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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】外装部材
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20241111BHJP
   F16L 57/00 20060101ALI20241111BHJP
   F16L 3/26 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
H02G3/04 018
H02G3/04 087
F16L57/00 A
F16L3/26
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021011329
(22)【出願日】2021-01-27
(65)【公開番号】P2022114870
(43)【公開日】2022-08-08
【審査請求日】2023-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】中田 悠貴
(72)【発明者】
【氏名】三田 隼也
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 公輔
(72)【発明者】
【氏名】横山 圭佑
【審査官】間宮 嘉誉
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-118762(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0050374(US,A1)
【文献】中国実用新案第210297109(CN,U)
【文献】特開2017-5867(JP,A)
【文献】特開2006-311785(JP,A)
【文献】中国実用新案第207638266(CN,U)
【文献】実開平2-118415(JP,U)
【文献】特開2003-274533(JP,A)
【文献】実開平4-58024(JP,U)
【文献】特開平9-172716(JP,A)
【文献】特開2021-5949(JP,A)
【文献】特開2007-252160(JP,A)
【文献】特開平9-137822(JP,A)
【文献】特開2004-224286(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0365170(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0219423(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
F16L 3/26
F16L 57/00
H01B 13/012
H02G 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電線で構成されたワイヤーハーネスの一部を覆う外装部材であって、
底板部及び当該底板部の幅方向に配置された一対の側板部によって断面凹状に形成された本体部と、
一対の前記側板部のそれぞれの先端部分によって形成された開口を開放又は閉塞自在とする蓋部とを備え、
前記蓋部は、一対の前記側板部のそれぞれの先端部分に設けられたヒンジ部によって枢動可能に支持された一対の枢動板部であり、
前記枢動板部における長手方向の両角部のうちの少なくとも一方に面取り形状が形成され、
二つの前記本体部が連接された連接箇所を有し、
一方の前記本体部に対して他方の前記本体部が異なる方向に向けて配置されることで曲角部が形成されており、
前記枢動板部における前記曲角部側の角部に前記面取り形状が形成された
外装部材。
【請求項2】
前記ヒンジ部から前記枢動板部の先端部分までの長さが、一方の前記側板部から他方の前記側板部までの長さの半分程度である
請求項1に記載の外装部材。
【請求項3】
三つ以上の前記本体部が連接された連接箇所を有し、
一の前記本体部に対して少なくとも一つの前記本体部が異なる方向に向けて配置されることで交差部が形成されており、
前記枢動板部における前記交差部側の角部に前記面取り形状が形成された
請求項1又は請求項2に記載の外装部材。
【請求項4】
前記ヒンジ部が前記側板部における先端部分と前記枢動板部における基端部分とを連結板部で連結した構造であり、前記連結板部が前記本体部の内側に収容された
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の外装部材。
【請求項5】
前記枢動板部の一部及び当該枢動板部における前記面取り形状が形成された部分の少なくとも一部を覆う別蓋体を備えた
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の外装部材。
【請求項6】
前記本体部の内側における前記底板部に、当該底板部から前記開口側に向かって延びる仕切板部が設けられた
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の外装部材。
【請求項7】
前記仕切板部が複数の前記本体部が連接された連接箇所に設けられた
請求項6に記載の外装部材。
【請求項8】
前記底板部から前記仕切板部の先端部分までの長さが、前記底板部から前記側板部の先端部分までの長さの半分程度である
請求項6又は請求項7に記載の外装部材。
【請求項9】
前記本体部の長手方向の端部に、前記電線に沿って突出する電線固定部が設けられた
請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の外装部材。
【請求項10】
前記本体部及び前記蓋部が樹脂製シート材で構成された
請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の外装部材。
【請求項11】
前記本体部の長手方向の中途部に、前記電線の配索に用いられる配索治具に固定するための治具固定部が設けられた
請求項1乃至請求項10のいずれかに記載の外装部材。
【請求項12】
前記治具固定部が前記底板部に設けられた貫通孔で構成されており、
前記貫通孔に前記配索治具が挿通された状態において、
前記底板部から前記側板部の先端部分までの長さが、前記底板部から前記配索治具の先端部分までの長さよりも長い
請求項11に記載の外装部材。
【請求項13】
前記枢動板部の先端部分が前記底板部から最も離間した位置にある状態で、
前記底板部から前記枢動板部の先端部分までの長さが、前記底板部から前記配索治具の先端部分までの長さよりも長く、
前記底板部から前記側板部の先端部分までの長さが、前記底板部から前記配索治具の先端部分までの長さよりも短い
請求項11に記載の外装部材。
【請求項14】
前記枢動板部の先端部分が前記底板部から最も離間した位置にある状態で、
前記底板部から前記枢動板部の先端部分までの長さが、前記底板部から前記配索治具の先端部分までの長さよりも短い
請求項11に記載の外装部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、外装部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数の電線で構成されたワイヤーハーネスに対して外装部材を装着した外装付ハーネスが知られている(特許文献1及び特許文献2参照)。このような外装付ハーネスは、次のような工程を経て製造される。
【0003】
すなわち、電線を適宜の長さに切断する工程と、切断された電線に端子を取り付ける工程と、端子が取り付けられた電線を配索経路に沿って配置する工程と、配索経路に沿って配置された電線群をテープ等で纏める工程と、テープ等で纏められた電線群であるワイヤーハーネスに対して外装部材を装着する工程とを経て製造される。
【0004】
ところで、このような外装付ハーネスの製造方法によれば、外装部材を装着する際に、電線がばらけることを防いだり電線が噛み込まれることを防いだりする目的で数多くの箇所をテープ等で纏める必要がある。そのため、配索盤(アッシー盤とも呼ばれる)上に再現された配索経路に外装部材を固定した状態で、この外装部材の内部空間に電線を収容していく製造方法が考えられていた。しかし、かかる製造方法においては、外装部材の内部空間に電線を収める際に、電線が蓋部に引っ掛かったり電線がはみ出して蓋部が閉まらなかったりするという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-30357号公報
【文献】特開2008-92638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、外装部材の内部空間に電線を収める際に、電線が蓋部に引っ掛かったり電線がはみ出して蓋部が閉まらなかったりすることを防ぐ外装部材及び外装付ハーネスの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、複数の電線で構成されたワイヤーハーネスの一部を覆う外装部材であって、底板部及び当該底板部の幅方向に配置された一対の側板部によって断面凹状に形成された本体部と、一対の前記側板部のそれぞれの先端部分によって形成された開口を開放又は閉塞自在とする蓋部とを備え、前記蓋部は、一対の前記側板部のそれぞれの先端部分に設けられたヒンジ部によって枢動可能に支持された一対の枢動板部であり、前記枢動板部における長手方向の両角部のうちの少なくとも一方に面取り形状が形成され、二つの前記本体部が連接された連接箇所を有し、一方の前記本体部に対して他方の前記本体部が異なる方向に向けて配置されることで曲角部が形成されており、前記枢動板部における前記曲角部側の角部に前記面取り形状が形成されたことを特徴としている。
【0008】
この発明により、外装部材の内部空間に電線を収める際に、電線が蓋部に引っ掛かったり電線がはみ出して蓋部が閉まらなかったりすることを防止できる。
詳述すると、本願発明に係る外装部材は、断面凹状に形成された本体部と、本体部の開口を開放又は閉塞自在とする蓋部とを備えており、蓋部が一対の枢動板部で構成されている。こられの枢動板部は、一対の側板部のそれぞれの先端部分に設けられたヒンジ部によって枢動可能に支持されている。そのため、一対の枢動板部を開口から外側に向かってやや開いた状態とすることで、本体部の内側(外装部材の内部空間と同義)に電線を収める際に、電線を枢動板部に沿わせて開口まで案内することができる。したがって、電線が枢動板部に引っ掛からず、さらには電線を枢動板部に沿わせて開口まで案内することができる。また、枢動板部が本体部の開口に沿って立設されるため、開口からはみ出そうとする電線を規制することができる。したがって、これらの枢動板部を閉塞方向に枢動させたときに電線が側板部と枢動板部との間に挟まれないので、確実に開口を閉塞することができる。以上より、外装部材の内部空間に電線を収める際に、電線が蓋部に引っ掛かったり電線がはみ出して蓋部が閉まらなかったりすることを防止できる。
【0009】
また、前記枢動板部における長手方向の両角部のうちの少なくとも一方に面取り形状が形成されていることにより、本体部の内側に電線を収める際に、電線が枢動板部における長手方向の角部に引っ掛からず、さらには電線を面取り形状の斜辺に沿わせて開口まで案内することができる。
なお、本発明における面取り形状とは、いわゆるC面取りやR面取り等の全ての面取りを含む概念である。
【0010】
さらにまた、二つの前記本体部が連接された連接箇所を有し、一方の前記本体部に対して他方の前記本体部が異なる方向に向けて配置されることで曲角部が形成されており、前記枢動板部における前記曲角部側の角部に前記面取り形状が形成されている。
【0011】
これにより、曲角部に沿って電線を収める際においても、湾曲した電線を開口まで案内することができる。つまり、外装部材の曲角部に対して最短距離を通るように電線が湾曲しても、この電線を面取り形状の斜辺に沿わせて開口まで案内することができる。以上より、曲角部に沿って電線を収める際に、電線が蓋部に引っ掛かることを防止できる。
【0012】
この発明の態様として、前記ヒンジ部から前記枢動板部の先端部分までの長さが、一方の前記側板部から他方の前記側板部までの長さの半分程度であってもよい。
なお、本発明における半分程度とは、厳密な値に限定するのではなく、ある程度(例えば10%程度)の差異があるものを許容する概念である。
【0013】
この発明により、本体部の内側に電線を収める際に、いずれの枢動板部も同じように広く電線を受け止めて開口まで案内することができる。したがって、電線が枢動板部に引っ掛からず、さらには電線を枢動板部に沿わせて開口まで案内することができる。また、いずれの枢動板部も同じように高く立設されて開口からはみ出そうとする電線を規制することができる。したがって、これらの枢動板部を閉塞方向に枢動させたときに電線が側板部と枢動板部との間に挟まれないので、確実に開口を閉塞することができる。以上より、外装部材の内部空間に電線を収める際に、電線が蓋部に引っ掛かったり電線がはみ出して蓋部が閉まらなかったりすることを防止できる。
【0014】
またこの発明の態様として、三つ以上の前記本体部が連接された連接箇所を有し、一の前記本体部に対して少なくとも一つの前記本体部が異なる方向に向けて配置されることで交差部が形成されており、前記枢動板部における前記交差部側の角部に前記面取り形状が形成されてもよい。
【0015】
この発明により、交差部に沿って電線を収める際においても、湾曲した電線を開口まで案内することができる。つまり、外装部材の交差部に対して最短距離を通るように電線が湾曲しても、この電線を面取り形状の斜辺に沿わせて開口まで案内することができる。以上より、交差部に沿って電線を収める際に、電線が蓋部に引っ掛かることを防止できる。
【0016】
またこの発明の態様として、前記ヒンジ部が前記側板部における先端部分と前記枢動板部における基端部分とを連結板部で連結した構造であり、前記連結板部が前記本体部の内側に収容されてもよい。
【0017】
この発明により、枢動板部を閉塞方向に枢動させる際に、側板部の先端部分と枢動板部の基端部分との間に電線が噛み込まれることを防止できる。このため、電線が破損したり枢動板部が破損したりすることを防止できる。
【0018】
またこの発明の態様として、前記枢動板部の一部及び当該枢動板部における前記面取り形状が形成された部分の少なくとも一部を覆う別蓋体を備えてもよい。
なお、本発明における別蓋体とは、あらゆる形態で実現されるものを全て包含する概念である。
【0019】
この発明により、本体部の内側に収容された電線が曲角部や交差部で重なり合って部分的に隆起しても、枢動板部が内側から押されて変形したり押し開けられたりすることを防止できる。このため、いびつな形状になって美観を損ねたり押し開けられた部分から電線が露出したりすることを防止できる。
【0020】
またこの発明の態様として、前記本体部の内側における前記底板部に、当該底板部から前記開口側に向かって延びる仕切板部が設けられてもよい。
なお、本発明における仕切板部とは、あらゆる形態で実現されるものを全て包含する概念である。
【0021】
この発明により、本体部の内側に収められた電線が幅方向への移動を規制されるので、振動等によって電線がズレたりガタついたりすることを防止できる。このため、本体部の内側で電線が偏ってしまうことを防止できる。
【0022】
またこの発明の態様として、前記仕切板部が複数の前記本体部が連接された連接箇所に設けられてもよい。
なお、本発明における連接箇所とは、前述した曲角部や交差部の内側及びこれらに隣接する外側を包含する概念である。
【0023】
この発明により、連接箇所である曲角部においては、曲角部に沿って曲がる電線を案内することができる。また、連接箇所である交差部においては、交差部を直進する電線と交差部に沿って曲がる電線を案内することができる。
【0024】
またこの発明の態様として、前記底板部から前記仕切板部の先端部分までの長さが、前記底板部から前記側板部の先端部分までの長さの半分程度であってもよい。
なお、本発明における半分程度とは、厳密な値に限定するのではなく、ある程度(例えば10%程度)の差異があるものを許容する概念である。
【0025】
この発明により、枢動板部を閉塞方向に枢動させる際に、仕切板部の先端部分と枢動板部の先端部分との間に電線が噛み込まれることを防止できる。このため、電線が破損したり仕切板部が破損したりすることを防止できる。
【0026】
またこの発明の態様として、前記本体部の長手方向の端部に、前記電線に沿って突出する電線固定部が設けられてもよい。
なお、本発明における電線固定部とは、あらゆる形態で実現されるものを全て包含する概念である。
【0027】
この発明により、本体部に挿通された電線と本体部の一部である電線固定部とを例えばテープで巻き回して固定したりクリップで挟んで固定したりすることができる。このため、外装部材に対して電線がズレたりガタついたり、あるいは電線に対して外装部材がズレたりガタついたりすることを防止できる。
【0028】
またこの発明の態様として、前記本体部及び前記蓋部が樹脂製シート材で構成されてもよい。
なお、本発明における樹脂製シート材は、例えばポリエチレンシートやウレタンシートと呼ばれる可撓性樹脂発泡シート材である。
【0029】
この発明により、外装部材の軽量化を実現することができる。また、原価の低減や輸送費の低減から低価格化を実現することができる。さらに、簡単に破くことができるので、解体作業の容易化を実現することもできる。
【0030】
またこの発明の態様として、前記本体部の長手方向の中途部に、前記電線の配索に用いられる配索治具に固定するための治具固定部が設けられてもよい。
なお、本発明における治具固定部とは、あらゆる形態で実現されるものを全て包含する概念である。
【0031】
この発明により、配索盤上に再現された配索経路に本体部を固定することができる。このため、配索盤上に再現された配索経路に本体部を固定した状態で、この本体部の内側に電線を収容していくことが可能となる。
【0032】
またこの発明の態様として、前記治具固定部が前記底板部に設けられた貫通孔で構成されており、前記貫通孔に前記配索治具が挿通された状態において、前記底板部から前記側板部の先端部分までの長さが、前記底板部から前記配索治具の先端部分までの長さよりも長くてもよい。
【0033】
この発明により、貫通孔に配索治具が挿通された状態において、蓋部を構成する一対の枢動板部を閉塞方向に枢動させることができる。このため、配索治具から本体部を取り外すことなく、開口を閉塞することが可能となる。
【0034】
またこの発明の態様として、前記枢動板部の先端部分が前記底板部から最も離間した位置にある状態で、前記底板部から前記枢動板部の先端部分までの長さが、前記底板部から前記配索治具の先端部分までの長さよりも長く、前記底板部から前記側板部の先端部分までの長さが、前記底板部から前記配索治具の先端部分までの長さよりも短くてもよい。
【0035】
この発明により、貫通孔に配索治具が挿通された状態において、枢動板部が閉塞方向に枢動しないように支持することができる。このため、本体部の内側に電線を収める際に、枢動板部が閉塞方向に枢動してしまうことに起因する作業性の悪化を防ぐことが可能となる。さらには配索治具から本体部を引き上げて枢動板部を閉塞方向に枢動させることで開口を閉塞することが可能となる。
【0036】
またこの発明の態様として、前記枢動板部の先端部分が前記底板部から最も離間した位置にある状態で、前記底板部から前記枢動板部の先端部分までの長さが、前記底板部から前記配索治具の先端部分までの長さよりも短くてもよい。
【0037】
この発明により、貫通孔に配索治具が挿通された状態において、枢動板部が閉塞方向に枢動しないように支持することができる。このため、本体部の内側に電線を収める際に、枢動板部が閉塞方向に枢動してしまうことに起因する作業性の悪化を防ぐことが可能となる。また、配索治具の先端部分が突出するので、作業性の向上を実現することが可能となる。さらには配索治具から本体部を引き上げて枢動板部を閉塞方向に枢動させることで開口を閉塞することが可能となる。
【0038】
またこの発明の態様として、前述の外装部材を備えた外装付ハーネスの製造方法であって、前記配索治具に前記本体部を固定した状態で、前記本体部の内側に前記電線を収容し、前記蓋部を構成する一対の前記枢動板部を閉塞方向に枢動させて前記開口を閉塞してもよい。
【0039】
この発明により、配索盤上に再現された配索経路に本体部を固定した状態で、この本体部の内側に電線を収容していくことができるため、電線がばらけることを防いだり電線が噛み込まれることを防いだりする目的で数多くの箇所をテープ等で纏める必要がなくなる。さらに、前述した外装部材に関する効果を得ることができる。例えば本体部の内側に電線を収める際に、電線が蓋部に引っ掛かったり電線がはみ出して蓋部が閉まらなかったりすることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】外装付ハーネスの斜視図。
図2】外装付ハーネスの展開斜視図。
図3】本体部に対して蓋部が開いた状態の斜視図。
図4】本体部に対して蓋部が閉じた状態の斜視図。
図5図3及び図4における曲角部を拡大した斜視図。
図6図3及び図4における交差部を拡大した斜視図。
図7図3における矢印Aの方向から視た平面図。
図8図7におけるB-B矢視断面図及びC-C矢視断面図。
図9】別蓋体を示す斜視図。
図10図9における矢印Dの方向から視た側面図。
図11】電線の配索経路に本体部を固定している状況を示す説明図。
図12】本体部の内側に電線を収容している状況を示す説明図。
図13】本体部の開口を閉塞している状況を示す説明図。
図14】別蓋体を装着している状況を示す説明図。
図15】他の実施形態に係る外装部材の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0041】
この発明の実施形態を図面に基づいて詳述する。
図1は外装付ハーネス100の斜視図であり、図2は外装付ハーネス100の展開斜視図である。図3は本体部10に対して蓋部20が開いた状態の斜視図であり、図4は本体部10に対して蓋部20が閉じた状態の斜視図である。
【0042】
また、図5図3及び図4における曲角部C1を拡大した斜視図であり、図6図3及び図4における交差部C2を拡大した斜視図である。図7図3における矢印Aの方向から視た平面図であり、図8図7におけるB-B矢視断面図及びC-C矢視断面図である。そして、図9は別蓋体40を示す斜視図であり、図10図9における矢印Dの方向から視た側面図である。
【0043】
さらに、図11は電線1の配索経路に本体部10を固定している状況を示す説明図であり、図12は本体部10の内側に電線1を収容している状況を示す説明図であり、図13は本体部10の開口1opを閉塞している状況を示す説明図であり、図14は別蓋体40を装着している状況を示す説明図である。そして、図15は他の実施形態に係る外装部材3の斜視図である。
【0044】
図1及び図2に示すように、外装付ハーネス100は、複数の電線1で構成されたワイヤーハーネス2の一部を外装部材3で覆ったものである。外装部材3は、異物等からワイヤーハーネス2を保護するとともに、ボディパネル等に取り付けられてワイヤーハーネス2の配索経路を規制する。
【0045】
図1から図8に示すように、外装部材3は、複数の本体部10が連接された構造である。それぞれの本体部10には、蓋部20が設けられており、本体部10と蓋部20は、ヒンジ部30によって連結されている。また、外装部材3は、後述する交差部C2に装着される別蓋体40を備えている(図1及び図2参照)。
【0046】
本体部10は、底板部11及び底板部11の幅方向に配置された一対の側板部12によって断面凹状に形成されている。一対の側板部12は、底板部11に対して垂直に交わっており、かつ互いに対して平行に配置されている。なお、本体部10には、仕切板部13と治具固定部14とが設けられている(図7及び図8参照)。これらについては、蓋部20及びヒンジ部30を説明した後に詳しく説明するものとする。
【0047】
蓋部20は、一対の側板部12のそれぞれの先端部分12t(図8参照)によって形成された開口1opを開放又は閉塞自在とする。蓋部20は、ヒンジ部30によって枢動可能に支持された一対の枢動板部21で構成されており、それぞれの枢動板部21が外側に向かって枢動すると、開口1opが開放されることとなる(図3参照)。反対に、それぞれの枢動板部21が内側へ向かって枢動すると、開口1opが閉塞されることとなる(図4参照)。
【0048】
本体部10の開口1opが開放された状態においては、それぞれの枢動板部21が電線1を開口1opまで案内する案内板としての機能を果たす。そのため、本体部10の内側に電線1を収める際に、電線1を枢動板部21に沿わせて開口1opまで案内することができる。また、本体部10の開口1opが開放された状態においては、それぞれの枢動板部21が電線1のはみ出しを規制する規制板としての機能も果たす。そのため、本体部10の内側に電線1を収める際に、開口1opからはみ出そうとする電線1を規制することができる。
【0049】
さらに、それぞれの枢動板部21は、ヒンジ部30から先端部分21t(図8参照)までの長さが、一方の側板部12から他方の側板部12までの長さLwの半分となっている。これは、一対の枢動板部21のいずれもが、案内板としての機能と規制板としての機能を果たすことができるように考慮したものである。つまり、一方の枢動板部21が案内板としての機能を果たすとしても、他方の側板部12が機能を果たさないのでは、電線1を開口1opまで案内できない場合があると考えられ、一方の枢動板部21が規制板としての機能を果たすとしても、他方の側板部12が機能を果たさないのでは、はみ出そうとする電線1を規制できない場合があると考えられるため、このようなことがないように考慮したものである。
【0050】
加えて、本実施形態に係る外装部材3の特徴として、枢動板部21における長手方向の角部に面取り形状22が形成されている(図5及び図6参照)。ここでは、外装部材3における曲角部C1と交差部C2について説明するとともに、これらと面取り形状22の関係について説明する。また、面取り形状22の機能についても説明する。
【0051】
前述したように、外装部材3は、複数の本体部10を備えている。外装部材3は、二つの本体部10が連接された連接箇所を有しており、一方の本体部10に対して他方の本体部10が異なる方向に向けて配置されることで曲角部C1が形成されている(図5参照)。また、外装部材3は、四つの本体部10が連接された連接箇所を有しており、一の本体部10に対して二つの本体部10が異なる方向に向けて配置されることで交差部C2が形成されている(図6参照)。
【0052】
また、曲角部C1においては、互いに連接された本体部10の開口1opを閉塞するそれぞれの枢動板部21に面取り形状22が形成させている。かかる面取り形状22は、枢動板部21の角部を斜めに切り落とした形状であり、その斜辺がそれぞれの本体部10の長手方向に対して所定の角度となっている。このような構成により、曲角部C1に沿って電線1を収める際に、電線1を面取り形状22の斜辺に沿わせて開口1opまで案内することができる(図5における矢印G参照)。
【0053】
さらに、交差部C2においても、互いに連接された本体部10の開口1opを閉塞するそれぞれの枢動板部21に面取り形状22が形成させている。かかる面取り形状22は、枢動板部21の角部を斜めに切り落とした形状であり、その斜辺がそれぞれの本体部10の長手方向に対して所定の角度となっている。このような構成により、交差部C2に沿って電線1を収める際に、電線1を面取り形状22の斜辺に沿わせて開口1opまで案内することができる(図6における矢印G参照)。
【0054】
加えて、側板部12と枢動板部21は、ヒンジ部30によって連結されている(図1から図8参照)。ヒンジ部30は、側板部12における先端部分12t(図8参照)と枢動板部21における基端部分21b(図8参照)とを連結板部31で連結した構造となっている。なお、連結板部31は、本体部10の外側ではなく、内側に向かって湾曲している。
【0055】
すなわち、連結板部31は、本体部10の内側に向かって湾曲した形状であることから、枢動板部21によって開口1opを閉塞した状態においては、本体部10の内側に収容されている。このような構成により、枢動板部21を閉塞方向に枢動させる際に、側板部12の先端部分12tと枢動板部21の基端部分21bとの間に電線1が噛み込まれることを防止できる。
【0056】
ところで、前述したように、本体部10には、仕切板部13と治具固定部14とが設けられている。以下に、図7及び図8を用いて、これらについて順番に説明していくこととする。
【0057】
仕切板部13は、本体部10の内側における底板部11に設けられている。仕切板部13は、底板部11から開口1opに向かって延びており、一対の側板部12に対して平行に配置されている。これにより、本体部10の内側に収められた電線1は、仕切板部13に沿って挿通され、少なくとも仕切板部13を超える幅方向への移動について規制される。
【0058】
さらに、仕切板部13は、底板部11から先端部分13tまでの長さが、底板部11から側板部12の先端部分12tまでの長さLhの半分である。このような構成により、枢動板部21を閉塞方向に枢動させる際に、仕切板部13の先端部分13tと枢動板部21の先端部分21tとの間に電線1が噛み込まれることを防止できる。
【0059】
加えて、曲角部C1における仕切板部13は、曲角部C1に沿って曲がる電線1の湾曲部分に合わせて円弧状に形成されている。このため、かかる仕切板部13は、曲角部C1に沿って曲がる電線1を案内する機能を果たしている。また、交差部C2における仕切板部13は、交差部C2を直進する電線1や交差部C2に沿って曲がる電線1に干渉しないように、交差部C2の隣接位置にて直線状に形成されている。このため、仕切板部13は、交差部C2を直進する電線1と交差部C2に沿って曲がる電線1を案内する機能を果たしている。
【0060】
治具固定部14は、本体部10の長手方向の中途部に設けられている。治具固定部14は、底板部11の幅方向に設けられた二つの貫通孔14hで構成されており、それぞれの貫通孔14hは互いに所定の間隔を隔てて配置されている。これらの貫通孔14hには、後述する配索治具50(図11参照)におけるU字部の先端部分50tから中途部までを挿通することが可能である。
【0061】
さらに、これらの貫通孔14hに挿通した状態の配索治具50のU字部は、その先端部分50tから中途部までが側板部12の内周面に沿うように設計されている(図12参照)。このような構成により、配索治具50におけるU字部に挿通された状態で、この配索治具50によって支持されている本体部10が、振動等によってズレたりガタついたりすることを防止できる。
【0062】
加えて、これらの貫通孔14hに挿通した状態の配索治具50のU字部は、その先端部分50tが側板部12の先端部分12t(図8参照)よりも低い位置で留まるように設計されている(図12参照)。このような構成により、配索治具50におけるU字部に挿通された状態で、蓋部20を構成する一対の枢動板部21を閉塞方向に枢動させることができる。
【0063】
次に、図9及び図10を用いて、別蓋体40について説明する。別蓋体40は、蓋板部41と複数の固定脚部42とを有している。なお、本実施形態に係る外装部材3においては、交差部C2にのみ別蓋体40が装着されているが、曲角部C1にも別蓋体40が装着されるとしてもよい。
【0064】
蓋板部41は、上方側から視て略矩形状に形成されている。蓋板部41は、交差部C2に向かって延びる全ての枢動板部21の一部を覆っている。具体的に説明すると、枢動板部21に面取り形状22が形成されたことにより、枢動板部21の端部に現れた三角部分の一部を覆っている。これは、枢動板部21における面取り形状22が形成された部分(面取り形状22によって開口1opが閉塞されない部分)の一部を覆っているともいえる。
【0065】
固定脚部42は、蓋板部41の角部に配置されている。それぞれの固定脚部42は、蓋板部41から下方側に延びており、隣り合う固定脚部42の間に本体部10を挟み込むことができる。また、固定脚部42の先端部分には、挟み込まれた本体部10側に向かって突出した係止片42fが設けられている。このため、本体部10の側板部12に沿わせて固定脚部42を押し込んでいくと、固定脚部42の係止片42fが底板部11に引っ掛かることとなる。
【0066】
このような構成により、交差部C2に別蓋体40を装着することができる。このとき、蓋板部41は、開口1opを閉塞した状態の枢動板部21に当接しており、この枢動板部21を上方側から押さえ付けている。これにより、本体部10の内側に収容された電線1が交差部C2で重なり合って部分的に隆起しても、枢動板部21が内側から押されて変形したり押し開けられたりすることを防止できる。なお、別蓋体40の固定脚部42は、側板部12に当接しており、この側板部12を側方側から押さえ付けている。そのため、側板部12の変形についても防止できる。
【0067】
次に、図11から図15を用いて、外装付ハーネス100の製造方法について説明する。ここでは、電線1が適宜の長さに切断され、さらには切断された電線1に端子が取り付けられているものとする。
【0068】
また、以下に説明する外装付ハーネス100の製造方法は、配索盤5と配索治具50を利用する。配索盤5は、配索治具50を固定するものであり、配索治具50は、架け渡された電線1を支持するものである。配索治具50は、金属棒によって形成されたU字部を有しており、このU字部の隙間が電線1の配索経路となる。
【0069】
図11に示すように、かかる製造方法における第一工程は、電線1の配索経路に本体部10を固定する工程である。第一工程においては、配索治具50におけるU字部の二つの先端部分50tに本体部10側に設けられた二つの貫通孔14hを嵌め合わせる。こうすることで、電線1の配索経路に本体部10が固定されることとなる。
【0070】
図12に示すように、かかる製造方法における第二工程は、本体部10の内側に電線1を収容する工程である。第二工程においては、本体部10の開口1opから内側に電線1を押し込んでいく。このとき、電線1を一つずつ押し込んでもよいし、予め纏めた状態で押し込んでもよい。こうすることで、本体部10の内側に電線1が収容されることとなる。
【0071】
図13に示すように、かかる製造方法における第三工程は、本体部10の開口1opを閉塞する工程である。第三工程においては、全ての枢動板部21を内側へ向かって枢動させる。このとき、本体部10の開口1opから溢れた電線1があったとしても、枢動板部21によって押え込めばよい。こうすることで、本体部10の開口1opが閉塞されることとなる。
【0072】
図14に示すように、かかる製造方法における第四工程は、別蓋体40を装着する工程である。第四工程においては、交差部C2に別蓋体40の固定脚部42を嵌め合わせた状態で押し込んで装着する。このとき、枢動板部21が内側から押されて変形したり押し開けられたりしていても、別蓋体40によって押え込めばよい。こうすることで、交差部C2に別蓋体40が装着されることとなる。
【0073】
このように、本願発明に係る外装部材3は、複数の電線1で構成されたワイヤーハーネス2に対して装着されるものであり、底板部11及び底板部11の幅方向に配置された一対の側板部12によって断面凹状に形成された本体部10と、一対の側板部12のそれぞれの先端部分12tによって形成された開口1opを開放又は閉塞自在とする蓋部20とを備えている。そして、蓋部20は、一対の側板部12のそれぞれの先端部分12tに設けられたヒンジ部30によって枢動可能に支持された一対の枢動板部21であることを特徴としている。
【0074】
このような外装部材3によれば、外装部材3の内部空間に電線1を収める際に、電線1が蓋部20に引っ掛かったり電線1がはみ出して蓋部20が閉まらなかったりすることを防止できる。
【0075】
詳述すると、本願発明に係る外装部材3は、断面凹状に形成された本体部10と、本体部10の開口1opを開放又は閉塞自在とする蓋部20とを備えており、蓋部20が一対の枢動板部21で構成されている。こられの枢動板部21は、一対の側板部12のそれぞれの先端部分12tに設けられたヒンジ部30によって枢動可能に支持されている。そのため、一対の枢動板部21を開口1opから外側に向かってやや開いた状態とすることで、本体部10の内側(外装部材3の内部空間と同義)に電線1を収める際に、電線1を枢動板部21に沿わせて開口1opまで案内することができる。したがって、電線1が枢動板部21に引っ掛からず、さらには電線1を枢動板部21に沿わせて開口1opまで案内することができる。また、枢動板部21が本体部10の開口1opに沿って立設されるため、開口1opからはみ出そうとする電線1を規制することができる。したがって、これらの枢動板部21を閉塞方向に枢動させることで、電線1を抑え込みつつ確実に開口1opを閉塞することができる。以上より、外装部材3の内部空間に電線1を収める際に、電線1が蓋部20に引っ掛かったり電線1がはみ出して蓋部20が閉まらなかったりすることを防止できる。
【0076】
また、外装部材3においては、ヒンジ部30から枢動板部21の先端部分21tまでの長さが、一方の側板部12から他方の側板部12までの長さの半分程度となっている。
なお、本発明における半分程度とは、厳密な値に限定するのではなく、ある程度(例えば10%程度)の差異があるものを許容する概念である。
【0077】
このような外装部材3によれば、本体部10の内側に電線1を収める際に、いずれの枢動板部21も同じように広く電線1を受け止めて開口1opまで案内することができる。したがって、電線1が枢動板部21に引っ掛からず、さらには電線1を枢動板部21に沿わせて開口1opまで案内することができる。また、いずれの枢動板部21も同じように高く立設されて開口1opからはみ出そうとする電線1を規制することができる。したがって、これらの枢動板部21を閉塞方向に枢動させたときに電線1が側板部12と枢動板部21との間に挟まれないので、確実に開口1opを閉塞することができる。以上より、外装部材3の内部空間に電線1を収める際に、電線1が蓋部20に引っ掛かったり電線1がはみ出して蓋部20が閉まらなかったりすることを防止できる。
【0078】
また、外装部材3においては、二つの本体部10が連接された連接箇所を有している。そして、一方の本体部10に対して他方の本体部10が異なる方向に向けて配置されることで曲角部C1が形成されており、枢動板部21における曲角部C1側の角部に面取り形状22が形成されている。
【0079】
また、外装部材3においては、枢動板部21における長手方向の両角部のうちの少なくとも一方に面取り形状22が形成されている。
【0080】
なお、本発明における面取り形状とは、いわゆるC面取りやR面取り等の全ての面取りを含む概念である。
【0081】
このような外装部材3によれば、本体部10の内側に電線1を収める際に、電線1が枢動板部21における長手方向の角部に引っ掛からず、さらには電線1を面取り形状22の斜辺に沿わせて開口1opまで案内することができる。
【0082】
このような外装部材3によれば、曲角部C1に沿って電線1を収める際においても、湾曲した電線1を開口1opまで案内することができる。つまり、外装部材3の曲角部C1に対して最短距離を通るように電線1が湾曲しても、この電線1を面取り形状22の斜辺に沿わせて開口1opまで案内することができる。以上より、曲角部C1に沿って電線1を収める際に、電線1が蓋部20に引っ掛かることを防止できる。
【0083】
また、外装部材3においては、三つ以上の本体部10が連接された連接箇所を有している。そして、一の本体部10に対して少なくとも一つの本体部10が異なる方向に向けて配置されることで交差部C2が形成されており、枢動板部21における交差部C2側の角部に面取り形状22が形成されている。
【0084】
このような外装部材3によれば、交差部C2に沿って電線1を収める際においても、湾曲した電線1を開口1opまで案内することができる。つまり、外装部材3の交差部C2に対して最短距離を通るように電線1が湾曲しても、この電線1を面取り形状22の斜辺に沿わせて開口1opまで案内することができる。以上より、交差部C2に沿って電線1を収める際に、電線1が蓋部20に引っ掛かることを防止できる。
【0085】
また、外装部材3においては、ヒンジ部30が側板部12における先端部分12tと枢動板部21における基端部分21bとを連結板部31で連結した構造であり、連結板部31が本体部10の内側に収容されている。
【0086】
このような外装部材3によれば、枢動板部21を閉塞方向に枢動させる際に、側板部12の先端部分12tと枢動板部21の基端部分21bとの間に電線1が噛み込まれることを防止できる。このため、電線1が破損したり枢動板部21が破損したりすることを防止できる。
【0087】
また、外装部材3においては、枢動板部21の一部及び枢動板部21における面取り形状22が形成された部分の少なくとも一部を覆う別蓋体40を備えている。
なお、本発明における別蓋体40とは、あらゆる形態で実現されるものを全て包含する概念である。
【0088】
このような外装部材3によれば、本体部10の内側に収容された電線1が交差部C2で重なり合って部分的に隆起しても、枢動板部21が内側から押されて変形したり押し開けられたりすることを防止できる。このため、いびつな形状になって美観を損ねたり押し開けられた部分から電線1が露出したりすることを防止できる。
【0089】
また、外装部材3においては、本体部10の内側における底板部11に、底板部11から開口1op側に向かって延びる仕切板部13が設けられている。
なお、本発明における仕切板部13とは、あらゆる形態で実現されるものを全て包含する概念である。
【0090】
このような外装部材3によれば、本体部10の内側に収められた電線1が幅方向への移動を規制されるので、振動等によって電線1がズレたりガタついたりすることを防止できる。このため、本体部10の内側で電線1が偏ってしまうことを防止できる。
【0091】
また、外装部材3においては、仕切板部13が複数の本体部10が連接された連接箇所に設けられている。
【0092】
なお、本発明における連接箇所とは、前述した曲角部C1や交差部C2の内側及びこれらに隣接する外側を包含する概念である。
【0093】
このような外装部材3によれば、連接箇所である曲角部C1においては、曲角部C1に沿って曲がる電線1を案内することができる。また、連接箇所である交差部C2においては、交差部C2を直進する電線1と交差部C2に沿って曲がる電線1を案内することができる。
【0094】
また、外装部材3においては、底板部11から仕切板部13の先端部分13tまでの長さが、底板部11から側板部12の先端部分12tまでの長さの半分程度となっている。
なお、本発明における半分程度とは、厳密な値に限定するのではなく、ある程度(例えば10%程度)の差異があるものを許容する概念である。
【0095】
このような外装部材3によれば、枢動板部21を閉塞方向に枢動させる際に、仕切板部13の先端部分13tと枢動板部21の先端部分21tとの間に電線1が噛み込まれることを防止できる。このため、電線1が破損したり仕切板部13が破損したりすることを防止できる。
【0096】
また、外装部材3においては、本体部10の長手方向の中途部に、電線1の配索に用いられる配索治具50に固定するための治具固定部14が設けられている。
なお、本発明における治具固定部14とは、あらゆる形態で実現されるものを全て包含する概念である。
【0097】
このような外装部材3によれば、配索盤5上に再現された配索経路に本体部10を固定することができる。このため、配索盤5上に再現された配索経路に本体部10を固定した状態で、この本体部10の内側に電線1を収容していくことが可能となる。
【0098】
また、外装部材3においては、治具固定部14が底板部11に設けられた貫通孔14hで構成されており、貫通孔14hに配索治具50が挿通された状態において、底板部11から側板部12の先端部分12tまでの長さが、底板部11から配索治具50の先端部分50tまでの長さよりも長くなっている。
【0099】
このような外装部材3によれば、貫通孔14hに配索治具50が挿通された状態において、蓋部20を構成する一対の枢動板部21を閉塞方向に枢動させることができる。このため、配索治具50から本体部10を取り外すことなく、開口1opを閉塞することが可能となる。
【0100】
さらに、前述の外装部材3を備えた外装付ハーネス100の製造方法においては、配索治具50に本体部10を固定した状態で、本体部10の内側に電線1を収容し、蓋部20を構成する一対の枢動板部21を閉塞方向に枢動させて開口1opを閉塞している。
【0101】
このような外装付ハーネス100の製造方法によれば、配索盤5上に再現された配索経路に本体部10を固定した状態で、この本体部10の内側に電線1を収容していくことができるため、電線1がばらけることを防いだり電線1が噛み込まれることを防いだりする目的で数多くの箇所をテープ等で纏める必要がなくなる。さらに、前述した外装部材3に関する効果を得ることができる。例えば本体部10の内側に電線1を収める際に、電線1が蓋部20に引っ掛かったり電線1がはみ出して蓋部20が閉まらなかったりすることを防止できる。
【0102】
この発明の構成と前述の実施形態との対応において、この発明の外装付ハーネスは外装付ハーネス100に対応し、
以下同様に、
電線は電線1に対応し、
ワイヤーハーネスはワイヤーハーネス2に対応し、
外装部材は外装部材3に対応し、
本体部は本体部10に対応し、
底板部は底板部11に対応し、
側板部は側板部12に対応し、
側板部の先端部分は先端部分12tに対応し、
仕切板部は仕切板部13に対応し、
治具固定部は治具固定部14に対応し、
電線固定部は電線固定部15に対応し、
蓋部は蓋部20に対応し、
枢動板部は枢動板部21に対応し、
枢動板部の先端部分は先端部分21tに対応し、
枢動板部の基端部分は基端部分21bに対応し、
面取り形状は面取り形状22に対応し、
ヒンジ部はヒンジ部30に対応し、
連結板部は連結板部31に対応し、
別蓋体は別蓋体40に対応し、
配索治具は配索治具50に対応し、
曲角部は曲角部C1に対応し、
交差部は交差部C2に対応し、
開口は開口1opに対応するも、この発明は、前述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施形態を得ることができる。
【0103】
例えば図15に示すように、本願発明に係る外装部材3は、本体部10の長手方向の端部に、電線1に沿って突出する電線固定部15が設けられてもよい。電線固定部15は、底板部11や側板部12の一部が長手方向に沿って延出された部分を指している。
【0104】
このような外装部材3とすれば、本体部10に挿通された電線1と本体部10の一部である電線固定部15とを例えばテープで巻き回して固定したりクリップで挟んで固定したりすることができる。このため、外装部材3に対して電線1がズレたりガタついたり、あるいは電線1に対して外装部材3がズレたりガタついたりすることを防止できる。
【0105】
また、本願発明に係る外装部材3は、合成樹脂であるポリプロピレンにて形成されているが、外装部材3を構成する本体部10及び蓋部20が樹脂製シート材で構成されてもよい。樹脂製シート材は、例えばポリエチレンシートやウレタンシートと呼ばれる可撓性樹脂発泡シート材である。
【0106】
このような外装部材3としても、前述した外装部材3に関する効果を得ることができる。さらに加えて、外装部材3の軽量化を実現することができる。また、原価の低減や輸送費の低減から低価格化を実現することができる。さらに、簡単に破くことができるので、解体作業の容易化を実現することもできる。
【0107】
さらに、本願発明に係る外装部材3は、貫通孔14hに配索治具50が挿通された状態において、底板部11から側板部12の先端部分12tまでの長さが、底板部11から配索治具50の先端部分50tまでの長さよりも長くなっている。
【0108】
しかしながら、枢動板部21の先端部分21tが底板部11から最も離間した位置にある状態で、底板部11から枢動板部21の先端部分21tまでの長さが、底板部11から配索治具50の先端部分50tまでの長さよりも長く、底板部11から側板部12の先端部分12tまでの長さが、底板部11から配索治具50の先端部分50tまでの長さよりも短くてもよい。
【0109】
このような外装部材3とした場合、貫通孔14hに配索治具50が挿通された状態において、枢動板部21が閉塞方向に枢動しないように支持することができる。このため、本体部10の内側に電線1を収める際に、枢動板部21が閉塞方向に枢動してしまうことに起因する作業性の悪化を防ぐことが可能となる。さらには配索治具50から本体部10を引き上げて枢動板部21を閉塞方向に枢動させることで開口1opを閉塞することが可能となる。この点、枢動板部21における適宜の位置に貫通孔又は切り欠きを設けることにより、本体部10を取り外したり本体部10を引き上げたりすることなく、枢動板部21を閉塞方向に枢動可能としてもよい。
【0110】
あるいは、枢動板部21の先端部分21tが底板部11から最も離間した位置にある状態で、底板部11から枢動板部21の先端部分21tまでの長さが、底板部11から配索治具50の先端部分50tまでの長さよりも短くてもよい。
【0111】
このような外装部材3とした場合、貫通孔14hに配索治具50が挿通された状態において、枢動板部21が閉塞方向に枢動しないように支持することができる。このため、本体部10の内側に電線1を収める際に、枢動板部21が閉塞方向に枢動してしまうことに起因する作業性の悪化を防ぐことが可能となる。また、配索治具50の先端部分50tが突出するので、作業性の向上を実現することが可能となる。さらには配索治具50から本体部10を引き上げて枢動板部21を閉塞方向に枢動させることで開口1opを閉塞することが可能となる。この点、枢動板部21における適宜の位置に貫通孔又は切り欠きを設けることにより、本体部10を取り外したり本体部10を引き上げたりすることなく、枢動板部21を閉塞方向に枢動可能としてもよい。
【符号の説明】
【0112】
100…外装付ハーネス
1…電線
2…ワイヤーハーネス
3…外装部材
10…本体部
11…底板部
12…側板部
12t…側板部の先端部分
13…仕切板部
14…治具固定部
15…電線固定部
20…蓋部
21…枢動板部
21t…枢動板部の先端部分
21b…枢動板部の基端部分
22…面取り形状
30…ヒンジ部
31…連結板部
40…別蓋体
50…配索治具
C1…曲角部
C2…交差部
1op…開口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15