(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】ユニット化るつぼアセンブリを形成するための方法、るつぼ鋳型、およびユニット化るつぼ
(51)【国際特許分類】
C30B 29/06 20060101AFI20241111BHJP
C30B 15/12 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
C30B29/06 502B
C30B15/12
(21)【出願番号】P 2022549964
(86)(22)【出願日】2020-12-31
(86)【国際出願番号】 US2020067618
(87)【国際公開番号】W WO2021167700
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2023-12-25
(32)【優先日】2020-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518112516
【氏名又は名称】グローバルウェーハズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GlobalWafers Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100112911
【氏名又は名称】中野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】フィリップス,リチャード ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】セペダ,サルバドル
(72)【発明者】
【氏名】ボージマン,ザ サード,パトリック フレドリック
(72)【発明者】
【氏名】ルーター,ウィリアム
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-080182(JP,A)
【文献】特開2010-280529(JP,A)
【文献】特開2010-138034(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 20/00
C30B 1/00-35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チョクラルスキ法によりシリコンインゴットを形成するためのシリコン融液を保持するためのユニット化るつぼアセンブリを形成する方法であって、
ユニット化るつぼアセンブリは、底部;底部から上方に延びる外側側壁;底部から上方に延びる中央堰;および、底部から上方に延びる内側堰であって、中央堰は外側側壁と内側堰の間に配置される内側堰、を含み、
この方法は、
鋳型を提供する工程であって、該鋳型は、
底部チャネル;
底部チャネルから延びる外側側壁チャネル;
底部チャネルから延びる中央堰チャネル;
底部チャネルから延びる内側堰チャネルであって、中央堰チャネルは外側側壁チャネルと内側堰チャネルとの間に配置される、内側堰チャネル;
中央堰チャネルを通って延び、ユニット化るつぼアセンブリの中央堰に開口部を形成し、シリコン融液が中央堰を通過することを可能にする中央堰ペグ;および、
内側堰チャネルを通って延び、ユニット化るつぼアセンブリの内側堰に開口部を形成し、シリコン融液が内側堰を通過することを可能にする内側堰ペグ;を含むチャネルネットワークを有する工程と、
スリップスラリーをチャネルネットワークに導入して、底部チャネル、外側側壁チャネル、中央堰チャネル、および内側堰チャネルをスリップスラリーで満たし、スリップスラリーはシリカと液体キャリアを含む工程と、
液体キャリアの少なくとも一部をチャネルネットワークから除去して、グリーンボディを形成する工程と、
グリーンボディをるつぼ鋳型から分離する工程と、
グリーンボディを焼結して乾燥および緻密化し、ユニット化るつぼアセンブリを形成する工程と、を含む方法。
【請求項2】
鋳型は多孔質体を含み、毛細管現象によって液体キャリアを鋳型に引き込む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
多孔質体は、多孔質シリカからなる請求項2に記載の方法。
【請求項4】
グリーンボディの含水率は
、50重量%未満である請求項1に記載の方法。
【請求項5】
グリーンボディは
、1200℃か
ら1800℃の温度で焼結される請求項1に記載の方法。
【請求項6】
底部チャネル、外側側壁チャネル、中央堰チャネル、および内側堰チャネルは、それぞれ互いに流体接続されている請求項1に記載の方法。
【請求項7】
底部チャネルは、丸みを帯び、ユニット化るつぼアセンブリは透明で、単層の底部を含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】
単結晶シリコンインゴットを成長させる方法であって、
請求項1に記載の方法によりユニット化るつぼアセンブリを提供する工程;
外側側壁と中央堰との間に配置されたるつぼ融液ゾーンに多結晶シリコンを添加してシリコン融液を形成する工程であって、シリコン融液は中央堰の開口部を通って中央堰と内側堰との間に配置された安定ゾーンに流れ、シリコン融液は内側堰の開口部を通って内側堰の中に配置された成長ゾーンに流れる工程;
成長ゾーン内のシリコン融液を種結晶に接触させる工程;および、
種結晶をシリコン融液から引上げて、単結晶シリコンインゴットを形成する工程;を含む方法。
【請求項9】
スリップスラリーおよび/または鋳型は
、1ppmw未満のカルシウム濃度
、0.5ppmw未満のナトリウム濃度
、0.5ppmw未満のカリウム濃度
、0.5ppmw未満のリチウム濃度、およ
び0.5ppmw未満の鉄濃度を有するユニット化るつぼアセンブリを形成するように選択される請求項1に記載の方法。
【請求項10】
チョクラルスキ法によりシリコンインゴットを形成するためにシリコン融液を保持するためのユニット化るつぼアセンブリを形成する方法であって、
ユニット化るつぼアセンブリは、底部;底部から上方に延びる外側側壁;および、底部から上方に延びる内側堰であって、外側側壁の半径方向内側に配置される内側堰;を含み、
この方法は、
多孔質体および多孔質体の内部に配置されたチャネルネットワークを含む鋳型を提供する工程であって、チャネルネットワークは、
底部チャネル;
底部チャネルから延びる外側側壁チャネル;
底部チャネルから延び、外側側壁チャネルの内側に配置される内側堰チャネル;および、
内側堰チャネルを通って延び、ユニット化るつぼアセンブリの内側堰に開口部を形成して、シリコン融液が内側堰を通過することを可能にする内側堰ペグ、を含む工程;
スリップスラリーをチャネルネットワークに導入して、底部チャネル、外側側壁チャネル、および内側堰チャネルをスリップスラリーで満たす工程であって、スリップスラリーはシリカと液体キャリアとを含む工程;
液体キャリアの少なくとも一部を毛細管現象によって鋳型に引き込み、グリーンボディを形成する工程;
グリーンボディをるつぼ鋳型から分離する工程;および、
グリーンボディを焼成し、グリーンボディを乾燥および緻密化してユニット化るつぼアセンブリを形成する工程;
を含む方法。
【請求項11】
鋳型は多孔質体を含み、毛細管現象によって液体キャリアを鋳型に引き込む請求項10に記載の方法。
【請求項12】
多孔質体は、多孔質シリカから形成される請求項11に記載の方法。
【請求項13】
グリーンボディの含水率は
、50重量%未満である請求項10に記載の方法。
【請求項14】
底部チャネル、外側側壁チャネル、および内側堰チャネルは、それぞれ互いに流体接続されている請求項10に記載の方法。
【請求項15】
底部チャネルは、丸みを帯びて、ユニット化るつぼアセンブリは透明で、単層の底部を含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
スリップスラリーおよび/または鋳型は
、1ppmw未満のカルシウム濃度
、0.5ppmw未満のナトリウム濃度
、0.5ppmw未満のカリウム濃度
、0.5ppmw未満のリチウム濃度、およ
び0.5ppmw未満の鉄濃度を有するユニット化るつぼアセンブリを形成するように選択される請求項10に記載の方法。
【請求項17】
下部部分;
下部部分の上に配置された上部部分であって、
中央堰チャネル;および、
内側堰チャネル、
を形成する上部部分;を含むるつぼ鋳型であって、
上部部分および下部部分は、一緒になって、
底部チャネル;
底部チャネルに流体接続され、中央堰チャネルおよび内側堰チャネルは底部チャネルから延びる、側壁チャネル;および、
中央堰チャネルを横切って横方向に延び、鋳型から形成されたるつぼの中央堰に開口部を形成する中央堰ペグ;を形成するるつぼ鋳型。
【請求項18】
上部部分はフランジを含み、フランジが下部部分の上に載っている請求項17に記載のるつぼ鋳型。
【請求項19】
るつぼ鋳型は、多孔質である請求項17に記載のるつぼ鋳型。
【請求項20】
るつぼ鋳型は、多孔質シリカから形成される請求項19に記載のるつぼ鋳型。
【請求項21】
内側堰チャネルを横切って横方向に延び、鋳型から形成されたるつぼの内側堰の開口部を形成する内側堰ペグを含む請求項17に記載のるつぼ鋳型。
【請求項22】
底部チャネルは、丸みを帯びている請求項17に記載のるつぼ鋳型。
【請求項23】
上部部分は下面を有する本体を有し、下部部分は上面を有する本体を有し、下面および上面は底部チャネルおよび側壁チャネルを形成する請求項17に記載のるつぼ鋳型。
【請求項24】
上部部分は、上部部分の本体から延びるフランジを含み、フランジは、下部部分の本体上に載っている請求項23に記載のるつぼ鋳型。
【請求項25】
下面の少なくとも一部が丸みを帯びており、上面の少なくとも一部が丸みを帯びている請求項23に記載のるつぼ鋳型。
【発明の詳細な説明】
【関連出願との相互参照】
【0001】
本出願は、2020年2月20日に出願された米国非仮出願特許出願第16/796,482号、および2020年2月20日に出願された米国非仮出願特許出願第16/796,522号に対する優先権を主張するものである。両方の出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示の分野は、シリコンインゴットを形成するためにシリコン融液を保持するためのユニット化るつぼアセンブリを形成するための方法、特に、連続チョクラルスキシリコンインゴット成長で使用するための中央堰および内側堰を有するユニット化るつぼアセンブリを形成するための方法に関する。本開示の分野はまた、るつぼ鋳型およびユニット化るつぼに関する。
【背景技術】
【0003】
単結晶シリコンインゴットは、単結晶シリコンシードをるつぼ内に保持されたシリコン融液と接触させる、いわゆるチョクラルスキ法によって準備される。単結晶シリコンシードを融液から引き上げて、単結晶シリコンインゴットを融液から引き上げる。インゴットは、多結晶シリコンのチャージが最初にるつぼ内で溶融され、るつぼ内の溶融シリコンが枯渇するまでシリコンインゴットが融液から引き上げられるバッチシステムで準備されてもよい。あるいは、インゴットは、インゴット成長中にシリコン融液を補充するためにポリシリコンが断続的または連続的に融液に加えられる連続チョクラルスキ方式で引き上げられてもよい。
【0004】
連続チョクラルスキ法では、るつぼは、別々の融液ゾーンに分割されてもよい。例えば、るつぼアセンブリは、シリコンインゴットが成長する際にシリコン融液を補充するために多結晶シリコンを添加し溶融させる外側融液ゾーンを含んでもよい。シリコン融液は、外側融液ゾーンから外側融液ゾーン内の安定化ゾーンに流れ、そこで融液は熱的に安定化する。その後、シリコン融液は安定化ゾーンから成長ゾーンに流れ、そこからシリコンインゴットが引き上げられる。
【0005】
従来、連続チョクラルスキ法によってシリコンインゴットを成長させるためのるつぼアセンブリは、米国特許第10,450,670号に示されるるつぼアセンブリのような1つまたは複数の入れ子式るつぼを含むことができる。代替的にまたは追加的に、るつぼアセンブリは、米国特許第8,262,797号に開示されるように、るつぼの底部に接続され、そこから上方に延びる1つまたは複数の堰を含んでもよい。両方のタイプのるつぼの配置は、るつぼアセンブリ上に均一なガス流を提供するために、結晶引上げホットゾーンに配置されるときに、位置合わせツールの使用を伴う。どちらのタイプの構造も、るつぼアセンブリの底部に接続部を形成する必要がある(すなわち、アセンブリの底部に堰またはるつぼを取り付ける)。これらの接続は、るつぼアセンブリを変形させ、1つ以上の公差を失わせるような劣化を起こす可能性がある。
【0006】
変形に抵抗し、アライメントツールなしで、またはより少ないアライメントツールでホットゾーンに配置することができ、より簡単に製造することができるるつぼアセンブリ、およびそのようなるつぼアセンブリを準備するための方法が必要とされる。
【0007】
このセクションは、以下に説明および/または請求される本開示の様々な態様に関連し得る技術の様々な態様を読者に紹介することを意図している。この議論は、本開示の様々な態様のより良い理解を促進するために、読者に背景情報を提供するのに役立つと考えられる。従って、これらの記述は、この観点から読まれるべきであり、従来技術の容認としてではないことが理解されるべきである。
【発明の概要】
【0008】
本開示の一態様は、チョクラルスキ法によりシリコンインゴットを形成するためにシリコン融液を保持するためのユニット化るつぼアセンブリを形成するための方法に関する。るつぼ鋳型が提供される。この鋳型は、底部チャネルと、底部チャネルから延びる外側側壁チャネルとを含むチャネルネットワークを有する。チャネルネットワークはまた、底部チャネルから延びる中央堰チャネルと、底部チャネルから延びる内側堰チャネルとを含む。中央堰は、外側側壁チャネルと内側堰チャネルの間に配置される。スリップスラリーは、底部チャネル、外側側壁チャネル、中央堰チャネル、および内側堰チャネルをスリップスラリーで満たすためにチャネルネットワークに導入される。スリップスラリーは、シリカと液体キャリアを含む。液体キャリアは、少なくとも部分的にチャネルネットワークから除去され、グリーンボディを形成する。グリーンボディは、るつぼ鋳型から取り出される。グリーンボディを焼結して、グリーンボディを乾燥させ、緻密化して、ユニット化るつぼアセンブリを形成する。
【0009】
本開示の別の態様は、チョクラルスキ法によりシリコンインゴットを形成するためにシリコン融液を保持するためのユニット化るつぼアセンブリを形成するための方法に関する。るつぼの鋳型が提供される。鋳型は、多孔質体と、多孔質体内部に配置されたチャネルネットワークとを含む。チャネルネットワークは、底部チャネルと、底部チャネルから延びる外側側壁チャネルと、底部チャネルから延びる内側堰チャネルと、を含む。内側堰チャネルは、外側側壁チャネルの内側に配置されている。スリップスラリーは、底部チャネル、外側側壁チャネル、および内側堰チャネルをスリップスラリーで満たすためにチャネルネットワークに導入される。スリップスラリーは、シリカと液体キャリアを含む。液体キャリアは、毛細管現象により少なくとも部分的に鋳型内に引き込まれ、グリーンボディを形成する。グリーンボディは、るつぼ鋳型から分離される。グリーンボディを焼結して、グリーンボディを乾燥させ、緻密化し、ユニット化るつぼアセンブリを形成する。
【0010】
本開示のさらに他の態様は、るつぼ鋳型に関する。るつぼ鋳型は、下部部分と、下部部分の上に配置された上部部分とを含む。上部部分は、中央堰チャネルおよび内側堰チャネルを形成する。上部部分と下部部分は、底部チャネルと、底部チャネルに流体接続された側壁チャネルを形成する。中央堰チャネルおよび内側堰チャネルは、底部チャネルから延びる。
【0011】
本開示のさらに他の態様は、るつぼアセンブリに関する。るつぼアセンブリは、底部と、底部から上方に延びる外側側壁と、底部から上方に延びる中央堰と、底部から上方に延びる内側堰とを含む。中央堰は、外側側壁と内側堰との間に配置される。底部、外側側壁、中央堰および内側堰はユニット化されており、(1)外側側壁と底部との接合部、(2)中央堰と底部との接合部、(3)内側堰と底部との接合部において継ぎ目がない。
【0012】
本開示の上述の態様に関連して指摘された特徴には、様々な改良が存在する。更なる特徴もまた、同様に本開示の上述の態様に組み込まれ得る。これらの洗練された特徴および追加の特徴は、個別にまたは任意の組み合わせで存在し得る。例えば、本開示の図示された実施形態のいずれかに関連して後述する様々な特徴は、本開示の上述の側面のいずれかに、単独で、または任意の組み合わせで組み込まれてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】ユニット化るつぼアセンブリの一実施形態の断面図である。
【
図2】その中に形成されたグリーンボディを有するるつぼ鋳型の一実施形態の斜視図である。
【
図3】
図2の線3-3に沿って切られたるつぼ鋳型およびグリーンボディの斜視断面図である。
【
図4】るつぼ鋳型およびグリーンボディの平面図である。
【
図5】
図4の線5-5に沿って切られたグリーンボディの無いるつぼ鋳型の断面図である。
【
図6】
図4の線6-6に沿って切られたグリーンボディの無いるつぼ鋳型の他の断面図である。
【
図7】その中に注がれたスリップスラリーを有するるつぼ鋳型の断面図である。
【
図8】その中に注がれたスリップスラリーを有するるつぼ鋳型の他の断面図である。
【
図9】得られたるつぼの中央堰および内側堰に開口部を形成するための中央堰ペグおよび内側堰ペグを示するつぼ鋳型の詳細な断面図である。
【0014】
対応する参照文字は、図面全体を通して対応する部分を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示は、チョクラルスキ法によりシリコンインゴットを形成するためにシリコン融液を保持するためのユニット化るつぼ(例えば、一体構造)を形成するための方法に関する。本開示の実施形態によって製造され得る例示的なユニット化るつぼアセンブリ5が、
図1に示されている。ユニット化るつぼアセンブリ5は、底部17と、底部17から上方に延びる外側側壁10とを含む。るつぼアセンブリ5は、共に底部17から上方に延びる中央堰24および内側堰31を含む。中央堰24は、外側側壁10と内側堰31との間に配置される。
【0016】
本開示の実施形態では、その中に形成されたチャネルネットワーク20(
図5、6)を有する鋳型8(
図2)が提供される。鋳型8は、一緒に組み立ててチャネルネットワーク20を形成する上部部分12および下部部分18を含む。以下に更に説明するように、チャネルネットワーク20にスリップが注がれ、るつぼの形状の「グリーンボディ」40(
図2)が形成される。グリーンボディ40は、鋳型8から取り外され、焼結されてユニット化るつぼアセンブリ5(
図1)が形成される。
【0017】
ここで、鋳型8が説明のために透明であり、チャネルネットワーク20がその中に形成されたグリーンボディ40と共に示されている
図2~4を参照すると、チャネルネットワーク20は底部チャネル30と外側側壁チャネル32を含む。チャネルネットワーク20はまた、外側側壁チャネル32の内側にそれぞれ配置された中央堰チャネル34および内側堰チャネル36を含む。中央堰チャネル34は、内側堰チャネル36と外側側壁チャネル32との間に配置される。
図3に示すように、外側側壁チャネル32、中央堰チャネル34、および内側堰チャネル36は、底部チャネル30に流体接続されている(すなわち、チャネルネットワークの各チャネルは流体的に接続されて、得られるるつぼのユニット化を可能にする)。
【0018】
鋳型8の上部部分12は、本体49(
図5、6)と、本体49から半径方向外側に延びるフランジ54とを含む。本体49は、下面53(すなわち、底部チャネル30および外側側壁チャネル32の表面を形成するフランジ54の下の面)を有する。
【0019】
鋳型8の下部部分18はまた、本体56を含む。本体56は、上面59(すなわち、底部チャネル30および外側側壁チャネル32の表面を形成する面)を有し、上面59の内側に凹部61を形成している。図示の実施形態では、鋳型8の上部部分12の本体49の下面53の少なくとも一部と、鋳型8の下部部分18の上面59の少なくとも一部とは、丸みを帯びたるつぼ底部17(
図1)を形成するために丸みを帯びている。鋳型8を組み立てるには、フランジ54が下部部分18に載るまで、上部部分12の本体49を下部部分18の凹部61内に降ろす。この位置で、鋳型8の上部部分12および下部部分18は一緒に底部チャネル30および外側側壁チャネル32を形成する。
【0020】
図示の実施形態では、底部チャネル30は丸みを帯びている(そして、結果として得られるるつぼ底部17(
図1)は丸みを帯びている)。他の実施形態では、底部チャネル30は、より水平または完全に水平(すなわち平坦)であってもよく、あるいは円錐または反転(例えば、中間に台座を有する)であってもよい。
図5~6に示すように、側壁チャネル32の一部は、中央堰チャネル34よりも高く、中央堰チャネル34の一部は、内側堰チャネル36よりも高く、中央堰チャネル34の一部は、内側堰チャネル36よりも高い。他の実施形態では、チャネルは異なる相対的な高さを有してもよい(例えば、側壁チャネル32、中央堰チャネル34、および内側堰チャネル36の高さは同じである)。
【0021】
第1および第2の外側側壁チャネルライザ58、60(
図2)は、上部部分12を通って延び、外側側壁チャネル32と流体連通している。第1および第2の中央堰チャネルライザ64、66もまた、上部部分12を通って延び、中央堰チャネル34と流体連通している。第1および第2の内側堰チャネルライザ70、72もまた、上部部分12を通って延び、内側堰チャネル36と流体連通している。ライザ58、60、64、66、70、72は、上部部分12を通って延び、チャネルネットワーク20がスリップスラリーで満たされることを可能にする。例えば、スリップスラリーは、第1および第2の側壁ライザ58、60のいずれかに添加されて、外側側壁チャネル32および底部チャネル30をスラリーで充填してもよい。チャネル30、32がスラリーで満たされると、スリップスラリーで満たされていない対応するライザ58、60を介して空気が逃げる。同様に、スリップスラリーは、チャネルネットワーク20がスリップスラリーで満たされるまで、第1または第2の中央堰チャネルライザ64、66のいずれか、および第1または第2の内側堰チャネルライザ70、72に添加されてもよい(
図7~8)。図示の実施形態では、各ライザ58、60、64、66、70、72は、ライザへのスリップスラリーの注入を容易にするために、鋳型8の上部部分12の表面57に開口するコーン部分51(
図5)を含む。コーン部分51の下方にあるダクト52は、コーン部分51をそれぞれのチャネルに流体接続する。スリップスラリーは、チャネルネットワーク20がスリップスラリーで満たされるように、ダクト52および/またはコーン部分51が満たされ始めるまで添加されてもよい。例えば、液体キャリアが鋳型8内に引き込まれると、スリップスラリーの体積は収縮する。ライザ58、60、64、66、70、72の1つ以上のダクト52および/またはコーン部分51の中に配置されたスリップスラリーは、スリップスラリーが収縮すると、チャネルネットワーク20に引き込まれることがある。
【0022】
一般に、スラリーの一部がグリーンボディとして固化し始める前にチャネルネットワーク20がスリップスラリーで満たされ、得られるるつぼをユニット化できるようにする任意の順序でチャネルが充填されてもよい。ライザ58、60、64、66、70、72の配置は例示的なものであり、特に断らない限り、他の配置を用いてもよい。ライザ58、60、64、66、70、72は、鋳型8の上部部分12に形成された開口部および/またはチャンバであってもよい。いくつかの実施形態では、ライザ58、60、64、66、70、72は、開口部/チャンバと、開口部/チャンバの表面上に配置されるライナーとを含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、底部チャネル30、外側側壁チャネル32、中央堰チャネル34、および内側堰チャネル36を満たすためにチャネルネットワーク20に加えられるスリップスラリーは、シリカおよび水などの液体キャリアを含む。スリップスラリーは、当業者に知られている任意の懸濁剤を含む懸濁液中にシリカ粒子を維持する懸濁剤などの他の試薬も含んでもよい。例示的な懸濁剤には、粒子上に吸着するポリマーまたは有機物(例えば、長鎖有機分子、または粒子間の接触を減らすためにシリカ粒子上に表面電荷を蓄積させる他の剤)が含まれる。スリップスラリーは、以下に説明するように、焼結中に任意に燃え尽きることができる1つ以上の結合剤を含んでもよい。任意選択でスリップスラリーは、得られるグリーンボディ40からの鋳型8の分離を促進するために、1つ以上の離型剤を含んでもよい。
【0024】
鋳型8は、グリーンボディ40を形成するために液体キャリアをチャネルネットワーク20から(例えば、毛細管現象により)除去することができる材料で作られてもよい。いくつかの実施形態では、鋳型8は、石膏ボード(例えば、パリ石膏とも呼ばれるCaS04・nH20)等の石膏で作られる。他の実施形態では、鋳型8は、多孔質シリカで作られている。鋳型8は、毛細管現象によって液体キャリアを型8内に引き込む一般的な多孔質体であってよい。他の実施形態では、液体キャリアは、真空によって引かれてもよい。
【0025】
液体キャリアがスリップスラリーから鋳型8内に引き出されると、「グリーンボディ」40(
図2、3)が鋳型8内に残る。例えば、グリーンボディ40は、鋳型から分離したときにその形状を維持するのに十分な構造を有していてもよい。例えば、グリーンボディの含水率は、約50%未満、約45%未満、少なくとも約30wt%、少なくとも約35wt%、少なくとも約40wt%、少なくとも約45wt%、約30wt%~約50wt%または約35wt%~約45wt%でもよい。
【0026】
グリーンボディ40は、グリーンボディ40を比較的低いおよび/または制御された湿度の周囲に曝すことなどにより、更に乾燥させてもよい(例えば、グリーンボディ40が十分な強度を有した後、型8を取り除き、グリーンボディ40を比較的低いおよび/または制御された湿度の周囲に曝すなど)。本明細書で使用される「グリーンボディ」または「グリーン状態」という用語は、限定的な意味で考慮されるべきではなく、一般に、液体キャリアがスリップスラリーから部分的に引き出された後、構造体の焼結の前のるつぼの中間状態を意味する。
【0027】
鋳型8をグリーンボディ40から分離するために、鋳型8の上部部分12をグリーンボディ40から、および下部部分18から持ち上げてもよい。次いで、グリーンボディ40を下部部分18から持ち上げてもよい。得られるグリーンボディ40は、ライザ位置に対応する側壁および堰から上に延びる突起(図示せず)を有してもよい(例えば、スリップスラリーは、追加量がライザを満たすようにチャネルネットワーク20を完全に満たすように添加された)。これらの突起は、グリーンボディ40または得られたるつぼアセンブリ5(
図1)から研削または切断されてもよい。
【0028】
いくつかの実施形態では、鋳型8は、溶融シリコンがるつぼの様々なセクション間を移動できるように、得られるるつぼ内に開口部を形成するために、チャネルの1つ以上にペグを含んでもよい。例えば、
図9を参照すると、上部部分12は、中央堰チャネル34を横切って横方向に延びる中央堰ペグ48を含む。スリップスラリーは、中央堰ペグ48の周りを流れ、これにより、得られるるつぼアセンブリ5の中央堰24を通る開口部38(
図1)が形成される。代替的にまたは追加的に、上部部分12は、内側堰チャネル36を横切って横方向に延び、内側堰31に開口部41(
図1)を形成する内側堰ペグ55を含む。鋳型8の上部部分12がグリーンボディ40および下部部分18から取り外された後、中央堰ペグ48および内側堰ペグ55が取り外されてもよい(例えば、ドリルまたはノミで削られる)。ペグ48、55の位置(および結果として生じるるつぼ開口部38、41)は例示的であり、他の位置(例えば、高さ、ペグ間の相対的な周方向位置等)であってもよい。鋳型8は、中央堰24および/または内側堰31に開口部を形成するためのペグの追加または他の配置を含んでもよい。いくつかの実施形態では、鋳型8は、ペグを含まない。例えば、堰の間の開口部は、グリーンボディおよび/または得られるるつぼに直接形成されてもよく(例えば、ドリルまたはノミにより)、および/またはるつぼアセンブリ5は、シリコンが堰の上に注がれるように構成される。
【0029】
鋳型8は例示的なものであり、他の実施形態は、特に断らない限り、堰の異なる配置などを含むことができる(例えば、単一の堰のみ(すなわち、内側堰のみ)または2つ以上の堰を含む)。いくつかの実施形態において、鋳型8は、るつぼアセンブリ5を形成するための追加のサイクルで再使用されてもよい(例えば、2、3、4、5または10以上のサイクルで使用される)。鋳型8は、グリーンボディ40の形成中にその中に引き込まれた液体を蒸発させるために、鋳型を乾燥オーブンに入れるなどして、サイクルの間に乾燥させることができる。
【0030】
グリーンボディ40が鋳型8から取り出されると、グリーンボディ40を焼結して(例えば、乾燥炉で)、グリーンボディ40を乾燥および緻密化して、ユニット化るつぼアセンブリ5(
図1)を形成してもよい。グリーンボディ40は、約1200℃~約1800℃、約1300℃~約1700℃、または約1300℃~約1650℃の温度で焼結されてもよい。いくつかの実施形態において、るつぼアセンブリ5は、焼結後に20wt%未満、15wt%未満、または10wt%未満の水分含有量を有する。
【0031】
焼結後のユニット化るつぼアセンブリ5が
図1に示されている。本開示の様々な実施形態において、ユニット化るつぼアセンブリ5は、底部17と中央堰24との間に形成された接合部13、および底部17と内側堰31との間に形成された接合部15に継ぎ目を含まない(すなわち、これらの接合部13、15に空隙を有さない)。代替的にまたは追加的に、ユニット化るつぼアセンブリ5は、接合部13、15におけるタッキング(tucking)を含まない。このようなタッキングは、従来のるつぼアセンブリにおいて、るつぼ底部17で堰24、31を接続するために使用され得る。図示された実施形態では、ユニット化るつぼアセンブリ5は、単層底部17を含む(すなわち、るつぼアセンブリ5は、それぞれがそれ自身の底部を有する積層されたるつぼを含まない)。ユニット化るつぼアセンブリ5は、透明であってもよい。
【0032】
いくつかの実施形態において、スリップスラリーは、得られるるつぼアセンブリが所望の純度閾値を有するように選択される。例えば、およびいくつかの実施形態では、るつぼアセンブリ5は、約1ppmw未満、約0.8ppmw未満、または約0.7ppmw未満の濃度でカルシウムを含む。代替的にまたは追加的に、るつぼアセンブリ5は、約0.5ppmw未満、約0.2ppmw未満、または約0.1ppmw未満の濃度でナトリウムを含んでもよい。代替的にまたは追加的に、るつぼアセンブリ5は、約0.5ppmw未満、約0.2ppmw未満、または約0.1ppmw未満の濃度でカリウムを含んでもよい。代替的にまたは追加的に、るつぼアセンブリ5は、約0.5ppmw未満、約0.4ppmw未満、または約0.3ppmw未満の濃度でリチウムを含んでもよい。代替的にまたは追加的に、るつぼアセンブリ5は、約0.5ppmw未満、約0.3ppmw未満、または約0.15ppmw未満の濃度で鉄を含んでもよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、鋳型8は、上述の純度量のうちの1つ以上を達成するように選択される(および/または処理される)。例えば、鋳型は、得られるるつぼのカルシウム含有量を低減するために、多孔質シリカで作られてもよい(例えば、石膏鋳型と相対的に)。
【0034】
本明細書に示され説明されるユニット化るつぼアセンブリ5は、例示的なアセンブリである。アセンブリ5は、特に断らない限り、他の寸法(例えば、1つまたは複数の融液ゾーンにおけるより浅いまたはより深い融液)、純度、特徴および/または配置を有してもよい。
【0035】
ユニット化るつぼを形成するための本開示の方法は、単結晶シリコンインゴットを製造するために使用されてもよい。このような方法において、本開示の方法の実施形態によって製造されたユニット化るつぼが提供される。いくつかの実施形態では、ユニット化るつぼアセンブリ5は、外側側壁10と中央堰24との間に配置されたるつぼ融液ゾーン22を含む。ユニット化るつぼアセンブリ5はまた、中央堰24と内側堰31との間に配置された安定化ゾーン26を含む。ユニット化るつぼアセンブリ5はまた、内側堰31内に配置された成長ゾーン28を含む。
【0036】
多結晶シリコンは、シリコンが溶融してシリコン融液を補充するるつぼ融液ゾーン22に添加される。シリコン融液は、中央堰の開口部38を通って安定化ゾーン26に流入する。次に、シリコン融液は、内側堰の開口部41を通って、内側堰31内に配置された成長ゾーン28に流れる。成長ゾーン28内のシリコン融液は、単結晶の種結晶と接触し、種結晶は、シリコン融液から引き上げられて、単結晶シリコンインゴットを形成する。様々なシリコン融液ゾーン(例えば、融液ゾーン22、安定化ゾーン26、および成長ゾーン28)により、インゴットが成長ゾーン28から連続的に引き出される間に、多結晶シリコンが融液に連続的または半連続的に加えられる連続チョクラルスキ法により成長することが可能である。
【0037】
シリコン融液を保持するための従来のるつぼアセンブリと比較して、本開示のるつぼアセンブリおよびそのようなるつぼアセンブリを製造する方法は、いくつかの利点を有する。中央堰および内側堰を有するユニット化された(例えば、一体構造)るつぼを製造することによって、るつぼアセンブリは、ユニット化るつぼの利点を可能にしながら、連続インゴット成長(連続チョクラルスキ)を可能にする。るつぼ底部、側壁および堰をユニット化することにより、るつぼアセンブリは、公差(例えば、側壁および堰の高さ、壁厚、溶融チャネルなど)を保持することがより良好となる。これにより、るつぼアセンブリは、インゴット引上げシステムの中に、より容易に備え付けることができ、位置合わせ工具(すなわち、インゴット引上げシステム内でユニット化されていないるつぼの様々な部品を一緒にはめ込むための工具)の使用を低減または排除することができる。ユニット化るつぼは、起伏が少なく、インゴット引上げ装置のサセプタにうまく適合することができる。ユニット化るつぼはまた、熱反応を改善するために壁の厚さの制御を可能にし、ドープされた化学物質に対する柔軟性を可能にし、インゴット引上げアセンブリの実行時間を消費するプレボンドサイクル(すなわち、堰をるつぼ底に接続するために使用される加熱サイクル)を低減または除去する。ユニット化るつぼアセンブリはまた、複数の部品から形成されたるつぼアセンブリと比較して、処理および供給ロジスティクスがより少なくなる。鋳型が、るつぼ内に堰を形成するためのチャネルを横切って延びるペグを含む実施形態では、得られたるつぼは、インゴット成長中にシリコン融液が得られたるつぼ内の種々の融液ゾーンに移動することを可能にする予め形成された開口部を有する。
【0038】
いくつかの実施形態において、スリップおよび/または鋳型は、インゴット成長中のゼロ転位の損失の可能性を低減するために、得られるるつぼが比較的低い不純物含有量(例えば、約1ppmw未満のカルシウム、約0.5ppmw未満のナトリウム、約0.5ppmw未満のカリウム、0.5ppmw未満のリチウム、および/または0.5ppmw未満の鉄)を有するように選択される。鋳型が多孔質シリカで作られている実施形態では、石膏で作られた鋳型から鋳造された構成要素と比較して、多孔質シリカのカルシウム含有量が低いため、るつぼアセンブリはより純度が高い可能性がある。
【0039】
本明細書で使用されるように、寸法、濃度、温度または他の物理的若しくは化学的特性若しくは特性の範囲と関連して使用される場合の用語「約(about)」、「実質的に(substantially)」、「本質的に(essentially)」および「約(approximately)」は、例えば丸め、測定方法、または他の統計的変動から生じる変動を含む特性または特性の範囲の上限および/または下限に存在し得る変動を対象とすることが意味される。
【0040】
本開示の要素またはその実施形態を紹介する場合、冠詞「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」および「該(said)」は、その要素が1つ以上存在することを意味することを意図している。用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含む(containing)」、および「有する(having)」は、包括的であることを意図しており、列挙された要素以外の追加の要素が存在する可能性があることを意味する。特定の向きを示す用語(例えば、「上(top)」、「底(bottom)」、「横(side)」等)の使用は、説明の便宜のためであり、説明される項目の特定の向きを必要とするものではない。
【0041】
本開示の範囲から逸脱することなく、上述の構造および方法において様々な変更がなされ得るので、上述の説明に含まれ、添付の図面に示される全ての事項は、例示的なものとして解釈され、限定的な意味ではないことが意図される。