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特許7585551エッチング方法、プリコート方法及びエッチング装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】エッチング方法、プリコート方法及びエッチング装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20241111BHJP
【FI】
H01L21/302 101G
H01L21/302 101H
H01L21/302 101B
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2024512190
(86)(22)【出願日】2023-08-08
(86)【国際出願番号】 JP2023028912
(87)【国際公開番号】W WO2024043077
(87)【国際公開日】2024-02-29
【審査請求日】2024-02-22
(31)【優先権主張番号】P 2022134827
(32)【優先日】2022-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100233814
【弁理士】
【氏名又は名称】矢田 充洋
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】高山 貴光
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 勇稀
【審査官】小▲高▼ 孔頌
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-176174(JP,A)
【文献】特開2016-086046(JP,A)
【文献】国際公開第2021/188340(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)チャンバの内の静電チャックの表面に炭素含有膜を形成する工程と、
(b)前記炭素含有膜上に、基板を載置する工程と、
(c)前記基板をプラズマエッチングする工程と、
を含み、
前記(a)の工程は、
(a1)前記チャンバの内部に炭素及び水素を含むプリコートガスを供給し、前記チャンバ内の圧力を100mTorr以上1000mTorr以下に制御する工程と、
(a2)前記プリコートガスのプラズマを生成する工程と、を含む、
エッチング方法。
【請求項2】
前記(a)の工程は、静電チャックの表面温度を10℃以上80℃以下に制御することを含む、請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項3】
前記(a1)の工程において、前記プリコートガスの流量を10sccm以上1000sccm以下に制御する、請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項4】
前記(a2)の工程において、前記プラズマを生成するソースRF電力を1000W以下とする、請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項5】
前記プリコートガスは、ハイドロカーボンガス、ハイドロフルオロカーボンガス、又は、ハイドロカーボンガス、ハイドロフルオロカーボンガス及びフルオロカーボンガスからなる群から選択される少なくとも1種と水素含有ガスとの混合ガスを含む、請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項6】
前記プリコートガスは、ハイドロカーボンガスを含む、請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項7】
前記プリコートガスは、不活性ガスをさらに含む、請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項8】
前記炭素含有膜は、H原子を20原子%以上50原子%以下含む、請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項9】
前記炭素含有膜は、炭化水素の結晶構造の比[%]を示す(sp3:sp2:H)の三元図において、当該比が
点A(sp3:sp2:H)=(80: 0:20)、
点B(sp3:sp2:H)=( 0:80:20)、
点C(sp3:sp2:H)=( 0:50:50)、
点D(sp3:sp2:H)=(50: 0:50)
の四点からなる四角形ABCDで囲まれる範囲内である、請求項8に記載のエッチング方法。
【請求項10】
前記炭素含有膜の厚さは、5nm以上である、請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項11】
前記炭素含有膜の厚さは、10nm以上100nm以下である、請求項10に記載のエッチング方法。
【請求項12】
前記静電チャックは、表面に複数の凸部を有し、
前記炭素含有膜は、少なくとも前記凸部の上面に形成される、請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項13】
前記炭素含有膜の厚さは、前記凸部の高さよりも薄い、請求項12に記載のエッチング方法。
【請求項14】
前記(a)の工程は、前記(a1)の工程の前に、前記静電チャックの表面に、絶縁膜を形成する工程をさらに含み、
前記炭素含有膜は、前記絶縁膜上に形成される、請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項15】
前記静電チャックは、
セラミック部材と、
前記セラミック部材内に配置された少なくとも1つの電極と、
前記セラミック部材の表面の絶縁膜と、
を含み、
前記絶縁膜は、前記セラミック部材と異なる材料で構成されており、
前記炭素含有膜は、前記絶縁膜上に形成される、請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項16】
(d)前記炭素含有膜を除去する工程と、
(e)前記(a)~(d)の工程を含むシーケンスを繰り返す工程と、を含む、請求項14又は15に記載のエッチング方法。
【請求項17】
前記絶縁膜は、シリコン又は炭素を含む、請求項16に記載のエッチング方法。
【請求項18】
前記(b)の工程と前記(c)の工程とを含むサイクルを1回以上実施した後に、前記炭素含有膜を除去する工程をさらに含む、請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項19】
前記炭素含有膜を除去する工程において、酸素含有ガスから生成したプラズマにより前記炭素含有膜を除去する、請求項18に記載のエッチング方法。
【請求項20】
(a)チャンバ内の静電チャックの表面に、絶縁膜を形成する工程と、
(b)前記絶縁膜上に、炭素含有膜を形成する工程と、
(c)第1の条件を満たすまで、
(c1)前記チャンバ内に基板を搬入し、前記基板を前記炭素含有膜上に載置する工程と、
(c2)前記基板をプラズマエッチングする工程と、
(c3)前記炭素含有膜上から前記基板を取り外し、前記チャンバ外へ搬出する工程と、
を含む第1のシーケンスを繰り返す工程と、
(d)前記(c)の工程の後、前記炭素含有膜を除去する工程と、
(e)第2の条件を満たすまで、前記(b)~(d)の工程を含む第2のシーケンスを繰り返す工程と、を含む、
エッチング方法。
【請求項21】
チャンバ内に配置される静電チャックの表面にプリコート膜を形成するプリコート方法であって、
前記チャンバの内部に炭素及び水素を含むプリコートガスを供給し、前記チャンバ内の圧力を100mTorr以上1000mTorr以下に制御する工程と、
前記プリコートガスのプラズマを生成する工程と、を含む、
プリコート方法。
【請求項22】
少なくとも1つのガス供給口と、少なくとも1つのガス排出口を有するチャンバと、
前記チャンバ内に配置される静電チャックと、
プラズマ生成部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
(a)前記静電チャックに炭素含有膜を形成する工程と、
(b)前記炭素含有膜上に、基板を配置する工程と、
(c)前記基板をプラズマエッチングする工程と、
を含む処理を実行するように構成され、
前記(a)の工程は、
(a1)前記チャンバの内部に炭素及び水素を含むプリコートガスを供給し、前記チャンバ内の圧力を100mTorr以上1000mTorr以下に制御する工程と、
(a2)前記プリコートガスのプラズマを生成する工程と、を含む、
エッチング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エッチング方法、プリコート方法及びエッチング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、処理チャンバ内の構成部材に炭素ベース被膜を形成する方法が開示されている。炭素ベース被膜はダイヤモンド被膜又はダイヤモンド状炭素被膜であり、当該方法は、炭化水素ガスをチャンバ内に供給し、炭化水素ガスのプラズマを発生させて炭素ベース被膜を生成し、炭化水素ガスを脱気除去し、その後、基板に対しエッチングを含む通常のプロセスを行うことが記載されている。また、当該方法はインサイチュで実行可能であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第5952060号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示にかかる技術は、基板と基板支持部の間の吸着力を適切なものとするプリコートを形成する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、(a)チャンバの内部の基板支持部に炭素含有膜を形成する工程と、(b)前記炭素含有膜上に、基板を載置する工程と、(c)前記基板をプラズマエッチングする工程と、を含み、前記(a)の工程は、(a1)前記チャンバの内部に炭素及び水素を含むプリコートガスを供給し、前記チャンバ内の圧力を100mTorr以上1000mTorr以下に制御する工程と、(a2)前記プリコートガスのプラズマを生成する工程と、を含む、エッチング方法。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、基板と基板支持部の間の吸着力を適切なものとするプリコートを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態にかかるプラズマ処理システムの構成例を示す説明図である。
図2】一実施形態にかかるプラズマ処理装置の構成例を示す断面図である。
図3】一実施形態にかかるプラズマ処理方法の概略を示すフローチャートである。
図4】一実施形態にかかるプリコートが形成された本体部の構成の概略を模式的に示す断面図である。
図5】一実施形態にかかるプリコートが形成された本体部の構成の概略を模式的に示す断面図である。
図6】プリコートの結晶構造の比を示す三元図である。
図7】プリコートによる基板と静電チャックの吸着力への影響を時系列順に示す断面図である。
図8】一実施形態にかかるプリコート及び他のコート層を形成する基板支持部の概略を模式的に示す断面図である。
図9】一実施形態にかかるプラズマ処理方法の概略を示すフローチャートである。
図10】一実施形態にかかるプラズマ処理方法の概略を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
半導体デバイスの製造プロセスにおいては、半導体ウェハ(以下、「基板」という)を処理チャンバの内部の基板支持部に載置し、プロセスガスを用いて当該基板に所定の処理を行う様々な処理工程が行われている。また、処理工程で残留した残渣の除去のため処理チャンバ内のドライクリーニングが行われることがある。
【0009】
基板支持部には基板を電気的に吸着して支持する静電チャック(ESC:Electro Static Chuck)が用いられている。当該静電チャックの表面は、処理工程で残留したフッ素などのデポによってフッ化する場合がある。静電チャックの表面がフッ化すると、製造プロセスに対し不利な影響が発生することがある。具体的には、基板との摩擦でフッ化した静電チャックの表面が損傷することや、電気的な性質が変化することが挙げられる。この場合、静電チャックの表面積が変化することにより熱伝達が正常に行われないこと、基板処理空間にパーティクルを発生したりすること、静電吸着が適切に行われないこと、などの影響が生じ得る。このような影響は、上記製造プロセスを高パワーで、かつ長時間で行うという要求から、近年顕著となっている。上記影響を抑制する観点から、静電チャック表面にプリコートを形成することが提案されている。
【0010】
特許文献1には、処理チャンバ内の部材に対し、インサイチュ(in situ:
その場)プロセスにより炭素ベース被膜を形成する方法が開示されている。具体的には、炭素ベース被膜はダイヤモンド被膜又はダイヤモンド状炭素膜(DLC被膜)であり、当該方法は、炭化水素ガスをチャンバ内に供給し、炭化水素ガスのプラズマを発生させて炭素ベース被膜を生成し、炭化水素ガスを脱気除去し、その後、基板に対しエッチングを含む通常のプロセスを行うことが記載されている。これによって、イオン化したガス種によるダメージから処理チャンバ内の部材を保護することが記載されている。
【0011】
このようなプリコートについて本発明者らが鋭意検討したところ、静電チャックの表面にプリコートを形成する場合には、当該プリコートを挟んだ静電チャックと基板との間の電気的な吸着力について考慮する必要があることを知見した。具体的には、静電チャックは基板支持面において基板下面WBと接し、基板を電気的に吸着するが、プリコートは基板支持面と基板下面WBとの間に介在するので、吸着力に影響する場合がある。
【0012】
上記吸着力への影響について、例えばプリコートの導電性が高すぎる場合、当該プリコートと基板との間で電荷が容易に移動してしまい、静電チャックと基板の間の電位差を維持できず、吸着力が低下する。吸着力が低下すると、基板のずれや基板下面へ供給される伝熱ガスの漏れなどが生じる懸念がある。一方、プリコートの導電性が低すぎる場合、デチャック(静電チャックによる基板の吸着を終了し、基板を静電チャックから引き離すこと)の際に基板と静電チャックに残留電荷が多く残留し、デチャックが正常に行われない残留吸着が生じる懸念がある。残留吸着は吸着力が適切でない状態の一例であり、詳細については後述する。したがって、プリコートを形成する場合は静電チャックと基板との間の吸着力を適切なものとすることが要求される。
【0013】
特許文献1には、炭素ベース被膜について、イオン化したガス種による化学的なダメージを抑制する性質について記載されているものの、静電チャックと基板との間の吸着力への影響については記載がない。特許文献1に具体的に記載された炭素ベース被膜は、1μm~50μmのダイヤモンド被膜、又は、0.5μm~50μmのDLC被膜である。DLC被膜におけるDLCはアモルファス炭素(硬質炭素、又はα炭素)であることが記載されている。本発明者らが鋭意検討したところ、上記のような炭素ベース被膜は、少なくとも静電チャックと基板との間の吸着力を適切なものとすることができないことがわかった。
【0014】
そこで、本開示にかかる技術は、静電チャックと基板との間の吸着力を適切なものとすることができるプリコートを形成する。具体的には、プリコートに含まれる炭化水素の結晶構造の比を好適なものとし、プリコートの導電性を好適なものとすることで吸着力を適切なものとする。
【0015】
以下、本実施形態にかかる基板処理装置の構成について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0016】
図1は、プラズマ処理システムの構成例を説明するための図である。一実施形態において、プラズマ処理システムは、プラズマ処理装置1及び制御部2を含む。プラズマ処理システムは、基板処理システムの一例であり、プラズマ処理装置1は、基板処理装置の一例である。プラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、基板支持部11及びプラズマ生成部12を含む。プラズマ処理チャンバ10は、プラズマ処理空間を有する。また、プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間に供給するための少なくとも1つのガス供給口と、プラズマ処理空間からガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口とを有する。ガス供給口は、後述するガス供給部20に接続され、ガス排出口は、後述する排気システム40に接続される。基板支持部11は、プラズマ処理空間内に配置され、基板を支持するための基板支持面を有する。
【0017】
プラズマ生成部12は、プラズマ処理空間内に供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマを生成するように構成される。プラズマ処理空間において形成されるプラズマは、容量結合プラズマ(CCP:Capacitively Coupled Plasma)、誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)、ECRプラズマ(Electron-Cyclotron-resonance plasma)、ヘリコン波励起プラズマ(HWP:Helicon Wave Plasma)、又は、表面波プラズマ(SWP:Surface Wave Plasma)等であってもよい。また、AC(Alternating Current)プラズマ生成部及びDC(Direct Current)プラズマ生成部を含む、種々のタイプのプラズマ生成部が用いられてもよい。一実施形態において、ACプラズマ生成部で用いられるAC信号(AC電力)は、100kHz~10GHzの範囲内の周波数を有する。従って、AC信号は、RF(Radio Frequency)信号及びマイクロ波信号を含む。一実施形態において、RF信号は、100kHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。
【0018】
制御部2は、本開示において述べられる種々の工程をプラズマ処理装置1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部2は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置1の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御部2の一部又は全てがプラズマ処理装置1に含まれてもよい。制御部2は、処理部2a1、記憶部2a2及び通信インターフェース2a3を含んでもよい。制御部2は、例えばコンピュータ2aにより実現される。処理部2a1は、記憶部2a2からプログラムを読み出し、読み出されたプログラムを実行することにより種々の制御動作を行うように構成され得る。このプログラムは、予め記憶部2a2に格納されていてもよく、必要なときに、媒体を介して取得されてもよい。取得されたプログラムは、記憶部2a2に格納され、処理部2a1によって記憶部2a2から読み出されて実行される。媒体は、コンピュータ2aに読み取り可能な種々の記憶媒体であってもよく、通信インターフェース2a3に接続されている通信回線であってもよい。処理部2a1は、CPU(Central Processing Unit)であってもよい。記憶部2a2は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェース2a3は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置1との間で通信してもよい。
【0019】
次に、プラズマ処理装置1の一例としての容量結合型のプラズマ処理装置1の構成例について説明する。図2は、容量結合型のプラズマ処理装置1の構成例を説明するための図である。
【0020】
容量結合型のプラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、ガス供給部20、電源30及び排気システム40を含む。また、プラズマ処理装置1は、基板支持部11及びガス導入部を含む。ガス導入部は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理チャンバ10内に導入するように構成される。ガス導入部は、シャワーヘッド13を含む。基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10内に配置される。シャワーヘッド13は、基板支持部11の上方に配置される。一実施形態において、シャワーヘッド13は、プラズマ処理チャンバ10の天部(ceiling)の少なくとも一部を構成する。プラズマ処理チャンバ10は、シャワーヘッド13、プラズマ処理チャンバ10の側壁10a及び基板支持部11により規定されたプラズマ処理空間10sを有する。プラズマ処理チャンバ10は接地される。シャワーヘッド13及び基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10の筐体とは電気的に絶縁される。
【0021】
基板支持部11は、本体部111及びリングアセンブリ112を含む。本体部111は、中央領域と環状領域を含み、中央領域は基板Wを支持するための基板支持面111aを構成し、環状領域はリングアセンブリ112を支持するためのリング支持面111bとを構成する。ウェハは基板Wの一例である。本体部111のリング支持面111bは、平面視で本体部111の基板支持面111aを囲んでいる。基板Wは、本体部111の基板支持面111a上に配置され、リングアセンブリ112は、本体部111の基板支持面111a上の基板Wを囲むように本体部111のリング支持面111b上に配置される。
【0022】
一実施形態において、本体部111は、基台1110及び静電チャック1111を含む。基台1110は、導電性部材を含む。基台1110の導電性部材は下部電極として機能し得る。静電チャック1111は、基台1110の上に配置される。静電チャック1111は、セラミック部材1111aとセラミック部材1111a内に配置される静電電極1111bとを含む。セラミック部材1111aは、基板支持面111aを有する。一実施形態において、セラミック部材1111aは、リング支持面111bも有する。なお、環状静電チャックや環状絶縁部材のような、静電チャック1111を囲む他の部材がリング支持面111bを有してもよい。この場合、リングアセンブリ112は、環状静電チャック又は環状絶縁部材の上に配置されてもよく、静電チャック1111と環状絶縁部材の両方の上に配置されてもよい。また、後述するRF電源31及び/又はDC電源32に結合される少なくとも1つのRF/DC電極がセラミック部材1111a内に配置されてもよい。この場合、少なくとも1つのRF/DC電極が下部電極として機能する。後述するバイアスRF信号及び/又はDC信号が少なくとも1つのRF/DC電極に供給される場合、RF/DC電極はバイアス電極とも呼ばれる。なお、基台1110の導電性部材と少なくとも1つのRF/DC電極とが複数の下部電極として機能してもよい。また、静電電極1111bが下部電極として機能してもよい。従って、基板支持部11は、少なくとも1つの下部電極を含む。
【0023】
リングアセンブリ112は、1又は複数の環状部材を含む。一実施形態において、1又は複数の環状部材は、1又は複数のエッジリングと少なくとも1つのカバーリングとを含む。エッジリングは、導電性材料又は絶縁材料で形成され、カバーリングは、絶縁材料で形成される。
【0024】
また、基板支持部11は、静電チャック1111、リングアセンブリ112及び基板Wのうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、伝熱媒体、流路1110a、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路1110aには、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。一実施形態において、流路1110aが基台1110内に形成され、1又は複数のヒータが静電チャック1111のセラミック部材1111a内に配置される。また、基板支持部11は、基板Wの裏面と基板支持面111aとの間の間隙に伝熱ガスを供給するように構成された伝熱ガス供給部を含んでもよい。
【0025】
シャワーヘッド13は、ガス供給部20からの少なくとも1つの処理ガス又は後述するプリコートガスをプラズマ処理空間10s内に導入するように構成される。シャワーヘッド13は、少なくとも1つのガス供給口13a、少なくとも1つのガス拡散室13b、及び複数のガス導入口13cを有する。ガス供給口13aに供給された処理ガスは、ガス拡散室13bを通過して複数のガス導入口13cからプラズマ処理空間10s内に導入される。また、シャワーヘッド13は、少なくとも1つの上部電極を含む。なお、ガス導入部は、シャワーヘッド13に加えて、側壁10aに形成された1又は複数の開口部に取り付けられる1又は複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0026】
ガス供給部20は、少なくとも1つのガスソース21及び少なくとも1つの流量制御器22を含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスを、それぞれに対応のガスソース21からそれぞれに対応の流量制御器22を介してシャワーヘッド13に供給するように構成される。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスの流量を変調又はパルス化する少なくとも1つの流量変調デバイスを含んでもよい。
【0027】
ガス供給部20は、後述するプリコートガスを供給する少なくとも1つのガスソース21及び対応する少なくとも1つの流量制御器22を含んでもよい。
【0028】
電源30は、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ処理チャンバ10に結合されるRF電源31を含む。RF電源31は、少なくとも1つのRF信号(RF電力)を少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に供給するように構成される。これにより、プラズマ処理空間10sに供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが形成される。従って、RF電源31は、プラズマ生成部12の少なくとも一部として機能し得る。また、バイアスRF信号を少なくとも1つの下部電極に供給することにより、基板Wにバイアス電位が発生し、形成されたプラズマ中のイオン成分を基板Wに引き込むことができる。
【0029】
一実施形態において、RF電源31は、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bを含む。第1のRF生成部31aは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に結合され、プラズマ生成用のソースRF信号(ソースRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、ソースRF信号は、10MHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第1のRF生成部31aは、異なる周波数を有する複数のソースRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のソースRF信号は、少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に供給される。
【0030】
第2のRF生成部31bは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して少なくとも1つの下部電極に結合され、バイアスRF信号(バイアスRF電力)を生成するように構成される。バイアスRF信号の周波数は、ソースRF信号の周波数と同じであっても異なっていてもよい。一実施形態において、バイアスRF信号は、ソースRF信号の周波数よりも低い周波数を有する。一実施形態において、バイアスRF信号は、100kHz~60MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第2のRF生成部31bは、異なる周波数を有する複数のバイアスRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のバイアスRF信号は、少なくとも1つの下部電極に供給される。また、種々の実施形態において、ソースRF信号及びバイアスRF信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。
【0031】
また、電源30は、プラズマ処理チャンバ10に結合されるDC電源32を含んでもよい。DC電源32は、第1のDC生成部32a及び第2のDC生成部32bを含む。一実施形態において、第1のDC生成部32aは、少なくとも1つの下部電極に接続され、第1のDC信号を生成するように構成される。生成された第1のDC信号は、少なくとも1つの下部電極に印加される。一実施形態において、第2のDC生成部32bは、少なくとも1つの上部電極に接続され、第2のDC信号を生成するように構成される。生成された第2のDC信号は、少なくとも1つの上部電極に印加される。
【0032】
種々の実施形態において、第1及び第2のDC信号がパルス化されてもよい。この場合、電圧パルスのシーケンスが少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に印加される。電圧パルスは、矩形、台形、三角形又はこれらの組み合わせのパルス波形を有してもよい。一実施形態において、DC信号から電圧パルスのシーケンスを生成するための波形生成部が第1のDC生成部32aと少なくとも1つの下部電極との間に接続される。従って、第1のDC生成部32a及び波形生成部は、電圧パルス生成部を構成する。第2のDC生成部32b及び波形生成部が電圧パルス生成部を構成する場合、電圧パルス生成部は、少なくとも1つの上部電極に接続される。電圧パルスは、正の極性を有してもよく、負の極性を有してもよい。また、電圧パルスのシーケンスは、1周期内に1又は複数の正極性電圧パルスと1又は複数の負極性電圧パルスとを含んでもよい。なお、第1及び第2のDC生成部32a、32bは、RF電源31に加えて設けられてもよく、第1のDC生成部32aが第2のRF生成部31bに代えて設けられてもよい。
【0033】
排気システム40は、例えばプラズマ処理チャンバ10の底部に設けられたガス排出口10eに接続され得る。排気システム40は、圧力調整弁及び真空ポンプを含んでもよい。圧力調整弁によって、プラズマ処理空間10s内の圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0034】
<第1の実施形態>
次に、第1の実施形態にかかるエッチング方法MT1について、図3及び図4を用いて説明する。図3は、第1の実施形態にかかるエッチング方法MT1の概略を示すフローチャートである。エッチング方法MT1では、上記プラズマ処理システムを用いて、プラズマ処理チャンバ10の内部にプリコートPCを形成することができる。なお、本開示においてプラズマ処理とは、エッチングや成膜などの基板Wの処理に先立ちプリコートPCを形成する場合に加えて、プラズマ処理チャンバ10の内部のドライクリーニングに先立ちプリコートPCを形成する場合を含む。また、形成したプリコートPCを除去する場合を含む。プリコートPCは、本開示に係る炭素含有膜の一例である。
【0035】
まず、減圧したプラズマ処理チャンバ10の内部にプリコートガスを供給する(工程ST1)。以下、プリコートガスとしてハイドロカーボンガス(CHガス)の単一成分ガスを用いる場合を説明する。ただしプリコートガスは上記に限定されず、所望の炭素と水素とを含むガスを用いることができる。具体的には、炭素と水素とを含むガスは、CHガス若しくはハイドロフルオロカーボンガス(CHFガス)などの単一成分ガスであってもよく、CHガス、CHFガス又はフルオロカーボンガス(CFガス)から選択される1種と、水素ガス(H2)ガス等の水素含有ガスとの混合ガスであってもよい。プリコートガスとしては、上記の内、フッ素Fを含有しないCHガスの単一成分ガス又はCHガスの混合ガスを用いることが好ましい。なお、CHガスとしては、CHなどのC2n+2で表される飽和炭化水素(アルカン)、CやCなどの二重結合や三重結合を含む不飽和炭化水素(アルケン、アルキン)のいずれもが適用可能であり、特に限定されない。
【0036】
また、プリコートガスは、上記単一成分ガス又は上記混合ガスと、不活性ガスとを所望の比率で含む混合ガスであってもよい。不活性ガスは、アルゴン(Ar)などの貴ガス又は窒素ガス(N2ガス)であってよい。
【0037】
工程ST1では、チャンバの内部にプリコートガスを供給することでチャンバ内の圧力を100mTorr以上に制御する。チャンバ内の圧力が100mTorrより低いと、プリコートPCが、主としてグラファイトにより構成されるため、後述の理由により吸着力が低下する。なお、チャンバ内の圧力の上限値は、特に制限されることはないが、一般的なエッチング装置を使用する場合、1000mTorr以下であってよい。
【0038】
次に、プリコートガスのプラズマを生成して、プラズマ処理チャンバ10の内部にプリコートPCを形成する(工程ST2)。図4は、本実施形態に係るエッチング方法MT1によりプリコートPCが形成された、本体部111の構成の概略を模式的に示す断面図である。本実施形態では、プリコートガスはCHガスであるので、当該CHガスのプラズマを形成する。プラズマ処理チャンバ10の内部とは、少なくとも基板支持部11の基板支持面111a(静電チャック1111の表面)を含む。一実施形態では、基板支持面111aは、伝熱ガスが供給される複数の凹部を有する。一実施形態では、基板支持面111aは、基板Wを支持する複数の凸部120(ドット)を有してもよく、凸部120を有さなくてもよい。
【0039】
図5は、本実施形態に係るエッチング方法MTによりプリコートPCが形成された、基板支持面111aが凸部120を有する場合の本体部111の構成の概略を模式的に示す断面図である。図5で、プリコートPCは、少なくとも複数の凸部120の上面に形成される。すなわち、図示のように、プリコートPCは、基板支持部11(静電チャック1111)に基板Wが支持された状態において、基板支持部11の基板Wに接する部分にのみ形成され、当該凸部120の他の部分(凸部120の側面)や、凹部122などには形成されなくてもよい。またこの場合において、プリコートPCの厚さTPCは、凸部120の高さH120(凸部120の上面と凹部122の下面との距離)よりも薄くなるよう形成されてもよい。
【0040】
図3及び図4に戻り、基板支持面111aが凸部120を有さない場合、プリコートPCは、基板支持面111aの全面に形成されてよい。これ以外には、プラズマ処理チャンバ10の天部や、側壁10aなど、プラズマ処理空間10sに露出する所望のプラズマ処理チャンバ10の内部の構成部材の表面にプリコートPCを形成することとしてもよい。
【0041】
プリコートPCの厚さTPCは、5nm以上であってよい。5nmより薄いと、安定した膜を形成することができず表面の凹凸が顕著となり、基板支持面111aの表面の一部にプリコートPCが形成されない状態となる場合がある。プリコートPCの厚さTPCは、より好ましくは、10nm以上であってよい。一方、プリコートPCの厚さTPCの上限については特に限定されない。プリコートPCの形成にかかる時間やコストに鑑みて、プリコートPCの厚さTPCは100nm以下としてもよい。
【0042】
プリコートPCを形成したのち、基板Wのエッチング処理を実行する(工程ST3)。工程ST3では、基板Wをプラズマ処理チャンバ10に搬入し、プリコートPCの形成された基板支持面111aに載置して、所望のプロセスガスを供給し、当該プロセスガスからプラズマを生成して当該基板Wに対してエッチングを施す。一実施形態において、上記工程ST3の実行後、基板Wをプラズマ処理チャンバ10から搬出し、プリコートPCを除去する(工程ST4)。プリコートPCの除去の方法は特に限定されず、所望の条件によるドライクリーニングであってもよい。一実施形態では、ドライクリーニングはフッ素含有ガス以外のガス、例えば、O2ガス等の酸素含有ガスからプラズマを生成することにより行ってよい。また、工程ST4は、工程ST3を1回実施するごとに行ってもよく、工程ST3を所定回数実施するごとに行ってもよい。すなわち、ドライクリーニングは、基板Wを基板支持器111aに載置する工程と、基板Wに対してエッチングを施す工程とを含むサイクルを1回以上実施するごとに行ってよい。なお、工程ST4は任意の工程であって、必須の工程ではない。
【0043】
エッチング方法MT1において、プリコートガスの流量、チャンバ内温度、RFの周波数並びにパワーなどのプラズマ生成の条件は、装置構成ごとにあらかじめ決定してよい。プラズマ生成の条件は、実験やシミュレーションにより決定して良い。プラズマ生成の条件を実験により決定する場合、当該実験は、エッチング方法MT1に先立って行ってよく、決定した条件を制御部2において記憶しておいてもよい。また、エッチング方法MT1を実行する場合に、上記で記憶した当該条件を工程ST1の前に読込んでもよい。なお装置構成とは、具体的には、RF電極が上部印可か下部印可かの違いや、上下部電極間距離などが挙げられる。またプラズマ生成の条件とは、プリコートPCを形成する工程ST2を実行することで、後述する性状を有するプリコートPCが形成可能であり、かつ、プリコートガスのプラズマが静電チャック1111にダメージを与えないような条件を指す。
【0044】
次に、本実施形態にかかるエッチング方法MT1によって形成されるプリコートPCの性状の一例について、図6を用いて説明する。図6は、炭化水素の結晶構造の比[%]を示す(sp3:sp2:H)の三元図である。
【0045】
本実施形態に係るプリコートPCは、H原子を20原子%以上50原子%以下含む。また、一実施形態ではプリコートPCの好ましい性状として、上記の他、三元図における結晶構造の比[%]を規定する。
【0046】
図6で、上記プリコートPCは、(sp3:sp2:H)の三元図において、比[%]が、点A(sp3:sp2:H)=(80: 0:20)、点B(sp3:sp2:H)=( 0:80:20)、点C(sp3:sp2:H)=( 0:50:50)、点D(sp3:sp2:H)=(50: 0:50)の四点からなる四角形ABCDで囲まれる範囲内である。
【0047】
ここで、(sp3:sp2:H)の三元図について説明する。DLCにおける炭素原子は主に、ダイヤモンド構造を呈するsp3結合、グラファイト構造を呈するsp2結合、及び、水素原子との結合、の3種類の結合様式で結晶を形成している。例えば、プリコートPCが点A(sp3:sp2:H)=(80: 0:20)に示す比[%]を有する場合とは、当該プリコートPCがsp3結合を80%含み、sp2結合を0%含み(すなわち、含まず)、水素原子との結合を20%含むような結晶構造を有することを示している。
【0048】
(sp3:sp2:H)の比[%]は、例えばラマン分光分析によって取得することができる。ラマン分光分析では、可視域のレーザーを励起光としてプリコートPCに照射し、散乱光のラマンスペクトルを取得する。ラマンスペクトルにおけるDバンドピーク及びGバンドピークから、ピーク強度比ID/IGを取得し、これに基づき(sp3:sp2:H)の比[%]を算出することができる。このようにして算出された(sp3:sp2:H)の比[%]は、図6に示す三元図上にプロットされ、当該プロットが上記四角形ABCDで囲まれる範囲内であるかどうか判断することができる。なお、上記算出した比[%]において「sp3、sp2又はHが0%」である場合とは、これらが実際にまったく含まれない場合に限らず、ラマン分光分析で検出されない程度に含むような場合があり得る。
【0049】
なお、特許文献1に具体的に記載されたダイヤモンド被膜は、水素をほとんど含まず、ほとんどの炭素原子がダイヤモンド構造を呈するsp3結合を有すると考えられる。この場合の比[%]は、典型的には、(sp3:sp2:H)≒(100:0:0)である。また、特許文献1に具体的に記載されたDLCは、アモルファス炭素(硬質炭素、又はα炭素)である。アモルファス炭素は、水素をほとんど含まず、sp2比率の高い結晶構造であることが知られている。この場合の比[%]は、典型的には、(sp3:sp2:H)≒(0:100:0)である。したがって、特許文献1に具体的に記載されたダイヤモンド被膜及びDLC被膜は、本実施形態にかかるプリコートPCには含まれない。
【0050】
次に、本実施形態にかかるプリコートPCを上記のように構成することの意義について、図7を用いて説明する。図7は、プリコートPCによる上記吸着力への影響を時系列順に示す断面図である。図7に示すプリコートPCは、本実施形態にかかるプリコートPCであって、上記四角形ABCDに含まれる結晶構造の比[%]を有するプリコートPCである。
【0051】
図7(a)で、基板支持面111aに本実施形態にかかるプリコートPCが形成された静電チャック1111の表面に、基板Wが載置され、基板下面WBとプリコートPCが接した状態を示す。当該状態で、静電電極1111bにはプラスに荷電するよう電荷Eが供給され、基板Wには相対的にマイナスの電荷Eが生じる。これらの電荷Eによって互いに引き合い電気的に吸着する。基板Wのマイナスの電荷Eの一部はプリコートPCに移動している。ただし、プリコートPCは十分に導電性が低く(絶縁性が高く)、静電電極1111bと基板Wとの間の電荷Eによる電位差を維持するため、静電吸着を弱めない。したがって、十分な吸着力で基板を吸着し支持することができる。
【0052】
図7(b)で、デチャックの際には、静電チャック1111のプラスの電荷Eの供給を停止する。この時、プリコートPCにはマイナスの残留電荷REが残留し、基板Wには相対的にプラスの残留電荷REが生じている。この状態で、本体部111に設けられる図示しないピンで基板Wを上方へ押し上げる。この時、基板下面WBとプリコートPCとの接触は、ピンに押された部分に近い部分から離れていき、最後には微小な面積を有する一点で接している状態となる。上記残留電荷REは、基板下面WBとプリコートPCが離れていくのに沿って、当該一点へと移動していく。このため、当該一点では基板下面WBとプリコートPCに互いに逆の残留電荷REが集中し、比較的大きい電位差が生じている。残留電荷REが生じた状態で、上記一点で吸着することを残留吸着と称する。なお、電荷Eの供給停止後、必要に応じて、プラズマ電界により又は静電チャック1111に逆電位を印加することにより、静電チャック1111に残留電荷REを減少させる中和処理を行ってもよい。ただし、静電チャック1111の表面状態によっては、中和処理を行っても残留電荷を完全に抑制することが難しい。
【0053】
図7(c)で、本実施形態にかかるプリコートPCは、上記のような比較的大きい電位差において残留電荷REが基板とプリコートPCとの間を移動できる程度の導電性を有している。図中の両端矢印は、残留電荷REの移動を示す。図7(b)の状態から、図7(c)に示すように基板下面WBとプリコートPCとの間で残留電荷REが移動し、電位差が緩和される。
【0054】
図7(d)では、残留電荷REが移動し電位差が緩和されたことによって残留吸着が弱まり、ピンの押す力によって滑らかにデチャックする。なお、このような残留吸着の強弱は、基板を押すピンの出力、すなわちトルク(ピントルク)によって評価することができる。具体的には、デチャックの際にピントルクが高い場合は残留吸着が強く、ピントルクが低い場合は残留吸着が弱いと評価できる。
【0055】
なお、本実施形態にかかる基板WとプリコートPCの間の残留電荷REの移動は、上記のように基板下面WBとプリコートPCが狭い範囲の上記一点で接し、比較的大きい電位差が生じているような場合に可能となるものである。したがって、本実施形態にかかるプリコートPCの電気的性質は、静電チャック1111による通常の静電吸着時の吸着力を損なうものではない。言い換えれば、本実施形態にかかるプリコートPCは、図7(a)に示すような通常の静電吸着時には、十分に低い導電性によって基板Wと静電電極1111bとの間の電位差を維持する一方で、図7(b)、(c)に示すような残留電荷REが上記一点で集中した場合の比較的大きい電位差の下では、残留電荷REが移動し得るような電気的性質を有するものである。
【0056】
ここで、本実施形態にかかるプリコートPCと異なり、導電性が低い比較例としてのプリコートPCが形成された場合を説明する。このような比較例のプリコートPCは、例えば、図6の線分ABよりも左側の領域に含まれるような性状を有する。図7(b)において、比較例としてのプリコートPCの導電性は低いため、残留電荷REが基板WとプリコートPCとの間を移動することができない。すなわち、図中の両端矢印に示すような残留電荷REの移動が生じず、図7(c)に示すような電位差が緩和された状態とすることができない。この状態でピンがさらに基板を押すと、急に吸着が外れて基板Wが跳ね上がったり、基板Wに傷がついたりすることが考えられる。このような状態の吸着力は、適切ではない。
【0057】
本実施形態にかかるプリコートPCによれば、静電チャック1111による基板Wを吸着する吸着力を弱めることなく、かつ、デチャック時には残留電荷REの移動を容易にすることで、残留吸着を抑制することができる。また本実施形態にかかるプリコートPCは、基板Wとの摩擦によって基板下面WBに物理的ダメージを与えず、かつ、当該プリコートPC自身もダメージを受けにくいような表面性状及び硬度を有するように形成することができる。このように形成することで、静電チャック1111の交換寿命を長くすることができる。また本実施形態にかかるプリコートPCは、静電チャック1111の表面から生じ得るパーティクルが当該プリコートPCを通過してプラズマ処理空間10sに放出されないような膜密度を有するように形成することができる。このように形成することで、コンタミネーションを抑制することができる。
【0058】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態にかかるエッチング方法MT2について、図8及び図9を用いて説明する。図8は、第2の実施形態にかかるエッチング方法MT2によってプリコートPC及び他のコート層CLが形成された静電チャック1111の概略を模式的に示す断面図である。図9は、第2の実施形態にかかるエッチング方法MT2の概略を示すフローチャートである。
【0059】
図8で、エッチング方法MT2では、上記プラズマ処理システムを用いて、静電チャック1111の上面に他のコート層CLを形成し、基板下面WBと接するもっとも外側に、本開示の性状を満たすプリコートPCを形成する。なお、本開示の性状を満たすプリコートPCとは、具体的には第1の実施形態において説明した性状を満たすプリコートPCである。本実施形態においても上記性状を満たす場合は、第1の実施形態において説明したのと同様の作用及び効果を奏する。
【0060】
他のコート層CLは、絶縁膜とする。なお、他のコート層CLは、本開示のプリコートPCの性状を満たさないものであってもよい。他のコート層CLは、具体的には、SiOなどから構成されるSi含有膜や、ダイヤモンドコートなどにより構成されるC含有膜であってもよい。また、他のコート層CLの厚さは、ミクロンオーダーとすることが好ましい。
【0061】
図9で、エッチング方法MT2では、プリコートPCの形成に先立ち、他のコート層CLを形成する。具体的には、まず、Si含有ガスやC含有ガスなどの他のコート層形成ガスをプラズマ処理チャンバ10内に供給する(工程ST10)。その後、当該ガスのプラズマを生成し、他のコート層CLを形成する(工程ST11)。その後、プリコートガスを供給し、他のコート層CL上にプリコートPCを形成する(工程ST12、ST13)。その後、基板Wをプラズマ処理チャンバ10に搬入し、プリコートPCの形成された基板支持面111aに載置して、基板Wに対しエッチングを含む基板処理を実行する(工程ST14)。その後、基板Wをプラズマ処理チャンバ10から搬出し、プリコートPCを除去してもよい(工程ST15)。なお、上記工程ST12~ST15の詳細については、第1の実施形態にかかるエッチング方法MT1における工程ST1~ST4と同様である。
【0062】
一実施形態において、プリコートPCを除去した後、製造プロセスを継続するかどうか判する(工程ST16)こととしてもよい。工程ST16において製造プロセスを継続する場合は、工程ST12~工程ST16のシークエンスを再度実行し、製造プロセスを終了するまで当該シークエンスを同様に繰り返す。すなわち当該実施形態では、プリコートPCは、基板Wに対してエッチングを含む基板処理を実行するごとに形成及び除去する。工程ST16において製造プロセスを継続しない場合は、終了する。
【0063】
エッチング方法MT2において、工程ST10、ST11における他のコート層形成ガスの圧力及び流量、チャンバ内温度、RFの周波数並びにパワーなどのプラズマ生成の条件は、他のコート層形成ガスの種類、及び、形成する他のコート層CLの膜厚及び絶縁性などの特性に応じて、既知の条件を適用することができる。また、工程ST12、ST13におけるプラズマ生成の条件は、第1の実施形態にかかるエッチング方法MT1で説明した条件を適用することができる。
【0064】
なお、エッチング方法MT2では工程ST10、ST11により他のコート層CLを形成することとしたが、これに限定されない。すなわち、他のコート層CLが上記特性及び後述する十分な密着性を有するように形成されれば足り、従来の所望の方法により他のコート層CLを形成することとしてもよい。
【0065】
次に、第2の実施形態において、プリコートPC及び他のコート層CLを上記のように構成することの意義について説明する。静電チャック1111はセラミック部材1111aから構成されており、基板処理を継続することで脆弱化したセラミック部材1111aの表面からはセラミックスの欠片などのパーティクルが発生する場合がある。当該セラミックスの欠片は、耐蝕性に優れているためドライクリーニングでは完全に取り除くことができず、プラズマ処理チャンバ10内に残留する場合がある。このようなセラミックスの欠片は、上述したプリコートPCを形成すべきプラズマ処理チャンバ10内の構成部材に対する、プリコートPCの密着性を損なう原因となる。
【0066】
これに対し、第2の実施形態にかかるエッチング方法MT2では他のコート層CLを形成し、かかる他のコート層CLの上にプリコートPCを形成する。他のコート層CLとして、上記構成部材に対する十分な密着性を有しているものを用いることで、当該他のコート層CLの上に形成するプリコートPCを、上記構成部材に対して密着した状態を維持することができる。上述したSiOなどから構成されるSi含有膜や、ダイヤモンドコートにより構成されるC含有膜は、上記構成部材に対する十分な密着性を有する他のコート層CLの一例である。このような他のコート層CLは、上記セラミックスの欠片が残留する場合であっても、プリコートPCの密着性を維持することができる。
【0067】
別の観点では、他のコート層CLを単独で用いる場合、他のコート層CLは絶縁性であるため上述した残留吸着の問題がある。また、他のコート層CLを単独で用いる場合は基板Wとの擦れ等により消耗するため、定期的に付けなおし(除去及び形成のし直し)が必要となる。しかしながら、他のコート層CLを付けなおす場合、他のコート層CLは機械的安定性が高いため、ハロゲンガスを用いた強力なクリーニングが必要となり、このようなクリーニングは静電チャック1111に対しダメージを与える場合がある。これに対し、比較的付けなおしが容易なプリコートPCを他のコート層CLの上に形成することで、プリコートPCにより他のコート層CLを保護する作用がある。これにより、比較的付けなおしが容易なプリコートPCのみを定期的に付けなおし、他のコート層CLの付けなおしの頻度を下げることができる。すなわち、第2の実施形態では、他のコート層CLにおける残留吸着の問題、及び、付けなおしの困難性の問題をプリコートPCが補完し、プリコートPCにおける密着性の問題を他のコート層CLが補完する。これにより、残留吸着の問題を解決し、密着性に優れ、かつ、付けなおしに係るメンテナンス性が高い、好適な保護層とすることができる。
【0068】
<第3の実施形態>
次に、第3の実施形態にかかるエッチング方法MT3について、図10を用いて説明する。図10は、第3の実施形態にかかるエッチング方法MT3の概略を示すフローチャートである。なお、エッチング方法MT3によって静電チャック1111に形成されるプリコートPC及び他のコート層CLの構成の概略については、第2の実施形態にかかるエッチング方法MT2における図8と同様である。また、図10における工程ST10~ST13、ST15については、第2の実施形態にかかるエッチング方法MT2と同様である。
【0069】
図10で、エッチング方法MT3は、他のコート層CLを形成する場合において、第1の条件を満たすまで、基板Wの搬入(工程ST20)、基板処理(工程ST21)及び基板Wの搬出(工程ST22)を含む第1のシークエンスSQ1を、繰り返し実行する。また、第1の条件が満たされた場合は、プリコートPCを除去し、その後第2の条件を満たすまで、プリコートPCの形成(工程ST12、ST13)、第1のシークエンスSQ1(工程ST20~ST23)、及び、プリコートPCの除去(工程ST15)を含む第2のシークエンスSQ2を、繰り返し実行する。
【0070】
ここで、第1の条件とは、第1のシークエンスSQ1の繰り返し回数(基板Wの処理枚数)、基板Wの処理ロット数又はプラズマ処理時間等であってよい。
【0071】
第2の条件とは、第2のシークエンスSQ2の繰り返し回数(基板Wの処理枚数)、基板Wの処理ロット数又はプラズマ処理時間等であってよい。
【0072】
第3の実施形態にかかるエッチング方法MT3によると、第1及び第2の実施形態にかかるエッチング方法MT1、MT2の作用及び効果が得られる他、以下のような作用及び効果が得られる。すなわち、第1の条件を満たすまで、形成したプリコートPCの使用を継続し、第1の条件を満たしたときはプリコートPCを付けなおすことができる。これにより、好適な性状を有するプリコートPCを維持することができる。また、エッチング方法MT3によると、第2の条件を満たすまで、形成した他のコート層CLの使用を継続し、第2の条件を満たしたときは製造プロセスを終了し、他のコート層CLの付けなおしなどのメンテナンスを行うことができる。これにより、好適な性状を有する他のコート層CLを維持し、かつプリコートPCの密着性を好適な状態に維持することができる。
【0073】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲、後述の本開示の技術的範囲に属する構成例及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。例えば、上記実施形態の構成要件は任意に組み合わせることができる。当該任意の組み合せからは、組み合わせにかかるそれぞれの構成要件についての作用及び効果が当然に得られるとともに、本明細書の記載から当業者には明らかな他の作用及び他の効果が得られる。
【0074】
例えば、エッチング方法MT1~MT3において、プリコートPC形成時のプリコートガスの流量、チャンバ内温度、RFの周波数並びにパワーなどのプラズマ生成の条件は、限定されないが、以下のような条件とすることができる。すなわち、プリコートガスの流量は、10sccm~1000sccm程度であってもよい。また、チャンバ温度は、10℃~80℃程度であってもよい。また、RFの電力は、ソースRF電力を1000W以下としてもよい。このような条件とすることで、形成されるプリコートPCの結晶構造において水素原子との結合の割合を増やすことができ、四角形ABCDの範囲内に含まれる比[%]とすることができる。また、静電チャック1111へのプラズマによるダメージを低く抑えることができる。
【0075】
また例えば、上述のプリコートPCは単層、つまり上記プリコートガスのプラズマにより形成されるプリコートPCの層のみで形成することとしたが、これに限定されない。具体的には、複数の種類のプリコートガスを順次供給することで複数の種類のプリコートPCを積層し、複層のプリコートPCを形成することとしてもよい。
【0076】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、又は、上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0077】
以下のような構成も本開示の技術的範囲に属する。
【0078】
(付記1)
(a)チャンバの内の静電チャックの表面に炭素含有膜を形成する工程と、
(b)前記炭素含有膜上に、基板を載置する工程と、
(c)前記基板をプラズマエッチングする工程と、
を含み、
前記(a)の工程は、
(a1)前記チャンバの内部に炭素及び水素を含むプリコートガスを供給し、前記チャンバ内の圧力を100mTorr以上1000mTorr以下に制御する工程と、
(a2)前記プリコートガスのプラズマを生成する工程と、を含む、
エッチング方法。
【0079】
(付記2)
前記(a)の工程は、静電チャックの表面温度を10℃以上80℃以下に制御することを含む、付記1に記載のエッチング方法。
【0080】
(付記3)
前記(a1)の工程において、前記プリコートガスの流量を10sccm以上1000sccm以下に制御する、付記1又は2に記載のエッチング方法。
【0081】
(付記4)
前記(a2)の工程において、前記プラズマを生成するソースRF電力を1000W以下とする、付記1~3のいずれか一つに記載のエッチング方法。
【0082】
(付記5)
前記プリコートガスは、ハイドロカーボンガス、ハイドロフルオロカーボンガス、又は、ハイドロカーボンガス、ハイドロフルオロカーボンガス及びフルオロカーボンガスからなる群から選択される少なくとも1種と水素含有ガスとの混合ガスを含む、付記1~4のいずれか一つに記載のエッチング方法。
【0083】
(付記6)
前記プリコートガスは、ハイドロカーボンガスを含む、付記1~5のいずれか一つに記載のエッチング方法。
【0084】
(付記7)
前記プリコートガスは、不活性ガスをさらに含む、付記1~6のいずれか一つに記載のエッチング方法。
【0085】
(付記8)
前記炭素含有膜は、H原子を20原子%以上50原子%以下含む、付記1~7のいずれか一つに記載のエッチング方法。
【0086】
(付記9)
前記炭素含有膜は、炭化水素の結晶構造の比[%]を示す(sp3:sp2:H)の三元図において、当該比が
点A(sp3:sp2:H)=(80: 0:20)、
点B(sp3:sp2:H)=( 0:80:20)、
点C(sp3:sp2:H)=( 0:50:50)、
点D(sp3:sp2:H)=(50: 0:50)
の四点からなる四角形ABCDで囲まれる範囲内である、付記8に記載のエッチング方法。
【0087】
(付記10)
前記炭素含有膜の厚さは、5nm以上である、付記1~9のいずれか一つに記載のエッチング方法。
【0088】
(付記11)
前記炭素含有膜の厚さは、10nm以上100nm以下である、付記10に記載のエッチング方法。
【0089】
(付記12)
前記静電チャックは、表面に複数の凸部を有し、
前記炭素含有膜は、少なくとも前記凸部の上面に形成される、付記1~11のいずれか一つに記載のエッチング方法。
【0090】
(付記13)
前記炭素含有膜の厚さは、前記凸部の高さよりも薄い、付記12に記載のエッチング方法。
【0091】
(付記14)
前記(a)の工程は、前記(a1)の工程の前に、前記静電チャックの表面に、絶縁膜を形成する工程をさらに含み、
前記炭素含有膜は、前記絶縁膜上に形成される、付記1~13のいずれか一つに記載のエッチング方法。
【0092】
(付記15)
前記静電チャックは、
セラミック部材と、
前記セラミック部材内に配置された少なくとも1つの電極と、
前記セラミック部材の表面の絶縁膜と、
を含み、
前記絶縁膜は、前記セラミック部材と異なる材料で構成されており、
前記炭素含有膜は、前記絶縁膜上に形成される、付記1~14のいずれか一つに記載のエッチング方法。
【0093】
(付記16)
(d)前記炭素含有膜を除去する工程と、
(e)前記(a)~(d)の工程を含むシーケンスを繰り返す工程と、を含む、付記14または15に記載のエッチング方法。
【0094】
(付記17)
前記絶縁膜は、シリコン又は炭素を含む、付記16に記載のエッチング方法。
【0095】
(付記18)
前記(b)の工程と前記(c)の工程とを含むサイクルを1回以上実施した後に、前記炭素含有膜を除去する工程をさらに含む、付記1~13のいずれか一つに記載のエッチング方法。
【0096】
(付記19)
前記炭素含有膜を除去する工程において、酸素含有ガスから生成したプラズマにより前記炭素含有膜を除去する、付記18に記載のエッチング方法。
【0097】
(付記20)
(a)チャンバ内の静電チャックの表面に、絶縁膜を形成する工程と、
(b)前記絶縁膜上に、炭素含有膜を形成する工程と、
(c)第1の条件を満たすまで、
(c1)前記チャンバ内に基板を搬入し、前記基板を前記炭素含有膜上に載置する工程と、
(c2)前記基板をプラズマエッチングする工程と、
(c3)前記炭素含有膜上から前記基板を取り外し、前記チャンバ外へ搬出する工程と、
を含む第1のシーケンスを繰り返す工程と、
(d)前記(c)の工程の後、前記炭素含有膜を除去する工程と、
(e)第2の条件を満たすまで、前記(b)~(d)の工程を含む第2のシーケンスを繰り返す工程と、を含む、
エッチング方法。
【0098】
(付記21)
チャンバ内に配置される静電チャックの表面にプリコート膜を形成するプリコート方法であって、
前記チャンバの内部に炭素及び水素を含むプリコートガスを供給し、前記チャンバ内の圧力を100mTorr以上1000mTorr以下に制御する工程と、
前記プリコートガスのプラズマを生成する工程と、を含む、
プリコート方法。
【0099】
(付記22)
少なくとも1つのガス供給口と、少なくとも1つのガス排出口を有するチャンバと、
前記チャンバ内に配置される静電チャックと、
プラズマ生成部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
(a)前記静電チャックに炭素含有膜を形成する工程と、
(b)前記炭素含有膜上に、基板を配置する工程と、
(c)前記基板をプラズマエッチングする工程と、
を含む処理を実行するように構成され、
前記(a)の工程は、
(a1)前記チャンバの内部に炭素及び水素を含むプリコートガスを供給し、前記チャンバ内の圧力を100mTorr以上1000mTorr以下に制御する工程と、
(a2)前記プリコートガスのプラズマを生成する工程と、を含む、
エッチング装置。
【符号の説明】
【0100】
10 プラズマ処理チャンバ
111a 基板支持面
W 基板
PC プリコート
MT エッチング方法
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10