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特許7585450セラミックス封着部品およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】セラミックス封着部品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 1/19 20060101AFI20241111BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20241111BHJP
   B22F 1/10 20220101ALI20241111BHJP
   B22F 7/08 20060101ALI20241111BHJP
   B22F 9/00 20060101ALI20241111BHJP
   C04B 37/02 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
B23K1/19 B
B22F1/00 K
B22F1/00 L
B22F1/00 R
B22F1/10
B22F7/08 A
B22F9/00 B
C04B37/02 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023217070
(22)【出願日】2023-12-22
【審査請求日】2024-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】303058328
【氏名又は名称】東芝マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111121
【弁理士】
【氏名又は名称】原 拓実
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 幸子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 英樹
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-105682(JP,A)
【文献】特開平10-041351(JP,A)
【文献】特開昭63-313845(JP,A)
【文献】特開2014-189450(JP,A)
【文献】特開平01-111784(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 1/19
B22F 1/00
B22F 1/10
B22F 7/08
B22F 9/00
C04B 37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス部品とニッケルめっきをした金属部品とを、銀、銅、活性金属、および低融点金属を含む接合層により接合したセラミックス封着部品において、
接合層にニッケルと活性金属の化合物が形成され、
前記化合物と外部の雰囲気に接するろう材層最表面との距離が10μm以上であることを特徴とするセラミックス封着部品。
【請求項2】
前記活性金属が、チタン、ジルコニウム、ハフニウムから選ばれる1種以上の金属であり、前記低融点金属が、インジウム、スズ、ビスマス、アンチモン、亜鉛から選ばれる1種以上の金属であることを特徴とする請求項1に記載のセラミックス封着部品。
【請求項3】
前記金属部品が、鉄、鉄合金、鉄-ニッケル系合金、銅、銅合金から選ばれる1種以上の金属部品であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のセラミックス封着部品。
【請求項4】
前記ニッケルめっきの厚さが0.5μm以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のセラミックス封着部品。
【請求項5】
セラミックス部品が、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化珪素、ないしジルコニア添加アルミナであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のセラミックス封着部品。
【請求項6】
セラミックス部品とニッケルめっきをした金属部品を接合するセラミックス封着部品の製造方法において、セラミックス部品に、少なくとも、銅、活性金属、低融点金属を含む活性金属ペーストを印刷乾燥して活性金属ペースト印刷部品を得る工程と、
前記活性金属ペースト印刷部品の表面の全面を覆うように、少なくとも、銀、銅を含むろう材ペーストを印刷乾燥してろう材ペースト印刷部品を得る工程と、
前記ろう材ペースト印刷部品に金属部品を設置し、一次加熱温度T1と一次加熱温度よりも高い二次加熱温度T2の差(T2―T1)が120℃以下である加熱処理をする接合工程と、
を具備することを特徴とするセラミックス封着部品の製造方法。
【請求項7】
前記活性金属ペーストの印刷厚さが30μm以下であり、かつ印刷厚さの差は5μm以下であり、前記ろう材ペーストの厚さが70μm以上、かつ印刷厚さの差は20μm以下であることを特徴とする請求項6に記載のセラミックス封着部品の製造方法。
【請求項8】
前記一次加熱温度のキープ時間が10分以上30分以下であり、前記二次加熱温度のキープ時間が1分以上10分以下であることを特徴とする請求項6または請求項7に記載のセラミックス封着部品の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、おおむね、電力管などに用いられるセラミックス部品と金属部品を接合したセラミックス封着部品(以下セラミックス封着部品)に関する。
【背景技術】
【0002】
マグネトロン、電力管、電子管用のセラミックス封着部品として、モリブデン(Mo)などの高融点金属を主成分とするメタライズ層を、アルミナ(酸化アルミニウム:Al)などのセラミックス部品に形成したセラミックス封着部品が使用されている。セラミックス封着部品は、セラミックスと金属を接合させ外気を遮断して部品内部を気密封止することにより、外部の環境から内部を保護しセラミックスにより電気絶縁をすることが可能である。例えば、図1に示すような形状のセラミックス封着部品は、アルミナ焼結体からなる円筒形状のセラミックス部品の上端面および下端面のリング部に、モリブデンを主成分とするメタライズ層が形成されている。このメタライズ層の表面には、他の金属部品との接合強度を向上させ、封着を行うために所定厚さのニッケル(Ni)層が形成される。このニッケル部分と円筒形状の金属部品が銀ろう(例えばBAg-8)により接合されている。
【0003】
セラミックス封着部品として、セラミックス円筒体にモリブデンによる金属面を形成し鉄金属円筒体をろう材にて接合した真空気密封着構造を有する電子管が開示されている(特許文献1)。特許文献1によると、金属円筒体をコバールから鉄に代えることにより低コストの電子管を製造することができる。
【0004】
また、モリブデンなどの高融点金属を使用せずに活性金属によりセラミックスにニッケル系合金を接合した真空スイッチ外管が開示されている(特許文献2)。特許文献2によると、接合状態の不安定の原因となる金属間化合物を作ることなく接合強度の高い真空スイッチ外管を製造することができる。また、ニッケルを含まないステンレス鋼を使用した接合体が開示されている(特許文献3)。特許文献3によると活性金属とニッケルの化合物を形成しないため気密性や接合強度を維持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特願平1-46978号公報
【文献】特開2001-220253号公報
【文献】国際公開第2023/063396号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
セラミックス表面をモリブデンなどの高融点金属を使用してメタライズする場合は、1400℃以上の高温に加熱するための炉が必要であり、かつ高温で処理を行うためにエネルギーコストが掛かっていた。また、形成された高融点金属メタライズ層のまま金属部品とろう付けすることが難しく、表面にニッケルなどのめっき処理を行う必要があり工程が複雑であった。
【0007】
これに対して活性金属ろう材の接合では加熱温度が1000℃以下とエネルギーコストの面ではメリットがある。しかしながら、防錆性・濡れ性の向上のために金属部品にニッケルめっきをすると、ニッケルと活性金属が化合物を形成して接合強度を低下させリーク不良が発生するという課題があった。
【0008】
実施形態は、このような課題を解決するものであり、活性金属ろう材でセラミックス部品と金属部品を接合したときに、接合不良やリーク不良を抑制した生産性の高いセラミックス封着部品およびその製造方法に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態に係るセラミック封着部品は、セラミックス部品とニッケルめっきをした金属部品とを、銀、銅、活性金属、および低融点金属を含む接合層により接合したセラミックス封着部品であり、接合層にはニッケルと活性金属の化合物が形成され、前記化合物と接合層表面との距離が10μm以上である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係るセラミックス封着部品の一例を示す斜視図
図2】実施形態に係るセラミックス封着部品の一例を示す断面図
図3】実施形態に係るセラミックス封着部品の接合部の断面の一例を示す図
図4】実施形態に係るセラミックス封着部品の接合部の断面の拡大図の一例を示す図
図5】実施形態に係るセラミックス封着部品の接合部断面の質量%の一例を示す図
図6】実施形態に係るセラミックス封着部品の製造工程の一例を示す断面図
図7】実施形態に係るセラミックス封着部品の加熱プロファイルの一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施形態に係るセラミック封着部品は、セラミックス部品とニッケルめっきをした金属部品とを、銀、銅、活性金属、および低融点金属を含む接合層により接合したセラミックス封着部品であり、接合層にはニッケルと活性金属の化合物が形成され、前記化合物と接合層表面との距離が10μm以上である。
【0012】
図1に実施形態に係るセラミックス封着部品1の斜視図の一例を示す。3は円筒形状のセラミックス部品、2は円筒形状の金属部品である。図1では、セラミックス部品3の上側端面および下側(反対側)端面に金属部品2を接合した例を示したものである。実施形態は、このような形に限定されるものではなく、角筒形状のセラミックス部品や金属部品でもよく、下側底面がセラミックス部品であり上側(片側)だけ金属部品に接合された形態や片方の面に2以上の開口部があるセラミックス部品に金属部品を接合してもよいものとする。
【0013】
図2に実施形態に係るセラミックス封着部品の断面図の一例を示す。実施形態に係るセラミックス封着部品1では、例えばセラミックス部品3は円筒形状のアルミナからなるセラミックス部品である。また、例えば金属部品2は鉄(Fe)やコバール(Fe-Ni―Co)にニッケルめっきをした金属部品である。セラミックス部品3と金属部品2の間に接合層があり、部品内部と外部との封着性(気密性)を保持している。
【0014】
セラミックス部品3は、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化珪素、ジルコニア添加アルミナ(アルジル)のいずれか1種であることが好ましい。アルミナには、アルミナに他のセラミックスなどを添加したアルミナ系のセラミックスを含む。例えばジルコニア添加アルミナは、アルミナと酸化ジルコニウムを混合した焼結体である。また、アルミナにはジルコニア以外の焼結助剤を添加してもよい。これは添加した焼結助剤がガラス相からなる粒界相を形成してアルミナ焼結体を緻密化するためである。焼結助剤としては、マンガン(Mn)、珪素(Si)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)などの化合物が挙げられ、少なくとも1種以上を金属元素単体換算で合計1~15質量%添加することが好ましい。また、セラミックス部品は絶縁封着部品としてコストパフォーマンスが良いアルミナであることが好ましい。
【0015】
セラミックス部品3と接合する金属部品2の材質は、鉄(Fe)および鉄合金、鉄-ニッケル系合金、銅(Cu)および銅合金、タングステン(W)、モリブデン(Mo)であることが好ましい。鉄合金には、圧延鋼などの炭素鋼、クロム鋼およびステンレス鋼などの合金鋼である。鉄―ニッケル系合金には42アロイ(Ni42質量%、Mn0.8質量%以下、残Fe)、コバール(Ni29質量%、Co17質量%、残Fe)などが挙げられる。コストパフォーマンスに優れているのは鉄および鉄合金であり、熱膨張係数など物理特性に優れているのは鉄-ニッケル系合金である。また、熱膨張差による応力を緩和するために変形しやすいのは銅および銅合金であり、熱による影響が大きい場合は銅および銅合金により金属部品を形成することが好ましい。銅合金は、無酸素銅、タフピッチ銅、脱酸銅などの純銅、ベリリウム銅、チタン銅などの高銅合金などである。このため、用途に応じて、鉄および鉄合金、鉄-ニッケル系合金、銅および銅合金により金属部品を使用することが好ましい。また、金属部品は片側がコバール、反対側が銅など2種類以上の金属部品を使用することが可能である。また、金属部品は、プレス加工、切削加工、および曲げ加工などにより所定の形状に加工することにより製造される。金属部品は部品形状に加工したあとに耐食性や濡れ性の向上のためにニッケルめっきを行う。また、銅および銅合金からなる金属部品とニッケルめっきを行った他の金属部品とを同時に接合する場合は、銅および銅合金からなる金属部品はニッケルめっきをしなくてもろう材成分と濡れやすいため、ニッケルめっきを行わなくても接合することが可能である。
【0016】
ニッケルめっきの厚さは0.5~3.0μmである。ニッケルめっきの厚さが0.5μm未満であるとろう材との濡れが悪くなり、接合強度の低下やリーク不良の原因となるろう材と濡れない箇所(ろう切れ)が発生する可能性がある。ニッケルめっきの厚さが3.0μmを超えても、それ以上の濡れ性の改善の効果が得られない。また、ニッケルめっきが厚すぎることで余剰のニッケルが活性金属と化合物を形成するためである。
【0017】
図3図2のA部の拡大図である実施形態に係るセラミックス封着部品の接合部の断面の一例を示す。1はセラミックス封着部品、2は金属部品、3はセラミックス部品、4は接合層である。接合層4は、セラミックス部品側の接合層は、銅(Cu)、銀(Ag)などのろう材金属と、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、およびハフニウム(Hf)などの活性金属と、インジウム(In)、スズ(Sn)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)および亜鉛(Zn)などの低融点金属から形成されている。
【0018】
ろう材金属として使用される銅と銀は、金属としては比較的融点が低く、ろう付けに適した温度で溶けやすい。また、銅と銀を合金化すると、融点がさらに低くなる。合金化した銅と銀の融点は、ろう付けに使用される金属部品の融点よりも低いため、金属部品を溶かさずに接合できるという利点がある。また、銅と銀は、ろう付けに必要な流動性や浸透性にも優れており、毛細管現象を利用して部品の間に侵入しやすい。さらに、銅と銀は、ろう付け後の接合部の強度や耐久性にも寄与する。銅と銀は、ろう付け後に冷却するときに、セラミックスや金属部品との間の応力が発生しにくいため、接合部にひび割れや変形が起こりにくい。また、熱伝導性や導電性にも優れており、ろう付け後の接合部の機能性にも影響しにくい。
【0019】
活性金属は、金属とのぬれ性が悪いセラミックスと反応して、界面エネルギーを低下させることで、ぬれ性を改善する。ぬれ性が良くなると、ろう材が部品の隙間に浸透しやすくなり、接合強度が向上する。また、活性金属は、母材とろう材の原子間に金属結合を形成することで、接合界面に固溶体を生成し、接合部の強度や耐久性に寄与する。活性金属は、ニッケルと反応してニッケル-活性金属化合物を生成しやすい。このため、金属部品中に含まれるニッケルや金属部品表面に形成されるニッケルめっきと活性金属が反応してニッケル-活性金属化合物を形成しやすい。このニッケル-活性金属化合物は水素などの外気の雰囲気と反応して脆化しやすいため、接合強度の低下やリーク不良を起こす可能性がある。
【0020】
低融点金属は接合層に含まれる他の元素よりも融点が低い。低融点金属の融点は、インジウム(157℃)、スズ(232℃)、ビスマス(271℃)、アンチモン(630℃)、および亜鉛(419℃)である。これらの融点は、接合層に含まれる他の金属である、銀(961℃)、銅(1085℃)、チタン(1666℃)、ジルコニウム(1852℃)、ハフニウム(2233℃)などより低い。このため、加熱処理をしたときの低融点金属は他の金属よりも速く拡散する特徴がある。ニッケルや活性金属より速く拡散することにより、添加した低融点金属が銅や銀と反応して接合層を形成しニッケル-活性金属化合物が接合層の表面にまで析出するのを防ぐ。また、低融点金属は活性金属ろう材ペーストに添加する。これは銀と銅からなるろう材ペーストに添加すると、銀と銅の合金の融点が低くなり、先に溶融して凝固してしまうためである。
【0021】
活性金属ろう材成分に含まれる低融点金属の比率は5~15質量%である。低融点金属の量が5質量%より少ないとろう材層への拡散が十分でなくなり、ニッケル-活性金属化合物が接合層の最表面部に析出するのを防ぐ効果が得られない。これとは逆に、低融点金属の比率が15質量%よりも多いと、ろう材の主成分である銀や銅の割合が少なくなり、接合層としても機械的特性など機能が低下する可能性がある。
【0022】
図4図3のB部の拡大図である実施形態に係るセラミックス封着部品の接合部の断面の一例を示す。5は活性金属を主とした活性金属層(以下、「活性金属層」)である。活性金属層5はセラミックス部品3の表面に存在し、セラミックスと金属の接合に寄与する。6は、銀、銅、および低融点金属からなるろう材層(以下、「ろう材層」)である。ろう材層6は、金属部品2の端面近傍において、活性金属層5と金属部品2の間に存在し、活性金属層5と金属部品2の接合に寄与する。また、ろう材層6は、金属部品2の側面に位置する箇所では接合強度を向上するためにメニスカスを形成している。このためメニスカスを形成するろう材層6は外部の雰囲気に接するろう材層最表面(以下。「ろう材層最表面」)を形成する。ろう材層の最表面61は、銀、銅、低融点金属から構成される。後述する製造方法のように、セラミックス側に印刷された低融点金属が加熱処理されろう材層の最表面61にまで拡散するためである。7はニッケル-活性金属化合物である。後述する製造方法のように、セラミックス側に印刷された活性金属は金属部品2の表面に形成されたニッケルめっき層と反応してニッケルと活性金属を主成分としたニッケル-活性金属化合物(以下「ニッケル-活性金属化合物」)を形成する。ニッケルと活性金属を主成分とするということは、ニッケルと活性金属が50質量%以上を含んでいるものとする。このため、ニッケル-活性金属化合物には、銀、銅、低融点金属などが含まれていてもよい。前述のように、添加された低融点金属の拡散スピードが速く、先にろう材層の最表面61に到達するため、ニッケル-活性金属化合物7は、最表面61より内部に存在する。
【0023】
ろう材層の最表面61とニッケル-活性金属化合物7の距離Lは10μm以上である。距離Lが10μm未満であると、酸素や水素などの外部の雰囲気とニッケル-活性金属化合物7が反応して脆化し、気密性や接合強度を低下させる可能性がある。
【0024】
ろう材層の最表面61とニッケル-活性金属化合物7の距離Lの測定方法は、接合部の断面を観察することにより求める。簡易的には、元素の分布により距離を求める。図4のような接合部分の断面をエネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX)によりニッケルおよび活性金属についてカラーマッピングする。ニッケルおよび活性金属が重なった部分がニッケル-活性金属化合物であり最表面との距離を測定することにより求めることができる。
【0025】
ニッケル-活性金属化合物の境界が不明瞭な場合は、境界を横切るようにX線による質量分析を行ない測定することができる。図5(a)では、図4のC部についてD1方向から距離Lを測定する場合の構成元素の質量%を模式的に示した図である。質量%は、エネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX)により、構成する元素について測定する。ろう材層6を構成する銀、銅、活性金属、低融点金属、およびニッケルの質量%について外側(セラミックス金属回路部品の大気やガスなどの雰囲気に晒される部分)から内側(接合層内部)に向かっての分布を示している。質量%の最小値(ゼロ)は観察元素が存在しない部分であり、観察元素が存在するにつれて質量%は大きくなる。いずれかの金属元素の質量%が2%を超えた箇所を最表面L1の箇所とする。図5(b)は、図5(a)のD部について拡大した図である。また、ろう材層6とニッケル-活性金属化合物との境界であるL2は、ニッケルの質量%が20%以上になった箇所とする。このため、距離LはL1とL2の間の距離となる。
【0026】
図6に実施形態に係るセラミックス封着部品の製造方法の工程図を示す。図6(a)はセラミックス部品3の断面図である。図6(a)ではセラミックス部品3の外周部および内周部に面取りが形成されている。面取りが形成されていない状態でもセラミックス封着部品を得ることが可能であるが、セラミックスは外部からの衝撃などにより欠けやすく、面取りをすることは欠け防止のために有効である。
【0027】
図6(b)はセラミックス部品3に活性金属ろう材ペースト8を印刷乾燥した活性金属ペースト印刷部品の状態である。平面であるセラミックス部品端面にペーストを印刷するため接合前の活性金属ろう材ペースト8の表面は略平面である。また、図6(b)では端部の平面部のみに活性金属ろう材ペースト8を印刷しているが、面取り部分にまで活性金属ろう材ペースト8を印刷することも可能である。
【0028】
活性金属ろう材ペースト8は、銅、銀のろう材金属を1種類以上と、チタン、ジルコニウム、およびハフニウムなどの活性金属から選ばれる1種類以上と、インジウム、スズ、ビスマス、アンチモンおよび亜鉛などの低融点金属から選ばれる1種類以上と、を混合した金属粉末に、有機バインダーと有機溶剤を加えたものである。有機バインダーは乾燥工程や接合工程により焼失するものであれば特に限定されるものではない。好ましい一例としては、エチルセルロースが挙げられる。有機溶剤は乾燥工程や焼成工程により焼失するものであれば特に限定されるものではない。好ましい一例としては、テレピネオールやブチルカルビトールが挙げられる。活性金属ろう材ペーストは、活性金属粉末とろう材金属粉末とを混合をした後、有機バインダーおよび有機溶剤と混合して調製されたものである。また、活性金属ろう材成分に含まれる活性金属の比率は0.1~15質量%、好ましくは0.5~10質量%である。
【0029】
活性金属ろう材ペーストの印刷厚さは10~30μmが好ましい。印刷厚さが10μm未満であると活性金属ろう材層の厚さにばらつきができ接合強度を低下させる。一方、30μmを越えるとそれ以上の効果が得られない。また、ペーストはスクリーン印刷法などによりセラミックス部品端面に均一な厚さで印刷する。印刷厚さが不均一であると厚い部分では活性金属ろう材が過剰になり、ろう材溜まりができ熱応力によるクラックが発生する。また、薄い部分ではろう材切れによりリーク不良が発生する。このため、印刷厚さの厚い部分と薄い部分の差は5μm以下であることが好ましい。
【0030】
図6(c)は、図6(b)の乾燥した活性金属ペースト8の表面にろう材ペースト9を印刷乾燥したろう材ペースト印刷部品の状態である。ろう材ペースト9は、金属部品および活性金属ろう材と濡れ性の良い金属で構成される。セラミックスと金属部品の接合に多く使用されるろう材は銀ろうである。銀ろうは、銀と銅を主成分とするが、亜鉛やニッケルなどの他の金属成分を含むこともある。セラミックスと金属部品を接合する中で良く使用される72%銀-28%銅による銀ろう(BAg-8)がある。「銀ろう(JIS Z3261:1998)」によるBAg-8では、銀(Ag)71~73%、銅(Cu)27~29%、その他元素合計0.15%以下である。ろう材ペーストは、ろう材金属粉末を混合したものに、有機バインダーと有機溶剤を加えたものである。有機バインダーは乾燥工程や接合工程により焼失するものであれば特に限定されるものではない。好ましい一例としてはエチルセルロースが挙げられる。有機溶剤は乾燥工程や焼成工程により焼失するものであれば特に限定されるものではない。好ましい一例としてはテレピネオールやブチルカルビトールが挙げられる。ろう材ペーストは、例えば金属粉末を解砕混合した後、有機バインダーおよび有機溶剤と混合して調製されたものである。
【0031】
ろう材ペーストの印刷厚さは70~300μmが好ましい。印刷厚さが70μm未満であるとろう材層の厚さにばらつきができ接合強度を低下させる。一方、300μmを越えるとそれ以上の効果が得られない。また、ペーストはスクリーン印刷法などによりセラミックス部品端面に均一な厚さで印刷する。印刷厚さが不均一であると厚い部分では活性金属ろう材が過剰になり、ろう材溜まりができ熱応力によるクラックが発生する。また、薄い部分ではろう材切れによりリーク不良が発生する。このため、厚い部分と薄い部分の印刷厚さの差は20μm以下であることが好ましい。
【0032】
活性金属ろう材ペースト8には活性金属が含まれておりニッケルと反応して脆化しやすい化合物を生成するため、接合後にろう材ペースト9が活性金属ろう材の表面の全面を覆う状態にすることが好ましい。活性金属ろう材ペースト8と同じ印刷パターンで重ねて印刷した場合では、ろう材ペースト9の粘度を活性金属ペーストの粘度より低くすることにより印刷時に広がり全面を覆うことが可能である。また、ろう材ペースト9の印刷パターンを活性金属ろう材ペーストの印刷パターンよりも大きい(広い)印刷パターンにすることにより活性金属ろう材層の全面を覆うように印刷することも可能である。印刷パターンを大きくしすぎるとろう材ペースト9は加熱処理時にセラミックス部品と反応せずに活性金属ろう材層や金属部品に集まってくるが、このとき活性金属ろう材層や金属部品の周辺に塊になって存在すると応力集中の原因となる。このため、ろう材ペースト9の印刷パターンを大きくする場合は活性金属ろう材ペースト8の印刷パターンよりも0.1mm以下の範囲で大きくすることが好ましい。
【0033】
図6(d)はろう材ペースト印刷部品の印刷乾燥したろう材ペースト6の表面に金属部品2を設置した状態である。図2のように複数の金属部品2を接合する場合は同時に設置する。設置した状態で加熱処理して金属部品2を接合する。
【0034】
加熱処理のプロファイルは一次加熱温度と一次加熱温度よりも高い二次加熱温度の2段階で行うことが好ましい。図7は加熱処理プロファイルの一例を示した図であり、縦軸は温度であり、横軸は時間である。一次加熱温度T1は低融点金属が溶融する必要があるため、低融点金属の融点よりも高い温度に設定する。また、一次加熱温度T1のキープ時間は、低融点金属が接合層全体に拡散するために、10~30分であることが好ましい。キープ時間が10分よりも短いと低融点金属が全体に拡散せずに、ニッケル-活性金属化合物が接合層の最表面部に析出するのを防ぐ効果がなくなる。また、30分を超えて長くしても、それ以上の効果が得られない。
【0035】
また、一次加熱温度T1と二次加熱温度T2の差(T2-T1)は120℃以下である。二次加熱温度T2は、一次加熱温度がT1により低融点金属が拡散した状態で加熱するため、ろう材ペーストの溶融温度は通常よりも下がる。このため、一次加熱温度T1と二次加熱温度T2の差(T2-T1)が120℃よりも大きく、二次加熱温度T2が高いと、ろう材ペーストが金属部品2の表面に広がってメニスカスが形成されなくなり、メニスカスが形成されないと金属部品の接合強度が低下する可能性がある。また、二次加熱温度T2のキープ時間は、ろう材の溶融を行うために、1~10分である。キープ時間が1分よりも短いとろう材が溶融するのに十分な加熱が得られない。また、10分を超えて長くしても、それ以上の効果が得られない。
【0036】
図6(e)は金属部品2を接合した状態である。接合層4が金属部品2の側面に這い上がり強固な接合状態を形成している。このように、接合層4が金属部品2の側面を覆うことにより接合強度が高く部品内外でリークのない封着が可能となる。
【0037】
次に、実施形態に係るセラミックス封着部品の製造方法について説明する。セラミックス封着部品は前述の構成を有していれば、その製造方法は特に限定されるものではないが、歩留まり良く得るための方法として次のものが挙げられる。
【0038】
実施形態に係るセラミックス部品の一例は円筒形状であり、例えば、外径50mm、内径38mm、高さ50mmである。セラミックス部品は外部からの衝撃などにより角部に欠けやクラックが発生しやすい。このため端面の外周部および内周部に面取り加工をしておくことが好ましい。面取りの形状は例えばC面取りやR面取りがあり、面取りの大きさは0.1~2mmであることが好ましい。
【0039】
実施形態に係る金属部品の材質は、鉄および鉄合金、銅および銅合金、鉄―ニッケル系合金、タングステン、モリブデンなどが挙げられる。実施形態に係る金属部品の形状の一例は略円筒形状である。例えば、図2であれば、高さ20mmであり、外形46mm、内径44mmである。これらの金属部品は耐食性や濡れ性の向上のために0.5~30μmのニッケルめっきを行う。
【0040】
活性金属ろう材およびろう材の形態はペーストである。シートやワイヤーは活性金属ろう材を溶融してシートやワイヤー形状に加工してから、製品形状に合わせて所定の寸法に加工するための工程が必要である。これに対してペーストは、ペーストを製造する工程はあるものの、製品形状に合わせて必要な箇所に印刷するなど取り扱いに優れている。また、活性金属ろう材の量は少なすぎると未接合箇所であるろう切れが発生し、多すぎるとろう溜まりが起こり応力破壊の原因となるため、接合面積に合わせて使用するペーストの量を調整することが可能である。
【0041】
活性金属ろう材ペーストは、活性金属粉末にろう材金属粉末を混合したものに、有機バインダーと有機溶剤を加えたものである。有機バインダーは乾燥工程や接合工程により焼失するものであれば特に限定されるものではない。好ましい一例としてはエチルセルロースが挙げられる。有機溶剤は乾燥工程や焼成工程により焼失するものであれば特に限定されるものではない。好ましい一例としてはテレピネオールやブチルカルビトールが挙げられる。活性金属ろう材ペーストは、例えば活性金属粉末とろう材金属粉末とを解砕混合をした後、有機バインダーおよび有機溶剤と混合して調製されたものである。また、活性金属ろう材成分に含まれる活性金属の比率は0.1~15質量%、好ましくは0.5~10質量%である。
【0042】
活性金属ろう材ペーストの印刷厚さは10~30μmが好ましい。印刷厚さが10μm未満であると活性金属ろう材層の厚さにばらつきができ接合強度を低下させる。一方、30μmを越えるとそれ以上の効果が得られない。また、ペーストはスクリーン印刷法などによりセラミックス部品端面に均一な厚さで印刷する。印刷厚さが不均一であると厚い部分では活性金属ろう材が過剰になり、ろう材溜まりができ熱応力によるクラックが発生する。また、薄い部分では活性金蔵ろう材切れによりリーク不良が発生する。このため、厚い部分と薄い部分の印刷厚さの差は5μm以下であることが好ましい。
【0043】
セラミックス部品に印刷されたペーストは大気中などで乾燥する。乾燥温度が低く乾燥時間が短いとペーストの溶液成分が十分に揮発されず、接合時に残った溶液が揮発してボイドが発生する可能性がある。これとは逆に、乾燥温度が高く乾燥時間が長いとペーストの表面の酸化が進み、接合温度が変化する可能性がある。このため、乾燥温度は50~100℃、好ましくは60~80℃である。また、乾燥時間は5~30分、好ましくは10~20分である。
【0044】
ろう材ペーストは、金属部品および活性金属ろう材と濡れ性の良い金属で構成される。セラミックスと金属部品の接合に多く使用されるろう材は銀ろうである。銀ろうは、銀と銅を主成分とするが、亜鉛やニッケルなどの他の金属成分を含むこともある。セラミックスと金属部品を接合する中で良く使用される72%銀-28%銅による銀ろう(BAg-8)がある。「銀ろう(JIS Z3261:1998)」によるBAg-8では、銀(Ag)71~73%、銅(Cu)27~29%、その他元素合計0.15%以下である。ろう材ペーストは、ろう材金属粉末を混合したものに、有機バインダーと有機溶剤を加えたものである。有機バインダーは乾燥工程や接合工程により焼失するものであれば特に限定されるものではない。好ましい一例としてはエチルセルロースが挙げられる。有機溶剤は乾燥工程や焼成工程により焼失するものであれば特に限定されるものではない。好ましい一例としてはテレピネオールやブチルカルビトールが挙げられる。ろう材ペーストは、例えば金属粉末を解砕混合した後、有機バインダーおよび有機溶剤と混合して調製されたものである。
【0045】
ろう材ペーストの印刷厚さは70~300μmが好ましい。印刷厚さが70μm未満であるとろう材層の厚さにばらつきができ接合強度を低下させる。一方、300μmを越えるとそれ以上の効果が得られない。また、ペーストはスクリーン印刷法などによりセラミックス部品端面に均一な厚さで印刷する。印刷厚さが不均一であると厚い部分ではろう材が過剰になり、ろう材溜まりができ熱応力によるクラックが発生する。また、薄い部分では活性金ろう材切れによりリーク不良が発生する。このため、厚い部分と薄い部分の印刷厚さの差は20μm以下、さらには15μm以下であることが好ましい。
【0046】
活性金属ろう材層に印刷されたろう材ペーストは大気中などで乾燥する。乾燥温度が低く、乾燥時間が短いとペーストの溶液成分が十分に揮発されず、接合時に残った溶液が揮発してボイドが発生する可能性がある。これとは逆に、乾燥温度が高く、乾燥時間が長いとペーストの表面の酸化が進み、接合温度条件が変化する可能性がある。このため、乾燥温度は50~100℃、好ましくは60~80℃である。また、乾燥時間は5~30分、好ましくは10~20分である。
【0047】
ろう材ペースト乾燥後に金属部品をペースト乾燥面上に設置して加熱処理することにより接合を行う。加熱処理プロファイルは1次加熱と1次加熱よりも高い温度の2次加熱がある2段階の加熱キープがあることが好ましい。1次加熱温度T1は650~850℃、好ましくは700~800℃である。また、1次加熱の接合時間は1次加熱温度に到達した状態で10~30分の範囲が好ましい。また、1次加熱の次の2次加熱温度T2では、1次加熱温度T1との差(T2―T1)が120℃以下であることが好ましい。また、2次加熱の接合時間は、2次加熱温度T2に到達した状態で1~10分の間であることが好ましい。図6(e)のように接合層4は溶融して金属部品2の表面を濡れ広がり接合が行われるため封着性を伴う接合が行われる。接合温度が低く接合時間が短いと活性金属ろう材が十分に溶融せずに接合しない場合がある。これとは逆に、接合温度が高く接合時間が長いとろう材が溶融しすぎて濡れ広がり、ろう切れやボイドが発生する場合がある。
【0048】
また、接合雰囲気は必要に応じ非酸化性雰囲気で行うものとする。非酸化性雰囲気は、窒素雰囲気、窒水素雰囲気が挙げられる。非酸化性雰囲気とすることにより、接合層が酸化されるのを抑制することができる。これにより、接合強度の向上が図られる。接合工程に使用する炉は連続炉やバッチ炉が使用される。量産性において優れているのは連続炉であり、温度や雰囲気の制御がしやすのはバッチ炉である。上記の雰囲気で部品を所定時間で加熱処理することにより接合が行われる。
【0049】
セラミックス部品と金属部品を接合する接合層の厚さは80μm以上であることが好ましい。前述したように接合層は10μm以上の活性金属ろう材層と70μm以上のろう材層から形成されるためである。なお、このときの接合層の厚さとは、金属部品の接合面とセラミックス部品の距離を示す。例えば、図6(e)では金属部品2の先端(端面)が平面である。この場合の接合層の厚さは、金属部品の略中央の平坦部分とセラミックス部品の平坦部との金属部品の平坦部の距離を示す。また、金属部品2の先端がフランジ形状に曲がってセラミックス部品3と接合している場合は、折れ曲がったフランジ部分の略中央部分を接合層の厚さとする。さらに、金属部品2の先端がU字型やV字型などのように尖っている場合は、尖っている先端部分とセラミックス表面との距離を接合層の厚さとする。
【0050】
以上、本発明の実施形態におけるセラミックス封着部品の製造方法によれば、封着部品としての気密性能を保持したまま、コストパフォーマンスに優れたセラミックス封着部品を得ることができる。
【0051】
(実施例1~8、比較例1~8)
アルミナに酸化マンガン(MnO)、酸化ケイ素(シリカ:SiO)、酸化マグネシウム(マグネシア:MgO)の助剤を加えて、92質量%アルミナの組成を有する造粒粉を準備した。造粒粉を金型プレスで成型し1500℃大気中で焼結して、外径50mm、内径40mm、高さ50mm、外径C面取り0.5mm、内径C面取り0.5mmの円筒形状のセラミックス部品を得た。また、窒化アルミニウム(AlN)にイットリア(酸化イットリウム:Y)の助剤を3質量%加えて、窒化アルミニウム造粒粉を準備した。造粒粉を金型プレスで成型し1800℃窒素中で焼結することにより、アルミナ部品と同じ寸法の円筒形状のセラミックス部品を得た。
【0052】
金属部品は、鉄、ステンレス(SUS304)、およびコバールを、外径46mm、内径44mm、高さ20mmの円筒形状にプレス加工して、表1にあるような金属部品を得た。なお、加工した金属部品の表面に表1の厚さのニッケルめっきを施した。
【0053】
次に、金属粉末配合比が、銀粉末、銅粉末、低融点金属粉末、および活性金属粉末を図1に示すような質量%で調合した。実施例1では、銅粉末30質量%、インジウム粉末10質量%、チタン2質量%、残銀粉末である。なお、実施例1では表1中でAg-30Cu-10In-2Tiと表記し、他の実施例や比較例でも同様に表記した。調合した金属粉末をエチルセルロールとテレピネオールと混ぜ混錬機でペースト化して活性金属ろう材ペーストを作製した。セラミックス部品の上下端部(リング部分)に、外径48mm×内径42mmの100メッシュスクリーンを用いてスクリーン印刷により厚さ30μmの活性金属ペーストを印刷し、大気中100℃で乾燥した。活性金属ろう材ペーストを乾燥した。
【0054】
次に、金属粉末配合比が銀粉末と銅粉末を質量%で72:28なるように調合し、活性金属ろう材ペーストと同様な方法でペースト化し銀ろう材ペーストを作製した。活性金属ろう材層を形成したセラミックス部品の上下端部(リング部分)に、外径48mm×内径42mmの100メッシュスクリーンを用いてスクリーン印刷により厚さ100μmのろう材ペーストを印刷し、大気中100℃で乾燥した。次に、金属部品、セラミックス部品、金属部品の順番に治具にセットして、真空炉にて真空中(1×10-2Pa以下)にて表1の一次加熱温度T1で20分間、二次加熱温度T2で5分間の加熱することにより、金属部品とセラミックス部品を接合してセラミックス封着部品を作製した。
【0055】
【表1】
【0056】
表1から分かるとおり、実施例では、ニッケルめっき厚さ、活性金属ろう材ペース比率、加熱温度差(T2-T1)の値は好ましい範囲内であった。一方、比較例では、好ましい範囲外となった。
【0057】
次に、セラミックス封着部品を図2のように中央部分で切断し接合箇所を図3のように研磨した。次に、接合箇所の周辺部分について、エネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX)により、構成する元素の面分析を行った。面分析の状態から図4のD1の位置を決め、質量%分析を行った。質量%分析の値から図5のような接合距離Lを求めた。得られた結果を表2に示す。
【0058】
次に、外部雰囲気からの脆性を確認するために水素加熱試験を行った。水素加熱試験は、加熱処理は、ベルト加熱炉での水素20%の窒水素雰囲気中にて400℃以上にて10分間の加熱処理を1回の加熱処理として、セラミックス封着部品を5回加熱処理して行った。加熱処理後の接合部を目視で観察することにより、表面の色の変化(変色)がないものを合格(〇)、変色(斑点などの一部変色を含む)があるものを不合格(×)とした。
【0059】
次に、水素加熱処理後のセラミックス封着部品の上下2カ所の金属部品をインストロン引張試験機で上下に引っ張ることにより接合強度を求めた。
【0060】
また、水素加熱処理後のセラミックス封着部品の上部をバイトンゴム製の円形治具でシリコーンを塗布して抑えて下部をヘリウムリークディテクターに固定して吸引してヘリウムリーク試験を行った。ヘリウムリーク試験は「ヘリウム漏れ試験方法」(JIS Z2331:2006)の真空吹き付け法(スプレー法)に準拠して行い、真空度1.3μPaにおいて1×10-9Pa・m3/s以上のリークが発生しない場合を合格(〇)、リークが発生した場合を不合格(×)とした。
【0061】
【表2】
【0062】
表2から分かるとおり、接合距離Lについて、実施例では、10μm以上と好ましい範囲であった。実施例の接合条件では、ニッケル-活性金属化合物が、低融点金属の拡散などにより接合層表面に析出するのを防いでいるためである。一方、比較例では、好ましい範囲外となるものがあった。ニッケル-活性金属化合物が、析出するのを防ぐためのバリアが形成されなかったことが原因である。
【0063】
また、表2から分かるとおり、水素加熱試験について、実施例では、変色が見られなかった。接合距離Lが十分な距離が得られたため、水素による脆化がおこらなかったためである。一方、比較例では変色が観察された。接合距離Lが十分な距離が得られなかったため、水素による脆化が起きたためである。
【0064】
また、表2から分かる通り実施例の接合強度は35MPa以上と良好な値であった。実施例の接合条件では、強固な接合層を形成し、水素加熱試験でも脆化しなかったためである。これに対して、比較例では、25MPa以下であった。水素加熱試験で脆化が進んだことにより接合強度の低下につながったためである。








【0065】
また、実施例に係るセラミックス封着部品は、ヘリウムリーク試験でリーク不良が発生しなかった。これは水素加熱試験でも脆化しなかったためである。それに対して比較例ではリーク不良が発生した。これは、水素加熱試験で脆化が進んだことにより、接合強度の低下により気密性が保てなかったためである。
【0066】
上記に示す結果から明らかなように、実施例は比較例と比べて、外部の雰囲気への耐性の向上が認められた。
【0067】
以上、本発明の幾つかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0068】
1…セラミックス封着部品
2…金属部品
3…セラミックス部品
4…接合層
5…活性金属層
6…ろう材層、61…ろう材層最表面
7…ニッケル-活性金属化合物
8…活性金属ろう材ペースト
9…ろう材ペースト
【要約】
【課題】気密特性に優れたセラミックス封着部品およびその製造方法を提供する。
【解決手段】
実施形態に係るセラミック封着部品は、セラミックス部品とニッケルめっきをした金属部品とを、銀、銅、活性金属、および低融点金属を含む接合層により接合したセラミックス封着部品であり、接合層にはニッケルと活性金属の化合物が形成され、前記化合物と接合層表面との距離が10μm以上である。また、セラミックス部品と金属部品を接合するセラミックス封着部品の製造方法において、セラミックス部品に、少なくとも、銅、活性金属、低融点金属を含む活性金属ペーストを印刷乾燥して活性金属ペースト印刷部品を得る工程と、前記活性金属ペースト印刷部品の表面に、少なくとも、銀、銅を含むろう材ペーストを印刷乾燥してろう材ペースト印刷部品を得る工程と、前記ろう材ペースト印刷部品に金属部品を設置し加熱処理をする接合工程と、を具備する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7