(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】補強スリーブ及び光ファイバ接続部の補強構造
(51)【国際特許分類】
G02B 6/255 20060101AFI20241111BHJP
G02B 6/44 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
G02B6/255
G02B6/44 371
G02B6/44 381
(21)【出願番号】P 2021006703
(22)【出願日】2021-01-19
【審査請求日】2023-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】秋山 知広
(72)【発明者】
【氏名】田邉 明夫
【審査官】野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-022608(JP,U)
【文献】特開2008-242275(JP,A)
【文献】実開昭62-012102(JP,U)
【文献】実開平05-055106(JP,U)
【文献】特開2005-024921(JP,A)
【文献】米国特許第06012856(US,A)
【文献】特開2002-243986(JP,A)
【文献】特開2018-045231(JP,A)
【文献】国際公開第2019/021998(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第103941369(CN,A)
【文献】実開昭59-063307(JP,U)
【文献】特開2014-123006(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/24
6/255
6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列された複数の光ファイバ心線の接続部を一括して補強する補強スリーブであって、
熱収縮チューブと、
前記熱収縮チューブに挿入される熱溶融部材及び抗張力体と、
を具備し、
前記抗張力体の長手方向の少なくとも一部において、前記抗張力体の前記熱溶融部材側の表面に光ファイバ分散部が形成され、
前記光ファイバ分散部は、前記抗張力体の長手方向に垂直な断面において、幅方向の端部側に行くにつれて、前記熱溶融部材から離れる方向の直線状の傾斜部によって形成され、前記傾斜部は、少なくとも一部に傾斜角度の変化する角度変化部を有
し、
前記抗張力体の幅方向の略中央部には、上方に向けて突出する凸部が形成されることを特徴とする補強スリーブ。
【請求項2】
並列された複数の光ファイバ心線の接続部を一括して補強する補強スリーブであって、
熱収縮チューブと、
前記熱収縮チューブに挿入される熱溶融部材及び抗張力体と、
を具備し、
前記抗張力体の長手方向の少なくとも一部において、前記抗張力体の前記熱溶融部材側の表面に光ファイバ分散部が形成され、
前記光ファイバ分散部は、前記抗張力体の長手方向に垂直な断面において、幅方向の端部側に行くにつれて、前記熱溶融部材から離れる方向の傾斜部によって形成され、前記傾斜部は、少なくとも一部に傾斜角度の変化する角度変化部を有し、
前記抗張力体の前記熱溶融部材側の表面の少なくとも一部に、
複数の溝が形成されることを特徴とする補強スリーブ。
【請求項3】
並列された複数の光ファイバ心線の接続部を一括して補強する補強スリーブであって、
熱収縮チューブと、
前記熱収縮チューブに挿入される熱溶融部材及び抗張力体と、
を具備し、
前記抗張力体の長手方向の少なくとも一部において、前記抗張力体の前記熱溶融部材側の表面に光ファイバ分散部が形成され、
前記光ファイバ分散部は、前記抗張力体の長手方向に垂直な断面において、幅方向の端部側に行くにつれて、前記熱溶融部材から離れる方向の傾斜部によって形成され、前記傾斜部は、少なくとも一部に傾斜角度の変化する角度変化部を有し、
前記抗張力体の長手方向の略中央部の所定の範囲には、前記光ファイバ分散部が形成されず、前記光ファイバ分散部における前記抗張力体の前記熱溶融部材側の高さ位置が、前記抗張力体の長手方向の略中央部の所定の範囲における前記抗張力体の前記熱溶融部材側の高さ位置よりも高いことを特徴とする補強スリーブ。
【請求項4】
並列された複数の光ファイバ心線の接続部を一括して補強する補強スリーブであって、
熱収縮チューブと、
前記熱収縮チューブに挿入される熱溶融部材及び抗張力体と、
を具備し、
前記抗張力体の長手方向の少なくとも一部において、前記抗張力体の前記熱溶融部材側の表面に光ファイバ分散部が形成され、
前記光ファイバ分散部は、前記抗張力体の長手方向に垂直な断面において、幅方向の端部側に行くにつれて、前記熱溶融部材から離れる方向の直線状の傾斜部によって形成され、前記傾斜部は、少なくとも一部に傾斜角度の変化する角度変化部を有し、
前記抗張力体は板状であり、
前記熱収縮チューブの収縮力によって、前記熱溶融部材側に突形状となるように弾性変形可能であることを特徴とする補強スリーブ。
【請求項5】
前記抗張力体は、板状の第1の抗張力体と、前記第1の抗張力体の、前記熱溶融部材とは逆側に配置された第2の抗張力体とからなり、前記第2の抗張力体は、前記抗張力体側が前記熱溶融部材側に突形状であることを特徴とする請求項
4に記載の補強スリーブ。
【請求項6】
請求項1から請求項
5のいずれかに記載の補強スリーブを用いた、光ファイバ接続部の補強構造であって、
並列された複数の光ファイバ心線が長手方向に間欠的に接着された光ファイバリボン線同士の接続部が、前記熱溶融部材によって覆われることを特徴とする光ファイバ接続部の補強構造。
【請求項7】
前記光ファイバリボン線を構成する前記複数の光ファイバ心線の心数が、12心以上であることを特徴とする請求項
6記載の光ファイバ接続部の補強構造。
【請求項8】
前記複数の光ファイバ心線同士のピッチが200μm以下であることを特徴とする請求項
6又は請求項
7記載の光ファイバ接続部の補強構造。
【請求項9】
前記光ファイバ心線のガラスファイバの外径が110μm以下であることを特徴とする請求項
6から請求項
8のいずれかに記載の光ファイバ接続部の補強構造。
【請求項10】
前記光ファイバ心線の外径が200μm以下であることを特徴とする請求項
6から請求項
9のいずれかに記載の光ファイバ接続部の補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補強スリーブ、及びこれを用いた光ファイバ接続部の補強構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば光ファイバ心線同士を融着接続する際には、融着接続部に補強スリーブが設けられて補強される。
【0003】
このような、補強スリーブは各種考案されており、例えば、ホットメルト接着剤チューブと抗張力体とが熱収縮チューブに挿入された補強スリーブがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、多量のデータを高速で伝送するための光ファイバとして、ケーブルへの収納や作業の簡易化のため、複数本の光ファイバ心線が並列に配置されて接着された光ファイバテープ心線が用いられている。また、並列した光ファイバを全長にわたって樹脂で固着された光ファイバテープ心線の他、並列した複数の光ファイバ心線同士が長手方向に間欠的に接着された光ファイバリボン線がある。光ファイバ心線同士の間欠的な接着は、集線密度の向上や曲げによる伝送ロスの低減、単心化をしやすくするなどの特徴を持つ。以下、光ファイバテープ心線及び光ファイバリボン線を合わせて、単に光ファイバテープ心線等とする。
【0006】
図11(a)~
図11(c)は、補強スリーブを用いて、光ファイバテープ心線等の接続部を補強する工程について示す図である。まず、
図11(a)に示すように、互いに対向して配置されるそれぞれの光ファイバ心線101同士を突き合せて、電極103からの放電によって各光ファイバ心線101同士を融着する。この際、補強スリーブ100は、一方の光ファイバ心線101側に退避させておく。
【0007】
次に、
図11(b)に示すように、補強スリーブ100を光ファイバ心線101同士の接続部に移動させる(図中矢印H)。その後、
図11(c)に示すように、補強スリーブ100を加熱して収縮させて、補強スリーブ100と複数の光ファイバ心線101とを一体化する。以上により、複数の光ファイバ心線101同士の接続部が補強される。
【0008】
図12(a)は、
図11(b)の状態の断面図である。前述したように、補強スリーブ100は、熱溶融部材107と抗張力体109とが熱収縮チューブ105に挿入されて構成される。熱溶融部材107は筒状であり、並列された光ファイバ心線101の接続部は、熱溶融部材107を貫通するように設けられる。なお、熱溶融部材107を貫通する光ファイバ心線101の外被は、接続前に除去されている。
【0009】
図12(b)は、補強スリーブ100を加熱した際の構造を示す理想上の概念図である。熱収縮チューブ105は、加熱によって収縮する。また、熱溶融部材107は熱によって軟化し、収縮後の熱収縮チューブ105の内部の隙間を埋め、複数の光ファイバ心線101及び抗張力体109と一体化する。
【0010】
ここで、抗張力体109の上面(光ファイバ心線101側)には、通常、平坦面が形成される。複数の光ファイバ心線101は、抗張力体109の上面の平坦面に沿って整列し、抗張力体109及び熱溶融部材107と一体化することが望まれる。
【0011】
しかし、実際には、
図12(c)に示すように、熱収縮チューブ105の収縮の際に、熱溶融部材107が周囲から力を受け(図中矢印I)、複数の光ファイバ心線101が側圧を受ける。前述したように、光ファイバ心線101は、抗張力体109の上面の平坦部に沿って、まっすぐに配列することが望まれるが、特に幅方向からの側圧によって、光ファイバ心線101の配列が乱れる。例えば、一部の光ファイバ心線101は、抗張力体109から離れる方向に移動し、中央付近に集まろうとする。
【0012】
このような傾向は、特に、光ファイバ心線101間の距離(ピッチ)が狭くなるほど、また、光ファイバ心線数が増えるほど強くなる。また、光ファイバ素線の径が細くなると剛性が小さくなるため、この傾向が強くなる。また、複数の光ファイバ心線同士が長手方向に間欠的に接着された間欠接着型の光ファイバリボン線の場合には、さらにこの傾向が強くなる。
【0013】
このように、光ファイバ心線101の配列が乱れると、一部の光ファイバ心線101の伝送損失が増加する恐れがある。このため、熱収縮チューブ105の収縮時に、各光ファイバ心線101の配列が乱れずに、常に一定の形態で一体化されることが望まれる。
【0014】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、光ファイバテープ心線等の接続部を効率良く補強することが可能な補強スリーブ等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前述した目的を達成するために、第1の発明は、並列された複数の光ファイバ心線の接続部を一括して補強する補強スリーブであって、熱収縮チューブと、前記熱収縮チューブに挿入される熱溶融部材及び抗張力体と、を具備し、前記抗張力体の長手方向の少なくとも一部において、前記抗張力体の前記熱溶融部材側の表面に光ファイバ分散部が形成され、前記光ファイバ分散部は、前記抗張力体の長手方向に垂直な断面において、幅方向の端部側に行くにつれて、前記熱溶融部材から離れる方向の直線状の傾斜部によって形成され、前記傾斜部は、少なくとも一部に傾斜角度の変化する角度変化部を有し、前記抗張力体の幅方向の略中央部には、上方に向けて突出する凸部が形成されることを特徴とする補強スリーブである。
【0019】
第2の発明は、並列された複数の光ファイバ心線の接続部を一括して補強する補強スリーブであって、熱収縮チューブと、前記熱収縮チューブに挿入される熱溶融部材及び抗張力体と、を具備し、前記抗張力体の長手方向の少なくとも一部において、前記抗張力体の前記熱溶融部材側の表面に光ファイバ分散部が形成され、前記光ファイバ分散部は、前記抗張力体の長手方向に垂直な断面において、幅方向の端部側に行くにつれて、前記熱溶融部材から離れる方向の傾斜部によって形成され、前記傾斜部は、少なくとも一部に傾斜角度の変化する角度変化部を有し、前記抗張力体の前記熱溶融部材側の表面の少なくとも一部に、複数の溝が形成されることを特徴とする補強スリーブである。
【0020】
第3の発明は、並列された複数の光ファイバ心線の接続部を一括して補強する補強スリーブであって、熱収縮チューブと、前記熱収縮チューブに挿入される熱溶融部材及び抗張力体と、を具備し、前記抗張力体の長手方向の少なくとも一部において、前記抗張力体の前記熱溶融部材側の表面に光ファイバ分散部が形成され、前記光ファイバ分散部は、前記抗張力体の長手方向に垂直な断面において、幅方向の端部側に行くにつれて、前記熱溶融部材から離れる方向の傾斜部によって形成され、前記傾斜部は、少なくとも一部に傾斜角度の変化する角度変化部を有し、前記抗張力体の長手方向の略中央部の所定の範囲には、前記光ファイバ分散部が形成されず、前記光ファイバ分散部における前記抗張力体の前記熱溶融部材側の高さ位置が、前記抗張力体の長手方向の略中央部の所定の範囲における前記抗張力体の前記熱溶融部材側の高さ位置よりも高いことを特徴とする補強スリーブである。
【0021】
前記抗張力体は板状であり、前記熱収縮チューブの収縮力によって、前記熱溶融部材側に突形状となるように弾性変形可能であってもよい。
【0022】
前記抗張力体は、板状の第1の抗張力体と、前記第1の抗張力体の、前記熱溶融部材とは逆側に配置された第2の抗張力体とからなり、前記第2の抗張力体は、前記熱溶融部材側に突形状であってもよい。
【0023】
第1から第3の発明によれば、抗張力体の長手方向に垂直な断面において、抗張力体の熱溶融部材側の表面に光ファイバ分散部が形成されるため、熱溶融部材が溶融する際に、光ファイバを幅方向に分散させることができるため、光ファイバ心線の配列乱れを抑制することができる。
【0024】
この際、傾斜部の少なくとも一部に傾斜角度が変化する角度変化部を形成することで、所定の範囲ごとに適切な傾斜角度を設定することができ、幅方向への分散力を制御しやすい。
【0025】
さらに、少なくとも一部に直線状の傾斜部を形成することで、幅方向への光ファイバ心線の分散力を容易に制御することができる。例えば、曲面のみで構成すると、幅方向の端部の傾斜が大きくなりすぎる。また、特に上下につぶれた偏平形状の曲面では、上面のかなりの範囲において、わずかな傾斜面しか形成することができない。これに対し、所定の範囲に直線状の傾斜部を形成することで、所望の範囲に、略一定の傾斜を形成することができ、幅方向への分散力を制御しやすい。この結果、それぞれの光ファイバ心線の伝送損失の増加やばらつきを抑制可能である。
【0026】
また、抗張力体の幅方向の略中央部に平坦部を形成することで、幅方向の中央部近傍の光ファイバ心線には分散力を発揮させずに光ファイバ心線の位置を安定して配置することができる。また、幅方向の両側の光ファイバ心線を両端側に向けて分散させることで、両側の光ファイバ心線から、中央部近傍の光ファイバへの側圧を抑制することができる。
【0027】
逆に、抗張力体の幅方向の略中央部に、上方に向けて突出する凸部を形成することで、抗張力体の略中央部において、光ファイバ心線を幅方向に分離して配置することができる。
【0028】
また、抗張力体の熱溶融部材側の表面の少なくとも一部に、溝を形成することで、溝によって光ファイバ心線を分散配置することができる。
【0029】
また、抗張力体の長手方向の略中央部の所定の範囲の高さを、長手方向の端部側の高さよりも低くすることで、樹脂が剥離され、光ファイバ心線のガラスファイバが露出した部分が光ファイバ分散部と接触することを抑制することができる。このため、ガラスファイバの損傷等を抑制することができる。また、抗張力体の長手方向の端部側に光ファイバ分散部を形成するため、この部位において、光ファイバの配列乱れを抑制することができる。
【0030】
また、抗張力体を板状とし、熱収縮チューブの収縮力によって、抗張力体を熱溶融部材側に突形状となるように弾性変形させることで、単純な形状の抗張力体で、同様の光ファイバ分散部を容易に形成することができる。
【0031】
この際、板状の第1の抗張力体の下部に突形状の第2の抗張力体を配置することで、スペーサに沿って抗張力体を変形させることができる。このため、抗張力体の形態を安定させることができる。
【0032】
第4の発明は、第1から第3の発明にかかる補強スリーブを用いた、並列された複数の光ファイバ心線が長手方向に間欠的に接着された光ファイバリボン線同士の接続部が、前記熱溶融部材によって覆われることを特徴とする光ファイバ接続部の補強構造である。
【0033】
前記光ファイバリボン線を構成する前記複数の光ファイバ心線の心数が、12心以上であることが望ましい。
【0034】
前記複数の光ファイバ心線同士のピッチが200μm以下であることが望ましい。
【0035】
前記光ファイバ心線のガラスファイバの外径が110μm以下であることが望ましい。
【0036】
前記光ファイバ心線の外径が200μm以下であることが望ましい。
【0037】
第4の発明によれば、光ファイバリボン線を構成する複数の光ファイバ心線が、抗張力体の光ファイバ分散部に沿って配置されるため、光ファイバ心線毎の伝送損失ばらつきを抑制することができる。
【0038】
特に、上記の効果は、光ファイバリボン線を構成する前記複数の光ファイバ心線の心数が12心以上の場合に顕著である。また、上記の効果は、光ファイバ心線同士のピッチが200μm以下である場合に顕著である。また、上記の効果は、前記光ファイバ心線のガラスファイバの外径が110μm以下である場合に顕著である。また、上記の効果は、前記光ファイバ心線の外径が200μm以下である場合に顕著である。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、光ファイバテープ心線等の接続部を効率良く補強することが可能な補強スリーブ等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】(a)は、補強スリーブ1を示す側面図、(b)は、(a)のA-A線断面図。
【
図2】補強スリーブ1を用いた光ファイバ心線11同士の接続部の補強工程を示す図で、(a)は、収縮前の断面図、(b)は、収縮後の断面図。
【
図3】(a)は、光ファイバリボン線12を示す図、(b)は、光ファイバリボン線12同士を突き合せた状態を示す図。
【
図4】(a)は、補強スリーブ1aを示す断面図、(b)は補強スリーブ1bを示す断面図。
【
図6】(a)は、補強スリーブ1cを示す断面図、(b)は、補強スリーブ1dを示す断面図。
【
図7】(a)は、補強スリーブ1cの収縮後の断面図。
【
図8】(a)は、抗張力体9cを示す側面図、(b)は、(a)のC-C線断面図、(c)は、(a)のD-D線断面図。
【
図9】補強スリーブ1eを用いた光ファイバ心線11同士の接続部の補強工程を示す図で、(a)は、収縮前の断面図、(b)は、収縮後の断面図。
【
図10】補強スリーブ1fを用いた光ファイバ心線11同士の接続部の補強工程を示す図で、(a)は、収縮前の断面図、(b)は、収縮後の断面図。
【
図11】補強スリーブ100を用いた光ファイバ心線101の接続工程を示す図。
【
図12】補強スリーブ100を用いた光ファイバ心線101同士の接続部の補強工程を示す図で、(a)は収縮前の断面図、(b)は収縮後の理想の断面概念図、(c)は、収縮後の実際の断面概念図。
【発明を実施するための形態】
【0041】
(第1実施形態)
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1(a)は、補強スリーブ1の側面図であり、
図1(b)は、
図1(a)のA-A線断面図である。補強スリーブ1は、並列された複数の光ファイバ心線の接続部を一括して補強する部材であり、熱収縮チューブ5、熱溶融部材7、抗張力体9等からなる。
【0042】
熱収縮チューブ5は、断面が略円形の筒状の部材である。熱収縮チューブ5は、例えばポリエチレン系の樹脂製である。
【0043】
熱溶融部材7は、断面が略円形又は楕円形の筒状である。熱溶融部材7は、例えばエチレン酢酸ビニル系の樹脂製である。熱溶融部材7は、熱収縮チューブ5の熱収縮温度よりも低温で溶融することが望ましい。
【0044】
抗張力体9は、棒状の部材である。抗張力体9は、例えば、鋼製、カーボン製、ガラス製、セラミック製等である。抗張力体9及び熱溶融部材7は、熱収縮チューブ5に挿入される。なお、抗張力体9及び熱溶融部材7の脱落防止のため、熱収縮チューブ5の一部にかしめ部3が形成される。
【0045】
ここで、抗張力体9が断面において傾いた場合、抗張力体9が熱収縮チューブ5の位置に対してずれてしまい、バランスが崩れてしまう場合がある。この場合、光ファイバ心線を抗張力体9に不均等な力で押さえつけることになり光ファイバ心線の整列性が悪化する場合がある。これに対し、かしめ部3は、抗張力体9の傾きを防ぎ、このように抗張力体9と光ファイバ心線との配置を維持するために効果的である。
【0046】
抗張力体9の上方に熱溶融部材7が配置される。また、補強スリーブ1の長手方向に垂直な断面において、抗張力体9の熱溶融部材7側の表面(図中上方)に光ファイバ分散部13が形成される。なお、詳細は後述するが、光ファイバ分散部13は、抗張力体9の長手方向の全長にわたって形成されてもよいが、少なくとも一部に形成されてもよい。例えば、抗張力体9の長手方向の端部近傍にのみ光ファイバ分散部13を形成し、長手方向の中央部近傍には、光ファイバ分散部13を形成しなくてもよい。
【0047】
光ファイバ分散部13は、抗張力体9の長手方向に垂直な断面において、幅方向の端部側に行くにつれて、熱溶融部材7から離れる方向の直線状の傾斜部によって形成される。また、抗張力体9の幅方向の略中央部には平坦部10が形成され、平坦部10の両側には、直線状の傾斜部である光ファイバ分散部13が形成される。
【0048】
なお、図示したように、光ファイバ分散部13は、複数の角度で複数段の直線状の傾斜部を形成することが望ましい。例えば、平坦部10に対する傾斜角度を、幅方向の端部側に行くにつれて、大きくなるように複数段に形成してもよい。すなわち、傾斜部は、少なくとも一部に傾斜角度の変化する角度変化部13aを有することが望ましい。
【0049】
次に、補強スリーブ1を用いた光ファイバ接続部の補強方法について説明する。
図2(a)~
図2(b)は、光ファイバテープ心線等を構成する光ファイバ心線11同士の接続部の補強工程を説明する図である。まず、前述した
図11(a)~
図11(c)で示したのと同様に、光ファイバ心線11の先端部の所定長さの外被を除去し、先端同士を突き合わせて、各光ファイバ心線同士を融着させる。この際、一方の側の複数の光ファイバ心線11を、補強スリーブ1の熱溶融部材7に挿通し、補強スリーブ1は、一方の光ファイバ心線11側に退避させておく。
【0050】
次に、
図2(a)に示すように、補強スリーブ1を複数の光ファイバ心線11同士の接続部を覆うように移動させる。次に、熱収縮チューブ5と熱溶融部材7とを加熱することで、熱収縮チューブ5を収縮させるとともに熱溶融部材7を溶融させる。
【0051】
図2(b)は、熱収縮チューブ5が収縮し、熱溶融部材7が溶融した状態を示す断面図である。熱溶融部材7は、溶融すると抗張力体9に沿って下方に流れる。この際、抗張力体9の光ファイバ心線11側に、直線状の傾斜部を形成することで、光ファイバ心線11も熱溶融部材7とともに抗張力体9方向に移動し、抗張力体9の傾斜に沿って光ファイバ心線11が幅方向の端部側に分散していく。この際、前述したように、熱収縮チューブ5の収縮により、熱溶融部材7及び並列された光ファイバ心線11は側圧を受ける(図中矢印B)。
【0052】
このように、光ファイバ心線11が抗張力体9の傾斜面に分散するため、それぞれの光ファイバ心線11への側圧によって、抗張力体9の傾斜面に垂直な方向の力成分が生じる。このため、光ファイバ心線11が抗張力体9から浮き上がるようにして、配列が乱れることを抑制することができる。なお、実際には、光ファイバ心線11は、抗張力体9と接触せずに、光ファイバ心線11と抗張力体9との間には、熱溶融部材7が回り込む。
【0053】
ここで、抗張力体9の幅方向の略中央部に平坦部10が形成される。前述したように、熱収縮チューブ5からの側圧は、並列された光ファイバ心線11の端部側程大きくなる。このため、並列された光ファイバ心線11の端部側には、より大きな傾斜部を形成することで、側圧によって光ファイバ心線11が中央側に移動することを抑制することができる。
【0054】
一方、抗張力体9の中央部では、側圧の影響が小さくなるとともに、光ファイバ分散部13によって、両側の光ファイバ心線が中央部側に寄ってくることを抑制することができる。このため、抗張力体9の中央部近傍にあえて平坦部10を形成することで、中央部近傍における光ファイバ心線11をより安定して配列することができる。
【0055】
熱溶融部材7が完全に溶融し、熱収縮チューブ5が完全に収縮したら、加熱を止めて冷却し、抗張力体9と光ファイバ心線11の接続部とを熱溶融部材7によって一体化する。以上により、補強スリーブ1を用いた光ファイバ接続部の補強構造を得ることができる。すなわち、光ファイバ接続部の補強構造においては、光ファイバ心線11の接続部が熱溶融部材7によって覆われ、光ファイバテープ心線等を構成する各光ファイバ心線11が、抗張力体9の表面に沿って配置される。
【0056】
なお、光ファイバテープ心線等として、複数の光ファイバ心線が長手方向に間欠的に接着され、隣り合う接着部同士が長手方向に例えば千鳥配置や階段状に配置された間欠接着型の光ファイバリボン線の場合に、特に側圧からの影響で光ファイバ心線11の配列が乱れやすい。
【0057】
図3(a)は、光ファイバリボン線12を示す図である。前述したように、光ファイバリボン線12は、複数の光ファイバ心線11が並列され、長手方向に間欠的に接着部11c接着される。なお、光ファイバ心線11は、内部のガラスファイバ11aの外周に樹脂被覆11bが配置されて構成され、接続時には、先端部の樹脂被覆11bが除される。ここで、光ファイバ心線11のピッチPは、おおむね、光ファイバ心線11の外径と一致する。
【0058】
図3(b)は、このような光ファイバリボン線12同士を突き合わせて融着する際の概念図である。光ファイバリボン線12は、光ファイバ心線11間を固定する接着部分が間欠的であるため、光ファイバ心線11同士が、全長にわたって固定されている従来の光ファイバテープ心線よりも光ファイバ心線11が単独になっている部分が長い。このため、光ファイバ心線11の配列の自由度が高く、ガラスファイバ11a同士を突き合せた際に、光ファイバ心線11(ガラスファイバ11a)の位置ずれを起こしやすい(図中X部)。このため、本実施形態は、並列された複数の光ファイバ心線11が長手方向に間欠的に接着された間欠接着型の光ファイバリボン線の同士を接続する場合に、特に効果的である。
【0059】
また、通常、光ファイバ心線11の外径(樹脂被覆11bの外径)が細い場合に、側圧からの影響で配列が乱れやすい。このため、本実施形態は、光ファイバテープ心線等を構成するそれぞれの光ファイバ心線11の外径が225μm以下の場合に、特に効果的である。さらに光ファイバ心線の外径が200μm以下、170μm以下と狭くなるとより効果的である。
【0060】
さらに樹脂被覆11bを除去したガラスファイバ11aは、従来125μmであるが、このガラスファイバ11aを細くすると、光ファイバ心線11の剛性が小さくなるため、側圧の影響でガラスファイバ11aの配列が乱れやすくなる。このため、本実施形態は、光ファイバテープ心線等を構成するそれぞれのガラスファイバ11aの外径が110μm以下の場合に、特に効果的である。
【0061】
さらに光ファイバ心線11同士のピッチPが従来の250μmより狭くなると、光ファイバ心線11間の乱れをより確実に抑えないと、ガラスファイバ11a同士の接触等が発生しやすくなる。このため、本実施形態は、光ファイバ心線11間のピッチPが225μm以下の場合に、特に効果的である。特に光ファイバ心線11間のピッチPが200μm以下、170μm以下と狭くなるほど、さらにガラスファイバ11a同士の接触や交差の可能性が高くなるため、より効果的である。
【0062】
また、光ファイバテープ心線等を構成する光ファイバ心線11の本数が多くなるほど、側圧からの影響で光ファイバ心線11の配列が乱れやすい。このため、本実施形態は、光ファイバテープ心線等を構成する複数の光ファイバ心線11の心数が8本以上の場合に、特に効果的である。さらに光ファイバ心線が12本以上、16本以上、24本以上と増えるほど、より効果的である。
【0063】
すなわち、本実施形態は、光ファイバ心線11の心数が多く、光ファイバ心線11間のピッチPが狭く、かつ、光ファイバ心線11の外径が小さい間欠接着型の光ファイバリボン線の場合に非常に効果が大きい。
【0064】
以上、第1の実施形態によれば、光ファイバ心線11側の抗張力体9の表面の一部に、傾斜面である光ファイバ分散部13を形成することで、当該部位における側圧による光ファイバ心線11の配列乱れなどを抑制することができる。この際、傾斜部の少なくとも一部に傾斜角度が変化する角度変化部13aが形成されるため、所定の範囲ごとに適切な傾斜角度を設定することができ、幅方向への分散力を制御しやすい。このため、それぞれの光ファイバ心線11ごとの伝送損失のばらつきなどを抑制することができる。
【0065】
特に、直線状の傾斜部を形成することで、幅方向への光ファイバ心線の分散力をさらに容易に制御することができる。なお、角度変化部13aは、必ずしも直線状の傾斜部同士の角度変化部のみではなく、曲線同士又は曲線と直線の境界も含み、傾斜角度が不連続となる部位(一方の傾斜角度が0度の場合も含む)とする。
【0066】
また、抗張力体9の幅方向の略中央部の所定範囲に平坦部10を形成することで、中央部の光ファイバ心線11の配列を安定させることができる。
【0067】
(第2実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
図4(a)は、補強スリーブ1aの断面図である。なお、以下の説明において、補強スリーブ1と同様の機能等を奏する構成については、
図1~
図3と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0068】
補強スリーブ1aは、補強スリーブ1と略同様の構成であるが、抗張力体9aが用いられる点で異なる。抗張力体9aは、平坦部10に代えて、抗張力体9aの幅方向の略中央部に、上方(熱溶融部材7側)に向けて突出する凸部14が形成される。凸部14は、上方に向けて、直線状の傾斜面で構成される。
【0069】
なお、
図4(b)に示すように、抗張力体9bを用いた補強スリーブ1bであってもよい。抗張力体9bは、幅方向の略中央部に、上方(熱溶融部材7側)に向けて突出する凸部14aが形成される。凸部14aは、上方に向けた曲面で構成される。このように、凸部は、直線状の傾斜面で構成してもよく、突曲面であってもよい。いずれの場合にも、凸部14、14aの両側には、直線状の傾斜面である光ファイバ分散部13が形成される。
【0070】
また、
図5に示すように、抗張力体9gを用いた補強スリーブ1gであってもよい。抗張力体9gは、幅方向の略中央部に、上方(熱溶融部材7側)に向けた凸曲面である凸部14bが形成され、その幅方向の両側に角度変化部13aを介して他の曲面(上方(熱溶融部材7側)に向けた凸曲面)が連続する。すなわち、光ファイバ分散部13は、角度変化部13a以外の部位において全て熱溶融部材7側に向けて凸曲面で構成される。
【0071】
補強スリーブ1a、1b、1gを用いて光ファイバ心線同士の接続部を補強すると、並列された光ファイバ心線11の略中央部を、凸部14、14a、14bによって両側に分割することができる。この際、光ファイバ心線11が側圧を受けても、光ファイバ心線11は、凸部14、14a、14bへの垂直な方向の力成分が生じるため、光ファイバ心線11が抗張力体9から浮き上がるようにして、配列が乱れることを抑制することができる。
【0072】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。このように、抗張力体の幅方向の略中央部に凸部14、14a、14bを形成しても、光ファイバ心線11の配列乱れを抑制することができる。また、補強スリーブ1gのように、光ファイバ分散部13は、直線部を有さなくてもよく、角度変化部13a以外の部位において、光ファイバ分散部13は、を熱溶融部材7側に向けて突曲面のみで構成することもできる。
【0073】
(第3実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。
図6(a)は、補強スリーブ1cの断面図である。補強スリーブ1cは、補強スリーブ1と略同様の構成であるが、抗張力体9cが用いられる点で異なる。抗張力体9cは、熱溶融部材7側の表面の少なくとも一部に、長手方向に沿って溝16が形成される。溝16は、複数のV溝によって構成される。この場合、溝16の両側の傾斜面が光ファイバ分散部13として機能する。
【0074】
なお、
図6(b)に示すように、抗張力体9dを用いた補強スリーブ1dであってもよい。抗張力体9dは、熱溶融部材7側の表面の少なくとも一部に、長手方向に沿って溝16aが形成される。溝16aは、溝形状の頂部と底部は円弧状に形成される。このように、溝形状は、全体が直線状でなくてもよい。なお、本実施形態では、光ファイバ分散部13の一部が曲線状に形成されていても、光ファイバ分散部13の少なくとも一部に直線部を含むものを、光ファイバ分散部13が直線部によって形成されるものとする。以下の説明では、溝16を有する補強スリーブ1cを用いた例について説明するが、いずれの形態であっても、溝の底部など、曲率の方向が変化する部位を角度変化部13aとする。
【0075】
図7は、補強スリーブ1cを収縮させた状態を示す断面図である。溝16のピッチは、対象となる光ファイバ心線11の外径以上とする。補強スリーブ1cを用いて光ファイバ心線接続部の補強を行うと、上方から熱溶融部材7が流れ落ちる際に、各光ファイバ心線11がそれぞれ溝16に収まる。このため、光ファイバ心線11に多少の側圧がかかっても、溝16の側面への垂直な方向の力成分が生じるため、光ファイバ心線11が抗張力体9から浮き上がるようにして、配列が乱れることを抑制することができる。
【0076】
ここで、溝16は、抗張力体9cの全長にわたって形成されてもよいが、長手方向の一部にのみ形成してもよい。
図8(a)は、抗張力体9cの側面図であり、
図8(b)は、
図8(a)のC-C線断面図、
図8(c)は、
図8(a)のD-D線断面図である。図示したように、抗張力体9cの長手方向に対して、略中央部近傍の所定の範囲には、溝16が形成されず、両端部近傍の所定の範囲にのみ溝16が形成される。
【0077】
なお、溝16が形成される部位の厚みは、溝16が形成されていない部位(平坦部)の厚みよりも厚い。すなわち、溝16が形成される部位の高さ位置が、溝16が形成されていない部位の高さ位置よりも高さが高い。前述したように、光ファイバ心線11同士を接続する際には、樹脂被覆が剥離されて、内部のガラスファイバが露出する。この際、ガラスファイバが溝16と接触すると、溝16のエッジ等によって損傷を受ける恐れがある。
【0078】
このため、光ファイバ心線11の樹脂被覆がある部位にのみ溝16を形成し、ガラスファイバの露出する部位には溝16を形成しないようにすることで、ガラスファイバを平坦部に配置することができる。このように、抗張力体9cの平坦部の厚みを、溝16の底部(最薄部)の厚み以下となるようにすることで、ガラスファイバが抗張力体9cの溝16に接触することを避けることができる。
【0079】
このように、本実施形態では、溝16を抗張力体9cの両端部のみに形成したが、抗張力体9、9a、9bに対しても適用可能である。すなわち、抗張力体の長手方向の略中央部の所定の範囲には、光ファイバ分散部13を形成せずに、抗張力体の長手方向の両端部のみに形成する。そして、光ファイバ分散部13における抗張力体の熱溶融部材7側の高さ位置を、抗張力体9の長手方向の略中央部の所定の範囲(平坦部)における抗張力体の熱溶融部材7側の高さ位置よりも高くすることで、同様の効果を得ることができる。
【0080】
第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。このように、光ファイバ分散部13は、溝状であってもよい。また、光ファイバ分散部13を抗張力体の長手方向の両端部にのみ形成することで、ガラスファイバの損傷を抑制することができる。
【0081】
(第4実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。
図9(a)は、補強スリーブ1eの断面図である。補強スリーブ1eは、補強スリーブ1と略同様の構成であるが、抗張力体9eが用いられる点で異なる。抗張力体9eは、板状であり、両端部側が熱溶融部材7から離れる方向に向けて屈曲部が形成される。すなわち、抗張力体9eにおいては、両端部近傍の傾斜部が光ファイバ分散部13となる。
【0082】
図9(b)は、熱溶融部材7が溶融し、熱収縮チューブ5が収縮した状態を示す図である。熱収縮チューブ5が収縮すると、熱収縮チューブ5の収縮力(図中E)によって、抗張力体9eが、熱溶融部材7側に突形状に変形する。すなわち、抗張力体9eは弾性変形可能である。
【0083】
このように、弾性変形可能な抗張力体9eを用い、両端部近傍を熱溶融部材7とは逆側に屈曲させておくことで、熱収縮チューブ5の収縮後において、上方(熱溶融部材7側)に向けて突形状に変形させることができる。このようにすることで、抗張力体9eの幅方向の略中央部(屈曲部同士の間)も上方に突出させて傾斜部を形成し、角度変化部13aの両側にも傾斜角度の異なる傾斜部を形成することができる。このため、熱溶融部材7が溶融し、熱収縮チューブ5が収縮する際に、光ファイバ心線11が抗張力体9eから浮き上がり、配列が乱れることを抑制することができる。
【0084】
なお、変形後の抗張力体の形態をより安定させるために、
図10(b)に示すような補強スリーブ1fであってもよい。補強スリーブ1fは、第1の抗張力体である板状の抗張力体9fと、第2の抗張力体である抗張力体17とからなる。抗張力体17は、抗張力体9fの熱溶融部材7とは逆側に配置される。
【0085】
板状の抗張力体9fは、弾性変形が可能である。また、抗張力体17は、上方(熱溶融部材7側)に突形状を有する。より詳細には、抗張力体17の上面には、直線状の傾斜部である光ファイバ分散部13が形成される。
【0086】
図10(b)は、熱溶融部材7が溶融し、熱収縮チューブ5が収縮した状態を示す図である。熱収縮チューブ5が収縮すると、熱収縮チューブ5の収縮力(図中G)によって、抗張力体9fが変形する。この際、抗張力体9fは、抗張力体9fの下方に配置された抗張力体17の上面形状に対応した形状に変形する。このため、抗張力体9fが熱溶融部材7側に突形状となる。
【0087】
このように、抗張力体9fを、熱収縮チューブ5の収縮後において、上方(熱溶融部材7側)に向けて突形状にすることで、熱溶融部材7が溶融し、熱収縮チューブ5が収縮する際に、光ファイバ心線11が抗張力体9fから浮き上がり、配列が乱れることを抑制することができる。
【0088】
第4の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。このように、抗張力体を弾性変形させて、光ファイバ心線11側の表面に傾斜面を形成することで、光ファイバ心線11の配列乱れを抑制することができる。
【0089】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0090】
1、1a、1b、1c、1d、1e、1f、1g………補強スリーブ
3………かしめ部
5………熱収縮チューブ
7………熱溶融部材
9、9a、9b、9c、9d、9e、9f、17………抗張力体
10………平坦部
11………光ファイバ心線
11a………ガラスファイバ
11b………樹脂被覆
11c………接着部
12………光ファイバリボン線
13………光ファイバ分散部
13a………角度変化部
14、14a、14b………凸部
16、16a………溝
100………補強スリーブ
101………光ファイバ心線
103………電極
105………熱収縮チューブ
107………熱溶融部材
109………抗張力体