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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】2枚の基板を接合するための方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20241111BHJP
【FI】
H01L21/02 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022527147
(86)(22)【出願日】2020-11-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-24
(86)【国際出願番号】 FR2020052160
(87)【国際公開番号】W WO2021105605
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2023-09-14
(31)【優先権主張番号】1913162
(32)【優先日】2019-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】598054968
【氏名又は名称】ソイテック
【氏名又は名称原語表記】Soitec
【住所又は居所原語表記】Parc Technologique des fontaines chemin Des Franques 38190 Bernin, France
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】シュヴァルツェンバッハ, ウォルター
(72)【発明者】
【氏名】ヴィラヴォー, ローラン
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-517855(JP,A)
【文献】特開2007-194349(JP,A)
【文献】特表2010-518639(JP,A)
【文献】特開2015-211122(JP,A)
【文献】特表2011-523224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/00 - 21/02
H01L 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板(100)と第2の基板(200)とを接合するための方法であって、前記第1及び第2の基板を接触させるステップと、前記第1及び第2の基板のうちの少なくとも一方の周縁区域の加熱を実施するステップと、を含み、前記加熱が、前記複数の基板を接触させる前に開始され、少なくとも、前記複数の基板同士が前記区域において接触するまで継続され、前記方法が、前記複数の基板の縁部に対応している外側境界を有する放射線を放射するように構成されている赤外線ランプ(2)によって前記加熱が実施されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記第1及び第2の基板が、円形形状をとり、前記赤外線ランプが、その直径が前記複数の基板の直径以下である円の弧の形状をとる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1及び第2の基板が、前記複数の基板の前記縁部の周囲に延びる周縁領域(30)を有するキャリア(3)によって保持され、前記赤外線ランプ(2)が、前記キャリアの前記周縁領域(30)を除外しながら前記第1の基板及び/又は前記第2の基板の前記周縁区域を加熱するように配置されている、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記加熱が、遅くとも前記複数の基板同士の間の接合波の伝播の終了時に終了する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記赤外線ランプ(2)が、放射線を、前記複数の基板(100、200)の間に存在する水による前記放射線の吸収に適した波長範囲で放射する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ドナー基板(100)と呼ばれる第1の半導体基板から、レシーバ基板(200)と呼ばれる第2の基板へと、半導体層を転移するための方法であって、
前記ドナー基板(100)に弱化区域(101)を形成して、転移されることになる半導体層(1)の境界を定めるステップと、
レシーバ基板(200)を用意するステップであり、前記ドナー基板及び前記レシーバ基板のうちの少なくとも一方が、電気絶縁層(102)で覆われている、用意するステップと、
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法を使用して、前記第1の基板(100)と前記レシーバ基板(200)とを接合するステップであって、前記電気絶縁層(102)が、接合面に存在する、接合するステップと、
前記ドナー基板(100)を前記弱化区域(101)に沿って剥離して、前記半導体層(1)を前記レシーバ基板(200)に転移するステップと、
を含む方法。
【請求項7】
第1の基板と第2の基板とを接合するための装置であって、前記第1及び第2の基板を接触させるときに前記第1及び第2の基板を保持するように構成されているキャリア(3)であって、前記複数の基板の縁部の周囲に延びる周縁領域(30)を有する、キャリアと、前記第1及び第2の基板のうちの少なくとも一方の周縁区域に面して配置されているランプと、を備え、前記ランプが前記複数の基板の縁部に対応している外側境界を有する放射線を放射するように構成されている赤外線ランプ(2)であり、前記キャリア(3)の前記周縁領域(30)が前記放射線に曝露されないようになっていることを特徴とする、装置。
【請求項8】
前記赤外線ランプが、高速中波を放射するように設計されている、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記赤外線ランプが、前記ランプの動作中に約1600℃の温度になるように設計されているフィラメントを備える、請求項7又は8に記載の装置。
【請求項10】
前記赤外線ランプが1.5~2μmの間の波長に対して出力ピークを有する、請求項7~9のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の基板と第2の基板とを接合するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板の製造において、接合方法、特に分子付着による接合が、広く使用されている。
【0003】
特に、半導体オンインシュレータ基板、特にシリコンオンインシュレータ(SOI)基板を製造する場合、第1の半導体基板を、半導体基板である場合もそうでない場合もある第2の基板に接合するのは公知の手法であり、前記基板のうちの少なくとも一方の表面は、酸化物/半導体又は酸化物/酸化物接合を得るために酸化物層で覆われている。
【0004】
分子付着による接合は、いかなる接着剤の塗布も必要としない。接合されることになる表面が完全に滑らかである場合、接合は、一般に、基板に僅かな圧力を局所的に加えて接合波を生じさせることによって開始され、次いで、この接合波が、接合面の全体に広がって伝播する。
【0005】
しかしながら、この接合工程が半導体オンインシュレータ基板における「縁部ボイド(edge-void)」欠陥の原因となり得ることが認識されている。これらの欠陥は、接合後に、例えば第1の基板を前記基板に予め形成された弱化区域に沿って剥離することによって、第1の基板(ドナー基板とも呼ばれる)から第2の基板(レシーバ基板とも呼ばれる)へと薄層が転移されるときに現れる。この層転移法はSmart Cut(商標)法として知られている。
【0006】
縁部ボイドは、転移させた薄層を通って及び接合面に配置された酸化物層を通って延在する穴である。これらの穴は典型的には50μm~2mmの直径を有し、一般に半導体オンインシュレータ基板の周縁部に配置される。
【0007】
SOI基板の転移させた薄層1の表面の上からの図を示す図1に示すように、接合されることになる基板の一方の縁部(区域A)で接合が開始されると、一般に接合波11の伝播が終了する区域Bにある反対側の縁部において縁部ボイドが生じる。
【0008】
したがって、縁部ボイドは、転移させた薄層のそのような縁部ボイドを含む領域の中又は表面に形成される電子コンポーネントが不良となる限りにおいて、深刻であり且つ多くの場合機能不全をもたらす欠陥である。
【0009】
文献国際公開第2008/107029号には、第1の基板と第2の基板とを接合するための方法が記載されており、この方法では、そのような縁部ボイドの形成を制限するために、基板の接触前及び接触中に前記基板の少なくとも一方を加熱して、接合波の伝播の速さを制御する。
【0010】
この加熱は縁部ボイドが集中している周縁区域に局所化され、石英ハウジング内に前記区域に面するように配置されたハロゲンランプによって実施される。
【0011】
しかしながら、加熱には接合中に基板を保持するキャリア(又は「チャック」)を劣化させる傾向がある。具体的には、このキャリアはポリマーコーティングで覆われた金属基部で形成されるが、このポリマーコーティングが過度に強い加熱の効果を受けて基部から分離し変形し、膨れを形成する。他方でキャリアのこの損傷は、最終的な基板の特に非接合区域において他の欠陥を生じさせ易い。
【0012】
加熱の継続時間の短縮又は強度の低下によってキャリアの損傷を低減しようとする場合、接合波の伝播の速さの制御が不十分になるおそれがあり、このことは縁部ボイドの形成をもたらす。
【0013】
また更に、この方法は、経時的安定性に欠ける欠点があり、したがって、再現性があまり高くない。
【発明の概要】
【0014】
したがって、本発明の1つの目的は、既存の方法と比べてより高い安定性及びより高い再現性を有しながら、縁部ボイドの形成を最小限にすることを可能にし、基板キャリアの損傷を引き起こさない、基板同士を接合するための方法を定めることである。
【0015】
この目的のために、本発明は、第1の基板と第2の基板とを接合するための方法であって、前記第1及び第2の基板を接触させるステップと、前記第1及び第2の基板のうちの少なくとも一方の周縁区域の加熱を実施するステップと、を含み、前記加熱が、基板を接触させる前に開始され、少なくとも、基板同士が前記区域において接触するまで継続され、前記方法が、前記基板の縁部に対応している外側境界を有する放射線を放射するように構成されている赤外線ランプによって加熱が実施されることを特徴とする、方法を提供する。
【0016】
放射線のタイプ及び基板に対するランプの配置に起因して、接合面に存在する水をより効果的に加熱することが可能であり、このことは、より低い出力での接合の化学反応速度に強く影響すると同時に、基板の、特に基板のキャリアの加熱を低減する。
【0017】
いくつかの実施形態では、第1及び第2の基板は、円形形状をとり、赤外線ランプは、その直径が前記基板の直径以下である円の弧の形状をとる。
【0018】
いくつかの実施形態では、第1及び第2の基板は、前記基板の縁部の周囲に延びる周縁領域を有するキャリアによって保持され、赤外線ランプは、前記キャリアの周縁領域を除外しながら第1の基板及び/又は第2の基板の周縁区域を加熱するように配置されている。
【0019】
加熱は遅くとも基板同士の間の接合波の伝播の終了時に終了するのが特に有利である。
【0020】
好ましい一実施形態によれば、赤外線ランプは、放射線を、基板同士の間に存在する水による前記放射線の吸収に適した波長範囲で放射する。
【0021】
本発明の別の主題は、ドナー基板と呼ばれる第1の半導体基板からレシーバ基板と呼ばれる第2の基板に半導体層を転移することによって、半導体オンインシュレータ基板を製造するための方法であって、
ドナー基板に弱化区域を形成して転移されることになる半導体層の境界を定めるステップと、
レシーバ基板を用意するステップであり、ドナー基板及びレシーバ基板のうちの少なくとも一方が、電気絶縁層で覆われている、用意するステップと、
上記したような方法を使用して第1の基板とレシーバ基板を接合するステップであって、電気絶縁層が接合面に存在する、接合するステップと、
ドナー基板を弱化区域に沿って剥離して半導体層をレシーバ基板に転移するステップと、を含む、方法に関する。
【0022】
本発明の別の主題は、この方法の実施を可能にする装置(installation)に関する。
【0023】
前記装置は、第1及び第2の基板を接触させるときに第1及び第2の基板を保持するように構成されているキャリアであって、前記基板の縁部の周囲に延びる周縁領域を有する、キャリアと、前記第1及び第2の基板のうちの少なくとも一方の周縁区域に面して配置されているランプと、を備え、ランプが前記基板の縁部に対応している外側境界を有する放射線を放射するように構成されている赤外線ランプであり、キャリアの周縁領域が前記放射線に曝露されないようになっていることを特徴とする。
【0024】
一実施形態によれば、赤外線ランプは、高速中波(fast medium wave)を放射するように設計されている。このことは、放射される放射線の波長が1μmよりも長いことを意味する。
【0025】
いくつかの実施形態では、赤外線ランプは、ランプの動作中に約1600℃の温度になるように設計されているフィラメントを備える。
【0026】
赤外線ランプが1.5~2μmの間の波長に対して出力ピークを有するのが有利である。こうして、このランプによって半導体材料によるよりも水による放射線の吸収の方がより大きく促進されるが、このことはキャリアの加熱の低減を可能にし、加熱の結果生じ易い欠陥の形成を防止する。
【0027】
付属の図面を参照して、以下の詳細な説明から本発明の更なる特徴及び利点が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】接合波の伝播及び縁部ボイドの形成を概略的に示す、SOI基板の表面の図である。
図2】文献国際公開第2008/107029号に記載されているようなハロゲンランプを概略的に示す、SOI基板の表面の図である。
図3】本発明に係る赤外線ランプが概略的に示されている、SOI基板の表面の図である。
図4】ハロゲンランプの及び赤外線ランプの放射スペクトル、並びに波長の関数としての水の吸収スペクトルを示すグラフである。
図5】接合ステップのためにキャリア上に保持された基板の概略図である。
図6】本発明に係る赤外線ランプ(左の画像)による及びハロゲンランプ(右の画像)による加熱中の、基板キャリアの温度のマップの画像を示す図である。
図7】公知の接合方法における、ハロゲンランプによる加熱が不十分な区域に縁部ボイドが形成されているSOI基板の表面の図である。
図8A】ドナー基板内の弱化区域の形成の断面図である。
図8B】レシーバ基板への図8Aのドナー基板の接合の断面図である。
図8C】半導体層をドナー基板からレシーバ基板へと転移させるための、弱化区域に沿ったドナー基板の剥離の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図の見易さのために、基板の様々な層及び/又は装置の構成要素は、必ずしも正確な縮尺で描かれていない。
【0030】
本発明は、熱源だけでなく前記熱源の形状をも改良することを提案する。
【0031】
先行技術では、ハロゲンランプは直線的な棒体の形状をとる。しかしながら、基板は通常は円形の形状であるので、ハロゲンランプが照射するのは基板の周縁部の一部だけである。
【0032】
図2に示すように、ランプ2’は、接合波が生起する区域Aの反対側で、基板の縁部に対して接線方向に配置される。その幅に起因して、ランプ2’は、基板縁部から基板の中心に向かって延びる基板の帯状区域を照射する。この帯状区域は基板の縁部と2つの区域で交差する円の弦の一部に相当し、前記交差区域は約60°の角度で離間されている。
【0033】
しかしながら、縁部ボイドは典型的には、接合波が生起する区域の反対側で120°の角度の扇形の上に広がる。
【0034】
その結果、図2に概略的に示すように、ランプ2’によって照射される周縁区域の各側に縁部ボイド10が残される。
【0035】
図7ではこれらの残される縁部ボイドを強調してある。
【0036】
図3を参照すると、提示されているのは、前記基板の縁部に対応している外側境界を有する放射線を放射するように構成されているランプ2である。
【0037】
言い換えれば、円形の基板の場合、ランプ2は直径が前記基板の直径以下である円の弧の形状をとる。ランプの長さは基板の周縁部に対して120°のオーダーの角度の扇形を占めるように選択される。
【0038】
したがってランプ2は、縁部ボイドが生じ易い区域の全て又は少なくとも大部分を照射する。更に、ランプは処理すべき区域だけを照射して、基板の他の区域及び基板を保持するキャリアは除外し、以って発生する熱による後者への損傷を回避又は最小化する。
【0039】
また更に、ランプ2はハロゲンランプではなく赤外線ランプである。
【0040】
それ自体公知である様式で、赤外線ランプは、赤外放射を透過する管、例えば石英管の中に配置された、タングステンで製作されるのが一般的な導電性フィラメントを備える。フィラメントは電流が流れると温度が高くなり、赤外放射を放射する。放射線を好ましい方向に向けるために、ランプがフィラメントに沿って配置される反射器を備えるのが有利である。
【0041】
赤外線ランプは、高速中波を放射するランプから選択されるのが好ましい。そのようなランプではフィラメントは約1600℃の温度になる。
【0042】
ハロゲンランプと比較して、赤外線ランプには2つの顕著な利点がある。
【0043】
一方では、それによって加熱のより大きな経時的安定性が実現されるが、このことは接合工程のより大きな再現性及びより良好な信頼性をもたらす。
【0044】
他方では、赤外線ランプはハロゲンランプよりも広い波長範囲の放射線を放射するが、このことは、基板及びその下にあるキャリアに対する侵襲性の低い状態で接合波の速さを制御するのにより好ましい。
【0045】
図4は、公知の接合方法で使用されるハロゲンランプの(曲線a)、及び本発明に係る接合方法で使用される赤外線ランプの(曲線b)放射スペクトル、並びに、波長λの関数としての水の吸収スペクトル(曲線c)を示すグラフである。左の座標軸は2つのランプによって放射される放射線の出力P(相対的単位u.r)を表し、右の座標軸は水の吸収係数A(単位%)を表す。
【0046】
前記放射線の水への吸収が注目されるが、その理由は、水が基板の接合の化学反応速度に強く関与しているからである。具体的には、ファンデルワールス力による基板同士の付着を保証するためには、基板の表面上に(数層の単分子層のオーダーの)少量の水が吸着される必要がある。しかしながら、多過ぎる水は接合エネルギーを減じる。したがってランプがもたらす加熱は、基板の表面に十分な水を吸着させたままで、過剰な水を除去するのに十分な強さでなければならない。
【0047】
赤外線ランプの出力ピークが(1μmのオーダーである)ハロゲンランプの出力ピークよりも高い(1.5~2μmの間の)波長にあり、この場合水は、ハロゲンランプによって放射される放射線よりも、赤外線ランプによって放射される放射線をより大きく吸収する(水は2.5~3.7μmの間の範囲で顕著な吸収を呈する)ことが観察される。
【0048】
対照的に、ハロゲンランプからの放射線はシリコン基板によってより多く吸収されるが、このことは、一方で接合エネルギーの制御においてそれほど有用ではなく、他方で基板を保持するキャリアの伝導による加熱に寄与する。
【0049】
更に、赤外線ランプの出力はハロゲンランプの出力よりも低い。
【0050】
ハロゲンランプは可視範囲だけでなく近赤外範囲の放射も行うが、これを本発明に係る赤外線ランプと同様のものであると見なすべきではないことが留意されよう。実際は、赤外線ランプからの可視範囲の放射は無視できるものであり、言い換えれば、赤外線ランプが放射するのは主として熱放射である。
【0051】
ハロゲンランプのフィラメントの(2600℃のオーダーの)温度は、上記したような1600℃のオーダーである赤外線ランプのフィラメントの温度よりも高い。
【0052】
フィラメントを収容した曲率半径が基板の曲率半径と同一である湾曲した細長い管を使用することによって、又は曲率半径が基板の曲率半径と同一である複数の管を湾曲部に沿って隣り合わせることによって、ランプの形状を基板の形状と一致させてもよい。
【0053】
したがって技術の及びランプの形状の変化は、キャリアの熱損傷の低減を可能にする。
【0054】
接合されることになる基板を保持しているキャリアが、図5に上からの図として概略的に示されている。キャリア3は、基板によって覆われた中央部分と、基板の周囲に延び基板を固定するための手段(図示せず)を任意選択的に備える、周縁部分30と、を備える。先行技術の直線的なハロゲンランプの場合、この周縁部分はランプからの放射線によって直接加熱されることが理解される。対照的に、本発明に係る赤外線ランプはこの周縁部分30の上には延びておらず、したがって赤外放射が前記部分30を直接加熱することはない。
【0055】
キャリアに対するより好ましい効果を図6に見ることができるが、この図には、本発明に係る赤外線ランプによる(左の画像)、及び先行技術によるハロゲンランプによる(右の画像)、前記基板の加熱中の、基板キャリアの温度のマップの画像が示されている。このマップは、基板の下のキャリアの中央部分に配置された熱電対(黒色の点で概略的に表されている)を使用して得られた。
【0056】
ハロゲンランプの場合、キャリア上で到達する温度は赤外線ランプの場合(約35~40℃)よりも高い(約50~55℃)。この温度差はキャリアの寿命を改善するのに十分である。
【0057】
図7は、公知の接合方法における、ハロゲンランプによる加熱が不十分な区域に縁部ボイドが形成されているSOI基板の表面の画像である。この画像の下に表示されている温度マップは、図6の右部分のものである。ハロゲンランプによって効果的に加熱された最も高温の部分である領域B1には縁部ボイドのないことが観察される。しかしながら、ハロゲンランプの直下には配置されていなかった、領域B1の各側に延びる囲まれた領域B2及びB3には、縁部ボイドが残されている。
【0058】
実際は、基板を接合するための産業用の装置は、基板キャリアと赤外線ランプとを支持する構造を備えてもよい。
【0059】
キャリアが水平面内に配置され、赤外線ランプがキャリアの平面よりも上にあるこれと平行な平面内に延在するのが有利である。
【0060】
ランプとキャリアの間の距離は、基板の取り回しが可能であり且つ異物の存在を防止するために設備内で適用される層流と干渉しないような、十分な大きさである。実際は、ランプとキャリアの間の距離は20cmのオーダーであり得る。
【0061】
ランプの形状は接合されることになる基板の形状と整合している。例えば、接合されることになる基板が300mmの直径を有する場合、ランプは最大で150mmの、好ましくは145mm以下のオーダーの曲率半径を有する。
【0062】
ランプの反射器は赤外放射を基板の方へと向けるように配置される。
【0063】
ランプの形状及び配置に起因して、赤外放射は基板の縁部に対応している外側境界を有し、基板の縁部を越えて半径方向に延びるキャリアの周縁領域は前記放射に曝露されない。
【0064】
図8A図8Cは、上記した接合方法を実施するSmart Cut(商標)層転移法のステップを示す。
【0065】
図8Aを参照すると、少なくとも1つの半導体層を備えるドナー基板100が用意される。前記基板はバルク基板であってもよく、又は異なる材料の層の積層体の形態をとってもよい。
【0066】
基板100を誘電体層102、例えば酸化シリコンの層で覆ってもよい。
【0067】
水素及び/又はヘリウムなどの原子種が誘電体層102を通してドナー基板100に埋め込まれる。こうしてドナー基板に、転移されることになる半導体層1の境界を定める弱化区域101が形成される。
【0068】
図8Bを参照すると、こうして弱化されたドナー基板100がレシーバ基板200に接合される。誘電体層102を介して接合が行われ、このときレシーバ基板も(酸化物-酸化物接合用の)誘電体層又は(酸化物-半導体接合用の)それ以外のもので覆われている場合がある。別法として、誘電体層は(半導体-酸化物接合のために)レシーバ基板上にだけ存在してもよい。
【0069】
この接合を実施するために、基板はキャリア(図示せず)上に保持され、基板を挟んでキャリアの反対側に、接合波の伝播が終了することになる周縁区域に面して赤外線ランプが配置される。ランプの位置の反対側の縁部において基板に局所的に僅かな圧力を加えることによって、基板同士の間に接合波が生起する。
【0070】
赤外線ランプは、遅くとも基板同士が接触するときに点灯され、遅くとも基板同士の間の接合面が完全に閉じたときに消灯される。ランプの点灯が基板への接合を開始するのに必要な圧力を加えるデバイスの動きによってフィードバック制御されるのが有利である。ランプの消灯は、点灯後の予め定められた期間の終了時に行われるように制御されてもよい。この継続時間は、接合されることになる基板の各組について、前記基板同士の間の接合波の速さを測定することによって前もって較正される。
【0071】
最後に図8Cを参照すると、ドナー基板100は弱化区域101に沿って剥離され、その結果層1がレシーバ基板に転移される。実施される接合方法に起因して、転移された層1は実質的に縁部ボイドを有さない。また更に、キャリアが加熱によって損傷していないので、転移された層1はまた、非接合区域などのキャリアに関連する欠陥も有さない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C