(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】接続端子及び端子付き電線・ケーブル
(51)【国際特許分類】
H01R 4/18 20060101AFI20241111BHJP
H02G 15/02 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
H01R4/18 A
H02G15/02
(21)【出願番号】P 2023053425
(22)【出願日】2023-03-29
【審査請求日】2024-07-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591086843
【氏名又は名称】古河電工産業電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】桜井 裕士
(72)【発明者】
【氏名】雨宮 久弥
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-039127(JP,U)
【文献】特開2014-164847(JP,A)
【文献】米国特許第05499448(US,A)
【文献】特開平09-252515(JP,A)
【文献】特開昭57-107578(JP,A)
【文献】実開平06-054266(JP,U)
【文献】特開2008-148418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/18
H02G 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体を絶縁層で被覆した電線・ケーブルの前記導体が挿入される接続筒部と前記電線・ケーブルの前記導体を接続目的箇所に接続する被接続部とを一端部と他端部とに有する接続端子であって、
前記接続筒部は、
前記導体が挿入される前の状態で、前記導体の挿入方向の深部から開放端部に向かって並んだ、第一筒部と当該第一筒部よりも内径が大きな第二筒部と
、前記第一筒部と前記第二筒部との間に内径が漸次変化する移行部とを有し、
少なくとも前記第二筒部における最深部を前記挿入方向にまたいで内側観察用の開口又はスリットが前記接続筒部に形成されて
おり、
当該開口又はスリットは、前記移行部を介して前記第一筒部と離隔しており、
前記第一筒部をかしめて前記電線・ケーブルの前記導体と接続されることを特徴とする接続端子。
【請求項2】
前記開口又はスリットは、前記移行部と前記第二筒部との境界をまたいで形成されていることを特徴とする請求項1に記載の接続端子。
【請求項3】
前記開口又はスリットが周方向に複数設けられていることを特徴とする請求項1に記載の接続端子。
【請求項4】
前記第二筒部の内周面に、当該内周面から内側に突出した突出部を有することを特徴とする請求項1に記載の接続端子。
【請求項5】
導体を絶縁層で被覆した電線・ケーブルの前記導体が挿入される接続筒部と前記電線・ケーブルの前記導体を接続目的箇所に接続する被接続部とを一端部と他端部とに有する接続端子であって、
前記接続筒部は、前記導体の挿入方向の深部から開放端部に向かって並んだ、第一筒部と当該第一筒部よりも内径が大きな第二筒部とを有し、
少なくとも前記第二筒部における最深部を前記挿入方向にまたいで内側観察用の開口又はスリットが前記接続筒部に形成されており、
前記第二筒部に装着可能であって、当該第二筒部の内周よりも内側に突出した突出部を有する第一アタッチメントを有することを特徴とする接続端子。
【請求項6】
導体を絶縁層で被覆した電線・ケーブルと、前記導体が挿入される接続筒部と前記電線・ケーブルの前記導体を接続目的箇所に接続する被接続部とを一端部と他端部とに有する接続端子とを有する端子付き電線・ケーブルであって、
前記接続筒部は、
前記導体が挿入される前の状態で、前記導体の挿入方向の深部から開放端部に向かって並んだ、第一筒部と当該第一筒部よりも内径が大きな第二筒部と
、前記第一筒部と前記第二筒部との間に内径が漸次変化する移行部とを有し、
前記第一筒部は前記導体の挿入領域、前記第二筒部は前記絶縁層の挿入領域であり、
前記導体の挿入方向先端部を前記第一筒部の最深部まで挿入した状態で、前記絶縁層の挿入方向先端部を視認可能とする内側観察用の開口又はスリットが前記接続筒部に設けられて
おり、
当該開口又はスリットは、前記移行部を介して前記第一筒部と離隔しており、
前記第一筒部をかしめて前記電線・ケーブルの前記導体と接続されることを特徴とする端子付き電線・ケーブル。
【請求項7】
導体を絶縁層で被覆した電線・ケーブルと、前記導体が挿入される接続筒部と前記電線・ケーブルの前記導体を接続目的箇所に接続する被接続部とを一端部と他端部とに有する接続端子とを有する端子付き電線・ケーブルであって、
前記接続筒部は、前記導体の挿入方向の深部から開放端部に向かって並んだ、第一筒部と当該第一筒部よりも内径が大きな第二筒部とを有し、
前記第一筒部は前記導体の挿入領域、前記第二筒部は前記絶縁層の挿入領域であり、
前記導体の挿入方向先端部を前記第一筒部の最深部まで挿入した状態で、前記絶縁層の挿入方向先端部を視認可能とする内側観察用の開口又はスリットが前記接続筒部に設けられており、
前記絶縁層の挿入方向先端部に装着可能であって、当該絶縁層の外周よりも外側に突出した突出部を有する第二アタッチメントを有することを特徴とする端子付き電線・ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続端子及び端子付き電線・ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
電線・ケーブルの導体を端子台やブレーカー等の盤内の設備等につなぐ際、通常、導体の先端に接続端子を取り付けてから接続が行われる。
そして、電線・ケーブルの導体に接続端子を取り付ける際には、接続端子の接続筒部に導体を挿入し、ダイスで、挿入した電線・ケーブルの導体ごと接続筒部をかしめて電気的、機械的に接続を行っていた。
【0003】
電線・ケーブルに対する接続端子の取り付けは、電線・ケーブルの絶縁層の被覆を除去し、露出した導体を接続筒部に挿入することで行われる。
その場合、接続筒部の後端部から導体が露出していると、接続端子の取り付け後における電線・ケーブルの取り回し等の際に露出部分に曲げや揺れ、捻回が生じやすくなり、導体の破断が生じやすくなることが懸念される。
【0004】
このため、従来の電線・ケーブルに対する接続端子の取り付けの際には、絶縁層の先端部までを接続筒部に挿入してかしめが行われていた(例えば特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、電線・ケーブルに対する接続端子の取り付けの際に、絶縁層の先端部を接続筒部に挿入すると、電線・ケーブルがどこまで挿入されているかが分からず、導体の挿入不足による接続不良が生じるおそれがあった。
【0007】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、電線・ケーブルに対する接続端子の良好な接続を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の問題を解決するために、本発明は、接続端子において、
導体を絶縁層で被覆した電線・ケーブルの前記導体が挿入される接続筒部と前記電線・ケーブルの前記導体を接続目的箇所に接続する被接続部とを一端部と他端部とに有する接続端子であって、
前記接続筒部は、前記導体が挿入される前の状態で、前記導体の挿入方向の深部から開放端部に向かって並んだ、第一筒部と当該第一筒部よりも内径が大きな第二筒部と、前記第一筒部と前記第二筒部との間に内径が漸次変化する移行部とを有し、
少なくとも前記第二筒部における最深部を前記挿入方向にまたいで内側観察用の開口又はスリットが前記接続筒部に形成されており、
当該開口又はスリットは、前記移行部を介して前記第一筒部と離隔しており、
前記第一筒部をかしめて前記電線・ケーブルの前記導体と接続されることを特徴とする。
【0009】
上記の問題を解決するために、本発明は、端子付き電線・ケーブルにおいて、
導体を絶縁層で被覆した電線・ケーブルと、前記導体が挿入される接続筒部と前記電線・ケーブルの前記導体を接続目的箇所に接続する被接続部とを一端部と他端部とに有する接続端子とを有する端子付き電線・ケーブルであって、
前記接続筒部は、前記導体が挿入される前の状態で、前記導体の挿入方向の深部から開放端部に向かって並んだ、第一筒部と当該第一筒部よりも内径が大きな第二筒部と、前記第一筒部と前記第二筒部との間に内径が漸次変化する移行部とを有し、
前記第一筒部は前記導体の挿入領域、前記第二筒部は前記絶縁層の挿入領域であり、
前記導体の挿入方向先端部を前記第一筒部の最深部まで挿入した状態で、前記絶縁層の挿入方向先端部を視認可能とする内側観察用の開口又はスリットが前記接続筒部に設けられており、
当該開口又はスリットは、前記移行部を介して前記第一筒部と離隔しており、
前記第一筒部をかしめて前記電線・ケーブルの前記導体と接続されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電線・ケーブルに対する接続端子の良好な接続を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は第1実施形態である端子付き電線・ケーブルの斜視図である。
【
図2】
図2は端子付き電線・ケーブルの中心線に沿った断面図である。
【
図3】
図3は端子付き電線・ケーブルの中心線に沿った断面図であって、開口の位置の異なる例を示している。
【
図4】
図4は接続端子を開放端部側から見た斜視図である。
【
図5】
図5は突出部が異なる接続端子を開放端部側から見た斜視図である。
【
図6】
図6は突出部が異なる接続端子を有する端子付き電線・ケーブルの中心線に沿った断面図である。
【
図7】
図7は突出部が異なる接続端子を開放端部側から見た斜視図である。
【
図8】
図8は突出部を別部材とした接続端子を有する端子付き電線・ケーブルの中心線に沿った断面図である。
【
図9】
図9は第2実施形態にかかる接続端子の斜視図である。
【
図12】
図12は第一アタッチメントの他の例の斜視図である。
【
図13】
図13は第3実施形態である接続端子の斜視図である。
【
図14】
図14は第4実施形態である端子付き電線・ケーブルの分解斜視図である。
【
図15】
図15は第二アタッチメントにストッパを設けた例を示す軸方向断面図である。
【
図16】
図16は第5実施形態である端子付き電線・ケーブルの斜視図である。
【
図17】
図17は端子付き電線・ケーブルの軸方向に沿った断面図である。
【
図18】
図18は第6実施形態である端子付き電線・ケーブルの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明に係る端子付き電線・ケーブルについて実施の形態を例示して説明する。ただし、以下に述べる各実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の各実施形態や図示例に限定するものではない。
【0013】
[第1実施形態]
図1は第1実施形態である端子付き電線・ケーブル1の斜視図、
図2は電線・ケーブル2の中心線に沿った断面図である。
図示のごとく、端子付き電線・ケーブル1は、電線・ケーブル2と接続端子3とを有する。
【0014】
[電線・ケーブル]
電線・ケーブル2は、導体21を絶縁層22で被覆してなる。
電線・ケーブル2の導体21の材料には、銅又は銅合金、あるいはアルミニウム又はアルミニウム合金が用いられている。導体21は、上記の材料からなる複数の素線が撚り合わされてなる。
絶縁層22は、絶縁材料(例えば、架橋ポリエチレン、エチレンプロピレンゴム、ポリ塩化ビニル)からなる。絶縁層22は、導体21の外周全体を全長に渡って被覆する。なお、絶縁層22は、その外周が図示しないシースにより覆われていてもよい。
但し、電線・ケーブル2に接続端子3を取り付ける場合には、接続端部において、およそ既定の長さで絶縁層22が剥離除去され、既定の長さで導体21が露出した状態とされる。
【0015】
[接続端子:全体]
接続端子3は、電線・ケーブル2の導体21を端子台等の接続目的箇所に電気的に接続するための被接続部31を一端部側に、電線・ケーブル2の導体21が挿入される接続筒部32を他端部側に有する。
以下の説明では、接続筒部32の中心線方向を「軸方向」、中心線回りの円周方向を「周方向」、中心線に直交する方向を「径方向」というものとする。
【0016】
接続端子3は、銅又は銅合金、あるいはアルミニウム又はアルミニウム合金によって全体が一体的に形成されている。接続端子3は、電線・ケーブル2の導体21と金属材料が一致してもよいし、異種金属であってもよい。例えば、両方が銅又は銅合金、あるいはアルミニウム又はアルミニウム合金であってもよい。また、一方が銅又は銅合金、他方がアルミニウム又はアルミニウム合金であってもよい。
【0017】
[接続端子:被接続部]
被接続部31は、軸方向Cに沿って接続筒部32から離隔する方向に延出された羽子板部311と、接続筒部32に連接された柱状部312と、羽子板部311と柱状部312とを連結する連結部313とを有する。
【0018】
柱状部312は、接続筒部32と同心であって接続筒部32より小径且つ中実の円柱状を呈する。柱状部312は、接続筒部32の先端部と一定的に連結されている。
【0019】
羽子板部311は、角のない矩形の平板状を呈し、その平板面は軸方向Cに平行である。羽子板部311の中央には板面を垂直に貫通する円孔311aが形成されている。この円孔311aにネジを通して締結を行い、接続端子3を端子台等の電線・ケーブル2の接続目的箇所に電気的、機械的に接続する。
【0020】
連結部313は、柱状部312の先端から軸方向C側であって半径方向外側に向かって斜めに延びており、その先端部で羽子板部311に連結されている。従って、羽子板部311は、接続筒部32の中心線よりも半径方向外側に偏った配置となっている。
【0021】
[接続端子:接続筒部]
接続筒部32は、被接続部31側の第一筒部321と、第一筒部321よりも内径及び外径の大きな第二筒部322と、これらの間に位置する移行部323とを有する。第一筒部321と移行部323と第二筒部322とは、同心且つ一体的に形成されている。
【0022】
第一筒部321は、内径及び外径が一定な円筒体であって、被接続部31側の端部が閉塞されている。この閉側端部の外側に被接続部31の柱状部312が連接されている。
第一筒部321は、内径が電線・ケーブル2の導体21の外径よりわずかに大きく設定されており、導体21を容易に挿入することができる。即ち、第一筒部321の内側は、導体21の挿入領域となっている。導体21は、先端部が第一筒部321の閉側端部に突き当たるまで挿入される。
【0023】
移行部323は、一端部が第一筒部321に連結され、他端部が第二筒部322に連結されている。
そして、移行部323の一端部は、内径及び外径が第一筒部321に一致し、他端部は内径及び外径が第二筒部322に一致している。移行部323は、一端部から他端部にかけて内径及び外径が漸増している。従って、移行部323は、外周面が外から見た円錐面となり、内周面が内側から見た円錐面となっている。
【0024】
第二筒部322は、内径及び外径が一定な円筒体であって、一端部が移行部323に連結されている。また、第二筒部322の他端部は、開放されており、開放端部の内周部には、面取り部324が形成されている。この開放端部から電線・ケーブル2が挿入される。
第二筒部322は、内径が電線・ケーブル2の絶縁層22の外径よりわずかに大きく設定されている。即ち、第二筒部322の内側は、絶縁層22の挿入領域となっている。
第二筒部322により、接続端子3に対して、導体21を露出させた電線・ケーブル2を絶縁層22まで挿入することができる。
【0025】
電線・ケーブル2は、接続端部の絶縁層22が剥離除去され、導体21は、接続筒部32の第一筒部321の内側の軸方向Cの深さと移行部323の軸方向Cの長さとの合計と略一致する長さで露出している。
この前提で、電線・ケーブル2が接続端子3に対して、導体21の先端部が第一筒部321の最深部に突き当たるまで挿入されると、絶縁層22が第二筒部322内に挿入される。さらに、軸方向Cについて、絶縁層22の先端部は、移行部323と第二筒部322の境界位置Bに略一致した配置となる。
これが、軸方向Cにおける接続端子3に対する電線・ケーブル2の適正な位置である(以下、電線・ケーブル2の適正位置という)。
【0026】
そして、第二筒部322における最深部(第一筒部321側の端部)、即ち、第二筒部322と移行部323との境界位置Bを軸方向Cにまたぐ配置で、内側観察用の開口325が接続筒部32に形成されている。
開口325は、径方向外側から見て長辺が軸方向Cに沿った矩形であり、同一形状および同一寸法のままで径方向に沿って接続筒部32の内部まで貫通形成されている。
また、開口325は、軸方向Cについて同一の配置で周方向に均一間隔で三つ設けられている(
図1及び
図2は二つのみ図示)。開口325の数は、一つ以上であればよく、数が多ければ、多方向から内部を視認可能である。
【0027】
開口325は、前述した配置により、電線・ケーブル2が適正位置まで挿入されると、絶縁層22の先端部を外部から視認させることができる。
仮に、電線・ケーブル2の挿入が不十分な場合には、開口325からは導体21しか視認できず、これによって、挿入が不十分と認識可能である。
また、電線・ケーブル2の絶縁層22の剥離除去による導体21のむき出し寸法が適正な長さより長過ぎた場合には開口325からは導体21しか視認できない。さらに、電線・ケーブル2の絶縁層22のむき出し寸法が短か過ぎた場合には開口325からは絶縁層22しか視認できない。つまり、開口325は、電線・ケーブル2の導体21のむき出し寸法が適正な長さから外れていることも認識可能である。
【0028】
なお、この場合、開口325の軸方向Cの長さは、絶縁層22の適正な位置から軸方向Cの両側に離れ過ぎない範囲とすることが好ましい。
ここでいう「絶縁層22の適正な位置」とは、むき出し寸法が適正な長さの導体21を第一筒部321の最深部まで挿入した場合の絶縁層22の先端部の位置を示すものとする。
また、接続筒部32の外周面であって開口325の周囲に「絶縁層22の適正な位置」を示すラインやマークを付してもよい。これにより、挿入の適否の認識及びむき出し寸法の適否の認識をより容易且つ有効に行うことができる。
【0029】
なお、開口325の配置は、第二筒部322と移行部323との境界位置Bを軸方向Cにまたぐことが好ましいが、これに限定されない。
例えば、
図3に示すように、開口325は、軸方向Cに長さを有するので、径方向外側から軸方向に沿って見下ろした場合に、開口325よりも開放端部側に位置する電線・ケーブル2の絶縁層22を視認することが可能である。
【0030】
このように、開口325の位置は、適正な長さで絶縁層22が剥離除去された電線・ケーブル2に対して、絶縁層22の先端部が視認可能な配置であればよい。
従って、開口325は、境界位置Bをまたがず、境界位置Bよりも幾分前側(接続筒部32に対する被接続部31側)に配置することも可能である。
【0031】
また、開口325の少なくとも一つは、接続筒部32の外周面における上側に設けられている。
なお、接続端子3において、径方向に平行であって、接続端子3の中心線に対する羽子板部311側が「下」、その反対側を「上」とする。
【0032】
接続端子3と電線・ケーブル2のかしめによる接続作業は、羽子板部311の径方向の外側となる面を下に向けて行われる。
その際、開口325の一つが、接続筒部32の外周面における上側にあれば、かしめによる接続作業時に、電線・ケーブル2の挿入位置が適正であるか否かを開口325から容易に視認することが可能であり、作業性の向上を図ることが可能である。
【0033】
図4は接続端子3を開放端部側から見た斜視図である。この図のように、接続端子3の第二筒部322の内周面には、電線・ケーブル2の絶縁層22に当接又は圧接して保持するための突出部326が形成されている。
突出部326は、第二筒部322の内周面において内側に突出した略半球状の突起である。
突出部326は、第二筒部322の内周面において、周方向に均一間隔で複数並んで設けられている。本実施形態では、突出部326を三つ備える場合を例示する。
なお、突出部326は、半球状に限らず、円錐台状、断面多角形状等であってもよい。
【0034】
突出部326は、内側に突出している。さらに、三つの突出部326の内接円の径は、電線・ケーブル2の絶縁層22の外径と等しいかこれより僅かに小さい。
これにより、第二筒部322内に挿入された電線・ケーブル2の絶縁層22の外周面に当接又は圧接し、圧力と摩擦力によって電線・ケーブル2の曲げ、捻回、揺れを抑制することができる。
また、電線・ケーブル2を接続する設備には、例えば電動機など振動を発生するものがある。さらに、車体内部など、配線する環境から振動の影響を受けることもある。こうした接続先や外部環境から振動が伝わることによる電線・ケーブル2の振動も抑制する。このため、接続筒部32内の導体21に曲げ、捻回、揺れ、振動が伝わることを抑制することができる。
特に、突出部326を複数設けた場合には、周囲から絶縁層22を保持し、より効果的に電線・ケーブル2の曲げ、捻回、揺れ、振動を抑制して接続筒部32内の導体21に曲げ、捻回、揺れ、振動が伝わることを抑制する。
【0035】
なお、突出部326は、突起状でなくともよい。例えば、
図5に示すように、突出部326は、第二筒部322の内周面を一周する凸条から構成してもよい。
図5では、軸方向Cに沿った断面形状が略半円状ものを例示しているが、断面形状は、円錐台状、多角形状等であってもよい。
【0036】
また、
図6に示すように、突出部326は、第二筒部322の開放端部において、面取り部324に隣接して第二筒部322の内周面を一周する凸条としてもよい。この突出部326は、面取り部324の円錐面を中心側に延長した円錐面を有している。
図5及び
図6に示す突出部326は、周囲全体から絶縁層22を当接又は圧接保持し、より効果的に電線・ケーブル2の曲げ、捻回、揺れ、振動を抑制して接続筒部32内の導体21に曲げ、捻回、揺れ、振動が伝わることを抑制する。
【0037】
また、
図7に示すように、突出部326は、第二筒部322の内周面上で軸方向に沿った凸条から構成してもよい。この場合も、突出部326は、周方向に均一間隔で複数設けてもよい。突出部326の個数は、一以上であればよいが、本実施形態では、三つ設ける場合を例示する(
図7では二つのみ図示)。
また、
図7では、軸方向Cに垂直な断面形状を略半円状としているが、半円状に限らず、円錐台状、多角形状等としてもよい。
図7に示す突出部326は、軸方向C沿って広範囲で絶縁層22を当接又は圧接保持し、より効果的に電線・ケーブル2の曲げ、捻回、揺れ、振動を抑制して接続筒部32内の導体21に曲げ、捻回、揺れ、振動が伝わることを抑制する。
【0038】
また、
図8に示すように、第二筒部322の内周面に一体的に形成された突出部326に替えて、別部材からなる突出部326を第二筒部322の内周面に設けてもよい。
その場合、Oリングを突出部326として利用してもよい。第二筒部322の内周面を一周して径方向外側に凹状となるリング溝327を形成し、そこにOリングからなる突出部326を格納する。Oリングからなる突出部326は、内径が電線・ケーブル2の絶縁層22の外径より幾分小さいものが好ましい。
これにより、
図8に示す突出部326は、周囲全体から絶縁層22を圧接保持し、より効果的に電線・ケーブル2の曲げ、捻回、揺れ、振動を抑制して接続筒部32内の導体21に曲げ、捻回、揺れ、振動が伝わることを抑制する。また、Oリングからなる突出部326は、第二筒部322と電線・ケーブル2の絶縁層22との間で相互に密接し、これらの間の水密を図るようにシールする。このため、接続端子3と電線・ケーブル2の導体21との接合部に対する水分の進入を抑制し、腐食等の発生を低減することが可能となる。特に、接続端子3と電線・ケーブル2の導体21とが異種金属である場合に水分の進入による異種金属腐食を効果的に抑制することができる。
【0039】
[電線・ケーブルと接続端子の接続作業]
電線・ケーブル2と接続端子3の接続作業について説明する。
まず、電線・ケーブル2の接続端部側において、絶縁層22を規定の長さで剥離除去する。除去する長さは、前述したように、接続端子3の第一筒部321の最深部から移行部323と第二筒部322の境界位置Bまでの軸方向長さと大体一致させる。
【0040】
次いで、接続端子3の羽子板部311の径方向外側面を下に向けた状態とする。そして、導体21が露出した状態の電線・ケーブル2を接続端子3の開放端部から奥に向かって挿入する。電線・ケーブル2は、導体21の先端部が第一筒部321の最深部に突き当たる位置まで挿入する。
絶縁層22の先端部は、接続端子3の内部において、境界位置Bの近傍に達するので、開口325を通じて絶縁層22の先端部を視認することができる。
【0041】
開口325により、電線・ケーブル2の導体21の先端部が第一筒部321の最深部まで適正に挿入されたこと及び導体21のむき出し寸法が適正であることを視認したら、接続端子3の第一筒部321を上下方向からかしめて電線・ケーブル2の導体21と接続端子3とを電気的、機械的に接続する。
なお、かしめは、圧縮による方法と圧着による方法とのいずれを選択してもよい。
【0042】
圧縮の場合、第一筒部321の外径に応じて一回又は複数回に分けて、上下一対のダイスなどの工具を用いて周囲全体から均等に加圧して、断面形状が多角形(例えば六角形)となるように圧縮変形させて電線・ケーブル2の導体21と接続端子3とを機械的、電気的に接続する。
圧着の場合、凹状のダイスに凸状のダイスで第一筒部321を挟んで上下から押し込み、電線・ケーブル2の導体21と接続端子3とを機械的、電気的に接続する。
【0043】
また、導体21又は接続端子3がアルミニウム又はアルミニウム合金である場合は、予め、表面に生じた酸化皮膜を除去する作業を行う。また、酸化皮膜の再生を防止するために、鉱油、グリス等からなるコンパウンドを塗布又は接続端子3の内部に封入することが好ましい。コンパウンドは、導体21と接続端子3の間への水分の進入も防止することができる。コンパウンドには、酸化皮膜を破壊する金属微粒子(例えば、亜鉛微粒子)を含ませてもよい。
【0044】
なお、接続端子3の第二筒部322内には、電線・ケーブル2の絶縁層22が挿入された状態で電線・ケーブル2と接続端子3とが接続される。
この場合、第二筒部322に対してもかしめを行ってもよい。但し、第二筒部322内に突出部326が設けられている場合には、絶縁層22の軸方向及び径方向の移動が規制されるので、第二筒部322に対するかしめを省略してもよい。
【0045】
[第1実施形態の技術的効果]
上記端子付き電線・ケーブル1では、接続端子3に内側観察用の開口325を設けている。さらに、導体21を適正な長さで露出させて導体21の挿入方向先端部を第一筒部321の最深部まで挿入した状態で、絶縁層22の挿入方向先端部が視認可能な配置で開口325が設けられている。
このため、端子付き電線・ケーブル1の導体21を適正な長さで露出させている場合には、導体21の挿入方向先端部が第一筒部321の最深部まで挿入されると、絶縁層22の先端部と導体21の境界が開口325から視認されるため、導体21が接続端子3の第一筒部321の最深部まで挿入されていることを容易に確認することが可能である。
これにより、導体21の挿入不十分による電線・ケーブル2と接続端子3との接続不良の発生を低減し、良好な接続を行うことが可能となる。
また、端子付き電線・ケーブル1の導体21のむき出し寸法が適正長さよりも短かった場合には、絶縁層22が奥まで入り過ぎとなる。このため、開口325からは絶縁層22しか視認することができず、導体21のむき出し寸法が短過ぎることを認識することができる。
さらに、端子付き電線・ケーブル1の導体21のむき出し寸法が適正長さよりも長かった場合には、開口325からは導体21しか視認することができず、導体21のむき出し寸法が長過ぎることを認識することができる。
これにより、導体21のむき出し寸法が不適切であることを認識することが可能となる。
従って、導体21のむき出し寸法の不足による電線・ケーブル2と接続端子3との接続不良の発生も低減し、良好な接続を行うことが可能となる。また、導体21のむき出し寸法が長過ぎることによる接続筒部32内での拘束力の低下による曲げ、捻回、揺れ、振動の抑制効果の低下の発生を低減することが可能となる。
さらに、接続端子3は、第二筒部322に電線・ケーブル2の絶縁層22を挿入することができる。このため、接続端子3から導体21が露出せず、電線・ケーブル2の曲げ、捻回、揺れ、振動を抑制して接続筒部32内の導体21に曲げ、捻回、揺れ、振動が伝わることを抑制する。従って、導体21の断線を抑制することが可能である。
【0046】
また、開口325は、第二筒部322における最深部(境界位置B)を挿入方向(軸方向C)にまたいで接続筒部32に形成されている。このため、接続端子3に電線・ケーブル2が適正に挿入されると、絶縁層22の先端部が開口325から視認可能となり、適正な挿入状態を容易に確認することが可能である。また、導体21のむき出し寸法の短過ぎ、長過ぎの発生も確認することが可能である。
【0047】
また、接続端子3は、第一筒部321と第二筒部322との間に移行部323を有しているので、第一筒部321と第二筒部322との間に段差を排除することができ、接続端子3に電線・ケーブル2を円滑に挿入することが可能となる。
【0048】
また、接続端子3は、接続筒部32に対して、開口325が周方向に複数設けられているので、電線・ケーブル2の適正な挿入状態の確認を多方向から行うことが可能となる。このため、電線・ケーブル2の挿入不足、導体21のむき出し寸法の不適正状態の発生を低減し、接続端子3との接続不良をより効果的に低減することが可能となる。
【0049】
また、接続端子3は、第二筒部322の内周面から内側に突出した突出部326を有している。これにより、接続端子3に対して電線・ケーブル2の絶縁層22を保持して抜けを抑制することができる。さらに、第二筒部322内での電線・ケーブル2の曲げ、捻回、揺れ、振動を抑制して、導体21の断線を抑制することが可能である。
さらにこれらにより、接続端子3と電線・ケーブル2を接続する場合に、第一筒部321のみに対してかしめを行えば、第二筒部322に対してはかしめを省略することが可能となる。従って、接続時の作業性の向上を図ることが可能となる。
【0050】
[第2実施形態]
図9は第2実施形態である接続端子3Aの斜視図である。なお、接続端子3Aについては、接続端子3と異なる点について主に説明し、重複する構成については接続端子3と同一の符号を付して説明を省略する。
接続端子3Aは、前述した電線・ケーブル2に接続可能であって、電線・ケーブル2と接続することにより端子付き電線・ケーブルを構成する。
【0051】
接続端子3Aは、端子本体30Aと第一アタッチメント33Aとを有する。
端子本体30Aは、突出部326を有さない点を除いて前述した接続端子3と同一の構成である。
【0052】
図10は第一アタッチメント33Aの斜視図、
図11は軸方向Cに沿った断面図である。
第一アタッチメント33Aは、端子本体30Aの第二筒部322の開放端部に装着可能であって、当該第二筒部322の内周面よりも内側に突出した突出部331Aを有する。この突出部331Aは、前述した接続端子3の突出部326と同様に機能する。
【0053】
第一アタッチメント33Aは、突出部331Aと外側筒部332Aと内側筒部333Aと端面部334Aと円錐面部335Aとを有する。第一アタッチメント33Aは、これらの構成が樹脂やゴム等の材料から一体的に形成されている。但し、第一アタッチメント33Aの形成材料について制限はなく、例えば、金属から形成してもよい。
【0054】
外側筒部332Aは円筒体である。その内径は、端子本体30Aの第二筒部322を挿入可能な大きさである。
端面部334Aは、端子本体30Aに対する装着時に第二筒部322の開放側の端面に当接又は近接対向する。端面部334Aの外縁は、外側筒部332Aの一端部に連接されている。
円錐面部335Aは、端子本体30Aに対する装着時に第二筒部322の面取り部324に当接又は近接対向する。円錐面部335Aの外縁は、端面部334Aの内縁に連接されている。
【0055】
内側筒部333Aは円筒体である。内側筒部333Aの一端部は、円錐面部335Aの内縁に連接されている。
内側筒部333Aの外径は、端子本体30Aの第二筒部322に挿入可能な大きさである。
内側筒部333Aの内径は、電線・ケーブル2の絶縁層22を挿入可能な大きさである。絶縁層22を円滑に挿入するためには、内側筒部333Aの径方向の厚さが薄い方が良い。但し、十分に薄くすることが困難である場合には、端子本体30Aの第二筒部322の内径を少し広げてもよい。
【0056】
突出部331Aは、内側筒部333Aにおける円錐面部335A側の端部において、内周面を一周して径方向内側に突出した凸条からなる。突出部331Aの内径は、電線・ケーブル2の絶縁層22の外径と等しいかこれより僅かに小さい。
【0057】
第一アタッチメント33Aは、上記構成により、外側筒部332Aと内側筒部333Aとの間に第二筒部322の開放側端部を挿入するようにして、端子本体30Aに装着することができる。第一アタッチメント33Aは、接着等によって端子本体30Aに固定してもよい。
端子本体30Aに第一アタッチメント33Aを装着すると、接続端子3Aは、前述した接続端子3と同様に使用することができる。
即ち、第一アタッチメント33Aを通して、第二筒部322に電線・ケーブル2が挿入され、開口325を通じて適正な挿入状態と導体21のむき出し寸法の適否を確認することができる。
確認後は、第一筒部321を上下方向からかしめて電線・ケーブル2の導体21と接続端子3とを電気的、機械的に接続する。
【0058】
また、接続端子3A及び接続端子3Aを備える端子付き電線・ケーブルは、前述した接続端子3及び端子付き電線・ケーブル1と同一の効果を有する。
第一アタッチメント33Aは、内側筒部333Aの内周面から内側に突出した突出部331Aを有している。これにより、接続端子3Aに対する電線・ケーブル2の曲げ、捻回、揺れ、振動を抑制して、導体21の断線を抑制することが可能である。また、第二筒部322に対するかしめを省略して接続時の作業性の向上を図ることができる。
【0059】
上記突出部331Aは、前述した
図6に示す突出部331と形状及び構造が等しく、その作用効果も等しい。
但し、第一アタッチメント33Aの突出部331Aは、上記構成に限られず、前述した突出部326と同様に各種の形状及び構造を採ることができる。
【0060】
例えば、突出部331Aは、
図12に示すように、内側筒部333Aの内周面から内側に突出した突起状としてもよい。さらに、その場合、突起状の突出部331Aは、周方向に沿って均一間隔で複数設けてもよい。また、突起状の突出部331Aは、軸垂直断面に沿った形状を半円状、多角形状としてもよい。
【0061】
また、突出部331Aは、前述した
図5に示す突出部326のように、円錐面部335Aよりも奥側に設けた、内側筒部333Aの内周面を一周する凸条としてもよい。その場合、軸方向Cに沿った断面形状は、半円状、多角形状としてもよい。
【0062】
また、突出部331Aは、前述した
図7に示す突出部326のように、内側筒部333Aの内周面から内側に突出し、軸方向に沿った凸条としてもよい。さらに、その場合、凸条の突出部331Aは、周方向に沿って均一間隔で複数設けてもよい。また、凸条の突出部331Aの軸垂直断面に沿った形状を半円状、多角形状としてもよい。
【0063】
[第3実施形態]
図13は第3実施形態である接続端子3Bの斜視図である。なお、接続端子3Bについては、接続端子3と異なる点について主に説明し、重複する構成については接続端子3と同一の符号を付して説明を省略する。
接続端子3Bは、第二筒部322に、前述した開口325に替えて、第二筒部322の開口端部に達するスリット325Bを形成している。
【0064】
スリット325Bは、二本組で周方向に均一間隔で複数個所に形成されている。本実施形態ではスリット325Bが三組設けられている場合を例示する。但し、スリット325Bは一本でもよい。また、周方向に一か所以上であればよい。
スリット325Bは、軸方向Cに沿っており、軸方向Cにおける奥側の端部の位置は、前述した開口325と一致している。従って、スリット325Bは、軸方向Cについて境界位置Bをまたぐように形成されている。
このため、接続端子3Bに対し電線・ケーブル2が適正位置に挿入されると、絶縁層22の先端部がスリット325Bの奥側の端部近傍に位置することが視認できる。これにより、電線・ケーブル2の挿入の適否を判断することができる。
【0065】
また、第二筒部322と移行部323の境界位置Bがその外周形状に応じて外部から認識可能である場合には、スリット325B内から視認可能な絶縁層22の先端部の位置が境界位置Bの近傍となるか否かによっても電線・ケーブル2の挿入の適否を判断することができる。
これは、接続端子3の開口325の場合も同様のことが言える。
【0066】
また、スリット325Bにより、絶縁層22の先端部の位置から導体21のむき出し寸法の適否も判断することが可能である。
【0067】
接続端子3Bは、接続端子3と同じ突出部326を有してもよい。
また、接続端子3Bは、突出部326を有さない構造とし、替わりに、前述した第一アタッチメント33Aを装着してもよい。
また、軸方向断面が円弧となる周方向について部分的な周面の範囲のみにアタッチメントを装着してもよい。例えば、周方向に並んだ一対のスリット325Bと他の一対のスリット325Bとの間の部分のみに装着可能なアタッチメントを装着してもよい。当該アタッチメントは、突出部331Aと同じ突出部を有する構成とする。また、その場合、周方向に均一間隔で複数のアタッチメントを装着してもよい。
【0068】
[第4実施形態]
図14は第4実施形態である端子付き電線・ケーブル1Cの分解斜視図である。なお、端子付き電線・ケーブル1Cについては、端子付き電線・ケーブル1と異なる点について主に説明し、重複する構成については端子付き電線・ケーブル1と同一の符号を付して説明を省略する。
【0069】
端子付き電線・ケーブル1Cは、接続端子3Cと電線・ケーブル2と第二アタッチメント33Cと有する。
接続端子3Cは、第3実施形態で説明した端子本体30A(
図9)と同一の構成である。従って、第二筒部322の内周面には突出部を有していない。
【0070】
第二アタッチメント33Cは、電線・ケーブル2の絶縁層22の外周に装着可能な筒部332Cと、当該筒部332Cの外周面よりも外側に突出した突出部331Cとを有する。
第二アタッチメント33Cは、樹脂やゴム等の材料から一体的に形成されている。但し、第二アタッチメント33Cの形成材料について制限はなく、例えば、金属から形成してもよい。
【0071】
筒部332Cは円筒体である。筒部332Cの外径は接続端子3Cの第二筒部322の内径よりわずかに小さく、筒部332Cの内径は電線・ケーブル2の絶縁層22を挿入可能な大きさである。
筒部332Cを接続端子3Cの第二筒部322内に円滑に挿入するためには、筒部332Cの径方向の厚さが薄い方が良い。但し、十分に薄くすることが困難である場合には、接続端子3Cの第二筒部322の内径を少し広げてもよい。
【0072】
突出部331Cは、筒部332Cの外周面において径方向外側に突出した凸条からなる。突出部331Cは、軸方向Cに沿った凸条である。突出部331Cは、周方向に均一間隔で複数設けられている。本実施形態では突出部331Cが三つ設けられている場合を例示する。各突出部331Cは、周方向に均一間隔で設けることが好ましい。突出部331Cの個体数は、複数が好ましいが、一個以上であればよい。
各突出部331Cの外接円の径は、第二筒部322の内径と等しいかこれより僅かに大きい。
【0073】
第二アタッチメント33Cは、上記構成により、電線・ケーブル2の絶縁層22の先端部近傍に装着される。第二アタッチメント33Cは、接着等によって絶縁層22に固定してもよい。
そして、電線・ケーブル2を接続端子3Cに挿入すると、第二アタッチメント33Cは、絶縁層22と第二筒部322の間に介挿される。
【0074】
第二アタッチメント33Cの取り付けの順序は、当該第二アタッチメント33Cを電線・ケーブル2に取り付けて、電線・ケーブル2と共に第二アタッチメント33Cを接続端子3Cに挿入してもよい。
また、第二アタッチメント33Cに電線・ケーブル2を通して、当該電線・ケーブル2の接続端部から離隔した位置まで退避させた状態とする。そして、電線・ケーブル2を接続端子3Cに挿入し、その後、退避していた第二アタッチメント33Cを第二筒部322と絶縁層22との隙間に挿入させてもよい。この場合、電線・ケーブル2を接続端子3Cに挿入する際に第二アタッチメント33Cの突出部331Cによる抵抗を受けないので、導体21を適正に奥まで挿入することができる。
【0075】
第二アタッチメント33Cは、突出部331Cにより、接続端子3Cに対する電線・ケーブル2の曲げ、捻回、揺れ、振動を抑制して、導体21の断線を抑制することが可能である。また、第二筒部322に対するかしめを省略して接続時の作業性の向上を図ることができる。
【0076】
なお、第二アタッチメント33Cは、第二筒部322に隠れて見えないと、装着の有無が確認できないので、第二筒部322の開放端部から第二アタッチメント33Cの一端部が露出するように配置することが好ましい。
【0077】
また、突出部331Cは、上記構成に限られない。
例えば、突出部331Cは、筒部332Cの外周面を一周する凸条としてもよい。その場合、軸方向Cに沿った断面形状は、半円状、多角形状としてもよい。
また、突出部331Cは、筒部332Cの外周面から突出した突起状としてもよい。さらに、その場合、突起状の突出部331Cは、周方向に沿って均一間隔で複数設けてもよい。また、突起状の突出部331Cは、軸垂直断面に沿った形状を半円状、多角形状としてもよい。
【0078】
さらに、突出部331Cは、筒部332Cの一端部(電線・ケーブル2の挿入端部と反逆側の端部)側の外周面の外径を拡大した拡径部で構成してもよい。その場合、拡径部にテーパ部を併設し、外径を漸増させて拡径部に至る、軸方向断面が台形状の形状としてもよい。
【0079】
また、第二アタッチメント33Cには、電線・ケーブル2における軸方向の取り付け位置の適正化を図るために、
図15に示すストッパ334Cを設けてもよい。
ストッパ334Cは、筒部332Cの一端部(電線・ケーブル2の挿入端部側の端部)に一体的に連結された軸方向Cに垂直な円板からなる。ストッパ334Cは、電線・ケーブル2に対する装着時に絶縁層22の先端面に当接し、当該ストッパ334Cの中心には、導体21を通す貫通孔が形成されている。
第二アタッチメント33Cは、上記ストッパ334Cにより電線・ケーブル2に対して軸方向Cの適正な位置に配置することができる。
この場合、電線・ケーブル2の導体21の挿入状態の適否を確認するために開口325から視認されるのは、絶縁層22の先端部ではなく、第二アタッチメント33Cのストッパ334Cの部分となる。
従って、軸方向のズレが低減するように、ストッパ334Cの厚みは極力薄くすることが望ましい。或いは、ストッパ334Cの厚みによる絶縁層22の先端部に対する位置のズレを考慮して、開口325の軸方向Cの配置をストッパ334Cの厚み分だけ第一筒部321側にずらして配置してもよい。
【0080】
[第5実施形態]
図16は第5実施形態である端子付き電線・ケーブル1Dの斜視図、
図17は端子付き電線・ケーブル1Dの軸方向Cに沿った断面図である。
なお、端子付き電線・ケーブル1Dについては、端子付き電線・ケーブル1Cと異なる点について主に説明し、重複する構成については端子付き電線・ケーブル1Cと同一の符号を付して説明を省略する。
【0081】
端子付き電線・ケーブル1Dは、防水処理が施されている。
端子付き電線・ケーブル1Dは、接続端子3Cと電線・ケーブル2と防水処理に適した第二アタッチメント33Dと有し、電線・ケーブル2に接続された接続端子3及び第二アタッチメント33Dを防水性の絶縁テープTで巻いている。
【0082】
電線・ケーブル2の導体21と接続端子3Cの電気的な接続部の防水を図るには、接続端子3Cの開口325と第二筒部322の開放端部と絶縁層22との隙間をシールする必要がある。その場合、第二筒部322の開放端部と絶縁層22との間には、段差があるので、絶縁テープTを巻き付けた場合に隙間が生じやすく、絶縁テープTを巻いて段差を埋めるには、テープ巻きの作業負担が増加する。
【0083】
このため第二アタッチメント33Dは、電線・ケーブル2の絶縁層22の外周に装着可能な筒部332Dと、当該筒部332Dの一端部側に外周面がテーパ面となったテーパ部336Dとを有する。
第二アタッチメント33Dは、樹脂やゴム等の材料から一体的に形成されている。但し、第二アタッチメント33Dの形成材料について制限はなく、例えば、金属から形成してもよい。
【0084】
筒部332Dは円筒体である。筒部332Dの外径は接続端子3Cの第二筒部322の内径と等しいかわずかに大きく、筒部332Dの内径は電線・ケーブル2の絶縁層22を挿入可能な大きさである。
【0085】
筒部332Dは接続端子3Cの第二筒部322内に挿入されると、第二筒部322と絶縁層22の双方に圧接して、第二筒部322に対して絶縁層22を拘束する。即ち、この筒部332Dは、絶縁層22の外周よりも外側に突出した突出部として機能する。
【0086】
テーパ部336Dは、筒部332Dの一端部(筒部332Dの挿入方向とは逆側の端部)に連接されている。テーパ部336Dは、筒部332D側が接続端子3Cの第二筒部322の外径と等しく、第二筒部322から離隔する方向に向かって縮径している。従って、第二アタッチメント33Dを絶縁層22と第二筒部322との間に介挿すると、第二筒部322と絶縁層22との間にテーパ部336Dの外周のテーパ面が配置される。
従って、第二筒部322の開放端部と絶縁層22との間の段差が解消され、絶縁テープTを隙間が生じないよう円滑に巻き付けることができる。
【0087】
第二アタッチメント33Dの取り付けは、当該第二アタッチメント33Dを電線・ケーブル2に取り付けて、電線・ケーブル2と共に第二アタッチメント33Dを接続端子3Cに挿入し、絶縁テープTを巻いてもよい。
また、第二アタッチメント33Dに電線・ケーブル2を通して、第二アタッチメント33Dを電線・ケーブル2の接続端部から離隔した位置まで退避させた状態とする。そして、電線・ケーブル2を接続端子3Cに挿入し、その後、退避していた第二アタッチメント33Dの筒部332Dを第二筒部322と絶縁層22との隙間に挿入させてから絶縁テープTを巻いてもよい。
第二アタッチメント33Dの場合も、電線・ケーブル2の導体21を接続端子3Cに挿入する際に、第二アタッチメント33Dによる抵抗を低減することが好ましいからである。
【0088】
第二アタッチメント33Dは、接続端子3Cに対する電線・ケーブル2の曲げ、捻回、揺れ、振動を抑制して、導体21の断線を抑制することが可能である。さらい、第二筒部322に対するかしめを省略して接続時の作業性の向上を図ることができる。
さらに、第二アタッチメント33Dは、端子付き電線・ケーブル1Dの防水性を高めると共に防水処理の作業性を向上させる。
【0089】
[第6実施形態]
図18は第6実施形態である端子付き電線・ケーブル1Eの斜視図である。
なお、端子付き電線・ケーブル1Eについては、端子付き電線・ケーブル1Cと異なる点について主に説明し、重複する構成については端子付き電線・ケーブル1Cと同一の符号を付して説明を省略する。
【0090】
端子付き電線・ケーブル1Eは、防水処理が施されている。
端子付き電線・ケーブル1Eは、接続端子3Cと電線・ケーブル2と第二アタッチメント33Cとを有する。
さらに、端子付き電線・ケーブル1Eの場合には、導体21の電気的接続部の周囲の防水を図るために、接続端子3Cの内部にジェルやレジン等の流動性のある充填材料を封入する。
この場合、接続端子3Cの各開口325に対しては、蓋部材327Eで封止する。蓋部材327Eは、ゴムや樹脂等、シール性を有する材料が好ましい。
【0091】
また、接続端子3Cの第二筒部322の開放端部は、第二アタッチメント33Cによって封止する。
この場合、第二アタッチメント33Cは、筒部332Cの外周面を一周する凸条の突出部331Cを備えるものを利用する。
【0092】
電線・ケーブル2の導体21との接続が行われた状態で、接続端子3Cの上を向いた開口325以外の開口325を全て蓋部材327Eで閉塞する。また、第二筒部322の開放端部は第二アタッチメント33Cによって閉塞する。
この状態で、上を向いた開口325からジェルやレジン等の充填材料を内部に流し込む。充填材料が経時的に固化する又は流動性が失われる性質のものであれば、上を向いた開口325はそのままでもよい。充填材料が経時的に流動性が失われない性質のもの場合には、上を向いた開口325も蓋部材327Eで閉塞する。
【0093】
端子付き電線・ケーブル1Eは、端子付き電線・ケーブル1Cと同一の技術的効果を有すると共に高い防水性を有する。
【0094】
なお、端子付き電線・ケーブル1Eの防水処理のためには、第二アタッチメント33Cに替えて、第一アタッチメント33Aを接続端子3Cの開放端部に装着してもよい。その場合、第一アタッチメント33Aは、内側筒部333Aの内周面を一周する凸条の突出部331Aを備えるものを利用する。
【0095】
[その他]
以上、本発明の各実施形態について説明した。しかし、本発明は上記の実施形態に限られるものではない。例えば、実施形態において、単一の部材により一体的に形成された構成要素は、複数の部材に分割されて互いに連結又は固着された構成要素に置換してもよい。また、複数の部材が連結されて構成された構成要素は、単一の部材により一体的に形成された構成要素に置換してもよい。その他、実施の形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0096】
例えば、前述した接続端子3,3A,3B,3Cの第一筒部321、第二筒部322、移行部323の外径については、上記の例に限定されず各々任意に変更可能である。例えば、第一筒部321、第二筒部322、移行部323の外径を均一に揃えてもよい。
【符号の説明】
【0097】
1,1C,1D,1E 端子付き電線・ケーブル
2 電線・ケーブル
21 導体
22 絶縁層
3,3A,3B,3C 接続端子
30A 端子本体
31 被接続部
32 接続筒部
33A 第一アタッチメント
33C,33D 第二アタッチメント
311 羽子板部
311a 円孔
312 柱状部
313 連結部
321 第一筒部
322 第二筒部
323 移行部
324 面取り部
325 開口
325B スリット
326 突出部
327 リング溝
327E 蓋部材
331 突出部
331A,331C 突出部
332A 外側筒部
332C,332D 筒部
333A 内側筒部
334A 端面部
334C ストッパ
335A 円錐面部
336D テーパ部
B 境界位置(最深部)
C 軸方向(挿入方向)
T 絶縁テープ