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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】シールド構造
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20241111BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20241111BHJP
   H01R 13/648 20060101ALN20241111BHJP
【FI】
H05K9/00 K
B60R16/02 620A
H01R13/648
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021034376
(22)【出願日】2021-03-04
(65)【公開番号】P2022134895
(43)【公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】達川 永吾
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 健作
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-073987(JP,A)
【文献】特開2017-212313(JP,A)
【文献】特開2017-022261(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0029149(US,A1)
【文献】特開2013-073702(JP,A)
【文献】特開2015-015825(JP,A)
【文献】特許第3827650(JP,B2)
【文献】特許第4579059(JP,B2)
【文献】特許第5696458(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
B60R 16/00 - 17/02
H01R 13/56 - 13/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体で管状のシールドと、
導体を編んで管状に形成された編組と、
を有し、
前記シールドと前記編組は、主成分が同じであり、
前記編組が前記シールドの端部の外面を覆って前記編組の少なくとも一部が前記シールドに直接接合されて第1接合部が形成され、
接合された前記シールドと前記編組とに配電部品が内包され
前記シールドは、断面が矩形状の第1接続部を有し、前記第1接合部が前記第1接続部に形成されている
シールド構造。
【請求項2】
導体で管状のシールドと、
導体を編んで管状に形成された編組と、
を有し、
前記シールドと前記編組は、主成分が同じであり、
前記編組が前記シールドの端部の外面を覆って前記編組の少なくとも一部が前記シールドに直接接合されて第1接合部が形成され、
接合された前記シールドと前記編組とに配電部品が内包され、
前記シールドの中空部は、断面が矩形状であり、前記断面の短辺の長さは、前記シールドが遮蔽するノイズの最も短い波長の1/4以下である
シールド構造。
【請求項3】
前記シールドは、偏平形状である
請求項1又は請求項2に記載のシールド構造。
【請求項4】
前記第1接合部は、矩形状である
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のシールド構造。
【請求項5】
前記第1接合部は、前記第1接続部の断面の長辺側に形成されている
請求項に記載のシールド構造。
【請求項6】
前記第1接合部の長辺の長さは、前記配電部品の幅よりも長い
請求項に記載のシールド構造。
【請求項7】
前記編組及び前記シールドと主成分が同じ導体で形成された筐体の外部と内部とを繋げる中空部を有して前記筐体から突出した第2接続部の外面に、前記編組が直接接合されて矩形状の第2接合部が形成されている
請求項1から請求項のいずれか一項に記載のシールド構造。
【請求項8】
前記第2接合部の長辺の長さは、前記配電部品の幅よりも長い
請求項に記載のシールド構造。
【請求項9】
前記第2接続部は断面が矩形状であり、前第2接合部は、前記第2接続部の断面の長辺側に形成されている
請求項又は請求項に記載のシールド構造。
【請求項10】
前記第2接続部の中空部の断面は矩形状であり、当該断面の短辺の長さは、前記シールドが遮蔽するノイズの最も短い波長の1/4以下である
請求項から請求項のいずれか一項に記載のシールド構造。
【請求項11】
前記配電部品は、複数の電線である
請求項1から請求項1のいずれか一項に記載のシールド構造。
【請求項12】
前記配電部品は、複数の偏平電線である
請求項1から請求項1のいずれか一項に記載のシールド構造。
【請求項13】
複数の前記偏平電線は、前記シールドの内部で横並びに配置されている
請求項1に記載のシールド構造。
【請求項14】
複数の前記偏平電線は、前記シールドの内部で積層されている
請求項1に記載のシールド構造。
【請求項15】
前記編組は、超音波接合により接合されている
請求項1から請求項1のいずれか一項に記載のシールド構造。
【請求項16】
前記超音波接合の接合痕が矩形である
請求項1に記載のシールド構造。
【請求項17】
前記主成分がアルミニウムである
請求項1から請求項1のいずれか一項に記載のシールド構造。
【請求項18】
前記配電部品は、モータとインバータとを接続する
請求項1から請求項17のいずれか一項に記載のシールド構造。
【請求項19】
前記配電部品は、インバータとバッテリーとを接続する
請求項1から請求項17のいずれか一項に記載のシールド構造。
【請求項20】
前記配電部品を内包した前記シールドの少なくとも一部が自動車の床下に配索される
請求項1から請求項19のいずれか一項に記載のシールド構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用のケーブルをシールドする技術として例えば特許文献1-3に開示された発明がある。特許文献1に開示されたシールド接続構造は、ケーブルに外装される編組を誘電体に被せ、被せた部分を折り返し可能にして編組を固定具で挟む。その後、編組を固定具の上に折り返し、編組の折り返された部分が導電性を有する外導体シェルに嵌入されることにより、編組において固定具の上に折り返された部分と外導体シェルとが接触して電気的に接続される。特許文献2に開示されたシールドシェルは、鋼板から形成されたシールドシェル補助部の筒状部に対して編組が固定部材によって固定され、シールドシェル補助部がボルトによってアルミダイキャスト製の筒状部に固定されている。特許文献3に開示された配索構造は、複数のフラット電線を金属編組チューブで被覆し、金属編組チューブに絶縁樹脂製のプロテクタを外装している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3827650号公報
【文献】特許第4579059号公報
【文献】特許第5696458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたシールド接続構造の場合、編組を固定具で固定してさらに折り返すため製造に手間がかかる。また、編組と外導体シェルとの接触は、外導体シェルへ嵌入されることによる接触だけであるため、接続抵抗が温度や振動で増加して編組に流れる電流が減少し、シールド性能が劣化してしまう。特許文献2に開示されたシールドシェルは、編組の固定に固定部材を要するため部品数が増え、シールドシェル補助部をボルトで筒状部に固定するため、製造に手間がかかる。また、シールドシェル補助部と筒状部とが異なる金属であるため、ガルバニック腐食が生じ、シールド性能が劣化してしまう。特許文献3に開示された配索構造は、金属編組チューブによるシールドであるため、金属管のシールドと比較して高周波帯域でのシールド性能が劣る。また、フラット電線を覆うのは金属編組と樹脂製のプロテクタのみであるため、金属管を用いるシールドと比較して強度が劣る。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、シールド性能が劣化するのを抑える技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るシールド構造は、導体で管状のシールドと、導体を編んで管状に形成された編組と、を有し、前記シールドと前記編組は、主成分が同じであり、前記編組が前記シールドの端部の外面を覆って前記編組の少なくとも一部が前記シールドに直接接合されて第1接合部が形成され、接合された前記シールドと前記編組とに配電部品が内包される。
【0007】
本発明の一態様に係るシールド構造においては、前記シールドは、偏平形状である。
【0008】
本発明の一態様に係るシールド構造においては、前記第1接合部は、矩形状である。
【0009】
本発明の一態様に係るシールド構造においては、前記シールドは、断面が矩形状の第1接続部を有し、前記第1接合部が前記第1接続部に形成されている。
【0010】
本発明の一態様に係るシールド構造においては、前記第1接合部は、前記第1接続部の断面の長辺側に形成されている。
【0011】
本発明の一態様に係るシールド構造においては、前記第1接合部の長辺の長さは、前記配電部品の幅よりも長い。
【0012】
本発明の一態様に係るシールド構造においては、前記シールドの中空部は、断面が矩形状であり、前記断面の短辺の長さは、前記シールドが遮蔽するノイズの最も短い波長の1/4以下である。
【0013】
本発明の一態様に係るシールド構造においては、前記編組及び前記シールドと主成分が同じ導体で形成された筐体の外部と内部とを繋げる中空部を有して前記筐体から突出した第2接続部の外面に、前記編組が直接接合されて矩形状の第2接合部が形成されている。
【0014】
本発明の一態様に係るシールド構造においては、前記第2接合部の長辺の長さは、前記配電部品の幅よりも長い。
【0015】
本発明の一態様に係るシールド構造においては、前記第2接続部は断面が矩形状であり、前第2接合部は、前記第2接続部の断面の長辺側に形成されている。
【0016】
本発明の一態様に係るシールド構造においては、前記第2接続部の中空部の断面は矩形状であり、当該断面の短辺の長さは、前記シールドが遮蔽するノイズの最も短い波長の1/4以下である。
【0017】
本発明の一態様に係るシールド構造においては、前記配電部品は、複数の電線である。
【0018】
本発明の一態様に係るシールド構造においては、前記配電部品は、複数の偏平電線である。
【0019】
本発明の一態様に係るシールド構造においては、複数の前記偏平電線は、前記シールドの内部で横並びに配置されている。
【0020】
本発明の一態様に係るシールド構造においては、複数の前記偏平電線は、前記シールドの内部で積層されている。
【0021】
本発明の一態様に係るシールド構造においては、前記編組は、超音波接合により接合されている。
【0022】
本発明の一態様に係るシールド構造においては、前記シールドと前記編組は、前記シールドをアンビルとして接合される。
【0023】
本発明の一態様に係るシールド構造においては、前記超音波接合の接合痕が矩形である。
【0024】
本発明の一態様に係るシールド構造においては、前記編組は、超音波接合により接合され、前記第1接続部の断面の長辺側の一方に形成される前記第1接合部は、前記シールドをアンビルとして形成され、前記第1接続部の断面の長辺側の他方に形成される前記第1接合部は、アンビルの接合痕を有する。
【0025】
本発明の一態様に係るシールド構造においては、前記主成分がアルミニウムである。
【0026】
本発明の一態様に係るシールド構造においては、前記配電部品は、モータとインバータとを接続する。
【0027】
本発明の一態様に係るシールド構造においては、前記配電部品は、インバータとバッテリーとを接続する。
【0028】
本発明の一態様に係るシールド構造においては、前記配電部品を内包した前記シールドの少なくとも一部が自動車の床下に配索される。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、シールド性能が劣化するのを抑えることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、第1実施形態に係る接続構造体の概略構成を示す模式図である。
図2図2は、第1実施形態に係る配索体の概略構成を示す模式図である。
図3図3は、第2実施形態に係る配索体の概略構成を示す模式図である。
図4図4は、第2実施形態に係る電気接続箱と配索体の斜視図である。
図5図5は、第3実施形態に係る配索体2Cの概略構成を示す模式図である。
図6図6は、第4実施形態に係る配索体2Dの概略構成を示す模式図である。
図7図7は、変形例に係る接続構造体の概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一又は対応する要素には適宜同一の符号を付している。さらに、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0032】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る接続構造体の概略構成を示す模式図である。接続構造体1Aは、自動車のボディ3に設置された電気接続箱40と電気接続箱50とを配索体2Aによって電気的且つ機械的に接続した構造体である。
【0033】
電気接続箱40は、例えば電気自動車のインバータ4を収容したアルミダイカストの筐体である。電気接続箱40は、本体41と接続部42を有する。本体41は、中空の箱型である。接続部42は、中空な角管の形状であり、中空部の前後方向の一方側が外部へ開口し、他方側が本体41の内部空間に通じている。電気接続箱50は、例えば電気自動車のバッテリー5を収容したアルミダイカストの筐体である。電気接続箱50は、本体51と接続部52を有する。本体51は、中空の箱型である。接続部52は、中空な角管の形状であり、中空部の前後方向の一方側が外部へ開口し、他方側が本体51の内部空間に通じている。電気接続箱40及び電気接続箱50は、ボディ3に電気的且つ機械的に接続されている。なお、接続部42と接続部52は、角管の形状に限定されるものではなく、例えば円管や楕円管の形状であってもよい。
【0034】
図2は、配索体2Aの概略構成を示す模式図である。図2(a)は、配索体2Aの平面図であり、図2(b)は、配索体2Aの正面図であり、図2(c)は、図2(a)のA-A線断面図である。配索体2Aは、ワイヤハーネス10A及び編組20A、20Bを有する。配索体2Aは、シールド構造の一例である。
【0035】
ワイヤハーネス10Aは、中空管であるシールド12Aに被覆電線11Aが内包された構成である。被覆電線11Aは、例えば径方向に沿った断面が円形状や楕円形状の導体101と、導体の外周に形成された絶縁性を有する被覆102とを有する。被覆電線11Aは、配電部品の一例である。導体101は、例えば複数の素線を撚って構成した芯線である。導体101を構成する各素線は、アルミニウム素線であり、例えば純度の高いアルミニウムやアルミニウム合金からなる。導体101の一端は、端子やコネクタ等を介してバッテリー5に接続され、他端は、端子やコネクタ等を介してインバータ4に接続される。被覆102は、絶縁性を有する例えばポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、またはノンハロゲン材料などの樹脂からなる。被覆102を構成する樹脂には、可塑剤などの添加材が添加されていてもよい。
【0036】
シールド12Aは、電流を通電可能なアルミニウムやアルミニウム合金で中空に形成されたシールドであり、被覆電線11Aを内包する。図2(c)に示すようにシールド12Aの断面形状は矩形であるが、矩形に限定されるものではなく、断面形状は、円形や楕円形であってもよい。シールド12Aは、左右方向に沿った断面において、左右方向の幅が上下方向の幅より広い偏平形状であるのが好ましい。
【0037】
編組20A及び編組20Bは、電流を通電可能なアルミニウムやアルミニウム合金の線をメッシュ状に編んでチューブ形状に形成したものである。編組20A及び編組20Bは、編組20A及び編組20Bを構成する成分のうち、最も割合の多い成分である主成分がシールド12Aの主成分と同じである。編組20Aの一端は、接続部42の端部の外面に対して前後方向へ所定の幅で電気的及び機械的に接合され、編組20Aの他端は、シールド12Aの端部の外面に対して前後方向へ所定の幅で電気的及び機械的に接合されている。なお、図2(a)及び図2(b)においては、編組20Aにおいて接続部42に接合される側の端部の図示を省略している。編組20Aの内側は、シールド12Aから露出した被覆電線11Aが通される。編組20Aと接続部42との接合及び編組20Aとシールド12Aとの接合は、例えば超音波接合により接合される。なお、編組20Aと接続部42との接合及び編組20Aとシールド12Aとの接合は、超音波接合に限定されるものではなく、例えばレーザ溶接やろう付けによる接合であってもよい。この接合をろう付けにより行う場合、接続部42及びシールド12Aの素材と同じ素材のろう材を用いてろう付けを行う。例えば、接続部42及びシールド12Aがアルミニウムである場合には、ろう材をアルミニウムとする。
【0038】
編組20Bの一端は、接続部52の端部の外面に対して所定の幅で電気的及び機械的に接合され、編組20Bの他端は、シールド12Aの端部の外面に対して電気的及び機械的に接合されている。なお、図2(a)及び図2(b)においては、編組20Bにおいて接続部52に接合される側の端部の図示を省略している。編組20Bの内側は、シールド12Aから露出した被覆電線11Aが通される。編組20Bと接続部52との接合及び編組20Bとシールド12Aとの接合は、例えば超音波接合により接合される。なお、編組20Bと接続部52及びシールド12Aとの接合についても、超音波接合に限定されるものではなく、例えばレーザ溶接やろう付けによる接合であってもよい。
【0039】
以下の説明においては、編組20Aとシールド12Aとが接合されている部分を接合部31Aと称し、編組20Aと接続部42とが接合されている部分を接合部32Aと称する。接合部31Aは、シールド12Aの外面の周方向の全体に渡って前後方向に所定の幅で編組20Aが接合された構成でもよく、シールド12Aの外面にて周方向の一部が前後方向に所定の幅で編組20Aに接合された構成であってもよい。接合部32Aは、接続部42の上下左右の全ての面にて前後方向へ所定の幅で編組20Aが接合された構成でもよく、接続部42の上下左右の一部の面にて前後方向へ所定の幅で編組20Aに接合された構成であってもよい。接合部31Aは、第1接合部の一例であり、接合部32Aは、第2接合部の一例である。
【0040】
また、以下の説明においては、編組20Bとシールド12Aとが接合されている部分を接合部31Bと称し、編組20Aと接続部52とが接合されている部分を接合部32Bと称する。接合部31Bも、シールド12Aの外面にて周方向の全体に渡って前後方向に所定の幅で編組20Bが接合された構成でもよく、シールド12Aの外面にて周方向の一部が前後方向に所定の幅で編組20Bが接合された構成であってもよい。接合部32Bも、接続部52の上下左右の全ての面にて前後方向へ所定の幅で編組20Bが接合された構成でもよく、接続部52の上下左右の一部の面にて前後方向へ所定の幅で編組20Bが接合された構成であってもよい。接合部31Bは、第1接合部の一例であり、接合部32Bは、第2接合部の一例である。接合部31A、接合部32A、接合部31B及び接合部32Bの各々は、接触抵抗が180mΩ以下であるのが好ましい。
【0041】
本実施形態においては、シールド12A、編組20A、編組20B、接続部42及び接続部52は、いずれも同じ材料であるため、接合部31A、接合部31B、接合部32A及び接合部32Bにおいてガルバニック腐食の発生を抑えることができる。また、本実施形態においては、編組20Aと接続部42との接合、編組20A、20Bとシールド12Aとの接合、編組20Bと接続部52との接合は、超音波接合であるため、固定部材を用いて編組20A、20Bを接触固定する構成と比較すると、接合のための部品点数が少なくなり、配索体2Aのサイズの増大や組付けの悪化を抑えることができ、強固に接合して振動に対して位置ずれや偏りの発生を抑え、シールド性能の劣化を低減することができる。また、接合部31A、接合部32A、接合部31B及び接合部32Bにおける接合は、超音波接合であるため、振動や温度変化による接触抵抗の増大を抑え、シールド性能の劣化を低減することができる。
【0042】
なお、電気接続箱40は、接続部42が本体41と一体の構成となっているが、接続部42を本体41に対して着脱可能な構成としてもよい。また、電気接続箱50についても、接続部52が本体51と一体の構成となっているが、接続部52を本体51に対して着脱可能な構成としてもよい。
【0043】
また、図2(c)に示すように、シールド12Aの内部空間の左右方向に沿った断面形状は矩形となっているが、内部空間の左右方向に沿った断面形状は矩形に限定されるものではなく、円形や楕円形、偏平楕円などの形状であってもよい。
【0044】
[第2実施形態]
次に本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態においては、電気接続箱40と電気接続箱50との間を電気的且つ機械的に接続する配索体の構成が第1実施形態と異なる。他の構成については、第1実施形態と同じであるため、第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付して説明を省略し、以下の説明においては、第1実施形態との相違点について説明する。
【0045】
図3は、電気接続箱40と電気接続箱50とを電気的且つ機械的に接続する配索体2Bの概略構成を示す模式図である。図3(a)は、配索体2Bの平面図であり、図3(b)は、配索体2Bの正面図であり、図3(c)は、図3(a)のB-B線断面図である。また、図4は、電気接続箱40及び配索体2Bの斜視図である。なお、図4においては、電気接続箱50、配索体2Bの電気接続箱50側の端部及び編組20Bの図示を省略している。配索体2Bは、ワイヤハーネス10B及び編組20A、20Bを有する。配索体2Bは、シールド構造の一例である。
【0046】
ワイヤハーネス10Bは、シールド12A、被覆電線11A、中空な角管の形状である接続部13B及び中空な角管の形状である接続部14Bを有する。シールド12Aの電気接続箱40側の端部には、接続部13Bがシールド12Aに一体に形成されており、シールド12Aの電気接続箱50側の端部には、接続部14Bがシールド12Aに一体に形成されている。接続部13B及び接続部14Bは、シールド12Aと同じ素材で中空に形成されている。接続部13Bは、内部空間の接続部42側が外部へ開口し、内部空間のシールド12A側がシールド12Aの内部空間に繋がっている。接続部14Bは、内部空間の接続部52側が外部へ開口し、内部空間のシールド12A側がシールド12Aの内部空間に繋がっている。
【0047】
接続部13Bは、左右方向の幅がシールド12Aの左右方向の幅より広くなっており、上下方向の幅がシールド12Aの上下方向の幅より広くなっている。接続部14Bも、接続部13Bと同様に左右方向の幅がシールド12Aの左右方向の幅より広くなっており、上下方向の幅がシールド12Aの上下方向の幅より広くなっている。被覆電線11Aは、シールド12A、接続部13B及び接続部14Bに内包され、端子やコネクタ等を介してバッテリー5とインバータ4とを電気的に接続する。
【0048】
編組20Aの一端は、図に示すように接続部42の上面と下面に対して前後方向へ所定の幅で電気的及び機械的に接合され、編組20Aの他端は、図に示すように接続部13Bの上面と下面に対して前後方向へ所定の幅で電気的及び機械的に接合されている。なお、図3(a)及び図3(b)においては、編組20Aにおいて接続部42に接合される側の端部の図示を省略している。
【0049】
編組20Bの一端は、図4においては図示を省略しているが、編組20Aと接続部42との接合と同様に、接続部52の上面と下面に対して前後方向へ所定の幅で電気的及び機械的に接合され、編組20Bの他端は、図に示すように、接続部14Bの上面と下面に対して前後方向へ所定の幅で電気的及び機械的に接合されている。なお、図3(a)及び図3(b)においては、編組20Bにおいて接続部52に接合される側の端部の図示を省略している。
【0050】
編組20Aと接続部13Bとが接合されている部分を接合部33Aと称し、編組20Bと接続部13Bとが接合されている部分を接合部33Bと称する。接合部33Aは、接続部13Bの矩形の上面、下面、左右方向の側面のうち、面積の広い面に形成されるのが好ましい。接続部13Bの場合、上面及び下面が左右方向の側面より面積が広いため、接合部33Aが接続部13Bの上面と下面に形成されている。なお、配索体2Bにおいては、接続部13Bの左右方向の側面にも編組20Aを接合して接合部33Aを形成し、接続部14Bの左右方向の側面にも編組20Bを接合して接合部33Bを形成してもよい。
【0051】
接合部33A及び接合部33Bの左右方向の幅W2は、シールド12Aに内包される複数の被覆電線11Aの左右方向への並びの幅W1より広い幅であるのが好ましい。また、接合部33Aを接続部13Bの側面にも形成し、接合部33Bを接続部14Bの側面にも形成する場合、各々の上下方向の幅は、被覆電線11Aの上下方向の幅より広いことが好ましい。
【0052】
接合部32Aも、接続部42の矩形の上面、下面、左右方向の側面のうち、面積の広い面に形成されるのが好ましく、接合部32Bも、接続部52の矩形の上面、下面、左右方向の側面のうち、面積の広い面に形成されるのが好ましい。なお、接合部32Aを接続部42の左右方向の側面にも形成してもよく、接合部32Bを接続部52の左右方向の側面にも形成してもよい。接合部32A及び接合部32Bの左右方向の幅も、幅W1より広い幅であるのが好ましい。なお、接合部32A、接合部32B、接合部33A及び接合部33Bの前後方向の幅は、接合の強度を保ち、接触抵抗が180mΩ以下となる幅であればよい。
【0053】
第2実施形態の構成によれば、編組20Aが接合される面と、編組20Bが接合される面は平坦であるため、超音波接合によって接合部31A、接合部32B、接合部33A及び接合部33Bを形成することが容易となる。なお、接合部31A、接合部32B、接合部33A及び接合部33Bは、超音波接合により形成される場合、接合痕が矩形であるのが好ましい。
【0054】
[第3実施形態]
次に本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態においては、電気接続箱40と電気接続箱50との間を電気的且つ機械的に接続する配索体の構成が他の実施形態と異なる。他の構成については、他の実施形態と同じであるため、他の実施形態と同じ構成については同じ符号を付して説明を省略し、以下の説明においては、他の実施形態との相違点について説明する。
【0055】
図5は、電気接続箱40と電気接続箱50とを電気的且つ機械的に接続する配索体2Cの概略構成を示す模式図である。図5(a)は、配索体2Cの平面図であり、図5(b)は、配索体2Cの正面図であり、図5(c)は、図5(a)のC-C線断面図である。配索体2Cは、ワイヤハーネス10C及び編組20A、20Bを有する。配索体2Cは、シールド構造の一例である。
【0056】
ワイヤハーネス10Cは、シールド12A、接続部13B、接続部14B及び偏平電線11Cを有する。偏平電線11Cは、左右方向に複数並んだ導体101が被覆102で被覆された電線である。偏平電線11Cは、配電部品の一例である。本実施形態においては、2つの偏平電線11Cが左右方向に並んでシールド12Aに内包されている。なお、偏平電線11Cを内包するシールド12Aは、左右方向に沿った断面において、左右方向の幅が上下方向の幅より広い偏平形状であるのが好ましい。偏平電線11Cは、一端側が編組20Aの内側と接続部42の内側を通って電気接続箱40内に至り、他端側が編組20Bの内側と接続部52の内側を通って電気接続箱50内に至る。
【0057】
接合部33A及び接合部33Bの左右方向の幅W4は、複数の偏平電線11Cの左右方向への並びの幅W3より広い幅であるのが好ましい。また、接合部33Aを接続部13Bの側面にも形成し、接合部33Bを接続部14Bの側面にも形成する場合、各々の上下方向の幅は、偏平電線11Cの上下方向の幅より広いことが好ましい。接合部32A及び接合部32Bの左右方向の幅も、複数の偏平電線11Cの左右方向への並びの幅W3より広い幅であるのが好ましい。接合部32Aを接続部42の側面にも形成し、接合部32Bを接続部52の側面にも形成する場合、各々の上下方向の幅は、偏平電線11Cの上下方向の幅より広いことが好ましい。
【0058】
本実施形態の構成によれば、偏平電線11Cを左右方向に並べるため、接続部13B、14Bの左右方向の幅が広くなる。このため、接合部33A、33Bの左右方向の幅も広くなり、接合部33A、33Bの面積が広くなるため、シールド性能が向上する。また、本実施形態の構成によれば、接合部33A、33Bの面積が広くなるため、例えば、編組20Aと接続部13Bとの接合や編組20Bと接続部14Bとの接合を超音波接合により行うときに、接合のためのホーンを接続部13B、14Bに押し当てやすくなり、接合の作業がしやすくなる。また、超音波接合の際には、接続部13B、14Bが超音波接合のアンビルの役目を果たすため、超音波接合のためのアンビルが不要となる。
【0059】
[第4実施形態]
次に本発明の第4実施形態について説明する。第4実施形態においては、電気接続箱40と電気接続箱50との間を電気的且つ機械的に接続する配索体の構成が他の実施形態と異なる。他の構成については、他の実施形態と同じであるため、他の実施形態と同じ構成については同じ符号を付して説明を省略し、以下の説明においては、他の実施形態との相違点について説明する。
【0060】
図6は、電気接続箱40と電気接続箱50とを電気的且つ機械的に接続する配索体2Dの概略構成を示す模式図である。図6(a)は、配索体2Dの平面図であり、図6(b)は、配索体2Dの正面図であり、図6(c)は、図6(a)のD-D線断面図である。配索体2Dは、ワイヤハーネス10D及び編組20A、20Bを有する。配索体2Dは、シールド構造の一例である。
【0061】
ワイヤハーネス10Dは、シールド12D、中空な角管の形状である接続部13D、中空な角管の形状である接続部14D及び偏平電線11Dを有する。シールド12Dは、電流を通電可能なアルミニウムやアルミニウム合金で中空に形成されており、上下方向に積層された偏平電線11Dを内包可能なシールドである。シールド12Dの電気接続箱40側の端部には、接続部13Dがシールド12Dに一体に形成されており、シールド12Dの電気接続箱50側の端部には、接続部14Dがシールド12Dに一体に形成されている。接続部13D及び接続部14Dは、シールド12Dと同じ素材で中空に形成されている。接続部13Dは、内部空間の接続部42側が外部へ開口し、内部空間のシールド12D側がシールド1DAの内部空間に繋がっている。接続部14Dは、内部空間の接続部52側が外部へ開口し、内部空間のシールド12D側がシールド12Dの内部空間に繋がっている。
【0062】
偏平電線11Dは、左右方向に複数並んだ導体101が被覆102で被覆された電線である。偏平電線11Dは、配電部品の一例である。本実施形態においては、2つの偏平電線11Dが上下方向に積層されてシールド12Dに内包されている。偏平電線11Dは、一端側が編組20Aの内側と接続部42の内側を通って電気接続箱40内に至り、他端側が編組20Bの内側と接続部52の内側を通って電気接続箱50内に至る。
【0063】
接合部33A及び接合部33Bの左右方向の幅W6は、積層された偏平電線11Dの左右方向の幅W5より広い幅であるのが好ましい。また、接合部33Aを接続部13Dの側面にも形成し、接合部33Bを接続部14Dの側面にも形成する場合、各々の上下方向の幅は、積層された偏平電線11Dの上下方向の合計の幅より広いことが好ましい。接合部32A及び接合部32Bの左右方向の幅も、偏平電線11Dの左右方向の幅W5より広い幅であるのが好ましい。また、接合部32Aを接続部42の側面にも形成し、接合部33Bを接続部52の側面にも形成する場合、各々の上下方向の幅は、積層された偏平電線11Dの上下方向の合計の幅より広いことが好ましい。
【0064】
第4実施形態の構成によれば、偏平電線11Dを上下方向に積層するため、ワイヤハーネス10Dの左右方向の幅を狭くして小型にすることができる。
【0065】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。例えば上述の実施形態を以下のように変形して本発明を実施してもよい。なお、上述した実施形態及び以下の変形例は、各々を組み合わせてもよい。上述した各実施形態及び各変形例の構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態や変形例に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0066】
上述した実施形態においては、電気接続箱40は、接続部42を有する構成であるが、接続部42を有していない構成であってもよい。図7(a)は、電気接続箱40が接続部42を有していない接続構造体1Eの概略構成を示す模式図であり、図7(b)は、図7(a)のE-E線断面図である。接続構造体1Eにおいては、電気接続箱40が接続部42を有しておらず、電気接続箱50が接続部52を有してない。この場合、編組20Aは、図7に示すように、電気接続箱40において電気接続箱50に対向する面に対して広げられて接合される。また、編組20Bは、電気接続箱50において電気接続箱40に対向する面に対して広げられて接合される。編組20Aにおいて電気接続箱40に接合されている部分を接合部34Aと称する。接合部34の左右方向の幅は、シールド12Aに内包される複数の被覆電線11Aの左右方向への並びの幅W1より広い幅であるのが好ましい。なお、図示を省略しているが、編組20Bも編組20Aと同様に電気接続箱50に接合されて接合部が形成される。
【0067】
本発明においては、シールド12A、12Dの左右方向に沿った断面において、断面が矩形の内部空間の短辺の長さは、シールド12A、12Dが遮蔽するノイズの最も短い波長の1/4以下であるのが好ましい。例えば、シールド12A、12Dが遮蔽するノイズが数百MHz-1GHzである場合、短辺は75mm以下であるのが好ましい。また、シールド12A、12Dが4.5GHz帯まで遮蔽する場合、短辺の長さが17mm以下であるのが好ましく、シールド12A、12Dが28GHz帯まで遮蔽する場合、短辺の長さが2.7mm以下であるのが好ましい。また、接続部42と接続部52の左右方向に沿った断面において、断面が矩形の内部空間の短辺の長さは、接続部42と接続部52が遮蔽するノイズの最も短い波長の1/4以下であるのが好ましい。
【0068】
上述した実施形態においては、電気接続箱40に収容されているのがインバータ4であり、電気接続箱50に収容されているのがバッテリー5であるが、電気接続箱40に収容されるのがモータであり、電気接続箱50に収容されるのがインバータであってもよい。この場合、配索体2Aに内包される被覆電線11Aによってインバータとモータとが接続される。
【0069】
配索体2A、2B、2C、2Dについては、少なくとも一部が自動車の床下に配索される構成であってもよい。
【0070】
本発明においては、編組20A、20Bが接合されるシールド12A、12Dの表面、接続部42の表面及び接続部52の表面が、主成分が同じ材料であってもよい。
また、電気接続箱40及び電気接続箱50と電気的且つ機械的に接続されるボディ3についても、編組20A、20B及びシールド12A、12Dと主成分が同じ材料である構成であってもよい。
【符号の説明】
【0071】
1A、1E 接続構造体
2A、2B、2C、2D 配索体
3 ボディ
4 インバータ
5 バッテリー
10A、10B、10C、10D ワイヤハーネス
11A 被覆電線
11C、11D 偏平電線
12A、12D シールド
13B、13D、14B、14D 接続部
20A、20B 編組
31A、31B、32A、32B、33A、33B 接合部
40、50 電気接続箱
41、51 本体
42、52 接続部
101 導体
102 被覆
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7