、カボチャの種等の種実類、ビスケット、クラッカー、ワッフル、ウエハース等の粉砕物、ビスケットクラム、クッキークラム等の菓子粉砕物、小麦、オーツ麦、ライ麦、大麦、玄米、精米、トウモロコシ等の膨化物や焙煎物(例えばコーンフレーク、ブランフレーク、米フレーク)、チョコチップ、キャラメルチップ、マシュマロ、大豆パフ、ホエイパフなどが挙げられる。
【0044】
なお、粒状風味材としては、上記したタンパク質、食物繊維、糖質、脂質のいずれかの1棲又は2種以上の菓子成分を含有するものであることは勿論であるが、粒状風味材として典型的に長径1mm以上、より典型的には長径1.5mm以上、更により典型的には長径2mm以上の粒状のものについては、一般に水や油脂やその他の菓子材料を合わせても、独自の食感を呈するにとどまり、当該粒状風味材以外の菓子部分の生地物性や食感を与える素材ではないので、本発明の構成の特定に必要とされる「菓子成分」の配合には含まれないものとする。
【0045】
本発明により提供される菓子においては、その水分活性が0.70以下であることが好ましく、0.65以下であることがより好ましい。これによれば、常温流通が可能な菓子製品を提供することができる。
【0046】
本発明により提供される菓子においては、その形状としては、棒形状、直方体形状、板形状、球形状、不定形状など、種々の形状にすることができるが、例えば棒形状(バー製品)であれば、手に持って食べやすいので、好ましい。その大きさは、厚さが10~20mm、幅が20~35mm、長さが50~130mmとなるようにすることが好ましい。大きすぎると、保形性が悪くなったり、包装から取り出しにくくなったり、手に持って食べづらくなったりするので、好ましくない。
【0047】
以下では、本発明により提供される菓子を製造する方法について、更に具体的に説明する。ただし、本発明により提供される菓子を得る方法としては、以下に説明する具体的な方法に限定されるものではない。
【0048】
本発明により提供される菓子は、通常の当業者に公知の方法で、適宜、原料を混合して菓子生地を調製し、その菓子生地を所定形状に成形することにより得ることができる。すなわち、上記に説明した食品素材を用いて、上記に説明した菓子について規定される菓子成分の組成と同様の菓子生地を調製し、所定形状に成形すればよい。
【0049】
典型例を挙げると、菓子成分として主にタンパク質の源となるタンパク質素材、より詳細には、タンパク質を乾燥分当たり50質量%以上含有する素材を用いて、その配合量を菓子生地の全体量中に20質量%以上配合するなどである。タンパク質素材の配合量としては、場合によっては、23質量%以上98質量%以下の範囲であってもよく、25質量%以上95質量%以下の範囲であってもよい。また、タンパク質素材のタンパク質含有量としては、場合によっては、乾燥分当たり53質量%以上99質量%以下の範囲であってもよく、55質量%以上90質量%以下の範囲であってもよい。
【0050】
また、菓子成分として主に食物繊維の源となる食物繊維素材、より詳細には、食物繊維を乾燥分当たり50質量%以上含有する素材を用いて、その配合量を菓子生地の全体量中に2質量%以上60質量%以下配合するなどである。食物繊維素材の配合量としては、場合によっては、5質量%以上55質量%以下の範囲であってもよく、7質量%以上50質量%以下の範囲であってもよい。また、食物繊維素材の食物繊維含有量としては、場合によっては、乾燥分当たり53質量%以上99質量%以下の範囲であってもよく、55質量%以上90質量%以下の範囲であってもよい。
【0051】
ただし、上述したとおり、上記食物繊維素材としては、その素材に含まれる食物繊維に占める重合度3~9の難消化性オリゴ糖の割合が、食物繊維100質量部に対して60質量部以上であるものを用いるのが便宜であり、場合によっては、食物繊維100質量部に対して65質量部以上99質量部以下範囲であるものを用いるのが便宜であり、更に場合によっては、食物繊維100質量部に対して68質量部以上95質量部以下の範囲であるものを用いるのが便宜である。上記範囲を満たす食物繊維素材としては、例えば、帝人社製の「イヌリアLF92」等として市販されているフルクトオリゴ糖素材、日本食品化工社製の「フィットファイバー#80」等として市販されている難消化性グルカン素材、オラフティ社製の「オラフティHSI」、「オラフティP95」等として市販されているイヌリン素材、ダニスコジャパン社製の「ライテスウルトラ」、「ライテスIII」、「ライテスHF」、テイトアンドライル社製の「スターライトIII」、「スターライトエリート」等として市販されているポリデキストロース素材などが挙げられる。
【0052】
また、菓子成分として主に糖質の源となる糖質素材、より詳細には、糖質を乾燥分当たり50質量%以上含有する素材を用いて、その配合量を菓子生地の全体量中に40質量%以下配合するなどである。糖質素材の配合量としては、場合によっては、0.1質量%以上35質量%以下の範囲であってもよく、1質量%以上30質量%以下の範囲であってもよい。また、糖質素材の糖質含有量としては、場合によっては、乾燥分当たり55質量%以上99質量%以下の範囲であってもよく、58質量%以上90質量%以下の範囲であってもよい。
【0053】
また、菓子成分として主に脂質の源となる脂質素材、より詳細には、脂質を乾燥分当たり20質量%以上含有する素材を用いて、その配合量を菓子生地の全体量中に5質量%以上配合するなどである。脂質素材の配合量としては、場合によっては、7質量%以上78質量%以下の範囲であってもよく、10質量%以上75質量%以下の範囲であってもよく、10質量%以上30質量%の範囲であってもよい。また、脂質素材の脂質含有量としては、場合によっては、乾燥分当たり25質量%以上99質量%以下の範囲であってもよく、28質量%以上90質量%以下の範囲であってもよい。
【0054】
菓子生地には、適宜、水を配合することにより、原料の混合状態や生地物性を調整することができる。
【0055】
なお、菓子生地へ配合する他の素材、菓子生地組成、水分活性、形状等の態様については、上記菓子について説明した態様と同様であってよい。
【0056】
菓子生地の成形は、例えば、ロータリーモールドで一定の厚さに成形する方法や、デポジッターやワイヤーカットにより分注する方法、また、必要に応じて、ロールで展延したり、押し出したりして成形する方法等を採用しもよい。なかでも、本発明における菓子生地は、所定の径ないし口径を有する吐出口から菓子生地を押し出して成形する押出成形にとって、好適な生地物性である。
【0057】
菓子生地は、所定形状に成形した後、焼成してもよい。あるいは、他の菓子生地を接合したうえ所定形状に成形した後、焼成してもよい。その焼成の方法に特に制限はなく、例えば、オーブン、ガスバーナー、電子レンジ、電気ヒーター(トースター)等の焼成装置を用いることができ、所定温度で所定時間焼成することにより、焼菓子(ないし焼複合菓子)と成すことができる。焼成条件としては、100~800℃、10~300秒などであればよい。
【0058】
一方、本発明の別の観点は、本発明により提供される菓子を利用した複合菓子にかかるものである。すなわち、上記に説明した菓子に他の菓子を接合してなる複合菓子を提供するものである。他の菓子としては、例えば、チョコレート、クッキー、ビスケット、クリーム、ジャム等が挙げられる。複合菓子は、上記した菓子を他の菓子と接合したり、上記した菓子生地を、他の菓子と接合したうえ所定形状に成形したり、上記した菓子生地を、他の菓子の菓子生地と接合したうえ所定形状に成形したり、上記した菓子生地を、他の菓子と接合したうえ所定形状に成形したりすることにより得られたものであってもよい。また、焼成されていてもよい。成形や焼成の態様については、菓子について上述したのと同様の態様を採用してもよい。
【0059】
例えば、本発明の限定されない任意の態様においては、上記菓子と、その一部又は全部を覆うチョコレートを含む複合菓子である。
【0060】
本発明に係る複合菓子によれば、菓子とチョコレートが相まって、よりバラエティーに富んだ菓子製品を提供することができる。また、その外層をなすチョコレートの少なくとも表層は、所望に応じて、焼成により、手で持ったときにべとつかない程度に熱変性させることができる。これによれば、例えば棒形状(バー製品)であれば、手に持って食べやすい。
【0061】
上記外層をなすチョコレートとしては、適宜、所望する菓子の風味や食感、あるいは焼成の処理に適合した性質を有するものを使用すればよく、特に制限はない。また、適宜含気して用いてもよい。一般に含気により、成形したチョコレートを加熱する際の焼ダレが抑制される傾向がある。また、例えばナッツ類の粉砕物、果汁パウダー、果物凍結乾燥チップ、コーヒーチップ、キャラメル、抹茶、カカオニブ、膨化型スナック食品、ビスケットチップ、キャンディーチップ、チョコレートチップ、ドライフルーツ、マシュマロなどの具材を併せて、含有させてもよい。
【0062】
上記菓子と外層をなすチョコレートとの接合方法には、特に制限はなく、例えば、焼き上げた菓子にエンローバーを用いてチョコレート生地でコーティングする方法であってもよく、あるいは、菓子の生地の状態において、押出成形により、押出成形装置のノズル部分の外層側からはチョコレート生地を、内層側からは菓子生地を、それぞれが接合するように押し出し、所定形状になるように切断する方法や、モールド成形により、モールド(型)内に、チョコレート生地によってシェル、菓子生地によってセンター、チョコレート生地によってボトムを、順次作製する方法や、被覆成形により、所定形状にした菓子生地をエンローバーを用いてチョコレート生地でコーティングする方法や、ワンショットデポジターを用いて、外側ノズルからチョコレート生地の押出しを開始した後、内側ノズルから菓子生地の押出しを行い、内側ノズルからの押出しを終了した後、外側ノズルからの押出しを終了させる方法、等を適宜採用することができる。
【0063】
上記菓子と外層をなすチョコレートの質量比(焼成後)としては、典型的には、例えば25:75~65:35などであり、場合によっては、例えば35:65~55:45などである。
【0064】
そして、必要に応じて、上記のように接合した状態で、上述した菓子の製造の場合と同様の焼成装置にて焼成を施すことにより、その加熱により外層をなすチョコレートの少なくとも表層を、例えば、手で持ったときにべとつかない程度に熱変性させることができる。焼成条件としては、100~800℃、10~300秒などであればよい。
【0065】
上記外層をなすチョコレートには、食物繊維を含有せしめてもよい。これによれば、栄養素として、上記菓子の蛋白分と共に食物繊維も一緒に摂取することができる。食物繊維としては、上記菓子同様に食用として使用可能であればよく、特に制限はない。例えば、イヌリン、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、イソマルトデキストリン等の水溶性食物繊維や、セルロース、レジスタントスターチ等の不溶性食物繊維などが挙げられる。このうちイヌリンが好ましい。イヌリンによれば、更に、焼成する際の焼きダレを抑制する効果にも優れている。食物繊維の含有量は、食物繊維の種類や企図する一食分の摂取量に応じて適宜設定すればよいが、典型的には上記外層をなすチョコレート中に1質量%以上60質量%以下などである。ただし、上記範囲を超えると成形不良を招く可能性がある。食物繊維の含有量は、必要に応じて、その含有量が10質量%以上50質量%以下の範囲となってもよく、20質量%以上40質量%以下の範囲となってもよい。
【0066】
なお、本明細書における「タンパク質の含有量」は、食品分析の周知の分析方法である、例えば、ケルダール法等で測定することができる。
【0067】
また、本明細書における「脂質の含有量」は、食品分析の周知の分析方法である、例えば、塩酸分解後ソックスレー抽出法等で測定することができる。
【0068】
また、本明細書における「水の含有量」は、食品分析の周知の分析方法で測定することができ、例えば、常圧加熱乾燥助剤法(105℃、5時間)等で測定することができる。
【0069】
また、本明細書における「水分活性」は、食品分析の周知の分析方法で測定することができ、例えば、重量平衡法等で測定することができる。
【0070】
また、本明細書における「食物繊維の含有量」は、食品分析の周知の分析方法で測定することができ、例えば、CODEX分析法AOAC Method2001.03等で測定することができる。
【0071】
また、本明細書における「灰分の含有量」は、食品分析の周知の分析方法で測定することができ、例えば、直接灰化法等で測定することができる。
【0072】
また、本明細書における「糖質の含有量」は、食品分析の周知の方法で算定することができ、例えば、菓子や菓子生地の総量から、上記した測定方法により求められた、水分、灰分、脂質含量、タンパク質含量、食物繊維含量や、その他の糖質以外の成分量を控除して求めることができる。
【0073】
また、本明細書における「食物繊維に占める重合度3~9の難消化性オリゴ糖の割合」は、通常当業者に周知の手段によって測定することができる。例えば、規定された標準の分子量マーカーと対比させた液体クロマトグラム法等により測定することが可能である。ただし、食物繊維全量中における特定の重合度の範囲に入るものの相対量を求めるには、例えば、以下のような測定に試料を供することが好ましい。
【0074】
(重合度の測定)
サンプルを水溶液に調整したのちにゲル濾過カラム(サイズ排除クロマトグラフィー)により分離し、示差屈折率検出器(RI)及び質量分析計(MS)にて検出する。分子量マーカーあるいはMSで抽出したイオンを検出し、溶出時間と分子量との相関式すなわち校正曲線を得る。溶出時間から計算される分子量とその時間における検出量から、重合度を求めることができる。
【0075】
食物繊維全量中における特定の重合度の範囲に入るものの相対量を求めるには、例えば、重合度3~9に入るものの相対量を求める場合を例に挙げると、上記の校正曲線から重合度3では分子量504、重合度9では分子量1476の試料の溶出時間に相当する検出位置を特定し、試料中についての検出曲線下面積のうち、重合度3もしくは重合度9の試料の検出位置の範囲にわたる面積の割合を算出することにより、重合度3~9に入るものの相対量を求めることができる。
【0076】
具体的な測定条件は、例えば、以下の通りである。
・ゲル濾過カラム(サイズ排除クロマトグラフィー):TSKgel G2500PWXL、φ7.8mm×300mm(東ソー株式会社)
・移動相:水、アセトニトリル(99.1/0.1)
・流速:0.5mL/min
・示差屈折率検出器(RI):Agilent1260-6890(Agilent)
・質量分析計(MS):Acquity Ultra Perfomance LC(Waters)
・測定モード:ESI-(Scan)
【0077】
また、本明細書における「食物繊維の平均分子量」は、通常当業者に周知の手段によって測定することができる。例えば、規定された標準の分子量マーカーと対比させた液体クロマトグラム法等により測定することが可能である。ただし、水溶性食物繊維全量中における特定の分子量範囲に入るものの相対量を求めるには、例えば、以下のような測定に試料を供することが好ましい。
【0078】
(平均分子量の測定)
サンプルを水溶液に調整したのちにゲル濾過カラム(サイズ排除クロマトグラフィー)により分離し、示差屈折率検出器(RI)及び質量分析計(MS)にて溶出された糖類を検出する。分子量マーカーあるいはMSで抽出したイオンを検出し、溶出時間と分子量との相関式すなわち校正曲線を得る。溶出時間から計算される分子量とその時間における糖類の検出量から、平均分子量(重量平均分子量:Mw)を求めることができる。
【0079】
一般的に平均分子量(重量平均分子量:Mw)は以下の式にて算出される。
Mw = Σ(Wi×Mi)/W = Σ(Hi×Mi)/Σ(Hi)
W: 高分子の総重量
Wi:i番目の高分子の重量
Mi:i番目の溶出時間における分子量
Ni:分子量Miの個数
Hi:i番目の溶出時間における高さ
【実施例
【0080】
以下実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0081】
表1には、以下に説明する試験例1~3で使用した食物繊維素材について、水分、糖質、及び食物繊維の含有量、並びに食物繊維の短鎖割合と重量平均分子量(Mw)の特性をまとめて示す。
【0082】
【表1】
【0083】
<試験例1>
菓子に配合するタンパク質の含有量が、生地の成形性や焼成後の物性にどのように影響を与えるかについて調べた。そのために表2に示す原料配合により、調製例1-1~8の菓子を調製した。
【0084】
具体的には、原料をミキサーに投入して混合し、得られた生地の成形性について、以下のようにして評価した。
【0085】
(成形性)
◎ 押出成形機による成形が可能
〇 一つの生地としてまとまる
△ ある程度塊となる
× 全くまとまらない、そぼろ状
【0086】
(硬度の測定 その1)
200mLのアイス用プラカップに生地を詰め、デジタルフォースゲージ(「SHIMPO FGS-50E-L」、日本電産シンポ社製)を使用して、円柱(直径10mm)のプランジャーを侵入速度70mm/minで侵入深度35mmまで侵入させたときの最大応力(単位:kgf)を測定した。
【0087】
また、ある程度まとまりが得られる生地について、型に入れて幅20mm×長さ20mm×高さ7mmに成形し、コンベクションオーブンにより180℃で30秒間焼成した。焼成後の物性について、以下のようにして評価した。
【0088】
(硬度の測定 その2)
テクスチャーアナライザー(「TA.XTplus」、英弘精機社製)を使用して、図1に略形状を示すようにプランジャー柄1及びプランジャー先端2を有するクサビ形のプランジャー(縦縁部2a:8mm×幅縁部2b:80mm、先端頂部2c:60°)を侵入速度1mm/secで侵入深度5mmまで侵入させたときの最大応力(単位:gf)を測定した。
【0089】
【表2】
【0090】
その結果、タンパク質の含有量を増加させるにつれて、生地のまとまりが悪くなって、成形性を確保できなかった。また、焼成後の物性が硬くなる傾向があった。
【0091】
<試験例2>
表3に示す原料配合とした以外は試験例1と同様にして、調製例2-1~8の菓子を調製し、菓子に配合するタンパク質の含有量が、生地の成形性や焼成後の物性にどのように影響を与えるかについて調べた。
【0092】
【表3】
【0093】
その結果、試験例2の配合では、生地が比較的柔らかくなり、押出成形機への適性はやや劣るものの、タンパク質の含有量を22質量%、27質量%、31質量%、35質量%、44質量%と増加させても、一つの生地としてまとまることができる程度の成形性が得られた(調製例2-1~5)。また、フルクトオリゴ糖素材やソルビトールから持ち込まれる水分を適度に調整することにより、押出成形機に適性のある生地となった(調製例2-6~8)。そして、焼成後には、硬すぎずない、柔らかい物性の菓子が得られた。なお、生地を焼成した調製例について、水分活性の値は0.50~0.70の範囲であった。
【0094】
<試験例3>
試験例1、2の結果により、菓子の生地の成形性や焼成後の物性が、食物繊維の種類により大きく影響を受けることが考えられた。そこで、上記した表1に示す各種の食物繊維を使用し、表4に示す原料配合とした以外は試験例1と同様にして、調製例3-1~7の菓子を調製し、菓子に配合する食物繊維の種類が、生地の成形性や焼成後の物性にどのように影響を与えるかについて調べた。
【0095】
【表4】
【0096】
その結果、食物繊維中の短鎖割合が60%以上である調製例3-1~5では、押出成形機で成形できる適性を有する生地が得られ、焼成後も程よい硬さであった。なお、生地を焼成した調製例について、水分活性の値は0.50~0.70の範囲であった。これに対して、食物繊維中の短鎖割合が60%未満である調製例3-6~8では、生地のまとまりが悪くなり、成形ができなった。
【0097】
<試験例4>
表5に示す原料配合とした以外は試験例1と同様にして、調製例4-1、2の菓子を調製し、生地の成形性や焼成後の物性について調べた。
【0098】
【表5】
【0099】
その結果、タンパク質素材として大豆タンパクと乳タンパクを併用した場合にも、食物繊維中の短鎖割合が60%以上である調製例4-1では、押出成形機で成形できる適性を有する生地が得られた。また、焼成後にも、硬すぎずない、柔らかい物性の菓子が得られた。これに対して、食物繊維中の短鎖割合が60%未満である調製例4-2では、生地がそぼろ状で、全くまとまらなかった。
【0100】
[製造例1]
調製例3-1で調製した同じ菓子生地を用いて、押出成形機により、口径20×7mmのノズルを有する吐出口から200cm/秒の速さで押し出し、コンベア上に延べたところをカットすることにより、幅20mm×長さ20mm×高さ7mmの形状に成形して、菓子を得た。
【0101】
[製造例2]
表6に示す各原材料を配合し、常法に従って混合して、リファイニングを行った後、コンチングを行って、チョコレート原液を調製した。
【0102】
【表6】
【0103】
得られたチョコレート原液を使用して、表7に示す配合で、更にココアパウダーと食物繊維素材を配合し、常法に従って混合して、チョコレート生地を得た。
【0104】
【表7】
【0105】
製造例1で調製した菓子の100質量部に対して、上記チョコレート生地の100質量部をコーティングし、得られた複合成形物をコンベクションオーブンにより200℃で30秒間焼成した。
【0106】
その結果、チョコレートからなる外層には、焼成の際の焼きダレによる目立った変形がなく、手指を汚さずに手に持って食べることができる、菓子を得ることができた。
【符号の説明】
【0107】
1 プランジャー柄
2 プランジャー先端
2a 縦縁部
2b 幅縁部
2c 先端頂部
図1