(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】試料分散装置及び試料分散方法
(51)【国際特許分類】
G01N 1/28 20060101AFI20241111BHJP
G01N 15/00 20240101ALI20241111BHJP
【FI】
G01N1/28 Z
G01N1/28 F
G01N15/00 Z
(21)【出願番号】P 2021049914
(22)【出願日】2021-03-24
【審査請求日】2023-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2020086003
(32)【優先日】2020-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【氏名又は名称】上村 喜永
(72)【発明者】
【氏名】武田 あや
(72)【発明者】
【氏名】樋口 誠司
(72)【発明者】
【氏名】上野 楠夫
【審査官】佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/050035(WO,A1)
【文献】特開2001-116668(JP,A)
【文献】特開2001-242062(JP,A)
【文献】特開2009-186332(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00- 1/44
15/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末試料を分析用部材の上面に分散させる試料分散装置であって、
前記分析用部材が載置される載置面を有する容器と、
前記容器に設けられ、前記容器内に粉末試料を導入する導入機構と、
前記容器の内面を覆うとともに前記容器に対して着脱可能に設けられる被覆部材とを備え
、
前記容器は、上面に前記載置面を有する下壁部と、当該下壁部に対向する上壁部と、前記下壁部及び前記上壁部に接続されるとともに前記載置面を取り囲む側壁部とを有し、
前記被覆部材は、シート状をなす弾性体から構成され、前記側壁部の内部に弾性変形した状態で設けられることにより、前記側壁部の内面を覆うものである、試料分散装置。
【請求項2】
前記容器は、前記側壁部に対して少なくとも前記下壁部が分離可能に構成されている、請求項
1に記載の試料分散装置。
【請求項3】
前記下壁部には、前記粉末試料を吸引して排出する排出機構が設けられている、請求項
1又は2に記載の試料分散装置。
【請求項4】
前記被覆部材は、光透過性を有する材質により形成されている、請求項1乃至
3の何れか一項に記載の試料分散装置。
【請求項5】
前記導入機構は、前記容器の内外の圧力差によって、前記粉末試料を含む気体を前記容器内に導入するものであり、前記粉末試料を含む気体が流れるとともに複数の絞り部が設けられた導入管と、前記導入管に設けられた1又は複数のメッシュ部材とを有する、請求項1乃至
4の何れか一項に記載の試料分散装置。
【請求項6】
分析用部材が載置される載置面を
上面に有する
下壁部と、当該下壁部に対向する上壁部と、前記下壁部及び前記上壁部に接続されるとともに前記載置面を取り囲む側壁部とを有する容器及び当該容器に設けられ、前記容器内に粉末試料を導入する導入機構を有する試料分散装置を用いた試料分散方法であって、
前記容器に対して着脱可能
であり、シート状をなす弾性体から構成された被覆部材
が前記側壁部の内部に弾性変形した状態で設けられることにより、前記側壁部の内面を覆った状態で、前記導入機構により前記容器内に粉末試料を導入して、前記粉末試料を前記分析用部材の上面に分散させる、試料分散方法。
【請求項7】
粉末試料を分析用部材の上面に分散させる試料分散装置であって、
前記分析用部材が載置される載置面を有する容器と、
前記容器に設けられ、前記容器内に粉末試料を導入する導入機構と、
前記容器の内面を覆うとともに前記容器に対して着脱可能に設けられる被覆部材とを備え
、
前記被覆部材は、光透過性を有する材質により形成されている、試料分散装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析用部材に粉末試料を分散させる試料分散装置及び試料分散方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子顕微鏡等の顕微鏡で粉末試料を観察する場合には、当該粉末試料を分析用部材の上面に分散させたサンプルを作成している。
【0003】
このサンプルを作成するものとしては、特許文献1に示すように、例えばガラス板などの保持部材(分析用部材)を収容する容器に粉末試料を導入し、当該容器内で飛散した粉末試料を保持部材の上に付着させるものがある。
【0004】
この種の試料分散装置では、容器内で粉末試料が四方に飛散して容器の内面に付着するので、使用後に容器の内面に付着した粒子を取り除くために、水洗いや拭き取りなどの清掃作業を行う必要がある。
【0005】
しかしながら、サンプルの作製ごとに上記の清掃作業を手作業で行う必要があるため、清掃作業の時間がかかるだけでなく、サンプルを効率よく準備することが難しい。また、上記の清掃作業を行う作業者によって清掃状態のばらつきがあり、別の粉末試料と混同してしまう恐れもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述したような問題に鑑みてなされたものであり、試料分散装置における容器の清掃時間を短縮するとともに、清掃状態のばらつきを低減することをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明に係る試料分散装置は、粉末試料を分析用部材の上面に分散させる試料分散装置であって、前記分析用部材が載置される載置面を有する容器と、前記容器に設けられ、前記容器内に粉末試料を導入する導入機構と、前記容器の内面を覆うとともに前記容器に対して着脱可能に設けられる被覆部材とを備えることを特徴とする。
【0009】
このような試料分散装置であれば、容器の内面を覆う被覆部材が容器に対して着脱可能とされているので、使用後に被覆部材を交換することで、容器の清掃作業を簡単にできる。その結果、試料分散装置における容器の清掃時間を短縮することができ、分析用部材に粉末試料を分散させたサンプルを効率良く作成することができる。また、被覆部材に覆われた部分は、被覆部材を交換することで清掃できるので、清掃状態のばらつきを低減することができる。さらに、効率良く且つばらつき無く清掃できるので、別の粉末試料と混同するリスクを低減できる。その上、清掃時の容器の損傷のリスクも低減できる。
【0010】
容器の具体的な実施の態様としては、前記容器は、上面に前記載置面を有する下壁部と、当該下壁部に対向する上壁部と、前記下壁部及び前記上壁部に接続されるとともに前記載置面を取り囲む側壁部とを有するものが考えられる。
この構成の場合、容器の内面に占める側壁部内面の割合が比較的大きくなる。このため、被覆部材を着脱可能に設けたことの効果を顕著にするためには、前記被覆部材は、少なくとも前記側壁部の内面を覆うものであることが望ましい。
【0011】
分析用部材の設置及び取り出しを容易にするとともに、側壁部に対する被覆部材の交換を容易にするためには、前記容器は、前記側壁部に対して少なくとも前記下壁部が分離可能に構成されていることが望ましい。
【0012】
前記被覆部材は、シート状をなす弾性体から構成され、前記側壁部の内部に弾性変形した状態で設けられることにより、前記側壁部の内面を覆うものであることが望ましい。
この構成であれば、被覆部材を筒状に弾性変形させて側壁部の内部に配置することで、被覆部材の弾性復帰力によって被覆部材が側壁部の内面に接触して固定されるので、被覆部材を固定するための別の固定機構を不要にすることができる。また、被覆部材の交換作業を容易にすることができる。
【0013】
飛散した粉末の大部分が下壁部に堆積することになる。このため、前記下壁部には、前記粉末試料を吸引して排出する排出機構が設けられていることが望ましい。
この構成であれば、容器を開ける前に粉末試料を排出することにより、清掃作業の負担を軽減することができる。
【0014】
容器の内部を視認可能とするためには、前記被覆部材は、光透過性を有する材質により形成されていることが望ましい。
【0015】
導入機構の具体的な実施の態様としては、前記導入機構は、前記容器の内外の圧力差によって、前記粉末試料を含む気体を前記容器内に導入するものであり、前記粉末試料を含む気体が流れるとともに複数の絞り部が設けられた導入管と、前記導入管に設けられた1又は複数のメッシュ部材とを有することが望ましい。
ここで、導入管にメッシュ部材を設けているので、容器に導入される粉末試料を細分化することができ、容器の内部において粉末試料を効率よく分散させることができる。
【0016】
また、本発明に係る試料分散方法は、分析用部材が載置される載置面を有する容器及び当該容器に設けられ、前記容器内に粉末試料を導入する導入機構を有する試料分散装置を用いた試料分散方法であって、前記容器に対して着脱可能な被覆部材により前記容器の内面を覆った状態で、前記導入機構により前記容器内に粉末試料を導入して、前記粉末試料を前記分析用部材の上面に分散させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
以上に述べた本発明によれば、試料分散装置における容器の清掃時間を短縮するとともに、清掃状態のばらつきを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る試料分散装置の模式図である。
【
図2】同実施形態において粉末試料を分散させた状態を示す模式図である。
【
図3】同実施形態の容器を分解した状態を示す断面図である。
【
図4】同実施形態の被覆部材を取り付ける手順の一例を示す斜視図である。
【
図5】変形実施形態の試料分散装置を示す模式図である。
【
図6】変形実施形態の試料分散装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の一実施形態に係る試料分散装置100について、図面を参照して説明する。
【0020】
<1.装置構成>
本実施形態の試料分散装置100は、粉末試料Wを分析用部材である分析用プレート10の上面に分散させるものである。本実施形態の分析用プレート10は、上面に平坦面を有する板状のものである。なお、分析用部材としては、板状をなすプレートに限られず、顕微鏡などの分析装置に合わせて種々のものを用いることができる。
【0021】
具体的に試料分散装置100は、
図1に示すように、分析用プレート10が載置される載置面を有する容器2と、容器2に設けられ、容器2内に粉末試料Wを導入する導入機構3と、容器2の内面を覆うとともに容器2に対して着脱可能に設けられる被覆部材4とを備えている。
【0022】
容器2は、上面に載置面2xを有する下壁部21と、当該下壁部21に対向する上壁部22と、下壁部21及び上壁部22に接続されるとともに載置面2xを取り囲む側壁部23とを有している。
【0023】
下壁部21は、分析用プレート10が載置される載置面2xが設定されたものであり、例えば、その中央部に載置面2xが設定されている。なお、下壁部21の中央部に分析用プレート10を載置する載置台が設けられており、当該載置台の上面を載置面2xとしたものであっても良い。
【0024】
上壁部22は、導入機構3が設けられるものであり、例えば、その中央部に導入機構3が設けられている。また、上壁部22には、容器2の内部を真空にするための排気ポート2Pが設けられており、当該排気ポート2Pには、配管5を介して減圧ポンプ6が接続される。この減圧ポンプ6により、容器2の内部は所定の真空度に減圧される。その他、上壁部22には、容器2の内部を大気開放するための大気開放ポートを設けても良い。
【0025】
側壁部23は、下壁部21及び上壁部22の間に設けられる筒状をなすものであり、その下端開口部が下壁部21により閉塞され、上端開口部が上壁部22に閉塞される。本実施形態の側壁部23は、内部が視認可能となるように光透過性を有する材質(例えば石英ガラス、アクリルガラス等)により形成されている。本実施形態の側壁部23は、円筒状をなすものである。
【0026】
そして、この容器2は、側壁部23に対して少なくとも下壁部21が分離可能に構成されている。本実施形態では、下壁部21だけでなく、側壁部23に対して上壁部22も分離可能に構成されている。なお、側壁部23と下壁部21との間は、例えばOリングなどのシール部材S1を介して気密とされ、側壁部23と上壁部22との間も、例えばOリングなどのシール部材S2を介して気密とされている。
【0027】
導入機構3は、容器2の内外の圧力差によって、粉末試料Wを含む気体を容器2内に導入するものである。
【0028】
具体的に導入機構3は、粉末試料Wを含む気体が流れる導入管31と、当該導入管31に粉末試料Wを供給する供給部32とを備えている。
【0029】
導入管31は、容器2の上壁部22を貫通して、上下方向に沿って設けられている。この導入管31には、上端開口から下端開口の間に複数の絞り部31Sが設けられている。導入管31を流れる粉末試料Wを含む気体は、複数の絞り部31Sによって、複数回圧縮及び膨張を繰り返し、凝集状態にある粒子群にせん断力が働いて、粉末試料の分散が促進される。この導入管31の上端開口部には、供給部32が設けられている。
【0030】
供給部32は、前記導入管31の上端開口を塞ぐとともに、粉末試料Wが載せられる仕切り膜321と、当該仕切り膜321を破断して粉末試料Wを導入管31に供給する膜破断部322とを備えている。
【0031】
仕切り膜321は、容器の内部が減圧された状態においても破れない強度を有するものであり、例えば樹脂製の薄膜である。
【0032】
膜破断部322は、容器の内部が減圧された状態において仕切り膜321を破断するためのものであり、例えば針322aを用いて構成されている。この針322aは、例えば概略半球状の弾性体322bの内面に固定されている。弾性体322bは、針322aが仕切り膜321と対向するように設けられている。そして、弾性体322bが自然状態では針322aが仕切り膜321から離間し、弾性体322bを下に押しつぶすことによって針322aが仕切り膜321を破断して、当該仕切り膜321の上面に載せられた粉末試料Wは、容器2の内外の圧力差によって、導入管31を通って、容器2の内部に導入される(
図2参照)。
【0033】
被覆部材4は、容器2の内面のうち少なくとも側壁部23の内面を覆うものである。本実施形態の被覆部材4は、側壁部23の内面の略全体を覆うように構成されている。ここで、被覆部材4は、容器2の内部が視認可能となるように光透過性を有する材質(例えば光透過性を有する樹脂等)により形成されている。なお、被覆部材4は、側壁部23の内面に一部を覆うものであっても良い。例えば、側壁部23の内面のうち下半分を覆うものであっても良いし、側壁部23の内面のうち導入管31の下端部よりも下側を覆うものであっても良いし、側壁部23の内面のうち粉末試料Wが付着しやすい部分を覆うものであっても良い。
【0034】
具体的に被覆部材4は、
図3に示すように、シート状をなす弾性体から構成されている。そして、被覆部材4は、側壁部23の内部に円筒状に弾性変形した状態で設けられることにより、側壁部23の内面を覆うように構成されている。
【0035】
ここで、被覆部材4は、筒状に弾性変形した状態で側壁部23の内部に配置され、その弾性復帰力により被覆部材4が拡がることから、被覆部材4の外面が側壁部23の内面に接触することになる。ここで、側壁部23が円筒状をなすことから、被覆部材4の外面が側壁部23の内面の略全体に接触する。
【0036】
本実施形態の試料分散装置を用いた試料分散方法について簡単に説明する。
まず、側壁部23の内部に被覆部材4を取り付ける。この状態で、側壁部23に下壁部21及び上壁部22を取り付けるとともに、下壁部21の載置面2xに分析用プレート10を載置する。
この状態で、導入機構3を用いて、容器2内に粉末試料Wを導入して、分析用プレート10の上面に粉末試料Wを分散させる。
その後、側壁部23から下壁部21及び上壁部22を取り外して分析用プレート10を取り出す。また、側壁部23の内面から被覆部材4を取り外す。
【0037】
<2.本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態の試料分散装置100によれば、容器2の内面を覆う被覆部材4が容器2に対して着脱可能とされているので、使用後に被覆部材4を交換することで、容器2の清掃作業を簡単にできる。その結果、試料分散装置100における容器2の清掃時間を短縮することができ、分析用プレート10に粉末試料Wを分散させたサンプルを効率良く作成することができる。また、被覆部材4に覆われた部分は、被覆部材4を交換することで清掃できるので、清掃状態のばらつきを低減することができる。さらに、効率良く且つばらつき無く清掃できるので、別の粉末試料と混同するリスクを低減できる。その上、清掃時の容器2の損傷のリスクや容器2の劣化も低減できる。
【0038】
また、粉末試料Wが比較的付着しやすく、内面に占める割合の大きい側壁部23の内面を被覆部材4で覆うことにより、被覆部材4を着脱可能に設けたことの効果を一層顕著にすることができる。
【0039】
さらに、下壁部21が側壁部23に対して分離可能に構成されているので、分析用プレート10の設置及び取り出しを容易にするとともに、側壁部23に対する被覆部材4の交換を容易にすることができる。
【0040】
その上、被覆部材4を筒状に弾性変形させて側壁部23の内部に配置するだけで、被覆部材4はその弾性復帰力によって側壁部23の内面に接触して固定されるので、被覆部材4を固定するための別の固定機構を不要にすることができる。また、被覆部材の交換作業を容易にすることができる。
【0041】
<3.その他の実施形態>
本発明は、前記実施形態に限られるものではない。
例えば、前記実施形態の被覆部材4は、容器2の側壁部23の内面を覆うものであったが、容器2の下壁部21の内面又は上壁部22の内面を覆うものであっても良い。
【0042】
ここで、容器2の下壁部21の内面を覆うものの場合には、載置面2xを除いた内面を覆う構成としても良いし、載置面2xを含む内面全体を覆う構成としても良い。なお、載置面2xを含む内面全体を覆う場合には、被覆部材4の上に分析用プレート10が載置されることになる。
【0043】
また、前記被覆部材4は、シート状をなすものの他、例えば袋状をなしており、例えば側壁部23の内面及び下壁部21の内面を一挙に覆うものであっても良い。
【0044】
さらに、被覆部材4を容器2の内面に対して接着剤を用いて固定しても良いし、その他の固定手段を用いて固定しても良い。
【0045】
被覆部材4は使い捨てのものであっても良いし、洗浄することで繰り返し使用できるものであっても良い。前記実施形態のようにシート状のものを弾性変形させる構成の場合には、取り外した後にシート状になるので、その洗浄が容易となる。
【0046】
粉末試料の導入機構3としては、前記実施形態のように減圧式の他に、圧縮空気を用いて容器内に粉末試料を導入する加圧式のものであっても良いし、自由落下式のものであっても良い。また、導入機構3は、上壁部22に設ける構成の他、下壁部21に設ける構成としても良いし、側壁部23に設ける構成としても良い。
【0047】
さらに、
図4に示すように、容器2の下壁部21に、粉末試料Wを吸引して排出する排出機構7を設けても良い。この排出機構7は、前記実施形態の減圧ポンプとしての機能を兼ね備えていても良い。
【0048】
具体的に排出機構7は、下壁部21に設けられた排出路71と、当該排出路71に接続される排気管72と、当該排気管72に設けられた吸引ポンプ73とを有している。そして、吸引ポンプ73は、容器2の内部で粉末試料Wを分散させた後(容器2の使用後)に、排出路71から、下壁部21に堆積した粉末試料Wを吸引して排出する。
【0049】
ここで、排出機構7による粉末試料Wの排出効率を高めるために、下壁部21の内面には、排出路71に向かって粉末試料Wをガイドする漏斗状のガイド面21Gが形成されている。ガイド面21Gを漏斗状にすることで、粉末試料Wが舞い上がりにくくすることができる。また、排出機構7によって粉末試料Wを排出する前に容器2の内部を大気開放しておくことが望ましい。さらに、排出路71又は排気管72において吸引ポンプ73の上流側に粉末粒子Wを除去するフィルタを設けても良い。
【0050】
その上、
図5に示すように、導入機構3において導入管31の内部に1又は複数のメッシュ部材33を設けても良い。このメッシュ部材33は、導入管31に設けられた絞り部31Sに加えて、粒子の分散を促進するものである。ここで、メッシュ部材33は、導入機構3において真空側に設けられている。このようにメッシュ部材33を真空側に設けることによって、圧力差により導入管31の内部で加速した粉末粒子がメッシュ部材33に衝突することになり、粉末粒子Wを微細化することができる。メッシュ部材33としては、メッシュフィルタである。このメッシュ部材33は、絞り部31Sの上流側に設けても良いし、下流側に設けても良い。粉末試料Wはメッシュ部材33を通過することによってメッシュ部材33のメッシュサイズ(目開き)よりも小さい粒子を分散させることができる。これにより、凝集した粒子のない観察画像を容易に取ることができ、作業工数の削減になる。また、凝集したままの粒子はメッシュ部材上に残ることになり、凝集したままの粒子を容易に取り除くことができる。さらに、メッシュサイズの異なるメッシュ部材に変更することによって、試料に適した条件を設定することができる。また、メッシュサイズの異なるメッシュ部材33を複数段設けても良い。この場合、導入管31の内部において、メッシュサイズの大きいものから順に上流側から配置することが考えられる。
【0051】
加えて、前記実施形態では、仕切り膜321の上面に粉末試料Wを載せておき、膜破断部322により仕切り膜321を破断することによって、導入管31に粉末試料Wを導入する構成であったが、以下の構成であっても良い。
この構成における試料分散装置は、粉末試料を分析用部材の上面に分散させる試料分散装置であって、前記分析用部材が載置される載置面を有する容器と、前記容器に設けられ、前記容器内に粉末試料を導入する導入機構とを備え、前記導入機構は、前記粉末試料が内部に収容される導入管を有し、前記導入管の内部に前記粉末試料を収容した状態から、前記容器の内外の圧力差によって、前記粉末試料を含む気体を前記容器内に導入するものである。
【0052】
具体的には、
図6に示すように、導入管31の内部に粉末試料Wを収容しておき、その状態で膜破断部322により仕切り膜321を破断させて、容器2の内部に導入する構成としても良い。つまり、仕切り膜321を破断する前の状態では、導入管31の内部に収容された粉末試料Wは減圧下にある状態である。より詳細には、導入管31の複数の絞り部31Sの少なくとも1つ(
図6では2段目の絞り部31S)に粉末試料Wを収容しておくことが考えられる。ここで、導入管31は、絞り部31S毎に部品に分かれており、分解した状態で1つの絞り部31Sに粉末試料Wを収容した後に、組み合わせることにより、粉末試料Wを収容した導入管31が形成される。なお、絞り部31Sに粉末試料Wを収容した際に、粉末試料Wが絞り部31Sから出てしまう場合には、当該絞り部31Sの開口部に弁構造を設けたり、フィルムを設けたりすることも考えられる。
【0053】
このように導入管31の内部(絞り部31S)に粉末試料Wを収容し、容器2を減圧した状態で、仕切り膜321を膜破断部322で破断することにより、導入管31の内部に外部から空気が流入して、粉末試料Wが容器2の内部に導入される。この実施形態では、仕切り膜321上に粉末試料Wを載せていないので、仕切り膜321に粉末試料Wが残ってしまい、所望の分散量が得られないという問題を解消することができる。また、導入管31の内部に収容することにより、仕切り膜321上に載せた場合に比べて、凝集状態にある粒子群に働くせん断力が弱くなり、また、分析用プレート10までの距離を短くすることができるので、粉末試料Wの分散状態をコントロールでき、所望の状態(凝集状態又は混合状態は維持されている状態)の粉末試料Wを得ることができる。
【0054】
前記実施形態において、被覆部材4を帯電する帯電機構を有しても良い。ここで、被覆部材4を粉末試料Wの電荷とは逆に帯電させることによって、被覆部材4に粉末試料Wを付着しにくくして粉末粒子Wを下壁部21に集めることができる。また、被覆部材4を粉末試料Wの電荷と同じ電荷に帯電させることによって、被覆部材4に粉末試料Wを付着しやすくし、被覆部材4を交換することによって分析用プレート10に分散しなかった粉末試料Wを効率良く清掃することができる。
【0055】
前記実施形態の被覆部材4を用いること無く、分析用プレート10が載置される載置面2xを有する容器2を使い捨てにしても良い。このように容器2自体を使い捨てにすることによって、容器2を清掃する必要がなくなる。
【0056】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の変形や組み合わせを行っても構わない。
【符号の説明】
【0057】
100・・・試料分散装置
W ・・・粉末試料
10 ・・・分析用プレート(分析用部材)
2x ・・・載置面
2 ・・・容器
21 ・・・下壁部
22 ・・・上壁部
23 ・・・側壁部
3 ・・・導入機構
31 ・・・導入管
31S・・・絞り
33 ・・・メッシュ部材
4 ・・・被覆部材
7 ・・・排出機構