(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】グレートーンリソグラフィと傾斜エッチングを使用した、深さ調節された傾斜格子
(51)【国際特許分類】
G02B 5/18 20060101AFI20241111BHJP
【FI】
G02B5/18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023076535
(22)【出願日】2023-05-08
(62)【分割の表示】P 2021524031の分割
【原出願日】2019-10-23
【審査請求日】2023-06-06
(32)【優先日】2018-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー ティマーマン タイセン, ラトガー
(72)【発明者】
【氏名】ゴデット, ルドヴィーク
【審査官】横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0052276(US,A1)
【文献】特表2019-528474(JP,A)
【文献】特開2002-048907(JP,A)
【文献】特開2002-189112(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0270642(US,A1)
【文献】特開昭61-027505(JP,A)
【文献】特開平04-007504(JP,A)
【文献】特開平08-021906(JP,A)
【文献】特開昭62-296102(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0033784(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0035539(US,A1)
【文献】特開平03-246510(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01650587(EP,A1)
【文献】特表2001-511906(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0058394(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106662684(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/00-5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の格子構造を含む導波路構造を形成する方法であって、
グレースケールリソグラフィを使用して、格子層上に配置されたレジスト層内にくさび形構造を形成することと、
転写エッチング処理を実行して、前記くさび形構造を前記格子層内に形成することと、
前記格子層上にハードマスクを、さらに前記ハードマスク上に
平坦な上面を有する光学平坦化層(optical planarization layer;OPL)を、さらに前記OPL上にフォトレジストを配置するこ
とと、
リソグラフィ処理を実行して、前記フォトレジストを
格子状にパターニングし、前記OPL
を部分的に露出すること
と、
前記OPL
の露出された部分を除去して
、前記ハードマスク
を部分的に露出す
ることと、
前記ハードマスクの
露出された部分をエッチングして、前記格子層内の前記くさび形構造を
部分的に露出することと、
前記格子層内に
前記複数の格子構造を形成するために、前記くさび形構造の露出され
た部分をエッチングすることと
を含む方法。
【請求項2】
前記くさび形構造の深さが、第1の方向および第2の方向に沿って変化し、
前記第1の方向においては、前記くさび形構造の周辺領域における深さが、前記くさび形構造の中央領域における深さよりも大きく、
前記第2の方向においては、前記くさび形構造の周辺領域における深さが、前記くさび形構造の中央領域における深さよりも大きく、かつ前記第1の方向が前記第2の方向に対して垂直である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の方向および前記第2の方向において、前記くさび形構造の深さが直線的に変化する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の方向および前記第2の方向において、前記くさび形構造の深さが非直線的に変化する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
複数の格子構造を含む導波路構造を形成する方法であって、
くさび形構造が形成された格子層上にハードマスクを形成
すること
を含み、前記くさび形構造は、
前記格子層の上面から前記くさび形構造の上部まで第1の深さを有する第1の端部、および
前記格子層の前記上面から前記くさび形構造の前記上部まで、前記第1の深さとは異なる第2の深さを有する第2の端部
を有し、
前記方法はさらに、
前記ハードマスク上に、前記ハードマスク
を部分的に露出
するフォトレジストスタックを形成することと、
前記ハードマスクの露出され
た部分をエッチングして、前記格子層内の前記くさび形構造
を部分的に露出することと、
前記格子層内に
前記複数の格子構造を形成するために、前記くさび形構造の露出され
た部分をエッチングすることと
を含む方法。
【請求項6】
前記フォトレジストスタックが、
光学平坦化層、および
フォトレジスト
を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記くさび形構造が、前記格子層の上面に対して1度未満の傾斜角度を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記くさび形構造の露出された前記部分を前記エッチングすることは、傾斜エッチングであり、前記複数の格子構造は、基板の上面に直交する垂直面に対して傾斜させられている、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ハードマスクの露出された前記部分をエッチングした後に、前記フォトレジストスタックが前記
ハードマスクから除去される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記くさび形構造の露出された前記部分をエッチングした後に、前記ハードマスクが前記導波路構造から除去される、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
複数の格子構造を含む導波路構造を形成する方法であって、
グレースケールリソグラフィを使用して、格子層上に配置されたレジスト層内にくさび形構造を形成することであって、前記くさび形構造の深さは第1の方向および第2の方向において非直線的に変化する、くさび形構造を形成することと、
転写エッチング処理を実行して、前記くさび形構造を前記格子層内に形成することと、
前記格子層上にハードマスクを、さらに前記ハードマスク上に
平坦な上面を有する光学平坦化層(optical planarization layer;OPL)を、さらに前記OPL上にフォトレジストを配置するこ
とと、
リソグラフィ処理を実行して、前記フォトレジストを
格子状にパターニングし、前記OPL
を部分的に露出すること
と、
前記OPLの
露出された部分を除去して
、前記ハードマスク
を部分的に露出す
ることと、
前記ハードマスクの
露出された部分をエッチングして、前記格子層内の前記くさび形構造を
部分的に露出することと、
前記格子層内に
前記複数の格子構造を形成するために、前記くさび形構造の露出され
た部分をエッチングすることと
を含む方法。
【請求項12】
前記くさび形構造の深さが、第1の方向および第2の方向に沿って変化し、
前記第1の方向においては、前記くさび形構造の周辺領域における深さが、前記くさび形構造の中央領域における深さよりも大きく、
前記第2の方向においては、前記くさび形構造の周辺領域における深さが、前記くさび形構造の中央領域における深さよりも大きく、かつ前記第1の方向が前記第2の方向に対して垂直である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の方向および前記第2の方向において、前記くさび形構造の深さが直線的に変化する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記くさび形構造の露出された前記部分を前記エッチングすることは、傾斜エッチングであり、前記複数の格子構造は、基板の上面に直交する垂直面に対して傾斜させられている、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記ハードマスクの露出された前記部分をエッチングした後に、前記フォトレジストが前記
ハードマスクから除去される、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本開示の実施形態は、概して、ディスプレイ装置で使用するための方法および装置に関する。より具体的には、本開示は、導波路または他の用途で使用するための格子構造に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]仮想現実は、ユーザーがその中に物理的に存在しているように見えるコンピュータ生成のシミュレートされた環境であると、一般に考えられている。仮想現実体験は、3Dで生成され、実際の環境を置き換える仮想現実環境を表示するためのレンズとしてニアアイディスプレイパネルを備えた眼鏡やその他のウェアラブルディスプレイデバイスなどのヘッドマウントディスプレイ(HMD)で見ることができる。
【0003】
[0003]しかしながら、拡張現実は、ユーザーが眼鏡や他のHMDデバイスのディスプレイレンズを通して周囲の環境を見ることができるが、ディスプレイ用に生成され環境の一部として現れる仮想オブジェクトの画像も見ることができる体験を可能にする。拡張現実は、ユーザーが体験する環境を強化または拡張する、仮想画像、グラフィック、ビデオだけでなく、音声入力や触覚入力などの、あらゆるタイプの入力を含むことができる。新たに出現した技術として、拡張現実には多くの課題と設計上の制約がある。
【0004】
[0004]そのような課題の1つは、様々なユーザー視点からの十分な明瞭度を備えた画像とともに、周囲環境に重ねられた仮想画像を表示することである。例えば、ユーザーの目が、表示されている仮想画像と正確に位置合わせされていない場合、ユーザーは、歪んだ不明瞭な画像を見たり、画像全体を見ることができなかったりする可能性がある。さらに、画像がぼやけており、最適でない視野角からの解像度が、望ましいとは言えない場合がある。
【0005】
[0005]したがって、拡張現実ディスプレイデバイスを製造する改善された方法が必要である。
【発明の概要】
【0006】
[0006]本開示は、概して、ディスプレイ装置または他の用途で使用するための方法および装置に関する。より具体的には、本開示は、グレースケールリソグラフィを使用して作製された、導波路で使用するための格子構造に関する。本明細書の方法はまた、ナノインプリントリソグラフィのマスターとして使用される導波路構造を形成することができる。
【0007】
[0007]一実施形態では、導波路構造が提供される。この構造は、上に格子層を有する基板を有し、くさび形構造が、グレースケールリソグラフィによって格子層に形成される。くさび形構造は、第1の端部、第2の端部、および深さを有し、深さは、第1の端部から第2の端部まで変化する。導波路構造はまた、格子層に形成された複数のチャネルを有し、各チャネルは、複数の格子構造の一部を部分的に画定し、複数の格子構造の深さは、くさび形構造の第1の端部からくさび形構造の第2の端部まで変化する。
【0008】
[0008]別の実施形態では、導波路構造が提供される。導波路構造は、上に格子層を有する基板を含む。導波路構造はまた、格子層に形成されたくさび形構造を含み、くさび形構造は、少なくとも第1の方向および3次元形状を規定する第2の方向に変化する深さを有する。導波路構造はまた、格子層に形成された複数のチャネルを含み、各チャネルは、複数の格子構造の一部を部分的に画定し、複数の格子構造の深さは、くさび形構造によって規定されるように、第1の方向および第2の方向に変化する。
【0009】
[0009]さらに別の実施形態では、導波路構造を形成する方法が、提供される。この方法は、グレースケールリソグラフィを使用して格子層にくさび形構造を形成することを含む。この方法はまた、格子層上にハードマスクおよびフォトレジストスタックを形成することを含む。この方法は、フォトレジストスタックをエッチングすることを、さらに含む。この方法はまた、格子層内に複数の格子構造を形成することを含む。
【0010】
[0010]本開示の上記の特徴が、詳細に理解されるように、上記で簡単に要約された本開示のより具体的な説明が、実施形態を参照することによって得られ、そのいくつかは、添付の図面に示されている。しかしながら、添付の図面は、例示的な実施形態のみを示しており、したがって、本開示は他の同等に有効な実施形態を認めることができるので、その範囲を限定すると見なされるべきではないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態による導波路コンバイナの透視正面図である。
【
図2】一実施形態による、深さ調節された傾斜格子の図である。
【
図3】一実施形態による、導波路構造の製造方法のフローチャートである。
【
図4A】一実施形態による、導波路構造の一部の概略断面図である。
【
図4B】一実施形態による、導波路構造の一部の概略断面図である。
【
図4C】一実施形態による、導波路構造の一部の概略断面図である。
【
図4D】一実施形態による、導波路構造の一部の概略断面図である。
【
図4E】一実施形態による、導波路構造の一部の概略断面図である。
【
図4F】一実施形態による、導波路構造の一部の概略断面図である。
【
図4G】一実施形態による、導波路構造の一部の概略断面図である。
【
図4H】一実施形態による、導波路構造の一部の概略断面図である。
【
図5A】くさび形構造の形状例の断面拡大図である。
【
図5B】くさび形構造の形状例の断面拡大図である。
【
図5C】くさび形構造の形状例の断面拡大図である。
【
図6A】くさび形構造の3次元形状の例の透視図である。
【
図6B】くさび形構造の3次元形状の例の透視図である。
【
図6C】くさび形構造の3次元形状の例の透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[0017]理解を容易にするために、可能な場合は、図に共通する同一の要素を示すために、同一の参照番号が使用されている。ある実施形態の要素および特徴は、さらに詳説することなく、他の実施形態に有益に組み込まれ得ることが企図されている。
【0013】
[0018]格子構造を有する装置およびそれを形成するための方法が、開示される。格子の高さを変えることにより、格子の長さに沿って格子の強度を変えることができる。これを達成するための方法は、グレートーンリソグラフィを使用して格子層に深さ調節されたくさび形構造を形成することを含む。複数のチャネルが、格子層に形成され、その中に傾斜格子構造を画定する。くさび形構造と傾斜格子構造は、選択的エッチングプロセスを使用して形成される。本明細書に記載の方法はまた、ナノインプリントリソグラフィのマスターとして機能する導波路構造を作製するために使用することができる。
【0014】
[0019]
図1は、導波路コンバイナ100の透視正面図である。以下に説明する導波路コンバイナ100は、例示的な導波路コンバイナであることが理解されるべきである。導波路コンバイナ100は、複数の格子108によって規定される入力結合領域102、複数の格子110によって規定される中間領域104、および複数の格子112によって規定される出力結合領域106を含む。入力結合領域102が、ある強度を有する入射光ビーム(仮想画像)をマイクロディスプレイから受け取る。複数の格子108の各格子が、入射ビームを複数のモードに分割し、各ビームが、1つのモードを有する。ゼロ次モード(T0)ビームは、導波路コンバイナ100内で屈折して戻るか失われ、正の1次モード(T1)ビームは、導波路コンバイナ100を通って中間領域104に結合され、負の1次モード(T-1)ビームは、導波路コンバイナ100内をT1ビームと反対の方向に伝搬する。理想的には、仮想画像を中間領域104に向けるために、入射ビームは、入射ビームの強度の全てを有するT1ビームに分割される。入射ビームを、入射ビームの強度の全てを有するT1ビームに分割する1つのアプローチは、複数の格子108の各格子の傾斜角を最適化して、T-1ビームおよびT0ビームを抑制することである。T1ビームは、中間領域104内の複数の格子110と接触するまで、導波路コンバイナ100を通って全反射(TIR)する。入力結合領域102の一部分は、隣接部分の格子108の傾斜角とは異なる傾斜角の格子108を有することができる。
【0015】
[0020]T1ビームは、複数の格子110のうちの1つの格子と接触する。T1ビームは、導波路コンバイナ100内で屈折して戻るか失われるT0ビーム、複数の格子110のうちの別の格子と接触するまで中間領域104内でTIRするT1ビーム、および導波路コンバイナ100を通って出力結合領域106に結合されるT-1ビームに分割される。中間領域104内でTIRするT1ビームは、導波路コンバイナ100を通って中間領域104に結合されるT1ビームの強度が枯渇するか、または中間領域104を通って伝搬する残りのT1ビームが中間領域104の端部に到達するまで、複数の格子110のうちの格子と接触し続ける。出力結合領域106に結合されるT-1ビームの強度を制御して、ユーザーの視点からのマイクロディスプレイから生成された仮想画像の視野を調節し、ユーザーが仮想画像を見ることができる視野角を拡大するために、複数の格子110は、導波路コンバイナ100を通って中間領域104に結合されるT1ビームを制御するように調整されなければならない。導波路コンバイナ100を通って中間領域104に結合されるT1ビームを制御する1つのアプローチは、出力結合領域106に結合されるT-1ビームの強度を制御するように、複数の格子110の各格子の傾斜角を最適化することである。中間領域104の一部分は、隣接部分の格子110の傾斜角とは異なる傾斜角の格子110を有することができる。さらに、格子110は、格子108の傾斜角とは異なる傾斜角を有することができる。
【0016】
[0021]T-1ビームは、出力結合領域106に向かって導波路コンバイナ100を通り、導波路コンバイナ100内でTIRし、やがてT-1ビームは、複数の格子112のうちの1つの格子と接触し、そこでT-1ビームは、導波路コンバイナ100内で屈折して戻るか失われるT0ビーム、複数の格子112のうちの別の格子と接触するまで出力結合領域106内でTIRするT1ビーム、または導波路コンバイナ100から出るT-1ビームに分割される。出力結合領域106内でTIRするT1ビームは、導波路コンバイナ100を通って出力結合領域106に送られるT-1ビームの強度が枯渇するか、または出力結合領域106を通って伝搬する残りのT1ビームが出力結合領域106の端部に到達するまで、複数の格子112のうちの格子と接触し続ける。導波路コンバイナ100から出るT-1ビームの強度を制御して、ユーザーの視点からのマイクロディスプレイから生成された仮想画像の視野をさらに調節し、ユーザーが仮想画像を見ることができる視野角をさらに拡大するために、複数の格子112は、導波路コンバイナ100を通って出力結合領域106に送られるT-1ビームを制御するように調整されなければならない。導波路コンバイナ100を通って出力結合領域106に送られるT-1ビームを制御する1つのアプローチは、さらに視野を調節し、視野角を拡大するために、複数の格子112の各格子の傾斜角を最適化することである。出力結合領域106の一部分は、隣接部分の格子112の傾斜角とは異なる傾斜角の格子112を有することができる。さらに、格子112は、格子108および格子110の傾斜角とは異なる傾斜角を有することができる。
【0017】
[0022]格子108、110、または112の深さは、本明細書に記載の実施形態では、結合領域または中間領域全体にわたって変化し得る。いくつかの実施形態では、格子の深さは、格子領域全体にわたって滑らかに変化し得る。例示的な一実施形態では、深さは、格子領域全体にわたって約10nmから約400nmの範囲であり得る。例示的な実施形態における格子領域は、所与の側で約20mmから約50mmの範囲であり得る。したがって、一例として、格子の深さの変化の角度は、 .0005度のオーダーであり得る。
【0018】
[0023]本明細書に記載の実施形態では、深さ調節された格子は、グレースケールリソグラフィとしても知られるグレートーンリソグラフィを使用して作製することができる。グレースケールリソグラフィは、光学グレートーン(またはグレースケール)マスクを使用してフォトレジスト層に3次元微細構造を作製するために使用されるワンステッププロセスである。グレースケールマスクは、様々な量の光を通過させて、深さ調節された格子を作製する。深さ調節された格子を作製するためにグレースケールリソグラフィを使用すると、既存の方法よりも処理工程が少なくなり、くさび解像度が高くなる。
【0019】
[0024]本明細書に記載の方法はまた、他の実施形態において、ナノインプリントリソグラフィのマスターとして使用される導波路構造を作製するために使用され得る。それらの実施形態では、格子材料は、導波路用途で使用される格子構造の場合のような光学特性を有する必要はない。ナノインプリントリソグラフィ用途では、スタック材料は、光学性能ではなく、エッチング特性とスタンプリリース性能で選択され得る。本明細書に記載の実施形態のいくつかは、導波路に関するが、方法および構造は、ナノインプリントリソグラフィにも適用可能である。
【0020】
[0025]
図2は、一実施形態による、深さ調節された傾斜格子200の図である。格子202の高さと比較した格子領域の長さの相対的なサイズのため、原寸に比例した図を描くことは不可能である。例えば、格子の長さが25mmで、格子領域の一方の端からもう一方の端までの格子の深さの変化が、250nmの場合、格子の角度θは、arctan(y/x)、すなわち0.000573°である。したがって、構造は、局所的には、有効に平坦であるように見える。
【0021】
[0026]
図2に見られるように、この実施形態では、格子202は、高さが様々であり、図の左側に高い格子がある。格子202は、導波路の右端に移動するにつれてサイズが短くなる。他の実施形態では、格子の高さは、任意の適切な仕方で導波路に沿って変化し得る。例えば、別の実施形態では、より高い格子が右側にあり、より低い格子が左側にあり得る。さらに別の実施形態では、より低い格子が、導波路の左側および右側に存在し、より高い格子が、中央に存在し得る。さらに別の実施形態では、より高い格子が、導波路の両側に存在し、より低い格子が、中央に存在し得る。他の実施形態では、格子の高さは、任意の直線的または非直線的な仕方で変化し得る。さらに、格子の高さは、導波路に沿って左から右にだけでなく、複数の次元に沿って変化してもよい。グレートーンリソグラフィを使用して導波路の格子高さを成形するために、任意の1次元または2次元の形状またはパターンを使用することができる。一例として、凹形または凸形のパターンを使用することができる。さらに、格子202内の各傾斜格子構造は、エッチング停止層の表面に垂直な平面に対して測定された角度シータを有することができる。角度シータは、例えば、約0度および約70度である。
【0022】
[0027]
図2に見られるように、格子202の一部は、導波路内に形成された複数のチャネル204によって少なくとも部分的に画定される。複数のチャネル204は、グレートーンリソグラフィを使用して形成することができる。いくつかの実施形態では、複数のチャネル204を形成するために使用されるプロセスは、格子202を作製するために使用されるプロセスと同じである。
【0023】
[0028]
図3は、
図4A~
図4Hに示される導波路構造400を形成するための方法300のフロー図である。
図4A~
図4Hは、原寸に比例していない。導波路構造は、一般に基板上に形成される。一例では、基板は、任意選択のエッチング停止層およびその上に形成された格子層を備えたケイ素系ガラス基板である。別の例では、基板は、エッチング停止層のないガラス基板である。このような場合、基板は、格子層として機能し、格子構造は、基板内に直接形成される。
【0024】
[0029]工程302において、エッチング停止層およびフィン材料層が、基板上に堆積される。工程302の結果が、
図4Aに示されている。
図4Aは、その中に格子構造を形成するための導波路構造400の断面の拡大部分である。この例では、導波路構造400は、その上にエッチング停止層404が形成された基板402を有する。基板402は、ケイ素、窒化チタン、またはクロムなどの光学的に透明な材料から作られている。エッチング停止層404が、基板402上に形成される。エッチング停止層404は、例えば、化学気相堆積(CVD)プロセス、物理気相堆積(PVD)プロセス、またはスピンオンプロセスによって形成される。エッチング停止層404は、窒化チタンまたは窒化タンタルなどの、エッチングプロセスに耐性のある材料から形成される。
【0025】
[0030]格子層406(すなわち、フィン材料層)が、エッチング停止層404上に形成される。格子層406は、光学的に透明な材料から形成される。一例では、格子層406は、窒化ケイ素もしくは酸化ケイ素などのケイ素系材料、または酸化チタンなどのチタン系材料から形成される。格子層406の材料は、約1.3以上、例えば1.5、またはそれ以上などの高屈折率を有する。一般に、格子層406は、約150nmおよび700nmなどの、約1マイクロメートル未満の厚さを有する。
【0026】
[0031]工程304で、グレースケールレジストが堆積され、フォトリソグラフィが実行される。グレースケールレジストは、導波路構造の所望の深さと形状を生成するために、任意のパターンで堆積させることができる。
図4Bは、工程304の結果を示している。基板402、エッチング停止層404、および格子層406が、示されている。グレースケールレジスト層408が、格子層406上に堆積される。この例では、フォトリソグラフィを実行して、左側に深さD、右側に深さD’を有する長さLにわたる導波路構造410の形状を作製した。上記のように、フォトリソグラフィを使用して、任意の所望の1次元、2次元、または3次元形状を、グレースケールレジスト内に作製することができる。
【0027】
[0032]工程306で、格子材料への転写エッチングが実行される。工程306の結果が、
図4Cに示されている。この例示的な実施形態では、フォトリソグラフィが実行された後、転写エッチングが、グレースケールレジスト層408の構造を反映するくさび形構造401を生成する。他の実施形態と組み合わせることができる一実施形態では、グレースケールレジスト層が、完全に除去され、導波路構造410のものと同様のくさび形構造401が、格子層406に作製される。
【0028】
[0033]この例示的な実施形態におけるくさび形構造401は、第1の端部と第2の端部との間に長さLを有する。くさび形構造401の第1の端部は、深さFを有し、第2の端部は、深さF’を有する。すなわち、この実施形態では、くさび形構造401の深さは、第1の端部で最小であり、第2の端部で最大である。FからF’までの深さは、一般に、約0nmから約700nmの範囲内にある。この実施形態では、長さLは、深さFおよびF’と比較してかなり大きい。例えば、長さLが、約25mmであり、一方、第1の端部の深さFが、約0nmから約50nmであり、第2の端部の深さF’が、約250nmから約700nmであり得る。したがって、くさび形構造401は、かなり浅い傾斜を有する。この例では、傾斜の角度は、1度未満、例えば0.1度未満、例えば約0.0005度である。くさび形構造401の傾斜は、明瞭にするために誇張された角度で本図には示されている。
【0029】
[0034]工程308で、共形のハードマスク412が、格子層406上に堆積される。ハードマスク412は、例えば、CVDプロセスまたはPVDプロセスを使用して窒化チタンから形成される。一例では、ハードマスク412は、約30nmおよび約50nmの厚さを有する。工程308の結果が、
図4Dに示されている。共形のハードマスク412は、ハードマスク412の厚さがほぼ均一になるように堆積させることができる。さらに他の実施形態では、共形のハードマスク412は、厚さが格子層406上の様々な地点で約30nmから約50nmまで変化するように堆積させることができる。共形のハードマスク412は、ハードマスク412の傾斜がくさび形構造401の傾斜と同様になるように堆積される。
【0030】
[0035]工程310において、光学平坦化層414が、ハードマスク412上に形成され、フォトレジスト層416が、光学平坦化層414上に形成される。フォトレジスト層416は、例えば、リソグラフィプロセスを使用して、ポリマー材料から形成される。一例では、フォトレジスト層416は、スピンオンコーティングを使用し、格子ラインを露光し、フォトレジストを現像して、形成される。工程310の結果が、
図4Eに示されている。
【0031】
[0036]
図4Eに示されるように、光学平坦化層414は、ほぼ平坦な上面が形成されるように、厚さが変化する。傾斜した共形のハードマスク412と光学平坦化層414のほぼ平坦な上面との間の空間が完全に満たされ、傾斜したくさび形構造401上で様々な厚さを有するように、光学平坦化層414は、厚さが変化する。
【0032】
[0037]工程312で、リソグラフィが実行され、次にハードマスク412がエッチングされる。工程312の結果が、
図4Fに示されている。リソグラフィでは、ドライスキャナを使用して、格子ライン420を画定することができる。他の実施形態では、他の解決策を使用することができる。目標用途に応じて、様々なリソグラフィツールまたは方法を使用できる。ハードマスク412は、エッチングツールを使用してエッチングすることができる。フォトレジストスタックをエッチングすると、ハードマスク412がパターニングされる。ハードマスク412は、傾斜格子構造を形成するためのパターンガイドとして機能する。
図4Fの格子ライン420は、垂直であっても、傾斜して(例えば、垂直に対して角度が付けられている)いてもよい。リソグラフィプロセス中に、格子ラインは、より多くの格子ライン420が画定されるように、またはより少ない格子ライン420が画定されるように、様々な幅および間隔で作製され得る。
【0033】
[0038]工程314において、光学平坦化層414およびフォトレジスト層416が、除去される。工程314の結果が、
図4Gに示されている。光学平坦化層414およびフォトレジスト層416を除去すると、工程312の格子ラインと同様な一組の第1の構造422が得られる。
【0034】
[0039]工程316において、傾斜エッチングが実行されて、格子層406内に格子構造418を作製する。工程316の結果が、
図4Hに示されている。傾斜エッチングは、
図2のチャネル204と同様の、複数の格子構造418の一部を少なくとも部分的に画定する複数のチャネル424を作製する。工程314で作製された第1の構造422は、格子構造418の上部であり、格子構造418の下部は、工程316で作製され、チャネル424によって部分的に画定される。例示的な一実施形態では、リボンビームエッチャーが使用される。任意の適切なエッチングプロセスを利用することができる。
【0035】
[0040]工程318で、任意選択の工程を実行して、ハードマスク412を除去することができる。いくつかの実施形態では、ウェット洗浄を実行することができる。
【0036】
[0041]本明細書に記載のエッチングプロセスは、有利には、くさび形構造が1つ以上の方向に傾斜および/または曲率を有することを可能にする。
図5A~
図5Cは、くさび形構造に使用できる形状の他の例を示している。
図5Aは、導波路構造700の格子層706内のくさび形構造720を示している。くさび形構造720は、それぞれの周辺領域720a、720bから中央領域720cに向かって延びる2つの平面傾斜部分を有する。
図5Bは、導波路構造730の格子層736内のくさび形構造750を示している。くさび形構造750は、周辺領域750a、750bで浅い深さDを有し、中央領域750cで深さが増加した湾曲構造である。一例では、くさび形構造750は、放物線形状を有する。深さDは、周辺領域750a、750bから中央領域750cまで非直線的に増加する。
図5Cは、導波路構造760の格子層766内のくさび形構造780を示している。くさび形構造780は、第1の端部780aから第2の端部780bまで振動する深さDを有し、これは、くさび形構造780の周期的な深さDのパターンを形成する。くさび形構造780は、深さDの直線的な鋸歯状振動で示されている。しかしながら、くさび形構造が深さDにおいて波状振動を有するように、深さDは非直線的に変化し得ることが企図される。くさび形構造720、750、780などのくさび形構造の深さDは、その長さLにわたって、第1の端部(すなわち、720a、750a、780a)から第2の端部(すなわち、720b、750b、780b)まで直線的または非直線的に変化し得る。グレースケールリソグラフィと本明細書に記載の技術を利用して、様々な形状のくさび形構造を、以前の技術で必要とされる複数の工程の代わりに、単一のパスでパターニングすることができる。
【0037】
[0042]別の例では、くさび形構造は、3次元形状を有する。すなわち、
図6A~
図6Cの例に示すように、深さは、複数の方向(すなわち、第1の方向Xと第2の方向Y)で変化する。
図6Aは、鞍点形状の曲率(すなわち、双曲放物面形状)を有するくさび形構造820を示している。
図6Bは、正の曲率を有する楕円放物面形状を有するくさび形構造850を示している。
図6Cは、負の曲率を有する楕円放物面形状を有するくさび形構造880を示している。くさび形構造の3次元形状は、
図6A~
図6Cの例に限定されない。他の所望の形状、例えば、正の曲率または負の曲率を有する正方形領域の放物面、楕円体、および線形傾斜形状などもまた企図され、これとともに使用することができる。これらの場合、くさび形構造の深さは、X方向とY方向の両方で変化する。したがって、傾斜格子構造の上面は、くさび形構造の曲率の形状によって規定されるように湾曲している。
【0038】
[0043]本明細書に記載の実施形態を利用することにより、傾斜格子構造などの、任意のパターンを含む格子構造を有する導波路構造が形成される。導波路の実施形態では、傾斜格子構造は、導波路を通過する光をよりよく収集および指向することによって導波路の機能を改善し、それによって投影画像の明瞭度を改善する。傾斜格子構造は、所望の像平面に投影される光の波長に対する制御を強化する。導波路によってアウトカップリングされた光の出力の均一性は、大幅により均一になる。本明細書に記載の実施形態は、導波路構造を形成するために使用される層を損傷する可能性がある機械研磨などの製造プロセスを排除することによって、導波路構造の製造をさらに改善する。さらに、本明細書に記載の実施形態は、グレースケールリソグラフィを利用して、より広い範囲の用途で導波路構造の使用を可能にする2次元または3次元形状を有する格子を作製する。例えば、他の実施形態では、本明細書に記載の方法を使用して、ナノインプリントリソグラフィのマスターを作製する。
【0039】
[0044]上記は本開示の実施形態に向けられているが、本開示の他のおよびさらなる実施形態を、その基本的な範囲から逸脱することなく考案することができ、その範囲は、以下の特許請求の範囲によって決定される。