(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】アンカー部及びアンカー部を備えたクランプ
(51)【国際特許分類】
F16B 19/00 20060101AFI20241111BHJP
F16B 2/08 20060101ALI20241111BHJP
H02G 3/30 20060101ALI20241111BHJP
F16L 3/137 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
F16B19/00 B
F16B2/08 U
H02G3/30
F16L3/137
(21)【出願番号】P 2021029834
(22)【出願日】2021-02-26
【審査請求日】2023-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】江崎 敢
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-064476(JP,A)
【文献】特開2017-041930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 17/00-19/14
F16B 2/00-2/26
H02G 3/30
F16L 3/137
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定対象に固定されるアンカー部であって、
前記固定対象のアンカー孔に挿入される挿入軸部と、
前記挿入軸部の基端側に設けられて前記固定対象の表面に当接する支持板部と、
前記挿入軸部の側方側に設けられて前記固定対象の裏面あるいは前記アンカー孔の角部に引っ掛かる一対の係止爪部とを有しており、
前記挿入軸部の外周面には、一対の前記係止爪部が配置された配置方向に対して交差する交差方向に、前記アンカー孔の内周面に当接する当接部が設けられ
、
前記当接部は、前記挿入軸部の外周面における前記交差方向の両側に設けられるとともに、前記挿入軸部の外周面から前記交差方向に向かって突出するとともに、前記アンカー孔への前記挿入軸部の挿入方向あるいは前記挿入方向に対して傾斜した傾斜方向に延び、厚み方向に湾曲した状態で前記アンカー孔の内周面と前記挿入軸部の前記外周面との隙間に挟まるリブで構成され、
前記リブは、互いに間隔を隔てて複数枚設けられた
アンカー部。
【請求項2】
前記リブは、前記支持板部の当接面につながって設けられた
請求項
1に記載のアンカー部。
【請求項3】
前記リブにおける前記挿入方向の先端部分には、前記挿入軸部の先端側から基端側に向かうにつれて徐々にリブ高さが高くなる案内部が設けられた
請求項
1又は請求項2に記載のアンカー部。
【請求項4】
前記リブの前記挿入方向に直交する断面積が、前記アンカー孔に前記挿入軸部が挿入された状態における当該アンカー孔の隙間面積の半分以下である
請求項
1乃至請求項
3のいずれかに記載のアンカー部。
【請求項5】
被固定部材を保持するハーネス保持部と、
請求項1乃至請求項
4のいずれかに記載の前記アンカー部とで構成された
クランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アンカー部及びアンカー部を備えたクランプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えばワイヤーハーネスを保持するとともに、ワイヤーハーネスを固定対象に固定するクランプが知られている(特許文献1参照)。かかるクランプは、固定対象に固定されるアンカー部を有している。
【0003】
アンカー部は、固定対象のアンカー孔に挿入される挿入軸部と、挿入軸部の基端側に設けられて固定対象の表面に当接する支持板部と、挿入軸部の側方側に設けられて固定対象の裏面あるいはアンカー孔の角部に引っ掛かる一対の係止爪部とを有している。
【0004】
ところで、このようなアンカー部は、固定対象に対してガタついてしまう場合があった。つまり、アンカー孔の内周面とアンカー孔に挿入された挿入軸部の外周面との間に隙間が生じ、この隙間に起因してアンカー部がガタついてしまう場合があった。そこで、固定対象に対してガタつかないアンカー部及びアンカー部を備えたクランプが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、固定対象に対してガタつかないアンカー部及びアンカー部を備えたクランプを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、固定対象に固定されるアンカー部であって、前記固定対象のアンカー孔に挿入される挿入軸部と、前記挿入軸部の基端側に設けられて前記固定対象の表面に当接する支持板部と、前記挿入軸部の側方側に設けられて前記固定対象の裏面あるいは前記アンカー孔の角部に引っ掛かる一対の係止爪部とを有しており、前記挿入軸部の外周面には、一対の前記係止爪部が配置された配置方向に対して交差する交差方向に、前記アンカー孔の内周面に当接する当接部が設けられ、前記当接部は、前記挿入軸部の外周面における前記交差方向の両側に設けられるとともに、前記挿入軸部の外周面から前記交差方向に向かって突出するとともに、前記アンカー孔への前記挿入軸部の挿入方向あるいは前記挿入方向に対して傾斜した傾斜方向に延び、厚み方向に湾曲した状態で前記アンカー孔の内周面と前記挿入軸部の前記外周面との隙間に挟まるリブで構成され、前記リブは、互いに間隔を隔てて複数枚設けられたことを特徴としている。
【0008】
なお、本発明における交差方向の両側とは、厳密な線対称又は点対象に限定するのではなく、ある程度の位置のズレを許容する概念である。
また、本発明におけるリブとは、特定の形状に限定するのではなく、薄板状に形成されたものを全て包含する概念である。
なお、本発明における間隔とは、三つ以上のリブが設けられている場合において、リブとリブの間の距離が全て等しいことを限定するものではない。
【0009】
この発明により、固定対象に対するアンカー部のガタつきを防止できる。
詳述すると、本願発明に係るアンカー部は、固定対象のアンカー孔に挿入される挿入軸部と、挿入軸部の基端側に設けられて固定対象の表面に当接する支持板部と、挿入軸部の側方側に設けられて固定対象の裏面あるいはアンカー孔の角部に引っ掛かる一対の係止爪部とを有している。そして、挿入軸部の外周面には、一対の係止爪部が配置された配置方向に対して交差する交差方向に、アンカー孔の内周面に当接する当接部が設けられている。そのため、当接部がアンカー孔の内周面と挿入軸部の外周面との隙間に挟まり、挿入軸部が自由に動かないように支持することができる。したがって、固定対象に対するアンカー部のガタつきを防止することが可能となる。
【0010】
また、前記当接部は、前記挿入軸部の外周面における前記交差方向の両側に設けられているため、挿入軸部の両側において、当接部がアンカー孔の内周面と挿入軸部の外周面との隙間に挟まり、挿入軸部がアンカー孔の中央付近から自由に動かないように支持することができる。したがって、固定対象に対するアンカー部のガタつきを防止することが可能となる。
【0011】
また、前記当接部は、前記挿入軸部の外周面から前記交差方向に向かって突出するとともに、前記アンカー孔への前記挿入軸部の挿入方向あるいは前記挿入方向に対して傾斜した傾斜方向に延びるリブで構成されているため、アンカー孔の内周面に当接するリブを介して挿入軸部を付勢しておくことで、挿入軸部が動かないように支持する機能が確実に発揮される。また、アンカー部に対して荷重が作用しても、弾性力を有するリブが撓むことによって荷重を緩衝する機能が確実に発揮される。したがって、固定対象に対するアンカー部のガタつきを防止することが可能となる。
【0012】
また、前記リブは、互いに間隔を隔てて複数設けられているため、アンカー孔の内周面に当接する複数のリブを介して挿入軸部を付勢しておくことで、挿入軸部が動かないように支持する機能がより確実に発揮される。また、アンカー部に対してあらゆる方向から荷重が作用しても、いずれか一つ又は複数のリブが撓むことによって荷重を緩衝する機能がより確実に発揮される。したがって、固定対象に対するアンカー部のガタつきを防止することが可能となる。
【0013】
またこの発明の態様として、前記リブは、前記支持板部の当接面につながって一体的に設けられてもよい。
なお、本発明における当接面とは、固定対象の表面に当接する支持板部の一面を指している。
【0014】
この発明により、支持板部及びリブの剛性を高めることができる。そして、支持板部の剛性を高めることは、固定対象に対する支持板部の付勢力を強め、アンカー部をより安定的に支持することにつながる。また、リブの剛性を高めることは、固定対象に対するリブの付勢力を強め、アンカー部をより安定的に支持することにつながる。したがって、固定対象に対するアンカー部のガタつきを防止することが可能となる。
【0015】
またこの発明の態様として、前記リブにおける前記挿入方向の先端部分には、前記挿入軸部の先端側から基端側に向かうにつれて徐々にリブ高さが高くなる案内部が設けられてもよい。
なお、本発明におけるリブ高さとは、挿入軸部の中心軸からリブの外縁部までの長さとする。
【0016】
この発明により、固定対象のアンカー孔に対して挿入軸部を挿入する際に、アンカー孔の入口にリブが引っ掛からず、円滑に挿入することができる。また、案内部が先細りになっていることから、アンカー孔の中央に挿入軸部を案内することができる。そのため、あらゆる方向に対してバラつきなく、挿入軸部を支持する機能と荷重を緩衝する機能が発揮される。したがって、固定対象に対するアンカー部のガタつきを防止することが可能となる。
【0017】
またこの発明の態様として、前記リブの前記挿入方向に直交する断面積が、前記アンカー孔に前記挿入軸部が挿入された状態における隙間面積の半分以下であってもよい。
なお、本発明における隙間面積とは、アンカー孔の内周面よりも内側で挿入軸部の外周面よりも外側の面積である。
【0018】
この発明により、リブによる付勢力とリブが有する弾性力をそれぞれ有効に利用できる。そして、挿入軸部を支持する機能と荷重を緩衝する機能とを適宜に平衡させることができる。したがって、固定対象に対するアンカー部のガタつきを防止することが可能となる。
【0019】
さらにこの発明は、被固定部材を保持するハーネス保持部と、前述したアンカー部とで構成されたクランプである。
なお、本発明におけるハーネス保持部とは、被固定部材に巻回されるバンド部を有するものや被固定部材に外嵌されるクランプ部を有するものだけでなく、被固定部材を保持するように構成されたものを全て包含する概念である。
【0020】
この発明により、かかるクランプにおいても、前述のアンカー部に関する効果を得ることができる。すなわち、固定対象に対するアンカー部のガタつきを防止することが可能となる。ひいては、固定対象に対する被固定部材のガタつきを防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、固定対象に対するアンカー部のガタつきを防止することが可能となる。ひいては、固定対象に対する被固定部材のガタつきを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】アンカー部を備えたバンドクランプの斜視図。
【
図6】ボディパネルにバンドクランプを固定する状況を示す説明図。
【
図8】他の実施形態に係るバンドクランプを示す正面図。
【
図9】他の実施形態に係るバンドクランプを示す正面図。
【
図10】他の実施形態に係るバンドクランプを示す正面図及び底面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
この発明の一実施例を図面に基づいて詳述する。
本願においては、全ての図面でバンドクランプ1の方向を示している。詳しくは矢印Fが前方側を示し、矢印Bが後方側を示し、矢印Rが右方側を示し、矢印Lが左方側を示している。そして、矢印Uが上方側を示し、矢印Dが下方側を示している。
【0024】
図1はアンカー部5を備えたバンドクランプ1の斜視図である。
図2は
図1における矢印Xの方向から視た側面図であり、
図3は
図1における矢印Yの方向から視た正面図であり、
図4は
図1における矢印Zの方向から視た底面図であり、
図5は
図4におけるX1-X1矢視断面図である。また、
図6はボディパネル200にバンドクランプ1を固定する状況を示す説明図であり、
図7は
図6におけるX2-X2矢視断面図である。そして、
図7及び
図8は他の実施形態に係るバンドクランプ1を示す正面図である。
【0025】
図1に示すように、バンドクランプ1は、ワイヤーハーネス100を保持するとともに、ワイヤーハーネス100を固定対象に固定するものである。詳しくは、複数の電線で構成されたワイヤーハーネス100を保持するとともに、ワイヤーハーネス100を固定対象である車両のボディパネル200に固定するものである。
【0026】
図2から
図5に示すように、バンドクランプ1は、ワイヤーハーネス100を保持するハーネス保持部2を有している。ハーネス保持部2は、バンド部3と、バックル部4とで構成されている。また、バンドクランプ1は、アンカー部5を有している。アンカー部5は、ボディパネル200のアンカー孔20hに挿入される(
図1参照)。
【0027】
バンド部3は、長く帯状に形成された部位である(
図1ではバンド部3の余長部分を切断した状態である)。バンド部3の先端部分から中途部分における内周面3aには、バンド部3の長手方向に沿って係止帯31が設けられている。係止帯31は、凹形状と凸形状が交互に並んだ凹凸形状に形成されている。バンド部3は、作業者によってワイヤーハーネス100の外周に巻き付けられる。
【0028】
バックル部4は、バンド部3の基端部分につながった台形状に形成された部位である。バックル部4における上方側の内壁面4a(
図5参照)には、対向する下方側の内壁面4b(
図5参照)に向かって突出する係止片41が設けられている。係止片41は、前述の係止帯31に噛み合うように凸形状に形成されている。バックル部4は、作業者がバンド部3の先端部分を通すことにより、帯状であったバンド部3を環状に係止する。
【0029】
アンカー部5は、挿入軸部51と、支持板部52と、一対の係止爪部53とを有している。また、アンカー部5は、挿入軸部51の外周面51sから外側に向かって突出する六枚のリブ54を有している。以下に、挿入軸部51、支持板部52及び係止爪部53について説明した後に、リブ54について説明する。そして、
図6及び
図7を用いて、リブ54によってもたらされる作用と、その効果について詳しく説明することとする。
【0030】
挿入軸部51は、ボディパネル200のアンカー孔20hに挿入されるものである。挿入軸部51は、略柱形状に形成されている。挿入軸部51は、バックル部4と一体的に形成されており、前方側及び右方側から視て先端部分が先細りになっている(
図2及び
図3参照)。また、挿入軸部51は、中心軸Cに沿う下方側から視て長円形状に形成されている(
図4参照)。但し、その他の形状であってもよい。
【0031】
支持板部52は、挿入軸部51の基端側に設けられてボディパネル200の表面に当接するものである。支持板部52は、略皿形状に形成されている。支持板部52は、バックル部4及び挿入軸部51と一体的に形成されており、これらが連接している部分の全周から外側かつ斜め下方側に向かって張り出している(
図2及び
図3参照)。また、支持板部52は、中心軸Cに沿う下方側から視て長円形状に形成されている(
図4参照)。但し、その他の形状であってもよい。
【0032】
係止爪部53は、挿入軸部51の側方側(左方側及び右方側)に設けられてアンカー孔20hの角部に引っ掛かるものである。係止爪部53は、略楔形状に形成されている。係止爪部53は、挿入軸部51と一体的に形成されており、挿入軸部51における先端部分の左右の円弧部分から外側かつ斜め上方側に向かって張り出している(
図2及び
図3参照)。また、係止爪部53は、中心軸Cに沿う下方側から視て長方形状に形成されている(
図4参照)。但し、その他の形状であってもよい。
なお、支持板部52に対向する係止面53s(
図2及び
図3参照)は、アンカー孔20hの角部に引っ掛かるよう階段状に形成されている。
【0033】
リブ54は、挿入軸部51の外周面51sから外側に向かって突出しており、アンカー孔20hの内周面20s(
図6及び
図7参照)に当接するものである。リブ54は、一対の係止爪部53が配置された配置方向(左右方向:矢印Dx参照)に対して直角に交差する交差方向(前後方向:矢印Dy参照)に設けられている。また、リブ54は、挿入軸部51を挟んで交差方向の両側(前方側及び後方側)に設けられている。リブ54は、挿入軸部51の外周面51sにおける前方側面と後方側面に三枚ずつ設けられている。
なお、それぞれのリブ54は、全て同じ形状であり、互いに対して一定の間隔をあけて配置されている。
【0034】
さらに、本実施形態に係るバンドクランプ1においては、リブ54が挿入軸部51の挿入方向(上下方向:矢印Dz参照)に対して傾斜した傾斜方向に延びている。具体的には、挿入軸部51の先端側から基端側に向かうにつれて左旋回をするように傾いた傾斜方向に延びている(
図3及び
図4参照)。そして、リブ54の上方側端部は、支持板部52の当接面(下側面)につながっている。加えて、それぞれのリブ54の先端部分には、挿入軸部51の先端側から基端側に向かうにつれて徐々にリブ高さhが高くなる案内部54g(
図5参照)が設けられている。
なお、リブ高さhが最も高い部分(リブ54の上下方向の中途部分から上方側端部までの部分)においては、アンカー孔20hの半径r(
図1参照)よりも値が大きい。
【0035】
このような構成により、ボディパネル200のアンカー孔20hに挿入軸部51を挿入する際には、まずアンカー孔20hの入口にリブ54における案内部54gが当接する(
図6(a)参照)。案内部54gは、先端側から基端側に向かうにつれて徐々にリブ高さhが高くなる形状であるため、そのままアンカー孔20hに挿入することができる。このとき、アンカー孔20hの中央に挿入軸部51を案内することができる。
【0036】
その後、さらに挿入軸部51を挿入すると、リブ54にボディパネル200が食い込み、かつリブ54が撓んだ状態でアンカー孔20hの内周面20sと挿入軸部51の外周面51sとの隙間に挟まることとなる(
図6(b)参照)。このとき、全てのリブ54は、挿入軸部51の先端側から基端側に向かうにつれて左旋回をするように傾いているため、右方側に湾曲した状態でアンカー孔20hの内周面20sと挿入軸部51の外周面51sとの隙間に挟まることとなる(
図7参照)。このように、全てのリブ54を同じ方向に湾曲させることで、隣接するリブ54同士が干渉することを防いでいる。
【0037】
加えて、本実施形態に係るバンドクランプ1においては、リブ54の挿入方向(上下方向:矢印Dz参照)に直交する断面積が、アンカー孔20hに挿入軸部51が挿入された状態における隙間面積の半分以下である。すなわち、
図7に示すように、アンカー孔20hの内周面20sと挿入軸部51の外周面51sとの隙間に挟まった六枚のリブ54の断面積をSaとし、アンカー孔20hの内周面20sと挿入軸部51の外周面51sとの隙間面積をSbとした場合、2Sa≦Sbの関係を満たしている。これは、リブ54の形状や数量、バンドクランプ1に用いられる材質(ポリプロピレン等)等を考慮し、挿入軸部51を支持する機能と荷重を緩衝する機能とが適宜に平衡する関係である。
【0038】
以上のように、ボディパネル200に固定されるアンカー部5は、ボディパネル200のアンカー孔20hに挿入される挿入軸部51と、挿入軸部51の基端側に設けられてボディパネル200の表面に当接する支持板部52と、挿入軸部51の側方側(右方側及び左方側)に設けられてアンカー孔20hの角部に引っ掛かる一対の係止爪部53とを有している。そして、挿入軸部51の外周面51sには、一対の係止爪部53が配置された配置方向(左右方向:矢印Dx参照)に対して交差する交差方向(前後方向:矢印Dy参照)に、アンカー孔20hの内周面20sに当接する当接部(リブ54)が設けられたことを特徴としている。
【0039】
このようなアンカー部5によれば、ボディパネル200に対するアンカー部5のガタつきを防止できる。
詳述すると、本願発明に係るアンカー部5は、ボディパネル200のアンカー孔20hに挿入される挿入軸部51と、挿入軸部51の基端側に設けられてボディパネル200の表面に当接する支持板部52と、挿入軸部51の側方側に設けられてアンカー孔20hの角部に引っ掛かる一対の係止爪部53とを有している。そして、挿入軸部51の外周面51sには、一対の係止爪部53が配置された配置方向(左右方向:矢印Dx参照)に対して交差する交差方向(前後方向:矢印Dy参照)に、アンカー孔20hの内周面20sに当接する当接部(リブ54)が設けられている。そのため、当接部(リブ54)がアンカー孔20hの内周面20sと挿入軸部51の外周面51sとの隙間に挟まり、挿入軸部51が自由に動かないように支持することができる。したがって、ボディパネル200に対するアンカー部5のガタつきを防止することが可能となる。
【0040】
また、アンカー部5において、当接部(リブ54)は、挿入軸部51の外周面51sにおける交差方向(前後方向:矢印Dy参照)の両側に設けられている。バンドクランプ1においては、中心軸Cを中心とする点対称となる位置に設けられている。
【0041】
このようなアンカー部5によれば、挿入軸部51の両側において、当接部(リブ54)がアンカー孔20hの内周面20sと挿入軸部51の外周面51sとの隙間に挟まり、挿入軸部51がアンカー孔20hの中央付近から自由に動かないように支持することができる。したがって、ボディパネル200に対するアンカー部5のガタつきを防止することが可能となる。
【0042】
また、アンカー部5において、当接部(リブ54)は、挿入軸部51の外周面51sから交差方向(前後方向:矢印Dy参照)に向かって突出するとともに、アンカー孔20hへの挿入軸部51の挿入方向(上下方向:矢印Dz参照)に対して傾斜した傾斜方向に延びるリブ54で構成されている。リブ54は、薄板状に形成されており、リブ高さh(
図5参照)は、アンカー孔20hの半径r(
図1参照)よりも値が大きい。
【0043】
このようなアンカー部5によれば、アンカー孔20hの内周面20sに当接するリブ54を介して挿入軸部51を付勢しておくことで、挿入軸部51が動かないように支持する機能が確実に発揮される。また、アンカー部5に対して荷重が作用しても、弾性力を有するリブ54が撓むことによって荷重を緩衝する機能が確実に発揮される。したがって、ボディパネル200に対するアンカー部5のガタつきを防止することが可能となる。
【0044】
また、アンカー部5において、リブ54は、互いに間隔を隔てて複数設けられている。具体的には、挿入軸部51の外周面51sにおける前方側面と後方側面に一定の距離をあけて三枚ずつの計六枚が設けられている。
【0045】
このようなアンカー部5によれば、アンカー孔20hの内周面20sに当接する六枚のリブ54を介して挿入軸部51を付勢しておくことで、挿入軸部51が動かないように支持する機能がより確実に発揮される。また、アンカー部5に対してあらゆる方向から荷重が作用しても、いずれか一つ又は複数のリブ54が撓むことによって荷重を緩衝する機能がより確実に発揮される。したがって、ボディパネル200に対するアンカー部5のガタつきを防止することが可能となる。
【0046】
また、アンカー部5において、リブ54は、支持板部52の当接面(下側面)につながって一体的に設けられている。当接面とは、ボディパネル200の表面に当接する支持板部52の一面である。
【0047】
このようなアンカー部5によれば、支持板部52及びリブ54の剛性を高めることができる。そして、支持板部52の剛性を高めることは、ボディパネル200に対する支持板部52の付勢力を強め、アンカー部5をより安定的に支持することにつながる。また、リブ54の剛性を高めることは、ボディパネル200に対するリブ54の付勢力を強め、アンカー部5をより安定的に支持することにつながる。したがって、ボディパネル200に対するアンカー部5のガタつきを防止することが可能となる。
【0048】
また、アンカー部5において、リブ54における挿入方向(上下方向:矢印Dz参照)の先端部分には、挿入軸部51の先端側から基端側に向かうにつれて徐々にリブ高さhが高くなる案内部54gが設けられている。そして、リブ高さh(
図5参照)が最も高い部分においては、アンカー孔20hの半径r(
図1参照)よりも値が大きい。
【0049】
このようなアンカー部5によれば、ボディパネル200のアンカー孔20hに対して挿入軸部51を挿入する際に、アンカー孔20hの入口にリブ54が引っ掛からず、円滑に挿入することができる。また、案内部54gが先細りになっていることから、アンカー孔20hの中央に挿入軸部51を案内することができる。そのため、あらゆる方向に対してバラつきなく、挿入軸部51を支持する機能と荷重を緩衝する機能が発揮される。したがって、ボディパネル200に対するアンカー部5のガタつきを防止することが可能となる。
【0050】
また、アンカー部5において、リブ54の挿入方向(上下方向:矢印Dz参照)に直交する断面積が、アンカー孔20hに挿入軸部51が挿入された状態における隙間面積の半分以下である。これは、リブ54の形状や数量、バンドクランプ1に用いられる材質(ポリプロピレン等)等から普遍的に定められる。
【0051】
このようなアンカー部5によれば、リブ54による付勢力とリブ54が有する弾性力をそれぞれ有効に利用できる。そして、挿入軸部51を支持する機能と荷重を緩衝する機能とを適宜に平衡させることができる。したがって、ボディパネル200に対するアンカー部5のガタつきを防止することが可能となる。
【0052】
また、ワイヤーハーネス100を保持するハーネス保持部2と、アンカー部5とで構成されたバンドクランプ1を発明の対象としている。バンドクランプ1において、ハーネス保持部2は、ワイヤーハーネス100に巻回されるバンド部3を有するものである。
【0053】
このようなバンドクランプ1においても、前述のアンカー部5に関する効果を得ることができる。すなわち、ボディパネル200に対するアンカー部5のガタつきを防止することが可能となる。ひいては、ボディパネル200に対するワイヤーハーネス100のガタつきを防止することが可能となる。
【0054】
この発明の構成と前述の実施形態との対応において、この発明のバンドクランプはバンドクランプ1に対応し、
以下同様に、
ハーネス保持部はハーネス保持部2に対応し、
バンド部はバンド部3に対応し、
バックル部はバックル部4に対応し、
アンカー部はアンカー部5に対応し、
挿入軸部は挿入軸部51に対応し、
挿入軸部の外周面は外周面51sに対応し、
支持板部は支持板部52に対応し、
係止爪部は係止爪部53に対応し、
当接部及びリブはリブ54に対応し、
案内部は案内部54gに対応し、
被固定部材はワイヤーハーネス100に対応し、
固定対象はボディパネル200に対応し、
アンカー孔はアンカー孔20hに対応し、
アンカー孔の内周面は内周面20sに対応し、
配置方向は左右方向として矢印Dxに対応し、
交差方向は前後方向として矢印Dyに対応し、
挿入方向は上下方向として矢印Dzに対応するも、この発明は、前述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施形態を得ることができる。
【0055】
例えば前述したバンドクランプ1においては、リブ54が挿入軸部51の挿入方向(上下方向:矢印Dz参照)に対して傾斜した傾斜方向に延びている。しかし、
図8(a)に示すように、リブ54が挿入軸部51の挿入方向(上下方向:矢印Dz参照)に対して平行に延びていてもよい。
【0056】
このような構成とする場合、前述のバンドクランプ1と同様の効果を得つつも、挿入軸部51の外周面51sにおける前方側面と後方側面に対して垂直な抜き金型が不要となるので、生産性が向上するものと考えられる。
【0057】
また、
図8(b)に示すように、一方のリブ54が挿入軸部51の先端側から基端側に向かうにつれて左旋回をするように傾いた傾斜方向に伸びており、他方のリブ54が挿入軸部51の先端側から基端側に向かうにつれて右旋回をするように傾いた傾斜方向に伸びていてもよい。
【0058】
このような構成とする場合、前述のバンドクランプ1と同様の効果を得つつも、リブ54が湾曲する方向が互いに対して反対となるので、リブ54の弾性力によって生じるアンカー部5を回転させようとする力を相殺するものと考えられる。
【0059】
さらに、
図9(a)に示すように、リブ54が挿入軸部51の先端側から基端側に向かうにつれて左旋回をするように傾いた螺旋状に延びていてもよいし、リブ54が挿入軸部51の先端側から基端側に向かうにつれて右旋回をするように傾いた螺旋状に延びていてもよい。
【0060】
このような構成とする場合、前述のバンドクランプ1と同様の効果を得つつも、アンカー孔20hの内周面20sと挿入軸部51の外周面51sとの隙間に多くのリブ54が挟まるので、少なくとも挿入軸部51を支持する機能が向上するものと考えられる。また、挿入軸部51が円柱形状である場合、リブ54を利用してアンカー孔20hにネジ込むことも可能となる。
【0061】
加えて、
図9(b)に示すように、リブ54が挿入軸部51の挿入方向(上下方向:矢印Dz参照)に対して垂直に延びていてもよい。換言すると、リブ54が支持板部52に対して平行あるいは支持板部52が当接するボディパネル200に対して平行に延びていてもよい。
【0062】
このような構成とする場合、前述のバンドクランプ1と同様の効果を得つつも、アンカー孔20hの内周面20sと挿入軸部51の外周面51sとの隙間に一つのリブ54が長く挟まるので、少なくとも挿入軸部51を支持する機能が向上するものと考えられる。また、ボディパネル200の厚さが厚い場合、複数のリブ54が挟まるので、挿入軸部51を支持する機能をより向上させることが可能となる。
【0063】
最後に、前述したバンドクランプ1における挿入軸部51は、中心軸Cに沿う下方側から視て長円形状に形成されている。また、支持板部52も中心軸Cに沿う下方側から視て長円形状に形成されている。しかし、
図10(a)及び
図10(b)に示すように、下方側から視て円形状であってもよい。この場合においても、それぞれのリブ54は、全て同じ形状であり、互いに対して一定の角度をあけて配置される。
【0064】
このような構成であったとしても、前述のバンドクランプ1と同様の効果を得ることができる。具体的には、ボディパネル200に対するアンカー部5のガタつきを防止することが可能となる。ひいては、ボディパネル200に対するワイヤーハーネス100のガタつきを防止することが可能となる。そして、リブ54を前述した様々な形態としてもよい。このようにしても、前述と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0065】
1…バンドクランプ
2…ハーネス保持部
3…バンド部
4…バックル部
5…アンカー部
51…挿入軸部
51s…外周面
52…支持板部
53…係止爪部
54…リブ
54g…案内部
100…ワイヤーハーネス
200…ボディパネル
20h…アンカー孔
20s…内周面
Dx…矢印(配置方向)
Dy…矢印(交差方向)
Dz…矢印(挿入方向)