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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】成膜装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/04 20060101AFI20241111BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20241111BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20241111BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20241111BHJP
   H01L 21/68 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
C23C14/04 A
H05B33/10
H05B33/14 A
H01L21/68 N
H01L21/68 F
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021030406
(22)【出願日】2021-02-26
(65)【公開番号】P2022131452
(43)【公開日】2022-09-07
【審査請求日】2024-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河合 慈
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 宣之
(72)【発明者】
【氏名】富井 広樹
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 克栄
【審査官】宮崎 園子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/199759(WO,A1)
【文献】特開2020-111822(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/04
H05B 33/10
H10K 50/10
H01L 21/683
H01L 21/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部を真空に保持するチャンバと、
前記チャンバの内部に設けられ、基板を吸着するための吸着板と、
前記チャンバの内部に設けられ、マスクを支持するマスク支持手段と、
前記吸着板に吸着された前記基板とマスクとのアライメントを行うアライメント手段と、
前記チャンバの内部に設けられ、前記マスクを前記吸着板へ引き付けるための磁力を発生する磁力発生部材と、
前記磁力発生部材を昇降する昇降手段と、
前記磁力発生部材に作用する外力に応じて、前記磁力発生部材が回動及び上下移動の少なくとも一方を行うように、前記磁力発生部材と昇降手段とを接続する接続機構と、を備える
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記接続機構は、前記磁力発生部材と前記昇降手段とを接続するための自在継手を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記接続機構は、
前記昇降手段側に備えられる軸部と、
前記磁力発生部材側に備えられ、前記軸部が挿通される挿通孔を有する支持部と、を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記支持部を前記軸部に沿って前記昇降手段に向けて付勢する付勢部材を備える
ことを特徴とする請求項3に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記支持部を前記軸部に沿って前記昇降手段とは反対側に向けて付勢する付勢部材を備える
ことを特徴とする請求項3に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記接続機構は、
前記磁力発生部材が回動する方向と上下移動する方向の双方に弾性変形する弾性部材を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記磁力発生部材または前記磁力発生部材と同期して移動する移動部材には、前記吸着板への接触の有無を検知する検知手段が複数設けられており、
前記吸着板に接触した前記検知手段の個数と配置位置によって、前記磁力発生部材と前記吸着板との平行度が検出される
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一つに記載の成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に薄膜を形成するための成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ELディスプレイ等の製造においては、マスクを用いて基板上に成膜材料により薄膜が形成される。成膜の前処理としてマスクと基板とのアライメントが行われ、両者が重ね合わされる。特許文献1には、静電チャック等の吸着板に基板を吸着させた状態で、基板とマスクとを接近させてアライメントを行うことが開示されている。また、アライメントの後に、磁石プレートによってマスクを基板に引き付けることが開示されている。
【0003】
従来技術では、マスクを基板に引き付ける際に、磁石プレートが吸着板から離間している。そのため、マスクを引き付ける力が弱く、成膜時に基板とマスクとの間にギャップが生じる可能性がある。結果として、成膜精度が低下する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-65959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、成膜精度の向上を図ることのできる成膜装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0007】
すなわち、本発明の成膜装置は、
内部を真空に保持するチャンバと、
前記チャンバの内部に設けられ、基板を吸着するための吸着板と、
前記チャンバの内部に設けられ、マスクを支持するマスク支持手段と、
前記吸着板に吸着された前記基板とマスクとのアライメントを行うアライメント手段と、
前記チャンバの内部に設けられ、前記マスクを前記吸着板へ引き付けるための磁力を発生する磁力発生部材と、
前記磁力発生部材を昇降する昇降手段と、
前記磁力発生部材に作用する外力に応じて、前記磁力発生部材が回動及び上下移動の少なくとも一方を行うように、前記磁力発生部材と昇降手段とを接続する接続機構と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように、成膜精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】電子デバイスの製造ラインの一部の模式図。
図2】一実施形態に係る成膜装置の概略図。
図3】基板支持ユニット及び吸着板の説明図。
図4】吸着板の電気配線の説明図。
図5】計測ユニットの説明図。
図6】調整ユニットの説明図。
図7】吸着板を用いた基板とマスクとの重ね合わせのプロセスの説明図。
図8】実施例1に係る接続機構のメカニズムの説明図。
図9】実施例2に係る接続機構の模式的断面図。
図10】実施例3に係る接続機構の模式的断面図。
図11】実施例4に係る接続機構の模式的断面図。
図12】実施例5に係る接続機構の模式的断面図。
図13】実施例6に係る接続機構の模式的断面図。
図14】接続機構の適用例の説明図。
図15】プレートユニットの応用例の説明図。
図16】有機EL表示装置の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
(実施形態)
<電子デバイスの製造ライン>
図1は、本発明の成膜装置が適用可能な電子デバイスの製造ラインの構成の一部を示す模式図である。図1の製造ラインは、例えば、スマートフォン用の有機EL表示装置の表示パネルの製造に用いられるもので、基板100が成膜ブロック301に順次搬送され、基板100に有機ELの成膜が行われる。なお、本実施例においては、クラスタ型の製造装置を例にして説明するが、本発明に係る成膜装置が適用される製造装置は、インライン型の製造装置にも適用可能である。
【0012】
成膜ブロック301には、平面視で八角形の形状を有する搬送室302の周囲に、基板100に対する成膜処理が行われる複数の成膜室303a~303dと、使用前後のマスクが収納されるマスク格納室305とが配置されている。搬送室302には、基板100を搬送する搬送ロボット302aが配置されている。搬送ロボット302aは、基板100を保持するハンドと、ハンドを水平方向に移動する多関節アームとを含む。換言すれば、成膜ブロック301は、搬送ロボット302aの周囲を取り囲むように複数の成膜室303a~303dが配置されたクラスタ型の成膜ユニットである。なお、成膜室303a~303dを総称する場合、あるいは、区別しない場合は成膜室303と表記する。
【0013】
基板100の搬送方向(矢印方向)で、成膜ブロック301の上流側、下流側には、それぞれ、バッファ室306、旋回室307、受渡室308が配置されている。製造過程において、各室は真空状態に維持される。なお、図1においては成膜ブロック301を1つしか図示していないが、本実施形態に係る製造ラインは複数の成膜ブロック301を有しており、複数の成膜ブロック301が、バッファ室306、旋回室307、受渡室308で構成される連結装置で連結された構成を有する。なお、連結装置の構成はこれに限定はされず、例えばバッファ室306又は受渡室308のみで構成されていてもよい。
【0014】
搬送ロボット302aは、上流側の受渡室308から搬送室302への基板100の搬入、成膜室303間での基板100の搬送、マスク格納室305と成膜室303との間でのマスクの搬送、及び、搬送室302から下流側のバッファ室306への基板100の搬出を行う。
【0015】
バッファ室306は、製造ラインの稼働状況に応じて基板100を一時的に格納するための室である。バッファ室306には、カセットとも呼ばれる基板収納棚と、昇降機構とが設けられる。基板収納棚は、複数枚の基板100を基板100の被処理面(被成膜面)が重力方向下方を向く水平状態を保ったまま収納可能な多段構造を有する。昇降機構は、基板100が搬入又は搬出される段を搬送位置に合わせるために、基板収納棚を昇降させる。これにより、バッファ室306には複数の基板100を一時的に収容し、滞留させることができる。
【0016】
旋回室307は基板100の向きを変更する装置を備えている。本実施形態では、旋回室307は、旋回室307に設けられた搬送ロボットによって基板100の向きを180度回転させる。旋回室307に設けられた搬送ロボットが、バッファ室306で受け取った基板100を支持した状態で180度旋回し受渡室308に引き渡すことで、バッファ室306内と受渡室308とで基板の前端と後端が入れ替わる。これにより、成膜室303に基板100を搬入する際の向きが、各成膜ブロック301で同じ向きになるため、基板Sに対する成膜のスキャン方向やマスクの向きを各成膜ブロック301において一致させることができる。このような構成とすることで、各成膜ブロック301においてマスク格納室305にマスクを設置する向きを揃えることができ、マスクの管理が簡易化されユーザビリティを高めることができる。
【0017】
製造ラインの制御系は、ホストコンピュータとしてライン全体を制御する上位装置300と、各構成を制御する制御装置14a~14d、309、310とを含み、これらは有線又は無線の通信回線300aを介して通信可能である。制御装置14a~14dは、成膜室303a~303dに対応して設けられ、後述する成膜装置1を制御する。なお、制御装置14a~14dを総称する場合、あるいは、区別しない場合は制御装置14と表記する。
【0018】
制御装置309は搬送ロボット302aを制御する。制御装置310は旋回室307に設けられた搬送ロボットを制御する。上位装置300は、基板100に関する情報や搬送タイミング等の指示を各制御装置14、309、310に送信し、各制御装置14、309、310は受信した指示に基づき各構成を制御する。
【0019】
<成膜装置の概要>
図2は一実施形態に係る成膜装置1の概略図である。成膜室303に設けられる成膜装置1は、基板100に成膜材料によって薄膜を形成する装置であり、マスク101を用いて所定のパターンの薄膜を形成する。成膜装置1により成膜が行われる基板100の材質は、ガラス、樹脂、金属等の材料を適宜選択可能であり、例えば、ガラス上にポリイミド等の樹脂層が形成されたものが好適に用いられる。成膜材料としては、有機材料、無機材料(金属、金属酸化物など)などの物質が採用される。成膜装置1は、例えば表示装置(フラットパネルディスプレイなど)や薄膜太陽電池、有機光電変換素子(有機薄膜撮像素子)等の電子デバイスや、光学部材等を製造する製造装置に適用可能であり、特に、有機ELパネルを製造する製造装置に好適に用いられる。以下の説明においては、成膜装置1が真空蒸着によって基板100に成膜を行う例について説明する。ただし、本発明はこれに限定はされず、スパッタやCVD等を行う各種成膜装置に適用可能である。なお、各図において矢印Zは鉛直方向を示し、矢印X及び矢印Yは互いに直交する水平方向を示す。
【0020】
成膜装置1は、内部を真空に保持可能な箱型の真空チャンバ3(単にチャンバとも呼ぶ)を有する。真空チャンバ3の内部空間3aは、真空雰囲気か、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気に維持されている。本実施形態では、真空チャンバ3は不図示の真空ポンプに接続されている。なお、本明細書において「真空」とは、大気圧より低い圧力の気体で満たされた状態、換言すれば減圧状態をいう。真空チャンバ3の内部空間3aには、基板10
0を水平姿勢で支持する基板支持ユニット6、マスク101を支持するマスク支持手段としてのマスク台5、成膜ユニット4、プレートユニット9、吸着板15が配置される。マスク101は、基板100上に形成する薄膜パターンに対応する開口パターンをもつメタルマスクであり、マスク台5の上に載置されている。なお、マスク台5は、マスク101を所定の位置に固定する他の形態の手段に置換可能である。マスク101としては、枠状のマスクフレームに数μm~数十μm程度の厚さのマスク箔が溶接固定された構造を有するマスクを用いることができる。マスク101の材質は特に限定はされないが、インバー材などの熱膨張係数の小さい金属を用いることが好ましい。成膜処理は、基板100がマスク101の上に載置され、基板100とマスク101とが互いに重ね合わされた状態で行われる。
【0021】
プレートユニット9は、冷却プレート10と磁力発生部材としての磁石プレート11とを備える。冷却プレート10は磁石プレート11の下に、磁石プレート11に対してZ方向に変位可能に吊り下げられている。冷却プレート10は、成膜時に吸着板15と接触することにより、吸着板15に吸着された基板100を冷却する機能を有する。冷却プレート10は水冷機構等を備えて積極的に基板100を冷却するものに限定はされず、水冷機構等は設けられていないものの吸着板15と接触することによって基板100の熱を奪うような板状部材であってもよい。磁石プレート11は、磁力によってマスク101を引き寄せるプレートであり、基板100の上面に載置されて、成膜時に基板100とマスク101の密着性を向上させる機能を発揮する。
【0022】
なお、冷却プレート10については、設けない構成を採用することもできる。例えば、吸着板15に冷却機構が設けられている場合、冷却プレート10は設けなくてもよい。
【0023】
成膜ユニット4は、蒸発源を有するユニットであり、蒸発源の他、ヒータ、シャッタ、蒸発源の駆動機構、蒸発レートモニタなどを備えている。より具体的には、本実施形態では、成膜ユニット4は複数のノズル(不図示)がX方向に並んで配置され、それぞれのノズルから蒸着材料が放出されるリニア蒸発源である。例えば、リニア蒸発源は、蒸発源移動機構(不図示)によってY方向(装置の奥行き方向)に往復移動される。本実施形態では、成膜ユニット4が後述するアライメント装置2と同一の真空チャンバ3に設けられている。しかしながら、アライメントが行われる真空チャンバ3とは別のチャンバで成膜処理を行う実施形態では、成膜ユニット4は真空チャンバ3には配置されない。
【0024】
<アライメント装置>
成膜装置1は、基板100とマスク101とのアライメントを行うアライメント手段としてのアライメント装置2を備える。アライメント装置2は、基板支持ユニット6、吸着板15、位置調整ユニット20、距離調整ユニット22、プレートユニット昇降ユニット13、計測ユニット7、8、調整ユニット17、フローティング部19、検出ユニット16を備える。以下、アライメント装置の各構成について説明する。
【0025】
<<基板支持ユニット>>
アライメント装置2は、基板100の周縁部を支持する基板支持ユニット6を備える。図2に加えて図3を参照して説明する。図3は基板支持ユニット6及び吸着板15の説明図であり、これらを下側から見た図である。
【0026】
基板支持ユニット6は、その外枠を構成する複数のベース部61a~61dと、ベース部61a~61dから内側へ突出した複数の載置部62及び63を備える。なお、載置部62及び63は「受け爪」又は「フィンガ」とも呼ばれることがある。ベース部61a~61dは、それぞれ支持軸R3により支持されている。複数の載置部62は基板100の周縁部の長辺側を受けるようにベース部61a~61dに間隔を置いて配置される。また
、複数の載置部63は、基板100の周縁部の短辺側を受けるようにベース部61a~61dに間隔を置いて配置されている。搬送ロボット302aにより成膜装置1に搬入された基板100は、複数の載置部62及び63によって支持される。以下、ベース部61a~61dを総称する場合、あるいは、区別しない場合はベース部61と表記する。
【0027】
本実施形態では、複数の載置部62及び63は板バネで構成されており、複数の載置部62及び63により支持されている基板100を吸着板15に吸着させる際には、板バネの弾性力により基板100を吸着板15に対して押し付けることができる。
【0028】
なお、図3の例では4つのベース部61により部分的に切り欠きがある矩形の枠体が構成されているが、これには限定されず、ベース部61は矩形状の基板100の外周を取り囲むような切れ目のない矩形枠体であってもよい。ただし、複数のベース部61により切り欠きが設けられることで、搬送ロボット302aが載置部62及び63へと基板100を受け渡す際に、搬送ロボット302aがベース部61を避けて退避することができる。これにより、基板100の搬送及び受け渡しの効率を向上させることができる。
【0029】
なお、基板支持ユニット6には、複数の載置部62及び63に対応して複数のクランプ部が設けられ、載置部62及び63に載置された基板100の周縁部をクランプ部により挟んで保持する態様が採用されてもよい。
【0030】
<<吸着板>>
引き続き図2及び3を参照する。アライメント装置2は、真空チャンバ3の内部に設けられ、基板100を吸着可能な吸着板15を備える。本実施形態では、吸着板15は、基板支持ユニット6とプレートユニット9との間に設けられ、1つまたは複数の支持軸R1により支持されている。本実施形態では、吸着板15は、4つの支持軸R1により支持されている。一実施形態において、支持軸R1は円柱形状のシャフトである。
【0031】
また、本実施形態では、吸着板15は、基板100を静電気力によって吸着する静電チャックである。例えば、吸着板15は、セラミックス材質のマトリックス(基体とも呼ばれる)の内部に金属電極などの電気回路が埋め込まれた構造を有する。例えば、各電極配置領域151では、静電引力を発生させるためにプラス及びマイナスの電圧が印加される一対の電極が配置される。プラス電極及びマイナス電極は、一つの電極配置領域151内で交互に配置される。電極配置領域151に配置された金属電極にプラス(+)及びマイナス(-)電圧が印加されると、セラミックスマトリックスを通じて基板100に分極電荷が誘導され、基板100と吸着板15との間の静電気的な引力(静電気力)により、基板100が吸着板15の吸着面150に吸着固定される。
【0032】
また、吸着板15は、電極に加えられる電圧の大きさ、電圧の印加開始時点、電圧の維持時間、電圧の印加順序などを制御する電圧制御部(不図示)を備える。電圧制御部は、複数の電極配置領域151への電圧印加を、互いに独立に制御することができる。
【0033】
なお、電極配置領域151は適宜設定可能である。例えば、本実施形態では複数の電極配置領域151が互いに離間して設けられているが、1つの電極配置領域151が吸着板15の吸着面150の略全面に渡って形成されてもよい。
【0034】
また、吸着板15には、吸着板15と基板100との接触を検知する複数のタッチセンサ1621が埋設されている。本実施形態では、合計9つのタッチセンサ1621が設けられている。吸着板15の周縁部では、両長辺に沿ってそれぞれ4つずつが設けられ、吸着板15の中央部に1つが設けられている。このように、吸着板15の複数箇所にタッチセンサ1621が設けられることにより、基板100の全面が吸着面150に吸着されて
いるか否かを検知することができる。なお、タッチセンサ1621の数や配置は適宜変更可能である。
【0035】
また、本実施形態では、タッチセンサ1621は、自身と対象との接触をメカニカルに検知する。一例として、タッチセンサ1621は、その先端部がバネ等に付勢され、先端部が基板100等と接触していない状態では先端部が吸着面150から突出するように設けられる。そして、基板100がタッチセンサ1621の先端部に接触すると、先端部が基板100に押されて吸着板15側へと引っ込み、内部の接点と接触することで所定の電気信号が出力されるように構成される。なお、先端部の形状は特に限定されず、ボタン形状やロッド形状であり得る。対象と接触していない状態の先端部が吸着面150から突出する長さを適当に設定することにより、タッチセンサ1621は実質的に吸着板15と基板100との接触を検知することができる。また、複数のタッチセンサ1621は、後述するように、吸着板15とマスク台5との間の平行度を検出する検出ユニット16を構成する。
【0036】
また、本実施形態では、吸着板15には、基板100の吸着板15への吸着状態を検出するファイバセンサ1622が設けられている。ファイバセンサ1622は、発光部1622a及び受光部1622bを含む。発光部1622a及び受光部1622bは、吸着板15の下方、例えば吸着板15の数mm~数十mm下方に光路1622cを形成するように設けられる。基板100の一部が吸着板15に吸着されていない場合、重力によって当該一部が下方に撓む。吸着板15への基板100の吸着処理を行った後で基板100に撓みが発生している場合には、その撓みの部分が光路1622cを遮ることにより、基板100の撓みが検出される。すなわち、基板100の吸着が適切に行われていないことを検出することができる。なお、ファイバセンサ1622については、設けない構成を採用することもできる。
【0037】
また、吸着板15には複数の開口152が形成されており、後述する計測ユニット(第1計測ユニット7及び第2計測ユニット8)が複数の開口152を介して後述するマスクマークを撮像する。
【0038】
図4を併せて参照する。図4は、吸着板15から支持軸R1に至る構造を模式的に示している。また、図4は、吸着板の電気配線の説明図であり、吸着板15の電極配置領域151に配置される電極へ電気を供給するための配線が示されている。本実施形態の場合、吸着板15を支持する複数の支持軸R1が中空の筒状に形成されている。そして、プラス(+)及びマイナス(-)電圧を印加するための電線153がその内部を通過するように配線されている。図4の例では、プラス(+)及びマイナス(-)電圧を印加するための電線153がそれぞれ1本ずつ、計2本示されている。また、支持軸R1の下部から真空チャンバ3に延出した電線153は、吸着板15の短辺に沿って延び、短辺の略中央に設けられた電気接続部154に接続されている。つまり、電線153は、支持軸R1を介して真空チャンバ3の外部から内部へと導かれ、電気接続部154と接続されている。また、電線153から電気接続部154へと供給された電力が、電極配置領域151に配置された各電極へと供給される。
【0039】
また、本実施形態では、4本の支持軸R1が設けられており、これらの支持軸R1を通って、各種の電線(ケーブル)が真空チャンバ3の内部へと導かれる。一実施形態において、対角に設けられた2本の支持軸R1の内側を、吸着板15へと電気を供給する電線153がそれぞれ通過し、残りの2本の支持軸R1の内側を、タッチセンサ1621や後述するファイバセンサ1622等のケーブルが束ねられた状態で通過する。
【0040】
<<位置調整ユニット>>
アライメント装置2は、基板支持ユニット6により周縁部が支持された基板100、あるいは、吸着板15によって吸着された基板100と、マスク101と、の相対位置を調整する位置調整ユニット20を備える。位置調整ユニット20は、基板支持ユニット6または吸着板15をX-Y平面上で変位させることにより、マスク101に対する基板100の相対位置を調整する。すなわち、位置調整ユニット20は、マスク101と基板100の水平位置を調整するユニットであるとも言える。例えば、位置調整ユニット20は、基板支持ユニット6を、X方向及びY方向と、Z方向の軸周りの回転方向に対して変位させることができる。本実施形態では、マスク101の位置を固定し、基板100を変位させて、これらの相対位置を調整するが、マスク101を変位させて調整してもよく、あるいは、基板100とマスク101の双方を変位させてもよい。
【0041】
本実施形態では、位置調整ユニット20は、固定プレート20aと、可動プレート20bと、これらのプレート間に配置された複数のアクチュエータ201とを備える。固定プレート20aは真空チャンバ3の上壁部30上に固定されている。また、可動プレート20b上にはフレーム状の架台21が搭載されており、架台21には距離調整ユニット22及びプレートユニット昇降ユニット13が支持されている。アクチュエータ201により可動プレート20bが固定プレート20aに対して水平方向に変位すると、架台21、距離調整ユニット22及びプレートユニット昇降ユニット13が一体的に変位する。
【0042】
複数のアクチュエータ201は、例えば、可動プレート20bをX方向に変位させることのできるアクチュエータ及び可動プレート20bをY方向に変位させることのできるアクチュエータ等を含む。そして、これらの移動量を制御することにより、可動プレート20bを、X方向及びY方向と、Z方向の軸周りの回転方向に対して変位させることができる。例えば、複数のアクチュエータ201は、駆動源であるモータと、モータの駆動力を直線運動に変換するボールねじ機構等の機構を含み得る。
【0043】
<<距離調整ユニット>>
距離調整ユニット22は、吸着板15及び基板支持ユニット6を昇降させることで、これらとマスク台5との距離を調整し、基板100とマスク101とを基板100の厚み方向(Z方向)に接近及び離隔(離間)させる。換言すれば、距離調整ユニット22は、基板100とマスク101とを重ね合わせる方向に接近させたり、その逆方向に離隔させたりする。なお、距離調整ユニット22によって調整する「距離」はいわゆる垂直距離(又は鉛直距離)であり、距離調整ユニットは、マスク101と基板100の垂直位置を調整するユニットであるとも言える。
【0044】
図2に示すように、距離調整ユニット22は第1昇降プレート220を備える。架台21の側部にはZ方向に延びるガイドレール21aが形成されており、第1昇降プレート220はガイドレール21aに沿ってZ方向に昇降自在である。
【0045】
第1昇降プレート220は、複数の支持軸R1によって吸着板15を支持している。第1昇降プレート220が昇降するとそれに伴って吸着板15が昇降する。換言すれば、第1昇降プレート220は吸着板15を支持する複数の支持軸R1を支持しており、第1昇降プレート220の昇降により複数の支持軸R1が同期して昇降し、吸着板15がその平行度を保った状態で昇降する。また、第1昇降プレート220は、複数のアクチュエータ65及び複数の支持軸R3を介して基板支持ユニット6を支持している。第1昇降プレート220が昇降するとそれに伴って基板支持ユニット6が昇降する。また、複数のアクチュエータ65は、これらのアクチュエータ65にそれぞれ接続された複数の支持軸R3を鉛直方向に移動させることができる。基板支持ユニット6は複数のアクチュエータ65により吸着板15に対して垂直方向に相対的に移動する。複数のアクチュエータ65は、例えば、モータとボールねじ機構等により構成されることで、支持軸R3を鉛直方向に移動
させることができる。
【0046】
第1昇降プレート220の昇降についてより具体的に説明する。距離調整ユニット22は、架台21に支持され、第1昇降プレート220を昇降させるアクチュエータとしての駆動ユニット221を備えている。駆動ユニット221は、駆動源であるモータ221aの駆動力を第1昇降プレート220に伝達する機構である。駆動ユニット221の伝達機構として、本実施形態では、ボールねじ軸221bとボールナット221cとを有するボールねじ機構が採用されている。ボールねじ軸221bはZ方向に延設され、モータ221aの駆動力によりZ方向の軸周りに回転する。ボールナット221cは第1昇降プレート220に固定されており、ボールねじ軸221bと噛み合っている。ボールねじ軸221bの回転とその回転方向の切り替えによって、第1昇降プレート220はZ方向に昇降する。第1昇降プレート220の昇降量は、例えば、モータ221aの回転量を検知するロータリエンコーダ等のセンサの検知結果から制御することができる。これにより、基板100を吸着して支持している吸着板15のZ方向における位置を制御し、基板100とマスク101との接触、離隔を制御することができる。また、第1昇降プレート220の上部には、後述する調整ユニット17が設けられている。
【0047】
なお、本実施形態の距離調整ユニット22においては、マスク台5の位置が固定され、基板支持ユニット6及び吸着板15が移動することで、これらのZ方向の距離を調整する構成が採用されている。しかしながら、距離調整ユニットにおいては、このような構成に限定されることはない。基板支持ユニット6または吸着板15の位置を固定し、マスク台5を移動させて調整してもよく、あるいは、基板支持ユニット6、吸着板15、及びマスク台5のそれぞれを移動させて互いの距離を調整する構成を採用することもできる。
【0048】
<<プレートユニット昇降ユニット(昇降手段)>>
昇降手段としてのプレートユニット昇降ユニット13は、真空チャンバ3の外部に配置された第2昇降プレート12を昇降させることで、第2昇降プレート12に連結され、真空チャンバ3の内部に配置されたプレートユニット9を昇降させる。第2昇降プレート12には、一つまたは複数の支持軸R2が固定されている。そして、プレートユニット9に設けられた磁石プレート11と支持軸R2とが接続機構1100によって接続されている。本実施形態では、プレートユニット9は2つの支持軸R2により支持されている。支持軸R2は、磁石プレート11から接続機構1100を介して上方に延設されており、上壁部30の開口部、固定プレート20a及び可動プレート20bの各開口部、及び、第1昇降プレート220の開口部を通過して第2昇降プレート12に連結されている。
【0049】
第2昇降プレート12は案内軸12aに沿ってZ方向に昇降自在である。プレートユニット昇降ユニット13は、架台21に支持され、第2昇降プレート12を昇降させる駆動機構を備えている。この駆動機構は、駆動源であるモータ13aの駆動力を第2昇降プレート12に伝達する機構である。プレートユニット昇降ユニット13の伝達機構として、本実施形態では、ボールねじ軸13bとボールナット13cとを有するボールねじ機構が採用されている。ボールねじ軸13bはZ方向に延設され、モータ13aの駆動力によりZ方向の軸周りに回転する。ボールナット13cは第2昇降プレート12に固定されており、ボールねじ軸13bと噛み合っている。ボールねじ軸13bの回転とその回転方向の切り替えによって、第2昇降プレート12はZ方向に昇降する。第2昇降プレート12の昇降量は、例えば、モータ13aの回転量を検知するロータリエンコーダ等のセンサの検知結果から制御することができる。これにより、プレートユニット9のZ方向における位置を制御し、プレートユニット9と基板100との接触、離隔を制御することができる。なお、本実施例においては、駆動機構としてボールねじ機構を採用する場合を示したが、駆動機構としては、ラックアンドピニオン機構など各種公知技術を採用し得る。
【0050】
前述した各支持軸R1~R3が通過する真空チャンバ3の上壁部30の開口部は、各支持軸R1~R3がX方向及びY方向に変位可能な大きさを有している。真空チャンバ3の気密性を維持するため、各支持軸R1~R3が通過する上壁部30の開口部にはベローズ等が設けられる。例えば、第1昇降プレート220を支持する支持軸R1は、ベローズ31(図4等参照)で覆われる。
【0051】
<<計測ユニット>>
アライメント装置2は、基板支持ユニット6により周縁部が支持された基板100とマスク101の位置ずれを計測する計測ユニット(第1計測ユニット7及び第2計測ユニット8)を備える。図2に加えて図5を参照して説明する。図5は第1計測ユニット7及び第2計測ユニット8の説明図であり、基板100とマスク101の位置ずれの計測態様を示している。本実施形態の第1計測ユニット7及び第2計測ユニット8はいずれも画像を撮像する撮像装置(カメラ)である。第1計測ユニット7及び第2計測ユニット8は、上壁部30の上方に配置され、上壁部30に形成された窓部(不図示)を介して真空チャンバ3内の画像を撮像可能である。
【0052】
基板100には基板ラフアライメントマーク100a及び基板ファインアライメントマーク100bが形成されており、マスク101にはマスクラフアライメントマーク101a及びマスクファインマーク101bが形成されている。以下、基板ラフアライメントマーク100aを基板ラフマーク100aと呼び、基板ファインアライメントマーク100bを基板ファインマーク100bと呼び、両者をまとめて基板マークと呼ぶことがある。また、マスクラフアライメントマーク101aをマスクラフマーク101aと呼び、マスクファインアライメントマーク101bをマスクファインマーク101bと呼び、両者をまとめてマスクマークと呼ぶことがある。
【0053】
基板ラフマーク100aは、基板100の短辺中央部に形成されている。基板ファインマーク100bは、基板100の四隅に形成されている。マスクラフマーク101aは、基板ラフマーク100aに対応してマスク101の短辺中央部に形成されている。また、マスクファインマーク101bは基板ファインマーク100bに対応してマスク101の四隅に形成されている。
【0054】
第2計測ユニット8は、対応する基板ファインマーク100bとマスクファインマーク101bの各組(本実施形態では4組)を撮像するように4つ設けられている。第2計測ユニット8は、相対的に視野が狭いが高い解像度(例えば数μmのオーダ)を有する高倍率CCDカメラ(ファインカメラ)であり、基板100とマスク101との位置ずれを高精度で計測する。第1計測ユニット7は、1つ設けられており、対応する基板ラフマーク100aとマスクラフマーク101aの各組(本実施形態では2組)を撮像する。
【0055】
第1計測ユニット7は、相対的に視野が広いが低い解像度を有する低倍率CCDカメラ(ラフカメラ)であり、基板100とマスク101との大まかな位置ずれを計測する。図5の例では2組の基板ラフマーク100a及びマスクラフマーク101aの組を1つの第1計測ユニット7でまとめて撮像する構成を示したが、これに限定はされない。第2計測ユニット8と同様に、基板ラフマーク100a及びマスクラフマーク101aの各組をそれぞれ撮影するように、それぞれの組に対応する位置に第1計測ユニット7を2つ設けてもよい。
【0056】
本実施形態では、第1計測ユニット7の計測結果に基づいて基板100とマスク101との大まかな位置調整を行った後、第2計測ユニット8の計測結果に基づいて基板100とマスク101との精密な位置調整を行うように制御している。
【0057】
<<調整ユニット>>
アライメント装置2は、調整ユニット17を備える。図6は、調整ユニット17(調整装置)の説明図である。調整ユニット17は、吸着板15とマスク台5との相対的な傾きを調整するユニットである。本実施形態では、調整ユニット17は、吸着板15を動かすことにより、吸着板15とマスク台5との相対的な傾きを調整する。さらに言えば、複数の支持軸R1のうち少なくとも一部の支持軸R1の軸方向の位置を調整することにより、吸着板15とマスク台5との相対的な傾きを調整する。
【0058】
調整ユニット17は、作業者により操作される複数の操作部171を有する。本実施形態では、複数の操作部171が、複数の支持軸R1のそれぞれに対応して設けられる。そして、操作部171が操作されると、対応する支持軸R1が他の支持軸R1とは独立にその軸方向である鉛直方向に移動する。すなわち、複数の操作部171は、それぞれ対応する支持軸R1が吸着板15を支持する鉛直方向の位置を独立に調整することができる。このため、作業者が操作部171を操作することで吸着板15とマスク台5との相対的な傾きが調整される。調整の自由度を上げるためには、複数の支持軸R1のそれぞれに操作部171が設けられることが好ましいが、少なくとも1つの支持軸R1に操作部171が設けられれば吸着板15とマスク台5との相対的な傾きを一定の範囲で調整することができる。
【0059】
本実施形態では、操作部171は、支持軸R1をその軸方向である鉛直方向に移動させる調整ナットである。調整ナットと支持軸R1に形成されたネジ山172が螺合するように設けられており、作業者により調整ナットが回されると、支持軸R1が移動する。
【0060】
また、本実施形態では、操作部171は、真空チャンバ3の外部に設けられる。具体的には、支持軸R1がスライドブッシュ173を介して第1昇降プレート220に支持されており、スライドブッシュ173の上側に操作部171が設けられている。操作部171が真空チャンバ3の外部に設けられることにより、真空チャンバ3の内部が真空に保持されている状態で、作業者が調整ユニット17による調整を行うことができる。
【0061】
また、支持軸R1と吸着板15との間には、支持軸R1に対する吸着板15の角度を可変に支持軸R1及び吸着板15を接続する継手部18が設けられている。本実施形態では、継手部18は球面軸受であり、球状部181と、球状部181を摺動可能に受ける軸受部182とを含む。
【0062】
本実施形態では、複数の支持軸R1は鉛直方向(軸方向)にのみ移動可能に構成されている。そのため、図6の左側に示す状態ST1のように吸着板15が水平に保たれている状態と、図6の右側に示す状態ST2のように吸着板15が傾いている状態とでは、支持軸R1に対する吸着板15のなす角度が異なる。本実施形態では、継手部18で支持軸R1に対して吸着板15が回動することにより、吸着板15が傾いた状態でも支持軸R1が吸着板15を支持することができる。なお、継手部18は、ユニバーサルジョイント等、2つの部材をその接続角度を変更可能に接続する構造を適宜採用することができる。
【0063】
ここで、調整ユニット17の構成を距離調整ユニット22と比較して説明する。距離調整ユニット22の第1昇降プレート220が昇降する場合、第1昇降プレート220に支持されている複数の支持軸R1は全て同じ量だけ昇降する、つまり、複数の支持軸R1は同期して昇降する。そのため、吸着板15のマスク台5に対する平行度ないしは相対的な傾きが保たれた状態で吸着板15が昇降する。一方、調整ユニット17は、複数の支持軸R1のいずれかを、他の支持軸R1と独立に第1昇降プレート220に対して鉛直方向(軸方向)に移動させることができる。例えば、調整ユニット17は、3つの支持軸R1の位置を変更せずに、残りの1つの支持軸R1の軸方向の位置を調整することができる。こ
れにより、調整ユニット17は複数の支持軸R1によって支持される吸着板15の傾きを調整することができる。
【0064】
<<フローティング部>>
アライメント装置2は、フローティング部19を備える。フローティング部19は、継手部18と吸着板15との間に設けられている。フローティング部19は、弾性部材191と、ブッシュ192と、軸部材193と、吸着板支持部194と、フランジ195とを含む。軸部材193は、継手部18から下方に延びるように設けられている。ブッシュ192は、軸部材193と吸着板支持部194との間の環状隙間に介在するように設けられ、これらの間の摩擦を軽減したり、ガタツキを低減したりする。例えば、ブッシュ192は滑り性のよい金属焼結材等により形成される。吸着板支持部194は、吸着板15を支持する。弾性部材191は、吸着板支持部194と、軸部材193に設けられたフランジ195との間に設けられ、吸着板15の荷重を受けるように構成される。すなわち、フローティング部19は継手部18を介して支持軸R1に接続され、フローティング部19の弾性部材191が吸着板15を支持している。このように、支持軸R1がフローティング部19の弾性部材191を介して吸着板15を支持することにより、吸着板15がマスク101に接触する際にマスク101に加えられる荷重を軽減するともに、吸着板15とマスク101とが接触した際の吸着板15の逃げを確保することができる。
【0065】
<<検出ユニット>>
アライメント装置2は、検出ユニット16を備える。再び図2及び3を参照する。検出ユニット16は、吸着板15とマスク台5との間の平行度を検出する。本実施形態では、平行度は、吸着板15とマスク台5との相対的な傾きの程度を示す度合いである。本実施形態では、検出ユニット16は、吸着板15の側に設けられている、前述した複数のタッチセンサ1621などから構成される。複数のタッチセンサ1621は、先端部の吸着面150から突出する長さが互いに略等しくなるように、吸着板15に取り付けられる。タッチセンサ1621が吸着板15に取り付けられることで、大気圧によって真空チャンバ3が変形しても、吸着板15とタッチセンサ1621との相対位置に生じる変化を小さくすることができる。すなわち、真空状態となっても、タッチセンサ1621の先端部の突出長さはほとんど変化せず、互いに略等しいままに維持される。したがって、吸着板15が移動したときに、複数のタッチセンサ1621の全部がほぼ同時に反応すれば、平行度が高い、換言すると、吸着板15とマスク台5との相対的な傾きが小さいと判断することができる。先端部の吸着面150から突出する長さを適当に変えることで、平行ではない所定の傾きを目標値として設定することもできる。検出ユニット16を用いた吸着板15の平行度の検出動作については後述する。また、本実施形態では、タッチセンサ1621が、吸着板15と基板100との接触の検知、及び、吸着板15とマスク台5との間の平行度の検出の両方を実行する役割を担っている。これにより、これらを検知・検出するためのセンサを別々に設ける場合と比べてセンサの数を削減することができる。
【0066】
<制御装置>
制御装置14は、成膜装置1の全体を制御する。制御装置14は、処理部141、記憶部142、入出力インタフェース(I/O)143、通信部144、表示部145及び入力部146を備える。処理部141は、CPUに代表されるプロセッサであり、記憶部142に記憶されたプログラムを実行して成膜装置1を制御する。記憶部142は、ROM、RAM、HDD等の記憶デバイスであり、処理部141が実行するプログラムの他、各種の制御情報を記憶する。I/O143は、処理部141と外部デバイスとの間の信号を送受信するインタフェースである。通信部144は通信回線300aを介して上位装置300又は他の制御装置14、309、310等と通信を行う通信デバイスであり、処理部141は通信部144を介して上位装置300から情報を受信し、あるいは、上位装置300へ情報を送信する。表示部145は、例えば液晶ディスプレイであり、各種情報を表
示する。入力部146は、例えばキーボードやポインティングデバイスであり、ユーザからの各種入力を受け付ける。なお、制御装置14、309、310や上位装置300の全部又は一部がPLCやASIC、FPGAで構成されてもよい。
【0067】
<基板とマスクの重ね合わせのプロセス>
図7は、吸着板15を用いた基板100とマスク101との重ね合わせのプロセスの説明図である。図7は、プロセスの各状態を示している。
【0068】
状態ST100は、搬送ロボット302aにより成膜装置1内に基板100が搬入され、搬送ロボット302aが退避した後の状態である。このとき、基板100は基板支持ユニット6により支持されている。
【0069】
状態ST101は、吸着板15による基板100の吸着の準備段階として、基板支持ユニット6が上昇した状態を示している。基板支持ユニット6は、状態ST100から、アクチュエータ65により吸着板15に接近するように上昇する。状態ST101では、基板支持ユニット6によって支持されている基板100の周縁部は、吸着板15に接触しているか、あるいは、わずかに離間した位置にある。一方、基板100の中央部は、自重により撓んでいるため、周縁部と比較して吸着板15から離間した位置にある。
【0070】
状態ST102は、吸着板15により基板100が吸着された状態を示している。吸着板15の電極配置領域151に配置された電極に電圧が印加されることにより、静電気力によって基板100が吸着板15に吸着される。
【0071】
状態ST103は、吸着板15に基板100が正常に吸着されているか否かを検出する際の状態を示している。基板支持ユニット6が降下し、基板100から離れた状態で、基板100が吸着板15に吸着されているか否かがタッチセンサ1621の検出値に基づいて検出される。例えば、制御装置14は、吸着板15に埋設されている全てのタッチセンサ1621が基板100との接触を検出している場合に、基板100が吸着板15に正常に吸着されていると判断する。また、ファイバセンサ1622が設けられている場合は、ファイバセンサ1622からの出力に基づいて、基板100の吸着が正常に行われているかの判断を行うこともできる。
【0072】
状態ST104は、基板100とマスク101とのアライメント動作中の状態を示している。制御装置14は、距離調整ユニット22により吸着板15を降下させて基板100とマスク101とを接近させた状態で、位置調整ユニット20によりアライメント動作を実行させる。
【0073】
状態ST105は、磁石プレート11により基板100とマスク101とをより密着させた状態を示している。制御装置14は、アライメント動作の終了後、プレートユニット昇降ユニット13によりプレートユニット9を降下させる。磁石プレート11が基板100及びマスク101に接近することにより、マスク101が基板100側に引き寄せられ、基板100とマスク101の密着性が向上する。
【0074】
以上説明した動作により、基板100とマスク101の重ね合わせのプロセスが終了する。例えば、本プロセスの終了後、成膜ユニット4による蒸着処理が実行される。
【0075】
ところで、上記で説明したプロセスの中で基板100とマスク101とのアライメントを行うにあたっては、吸着板15とマスク台5との間の傾きがアライメントの精度に影響を及ぼすことがある。基板100とマスク101との距離を近づけてアライメントを行うことで、アライメントの精度を高めることができる。しかし、吸着板15とマスク台5と
の間に相対的な傾きがあると、基板100の一部がマスク101に接触する可能性があり、それによって基板100に傷等が生じるおそれが生じる。基板100の保護のために基板100とマスク101との距離を大きくする分だけ、アライメントの精度が低下し得る。そこで、一般に、真空チャンバ3の内部空間3aが大気圧の環境下で吸着板15とマスク台5との平行調整が行われることがある。大気圧環境下での平行調整は、例えば、基板支持ユニット6の連結部分にシムを挿入する等により行われる。
【0076】
次に、磁力発生部材としての磁石プレート11と、昇降手段としてのプレートユニット昇降ユニット13とを接続する接続機構1100ついて、より具体的な実施例をいくつか説明する。なお、磁石プレート11は、永久磁石を備える構成を採用してもよいし、電磁石を備える構成を採用してもよい。
【0077】
(実施例1)
図8を参照して、実施例1に係る接続機構1100の詳細な構成及びメカニズムについて説明する。図8は本発明の実施例1に係る接続機構1100のメカニズムを説明する図であり、様々な状態について、それぞれ模式的断面図にて示している。
【0078】
本実施例に係る接続機構1100は、支持軸R2の先端に設けられる球状部1110と、この球状部1110を摺動可能に受ける球面状の軸受部を有する軸受部材1120とからなる自在継手を有している。これにより、磁石プレート11に作用する外力に応じて、磁石プレート11は回動することができる。なお、本実施例においては、球状部1110と、球面状の軸受部を有する軸受部材1120とからなる自在継手を採用した場合の構成を示したが、本発明における自在継手は、交差する2つの軸部を有する自在継手など、各種公知技術を採用することができる。
【0079】
また、本実施例に係る接続機構1100は、昇降手段側である軸受部材1120に備えられる軸部1130と、磁石プレート11に備えられ、軸部1130が挿通される挿通孔を有する支持部1141とを備えている。支持部1141の挿通孔内には軸受として機能するブッシュ1142が設けられている。また、軸部1130にはフランジ部1131が設けられている。そして、一端側がフランジ部1131に接し、他端側が支持部1141またはブッシュ1142に接するように、付勢部材としてのバネ1150が軸部1130に取り付けられている。これにより、支持部1141は、バネ1150によって、軸部1130に沿ってプレートユニット昇降ユニット13に向けて付勢されている。以上の構成により、磁石プレート11(磁石プレート11を有するプレートユニット9)は、バネ1150を介して、プレートユニット昇降ユニット13に接続かつ支持されている。従って、磁石プレート11に作用する外力に応じて、磁石プレート11は上下移動することができる。
【0080】
図8(a)は、磁石プレート11にはプレートユニット9の荷重のみが作用し、その他の外力が作用していない状態を示している。図8(b)は、吸着板15に対して磁石プレート11が傾いた状態(平行でない状態)で、プレートユニット9における冷却プレート10と吸着板15が接触した際における磁石プレート11と接続機構1100の様子を示している。
【0081】
冷却プレート10と吸着板15が接触することで、プレートユニット9は鉛直方向上方に向けて力を受けることになる。これにより、磁石プレート11は軸部1130に沿ってプレートユニット昇降ユニット13に向けて移動する。また、吸着板15に対して磁石プレート11が傾いた状態の場合には、接続機構1100における自在継手によって、プレートユニット9が吸着板15と平行になるように回動する。つまり、磁石プレート11は吸着板15と平行になるように回動する。
【0082】
以上のように、本実施例に係る接続機構1100によれば、磁石プレート11と吸着板15とを平行にすることができるため、磁石プレート11とマスク101との間の距離が局所的に長くなってしまうことを抑制することができる。従って、成膜時に基板100とマスク101との間にギャップが生じてしまうことを抑制することができ、成膜精度を高めることができる。また、冷却プレート10が吸着板15に接触する過程で、吸着板15への応力集中を抑制することができるため、吸着板15の位置がずれてしまうことを抑制でき、かつ吸着板15の耐久性を高めることができる。
【0083】
更に、本実施例においては、磁石プレート11を有するプレートユニット9を支持する支持部1141は、バネ1150によって、軸部1130に沿ってプレートユニット昇降ユニット13に向けて付勢されている。そのため、プレートユニット9における冷却プレート10と吸着板15が接触した状態において、吸着板15はプレートユニット9の荷重を直接受けることがないため、吸着板15が受ける負荷を抑制できる効果もある。
【0084】
(実施例2)
図9を参照して、実施例2に係る接続機構1100Xの詳細な構成及びメカニズムについて説明する。図9は本発明の実施例2に係る接続機構1100Xの模式的断面図である。上記の実施例1に係る接続機構1100においては、磁石プレート11に作用する外力に応じて、磁石プレート11が回動かつ上下移動するように、磁石プレート11とプレートユニット昇降ユニット13とを接続する構成を採用した場合を示した。しかしながら、接続機構の配置位置によっては、磁石プレート11と吸着板15とを平行にするためには、磁石プレート11が回動可能に構成されれば十分な場合がある。本実施例においては、そのような場合における接続機構1100Xの構成を示す。
【0085】
本実施例に係る接続機構1100Xは、支持軸R2の先端に設けられる球状部1110と、この球状部1110を摺動可能に受ける球面状の軸受部を有する軸受部材1120とからなる自在継手を有している。本実施例においては、軸受部材1120は磁石プレート11に直接固定され、この磁石プレート11を有するプレートユニット9を支持する役割を担っている。このような構成によれば、磁石プレート11に作用する外力に応じて、磁石プレート11は回動することができる。なお、自在継手が、交差する2つの軸部を有する自在継手など、各種公知技術を採用することができることについては、実施例1と同様である。
【0086】
上記のように構成された移動機構1100Xによれば、吸着板15に対して磁石プレート11が傾いた状態の場合には、接続機構1100Xにおける自在継手によって、プレートユニット9が吸着板15と平行になるように回動する。つまり、磁石プレート11は吸着板15と平行になるように回動する。
【0087】
以上のように、本実施例に係る接続機構1100Xにおいても、上記実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0088】
(実施例3)
図10を参照して、実施例3に係る接続機構1100Yの詳細な構成及びメカニズムについて説明する。図10は本発明の実施例3に係る接続機構1100Yの模式的断面図である。上記の実施例1に係る接続機構1100においては、磁石プレート11に作用する外力に応じて、磁石プレート11が回動かつ上下移動するように、磁石プレート11とプレートユニット昇降ユニット13とを接続する構成を採用した場合を示した。しかしながら、接続機構の配置位置によっては、磁石プレート11と吸着板15とを平行にするためには、磁石プレート11が上下移動可能に構成されれば十分な場合がある。本実施例にお
いては、そのような場合における接続機構1100Yの構成を示す。
【0089】
本実施例に係る接続機構1100Yは、昇降手段側である軸部としての支持軸R2と、磁石プレート11に備えられ、支持軸R2が挿通される挿通孔を有する支持部1141とを備えている。支持部1141の挿通孔内には軸受として機能するブッシュ1142が設けられている。また、支持軸R2にはフランジ部1131が設けられている。そして、一端側がフランジ部1131に接し、他端側が支持部1141またはブッシュ1142に接するように、付勢部材としてのバネ1150が支持軸R2に取り付けられている。このように、支持部1141は、バネ1150によって、支持軸R2に沿ってプレートユニット昇降ユニット13に向けて付勢されている。以上の構成により、磁石プレート11(磁石プレート11を有するプレートユニット9)は、バネ1150を介して、プレートユニット昇降ユニット13に接続かつ支持されている。従って、磁石プレート11に作用する外力に応じて、磁石プレート11は上下移動することができる。
【0090】
以上のように構成された接続機構1100Yによれば、冷却プレート10と吸着板15が接触することで、プレートユニット9は鉛直方向上方に向けて力を受けることになる。これにより、磁石プレート11は支持軸R2に沿ってプレートユニット昇降ユニット13に向けて移動する。そして、吸着板15に対して磁石プレート11が傾いた状態の場合には、複数設けられる接続機構1100Yにおいて、プレートユニット9の移動量が接続機構1100Yの配置位置に応じて異なることによって、プレートユニット9が吸着板15と平行になるように回動する。つまり、磁石プレート11は吸着板15と平行になるように回動する。
【0091】
以上のように、本実施例に係る接続機構1100Yにおいても、上記実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0092】
(実施例4)
図11を参照して、実施例4に係る接続機構1100Zの詳細な構成及びメカニズムについて説明する。図11は本発明の実施例4に係る接続機構1100Zの模式的断面図である。上記の実施例1に係る接続機構1100においては、自在継手等を採用することで、磁石プレート11に作用する外力に応じて、磁石プレート11が回動かつ上下移動するように、磁石プレート11とプレートユニット昇降ユニット13とを接続する構成を採用した場合を示した。これに対し、本実施例に係る接続機構1100Zにおいては、磁石プレート11が回動する方向と上下移動する方向の双方に弾性変形可能な弾性部材1170を備える構成を採用している。
【0093】
本実施例に係る接続機構1100Zにおいては、支持軸R2と、磁石プレート11に設けられた支持部1160との間に弾性部材1170が設けられている。この弾性部材1170はゴムなどのエラストマー材料などにより構成される。
【0094】
以上のように構成される接続機構1100Zによれば、冷却プレート10と吸着板15が接触することで、プレートユニット9は鉛直方向上方に向けて力を受けることになる。これにより、弾性部材1170が圧縮されて、磁石プレート11はプレートユニット昇降ユニット13に向けて移動する。また、吸着板15に対して磁石プレート11が傾いた状態の場合には、弾性部材1170における圧縮量が部位により異なることで、プレートユニット9が吸着板15と平行になるように回動する。つまり、磁石プレート11は吸着板15と平行になるように回動する。
【0095】
以上のように、本実施例に係る接続機構1100Zにおいても、上記実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0096】
(実施例5)
図12を参照して、実施例5に係る接続機構1100Sの詳細な構成及びメカニズムについて説明する。図12は本発明の実施例5に係る接続機構1100Sの模式的断面図である。上記実施例1に係る接続機構1100においては、支持部を軸部に沿って昇降手段に向けて付勢する付勢部材を備える構成を示したが、本実施例に係る接続機構1100Sにおいては、支持部を軸部に沿って昇降手段とは反対側に向けて付勢する付勢部材を備える構成を示す。
【0097】
本実施例に係る接続機構1100Sにおいても、実施例1と同様に、支持軸R2の先端に設けられる球状部1110と、この球状部1110を摺動可能に受ける球面状の軸受部を有する軸受部材1120とからなる自在継手を有している。なお、自在継手が、交差する2つの軸部を有する自在継手など、各種公知技術を採用することができることについては、実施例1と同様である。
【0098】
また、本実施例に係る接続機構1100Sは、実施例1と同様に、フランジ部1131が設けられた軸部1130と、支持部1141と、ブッシュ1142とを備えている。そして、本実施例においては、フランジ部1131に支持部1141が接するように構成されている。また、本実施例においては、一端側が支持部1141またはブッシュ1142に接し、他端側が軸受部材1120に接するように、付勢部材としてのバネ1150が軸部1130に取り付けられている。このように、支持部1141は、バネ1150によって、軸部1130に沿ってプレートユニット昇降ユニット13とは反対側に向けて付勢されている。
【0099】
以上のように構成される接続機構1100Sによれば、冷却プレート10と吸着板15が接触することで、プレートユニット9は鉛直方向上方に向けて力を受けることになる。これにより、磁石プレート11はバネ1150による付勢力に抗して、軸部1130に沿ってプレートユニット昇降ユニット13に向けて移動する。また、吸着板15に対して磁石プレート11が傾いた状態の場合には、接続機構1100Sにおける自在継手によって、プレートユニット9が吸着板15と平行になるように回動する。つまり、磁石プレート11は吸着板15と平行になるように回動する。
【0100】
以上のように、本実施例に係る接続機構1100Sにおいても、上記実施例1と同様の効果を得ることができる。なお、バネ1150を設けなくても、軸部1130に沿って磁石プレート11が自重によってスムーズに下降可能な場合には、バネ1150を設けない構成を採用することもできる。
【0101】
(実施例6)
図13を参照して、本実施例6に係る接続機構1100YSの詳細な構成及びメカニズムについて説明する。図13は本発明の実施例6に係る接続機構1100YSの模式的断面図である。上記の実施例3に係る接続機構1100Yにおいては、支持部を軸部に沿って昇降手段に向けて付勢する付勢部材を備える構成を示したが、本実施例に係る接続機構1100YSにおいては、支持部を軸部に沿って昇降手段とは反対側に向けて付勢する付勢部材を備える構成を示す。
【0102】
本実施例に係る接続機構1100YSは、実施例3と同様に、第1のフランジ部1131が設けられた支持軸R2と、支持部1141と、ブッシュ1142が設けられている。また、支持軸R2には第2のフランジ部1132も設けられている。そして、本実施例においては、第1のフランジ部1131に支持部1141が接するように構成されている。また、本実施例においては、一端側が支持部1141またはブッシュ1142に接し、他
端側が第2のフランジ部1132に接するように、付勢部材としてのバネ1150が支持軸R2に取り付けられている。このように、支持部1141は、バネ1150によって、軸部1130に沿ってプレートユニット昇降ユニット13とは反対側に向けて付勢されている。
【0103】
以上のように構成された接続機構1100YSにおいても、上記実施例3と同様の効果を得ることができる。なお、バネ1150を設けなくても、軸部1130に沿って磁石プレート11が自重によってスムーズに下降可能な場合には、バネ1150を設けない構成を採用することもできる。
【0104】
(接続機構の適用例)
上記実施例1~6に示した接続機構の適用例について、図14を参照して説明する。図14(a)中の矢印に示すように、磁石プレート11に対して、吸着板15が、その長手方向に大きく傾く可能性がある場合には、その両端付近では傾き角度及び上下方向の変位量が大きくなる可能性がある。そこで、磁石プレート11の長手方向の両端に設けられる接続機構11は、実施例1,4,5のように、磁石プレート11を回動かつ上下動可能に接続する構成を採用するのが望ましい。ただし、傾き角度が比較的小さい場合には、接続機構11は、実施例3,6のように、磁石プレート11を上下動可能に接続すれば十分である。
【0105】
また、図14(b)に示すように、磁石プレート11に対して、吸着板15が傾く可能性がある場合でも、その長手方向の中央付近では、上下方向については変位量が少ない。従って、磁石プレート11の長手方向の中央付近に設けられる接続機構は、実施例2のように、磁石プレート11を回動可能に接続すれば十分である。
【0106】
以上の適用例は、一例に過ぎず、接続機構の配置位置に応じて、適宜、上記各種実施例で示した接続機構を採用することができる。
【0107】
(プレートユニットの応用例)
図15を参照してプレートユニット9の応用例について説明する。図15(a)に示すように、磁石プレート11と同期して移動する移動部材としての冷却プレート10に、吸着板15への接触の有無を検知する検知手段としてのタッチセンサ10Xを複数設ける構成を採用することもできる。タッチセンサ10Xの構成については、上述の吸着板15に設けられたタッチセンサ1621と同様の構成を採用することができる。このように、冷却プレート10に複数のタッチセンサ10Xを設けることで、吸着板15に接触したタッチセンサ10Xの個数と配置位置によって、プレートユニット9を構成する磁石プレート11及び冷却プレート10と吸着板15との平行度を検出することができる。なお、平行度の検出の仕方については、吸着板15に設けられた複数のタッチセンサ1621によって、吸着板15とマスク台5との間の平行度を検出する仕方と同様である。
【0108】
このように、プレートユニット9を構成する磁石プレート11及び冷却プレート10と吸着板15との平行度を検出する構成を採用することで、吸着板15の傾きを調整した後に、冷却プレート10の全体を吸着板15に接触させることができる。このような構成を採用すれば、接続機構において、磁石プレート11を回動可能とする角度を狭くすることができたり、上下動可能とする移動距離を短くできたりすることができる。また、吸着板15への応力集中を、より一層抑制することができる。
【0109】
また、プレートユニット9において、冷却プレート10が設けられない構成が採用される場合には、図15(b)に示すように、磁石プレート11に、吸着板15への接触の有無を検知する検知手段としてのタッチセンサ11Xを複数設ける構成を採用することもで
きる。これにより、冷却プレート10に複数のタッチセンサ10Xを設けた場合と同様の機能が発揮される。
【0110】
<電子デバイスの製造方法>
次に、本実施例の成膜装置を用いた電子デバイスの製造方法の一例を説明する。以下、電子デバイスの例として有機EL表示装置の構成を示し、有機EL表示装置の製造方法を例示する。
【0111】
まず、製造する有機EL表示装置について説明する。図16(a)は有機EL表示装置60の全体図、図16(b)は1画素の断面構造を表している。
【0112】
図16(a)に示すように、有機EL表示装置50の表示領域51には、発光素子を複数備える画素52がマトリクス状に複数配置されている。詳細は後で説明するが、発光素子のそれぞれは、一対の電極に挟まれた有機層を備えた構造を有している。なお、ここでいう画素とは、表示領域51において所望の色の表示を可能とする最小単位を指している。本実施例に係る有機EL表示装置の場合、互いに異なる発光を示す第1発光素子52R、第2発光素子52G、第3発光素子52Bの組み合わせにより画素52が構成されている。画素52は、赤色発光素子と緑色発光素子と青色発光素子の組み合わせで構成されることが多いが、黄色発光素子とシアン発光素子と白色発光素子の組み合わせでもよく、少なくとも1色以上であれば特に制限されるものではない。
【0113】
図16(b)は、図16(a)のA-B線における部分断面模式図である。画素52は、複数の発光素子からなり、各発光素子は、基板63上に、第1電極(陽極)54と、正孔輸送層55と、発光層56R、56G、56Bのいずれかと、電子輸送層57と、第2電極(陰極)58と、を有している。これらのうち、正孔輸送層55、発光層56R、56G、56B、電子輸送層57が有機層に当たる。また、本実施例では、発光層56Rは赤色を発する有機EL層、発光層56Gは緑色を発する有機EL層、発光層56Bは青色を発する有機EL層である。発光層56R、56G、56Bは、それぞれ赤色、緑色、青色を発する発光素子(有機EL素子と記述する場合もある)に対応するパターンに形成されている。また、第1電極64は、発光素子毎に分離して形成されている。正孔輸送層55と電子輸送層57と第2電極58は、複数の発光素子52R、52G、52Bで共通に形成されていてもよいし、発光素子毎に形成されていてもよい。なお、第1電極54と第2電極58とが異物によってショートするのを防ぐために、第1電極54間に絶縁層59が設けられている。さらに、有機EL層は水分や酸素によって劣化するため、水分や酸素から有機EL素子を保護するための保護層40が設けられている。
【0114】
図16(b)では正孔輸送層55や電子輸送層57は一つの層で示されているが、有機EL表示素子の構造によっては、正孔ブロック層や電子ブロック層を備える複数の層で形成されてもよい。また、第1電極54と正孔輸送層55との間には第1電極54から正孔輸送層55への正孔の注入が円滑に行われるようにすることのできるエネルギーバンド構造を有する正孔注入層を形成することもできる。同様に、第2電極58と電子輸送層57の間にも電子注入層が形成することもできる。
【0115】
次に、有機EL表示装置の製造方法の例について具体的に説明する。
【0116】
まず、有機EL表示装置を駆動するための回路(不図示)及び第1電極54が形成された基板53を準備する。
【0117】
第1電極54が形成された基板53の上にアクリル樹脂をスピンコートで形成し、アクリル樹脂をリソグラフィ法により、第1電極54が形成された部分に開口が形成されるよ
うにパターニングし絶縁層59を形成する。この開口部が、発光素子が実際に発光する発光領域に相当する。
【0118】
絶縁層59がパターニングされた基板53を第1の有機材料成膜装置に搬入し、基板支持台及び静電チャックにて基板を保持し、正孔輸送層55を、表示領域の第1電極54の上に共通する層として成膜する。正孔輸送層55は真空蒸着により成膜される。実際には正孔輸送層55は表示領域51よりも大きなサイズに形成されるため、高精細なマスクは不要である。
【0119】
次に、正孔輸送層55までが形成された基板53を第2の有機材料成膜装置に搬入し、基板支持台及び静電チャックで保持する。基板とマスクとのアライメントを行い、基板をマスクの上に載置し、基板53の赤色を発する素子を配置する部分に、赤色を発する発光層56Rを成膜する。
【0120】
発光層56Rの成膜と同様に、第3の有機材料成膜装置により緑色を発する発光層56Gを成膜し、さらに第4の有機材料成膜装置により青色を発する発光層56Bを成膜する。発光層56R、56G、56Bの成膜が完了した後、第5の成膜装置により表示領域51の全体に電子輸送層57を成膜する。電子輸送層57は、3色の発光層56R、56G、56Bに共通の層として形成される。
【0121】
電子輸送層57まで形成された基板を金属性蒸着材料成膜装置で移動させて第2電極58を成膜する。
【0122】
その後プラズマCVD装置に移動して保護層40を成膜して、有機EL表示装置50が完成する。
【0123】
絶縁層59がパターニングされた基板53を成膜装置に搬入してから保護層50の成膜が完了するまでは、水分や酸素を含む雰囲気にさらしてしまうと、有機EL材料からなる発光層が水分や酸素によって劣化してしまうおそれがある。従って、本実施例において、成膜装置間の基板の搬入搬出は、真空雰囲気又は不活性ガス雰囲気の下で行われる。
【0124】
上記の実施例は本発明の一例を示したものであるが、本発明は上記の実施例の構成に限定されないし、その技術思想の範囲内で適切に変形してもよい。
【符号の説明】
【0125】
1 成膜装置、2 アライメント装置、5 マスク台、6 基板支持ユニット、141
処理部、16 検出ユニット、17 調整ユニット、22 距離調整ユニット、100
基板、101 マスク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16