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特許7585357分光モニタリング用の機械学習システム向けにトレーニングスペクトルにラベル付けするためのインシトゥモニタリング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】分光モニタリング用の機械学習システム向けにトレーニングスペクトルにラベル付けするためのインシトゥモニタリング
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20241111BHJP
   B24B 37/013 20120101ALI20241111BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
H01L21/304 622R
B24B37/013
B24B49/12
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022578831
(86)(22)【出願日】2022-02-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-07
(86)【国際出願番号】 US2022016657
(87)【国際公開番号】W WO2022186988
(87)【国際公開日】2022-09-09
【審査請求日】2023-02-21
(31)【優先権主張番号】63/155,926
(32)【優先日】2021-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】リー, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】シェリアン, ベンジャミン
【審査官】境 周一
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-537270(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0034844(US,A1)
【文献】特開2020-107784(JP,A)
【文献】特表2015-520508(JP,A)
【文献】特開2021-028099(JP,A)
【文献】特表2020-518131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 37/013
B24B 49/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分光モニタリング用のニューラルネットワークをトレーニングする方法であって、
試験基板研磨することと、
前記試験基板の研磨中に、前記基板から反射された光の試験スペクトルのシーケンスをインシトゥ分光モニタシステムによって測定することと、
前記試験基板の研磨中に、前記基板からの試験値のシーケンスを前記インシトゥ分光モニタシステムと異なるインシトゥモニタシステムによって測定することと、
研磨前の前記基板の初期特性値又は研磨後の前記基板の最終特性値のうちの少なくとも一方をエクスシトゥ計測システムによって測定することと、
前記試験値のシーケンス並びに前記初期特性値及び/又は前記最終特性値を、トレーニング値のシーケンスを出力する厚さ予測モデルに入力することであって、前記トレーニング値のシーケンス内の各それぞれのトレーニング値は、前記試験スペクトルのシーケンスからのそれぞれの試験スペクトルに関連付けられる、厚さ予測モデルに入力することと、
前記試験スペクトルのシーケンス及び前記トレーニング値のシーケンスを使用して人工ニューラルネットワークをトレーニングすることであって、前記人工ニューラルネットワークは、複数のスペクトル値用の複数の入力ノード、特性値を出力するための出力ノード、及び前記複数の入力ノードを前記出力ノードに接続する複数の隠れノードを有する、人工ニューラルネットワークをトレーニングすることとを含む、方法。
【請求項2】
デバイス基板を研磨すること、
前記デバイス基板が研磨されているときに、前記デバイス基板から反射された光の測定されたスペクトルを、インシトゥ光学モニタシステムから受け取ること、
前記測定されたスペクトルからのスペクトル値をトレーニングされた前記人工ニューラルネットワークの前記複数の入力ノードに与えることによって、トレーニングされた前記人工ニューラルネットワークの前記出力ノードにおいて前記測定されたスペクトルの測定された特性値を生成すること、及び
前記特性値に基づいて、前記基板の処理を停止すること又は処理パラメータを調整することのうちの少なくとも一方を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記厚さ予測モデルは、研磨時間を複数の区間に分割する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記トレーニング値のシーケンスは、前記複数の区間のうちの第1の区間についての第1の複数のトレーニング値、及び前記複数の区間のうちの第2の区間についての第2の複数のトレーニング値を含み、前記厚さ予測モデルは、第1の関数に従って前記第1の複数のトレーニング値を計算し、第2の関数に従って前記第2の複数のトレーニング値を計算する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記厚さ予測モデルは、前記第1の関数が前記複数の区間の境界時刻において前記第2の関数に等しいという制約に従って、前記複数のトレーニング値を計算する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記厚さ予測モデルは、第1の関数が、前記スペクトルのシーケンスのうちの最初のスペクトルに対応する研磨の開始時刻における前記初期特性値を生成し、及び/又は、第2の関数が、前記スペクトルのシーケンスのうちの最後のスペクトルに対応する研磨の終了時刻における前記最終特性値を生成するという制約に従って、前記複数のトレーニング値を計算する、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の関数は、第1の勾配を有する第1の線形関数であり、前記第2の関数は、異なる第2の勾配を有する第2の線形関数である、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記厚さ予測モデルは、前記第1の勾配と前記第2の勾配との所定の比を記憶し、前記第1の勾配と前記第2の勾配とを前記所定の比を満たすように設定する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記厚さ予測モデルは、前記第1の区間内の前記試験値のシーケンスからの第1の複数の試験値と、前記第2の区間内の前記試験値のシーケンスからの第2の複数の試験値との比較に基づいて、前記第1の勾配及び前記第2の勾配を計算する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記厚さ予測モデルは、第1の複数の試験値の第1の平均値に基づいて前記第1の勾配を計算し、第2の複数の試験値の第2の平均値に基づいて前記第2の勾配を計算する、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記厚さ予測モデルは、前記試験値のシーケンスの勾配を計算し、前記勾配に基づいて前記複数の区間の境界時刻を選択する、請求項3に記載の方法。
【請求項12】
前記厚さ予測モデルは、前記試験値のシーケンスの一次導関数における極値に基づいて境界時刻を選択する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記厚さ予測モデルは、前記それぞれのトレーニング値についての時刻に時間が最も近い最大2つの値に基いて、各それぞれのトレーニング値を計算する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記インシトゥモニタシステムが、インシトゥ光学モニタシステムであり、前記光の試験スペクトルのシーケンスは、第1の周波数で測定され、前記試験値のシーケンスは、異なる第2の周波数で測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
非一時的なコンピュータ可読媒体内に符号化された複数の指示命令を含むコンピュータプログラム製品であって、前記複数の指示命令は、1以上のコンピュータに、
研磨されている基板から反射された光の試験スペクトルのシーケンスを受け取ることと、
インシトゥモニタシステムから前記基板からの試験値のシーケンスを受け取ることと、
研磨前の前記基板の初期特性値又は研磨後の前記基板の最終特性値のうちの少なくとも一方を、エクスシトゥ計測システムから受け取ることと、
前記試験値のシーケンス並びに前記初期特性値及び/又は前記最終特性値に基いて、トレーニング値のシーケンスを計算することと、
前記試験スペクトルのシーケンスからの各スペクトルを、前記トレーニング値のシーケンスからのトレーニング値に関連付けて、ニューラルネットワークのトレーニング用のトレーニングデータセットを提供することとを実行させる、コンピュータプログラム製品。
【請求項16】
研磨時間を複数の区間に分割するための指示命令を含む、請求項15に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項17】
第1の関数に従って、前記複数の区間のうちの第1の区間における第1の複数のトレーニング値を計算し、異なる第2の関数に従って、前記複数の区間のうちの第2の区間における第2の複数のトレーニング値を計算するための指示命令を含む、請求項16に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項18】
前記第1の関数が、前記複数の区間の境界時刻において前記第2の関数に等しいという制約に従って、前記複数のトレーニング値を計算するための指示命令を含む、請求項17に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項19】
前記第1の関数が、スペクトルのシーケンスのうちの最初のスペクトルに対応する時刻における前記初期特性値を生成し、及び/又は、前記第2の関数が、前記スペクトルのシーケンスのうちの最後のスペクトルに対応する終了時刻における前記最終特性値を生成するという制約に従って、前記複数のトレーニング値を計算するための指示命令を含む、請求項17に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項20】
化学機械研磨システムであって、
研磨パッドを支持するプラテンと、
基板を前記研磨パッドに当接して保持するためのキャリアヘッドと、
前記プラテンと前記キャリアヘッドとの間に相対運動を生成するためのモータと、
研磨中に前記基板から反射された光のスペクトルのシーケンスを測定するためのインシトゥ分光モニタシステムと、
複数の入力ノードと出力ノードとを有する人工ニューラルネットワークであって、前記インシトゥ分光モニタシステムと異なるインシトゥモニタシステムによって測定された試験値のシーケンス並びにエクスシトゥ計測システムからの初期特性値及び/又は最終特性値から、厚さ予測モジュールによって生成された複数のトレーニングスペクトル及び複数のトレーニング値を含む、トレーニングデータセットを使用してトレーニングされた人工ニューラルネットワークとを備える、化学機械研磨システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば化学機械研磨などの処理中の、基板の光学モニタリングに関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路は、典型的には、シリコンウエハ上に導電層、半導電層、又は絶縁層を順次堆積させることによって、基板上に形成される。ある製造工程は、非平坦面の上に充填層を堆積させ、その充填層を平坦化することを含む。幾つかの用途では、パターニングされた層の上面が露出するまで、充填層が平坦化される。例えば、絶縁層内のトレンチ又は孔を充填するために、パターニングされた絶縁層上に導電性充填層が堆積され得る。平坦化後、絶縁層の隆起したパターン間に残っている導電層の部分が、基板上の薄膜回路間で導電経路を提供するビア、プラグ、及びラインを形成する。他の幾つかの用途では、充填層が、所定の厚さが下層の上に残されるまで平坦化される。例えば、堆積された誘電体層は、フォトリソグラフィのために平坦化され得る。
【0003】
化学機械研磨(CMP)は、平坦化の1つの受け入れられている方法である。この平坦化方法は、典型的には、基板がキャリアヘッドに取り付けられることを必要とする。基板の露出面が、典型的には、耐久性のある粗面を有する回転研磨パッドに当接して配置される。キャリアヘッドが、基板に制御可能な荷重をかけ、基板を研磨パッドに押し付ける。研磨粒子を有するスラリなどの研磨液が、典型的には、研磨パッドの表面に供給される。
【0004】
CMPにおける問題の1つは、所望のプロファイル(例えば、望ましい平坦度若しくは厚さまで平坦化された、又は望ましい量の材料が除去された基板層)を実現するのに適切な研磨速度を使用することである。基板層の初期厚さ、スラリ分布、研磨パッド状態、研磨パッドと基板との間の相対速度、及び基板上への荷重のばらつきは、1つの基板全体にわたって及び基板毎に材料除去速度のばらつきをもたらし得る。これらのばらつきは、研磨終点に到達するのに必要な時間及び除去される量のばらつきをもたらす。したがって、単に研磨時間の関数として研磨終点を特定すること、又は単に一定の圧力を加えることによって所望のプロファイルを実現することは不可能な場合がある。
【0005】
幾つかのシステムでは、基板が、例えば光学モニタシステムによって、研磨中に現場で(in-situ、インシトゥ)モニタされる。現場モニタシステムからの厚さ測定値は、基板に印加される圧力を調整して、研磨速度を調整し、ウエハ内不均一性(WIWNU)を低減させるために使用され得る。
【発明の概要】
【0006】
一態様では、分光モニタリング用のニューラルネットワークをトレーニグする方法が、試験基板を研磨することと、試験基板の研磨中に基板から反射された光の試験スペクトルのシーケンスを現場分光モニタシステムによって測定することと、試験基板の研磨中に基板からの試験値のシーケンスを現場非光学モニタシステムによって測定することと、研磨前の基板の初期特性値又は研磨後の基板の最終特性値のうちの少なくとも一方を測定することと、試験値のシーケンス並びに初期特性値及び/又は最終特性値を、トレーニング値のシーケンスを出力する厚さ予測モデルに入力することであって、トレーニング値のシーケンス内の各それぞれのトレーニング値は、試験スペクトルのシーケンスからのそれぞれの試験スペクトルに関連付けられる、厚さ予測モデルに入力することと、複数のトレーニングスペクトル及び複数のトレーニング値を使用して人工ニューラルネットワークをトレーニングすることとを含む。人工ニューラルネットワークは、複数のスペクトル値用の複数の入力ノード、特性値を出力するための出力ノード、及び複数の入力ノードと出力ノードとを接続する複数の隠れノードを有する。
【0007】
これらの複数の態様は、非一時的なコンピュータ可読媒体で有形に具現化されるコンピュータプログラム製品であって、プロセッサに動作を実行させるための指示命令を含むコンピュータプログラム製品で、又は動作を実行するためのコントローラを有する処理システム(例えば、研磨システム)で具現化されてよい。
【0008】
複数の態様のうちの複数の実施態様は、以下の特徴のうちの1以上を含んでよい。
【0009】
特定の複数の実施態様は、以下の利点のうちの1以上を有してよいが、それらに限定されない。機械学習システム(例えば、ニューラルネットワーク)のトレーニングに使用されるスペクトルは、より正確にラベル付けされ得、したがって、機械学習システムの予測性能を改善する。基板上の層の厚さが、より正確且つ/又は迅速に測定され得る。ウエハの厚さにおける不均一性及びウエハ間の厚さの不均一性(WIWNU及びWTWNU)が低減されてよく、所望の処理終点を検出するための終点システムの信頼性が向上してよい。
【0010】
1以上の実施形態の詳細を、添付の図面及び以下の説明で明らかにする。他の特徴、態様、及び利点は、本説明、図面、及び特許請求の範囲から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】研磨装置の一実施例の概略断面図を示す。
図2】複数の区域を有する基板の概略上面図を示す。
図3】第1の基板上の現場測定が行われる箇所を示す概略上面図である。
図4】研磨装置用のコントローラの部分として使用されるニューラルネットワークを示す。
図5】機械学習システムをトレーニングするためのトレーニングデータを示す。
図6】制御システムによって時間の関数として出力された特性値のグラフを示す。
図7】トレーニングスペクトルを生成するために使用される構成要素の概略図である。
図8】予測モデルに供給されるデータを示す。
図9】経時的なモータトルクのグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
様々な図面における類似の参照番号及び記号表示は、類似した要素を示している。
【0013】
モニタリング技法の1つは、研磨されている基板から反射された光のスペクトルを測定することである。測定されたスペクトルから特性値(例えば、研磨されている層の厚さ)を特定するための様々な技法が提案されてきた。実現可能な1つの技法は、サンプル基板からのトレーニングスペクトル、及びこれらのサンプル基板の測定された特性値に基づいて、ニューラルネットワークをトレーニングすることである。トレーニング後の通常動作中に、デバイス基板から測定されたスペクトルが、ニューラルネットワークに入力され得、ニューラルネットワークは、特性値(例えば、計算された基板の最上層の厚さ)を出力し得る。ニューラルネットワークを使用する動機付けとなるのは、計算された最上層の厚さに対する下層の膜厚の影響を除去する可能性があることである。
【0014】
トレーニングデータを得るために、スペクトルのシーケンスが、試験基板の研磨中に測定され得る。基板の特性値(例えば、厚さ)は、例えばスタンドアロン又はインライン計測システムを用いて、研磨の前後に測定され得る。次いで、これらの2つの値は、シーケンス内の最初のスペクトル及び最後のスペクトルに関連付けられ得る。シーケンス内の残りのスペクトルの特性値は、例えば時間に基づく線形補間によって生成され得る。したがって、トレーニングデータは、一組のスペクトルを含み得、各スペクトルは、関連付けられた特性値を有する。
【0015】
この技法の問題は、特性値(例えば、厚さ値)が、シーケンス内の最初のスペクトル及び最後のスペクトルについてのみ確実に知られていることである。多くのプロセスでは、特性値が、経時的に非線形に変化し得る。これに対処するために、別の現場モニタシステム(例えば、モータ電流モニタシステムなどの非光学モニタシステム)からの信号が、厚さ予測モデルに供給され得る。厚さ予測モデルは、シーケンス内の各スペクトルのタイムスタンプの厚さ値を出力し得る。それは、単に時間に基づく線形補間を使用するよりも正確である。
【0016】
図1は、研磨装置20の一実施例を示している。研磨装置20は、上に研磨パッド30が載置されている、回転可能な円盤形状のプラテン22を含み得る。プラテンは、軸23の周りで回転するように動作可能である。例えば、モータ24が駆動シャフト26を回して、プラテン22を回転させることができる。研磨パッド30は、例えば接着剤の層によってプラテン22に着脱可能に固定され得る。研磨パッド30は、外側研磨層32及びより柔らかいバッキング層34を有する二層研磨パッドであり得る。
【0017】
研磨装置20は、研磨スラリなどの研磨液体42を研磨パッド30の上に分注するための研磨液体供給ポート40を含み得る。研磨装置20はまた、研磨パッド30を一貫した研磨状態に維持するために研磨パッド30を磨くための、研磨パッドコンディショナも含み得る。
【0018】
キャリアヘッド50は、基板10を研磨パッド30に当接して保持するように動作可能である。各キャリアヘッド50はまた、個別に制御可能で与圧可能な複数のチャンバ(例えば3つのチャンバ52a~52c)も含み、これらのチャンバは、基板10上の関連付けられた区域12a~12c(図2参照)に、個別に制御可能な圧力を印加し得る。図2を参照すると、中央区域12aは実質的に円形であり得、残りの区域12b~12cは、中央区域12aの周りの同心環状区域であり得る。
【0019】
図1に戻って参照すると、チャンバ52a~52cは、基板10が取り付けられる下面を有する可撓性膜54によって画定され得る。キャリアヘッド50はまた、可撓性膜54の下に基板10を保持するための保持リング56も含み得る。簡潔に示すために、図1及び図2には3つのチャンバのみを図示しているが、2つのチャンバ又は4つ以上のチャンバ(例えば、5つのチャンバ)が存在し得る。加えて、キャリアヘッド50では、基板に印加される圧力を調整するための他の機構(例えば、圧電アクチュエータ)が使用され得る。
【0020】
各キャリアヘッド50は、支持構造物60(例えば、カルーセル又はトラック)から吊り下げられ、駆動シャフト62によってキャリアヘッド回転モータ64に接続されている。それによって、キャリアヘッドは、軸51の周りで回転し得る。任意選択的に、各キャリアヘッド50は、例えば、カルーセル上のスライダ上で、トラックに沿った運動によって、又はカルーセル自体の回転振動によって、側方に振動し得る。動作中、プラテン22は、その中心軸23の周りで回転され、キャリアヘッド50は、その中心軸51の周りで回転され、研磨パッド30の上面を横切って側方に平行移動される。
【0021】
研磨装置はまた、現場分光モニタシステム70も含む。それは、研磨パラメータ(例えば、チャンバ52a~52cのうちの1以上に印加される圧力)を制御して、区域12a~12cのうちの1以上の研磨速度を制御するために使用され得る。分光モニタシステム70は、基板から反射された光のスペクトルの測定値を生成する。その測定値は、各区域12a~12cの各々内で研磨されている層の厚さを示す特性値に変換される。
【0022】
分光モニタシステム70は、光源72、光検出器74、及びコントローラ90(例えば、コンピュータ)と光源72及び光検出器74との間で信号を送受信するための回路76を含み得る。光源72から研磨パッド30内のウインドウ36に光を送信するため、及び、基板10から反射された光を検出器74に送信するために、1以上の光ファイバが使用され得る。例えば分岐光ファイバ78を使用して、光源72から基板10に光を送信し、検出器74に戻すことができる。分光システムとして、光源72は白色光を発するように動作可能であり得、検出器74は分光計であり得る。
【0023】
回路76の出力はデジタル電子信号であってよく、このデジタル電子信号は、駆動シャフト26内の回転カプラ28(例えば、スリップリング)を通過して、コントローラ90へと至る。代替的に、回路76は、無線信号によってコントローラ90と通信することができる。コントローラ90は、マイクロプロセッサ、メモリ、及び入力/出力回路を含む計算デバイス、例えば、プログラマブルコンピュータであり得る。コントローラ90は、単一のブロックで図示されているが、複数のコンピュータに機能が分散されているネットワーク化されたシステムであり得る。
【0024】
幾つかの実施態様では、現場モニタシステム70が、プラテン22内に設置されプラテン22と共に回転するセンサ80を含む。例えば、センサ80は、光ファイバ78の端部であり得る。プラテン22の運動により、センサ80は、基板全体を走査することになる。図3で示されているように、プラテンの回転(矢印38によって示されている)のために、センサ80がキャリアヘッドの下方で移動するときに、現場分光モニタシステムはサンプリング周波数で測定を行う。結果として、基板10を横切る円弧内の位置14において測定が行われる(点の数は例示であり、サンプリング周波数に応じて、示されているよりも多くの又は少ない測定が行われてよい)。
【0025】
プラテンの一回転にわたって、基板10上の種々の位置からスペクトルが得られる。特に、幾つかスペクトルは、基板10の中心により近い箇所から得ることができ、他の幾つかは、縁部により近い箇所から得ることができる。コントローラ90は、タイミング、モータエンコーダ情報、プラテンの回転若しくは位置センサデータ、並びに/又は基板及び/若しくは保持リングの縁部の光学的検出に基づいて、走査からの各測定値に対して(基板10の中心に対する)径方向位置を計算するように構成され得る。したがって、コントローラは、様々な測定値と様々な区域12a~12c(図2参照)とを関連付け得る。幾つかの実施態様では、径方向位置の正確な計算のための代替物として、測定時間が使用され得る。
【0026】
図1に戻って参照すると、コントローラ90は、現場モニタシステムからの信号に基づいて、基板の各区域についての特性値を導き出すことができる。特に、コントローラ90は、研磨が進行するにつれて、特性値の経時的シーケンスを生成する。コントローラ90は、基板10の下方のセンサが走査する毎に、各区域につき少なくとも1つの特性値を生成し得るか、又は、例えばセンサが基板全体を走査するわけではない研磨システムでは、ある測定周波数(サンプリング周波数と同じである必要はない)で、各区域について特性値を生成し得る。幾つかの実施態様では、1回の走査につき単一の特性値が生成される。例えば、特性値を生成するために複数の測定値が合成されてよい。幾つかの実施態様では、特性値を生成するために各測定値が使用されてよい。
【0027】
特性値は、典型的には、外層の厚さであるが、除去される厚さなどの関連する特性であり得る。加えて、特性値は、研磨プロセスを経る基板の進捗をより一般的に表現するもの(例えば、既定の進捗に従った研磨プロセスにおいて測定が観測されることが予期され得る時間又はプラテンの回転数を表す指標値)であり得る。
【0028】
コントローラ90は、二段階プロセスを使用して、現場分光モニタシステム70から測定されたスペクトルから特性値を生成し得る。最初に、測定スペクトルの次元数が削減される。次いで、削減後の次元数のデータが人工ニューラルネットワークに入力され、人工ニューラルネットワークは特性値を出力することになる。各測定スペクトルについてこのプロセスを実行することによって、人工ニューラルネットワークは特性値のシーケンスを生成し得る。このシーケンスは、例えばセンサ80が基板の下を通ると仮定すると、基板上の種々の径方向位置の特性値を含み得る。
【0029】
現場分光モニタシステム70とコントローラ90とを組み合わせることで、終点及び/又は研磨均一性を制御するシステム100が提供され得る。つまり、コントローラ90は、一連の特性値に基づいて、研磨不均一性を低減させるために、研磨プロセス中に、研磨終点を検出すること並びに研磨を停止し及び/又は研磨圧力を調整することができる。
【0030】
図4は、コントローラ90によって実装される機能ブロックを示しており、これらのブロックは、次元削減を実行する次元削減モジュール110と、ニューラルネットワーク120と、一連の特性値に基づいて、研磨プロセスを調整するため(例えば、研磨不均一性を低減させるために、研磨プロセス中に、研磨終点を検出するため並びに研磨を停止し及び/又は研磨圧力を調整するため)のプロセス制御システム130とを含む。上述されたように、これらの機能ブロックは、複数のコンピュータに分散され得る。
【0031】
ニューラルネットワーク120は、各主成分用の複数の入力ノード122、複数の隠れノード124(下記では「中間ノード」とも称される)、及び特性値を生成することとなる出力ノード126を含む。単一層の隠れノードを有するニューラルネットワークでは、各隠れノード124が各入力ノード122に結合され得、出力ノード126は各隠れノード124に結合され得る。幾つかの実施態様では、複数の出力ノードが存在し、そのうちの1つが特性値を提供する。
【0032】
一般に、隠れノード124は、隠れノードが接続される入力ノード122からの値の加重和の非線形関数である値を出力する。
【0033】
例えば、指定されたノードkである隠れノード124の出力は、次のように表され得る。すなわち、
ここで、tanhは双曲線正接であり、akxはk番目の中間ノードとx番目の入力ノード(M個の入力ノードからの)との間の接続についての重みであり、IMはM番目の入力ノードにおける値である。しかし、tanhの代わりに他の非線形関数(正規化線形ユニット(ReLU)関数及びその変種など)も使用され得る。
【0034】
次元削減モジュール110は、成分値がより少ない数(例えばL個の成分値)になるよう、測定されたスペクトルを削減することになる。ニューラルネットワーク120は、スペクトルがそこまで削減される各成分についての入力ノード122を含む。例えば、モジュール110がL個の成分値を生成する場合、ニューラルネットワーク120は、少なくとも入力ノードN1,N2,…,NLを含むことになる。
【0035】
したがって、入力ノードの数が、測定されたスペクトルがそこまで削減される成分の数に対応している場合(すなわちL=M)、ある隠れノード124(ノードkと指定される)の出力Hkは次のように表され得る。すなわち、
【0036】
測定スペクトルSが、列行列(i1,i2,…,in)によって表わされると仮定すると、ある中間ノード124(ノードkと指定される)の出力は、次のように表され得る。すなわち、
ここで、Vxは、(L個の成分のうちの)削減された次元数のデータのx番目の成分の値への測定されたスペクトルの変換を提供することになる行行列(v1,v2,…,vn)である。例えば、Vxは、後述する行列W又はW’の(L個の列のうちの)x番目の列によって提供され得る。すなわち、VxはWTのx番目の行である。したがって、Wxは、次元削減行列からのx番目の固有ベクトルを表し得る。
【0037】
出力ノード126は、隠れノードの出力の加重和である、特性値CVを生成し得る。例えば、これは次のように表され得る。
CV=C1*H1+C2*H2+…+CL*HL
ここで、Ckは、k番目の隠れノードの出力についての重みである。
【0038】
しかし、ニューラルネットワーク120は、任意選択的に、他のデータを受け取るための1以上の他の入力ノード(例えばノード122a)を含んでよい。この他のデータは、現場モニタシステムによる基板の先行測定からのもの(例えば、以前の基板の処理において先行基板の測定から収集されたスペクトル、例えば、研磨システムの別のセンサから別の基板の処理中に収集されたスペクトル、例えば、研磨システムを制御するために使用されるコントローラに記憶されている研磨レシピからの、温度センサによるパッド又は基板の温度の測定値、例えば、コントローラによって追跡される変数からの、基板を研磨するために使用されるキャリアヘッド圧力やプラテン回転速度といった研磨パラメータ、例えば、パッド交換以降の基板の数、又は研磨システムの部分ではないセンサからのもの、例えば、計測ステーションによる下層膜の厚さの測定値)であり得る。これにより、ニューラルネットワーク120が、特性値の計算において、かかる他の処理変数又は環境変数を勘案することが可能になる。
【0039】
図1に戻って参照すると、研磨装置20は、分光モニタシステムではない第2の現場モニタシステム150を含む。第2の現場モニタシステム150は、可視光を利用しないモニタシステム、例えば、赤外線カメラを使用する温度モニタシステムであり得る。第2の現場モニタシステム150は、非光学モニタシステム、例えば、熱電対を使用する温度モニタシステム、音響モニタシステム、モータ電流若しくはモータトルクモニタシステム、摩擦モニタシステム、又は渦電流モニタシステムであり得る。
【0040】
温度モニタシステムとして、第2の現場モニタシステム150は、例えば研磨パッド30又は基板10の研磨プロセスの温度をモニタするための温度センサ152を含み得る。温度センサは、赤外線センサ、例えば、研磨パッド30の赤外線画像を取得するするように配置された赤外線カメラであり得る。代替的に、温度センサ152は、研磨パッド又は基板の温度を測定するために、別の構成要素、例えばプラテン22又はキャリアヘッド50に取り付けられ又は埋め込まれた熱電対であり得る。
【0041】
音響モニタシステムとして、第2の現場モニタシステム150は、基板10と研磨パッド10との間の界面からの振動をモニタするための能動的又は受動的音響センサ154を含み得る。
【0042】
モータトルクモニタシステムとして、第2の現場モニタシステム150は、モータトルクを測定するためのセンサを含み得る。モータトルクの測定は、トルクの直接測定及び/又はモータに供給される電流の測定であり得る。例えば、電流センサ170は、プラテンモータ24に供給される電流をモニタし得、及び/又は、電流センサ172は、キャリアヘッドモータ64に供給される電流をモニタし得る。電流センサは、モータの部分として図示されているが、コントローラの部分(コントローラ自体がモータ用の駆動電流を出力する場合)、又は別個の回路であり得る。代替的に、トルクメータが、プラテン駆動シャフト26上に配置され得、及び/又は、キャリアヘッド駆動シャフト62上に配置され得る。
【0043】
摩擦モニタとして、第2の現場モニタシステム150は、基板又はキャリアヘッドに対する摩擦を測定するためのセンサ、例えば、キャリアヘッド駆動シャフト62又はキャリアヘッドの内部スピンドル上に配置された歪みゲージを含み得る。
【0044】
いずれにしても、第2の現場モニタシステム150のセンサ、例えば、温度センサ152、音響センサ154、又は電流センサ170及び/若しくは172の出力信号は、制御システム90へ導かれる。
【0045】
次元削減モジュール110及びニューラルネットワーク112は、例えばデバイスウエハ用に使用される前に、構成される必要がある。図5を参照すると、次元低減モジュール110及びニューラルネットワーク112用の構成手順の部分として、コントローラ90が、複数のトレーニングスペクトル202及び複数の特性値204(D0,D1,…,DNとして示されている)を含むトレーニングデータセット200を受け取り得る。特性値は、厚さ値であり得る。各トレーニングスペクトル202aは、単一の対応する特性値204aに関連付けられている。複数のトレーニングスペクトル202は、例えば、20から500個のトレーニングスペクトルを含み得る。
【0046】
図4に戻って参照すると、次元削減モジュール110の構成手順用に、コントローラ90は、トレーニングスペクトルのデータセットの共変行列の固有ベクトルの群を生成し得る。この固有ベクトルの群が生成されると、固有ベクトルはランク付けされ得、最も大きい固有値を有する事前設定された数の(例えば、8つのうち上位4つの)固有ベクトルが保持され得る。
【0047】
固有ベクトルを、これに関連付けられた固有値によってランク付けすることによって、データセットが最も大きく変化する方向が示される。高位の方にランク付けされた固有ベクトルに測定されたスペクトルを射影することにより、大幅削減ベースで初期(original)ベクトルの有効な表現がもたらされる。
【0048】
説明として、各トレーニングスペクトルは、次の行列によって表され得る。すなわち、
R=(i1,i2,…,in
ここで、ijは、全部でn個の波長のうちのj番目の波長における光強度を表す。スペクトルは、例えば、200から500個の強度測定値を含み得る(nは、200から500であり得る)。
【0049】
m個のトレーニングスペクトルが生成されると仮定すると、m個の行列Rが合成されて、次の行列を形成し得る。すなわち、
ここで、ijkは、j番目のトレーニングスペクトルのうちのk番目の光強度を表す。行列Aの各行は、トレーニングスペクトル(例えば、基板上のある1つの位置における測定値)を表わす。
【0050】
主成分分析(PCA)などの次元削減プロセスが行列Aに適用される。PCAは、A行列(m×n次元)内のデータを新しい座標系に変換する直交線形変換を実行する。それによって、データの任意の射影による最大分散が、第1の座標(第1の主成分と呼ばれる)になり、二番目に大きい分散が、第2の座標になる、などである。数学的には、この変換が、行列Aのm次元行ベクトルAi の各々を、主成分得点ti =(tk1,tk2,…,tip)の新たなベクトルにマッピングする、重みwk=(wk1,wk2,…,wkp)の一組のp次元ベクトルによって規定される。ここで、tkiは、
tki=Ai・wkである。
【0051】
各ベクトルwkは、単位ベクトルに制限される。結果として、tiの各変数は、行列Aから最大限の分散を受け継ぐ。行列Aの分解は、次のように記され得る。すなわち、
T=AW
ここで、Wは、列がATAの固有ベクトルであるn×p行列である。
【0052】
PCAの詳細は、James Ramsay及びB.W.Silvermanによる機能データ分析(Springer;第2版(2005年7月1日))、並びにI.T.Jolliffeによる主成分分析(Springer;第2版(2002年10月2日))においても議論されている。
【0053】
コントローラは、PCAの代わりに、トレーニングスペクトルのデータセットの一般化された固有分解であるSVD(特異値分解)、又は、事前に特定された数の統計的に独立な信号であって、それらの加法合成によりトレーニングスペクトルのデータセットが生じる信号が見い出される、ICA(独立成分解析)を使用することも可能である。
【0054】
次に、高位の方にランク付けされた固有ベクトルだけを保持することによって、次元数が削減され得る。具体的には、p個の主成分の代わりに、L個の主成分(Lは、0とpとの間の整数、例えば3から10の整数である)の全部が保持され得る。例えば、T行列は、例えばT行列の左端からL個の列を使用し続けることによって、m x Lの行列T’に削減され得る。同様に、W行列は、例えばW行列の左端からL個の列を保持することによって、n x Lの行列W’に削減され得る。
【0055】
別の一実施例としては、非線形次元数削減法(例えば自己符号化)が使用され得る。使用される自己符号化器は、初期入力(Nという次元数を有し得る)が多重層を通過するようにすることによって初期入力の再構築を試行するニューラルネットワークとして実装され得る。中間層のうちの1つでは、隠れニューロンの数が削減される。このネットワークは、出力層と入力層との間の差を最小化することによって、トレーニングされる。このような場合、隠れニューロンの値が削減後の次元数のスペクトルになると見なされ得る。この技法は、次元数削減がもはや線形プロセスではなくなるという事実により、PCA及び他の類似の技法を凌駕する利点をもたらし得る。
【0056】
ニューラルネットワーク120の設定手順では、ニューラルネットワーク120が、各トレーニングスペクトルの成分値及び特性値を使用してトレーニングされる。
【0057】
行列T'の各行は、トレーニングスペクトルのうちの1つに対応し、したがって、特性値に関連付けられる。ニューラルネットワーク120が、トレーニングモード(逆伝搬モードなど)で動作しているとき、ある特定の行に沿った値(t1,t2,…,tL)が、主成分に対応する各入力ノードN1,N2,…,NLに供給されると共に、この行の特性値Vは出力ノード126に供給される。各行についてこれが繰り返され得る。これは、上のak1などの値を設定する。
【0058】
例えば、PCA、SVD、ICAなどによる主成分の特定は、ニューラルネットワークのトレーニングに使用されるデータセットよりも大きなデータを使用して実行され得る。つまり、主成分の特定に使用されるスペクトルの数は、トレーニングに使用される既知の特性値を有するスペクトルの数よりも大きくなり得る。トレーニングを受けたら、システムは、動作の準備が整っているはずである。
【0059】
システムは、この時点で動作する準備が整っている。現場分光モニタシステム70を使用して、研磨中に、基板からのスペクトルが測定される。測定されたスペクトルは、列行列S=(i1,i2,…,in)によって表わされ得る。ここで、ijは、全部でn個の波長のうちのj番目の波長における光強度を表す。列行列Sは、W’行列によって乗算されて、列行列、すなわち、S・W’=Pを生成し、ここで、P=(P1,P2,…,PL)であり、Piは、i番目の主成分の成分値を表す。
【0060】
ニューラルネットワーク120が推定モードで使用されているとき、これらの値(P1,P2,…,PL)が、それぞれの入力ノードN1,N2,…,NLに、入力として供給される。その結果として、ニューラルネットワーク120は、出力ノード126において特性値(例えば、厚さ)を生成する。
【0061】
特性値CVを生成するために次元削減モジュール110及びニューラルネットワーク120によって実行される合成計算は、次のように表され得る。すなわち、
ここで、
であり、重みakiは、ニューラルネットワーク120によって設定される重みであり、ベクトルViは、次元削減モジュール110によって特定される固有ベクトルである。
【0062】
ニューラルネットワーク120のアーキテクチャは、深度と幅が変動し得る。例えば、ニューラルネットワーク120は、中間ノード124の単一列を伴って図示されているが、複数の列を含むこともある。中間ノード124の数は、入力ノード122の数と等しいことも、それよりも多いこともある。
【0063】
ニューラルネットワークについて上述したが、機械学習技法によってトレーニング可能な他のアルゴリズム、例えば、勾配ブーストツリー、又は近似最近傍法(局所性鋭敏型ハッシュなど)を使用することができる。
【0064】
上述されたように、コントローラ90は、様々な測定スペクトルと、基板10上の種々の区域12a~12c(図2参照)とを関連付け得る。各ニューラルネットワーク120の出力は、スペクトルが測定された時刻における基板10上のセンサの位置に基づいて、区域のうちの1つに属するものとして分類され得る。これにより、コントローラ90が、各区域について個別の特性値のシーケンスを生成することが可能になる。
【0065】
一連の特性値を使用して、研磨システムを制御することができる。例えば、図6を参照すると、第1の関数304は、第1の区域の特性値302のシーケンス300に適合し得、第2の関数314は、第2の区域の特性値312のシーケンス310に適合し得る。コントローラは、第1及び第2の関数が射影されてターゲット値Vに到達する時刻T1及びT2を計算し得、調整後の処理パラメータ(例えば、調整後のキャリアヘッド圧力)を計算し得る。この調整後の処理パラメータにより、複数の区域が略同時にターゲットに到達するように、区域のうちの1つが、修正後の速度(線320で示している)で研磨されることになる。
【0066】
研磨終点は、特性値がターゲット値Vに到達することを関数が示している時刻において、コントローラ90によってトリガされ得る。
【0067】
図5に戻って参照すると、トレーニングデータセット200は、トレーニングスペクトル202及び特性値204を含む。最初の及び最後の特性値D0, DNは、例えば、接触型粗面計又はエリプソメータのようなインライン又はスタンドアロンの計測学システムなどの、現場外(ex-situ、エクスシトゥ)計測測定によって生成され得る。これらの測定は、乾燥状態で、例えば、基板が研磨システムから除去され、洗浄され、乾燥された後に行われ得る。
【0068】
時刻に基づく線形補間が、特性値D1,…DN-1を生成するために使用され得るが、幾つかの用途では、線形補間が十分に正確な特性値を生成しない。
【0069】
図7は、トレーニングスペクトル用のトレーニング値を生成するためのトレーニングデータ生成システム250を示している。訓練データ生成システム250は、分光現場モニタシステム70、第2の現場モニタシステム150、現場外計測システム270、及び、これらのシステムの各々からデータを受け取り、各試験スペクトルについてラベル(例えば、厚さなどの特性値)を生成する厚さ予測モデル260を含む。
【0070】
厚さ予測モデル260は、研磨される基板のモデル、例えば、研磨動作において研磨されるべき層の数の指標、及び各層のおおよその厚さ、又は各層についての相対研磨速度を含む。第2の現場モニタシステム150からのデータに基づいて、予測モデル260は、単純な線形補間よりも正確な特性値の特定を行うことができる。
【0071】
例えば、予測モデル260は第2の現場モニタシステムからのデータから、研磨されている層間の遷移の研磨中の時刻を検出することができる。研磨の開始から遷移時刻までの特性値は、第1の勾配で線形補間することができ、遷移時刻から研磨の終了までの特性値は第2の勾配で線形補間することができ、第1の勾配と第2の勾配との間の比は、厚さ予測モデルによって記憶された各層についての相対研磨速度によって設定される。
【0072】
より具体的には、トレーニングデータセット200を生成するために、少なくとも1つの試験基板を、データ収集モードで研磨装置20によって研磨することができる。データ収集モードでの研磨中、試験基板は、分光現場モニタシステム70と第2の現場モニタシステム150との両方によってモニタされる。分光現場モニタシステム70は、スペクトルS0,S1,…,SNのシーケンスを測定し、制御システムは、スペクトルS0,S1,…,SNと、各それぞれのスペクトルについての測定の時刻T0,T1,T2,…,TNとの両方を記憶する。同様に、第2の現場モニタシステム150は、測定値X0, X1, X2, …,XMのシーケンスを生成し、制御システムは、測定値X0, X1, X2, …,XMと、各それぞれの測定についての測定の時刻T0,T1,T2,…,TMとの両方を記憶する。測定値X0, X1, X2, …, XMが表すものは、モニタシステムの種類、例えば、温度モニタシステムの温度値、モータ電流モニタシステムのモータ電流値、音響モニタシステムの音響信号強度などに依存する。
【0073】
幾つかの実施態様では、分光現場モニタシステム70と第2の現場モニタシステム150が、同じ周波数で測定値を生成する。この場合、M=Nである。しかし、これは必須ではなく、例えば、第2の現場モニタシステム150は、分光現場モニタシステム70よりも高い又は低い周波数で測定値を生成することができる。
【0074】
図8を参照すると、試験スペクトルS0,S1,S2,…,SN、各試験スペクトルの測定の時刻T0,T1,T2,…,TN、測定値X0,X1,X2,…,XM、各測定のそれぞれの時刻t0,t1,t2,…,tM、並びに第1及び/又は最後の特性値D0,DNが、現場モニタシステム70、第2の現場モニタシステム150、及び現場外計測システム270から、予測モデル260によって受け取られる。事前研磨測定が利用できない場合、事前に設定された一貫した入る値(incoming value)をラベルに使用することができる。同様に、研磨後測定が利用できない場合、事前に設定された一貫した出る値(outgoing value)をラベルに使用することができる。いずれにせよ、このデータから、予測モデル270は、測定時間T0,T1,T2,…,TNにおいて生じたであろうトレーニング特性値D0,D1,…,DNを生成し、各トレーニング値D0,D1,…,DNを、それぞれの試験スペクトルS0,S1,S2,…,SNに関連付ける。それぞれの試験スペクトルは、それぞれの時刻T0,T1,T2,…,TNに測定されたものである。
【0075】
幾つかの実施態様では、予測モデル270が、測定値X0,X1,X2,…,XMを解析して、研磨プロセスを時間によって2つ以上の時間帯に区分けする。予測モデル270は、例えば、測定値のシーケンスの一次導関数が、閾値を超えたことを検出することによって、測定値の急激な変化を検出することによって、区間の間の遷移時刻を計算し得る。例えば、図9は、トルク又はモータ電流を表すX0,X1,X2,…,XMを用いて、モータトルクの例示的なグラフ260を時間の関数として示している。グラフは、高度に傾斜した領域212を含む。測定値のシーケンスX0,X1,X2,…,XMの一次導関数における最大値(又は最小値)を検出することによって、予測モデル270は、2つの時間帯の間の遷移のための時刻tAを割り当てることができる。
【0076】
第1の時間区間内の、例えば遷移時間tA以前の特性値D0,D1,…,Daは、第1の関数に従って厚さ予測モデルによって計算することができ、一方、第2の時間区間内の、例えば遷移時間tA後の特性値Da+1,Da+2,…,DNは、別の第2の関数に従って厚さ予測モデルによって計算することができる。第1及び第2の関数は、異なる勾配を有する線形関数であり得るが、他の関数、例えば、高次多項式関数が可能である。
【0077】
幾つかの実施態様では、予測モデルが、事前設定された研磨速度比、例えば経験的に導出された比を記憶している。それは、異なる時間区間についての研磨速度の比を示す。例えば、予測モデルが、第2の時間帯における研磨速度が第1の時間帯における研磨速度のR倍であることを示す場合、予測モデルは、時間T0においてD=D0、時間TNにおいてD=DNという制約の下でDについての値を生成し、Dは、T0からtAまで第1の線形関数であり、Dは、tAからTNまで第2の線形関数であり、第2の線形関数の勾配は、第1の線形関数のR倍である。これは、それぞれの時間T0,T1,T2,…,TNにおけるトレーニング特性値D0,D1,D2,…,DNを生成するのに十分な情報である。
【0078】
幾つかの実施態様では、予測モデルが、それぞれの時間帯の計測値X0,X1,X2,…,XMに基づいて研磨速度比を生成する。例えば、予測モデルは、第1の時間帯における測定の平均値XAと、第2の時間帯における測定の平均値XBとを計算することができる。次いで、これらの値を比較して、どの時間区間がより速く研磨されたか、及び研磨速度比を推測することができる。例えば、第2の時間区間(TAからtN)についての平均モータトルクが、第1の時間区間(T0からta)よりも高い場合、予測モデルは、より多くの材料が第2の時間区間中に研磨されたと推測することができる。同様に、より高い温度は、より高い研磨速度を示し得、より高い音響信号は、より高い研磨速度を示し得る。予測モデルは、XAとXBの間の相対的な差異に基づいて、研磨速度比を生成することができる。
【0079】
幾つかの実施態様では、予測モデルが、測定値X0,X1,X2,…,XMを、各測定についてそれぞれの正規化された研磨速度に変換する関数を含む。これは、線形補間よりもむしろ研磨速度の連続的な変化を効果的に可能にする。
【0080】
上述された説明は、単一の試験基板の研磨内の時間区間に焦点を当てているが、複数の試験基板が試験スペクトルを生成するために使用される場合、異なる試験基板の研磨間で同様の比較を行うことができる。
【0081】
上記の手法のいずれかについて、試験特性値D0,D1,…,DNが、それぞれの時刻T0,T1,T2,…,TNについて生成されると、予測モデルは、それぞれの特性値をそれぞれの試験スペクトルS0,S1,S2,…,SNと対にすることができる。それぞれの試験スペクトルは、それぞれの時刻T0,T1,T2,…,TNで測定されたものである。このデータは、次いで、ニューラルネットワーク120(図7参照)をトレーニングするために使用されるトレーニングデータ200(図5参照)として出力され得る。
【0082】
本発明の複数の実施形態及び本明細書で説明されている機能的な動作の全ては、本明細書に開示されている構造的な手段、及び、構造的な均等物、或いはこれらの組み合わせを含む、デジタル電子回路、又はコンピュータソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア内に実装され得る。本発明の複数の実施形態は、1以上のコンピュータプログラム製品、すなわち、1以上のコンピュータプログラムとして実装され得る。それは、データ処理装置、例えば、プログラマブルプロセッサ、コンピュータ、又は複数のプロセッサ若しくはコンピュータによって実行されるように、或いははそれらの動作を制御するように、機械可読記憶媒体内に有形に具現化される。(プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、又はコードとしても知られている)コンピュータプログラムは、コンパイル又は翻訳された言語を含む、任意の形のプログラミング言語で書くことができ、また独立型プログラムとして、又はモジュール、構成要素、サブルーチン、若しくは計算環境で使用するのに適している他のユニットとして配置することを含め、任意の形で配置することができる。コンピュータプログラムは、必ずしもファイルに対応するわけではない。プログラムは、他のプログラム又はデータを保持するファイルの一部、問題のプログラム専用の単一ファイル、又は複数の調整されたファイル(例えば、1以上のモジュール、サブプログラム、若しくはコードの一部を記憶するファイル)に記憶することができる。コンピュータプログラムは、1つのコンピュータ、又は1つのサイトの複数のコンピュータで実行されるように配備することも、複数のサイトに分散させて通信ネットワークによって相互接続することもできる。
【0083】
本明細書で説明されるプロセス及び論理フローは、入力データで動作し出力を生成することによって機能を実行するために1以上のコンピュータプログラムを実行する1以上のプログラマブルプロセッサによって実行することができる。プロセス及び論理フローは、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)又はASIC(application specific integrated circuit:特定用途向け集積回路)といった特殊用途の論理回路によって実施されてもよく、且つ、装置が、かかる特殊用途の論理回路として実装されることも可能である。
【0084】
上記の研磨装置及び方法は、様々な研磨システムに対して適用することができる。研磨パッドとキャリアヘッドとのいずれか又は両方が、研磨面と基板との間に相対運動を起こすよう動き得る。例えば、プラテンは、回転するのではなく軌道周回してよい。研磨パッドは、プラテンに固定された円形状(又は何らかの他の形状)のパッドであり得る。研磨システムは、例えば、研磨パッドが連続的であるか、又は直線的に移動するリール・ツー・リール・ベルトである、直線的な研磨システムとすることができる。研磨層は、標準的な(例えば、フィラーを伴う又は伴わないポリウレタンの)研磨材料、軟性材料、又は固定研磨材料(fixed-abrasive material)であり得る。相対的な配置に関する用語が、構成要素の相対的な配向又は配置に使用されているが、研磨面及び基板は、重力に対して垂直な配向又はその他の配向に保持できることを理解されたい。
【0085】
上述の説明は、化学機械研磨に焦点を当ててきたが、制御システムは、他の半導体処理技術、例えば、エッチング又は堆積(例えば、化学気相堆積)に適応させることができる。加えて、この技法は、インシトゥ・モニタではなく、インラインの又はスタンドアロンの計測システムにも適用され得る。
【0086】
本発明の特定の複数の実施形態について説明してきた。他の複数の実施形態が、下記の特許請求の範囲内にある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9