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特許7585521植物性タンパク質結着剤、かたまり肉様代替肉、及びかたまり肉様代替肉の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】植物性タンパク質結着剤、かたまり肉様代替肉、及びかたまり肉様代替肉の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23J 3/00 20060101AFI20241111BHJP
   A23J 3/14 20060101ALI20241111BHJP
   A23L 13/60 20160101ALI20241111BHJP
   A23L 29/20 20160101ALI20241111BHJP
   A23L 29/231 20160101ALI20241111BHJP
   A23L 29/256 20160101ALI20241111BHJP
【FI】
A23J3/00 504
A23J3/14
A23L13/60 B
A23L29/20
A23L29/231
A23L29/256
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023566748
(86)(22)【出願日】2023-03-10
(86)【国際出願番号】 JP2023009451
(87)【国際公開番号】W WO2023176743
(87)【国際公開日】2023-09-21
【審査請求日】2023-10-27
(31)【優先権主張番号】P 2022040837
(32)【優先日】2022-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚本 直樹
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-213356(JP,A)
【文献】特開2013-138670(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23J 3/00
A23J 3/14
A23L 13/60
A23L 29/20
A23L 29/231
A23L 29/256
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱非可逆性ゲル形成多糖類、及び熱可逆性ゲル形成多糖類を含む多糖類と、
ゲル化遅延剤と、
ゲル化剤としての2価以上の金属陽イオンと、
を含む植物性タンパク質結着剤。
【請求項2】
前記2価以上の金属イオンが、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、鉄イオン(II)、銅イオン(II)、亜鉛イオン、マンガンイオン、アルミニウムイオン、及び鉄イオン(III)からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項に記載の植物性タンパク質結着剤。
【請求項3】
前記熱非可逆性ゲル形成多糖類が、アルギン酸及び低メトキシル(LM)ペクチンからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の植物性タンパク質結着剤。
【請求項4】
前記熱非可逆性ゲル形成多糖類が、アルギン酸、及びペクチンからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1に記載の植物性タンパク質結着剤。
【請求項5】
前記ゲル化遅延剤がキレート剤である請求項1に記載の植物性タンパク質結着剤。
【請求項6】
前記キレート剤がピロリン酸塩である請求項に記載の植物性タンパク質結着剤。
【請求項7】
前記熱可逆性ゲル形成多糖類が、寒天、カラギーナン、ファーセルラン、ネイティブジェランガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、グアガム、サイリウムシードガム、グルコマンナン、タラガム、及びタマリンドシードガムからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の植物性タンパク質結着剤。
【請求項8】
前記熱可逆性ゲル形成多糖類がカラギーナンである請求項1に記載の植物性タンパク質結着剤。
【請求項9】
繊維束状組織化タンパク質用である請求項1に記載の植物性タンパク質結着剤。
【請求項10】
繊維質の繊維束状組織化タンパク質用である請求項に記載の植物性タンパク質結着剤。
【請求項11】
植物性タンパク質と、請求項1に記載の植物性タンパク質結着剤と、を含むかたまり肉様代替肉。
【請求項12】
前記植物性タンパク質が、繊維束状組織化タンパク質であり、
前記繊維束状組織化タンパク質の繊維軸方向が一方向に向いて配向している請求項11に記載のかたまり肉様代替肉。
【請求項13】
かたまり肉様代替肉全体に対する、前記多糖類の含有量が3質量%以上である請求項11に記載のかたまり肉様代替肉。
【請求項14】
油中水型の乳化物を含む請求項11に記載のかたまり肉様代替肉。
【請求項15】
繊維束状組織化タンパク質と、請求項1に記載の植物性タンパク質結着剤と、を混合して混合物を得る第1工程と、
前記混合物を延伸し、前記繊維束状組織化タンパク質の繊維軸方向が一方向に向いて配向している延伸後混合物を得る第2工程と、
を含み、
前記繊維束状組織化タンパク質が植物性タンパク質である、かたまり肉様代替肉の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、植物性タンパク質結着剤、かたまり肉様代替肉、及びかたまり肉様代替肉の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
畜肉は世界中で大きく消費されている食材である。しかし、環境保護及び健康維持の観点から、畜肉の摂取を控え、大豆等の植物由来の植物性タンパク質を原料とする肉様食品(以下、「代替肉」と称することがある)等を摂取する試みがなされている。それに伴い、植物性タンパク質の加工に適した原料の開発がされている。
例えば、特開2009-213356号公報には、「植物タンパク質に水溶性多糖類であるアルギン酸ナトリウム,コンニャクマンナン,寒天,カラギーナン,ローカストビーンガム,タラガム,タマリンドガム,ペクチンのいずれか1以上を配合し、水分20wt%~80wt%、圧力0.5MPa~3.0MPaの範囲で加圧熱処理されたことを特徴とするタンパク質素材。」が提案されている。
特表2018-506300号公報には、「糸状菌の食用菌粒子とカルシウムイオンとを含む、食用配合物。」が提案されている。
特開2016-163548号公報には、「熱可逆性ゲル化剤と、熱不可逆性ゲル化剤と、塩化ナトリウムと、を含有し、前記熱可逆性ゲル化剤の含有量をA(w/w%)とし、前記熱不可逆性ゲル化剤の含有量をB(w/w%)とし、前記塩化ナトリウムの含有量をC(w/w%)とした場合に、0.30≦B/A≦2.30、0.50≦A+B≦1.40、及び2.0≦C≦4.0を満たすことを特徴とするゲル化剤含有組成物。」が提案されている。
特開2016-010358号公報には、「具材と、耐熱性の第1ゲルと、熱可逆性の第2ゲルとを含有し、加熱処理された状態で容器に充填されており、スプレッド可能な性状をなすことを特徴とするゲル状食品。」が提案されている。
特開2003-180265号公報には、「陽イオンと反応してゲル化する性質を有するゲル化剤と冷却ゲル化性のゲル化剤とを、陽イオンと反応させることなく加熱して溶解させ、次いで冷却してゲル化させ、得られたゲル化物を必要に応じて適宜の大きさに成形し、陽イオンを含む溶液に浸漬して更にゲル化を進行させることを特徴とする耐熱性ゲル化食品の製造方法。」が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
植物性タンパク質を原料とする代替肉等において、成形時の成形性を有する結着剤として多糖類が使用されることがある。結着剤として多糖類を使用する場合、代替肉の形状維持の観点から、加熱処理を行ってもゲルの状態を維持することができる結着剤が一般的に使用される。この場合、加熱調理後のかたまり肉様代替肉の食感を畜肉に近づけるためには、ゲル中における結着剤の濃度を高めることが好ましい。しかしながら、加熱処理を行ってもゲルの状態を維持することができる結着剤は溶解度が低いことがあり、ゲル中における結着剤の濃度を高めることができず、高い濃度で混合しても脆くなって畜肉の食感にはならないことがあった。そのため、成形性を有し、加熱処理を行うことでかたまり肉様代替肉の形状が維持され、かつ加熱調理された後の食感が畜肉の食感に近いかたまり肉様代替肉を提供できる結着剤が求められている。
【0004】
本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、成形性を有し、加熱処理を行うことでかたまり肉様代替肉の形状が維持され、かつ加熱調理された後の食感が畜肉の食感に近いかたまり肉様代替肉を提供できる植物性タンパク質結着剤を提供すること、並びにかたまり肉様代替肉、及びかたまり肉様代替肉の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段には、以下の実施形態を含む。
<1> 熱非可逆性ゲル形成多糖類、及び熱可逆性ゲル形成多糖類を含む多糖類と、
ゲル化遅延剤と、を含む植物性タンパク質結着剤。
<2> 熱非可逆性ゲル形成多糖類が、アルギン酸、及びペクチンからなる群から選択される少なくとも1種である<1>に記載の植物性タンパク質結着剤。
<3> ゲル化遅延剤がキレート剤である<1>又は<2>に記載の植物性タンパク質結着剤。
<4> キレート剤がピロリン酸塩である<3>に記載の植物性タンパク質結着剤。
<5> 熱可逆性ゲル形成多糖類がカラギーナンである<1>~<4>のいずれか1つに記載の植物性タンパク質結着剤。
<6> 繊維束状組織化タンパク質用である<1>~<5>のいずれか1つに記載の植物性タンパク質結着剤。
<7> 繊維質の繊維束状組織化タンパク質用である<6>に記載の植物性タンパク質結着剤。
【0006】
<8> 植物性タンパク質と、<1>~<7>のいずれか1つに記載の植物性タンパク質結着剤と、を含むかたまり肉様代替肉。
<9> 植物性タンパク質が、繊維束状組織化タンパク質であり、繊維束状組織化タンパク質の繊維軸方向が一方向に向いて配向している<8>に記載のかたまり肉様代替肉。
<10> かたまり肉様代替肉全体に対する、多糖類の含有量が3質量%以上である<8>又は<9>に記載のかたまり肉様代替肉。
<11> 油中水型の乳化物を含む<8>~<10>のいずれか1つに記載のかたまり肉様代替肉。
【0007】
<12> 繊維束状組織化タンパク質と、<1>~<7>のいずれか1つに記載の植物性タンパク質結着剤と、を混合して混合物を得る第1工程と、混合物を延伸し、繊維束状組織化タンパク質の繊維軸方向が一方向に向いて配向している延伸後混合物を得る第2工程と、を含むかたまり肉様代替肉の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、成形性を有し、加熱処理を行うことでかたまり肉様代替肉の形状が維持され、かつ加熱調理された後の食感が畜肉の食感に近いかたまり肉様代替肉を提供できる植物性タンパク質結着剤、並びにかたまり肉様代替肉、及びかたまり肉様代替肉の製造方法を提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一組のローラーの配置態様の一例を示す概略斜視図である。
図2】一組のローラーの配置態様の他の一例を示す概略斜視図である。
図3】一組のローラーの配置態様の他の一例を示す概略斜視図である。
図4】一組のローラーの配置態様の他の一例を示す概略斜視図である。
図5】型の一例を示す概略正面図である。
図6】本開示に係るかたまり肉様代替肉の一例を示す概略斜視図である。
図7】本開示に係るかたまり肉様代替肉の断面の一例を示す概略正面図である。
図8】本開示に係るかたまり肉様代替肉の断面の他の一例を示す概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の一例である実施形態について説明する。これらの説明及び実施例は、実施形態を例示するものであり、発明の範囲を制限するものではない。
本開示に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。
組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
「工程」とは、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。
【0011】
<植物性タンパク質結着剤>
本開示に係る植物性タンパク質結着剤は、熱非可逆性ゲル形成多糖類、及び熱可逆性ゲル形成多糖類を含む多糖類と、ゲル化遅延剤と、を含む。
【0012】
本開示に係る植物性タンパク質結着剤は、上記構成により、成形性を有し、加熱処理を行うことでかたまり肉様代替肉の形状が維持され、かつ加熱調理された後の食感が畜肉の食感に近いかたまり肉様代替肉を提供できる植物性タンパク質結着剤となる。その理由は、次の通り推測される。
【0013】
熱非可逆性ゲル形成多糖類を含むことで、加熱調理後においても熱非可逆性ゲル形成多糖類を含むゲルが、ゲルの状態を維持する。また、熱可逆性ゲル形成多糖類を含むことで、加熱調理後におけるかたまり肉様代替肉の食感が畜肉の食感に近くなる。また、ゲル化遅延剤を含有することで、加熱調理前において多糖類を含むゲルの形成を遅延することができる。これにより、成形時にかたまり肉様に形成されやすくなると共に一体感が増し、かたまり肉様代替肉の外観及び食感を向上することができる。
【0014】
(熱非可逆性ゲル形成多糖類)
本開示に係る植物性タンパク質結着剤は、熱非可逆性ゲル形成多糖類を含む。
ここで、熱非可逆性ゲルとは、一度ゲルを形成すると、加熱してもゲルの状態を維持するゲルである。
本開示において、「ゲル」とは、少なくとも、水及び熱非可逆性ゲル形成多糖類を含有し、弾性固体としての挙動を示すものを指す。
熱非可逆性ゲル形成多糖類とは、熱非可逆性ゲルを形成する多糖類である。
【0015】
熱非可逆性ゲル形成多糖類としては、ゲル化前の溶解性の観点から陽イオンとの反応により架橋する多糖類であることが好ましい。
ゲル化剤としての陽イオンは、イオン価数が2価以上の金属イオンであることが好ましい。
金属イオンとしては、例えば、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、鉄イオン(II)、銅イオン(II)、亜鉛イオン、マンガンイオン等の2価金属イオン;アルミニウ
ムイオン、鉄イオン(III)等の3価金属イオンが挙げられる。
安定した架橋構造を得る観点から、金属イオンとしてはカルシウムイオン、マグネシウムイオン、及び亜鉛イオンから選択される少なくとも1種であることが好ましく、カルシウムイオンであることがより好ましい。
【0016】
熱非可逆性ゲル形成多糖類としては、カルボキシ基、カルボン酸陰イオン基(-COO)、スルホ基、及びスルホン酸陰イオン基(-SO )からなる群から選択される少なくとも一種を有する多糖類が挙げられる。
熱非可逆性ゲル形成多糖類としては、例えば、アルギン酸、低メトキシル(LM)ペクチン等が挙げられる。
【0017】
成形性及びゲルの耐熱性向上の観点から、熱非可逆性ゲル形成多糖類としては、アルギン酸、及びペクチンからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0018】
熱非可逆性ゲル形成多糖類の1質量%水溶液(水溶液全体に対して、熱非可逆性ゲル形成多糖類を1質量%含有する水溶液)の粘度は、10mPa・s以上3000mPa・s以下が好ましく、20mPa・s以上1000mPa・s以下であることがより好ましい。
【0019】
熱非可逆性ゲル形成多糖類の1質量%水溶液の粘度は、20℃の温度条件下で、音叉振動式粘度計で測定される値である。
音叉振動式粘度計としては、例えば、SV-10(A&D製)が使用可能である。
【0020】
熱非可逆性ゲル形成多糖類の含有量は、植物性タンパク質結着剤全体に対して、10質量%以上90質量%以下であることが好ましく、20質量%以上80質量%以下であることがより好ましく、30質量%以上70質量%以下であることが更に好ましい。
【0021】
(熱可逆性ゲル形成多糖類)
本開示に係る植物性タンパク質結着剤は、熱可逆性ゲル形成多糖類を含む。
ここで、熱可逆性ゲルとは、常温(25℃)ではゲル(本段落において「ゲル」とは、少なくとも、水及び熱可逆性ゲル形成多糖類を含有し、弾性固体としての挙動を示すものを指す。)の状態を維持し、熱をかけると溶けて液体化(ゾル化)するゲルである。
熱可逆性ゲル形成多糖類とは、熱可逆性ゲルを形成する多糖類である。
【0022】
熱可逆性ゲル形成多糖類としては、寒天、カラギーナン、ファーセルラン、ネイティブジェランガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、グアガム、サイリウムシードガム、グルコマンナン、タラガム、タマリンドシードガム等が挙げられる。
【0023】
加熱調理後における代替肉の形状の維持、及び食感の観点から、熱可逆性ゲル形成多糖類はカラギーナンであることが好ましい。
【0024】
熱可逆性ゲル形成多糖類の含有量は、植物性タンパク質結着剤全体に対して、10質量%以上90質量%以下であることが好ましく、20質量%以上80質量%以下であることがより好ましく、30質量%以上70質量%以下であることが更に好ましい。
【0025】
(熱非可逆性ゲル形成多糖類、及び熱可逆性ゲル形成多糖類の組み合わせ)
熱非可逆性ゲル形成多糖類、及び熱可逆性ゲル形成多糖類の好ましい組み合わせは、熱非可逆性ゲル形成多糖類が、アルギン酸、及びペクチンからなる群から選択される少なくとも1種であり、熱可逆性ゲル形成多糖類がカラギーナンである組み合わせが挙げられる。
【0026】
(ゲル化遅延剤)
本開示に係る植物性タンパク質結着剤は、ゲル化遅延剤を含む。
ゲル化遅延剤とは、熱非可逆性ゲル形成多糖類、又は熱可逆性ゲル形成多糖類のゲル化を抑制する働きを有する化合物である。
【0027】
加熱調理後における代替肉の形状の維持、及び食感の観点から、ゲル化遅延剤としては、熱非可逆性ゲル形成多糖類のゲル化を抑制する働きを有する化合物であることが好ましい。
加熱調理後における代替肉の形状の維持、及び食感の観点から、ゲル化遅延剤としては、キレート剤であることが好ましい。
【0028】
キレート剤としては、公知のキレート剤を好適に用いることができる。
キレート剤としては、例えば、酒石酸、クエン酸、グルコン酸等のオキシカルボン酸;イミノ二酸酢(IDA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等のアミノカルボン酸;ピロリン酸、トリポリリン酸等の縮合リン酸;これらの塩;等が挙げられる。
これらのなかでも、キレート剤としては、加熱調理後における代替肉の形状の維持、及び食感の観点、並びに代替肉の風味の観点から、縮合リン酸又はその塩であることが好ましく、ピロリン酸又はピロリン酸塩であることがより好ましい。
【0029】
ゲル化遅延剤の含有量は、熱非可逆性ゲル形成多糖類、及び熱可逆性ゲル形成多糖類を含む多糖類全体に対して、0.1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、0.3質量%以上10質量%以下であることが更に好ましい。
【0030】
(用途)
本開示に係る植物性タンパク質結着剤は、植物性タンパク質を含有する食材を結着する用途に適している。
植物性タンパク質とは、植物から採取されるタンパク質である。
植物性タンパク質としては、植物から採取されるタンパク質であれば特に限定されない。植物性タンパク質の由来としては、例えば、小麦、大麦、オーツ麦、米、トウモロコシ等の穀類;大豆、えんどう豆、小豆、ひよこ豆、レンズ豆、そら豆、緑豆、ハウチワ豆等の豆類;アーモンド、落花生、カシューナッツ、ピスタチオ、ヘーゼルナッツ、マカデミアンナッツ、アマニ、ゴマ、菜種、綿実、サフラワー、向日葵等の種実類;じゃがいも、さつまいも、山のいも、きくいも、キャッサバ等のいも類;アスパラガス、アーティチョーク、カリフラワー、ブロッコリー、枝豆等の野菜類;バナナ、ジャックフルーツ、キウイフルーツ、ココナッツ、アボカド、オリーブ等の果実類;マッシュルーム、エリンギ、しいたけ、しめじ、まいたけ等のきのこ類;クロレラ、スピルリナ、ユーグレナ、のり、こんぶ、わかめ、ひじき、てんぐさ、もずく等の藻類等が挙げられる。これらのなかでも、塊肉に似た外観及び食感を有する代替肉を得る観点から、食部タンパク質の由来としては、小麦、大豆、えんどう豆、及び米からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、大豆及び小麦からなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
植物性タンパク質は、1種の植物由来のタンパク質を含有してもよいし、2種以上の植物由来のタンパク質を含有してもよい。
【0031】
本開示に係る植物性タンパク質結着剤は、繊維束状組織化タンパク質用であることが好ましい。
ここで繊維束状組織化タンパク質とは、一定の組織を有しているタンパク質である。
また、繊維束状とは、一方向に延びる繊維の束に類似した構造をいう。
組織化タンパク質としては、食感の観点から、筋肉様の組織を有している組織化タンパク質であることが好ましい。
ここで、筋肉様の組織とは、繊維の束に類似した構造を有し、一方向、即ち、繊維の束の長手方向に沿った方向、に割くことができる組織をいう。
なかでも、筋肉様の組織は、繊維の束に類似した構造を有し、一方向に繊維状に割くことができる組織であることが好ましい。
畜肉の赤身は筋肉に由来する。そして筋肉は、筋繊維の束により構成される。よって畜肉の赤身は繊維の束のような構造を有している。本開示に係る植物性タンパク質結着剤を、筋肉様の組織を有している繊維束状組織化タンパク質に適用することで、より畜肉に近い食感を有する代替肉を得ることができる。
【0032】
筋肉様の組織を有している繊維束状組織化タンパク質としては、スポンジ質の繊維束状組織化タンパク質、及び繊維質の繊維束状組織化タンパク質が挙げられる。
ここでスポンジ質とは、外観上、等方的な多孔構造であることを指す。
一方、繊維質とは、外観上、異方的な繊維構造であることを指す。
等方的な多孔構造とは、かたまり肉様代替肉を任意の位置で裁断した断面における孔形が略楕円形状であり、裁断の方向によらず略同一である構造を示す。
異方的な繊維構造とは、かたまり肉様代替肉を任意の位置で裁断した断面が繊維質である構造を示す。かたまり肉様代替肉を裁断した断面は、好ましくは孔形状があり、その孔形状は、裁断方向によって略楕円形状又は略繊維状といった異なる形状となる。
断面を観察する方法としては、かたまり肉様代替肉を裁断して切片を切り出し、切片の断面を顕微鏡で観察する方法又は断面をX線CT(Computed Tomography)で観察する方法が挙げられる。
【0033】
(製造方法)
本開示に係る植物性タンパク質結着剤の製造方法は特に限定されず、例えば、熱非可逆性ゲル形成多糖類、及び熱可逆性ゲル形成多糖類を含む多糖類と、ゲル化剤と、ゲル化遅延剤と、を混合する方法が挙げられる。
植物性タンパク質結着剤の製造時における熱非可逆性ゲル形成多糖類、熱可逆性ゲル形成多糖類、ゲル化剤、及びゲル化遅延剤の添加順番は特に限定されない。ゲル化の遅延性の観点から事前に混合し同時に添加することが好ましい。
【0034】
<かたまり肉様代替肉>
本開示に係るかたまり肉様代替肉は、植物性タンパク質と、本開示に係る植物性タンパク質結着剤と、を含む。
【0035】
(植物性タンパク質)
本開示に係るかたまり肉様代替肉に含まれる植物性タンパク質としては特に限定されず、既述の植物性タンパク質が適用可能である。
食感の観点から、本開示に係るかたまり肉様代替肉に含まれる植物性タンパク質は、組織化タンパク質であることが好ましく、繊維質の繊維束状組織化タンパク質であることがより好ましい。
【0036】
外観の観点から、植物性タンパク質が、繊維束状組織化タンパク質であり、繊維束状組織化タンパク質の繊維軸方向が一方向に向いて配向していることが好ましい。
外観の観点から、本開示に含まれる繊維束状組織化タンパク質は、繊維束状組織化タンパク質の繊維軸方向が近接領域で一方向に向いて配向していることが好ましい。
ここで、繊維束状組織化タンパク質の繊維軸方向とは、筋肉様の組織を形成する繊維の長手方向の向きを意味する。
また、繊維束状組織化タンパク質の繊維軸方向が近接領域で一方向に向いて配向しているとは、繊維束状組織化タンパク質の繊維軸方向が全体に一方向に向いている態様に加え、例えば、近接領域で一方向に一部組織化タンパク質の繊維軸方向が異なるものが含まれる態様、全体として一定の方向に組織化タンパク質の繊維軸方向が配向している態様、及び、全体としては揺らぎを有しながら近接領域では一方向に向いて配向している態様を包含する。
等方的な多孔構造を有するスポンジ質の組織化タンパク質も繊維状にほぐす方法や繊維状に切断する方法によって、繊維束状組織化タンパク質となる。
外観や食感の観点から、かたまり肉様代替肉に含まれる繊維束状組織化タンパク質は、より好ましくは繊維状の組織化タンパク質である。
【0037】
植物性タンパク質の含有量は、かたまり肉様代替肉全体に対して、5質量%以上95質量%以下であることが好ましく、7質量%以上90質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上85質量%以下であることが更に好ましい。
【0038】
(植物性タンパク質結着剤)
本開示に係るかたまり肉様代替肉は、植物性タンパク質結着剤を含有する。
そして、植物性タンパク質結着剤としては、本開示に係る植物性タンパク質結着剤が適用される。
植物性タンパク質結着剤の含有量は、かたまり肉様代替肉全体の質量に対して、1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、3質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。
【0039】
加熱調理後における代替肉の形状の維持、及び食感の観点から、かたまり肉様代替肉全体に対する、多糖類の含有量が1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上30質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上20質量%以下であることが更に好ましい。
【0040】
(油脂)
本開示に係るかたまり肉様代替肉は、食感の観点から、油脂を含有することが好ましい。
油脂としては、植物性油脂、動物性油脂等が挙げられる。
植物性油脂としては、例えば、ナタネ油、大豆油、パーム油、オリーブ油、ヤシ油、米油、コーン油、ココナッツ油等が挙げられる。なお、植物性油脂は、植物から得られる油脂のことを指す。
動物性油脂としては、例えば、牛脂、豚脂、鯨脂、魚油等が挙げられる。なお、動物性油脂は、動物から得られる油脂のことを指す。
【0041】
油脂の融点は特に限定されないが、例えば300℃以下であってもよい。
【0042】
油脂の融点は、熱分析測定装置によって測定される値である。
熱分析測定装置としては、例えば、セイコー電子工業社製SSC5000DSC200が使用可能である。
油脂の融点の測定は、試料3mgを装置に加え、昇温速度3℃/minにて測定する。
【0043】
油脂の含有量は、かたまり肉様代替肉全体に対して、0質量%以上50質量%以下であることが好ましく、1質量%以上40質量%以下であることがより好ましく、3質量%以上30質量%以下であることが更に好ましい。
【0044】
(乳化物)
食感の観点から、本開示に係るかたまり肉様代替肉は、乳化物を含むことが好ましい。
ここで、本明細書において、「乳化物」は、油脂、及び水を含有し、かつ水中油型乳化物、油中水型乳化物等の乳化状態にあるものをいう。
乳化物としては、水中油型の乳化物であってもよいし、油中水型の乳化物であってもよいが、食感の観点から、油中水型の乳化物であることが好ましい。
【0045】
乳化物は、水、油脂、界面活性剤等を含有してもよい。
乳化物に含有される水としては、食品に利用可能な水であればよく、特に限定はない。
乳化物中における水の含有量は、乳化物全体に対して、10質量%以上95質量%以下であることが好ましく、20質量%以上90質量%以下であることがより好ましく、30質量%以上85質量%以下であることが更に好ましい。
【0046】
油脂としては、植物性油脂、動物性油脂等が挙げられる。
植物性油脂及び動物性油脂の具体例としては、既述のものと同一のものが適用される。
乳化物中における油脂の含有量は、乳化物全体に対して、5質量%以上90質量%未満であることが好ましく、10質量%以上80質量%以下であることがより好ましく、15質量%以上70質量%以下であることが更に好ましい。
【0047】
乳化物に含有される界面活性剤としては、可食性の界面活性剤が挙げられる。
可食性の界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、レシチン等が挙げられる。
乳化物中における界面活性剤の含有量は、乳化物全体に対して、0.1質量%以上5質量%未満であることが好ましい。
【0048】
(脂肪塊組成物)
本開示に係るかたまり肉様代替肉は、油脂を含有する粒状体と、親水性ゲルと、を含む脂肪塊組成物を含んでもよい。
【0049】
ここで脂肪塊組成物に含まれる油脂としては、既述の油脂と同一のものが使用可能である。
粒状体の平均粒径は50μm以上500μm以下であることが好ましい。
粒状体の平均粒径は、脂肪塊組成物を透過型光学顕微鏡により観測して粒状体の粒径を5個測定し、その平均値により算出される値である。
【0050】
脂肪塊組成物は、親水性ゲルを含み、親水性ゲルは陽イオンで架橋された可食性のイオン架橋性ポリマーでゲル化していることが好ましい。
ここで、「可食性」とは、ヒトが経口摂取した際に健康状態に対して悪影響を及ぼさない性質を意味する。
「イオン架橋性ポリマー」とは、イオンとの反応により架橋するポリマーを意味する。
可食性のイオン架橋性ポリマーとしては、例えば、アルギン酸、カラギーナン、LMペクチン、LAジェランガム等が挙げられる。
脂肪塊組成物の耐熱性向上の観点から、可食性のイオン架橋性ポリマーとしては、アルギン酸、LMペクチン、及び脱アシル(LA)ジェランガムからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0051】
陽イオンとしては、イオン価数が2価以上の金属イオンであることが好ましい。
金属イオンとしては、例えば、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、鉄イオン(II)、銅イオン(II)、亜鉛イオン、マンガンイオン等の2価金属イオン;アルミニウムイオン、鉄イオン(III)等の3価金属イオンが挙げられる。
安定した架橋構造を得る観点から、金属イオンとしてはカルシウムイオン、マグネシウムイオン、及び亜鉛イオンから選択される少なくとも1種であることが好ましく、カルシウムイオンであることがより好ましい。
【0052】
脂肪塊組成物の含有量は、かたまり肉様代替肉全体に対して、0質量%以上50質量%以下であることが好ましく、1質量%以上40質量%以下であることがより好ましく、3質量%以上30質量%以下であることが更に好ましい。
【0053】
(その他の添加剤)
本開示に係るかたまり肉様代替肉は、例えば、水、調味料、酸味料、苦味料、香辛料、甘味料、酸化防止剤、着色料、発色料、香料、安定剤、保存料等の添加剤を含有してもよい。
これらの添加剤を用いる場合の、添加剤のかたまり肉様代替肉に対する含有量としては、0質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
【0054】
(Toughness(靭性))
本開示に係るかたまり肉様代替肉は、多重バイト試験におけるToughnessが1000gw・cm/cm以上50000gw・cm/cm以下である。
食感の観点から、多重バイト試験におけるToughnessは1500gw・cm/cm以上40000gw・cm/cm以下であることが好ましく、2000gw・cm/cm以上30000gw・cm/cm以下であることがより好ましい。
【0055】
多重バイト試験におけるToughnessは、粘弾性試験装置で測定される値である。粘弾性試験装置としては、例えば、タケモト電機社製、品名:テンシプレッサーMyBpy2systemを使用することができる。
以下、多重バイト試験におけるToughnessの測定方法について、具体的に説明する。
多重バイト試験におけるToughnessの測定方法は、多重バイト試験を用いる。サンプルを30mm角で厚み5mmの大きさに裁断する。粘弾性試験装置のステージにセットし、多重バイト試験の測定条件にて3回ずつ測定し、その平均値を測定値とする。
【0056】
(かたまり肉様代替肉の断面における繊維方向の配向度)
本開示に係るかたまり肉様代替肉は、断面における繊維方向の配向度が1.1以上であることが好ましい。
外観や断面及び食感の観点から、繊維方向の配向度は1.20以上1.60以下であることがより好ましく、1.25以上1.50以下であることが更に好ましく、1.30以上1.45以下であることが特に好ましい。
かたまり肉様代替肉の断面における繊維方向の配向度は、かたまり肉様代替肉の断面を撮影した画像から下記文献1の方法によって算出する。
文献1:Enomae, T., Han, Y.-H. and Isogai, A., "Nondestructive determination of fiber orientation distribution of paper surface by image analysis", Nordic Pulp and Paper Research Journal 21(2): 253-259(2006).http://www.enomae.com/publish/pdf/2006NPPRJ_FibreOrientation.pdf
【0057】
(かたまり肉様代替肉の断面における繊維方向の配向度の測定方法)
断面における繊維方向の配向度は具体的には次のように算出する。
-断面撮影-
かたまり肉様代替肉の厚み方向に沿って切断し断面を露出させ、次の条件でかたまり肉様代替肉の断面を撮影する。
・撮影条件
デジタルカメラ:富士フイルム社製、品名GFX100
レンズ:GF63mmF2.8R WR
撮影モード:モノクロ
絞り値:F4
シャッタースピード:1/30
ISO感度:100
代替肉表面の光量:EV=9 1280lux
撮影時の背景:白
【0058】
-特定配向度の算出-
撮影によって得られた断面画像から、かたまり肉様代替肉の断面のうち一辺が15mmの正方形となる領域に相当する部分を単位面積として切り出す。単位面積において上記文献1に基づいて配向度を算出し、5点算出した値の平均を特定配向度とする。
配向度の算出に関しては計算が行えればどのように行ってもよく、例えば、フリーソフトである非破壊による紙の表面繊維配向解析プログラムFiberOri8single03.exeを用いる
ことができる。非破壊による紙の表面繊維配向解析プログラムとしては、次のサイトに記載されているフリーソフトを用いてもよい。
http://www.enomae.com/FiberOri/index.htm
ここで、かたまり肉様代替肉の大きさが15mmに満たない場合は、同じかたまり肉様代替肉を重ね合わせ15mm以上の大きさにして撮影及び特定配向度の算出を行う。
【0059】
配向度の例として、本開示に係るかたまり肉様代替肉の断面の一例を示す概略正面図を図7に示す。図7は、配向度が1.42の例である。
【0060】
<かたまり肉様代替肉の製造方法>
本開示に係るかたまり肉様代替肉の製造方法は、繊維束状組織化タンパク質と、本開示に係る植物性タンパク質結着剤と、を混合して混合物を得る第1工程と、上記混合物を延伸し、繊維束状組織化タンパク質の繊維軸方向が一方向に向いて配向している延伸後混合物を得る第2工程と、を含む。
以下に本開示に係るかたまり肉様代替肉の製造方法の一実施形態を説明するが、これに限定されることはない。
【0061】
(準備工程)
本開示に係るかたまり肉様代替肉の製造方法は、第1工程の前に繊維束状組織化タンパク質を準備する工程を含んでもよい。
繊維束状組織化タンパク質は、作製した繊維束状組織化タンパク質を使用してもよいし、市販されている繊維束状組織化タンパク質を使用してもよい。
【0062】
繊維束状組織化タンパク質を作製する場合、植物性タンパク質を含有する原料を押出機から押し出して作製することが好ましい。
なお、押出条件は下記の通りとすることが好ましい。
【0063】
組織化タンパク質を作製する場合、植物性タンパク質を含有する原料を押出機から押し出して作製することが好ましい。
なお、押出条件は下記の通りとすることが好ましい。
【0064】
・植物性タンパク質を含有する原料
植物性タンパク質を含有する原料としては、少なくとも植物性タンパク質を含有するが、押し出し効率化の観点から、水も含有することが好ましい。
水の含有量は、タンパク質10質量部に対して、2質量部以上30質量部以下とすることが好ましい。
【0065】
・押出条件
押出機は、特に限定されず、公知の単軸スクリュー押出機、非噛み合い型異方向回転二軸スクリュー押出機、噛み合い型異方向回転二軸スクリュー押出機、及び、噛み合い型
同方向回転二軸スクリュー押出機を用いることができる。
【0066】
押出機のバレル温度は、バレル前半部(原料供給部から、バレル中央までの部分)の温度を60℃以上100℃以下とすることが好ましく、バレル中央(バレルの軸方向長さ中央)の温度を90℃以上170℃以下とすることが好ましく、バレル後半部(バレル中央からバレルの先端までの部分)の温度を140℃以上180℃以下とすることが好ましい。
【0067】
押出機は、バレルの先端にダイを装着していることが好ましい。
ダイはシート状の押出物が得られるダイであることが好ましい。
ダイの吐出口の隙間(リップクリアランス)は1mm以上10mm以下であることが好ましい。
ダイの長さは、30mm以上であることが好ましい。
ダイは冷却ダイであってもよい。ここで冷却ダイとは、例えば冷却液(水又はグリコール等)の循環により冷却されるダイをいう。
冷却ダイを用いることで、押し出された原料の膨化が抑制されやすくなる。そのため、冷却ダイを用いて押し出された組織化タンパク質は繊維質となりやすい。
冷却ダイを用いる場合、冷却ダイの吐出口の温度を90℃以上120℃以下とすることが好ましい。
【0068】
市販されている組織化タンパク質を使用する場合、繊維束状組織化タンパク質としては、ベジタリアンブッチャー製 What the cluck、不二製油製 アペックス1000等が使用可能である。
【0069】
(第1工程)
第1工程は、繊維束状組織化タンパク質と、本開示に係る植物性タンパク質結着剤と、を混合して混合物を得る工程である。
繊維束状組織化タンパク質は、かたまり肉様代替肉に含まれる繊維束状組織化タンパク質と同義であり、好ましい態様もかたまり肉様代替肉に含まれる繊維束状組織化タンパク質と同一である。
【0070】
第1工程において植物性タンパク質結着剤の添加量は、水分によって膨潤した繊維束状組織化タンパク質の質量に対して、1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、3質量%以上25質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上20質量%以下であることが更に好ましい。
【0071】
繊維束状組織化タンパク質と、植物性タンパク質結着剤と、を混合する方法は、特に限定されず、手で混合する方法、公知の混合器を使用する方法等が挙げられる。
混合機としては、ミキサー等が挙げられ、ミキサーのアタッチメントは壁面の付着物をかき上げる構造が好ましい。
【0072】
繊維束状組織化タンパク質と植物性タンパク質結着剤とを混合する前に、繊維束状組織化タンパク質を適切な大きさに調整することが好ましい。
繊維束状組織化タンパク質の大きさを調整する方法としては、繊維束状組織化タンパク質を、裂く方法、刃物で切断する方法、その両方を用いる方法が挙げられる。
繊維束状組織化タンパク質の大きさの調整は、既述の(準備工程)において、押出機の吐出口付近で解砕することで行ってもよく、押出機から回収後肉解し器等を用いて解砕ことで行ってもよい。
【0073】
繊維束状組織化タンパク質は植物性タンパク質結着剤と混合する前に、横幅を2mm以上35mm以下とし、縦幅を35mm以上500mm以下の寸法とすることが好ましい。
繊維束状組織化タンパク質の厚みは、特に限定されず、押出機等によって製造する繊維束状組織化タンパク質の厚さに応じて適宜調整することが好ましい。繊維束状組織化タンパク質の縦幅は、例えば、製造するかたまり肉様代替肉の縦幅に対して、0.1倍以上2倍以下とすることが好ましい。
【0074】
ここで、製造するかたまり肉様代替肉が、油脂、脂肪塊組成物、その他の添加剤等を含有する場合、第1工程において繊維束状組織化タンパク質、及び結着剤と共に混合することが好ましい。
【0075】
(第2工程)
第2工程は混合物を延伸し、繊維束状組織化タンパク質の繊維軸方向が一方向に向いて配向している延伸後混合物を得る工程である。
【0076】
第1工程で得られる混合物(以下、「第1工程混合物」とも称する)を延伸する方法は、繊維束状組織化タンパク質の繊維軸方向が一方向に向いた延伸後混合物が得られれば特に限定されない。
ここで繊維束状組織化タンパク質の繊維軸方向とは、筋肉様の組織を形成する繊維の長手方向の向きを意味する。
また、繊維束状組織化タンパク質の繊維軸方向が一方向に向いて配向しているとは、繊維束状組織化タンパク質の繊維軸方向が完全に同一である場合、及び繊維束状組織化タンパク質の繊維軸方向は各々異なってはいるが一定の方向に向いている場合を含む。
【0077】
第2工程は、第1工程で得られる混合物を延伸し、延伸方向に沿った断面における繊維束状組織化タンパク質の繊維方向の配向度(以下、単に「特定配向度」とも称する)が1.1以上である延伸後混合物を得る工程であることが好ましい。
外観や断面及び食感の観点から、特定配向度は、1.10以上であることが好ましく、1.15以上であることがより好ましく、1.20以上であることが更に好ましい。
【0078】
特定配向度は、上記文献1に記載の方法によって算出する値である。
具体的には、延伸後混合物の延伸方向断面を撮影した画像から上記文献1に記載の方法によって算出する。
【0079】
-特定配向度の測定方法-
特定配向度は具体的には次のように(断面撮影)及び(特定配向度の算出)の手順で算出する。
(断面撮影)
第2工程後の延伸後混合物の加熱硬化を行う。その後、延伸後混合物の延伸方向に沿って切断し断面を露出させ、次の条件で延伸後混合物の断面を撮影する。
・撮影条件
デジタルカメラ:富士フイルム社製、品名GFX100
レンズ:GF63mmF2.8R WR
撮影モード:モノクロ
絞り値:F4
シャッタースピード:1/30
ISO感度:100
代替肉表面の光量:EV=9 1280lux
撮影時の背景:白
(特定配向度の算出)
撮影によって得られた断面画像から、延伸後混合物の断面のうち一辺が15mmの正方形となる領域に相当する部分を単位面積として切り出す。単位面積において上記文献1に基づいて配向度を算出し、5点算出した値の平均を特定配向度とする。
配向度の算出に関しては計算が行えればどのように行ってもよく、例えば、フリーソフトである非破壊による紙の表面繊維配向解析プログラム FiberOri8single03.exeを用いることができる。非破壊による紙の表面繊維配向解析プログラムとしては、次のサイトに記載されているフリーソフトを用いてもよい。
http://www.enomae.com/FiberOri/index.htm
ここで、延伸後混合物の大きさが15mmに満たない場合は、同じ延伸後混合物を重ね合わせ15mm以上の大きさにして撮影及び特定配向度の算出を行う。
【0080】
配向度の観点から、第1工程混合物を延伸する方法としては、
(i)一組のローラーに囲まれた領域に、一組のローラーの回転軸を含む平面に垂直な方向に混合物を通過させて、ローラーによって混合物を押圧することで、混合物を一組のローラーの回転軸を含む平面と垂直な方向に延伸する方法、
(ii)回転軸が平行であり、かつ、同じ方向に回転している一組のローラーに混合物を挟み、混合物を回転させながらローラー間の距離を縮めることによって混合物を押圧することで混合物をローラーの回転軸と平行な方向に延伸する方法、
(iii)第1工程混合物の表面をつかんで引っ張ることで第1工程混合物を延伸する方法、
(iv)第1工程混合物を板で押圧することで第1工程混合物を延伸する方法、のいずれかであることが好ましい。
【0081】
また、混合物の延伸倍率は2倍以上が好ましく、4倍以上がより好ましく、6倍以上が更に好ましい。
延伸倍率とは、延伸後混合物の延伸方向の長さを、第1工程混合物の延伸方向における長さで割った値である。
なお、延伸方向とは、第2工程において第1工程混合物を延伸させる方向をいう。
【0082】
-(i)-
ここで、一組のローラー(以下、「ローラー組」とも称する)に囲まれた領域に、一組のローラーの回転軸を含む平面に垂直な方向に混合物を通過させて、ローラーによって混合物を押圧することで、混合物を一組のローラーの回転軸を含む平面と垂直な方向に延伸する方法の詳細について説明する。
ここで、垂直とは、実質的に直角ととらえられる範囲(具体的には、90°±10°に範囲)を含むものとする。
【0083】
一組のローラーに囲まれた領域に、一組のローラーの回転軸を含む平面に垂直な方向に混合物を通過させる方法としては、ローラー組又は第1工程混合物のいずれか一方を移動することにより、一組のローラーに囲まれた領域に第1工程混合物を通過させる方法が挙げられる。
生産連続性工程簡略化の観点から、第1工程混合物を移動させることが好ましい。
また、第1工程混合物を移動させる方法としては、特に限定されず、第1工程混合物をフィルムで包み、フィルムをキャリアとして引張り、第1工程混合物を移動させてもよい。
【0084】
ローラー組の配置態様の一例は図1の通りである。
図1は、第1工程混合物1を、一組のローラー(ローラー組)2に囲まれた領域に通過させて、第1工程混合物1を延伸し、延伸後混合物4を得る一連の流れを示した図である。
【0085】
第1工程混合物1は、一組のローラー2に含まれるローラーの回転軸を含む平面と垂直な方向(すなわち、図1中の太い矢印の方向)に沿って、一組のローラー2に囲まれた領域を通過させる。
これにより、ローラーによって第1工程混合物1を押圧することで、第1工程混合物1を一組のローラーの回転軸を含む平面と垂直な方向に延伸する。
【0086】
以下、一組のローラー2に含まれるローラーについて説明する。
【0087】
ローラーの大きさは特に限定されず、製造するかたまり肉様代替肉の大きさに応じて適宜調整する。
ローラーの軸方向の長さは、例えば、10mm以上200mm以下であることが好ましい。
ローラーの直径(ローラーの軸方向と直交する面における、ローラーの断面の直径)は、例えば、10mm以上100mm以下であることが好ましい。
一組のローラーに含まれるローラーは、同じ大きさでもよく、異なる大きさでもよい。
【0088】
ローラー組は、ローラーの回転軸が平行となる様に2本のローラーを配置してもよく、ローラーの回転軸が多角形の辺を形成する様に3本以上のローラーを有してもよい。
ローラーが2本の場合、ローラー間の距離(ローラーの軸間の距離から2本のローラーの半径をひいたもの)は、例えば、5mm以上200mm以下であることが好ましく、10mm以上150mm以下であることがより好ましく、20mm以上100mm以下であることが更に好ましい。
ローラーが3本以上の場合、ローラーで囲まれた領域(すなわち、ローラーの回転軸を含む面におけるローラーで囲まれた領域)の面積は、例えば、25mm以上90000mm以下であることが好ましく、100mm以上62500mm以下であることがより好ましく、400mm以上40000mm以下であることが更に好ましい。
【0089】
ローラーは、ローラーの周方向に自ら回転していてもよく、第1工程混合物がローラーの間を通過することによって生じる応力によってローラーが周方向に回転してもよい。
ローラーの回転方向は、ローラーの第1工程混合物に接する部分が、第1工程混合物の移動する方向に沿った方向に回転することが好ましい。
ローラーが周方向に自ら回転している場合、ローラーの回転数は、特に限定されず、例えば、10rpm以上100rpm以下が挙げられる。なお、rpmは、revolutions per minuteの略である。
【0090】
生産連続性の観点、及び配向度の観点から、第2工程は、一方向に沿って配置された複数の一組のローラーに第1工程混合物を通過させることで第1工程混合物を延伸する工程であることが好ましい。
【0091】
複数のローラー組の多段階配置態様の一例は図2の通りである。
図2は、第1工程混合物1が、1つ目のローラー組22、及び2つ目のローラー組23との間を通過させることで第1工程混合物1を延伸し、延伸後混合物4を得る一連の流れを示した図である。
【0092】
図2において、第1工程混合物1が移動する方向に沿って、1つ目のローラー組22、及び2つ目のローラー組23が配置されている。
また、第1工程混合物1が移動する方向を軸とし、当該方向を軸に回転する方向において1つ目のローラー組22、及び2つ目のローラー組23が互いに交差角を有して配置されていることが好ましい。
【0093】
ローラー組の個数は、2つ以上でもよく、第1工程混合物の大きさ、製造するかたまり肉様代替肉の大きさに応じて調整することが好ましい。
ローラー組の個数は、2つ以上6つ以下であることが好ましく、2以上5つ以下であることがより好ましく、2以上4つ以下であることが更に好ましい。
【0094】
ローラー組同士の距離は、例えば、10mm以上200mm以下であることが好ましく、20mm以上150mm以下であることがより好ましく、30mm以上100mm以下であることが更に好ましい。
ローラー組同士の距離とは、片方のローラー組に含まれるローラーの回転軸を含む面と、他方のローラー組に含まれるローラーの回転軸を含む面と、の垂直距離を指す。
【0095】
ローラー組同士の交差角は、ローラー組の個数に応じて適宜調整することが好ましい。
例えば、ローラー組が2つの場合、交差角は80度以上90度以下であることが好ましく、85度以上90度以下であることが好ましく、90度であることが更に好ましい。
ローラー組が3以上の場合、隣接するローラー組同士の交差角は同一であっても異なっていてもよい。
隣接するローラー組同士の交差角は、10度以上90度以下であることが好ましく、15度以上80度以下であることが好ましく、20度以上70度であることが更に好ましい。
【0096】
ここで、ローラー組同士の交差角は、片方の組ローラーに含まれるローラーのうちいずれかのローラーの軸と、他方のローラー組に含まれるローラーのうちいずれかのローラーの軸と、で形成される交差角のうち小さい方を意味する。
【0097】
-(ii)-
続いて、回転軸が平行であり、かつ、同じ方向に回転している一組のローラーに混合物を挟み、混合物を回転させながらローラー間の距離を縮めることによって混合物を押圧することで混合物をローラーの回転軸と平行な方向に延伸する方法について説明する。
【0098】
ローラーの大きさは特に限定されず、製造するかたまり肉様代替肉の大きさに応じて適宜調整する。
ローラーの軸方向の長さは、例えば、10mm以上2000mm以下であることが好ましい。
ローラーの直径(ローラーの軸方向と直交する面における、ローラーの断面の直径)は、例えば、10mm以上1000mm以下であることが好ましい。
ローラーは、ローラーの軸が平行となる様に配置することが好ましい。
【0099】
一組のローラーに含まれる全てのローラーに外接する円の半径(ローラー間に挟まれる第1工程混合物の半径)は、第2工程中、一定でもよく、変化させてもよい。
以下、一組のローラーに含まれる全てのローラーに外接する円の半径を、単に「特定半径」とも称する。
第1工程混合物を延伸させるために、一組のローラーに含まれる一方又は両方のローラーを移動させ、特定半径を、第2工程中変化させることが好ましい。
特定半径を変化させる場合、例えば、第2工程開始時点における特定半径は、1mm以上200mm以下であることが好ましく、2mm以上150mm以下であることがより好ましく、5mm以上100mm以下であることが更に好ましい。
特定半径を変化させる場合、例えば、第2工程終了時点における特定半径は、1mm以上100mm以下であることが好ましく、2mm以上75mm以下であることがより好ましく、5mm以上50mm以下であることが更に好ましい。
【0100】
ローラーの回転数は、特に限定されず、例えば、10rpm以上100rpm以下が挙げられる。
安定的に混合物を回転させる観点から、一組のローラーの回転方向は、同一方向とすることが好ましい。
【0101】
図3を基に(ii)の態様について、具体的に説明する。
なお、図3は、(ii)の態様の一例であり、これに限定されることはない。
図3は、回転している一組のローラー32の表面上で、第1工程混合物1を回転させることで第1工程混合物1を延伸し、延伸後混合物4を得る一連の流れを示した図である。
【0102】
(ii)において、ローラーは、ローラー表面に凹凸形状を有していてもよい。
(ii)において、第1工程混合物の延伸を促進するために、ローラー表面に回転時ローラーの回転軸方向中心からローラーの回転軸方向両端部へ移動するらせん状の凹凸形状があることが好ましい。その態様を図4に示す。
【0103】
図4は、回転している一組のローラー42の表面上で、第1工程混合物1を回転させることで第1工程混合物1を延伸し、延伸後混合物4を得る一連の流れを示した図である。
そして一組のローラー42に含まれる各ローラー表面には、回転時ローラーの回転軸方向中心からローラーの回転軸方向両端部へ移動する、らせん状の凹凸形状43を有する。
らせん状の凹凸形状43は、ローラーの回転軸方向中心を起点として、ローラーの回転軸方向両端部にらせん状に伸びる凹凸形状であることが好ましい。
【0104】
-(iii)-
続いて、第1工程混合物の表面をつかんで引っ張ることで第1工程混合物を延伸する方法の詳細について説明する。
【0105】
第1工程混合物の表面をつかんで引っ張る方法としては、特に限定されない。
第1工程混合物の表面をつかんで引っ張る方法としては例えば、第1工程混合物の表面を手でつかんで引っ張る方法が挙げられる。
第1工程混合物の表面を手でつかんで引っ張る場合、例えば、右手及び左手で第1工程混合物の表面をつかみ、第1工程混合物の形状が棒状になる様に引っ張ることが好ましい。
【0106】
-(iv)-
続いて、第1工程混合物を板で押圧することで第1工程混合物を延伸する方法の詳細について説明する。
(iv)の方法としては、特に限定されない。
(iv)の方法としては、例えば、型に第1工程混合物を入れて、板で押圧することで型の形状に沿って延伸する方法でもよく、2枚の板に第1工程混合物を挟み、板を動かすことにより第1工程混合物を回転させながら押圧することで延伸する方法でもよい。
型の形状は特に限定されないが、配向度の観点から、板で押圧した後に得られる延伸後混合物の延伸倍率が高くなる形状となる様にすることが好ましい。
【0107】
第1工程混合物を延伸する方法(i)~(iv)の詳細についての説明は以上である。
【0108】
第2工程は、第1工程混合物を延伸した後、延伸後混合物を切断し、切断された延伸後混合物を延伸後混合物の長手方向を揃えて重ね、再度延伸する操作を含むことが好ましい。
【0109】
第1工程混合物を延伸した後、延伸後混合物を切断し、切断された延伸後混合物を延伸後混合物の長手方向を揃えて重ね、再度延伸する一連の操作を1サイクルとしたとき、配向度と生産性の観点から、サイクル数は1以上5以下であることが好ましく、2以上4以下であることが更に好ましい。
【0110】
延伸後混合物を切断する方法としては、特に限定されず、例えば、手で切断する方法、カッター等を使用して切断する方法が挙げられる。
切断された延伸後混合物を、延伸後混合物の長手方向を揃えて重ね、再度延伸する際において、延伸する方法は、各サイクルにおいて同一であってもよいし、異なっていてもよい。
ここで、製造するかたまり肉様代替肉が、油脂、脂肪塊組成物、その他の添加剤等を含有する場合、サイクル間に延伸後混合物を重ね合わせるときに混合させてもよい。
【0111】
(第3工程)
本開示に係るかたまり肉様代替肉の製造方法は、第2工程後に、延伸後混合物を成形して成形体を得た後、成形体を加熱して硬化させる第3工程を含むことが好ましい。
成形体を加熱することで、結着剤が熱非可逆性ゲル形成多糖類を含む場合、熱非可逆性ゲル形成多糖類を含むゲルの形成が促進される。それにより、成形体が硬化し、かたまり肉様代替肉の形状がより維持されやすくなる。
【0112】
成形体の形状は、例えば、ステーキ肉、煮込み用肉等に類似した形状とすることが好ましい。
延伸後混合物を成形する方法は特に限定されず、例えば、延伸後混合物を切断する方法、延伸後混合物に外力を加えて変形する方法等が挙げられ、食感の観点から、延伸後混合物を切断する方法が好ましい。
延伸後混合物を切断する場合、延伸後混合物中に含まれる組織化タンパク質の繊維軸方向と直交する方向に切断することが好ましい。
延伸後混合物を切断する場合、カッター、包丁等の刃物を使用して切断することが好ましい。
【0113】
第3工程は、延伸後混合物を成形して成形体を得る際、延伸後混合物を繊維の配向方向に垂直に切断する工程と、切断前又は切断後の延伸後混合物を複数束ねる工程を含むことが好ましい。
切断した延伸後混合物を複数束ねて成形する際には、繊維方向を揃えて複数束ね成形してもよく、延伸後混合物又は切断した延伸後混合物を、繊維方向を揃えて複数束ねた後、繊維方向に垂直に切断し成形してもよい。
【0114】
延伸後混合物を繊維方向がステーキの膜厚方向になるように成形することで、畜肉のステーキ肉に似た外観のかたまり肉様代替肉が得られやすくなる。
【0115】
第3工程は、延伸後混合物を成形して成形体を得た後、かたまり肉様代替肉の外観をより畜肉の外観に近づける目的で、成形体の表面に脂身に似た模様、例えば、霜降り模様、を形成する工程(以下、脂肪様部分形成工程とも称する)を含んでもよい。
脂肪様部分形成工程は、成形体の表面に、例えば、100μm以上の深さの溝を形成し、形成した溝に油脂を付着して脂肪様部分を形成する工程であることが好ましい。
【0116】
成形体の表面に溝を形成する方法としては、例えば、刃物で表面を掘る方法、型により溝を形成する方法が挙げられ、型により溝を形成する方法が好ましい。
成形体の表面に溝を形成する方法として、型により溝を形成する方法を採用する場合、型としては、例えば図5に示す型が使用可能である。
図5に示す型は、塊肉の脂身の形状に近い形状の溝が得られるように設けられた突起を有する型である。図5中のCの領域が突起している部分であり、成形体がCに接すること
で溝が形成される。
一方、図5中のDの領域(図5中の白みを帯びている領域)は、突起を有しない部分である。
上記型を成形体の表面に押し付けることで、成形体の表面に溝を形成することが可能である。
【0117】
続いて、油脂を成形体の表面に形成された溝に付着させ、溝を埋めることで脂身に似た模様を形成する。
成形体の表面に形成された溝に対して、油脂を付着させる際、油脂の性状は液体の
状態、液体及び固体が混合した半固体の状態又は固体の状態のいずれであってもよいが、液体の状態又は半固体の状態であることが好ましい。
成形体の表面に形成された溝に対して、油脂を付着させる際、油脂は乳化物の状態で付着させてもよい。
【0118】
油脂を乳化物の状態で付着させる場合、ゲル化剤、油脂、及び水を含有する乳化物を用いてもよい。ゲル化剤、油脂、及び水を含有する乳化物を、以下、ゲル化用乳化剤と称する。
ゲル化用乳化剤を、成形体の表面に形成された溝に付着させ、その後溝に付着したゲル化用乳化物をゲル化することが好ましい。
ゲル化用乳化物は、水中油型の乳化物とすることが好ましい。
ゲル化用乳化物中の油脂の油滴径は、20μm以上500μm以下であることが好ましく、30μm以上400μm以下であることがより好ましく、50μm以上300μm以下であることが更に好ましい。
【0119】
溝に付着したゲル化用乳化物をゲル化する方法としては、例えば、溝にゲル化用乳化物を付着させた成形体を、ゲル化促進剤を含有する水溶液中に入れてゲル化する方法が挙げられる。
【0120】
また、脂肪様部分形成工程は、フードプリンターで成形体表面に白いインクで印刷する工程、白い膜を霜降り状にカットし成形体の表面に付着させる工程などが挙げられる。
【0121】
成形体を加熱する方法は特に限定されず、例えば、湿式加熱(熱源として水を使用する加熱方法)、乾式加熱(熱源として金属、気体等水以外のものを使用する加熱方法)、誘電加熱等が挙げられる。
生肉様の外観を作製する場合、着色剤の耐熱性の観点から、成形体を加熱する方法は成形体を真空パウチした後湿式加熱方法で均一、かつ、迅速に加熱することが好ましい。
湿式加熱としては、蒸す方法、湯煎する方法等が挙げられ、均一、かつ、迅速に処理できることから、湯煎する方法であることが好ましい。
【0122】
成形体の加熱温度としては、例えば、成形体の内部の温度が70℃以上100℃以下となる様にすることが好ましい。
【0123】
成形体の内部の温度は温度計により測定される値である。
温度計としては、例えばキーエンス社製、データロガー(TR-W550)を用いることができる。真空パウチ時に熱電対をかたまり肉様代替肉に差し込むことで成形体の内部温度を測定することができる。
【実施例
【0124】
以下に実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」はすべて質量基準である。
【0125】
<実施例1-1:植物性タンパク質結着剤1の調製>
熱可逆性ゲル形成多糖類であるカラギーナン(三晶社製GENUTINE 310-C)15gと、熱非可逆性ゲル形成多糖類であるアルギン酸ナトリウム9.45g及びゲル化剤(すなわち、陽イオンを含む塩。以下同様とする。)である硫酸カルシウム4.2g、ゲル化遅延剤であるピロリン酸ナトリウム1.35gを含む昆布酸429S(キミカ社製)15gと、を混合することで植物性タンパク質結着剤1を調製した。
【0126】
<実施例1-2:植物性タンパク質結着剤2の調製>
熱可逆性ゲル形成多糖類であるカラギーナン(三晶社製GENUTINE 310-C)15gと、熱非可逆性ゲル形成多糖類であるLMペクチン9.45gと、ゲル化剤である硫酸カルシウム4.2gと、ゲル化遅延剤であるピロリン酸ナトリウム1.35gとを混合することで植物性タンパク質結着剤2を調製した。
【0127】
<比較例1-1:植物性タンパク質結着剤C1の準備>
熱可逆性ゲル形成多糖類であるカラギーナン(三晶社製GENUTINE 310-C)を植物性タンパク質結着剤C1とした。
【0128】
<比較例1-2:植物性タンパク質結着剤C2の準備>
熱非可逆性ゲル形成多糖類であるアルギン酸ナトリウムゲル化剤である硫酸カルシウム及びゲル化遅延剤であるピロリン酸ナトリウムを含む昆布酸429S(キミカ社製)を植物性タンパク質結着剤C2とした。
【0129】
<比較例1-3:植物性タンパク質結着剤C3の準備>
熱非可逆性ゲル形成多糖類であるアルギン酸ナトリウム20.8g及びゲル化剤である硫酸カルシウム9.2gを混合することで植物性タンパク質結着剤C3を調製した。
【0130】
<繊維束状組織化タンパク質1の作製>
植物性タンパク質として脱脂大豆粉(昭和フレッシュRF、昭和産業社製)と、植物性タンパク質として小麦グルテン(PRO-グル65、鳥越製粉社製)と、を7:3(=脱脂大豆粉:小麦グルテン[質量比])で混ぜ合わせ、混合粉末1を得た。
スクリュー長が1100mmでスクリュー先端部の最高温度が155℃になるよう設定した2軸エクストルーダーの吐出部に、長さが350mmの冷却ダイ(ダイ幅:50mm、リップクリアランス:3mm)を取り付け、冷却ダイの出口温度を105℃で安定化した。250g/minで混合粉末1をエクストルーダーに導入し、混合粉末1の質量の50質量%の水を該エクストルーダーに加えながら押出機から吐出させ、押出方向と同一の方向に繊維軸方向を有する繊維束状組織化タンパク質1を得た。
【0131】
<実施例2-1:かたまり肉様代替肉1の製造>
(第1工程)
繊維束状組織化タンパク質1を3L(リットル)の沸騰水で10分間茹で、水気を切った。
水気を切った後の繊維束状組織化タンパク質1を100mmの長さに切断し、幅5mm程度になるように繊維軸方向に沿って裂いた。調味料としてサングリルビーフテイスト3457E(三栄源エフエスアイ社製動物性材料不使用の調味料)を含む水溶液(濃度;水溶液全体に対して調味料が5質量%)で10分間茹でた後、着色剤としてサンビートコンクNo.4948(三栄源エフエスアイ社製着色剤)を含む水溶液(濃度;水溶液全体に対して着色剤が3質量%)に浸漬し、短冊状の繊維束状組織化タンパク質を得た。
その後、300gの短冊状の繊維束状組織化タンパク質に植物性タンパク質結着剤として、植物性タンパク質結着剤1 30g、水60gを添加し、均等になるよう混ぜ合わせ、第1工程混合物を得た。
【0132】
(第2工程)
第1工程混合物を球状にした後、手で混合物の表面をつかんで引っ張ることで棒状の延伸後混合物を得た。その後、延伸後混合物の長手方向の中間位置で延伸後混合物を切断し、切断した延伸後混合物の長手方向を揃えて切断した延伸後混合物を重ね、手で重ねた延伸後混合物の表面をつかんで長手方向に引っ張った。第2工程における上記手順を1サイクルとし、同一の操作を合計3サイクル行い、延伸後混合物を得た。
【0133】
(第3工程)
ステーキの切り身形状になるように、延伸後混合物中に含まれる組織化タンパク質の繊維軸方向と直交する方向に延伸後混合物を切断し成形体を得た。成形体を真空パウチした後、成形体の内部の温度が75℃になるように1分間加熱した。その後、成形体を氷水にて急冷し、かたまり肉様代替肉1を得た。
【0134】
<実施例2-2:かたまり肉様代替肉2の製造>
第1工程において、植物性タンパク質結着剤を植物性タンパク質結着剤1から植物性タンパク質結着剤2に変更したこと以外は実施例2-1と同一の手順でかたまり肉様代替肉2を得た。
【0135】
<実施例2-3:かたまり肉様代替肉3の製造>
第1工程において、下記手順で作製した脂肪塊組成物30gを、短冊状の繊維束状組織化タンパク質、植物性タンパク質結着剤、及び水と共に混ぜ合わせ、第1工程混合物を得たこと以外は実施例2-1と同一の手順で脂身入りかたまり肉様代替肉(かたまり肉様代替肉3)を得た。得られた脂身入りかたまり肉様代替肉の断面の示す概略正面図は図8の通りである。
【0136】
(脂肪塊組成物の作製)
(1)液滴形成工程
以下の通り、水相及び油相を用意した。
水相:水道水99.5質量部、界面活性剤としてリョートーシュガーエステル M-1695 (三菱ケミカル社製) 0.5質量部を、合計5kgとなるよう秤量し、スリーワンモーター(新東科学社製)にて30分間攪拌し、完全に溶解させた。
油相:油脂としてココナッツ油(COCOWELL社製、品名:有機プレミアムココナッツオイル(M041))を1kg秤量した。
水相を連続相、油相を分散相として、パイプ状SPG膜(SPGテクノ製、細孔径50μm)を用いて膜乳化を行った。具体的には、管状の容器内にパイプ状SPG膜を挿入して配置し、容器の一端から他端に向けて、パイプ状SPG膜の内側(内管路)に水相を流量50mL/minで流し、パイプ状SPG膜の外側(外管路(容器とSPG膜との間の流路))に油相を流量10mL/minで流した。
この結果、油脂を含有する液滴を含む水溶液(以下、液滴分散液とも称する)を得た。
なお、油脂を含有する液滴の粒径は190μm、CV値は19%であった。
【0137】
ここで、油脂を含有する液滴の粒径及びCV値は、透過型光学顕微鏡により測定した。
シャーレに回収した液滴分散液を透過型光学顕微鏡で観測し、対物倍率5倍で撮影した。撮影して得られた画面に含まれる油脂を含有する液滴の画像を200個以上選択し、画像処理ソフトウェア(例えば、ImageJ)にて各液滴の円相当径を算出した。各液滴の円相当径は、液滴の画像の面積に相当する真円の直径を指す。
算出した各液滴の円相当径の算術平均値を算出し、その算術平均値を「油脂を含有する液滴の平均粒径」とした。
油脂を含有する液滴のCV値とは、下記式で求められる値である。
油脂を含有する液滴のCV値(%)=(油脂を含有する液滴の円相当径の標準偏差/油脂を含有する液滴の平均粒径)×100
また、油脂を含有する液滴の円相当径の標準偏差は、油脂を含有する液滴の平均粒径の測定において算出した200個の油脂を含有する液滴の円相当径の標準偏差である。
【0138】
(2)油脂固化工程
液滴分散液を分液漏斗に加えた後、30分間静置を行った。液滴分散液が、油脂を含有する液滴を含む相と、水相とに分離したため、水相を分液漏斗から排出し、油脂を含有する液滴を含む相を回収した。
回収した油脂を含有する液滴を含む相を、庫内の温度を5℃とした冷蔵庫中に1時間静置し冷却し、油脂の固化を行い、粒子を含有する水溶液(以下、粒子含有液とも称する)を得た。
(3)架橋工程
可食性のイオン架橋性ポリマーとしてアルギン酸ナトリウム(キミカ社製、キミカアルギンI-1)1質量部、界面活性剤としてリョートーシュガーエステル M-1695(三菱ケミカル製)0.5質量部、及び水道水98.5質量部を混合し可食性のイオン架橋性ポリマーを含有する水溶液(以下、イオン架橋性ポリマー溶液とも称する)を得た。
イオン架橋性ポリマー溶液100質量部に対して、粒子含有液100質量部を添加し、撹拌機(スリーワンモーター、ヤマト科学社製)でゆっくり撹拌して溶液1を得た。得られた溶液1をステンレスバットに溶液の厚みが3mmとなるように流し込んだ。
陽イオンを含む塩として塩化カルシウム(富士フイルム和光純薬社製、食品添加物グレード)1質量部を水道水99質量部に溶解し、陽イオンを含有する水溶液1を調製した。ステンレスパッドに含まれる溶液1と同質量の陽イオンを含有する水溶液1を、ステンレスパッドに流し込み、庫内の温度を5℃とした冷蔵庫中に2時間静置し可食性のイオン架橋性ポリマーを架橋(ゲル化)し、粗脂肪塊組成物を得た。
粗脂肪塊組成物を水道水で洗浄した後、表面の水分をキムタオル(登録商標)でふき取り、1mm×1mm×30mm程度の棒状に切断した。切断された粗脂肪塊組成物の表面に付着した油脂を、食用エタノールで洗浄し、脂肪塊組成物とした。
【0139】
<実施例2-4:かたまり肉様代替肉4の製造>
(第3工程)を以下の手順に変更したこと以外は、実施例2-3と同一の手順で霜降り模様を有するかたまり肉様代替肉(かたまり肉様代替肉4)を得た。得られた霜降り模様を有するかたまり肉様代替肉を図6に示す。
なお、霜降り模様の部分には油中水型の乳化物を含有していることを確認した。
(第3工程)
ステーキの切り身形状になるように、延伸後混合物を切断し、成形体を得た。この時、成形体中に含まれる繊維束状組織化タンパク質の繊維軸方向が、成形体の厚さ方向と直交する方向に向く状態となる様に延伸後混合物を切断した。切断した延伸後混合物を、凹凸の溝のある型に入れ、切断した延伸後混合物の表面に霜降り肉の脂肪の形状に似た溝を形成した。
形成した溝に溶液1(溶液1は、実施例2-3 (脂肪塊組成物の作製)の(3)架橋工程と同一の手順で作製した。ゲル化用乳化剤。)を塗布した。溶液1を塗布した成形体を、陽イオンを含有する水溶液1(水溶液1は、実施例2-3 (脂肪塊組成物の作製)の(3)架橋工程と同一の手順で作製した。ゲル化促進剤を含有する水溶液。)に浸漬して溶液1に含まれるイオン架橋性ポリマーをゲル化し、溶液1をゲル化した成形体を得た。溶液1をゲル化した成形体を真空パウチした後、成形体の内部の温度が75℃になるように1分間加熱した。その後、成形体を氷水にて急冷し、霜降り模様を有するかたまり肉様代替肉を得た。
【0140】
<比較例2-1:かたまり肉様代替肉C1の製造>
(第1工程)において、植物性タンパク質結着剤を植物性タンパク質結着剤1から植物性タンパク質結着剤C1に変更したこと以外は実施例2-1と同一の手順でかたまり肉様代替肉C1を得た。
【0141】
<比較例2-2:かたまり肉様代替肉C2の製造>
(第1工程)において、植物性タンパク質結着剤を植物性タンパク質結着剤1から植物性タンパク質結着剤C2に変更したこと以外は実施例2-1と同一の手順でかたまり肉様代替肉C2を得た。
【0142】
<比較例2-3:かたまり肉様代替肉C3の製造>
(第1工程)において、植物性タンパク質結着剤を植物性タンパク質結着剤1から植物性タンパク質結着剤C3に変更したこと以外は実施例2-1と同一の手順でかたまり肉様代替肉C3の製造を行ったところ、結着が不十分であった。
【0143】
<評価>
(目視評価)
各例で得られたかたまり肉様代替肉を、200℃のホットプレートで加熱調理した後、10人のパネラーが目視にて以下に示す評価を行った。
【0144】
-加熱調理後の目視評価(表1中「調理後の外観」)-
加熱調理した後のかたまり肉様代替肉がステーキ肉に似た外観を有するか否かを評価し、肯定的な回答を行った人数の集計を行った。
-加熱調理後の断面目視評価(表1中「調理後の断面」)-
加熱調理後のかたまり肉様代替肉を厚さ方向に切断し、切断面が熱調理した後のステーキ肉の切断面に似た外観を有するか否かを評価し、肯定的な回答を行った人数の集計を行った。
【0145】
(食感評価)
加熱調理を行った後のかたまり肉様代替肉を10人のパネラーが食し、加熱調理した後のステーキ肉に似た食感を有するか否かを評価し、肯定的な回答を行った人数の集計を行った。
【0146】
(評価基準)
各評価の評価基準は下記の通りとした。なお、加熱調理後の目視評価、及び加熱調理後の断面目視評価については下記(評価基準-1)により評価を行い、食感評価については下記(評価基準-2)により評価を行った。
(評価基準-1)
S:肯定的な回答を行った人が9人以上である。
A:肯定的な回答を行った人が7人以上8人以下である。
B:肯定的な回答を行った人が4人以上6人以下である。
C:肯定的な回答を行った人が3人以下である。
(評価基準-2)
A:肯定的な回答を行った人が7人以上である。
B:肯定的な回答を行った人が4人以上6人以下である。
C:肯定的な回答を行った人が3人以下である。
【0147】
【表1】
【0148】
表中の略称等について以下に説明する。
・組織化タンパク質の繊維軸方向:かたまり肉様代替肉に含まれる繊維束状組織化タンパク質の繊維軸方向が一方向に向いて配向している場合、配向方向に応じて、「膜厚方向」又は「幅方向」と記載する。かたまり肉様代替肉に含まれる繊維束状組織化タンパク質の繊維軸方向が一方向に向いて配向していない場合、「無」と記載する。
なお、「膜厚方向」とは、繊維束状組織化タンパク質の繊維軸方向が、かたまり肉様代替肉の厚さ方向に向いて配向していることを意味する。
「幅方向」とは、繊維束状組織化タンパク質の繊維軸方向が、かたまり肉様代替肉の厚さ方向と直交する方向に向いて配向していることを意味する。
ここで、比較例2-3において「-」と記載しているが、これは比較例2-3で得られたかたまり肉様代替肉C3は結着が不十分であり、塊の形状を維持することができなかったため、観測できなかったことを示す。
【0149】
・多糖類の含有量(質量%):かたまり肉様代替肉全体に対する、熱非可逆性ゲル形成多糖類、及び熱可逆性ゲル形成多糖類を含む多糖類の含有量を意味する。
【0150】
上記結果から、本実施例の植物性タンパク質結着剤は、成形性を有し、加熱処理を行うことでかたまり肉様代替肉の形状が維持され、かつ、加熱調理された後の食感が畜肉の食感に近いかたまり肉様代替肉が得られることがわかる。
【0151】
(符号の説明)
1 第1工程混合物
2、22、23、32、42 一組の棒状ローラー
43 らせん状の凹凸形状
4 延伸後混合物
C 突起している部分
D 突起を有しない部分
【0152】
2022年3月15日に出願された日本国特許出願2022-040837の開示は参照により本開示に取り込まれる。
本開示に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本開示中に参照により取り込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8