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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】撮像モジュール
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/04 20060101AFI20241111BHJP
   G02B 23/24 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
A61B1/04 530
G02B23/24 A
G02B23/24 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021042297
(22)【出願日】2021-03-16
(65)【公開番号】P2022142206
(43)【公開日】2022-09-30
【審査請求日】2023-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】浅岡 卓郎
(72)【発明者】
【氏名】雪入 毅司
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-007714(JP,A)
【文献】特開2019-076358(JP,A)
【文献】特開2013-123628(JP,A)
【文献】特開2017-113077(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00-1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子を備える撮像モジュールにおいて、
前記撮像素子の撮像面とは反対側の裏面側に配置される、フレキシブル基板で構成される第1の層と、
前記撮像素子と前記第1の層との間に配置され、前記撮像素子と前記第1の層とを電気的に接続する第2の層と、
前記第1の層の前記第2の層側とは反対側に配置される第3の層と、を有し、
前記第3の層の熱膨張率は、前記第1の層と前記第2の層の平均熱膨張率よりも、前記撮像素子の熱膨張率に近く、
前記第3の層の弾性率は、前記第1の層および前記第2の層の弾性率よりも高い、撮像モジュール。
【請求項2】
前記撮像素子の弾性率×厚さと、前記第3の層の弾性率×厚さとの合計値は、前記第1の層の弾性率×厚さと、前記第2の層の弾性率×厚さとの合計値よりも大きい、請求項1に記載の撮像モジュール。
【請求項3】
前記撮像素子の撮像面には、平面視における大きさが前記撮像素子の大きさと同じであるカバーガラスが貼着されている、請求項1または2に記載の撮像モジュール。
【請求項4】
入射する光を前記撮像素子の撮像面に結像させるレンズを有し、
前記カバーガラスと前記レンズとの間に配置される少なくとも1つの光学部品を有し、
前記カバーガラスの受光面側が前記光学部品と接着固定されており、
前記撮像素子の側面に垂直な方向のうち少なくとも1つの方向において、前記第3の層の前記撮像素子の側面からの突出量は、前記カバーガラスの厚みと前記撮像素子の厚みと前記第2の層の厚みとの合計値の半分以下である、請求項3に記載の撮像モジュール。
【請求項5】
入射する光を前記撮像素子の撮像面に結像させるレンズを有し、
前記レンズと前記撮像素子との間に配置されるプリズムを有し、
前記撮像素子は、撮像面が前記レンズの光軸と平行に配置されており、
前記第3の層が、前記撮像モジュールの最外層を形成する、請求項1~4のいずれか一項に記載の撮像モジュール。
【請求項6】
前記レンズと前記撮像素子との間に配置されるプリズムを有し、
前記撮像素子は、撮像面が前記レンズの光軸と平行に配置されており、
前記第3の層が、前記撮像モジュールの最外層を形成し、
前記第3の層が前記撮像素子から突出する側面は、前記レンズ側の側面である、請求項4に記載の撮像モジュール。
【請求項7】
前記第3の層はセラミックで形成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の撮像モジュール。
【請求項8】
前記第3の層に回路が形成され、前記第1の層と電気的に接続されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の撮像モジュール。
【請求項9】
前記第2の層が半田ボールを有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の撮像モジュール。
【請求項10】
前記第2の層が少なくとも一部にアンダーフィルを充填されている、請求項9に記載の撮像モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡の先端部には、撮像素子およびレンズ鏡胴等を有する撮像モジュールが配置される。撮像素子は、半田ボール等の電気的接続をする電極層を介して基板上に配置されている。
【0003】
リジットな基板に比べて安価であること、他の電子部品も合わせて一度に実装でき、組立性がよいこと、曲げることが可能であるため、狭い筐体内に立体的に配置できること、等の理由から、基板としてポリイミドおよびポリエチレンテレフタレート等の樹脂からなるフレキシブル基板を用いることが考えられている。
【0004】
例えば、特許文献1には、撮影レンズを介して受像面に入射された撮影光を光電変換する固体撮像素子と、固体撮像素子の受像面とは反対側の面である端子面に対向する接続面を有する回路基板と、を有し、固体撮像素子の端子面には、複数の端子が二次元のマトリクス状に縦にも横にも均等に配置され、回路基板の接続面と固体撮像素子の端子面とは、複数の端子を介して接続され、端子面上における複数の端子の総面積は、固体撮像素子の受像面における撮像エリアの面積の10%以上を占める、内視鏡が記載されている。
【0005】
この特許文献1には、フレキシブル基板にイメージセンサを実装する際には、特に冷却時に発生するフレキシブル基板の変形のためにイメージセンサの基板に反りが生じて、イメージセンサと回路基板との接続部に局地的な歪みが生じる場合がある、ことが記載されている(段落[0026])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-007714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、撮像素子の基板としてフレキシブル基板を用いる場合には、温度変化によって、各部材は熱膨張あるいは収縮した際に、撮像素子と電極層およびフレキシブル基板との熱膨張率の差が大きいため、撮像素子が反ってしまうという問題があった。特に、フレキシブル基板として用いられる材料は熱膨張率が大きいため、基板としてフレキシブル基板を用いる場合は、撮像素子が反って破損してしまうという問題があることがわかった。
【0008】
本発明は、上記従来技術の問題点を解消し、撮像モジュールの撮像素子の反りを抑制して撮像素子の破損を防止できる撮像モジュールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
【0010】
[1] 撮像素子を備える撮像モジュールにおいて、
撮像素子の撮像面とは反対側の裏面側に配置される、フレキシブル基板で構成される第1の層と、
撮像素子と第1の層との間に配置され、撮像素子と第1の層とを電気的に接続する第2の層と、
第1の層の第2の層側とは反対側に配置される第3の層と、を有し、
第3の層の熱膨張率は、第1の層と第2の層の平均熱膨張率よりも、撮像素子の熱膨張率に近く、
第3の層の弾性率は、第1の層および第2の層の弾性率よりも高い、撮像モジュール。
[2] 撮像素子の弾性率×厚さと、第3の層の弾性率×厚さとの合計値は、第1の層の弾性率×厚さと、第の2層の弾性率×厚さとの合計値よりも大きい、[1]に記載の撮像モジュール。
[3] 撮像素子の撮像面には、平面視における大きさが撮像素子の大きさと同じであるカバーガラスが貼着されている、[1]または[2]に記載の撮像モジュール。
[4] 入射する光を撮像素子の撮像面に結像させるレンズを有し、
カバーガラスとレンズとの間に配置される少なくとも1つの光学部品を有し、
カバーガラスの受光面側が光学部品と接着固定されており、
撮像素子の側面に垂直な方向のうち少なくとも1つの方向において、第3の層の撮像素子の側面からの突出量は、カバーガラスの厚みと撮像素子の厚みと第2の層の厚みとの合計値の半分以下である、[3]に記載の撮像モジュール。
[5] 入射する光を撮像素子の撮像面に結像させるレンズを有し、
レンズと撮像素子との間に配置されるプリズムを有し、
撮像素子は、撮像面がレンズの光軸と平行に配置されており、
第3の層が、撮像モジュールの最外層を形成する、[1]~[4]のいずれかに記載の撮像モジュール。
[6] レンズと撮像素子との間に配置されるプリズムを有し、
撮像素子は、撮像面がレンズの光軸と平行に配置されており、
第3の層が、撮像モジュールの最外層を形成し、
第3の層が撮像素子から突出する側面は、レンズ側の側面である、[4]に記載の撮像モジュール。
[7] 第3の層はセラミックで形成されている、[1]~[6]のいずれかに記載の撮像モジュール。
[8] 第3の層に回路が形成され、第1の層と電気的に接続されている、[1]~[7]のいずれかに記載の撮像モジュール。
[9] 第2の層が半田ボールを有する、[1]~[8]のいずれかに記載の撮像モジュール。
[10] 第2の層が少なくとも一部にアンダーフィルを充填されている、[9]に記載の撮像モジュール。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、撮像モジュールの撮像素子の反りを抑制して撮像素子の破損を防止できる撮像モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る撮像モジュールを有する内視鏡を用いる内視鏡システムの構成の一例を示す概略構成図である。
図2】本発明の撮像モジュールの一例を模式的に示す斜視図である。
図3図2に示す撮像モジュールにおいてアンカーおよびカバー部材を除いた状態の側面図である。
図4図2の撮像モジュールの一部を拡大して示す斜視図である。
図5図4の側面図である。
図6】本発明の撮像モジュールの他の一例を模式的に示す側面図である。
図7】本発明の撮像モジュールの他の一例を模式的に示す側面図である。
図8】本発明の撮像モジュールの他の一例を模式的に示す側面図である。
図9】本発明の撮像モジュールの他の一例を模式的に示す側面図である。
図10】本発明の撮像モジュールの他の一例を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の撮像モジュールの実施形態について、図面に基づいて説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。本明細書の図面において、視認しやすくするために各部の縮尺を適宜変更して示している。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0014】
[撮像モジュール]
本発明の撮像モジュールは、
撮像素子を備える撮像モジュールにおいて、
撮像素子の撮像面とは反対側の裏面側に配置される、フレキシブル基板で構成される第1の層と、
撮像素子と第1の層との間に配置され、撮像素子と第1の層とを電気的に接続する第2の層と、
第1の層の第2の層側とは反対側に配置される第3の層と、を有し、
第3の層の熱膨張率は、第1の層と第2の層の平均熱膨張率よりも、撮像素子の熱膨張率に近く、
第3の層の弾性率は、第1の層および第2の層の弾性率よりも高い、撮像モジュールである。
【0015】
図1に、本発明の撮像モジュールを有する内視鏡を備える内視鏡システムの一例を概念的に示す。
【0016】
内視鏡システム1は、内視鏡2と、光源ユニット3と、プロセッサユニット4とを備える。内視鏡2は、後述する撮像モジュール10の部分以外は、一般的な内視鏡と同様の構成を有する。
【0017】
内視鏡2は、被検体内に挿入される挿入部と、挿入部に連なる操作部と、操作部から延びるユニバーサルコードとを有し、挿入部は、先端部と、先端部に連なる湾曲部と、湾曲部と操作部とを繋ぐ軟性部とで構成されている。
【0018】
先端部には、観察部位を照明するための照明光を出射する照明光学系や、観察部位を撮像する撮像素子及び撮像光学系などを有する撮像モジュール(カメラヘッド)が設けられている。湾曲部は挿入部の長手軸と直交する方向に湾曲可能に構成されており、湾曲部の湾曲動作は操作部にて操作される。また、軟性部は、挿入部の挿入経路の形状に倣って変形可能な程に比較的柔軟に構成されている。
【0019】
操作部には、先端部の撮像モジュールの撮像動作を操作するボタンや、湾曲部の湾曲動作を操作するノブなどが設けられている。また、操作部には、電気メスなどの処置具が導入される導入口が設けられており、挿入部の内部には、導入口から先端部に達し、鉗子等の処置具が挿通される処置具チャンネルが設けられている。
【0020】
ユニバーサルコードの末端にはコネクタが設けられ、内視鏡2は、コネクタを介して、先端部の照明光学系から出射される照明光を生成する光源ユニット3、及び先端部の撮像装置によって取得される映像信号を処理するプロセッサユニット4と接続される。
【0021】
プロセッサユニット4は、入力された映像信号を処理して観察部位の映像データを生成し、生成した映像データをモニタに表示させ、また記録する。なお、プロセッサユニット4は、PC(パーソナルコンピュータ)等のプロセッサによって構成されるものであっても良い。
【0022】
光源ユニット3は、内視鏡2の撮像装置によって体腔内の観察対象部位を撮像して画像信号を取得するために、赤光(R)、緑光(G)、及び青光(B)等の3原色光からなる白色光や特定波長光等の照明光を、発生させて、内視鏡2に供給し、内視鏡2内のライトガイド等によって伝搬し、内視鏡2の挿入部の先端部の照明光学系から出射して、体腔内の観察対象部位を照明するためのものである。
【0023】
挿入部及び操作部並びにユニバーサルコードの内部にはライトガイドや電線群(信号ケーブル)が収容されている。光源ユニット3にて生成された照明光がライトガイドを介して先端部の照明光学系に導光され、また、先端部の撮像装置とプロセッサユニット4との間で信号および/または電力が電線群を介して伝送される。
【0024】
また、内視鏡システム1は、更に、洗浄水等を貯留する送水タンク、体腔内の吸引物(供給された洗浄水等も含む)を吸引する吸引ポンプ等を備えていてもよい。更に、送水タンク内の洗浄水、又は外部の空気等の気体を内視鏡内の管路(図示せず)に供給する供給ポンプ等を備えていても良い。
【0025】
図2に、本発明の撮像モジュールの一例を模式的に表す斜視図を示す。図3に、図2の側面図を示す。また、図3は、図2の撮像モジュールからアンカー24およびカバー部材42を除いた状態の側面図である。
【0026】
図2および図3に示す撮像モジュール10は、レンズ12、レンズ12を保持する鏡胴14、撮像素子(以下、センサーともいう)16、カバーガラス17、光学部材18、光学部材保持具20、第2の層19、フレキシブル基板22、第3の層40、アンカー24、カバー部材42、および、ケーブル26を有する。
【0027】
図2および図3に示す例は、光学部材18がプリズムであり、撮像素子16の撮像面が、レンズ12の光軸と平行に配置される例である。以下の説明において、光学部材18をプリズム18ともいう。また、後に詳述するが、第3の層40は、フレキシブル基板22の裏面22a側に配置されるため、この構成において、第3の層40は、撮像モジュール10の最外層を形成している。
【0028】
レンズ12は、入射する光をセンサー16の受光面に結像する光学系である。レンズ12は鏡胴14に保持される。
【0029】
鏡胴14は、筒状の部材であり、1以上のレンズ12を保持するものである。鏡胴14は、レンズ12の光軸がプリズム18のレンズ12と対面する面に垂直になるように、レンズ12を保持する。
【0030】
レンズ12および鏡胴14の構成は特に制限されない。例えば、レンズ12を1つ有する構成であってもよいし、2つ、あるいは、4つ以上のレンズ12を有する構成でもよい。また、各レンズ12は、凸レンズであっても凹レンズであってもよい。
【0031】
センサー16は、レンズ12によって結像された光を光電変換によって電気信号に変換することで撮像を行う撮像素子である。センサー16は、CCD(Charge-Coupled Device)センサー、CMOS(Complementary MOS)センサー等の従来公知の撮像素子である。
【0032】
センサー16は、鏡胴14よりも基端側に配置されている。また、図3に示すように、センサー16は、受光面がレンズ12の光軸に平行になるようにフレキシブル基板22上に実装されている。
【0033】
フレキシブル基板22は、本発明における第1の層であり、センサー16を実装する基板である。また、フレキシブル基板22には、センサー16以外の電子部品が実装されていてもよい。また、フレキシブル基板22には、センサー16および電子部品に対する信号または電力が入出力される複数の接続端子が設けられている。接続端子には、ケーブル26の信号線が電気的に接続される(図3参照)。
【0034】
図示例において、フレキシブル基板22は、略L字状の板状の部材を2か所で湾曲させた形状を有する。具体的には、フレキシブル基板22は、レンズの光軸方向(以下、軸方向ともいう)と直交する方向を軸として湾曲させた第1湾曲部22bと、軸方向を軸として湾曲させた第2湾曲部22cとを有し、この2つの湾曲部で連結される3つの板状部にセンサー16、電子部品および接続端子が実装されている。図示例においては、センサー16は、図3中下側の板状部の上面側に実装されている。
【0035】
フレキシブル基板22は、可撓性を有する基板である。フレキシブル基板22としては、特に制限はなく、従来公知のフレキシブル基板を用いることができる。一例として、フレキシブル基板は、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂材料からなるベースフィルム上に銅箔等からなる回路を形成したものである。
【0036】
フレキシブル基板22は、1箇所、あるいは、3箇所以上で折り曲げられた形状であってもよい。また、フレキシブル基板22上におけるセンサー16、電子部品、および、接続端子等の配置には特に制限はない。
【0037】
フレキシブル基板22上の回路には、センサー16、および、ケーブル26がそれぞれ接続される。センサー16によって光が電気信号に変換され、この電気信号がフレキシブル基板22の回路を介してケーブル26に伝達し送信される。ケーブル26は、内視鏡の挿入部、操作部、ユニバーサルコード等に挿通されて、プロセッサユニット4に接続されている。
ケーブル26は、同軸ケーブルあるいは単軸ケーブル等の1以上の信号線、1以上の信号線の外周を覆うシールド線、ならびに、信号線およびシールド線の外周を覆う保護被覆(シース)等を備える。
【0038】
フレキシブル基板22とセンサー16とは、第2の層19によって電気的に接続されている。図4および図5にセンサー16近傍を拡大した図を示す。図4および図5に示す例においては第2の層19は、複数の半田ボール19aを有しており、半田ボール19aによってフレキシブル基板22の回路とセンサー16とを電気的に接続している。また、図4に示す例では、好ましい態様として、半田ボール19aの間の空間にアンダーフィル19bが充填されている。
【0039】
半田ボール19aとしては、内視鏡の撮像モジュールにおいて、センサーと基板とを電気的に接続するために用いられる従来公知の半田ボールが適宜利用可能である。例えば、半田ボールの材料としては、Sn-Ag-Cu系合金を用いることができる。
【0040】
アンダーフィル19bとしては、内視鏡の撮像モジュールにおいて、アンダーフィルとして用いられる、従来公知のアンダーフィルが適宜利用可能である。例えば、アンダーフィルとしては、エポキシ樹脂等の樹脂材料を用いることができる。
【0041】
なお、第2の層19は、半田ボール19aおよびアンダーフィル19bを有する構成に限定はされない。例えば、第2の層19は、半田ボール19aのみを有する構成であってもよい。あるいは、異方性導電膜(ACF)であってもよい。
【0042】
カバーガラス17は、センサー16の受光面上に配置され、受光面を保護するものである。カバーガラス17上にはプリズム18が配置される。カバーガラス17は、平面視における大きさがセンサー16の撮像面の大きさと略同じである。
【0043】
プリズム18は、鏡胴14とセンサー16(カバーガラス17)との間に配置される。プリズム18は、鏡胴14に保持されたレンズ12を通過した光を90°屈曲させて光路を変更し、センサー16の受光面に導く。図示例においては、プリズム18は、入射面と出射面とが直交する直角プリズムである。プリズム18は、入射面を鏡胴14の基端側の面に対面して配置され、出射面をセンサー16の受光面に対面して配置される。プリズム18は、カバーガラス17と接着固定されていてもよい。
【0044】
光学部材保持具20は、鏡胴14とプリズム18とを保持する部材である。光学部材保持具20は、略筒状の部材であり、筒部の内部に鏡胴14を嵌入されて、鏡胴14を保持する。光学部材保持具20の内面と鏡胴14の外周面とは接着固定される。
【0045】
光学部材保持具20と鏡胴14とを接着する接着剤としては、従来の内視鏡で用いられている種々の公知の接着剤を用いることができる。この点は、他の部材同士を接着する接着剤についても同様である。
【0046】
光学部材保持具20は、筒部の基端側の端面に、多角形状のフランジ部20aを有し、プリズム18の入射面が当接される。これにより、プリズム18を位置決めする。光学部材保持具20は、鏡胴14およびプリズム18を所定の位置に保持することで、鏡胴14とプリズム18との相対位置、すなわち、鏡胴14とセンサー16(受光面)との相対位置を固定する。
【0047】
ここで、鏡胴14は、レンズ12の光軸方向(以下、軸方向ともいう)における、光学部材保持具20に対する相対位置を、センサー16の受光面にピントが合うように調整されて、光学部材保持具20に接着固定される。
【0048】
アンカー24は、光学部材保持具20に対して、ケーブル26を保持するものである。図示例においては、アンカー24は、光軸方向に延在する2枚の板状部24cを有し、各板状部24cの先端側にアーム部24aを有する。アーム部24aは、光学部材保持具20のフランジ部20aに係合している。また、図2に示すように、2枚の板状部24cは、その主面がフレキシブル基板22の表面(センサー16が配置される面)に対して垂直に配置されている。また、2枚の板状部24cは、フレキシブル基板22上のケーブル26との接続箇所を挟んで対面するように配置されている。
【0049】
また、アンカー24は、基端側に2枚の板状部24cを連結するとともに、ケーブル26を保持する保持部24bを有する。保持部24bは、ケーブル26を押圧するようにかしめられてケーブル26を保持する。すなわち、保持部24bは、ケーブル26の外皮に沿って曲げられる。
【0050】
アンカー24のアーム部24aと光学部材保持具20のフランジ部20a、ならびに、アンカー24の保持部24bとケーブル26の外皮は、それぞれ接着剤で接着固定されてもよい。
【0051】
このように、アンカー24は、光学部材保持具20およびケーブル26それぞれに接続されることで、ケーブル26が引っ張られた際などに、フレキシブル基板22上の接続端子と信号線との接続箇所が引っ張られて、接続端子と信号線との接続が断線することを防止する。
【0052】
カバー部材42は、アンカー24のフレキシブル基板22とは反対側に配置される板状の部材である。カバー部材42は、アンカー24とともに、フレキシブル基板22上の接続端子と信号線との接続箇所を覆って保護している。
【0053】
アンカー24およびカバー部材42を形成する材料としては特に限定はなく、内視鏡の撮像モジュールを構成する部品として利用される各種の樹脂材料および金属材料を用いることができる。放熱性の観点から金属材料が好ましい。加工性、入手性、強度等を考慮すると、アンカー24およびカバー部材42としては、ステンレス鋼、および、銅合金が好ましい。
【0054】
なお、カバー部材42はアンカー24と一体的に形成されていてもよい。あるいは、カバー部材42を有していなくてもよい。
【0055】
このような撮像モジュール10において、レンズ12からセンサー16に取り込まれた観察像は、センサー16の受光面に結像されて電気信号に変換され、この電気信号がケーブル26を介してプロセッサユニット4に出力され、映像信号に変換され、プロセッサユニット4に接続されたモニタに観察画像が表示される。
【0056】
ここで、撮像素子は発熱源であり、撮像素子の温度が上昇すると撮像素子周辺の部材は熱膨張するが、撮像素子と第2の層および第1の層(フレキシブル基板)との熱膨張率の差が大きいと、撮像素子が反ってしまうという問題があった。特に、フレキシブル基板として用いられる材料は熱膨張率が大きいため、基板としてフレキシブル基板を用いる場合は、撮像素子が反って破損してしまうという問題があることがわかった。
【0057】
これに対して、本発明の撮像モジュールは、フレキシブル基板22(第1の層)の、第2の層19側とは反対側の面に配置される第3の層40を有し、第3の層40の熱膨張率が、第1の層22と第2の層19の平均熱膨張率よりも、撮像素子16の熱膨張率に近く、また、第3の層40の弾性率が、第1の層22および第2の層19の弾性率よりも高い構成を有する。この構成により、第3の層40が、第1の層22および第2の層19の熱による膨張を抑制して、撮像素子16が反って破損してしまうことを防止することができる。
【0058】
一般に、撮像素子16として用いられるCMOSセンサー、および、CCDセンサーは、シリコンウェーハに電極層、絶縁膜等を形成した構成を有する。そのため、撮像素子16の熱膨張率は、2.5ppm/℃~4ppm/℃程度である。
【0059】
一方、フレキシブル基板22は、主に、ポリイミドおよびポリエチレンテレフタレート等の樹脂材料からなる。そのため、フレキシブル基板22(第1の層)の熱膨張率は、20ppm/℃~100ppm/℃程度である。また、フレキシブル基板22の弾性率は、5GPa~30GPa程度である。
【0060】
また、例えば、第2の層19が、半田ボール19aとアンダーフィル19bとからなる場合は、第2の層19の熱膨張率は、20ppm/℃~80ppm/℃程度である。また、第2の層19の弾性率は、5GPa~50GPa程度である。
【0061】
従って、第1の層22と第2の層19の平均熱膨張率は体積の加重平均で、20ppm/℃~90ppm/℃程度である。
【0062】
このような撮像素子16、第1の層(フレキシブル基板)22、および、第2の層19に対して、第3の層40が上述した条件を満たす材料としては、インバー材、コバール材、ガラス、シリコン、ステンレス、ならびに、窒化アルミニウムおよび窒化ケイ素等のセラミックが挙げられる。これらの材料の熱膨張率および弾性率の例を表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
ここで、センサー16の反りの抑制の観点から、第3の層40の熱膨張率は、10ppm/℃以下が好ましく、5ppm/℃以下がより好ましく、2ppm/℃~4ppm/℃がさらに好ましい。
【0065】
また、センサー16の反りの抑制の観点から、第3の層40の弾性率は、70GPa以上が好ましく、150GPa以上がより好ましく、300GPa以上がさらに好ましい。
【0066】
また、センサー16の反りの抑制の観点から、第3の層40の材料としては、窒化アルミニウムおよび窒化ケイ素等のセラミック、インバー材、コバール材が好ましく、窒化アルミニウムおよび窒化ケイ素等のセラミックがより好ましい。
【0067】
また、センサー16の反りの抑制の観点から、センサー16の弾性率×厚さと、第3の層40の弾性率×厚さとの合計値が、第1の層22の弾性率×厚さと、第2の層19の弾性率×厚さとの合計値よりも大きいことが好ましい。これにより、第1の層および第2の層が熱で伸長することを規制して、センサー16が反ることを防止できる。
【0068】
各部材の熱膨張率および弾性率の測定方法は以下のとおりである。
熱膨張率は、複数の温度ごとに試験片の測定点間の長さを測定し、単位温度変化あたりの長さ変化率として求める。
弾性率は、試験片に引張り試験で荷重を加え、試験片の測定点間の長さの変化を測定し、応力とひずみを算出し弾性率を求める。あるいは、ナノインデンテーション法により各材料のヤング率を求めて、体積比により複合的な弾性率を求める方法もある。
【0069】
ここで、撮像モジュール10は、好ましい態様として、少なくともセンサー16の側面の一部を覆うように配置される接着剤層44を有する(図4および図5参照)。図4および図5に示す例では、接着剤層44は、フレキシブル基板22上に配置され、第2の層19、センサー16およびカバーガラス17の側面のうちの2面を覆っている。
【0070】
少なくともセンサー16の側面の一部を覆う接着剤層44を有することにより、撮像素子の反りによる破損を抑制できる。また、接着剤層44は、遮光、ガスバリア(滅菌ガス等)、耐湿気等の機能を有していてもよい。
【0071】
接着剤層44は、センサー16の全周を覆うことが好ましい。その際、接着剤層44が、フレキシブル基板22からプリズム18および/または光学部材保持具20の間に充填されることで、稼動時に高温になると熱膨張の影響でプリズムとカバーガラスの間で接着剤層が剥がれる問題が生じる場合があるが、後述するように第3の層40のセンサー16からの突出量H2を調整することで、抑制することができる。
【0072】
接着剤層44の材料としては、接着剤またはシール剤を利用可能である。
【0073】
接着剤としては、内視鏡で用いられている各種の接着剤が利用可能である。例えば、エポキシ樹脂系の接着剤を用いることができる。また、遮光性のため、黒色エポキシが好ましい。
【0074】
シール剤としては、内視鏡で用いられている各種のシール剤が利用可能である。
接着剤およびシール剤は、熱伝導率が高いほどよいが、絶縁性を有するものであるのが好ましい。
【0075】
また、第3の層40の平面視における大きさは、センサー16の大きさ以上であることが好ましく、また、第3の層40は、平面視においてセンサー16を包含するように配置されることが好ましい。
【0076】
例えば、図6に示す例では、第3の層40は、レンズ12の光軸方向の大きさ(長さ)が、センサー16よりも大きく、光軸方向にセンサー16を包含するように配置されている。すなわち、第3の層40の側面は、センサー16の側面よりも突出している。図6に示す例では、第3の層40のレンズ12側の側面は、フレキシブル基板22のレンズ12側の側面と面一に配置されている。
【0077】
ここで、図7に示すように、第3の層40のセンサー16からの突出量H2は、カバーガラス17の厚みとセンサー16の厚みと第2の層19の厚みとの合計値H1の半分以下であることが好ましい。第3の層40の突出量H2をこの範囲とすることで、接着剤層44と、カバーガラス17、センサー16および第2の層19との熱膨張差の影響でプリズムとカバーガラスとの間で剥がれることを抑制できる。
【0078】
また、図7に示すように、第3の層40のレンズ12側の側面がセンサー16の側面から突出しており、その突出量H2が厚みの合計値H1の半分以下であることが好ましい。
【0079】
なお、図7に示す例では、第3の層40の突出量H2が厚みの合計値H1の半分以下であり、フレキシブル基板22の突出量は、センサー16および第3の層40よりも外側に突出する構成としたが、これに限定はされない。図8に示す例のように、第3の層40およびフレキシブル基板22の突出量H2が厚みの合計値H1の半分以下となる構成であってもよい。
【0080】
ここで、図3図6図8に示す例では、センサー16の撮像面がレンズ12の光軸と平行に配置され、レンズ12とセンサー16との間に配置される光学部材18が光を90°屈曲させるプリズムである構成としたが、これに限定はされない。
【0081】
図9は、本発明の撮像モジュールの他の一例を示す側面図である。
図9に示す撮像モジュールは、レンズ12を保持する鏡胴14と、光学部材保持具20と、光学部材18と、カバーガラス17と、センサー16と、第2の層19と、フレキシブル基板22と、第3の層40と、接着剤層44と、を有する。
【0082】
図9に示す撮像モジュールにおいては、フレキシブル基板22が略90°に湾曲されており、レンズ12の光軸に平行な部位と光軸に垂直な部位を有する。フレキシブル基板22の光軸に垂直な部位の表面(レンズ12側の面)には、第2の層19、センサー16、カバーガラス17が積層されている。一方、フレキシブル基板22の光軸に垂直な部位の裏面には、第3の層40が配置されている。従って、センサー16の撮像面は、レンズ12の光軸に垂直に配置されている。
【0083】
光学部材18は、レンズ12を通過した光をセンサー16の撮像面に導くものである。光学部材18は、光の入射面および出射面が光軸に垂直に配置されている。光学部材18は、単に光を透過させるものであってもよく、あるいは、光を集光する効果を有するものであてもよい。光学部材18が光を集光する効果を有することで、レンズ12とセンサー16との距離をより近くすることができ、小型化することができる。
【0084】
光学部材18は、光学部材保持具20に保持されて、光学部材保持具20に保持される鏡胴14と位置決めされる。
【0085】
このように、本発明の撮像モジュールは、センサー16の撮像面がレンズ12の光軸に垂直に配置される構成の場合にも、第3の層40が、第1の層22および第2の層19の熱による膨張を抑制して、撮像素子16が反って破損してしまうことを防止することができる。
【0086】
ここで、図9に示すようなセンサー16の撮像面がレンズ12の光軸に垂直に配置される構成の場合にも、少なくともセンサー16の側面の一部を覆うように配置される接着剤層44を有することが好ましいが、全周を覆うのがより好ましい。
【0087】
また、図9に示す例では、接着剤層44は、フレキシブル基板22から光学部材18の間に充填されているが、これに限定はされず、図10に示す例のように、接着剤層44は、フレキシブル基板22から光学部材保持具20の間に充填されていてもよい。
【0088】
例えば、図9および図10に示す例では、第3の層40は、図中上下方向の大きさ(長さ)が、センサー16よりも大きく、センサー16を包含するように配置されている。すなわち、第3の層40の2つの側面(図中上側の側面および下側の側面)はそれぞれ、センサー16から突出している。
【0089】
また、図9および図10に示すようなセンサー16の撮像面がレンズ12の光軸に垂直に配置される構成の場合にも、第3の層40のセンサー16からの突出量H2は、カバーガラス17の厚みとセンサー16の厚みと第2の層19の厚みとの合計値H1の半分以下であることが好ましい。第3の層40の突出量H2をこの範囲とすることで、光学部品とカバーガラスとの剥がれを抑制できる。
【0090】
また、本発明の撮像モジュールにおいて、第3の層40には回路が形成されていてもよい。第3の層40に形成された回路は、第1の層(フレキシブル基板)22の回路と接続されて、多層回路基板を構成してもよい。第3の層40に回路が形成される場合には、第3の層は、セラミック等の絶縁性の材料を用いればよい。
【0091】
以上、本発明に係る撮像モジュールについて種々の実施形態を挙げて詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0092】
1 内視鏡システム
2 内視鏡
3 光源ユニット
4 プロセッサユニット
10 撮像モジュール
12 レンズ
14 鏡胴
16 撮像素子(センサー)
17 カバーガラス
18 光学部材(プリズム)
19 第2の層
19a 半田ボール
19b アンダーフィル
20 光学部材保持具
20a フランジ部
22 フレキシブル基板(第1の層)
22a 裏面
22b 第1湾曲部
22c 第2湾曲部
24 アンカー
24a アーム部
24b 保持部
24c 板状部
26 ケーブル
40 第3の層
42 カバー部材
44 接着剤層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10