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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-08
(45)【発行日】2024-11-18
(54)【発明の名称】着用物品収容体、及び、着用物品
(51)【国際特許分類】
   A41B 9/02 20060101AFI20241111BHJP
   A41B 9/12 20060101ALI20241111BHJP
   A61F 13/72 20060101ALI20241111BHJP
   A41B 9/04 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
A41B9/02 F
A41B9/12 E
A61F13/72
A41B9/04 C
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2024542239
(86)(22)【出願日】2023-09-12
(86)【国際出願番号】 JP2023033235
(87)【国際公開番号】W WO2024080056
(87)【国際公開日】2024-04-18
【審査請求日】2024-07-16
(31)【優先権主張番号】P 2022164186
(32)【優先日】2022-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新保 洋介
(72)【発明者】
【氏名】梨子木 健人
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 沙也佳
(72)【発明者】
【氏名】コータンサブ チュティカーン
(72)【発明者】
【氏名】ウォンキティシン マリサー
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-142644(JP,A)
【文献】特開2008-93321(JP,A)
【文献】特開2008-284200(JP,A)
【文献】特表2016-514981(JP,A)
【文献】国際公開第2021/130165(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41B 9/02
A41B 9/04
A41B 9/12
A61F 13/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに交差する上下方向と左右方向と前後方向とを有し、前記上下方向及び前記左右方向に伸縮性を有し、吸収パッドと併用される着用物品と、
前記着用物品を収容する収容部材と、
を備えた、着用物品収容体であって、
前記着用物品は、再利用可能であり、
前記収容部材は、前記着用物品が前記吸収パッドと併用されることを想起させる表示を備え、
前記着用物品は、編み生地で構成され、一対の脚回り開口を備えており、
前記吸収パッドと係合する係合領域を有し、
前記係合領域は、前記着用物品の前記前後方向の前側及び後側に少なくとも一か所ずつ設けられており、
前記前後方向の前側及び後側の少なくとも一方において、
前記一対の脚回り開口の上端よりも上方の領域を、自然状態から前記左右方向に200%に広げたときの、前記係合領域の上端から、前記着用物品の下端までの最大長さが、
前記自然状態のときの、前記係合領域の上端から、前記着用物品の下端までの最大長さよりも、前記係合領域の前記上下方向における長さの2倍以上短くならないように、前記一対の脚回り開口が形成されている、ことを特徴とする着用物品収容体。
【請求項2】
互いに交差する上下方向と左右方向と前後方向とを有し、
編み生地で構成され、前記上下方向及び前記左右方向に伸縮性を有し、
一対の脚回り開口を備え、吸収パッドと併用される着用物品であって、
前記吸収パッドと係合する係合領域を有し、
前記係合領域は、前記着用物品の前記前後方向の前側及び後側に少なくとも一か所ずつ設けられており、
前記前後方向の前側及び後側の少なくとも一方において、
前記一対の脚回り開口の上端よりも上方の領域を、自然状態から前記左右方向に200%に広げたときの、前記係合領域の上端から、前記着用物品の下端までの最大長さが、
前記自然状態のときの、前記係合領域の上端から、前記着用物品の下端までの最大長さよりも、前記係合領域の前記上下方向における長さの2倍以上短くならないように、前記一対の脚回り開口が形成されている、ことを特徴とする着用物品。
【請求項3】
請求項2に記載の着用物品であって、
前記前後方向の前側及び後側の少なくとも一方において、
前記一対の脚回り開口の上端よりも上方の領域を、自然状態から前記左右方向に200%に広げたときの、前記係合領域の上端から、前記着用物品の下端までの最大長さが、
前記自然状態のときの、前記係合領域の上端から、前記着用物品の下端までの最大長さよりも、前記係合領域の前記上下方向における長さ以上短くならないように、前記一対の脚回り開口が形成されている、ことを特徴とする着用物品。
【請求項4】
請求項2または3に記載の着用物品であって、
自然状態において、前記脚回り開口の上端は、前記着用物品の前記左右方向の中央位置における下端よりも上側に位置している、ことを特徴とする着用物品。
【請求項5】
請求項4に記載の着用物品であって、
前記上下方向において前記脚回り開口の上端と前記着用物品の上端との間に位置する胴回り領域を有し、
前記係合領域は前記胴回り領域内に設けられており、
前記上下方向において、前記係合領域の上端位置は、前記胴回り領域の中央位置よりも下側にある、ことを特徴とする着用物品。
【請求項6】
請求項4に記載の着用物品であって、
前記係合領域を前記上下方向及び前記左右方向に単位長さだけ伸長させるときに要する力は、前記編み生地を前記上下方向及び前記左右方向に単位長さだけ伸長させるときに要する力よりも大きい、ことを特徴とする着用物品。
【請求項7】
請求項6に記載の着用物品であって、
前記上下方向において前記脚回り開口の上端と前記着用物品の下端との間、且つ、前記左右方向において一対の前記脚回り開口の内側端同士の間に位置するクロッチ領域を有し、
前記左右方向において、前記係合領域と前記クロッチ領域とが重複する部分を有する、ことを特徴とする着用物品。
【請求項8】
請求項7に記載の着用物品であって、
前記クロッチ領域に、前記上下方向に所定の長さを有する伸縮抑制手段が設けられている、ことを特徴とする着用物品。
【請求項9】
請求項8に記載の着用物品であって、
前記伸縮抑制手段は、前記上下方向において、前記クロッチ領域から当該クロッチ領域の上端よりも上側まで連続している、ことを特徴とする着用物品。
【請求項10】
請求項8に記載の着用物品であって、
前記伸縮抑制手段は、前記左右方向の中央部に設けられた中央伸縮抑制部を有する、ことを特徴とする着用物品。
【請求項11】
請求項10に記載の着用物品であって、
前記伸縮抑制手段は、前記中央伸縮抑制部の前記左右方向の両側に一対のサイド伸縮抑制部を有する、ことを特徴とする着用物品。
【請求項12】
請求項4に記載の着用物品であって、
前記一対の脚回り開口のそれぞれの周縁に沿ったかがり縫い部を有する、ことを特徴とする着用物品。
【請求項13】
請求項12に記載の着用物品であって、
前記上下方向の下端部に、前記左右方向に所定の長さを有する股下縫い部が設けられている、ことを特徴とする着用物品。
【請求項14】
請求項13に記載の着用物品であって、
前記かがり縫い部と前記股下縫い部とが交差する部分を有している、ことを特徴とする着用物品。
【請求項15】
請求項8に記載の着用物品であって、
前記伸縮抑制手段には、弾性部材が含まれていない、ことを特徴とする着用物品。
【請求項16】
請求項2または3に記載の着用物品であって、
前記一対の脚回り開口の上端よりも上方の領域を、前記自然状態から前記左右方向に200%に広げた状態で、前記係合領域の上端から前記着用物品の下端までの最大長さを、前記自然状態における前記係合領域の上端から前記着用物品の下端までの最大長さまで伸長させるのに要する力は、
前記一対の脚回り開口の上端よりも上方の領域を、前記自然状態から前記左右方向に200%に広げるのに要する力の1/5以下である、ことを特徴とする着用物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用物品収容体、及び、着用物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、伸縮性を有するパンツ型の着用物品であって、尿等の排泄物を吸収する吸収パッドを股下部(クロッチ領域)に取り付けて使用するパッド併用型の着用物品が知られている。例えば、特許文献1にはパッドタイプの吸収体と併用して着用する、所謂ボクサーパンツ形状の着用物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-128587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
編み生地等で構成され、高い伸縮性を有する着用物品では、例えば、着用時に着用者が脚を通すために胴回り開口を自然状態から左右に広げようとすると、製品が上下方向に収縮してしまう(上下方向寸法が小さくなる)場合があった。このような場合、着用物品に設けられている係合領域の上下方向における位置が収縮の前後で変化することにより、吸収パッド側に設けられている係合領域との間で上下方向の位置ずれが生じ、着用物品に対して吸収パッドを係合させることが困難になるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、着用時に胴回り開口を広げたときでも、吸収パッドを係合させやすい着用物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、互いに交差する上下方向と左右方向と前後方向とを有し、前記上下方向及び前記左右方向に伸縮性を有し、吸収パッドと併用される着用物品と、前記着用物品を収容する収容部材と、を備えた、着用物品収容体であって、前記着用物品は、再利用可能であり、前記収容部材は、前記着用物品が前記吸収パッドと併用されることを想起させる表示を備え、前記着用物品は、編み生地で構成され、一対の脚回り開口を備えており、前記吸収パッドと係合する係合領域を有し、前記係合領域は、前記着用物品の前記前後方向の前側及び後側に少なくとも一か所ずつ設けられており、前記前後方向の前側及び後側の少なくとも一方において、前記一対の脚回り開口の上端よりも上方の領域を、自然状態から前記左右方向に200%に広げたときの、前記係合領域の上端から、前記着用物品の下端までの最大長さが、前記自然状態のときの、前記係合領域の上端から、前記着用物品の下端までの最大長さよりも、前記係合領域の前記上下方向における長さの2倍以上短くならないように、前記一対の脚回り開口が形成されている、ことを特徴とする着用物品収容体である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、吸収パッドをしっかりと保持しつつ、着用者の身体に吸収パッドをフィットさせやすい着用物品を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】着用物品1の概略斜視図である。
図2図2Aは、自然状態において着用物品1を前後方向の前側から見たときの平面図である。図2Bは、自然状態において着用物品1を前後方向の後側から見たときの平面図である。
図3図3A図3Cは、着用物品1の製造方法について説明する図である。
図4】吸収パッド100の平面図、及び、断面図である。
図5】従来型の着用物品200(比較例)の概略平面図である。
図6図6A図6Cは、吸収パッド300と併用する場合の着用物品200の着用方法について説明する図である。
図7図7A図7Cは、吸収パッド100と併用する場合の着用物品1の着用方法について説明する図である。
図8図8A及び図8Bは、編み生地によって構成されたパンツ型の用物品を左右方向に伸長させた場合に生じる変形の様子について説明する図である。
図9図9A及び図9Bは、着用物品1を自然状態から前記左右方向に200%に広げたときの上下方向における収縮量について説明する図である。
図10】着用物品収容体90の一例を表す概略斜視図である。
図11】着用物品1の前側の胴回り領域BRと後側の胴回り領域BRとを左右方向の両側端で切断し、上下方向に展開した状態を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0010】
(態様1)
互いに交差する上下方向と左右方向と前後方向とを有し、前記上下方向及び前記左右方向に伸縮性を有し、吸収パッドと併用される着用物品と、前記着用物品を収容する収容部材と、を備えた、着用物品収容体であって、前記着用物品は、再利用可能であり、前記収容部材は、前記着用物品が前記吸収パッドと併用されることを想起させる表示を備え、前記着用物品は、編み生地で構成され、一対の脚回り開口を備えており、前記吸収パッドと係合する係合領域を有し、前記係合領域は、前記着用物品の前記前後方向の前側及び後側に少なくとも一か所ずつ設けられており、前記前後方向の前側及び後側の少なくとも一方において、前記一対の脚回り開口の上端よりも上方の領域を、自然状態から前記左右方向に200%に広げたときの、前記係合領域の上端から、前記着用物品の下端までの最大長さが、前記自然状態のときの、前記係合領域の上端から、前記着用物品の下端までの最大長さよりも、前記係合領域の前記上下方向における長さの2倍以上短くならないように、前記一対の脚回り開口が形成されている、ことを特徴とする着用物品収容体。
【0011】
態様1の着用物品収容体によれば、当該収容体に収容された着用物品を着用する際に、胴回り領域を左右方向に広げた場合であっても、一対の脚回り開口の間の領域では上下方向における収縮が制限され、係合領域の上端から着用物品の下端までの長さが収縮し難くなる。したがって、着用物品の股下部まで吸収パッドを差し入れた状態において、着用物品に設けられた係合領域と吸収パッドに設けられた吸収パッド係合領域とが、上下方向において重複する部分(係合可能な部分)を有する確率が高くなる。したがって、吸収パッドを係合させやすい着用物品、及び、その収容体を提供することができる。
【0012】
(態様2)
互いに交差する上下方向と左右方向と前後方向とを有し、編み生地で構成され、前記上下方向及び前記左右方向に伸縮性を有し、一対の脚回り開口を備え、吸収パッドと併用される着用物品であって、前記吸収パッドと係合する係合領域を有し、前記係合領域は、前記着用物品の前記前後方向の前側及び後側に少なくとも一か所ずつ設けられており、前記前後方向の前側及び後側の少なくとも一方において、前記一対の脚回り開口の上端よりも上方の領域を、自然状態から前記左右方向に200%に広げたときの、前記係合領域の上端から、前記着用物品の下端までの最大長さが、前記自然状態のときの、前記係合領域の上端から、前記着用物品の下端までの最大長さよりも、前記係合領域の前記上下方向における長さの2倍以上短くならないように、前記一対の脚回り開口が形成されている、ことを特徴とする着用物品。
【0013】
態様2の着用物品によれば、着用する際に胴回り領域を左右方向に広げた場合であっても、一対の脚回り開口の間の領域では上下方向における収縮が制限され、係合領域の上端から着用物品の下端までの長さが収縮し難くなる。したがって、着用物品の股下部まで吸収パッドを差し入れた状態において、着用物品に設けられた係合領域と吸収パッドに設けられた吸収パッド係合領域とが、上下方向において重複する部分(係合可能な部分)を有する確率が高くなる。したがって、吸収パッドを着用物品に係合させやすくすることができる。
【0014】
(態様3)
前記前後方向の前側及び後側の少なくとも一方において、前記一対の脚回り開口の上端よりも上方の領域を、自然状態から前記左右方向に200%に広げたときの、前記係合領域の上端から、前記着用物品の下端までの最大長さが、前記自然状態のときの、前記係合領域の上端から、前記着用物品の下端までの最大長さよりも、前記係合領域の前記上下方向における長さ以上短くならないように、前記一対の脚回り開口が形成されている、態様2に記載の着用物品。
【0015】
態様3の着用物品によれば、着用物品の係合領域と吸収パッド係合領域とが上下方向において重複する部分を有する確率をより高くすることができる。これにより、着用物品に対して吸収パッドをより係合させやすくすることができる。
【0016】
(態様4)
自然状態において、前記脚回り開口の上端は、前記着用物品の前記左右方向の中央位置における下端よりも上側に位置している、態様2または3に記載の着用物品。
【0017】
態様4の着用物品によれば、脚回り開口が斜めに形成されることで、着用物品のうち、脚回り開口の上端よりも上方に形成される胴回り領域が上下方向に占める割合が小さくなる。そして、上下方向に収縮しやすい胴回り領域の幅が狭くなることにより、ボクサーパンツ型の着用物品等と比較して、着用物品全体として上下方向の収縮量が小さくなる。したがって、着用物品の係合領域と吸収パッド係合領域とが上下に重複しやすく、着用物品に対して吸収パッドをより係合させやすくすることができる。
【0018】
(態様5)
前記上下方向において前記脚回り開口の上端と前記着用物品の上端との間に位置する胴回り領域を有し、前記係合領域は前記胴回り領域内に設けられており、前記上下方向において、前記係合領域の上端位置は、前記胴回り領域の中央位置よりも下側にある、態様2~4の何れかに記載の着用物品。
【0019】
態様5の着用物品によれば、係合領域の上端が、胴回り領域の中央位置よりも下側に位置していることにより、逆の場合と比較して、係合領域の上端から着用物品の下端までの距離が短くなる。これにより、着用物品の上下方向の収縮に伴う係合領域の上下方向における位置ずれが小さくなり、吸収パッドを着用物品に係合させやすくすることができる。
【0020】
(態様6)
前記係合領域を前記上下方向及び前記左右方向に単位長さだけ伸長させるときに要する力は、前記編み生地を前記上下方向及び前記左右方向に単位長さだけ伸長させるときに要する力よりも大きい、態様2~5の何れかに記載の着用物品。
【0021】
態様6の着用物品によれば、左右方向に引っ張ったときに、係合領域よりも上側の領域における伸長の影響が、係合領域より下側の領域に及びにくくなり、当該下側の領域における上下方向の収縮が抑制されやすくなる。また、係合領域自体が上下に伸縮し難いため、全体として着用物品の上下方向における収縮が抑制されやすくなる。これにより、係合領域が上下方向に位置ずれし難くなり、吸収パッドを着用物品に係合させやすくすることができる。
【0022】
(態様7)
前記上下方向において前記脚回り開口の上端と前記着用物品の下端との間、且つ、前記左右方向において一対の前記脚回り開口の内側端同士の間に位置するクロッチ領域を有し、前記左右方向において、前記係合領域と前記クロッチ領域とが重複する部分を有する、態様2~6の何れかに記載の着用物品。
【0023】
態様7の着用物品によれば、係合領域と重複する部分においてクロッチ領域の左右方向への伸長が抑制されやすくなる。したがって、クロッチ領域の上下方向における収縮が抑制され、係合領域が上下方向に位置ずれし難くなる。これにより、吸収パッドを着用物品に係合させやすくすることができる。
【0024】
(態様8)
前記クロッチ領域に、前記上下方向に所定の長さを有する伸縮抑制手段が設けられている、態様2~7の何れかに記載の着用物品。
【0025】
態様8の着用物品によれば、着用物品が左右方向に広げられた場合であっても、クロッチ領域のうち伸縮抑制手段が設けられた部分が上下方向に収縮し難くなる。これにより、係合領域の上下方向における位置ずれが小さくなり、吸収パッドを着用物品に係合させやすくすることができる。
【0026】
(態様9)
前記伸縮抑制手段は、前記上下方向において、前記クロッチ領域から当該クロッチ領域の上端よりも上側まで連続している、態様2~8の何れかに記載の着用物品。
【0027】
態様9の着用物品によれば、上下方向の広い範囲(クロッチ領域~胴回り領域)に亘って、上下方向の収縮が抑制されやすくなる。これにより、係合領域の上下方向における位置ずれが小さくなり、吸収パッドを着用物品に係合させやすくすることができる。
【0028】
(態様10)
前記伸縮抑制手段は、前記左右方向の中央部に設けられた中央伸縮抑制部を有する、態様2~9の何れかに記載の着用物品。
【0029】
態様10の着用物品によれば、上下方向の収縮が最も大きくなりやすい左右方向の中央部に中央伸縮抑制部が設けられていることにより、左右方向の中央部における過度な収縮が抑制される。したがって、係合領域の上下方向における位置ずれが小さくなり、吸収パッドを着用物品により係合させやすくすることができる。
【0030】
(態様11)
前記伸縮抑制手段は、前記中央伸縮抑制部の前記左右方向の両側に一対のサイド伸縮抑制部を有する、態様2~10の何れかに記載の着用物品。
【0031】
態様11の着用物品によれば、着用物品を左右方向の両側に広げようとしたときに、左右方向の両側部においても上下方向の収縮が抑制されやすくなる。したがって、着用物品の左右方向における広い範囲で上下方向の収縮が抑制されやすくなり、係合領域の上下方向における位置ずれを小さくすることができる。これにより、吸収パッドを着用物品により係合させやすくすることができる。
【0032】
(態様12)
前記一対の脚回り開口のそれぞれの周縁に沿ったかがり縫い部を有する、態様2~11の何れかに記載の着用物品。
【0033】
態様12の着用物品によれば、かがり縫い部によって脚回り開口の周縁の剛性が高められることにより、クロッチ領域の両側部における伸縮性が弱められる。したがって、クロッチ領域の両側部が上下方向に収縮し難くなり、係合領域の上下方向における位置ずれを小さくすることができる。これにより、吸収パッドを着用物品により係合させやすくすることができる。
【0034】
(態様13)
前記上下方向の下端部に、前記左右方向に所定の長さを有する股下縫い部が設けられている、態様2~12の何れかに記載の着用物品。
【0035】
態様13の着用物品によれば、股下縫い部によって、クロッチ領域の下端部における剛性が高められ、左右方向の伸縮が抑制される。したがって、着用物品が左右方向の両側に広げられた場合であっても、クロッチ領域は左右方向に伸長し難く、クロッチ領域の上下方向の収縮も抑制されやすくなる。これにより、係合領域の上下方向における位置ずれが小さくなり、吸収パッドを着用物品により係合させやすくすることができる。
【0036】
(態様14)
前記かがり縫い部と前記股下縫い部とが交差する部分を有している、態様2~13の何れかに記載の着用物品。
【0037】
態様14の着用物品によれば、股下縫い部と脚回りかがり縫い部とが連結して骨格の様に機能することにより、クロッチ領域の下端部及び両側部の剛性が高められ、クロッチ領域全体として過度な伸縮が抑制されやすくなる。これにより、係合領域の上下方向における位置ずれが小さくなり、吸収パッドを着用物品により係合させやすくすることができる。
【0038】
(態様15)
前記伸縮抑制手段には、弾性部材が含まれていない、態様2~14の何れかに記載の着用物品。
【0039】
態様15の着用物品によれば、少なくとも自然状態において、着用物品が上下方向に収縮していないため、着用物品を左右方向に広げたときに上下方向の収縮量が過度に大きくなってしまうことを抑制しやすい。したがって、係合領域の上下方向における位置ずれが小さくなり、吸収パッドを着用物品により係合させやすくすることができる。
【0040】
(態様16)
前記一対の脚回り開口の上端よりも上方の領域を、前記自然状態から前記左右方向に200%に広げた状態で、前記係合領域の上端から前記着用物品の下端までの最大長さを、前記自然状態における前記係合領域の上端から前記着用物品の下端までの最大長さまで伸長させるのに要する力は、前記一対の脚回り開口の上端よりも上方の領域を、前記自然状態から前記左右方向に200%に広げるのに要する力の1/5以下である、態様2~15の何れかに記載の着用物品。
【0041】
態様16の着用物品によれば、左右方向に広げて吸収パッドを差し入れる際に、着用物品の上下方向の寸法が収縮していたとしても、吸収パッドを股下側に軽く押し込むことで、着用物品の上下方向寸法を元の寸法に簡単に戻すことができる。したがって、逆の場合と比較して、係合領域の上端から着用物品の下端までの長さを、元の状態に戻しやすくすることができる。したがって、着用物品の係合領域と吸収パッド係合領域との上下方向における位置ずれが生じ難くなり、吸収パッドを着用物品により係合させやすくすることができる。
【0042】
(態様17)
着用物品を構成している生地は、ポリエステル、又はポリエチレンを90重量%以上含んでいる、態様2~16の何れかに記載の着用物品。
【0043】
態様17の着用物品によれば、ポリエステル及びポリエチレンは、綿と比較して伸度が高い素材であり、そのような素材を多く含むことで、より伸び易さを実現できる。また、ポリエステル及びポリエチレンは、非吸水性であり、且つ、高い速乾性を有する素材であるため、着用物品の乾燥性が向上する。
【0044】
(態様18)
着用物品を構成している生地は、吸水性素材を含んでいない、態様2~17の何れかに記載の着用物品。
【0045】
態様18着用物品によれば、吸水性素材を含まないことで、生地が水を含みにくくなる。それにより、洗濯後の乾燥時間を短縮でき、着用物品の乾燥性を向上させる。
【0046】
(態様19)
着用物品を構成している生地は、ポリエステル、又はポリエチレンよりも伸縮性が高い素材を10重量%未満含んでいる、態様17又は18に記載の着用物品。
【0047】
態様19の着用物品によれば、着用物品を構成している生地のうち、90重量%以上はポリエステル又はポリエチレンであるので、伸縮性がより高い素材が残りの10重量%未満に含まれることで、良好な乾燥性を担保しつつ、伸縮性の向上を実現できる。
【0048】
(態様20)
着用物品を構成している生地は、ポリエステル、又はポリエチレンよりも伸縮性が高い素材を含む領域と含まない領域とを有する、態様2~19の何れかに記載の着用物品。
【0049】
態様20の着用物品によれば、特にフィット性が必要なところに伸縮性の高い素材を配置する(すなわち、より伸縮性が高い素材を含む領域を形成する)ことで、着用物品の一部に限定してフィット性をより高めることができ、機能性が向上する。また、一部のフィット性を高めるだけでなく、例えば、より伸縮性が高い素材を含む領域を、間隔を空けて複数箇所設ける等により、着用物品の全体としてのフィット感を向上させることもできる。
【0050】
(態様21)
係合領域には、本体部を構成する編み生地とは異なる別体のシート部材が設けられており、当該別体のシート部材は、ポリエチレン又はポリエステルで構成されている、態様2~20の何れかに記載の着用物品。
【0051】
態様21の着用物品によれば、別体のシート部材は本体部に接合されるため、本体部と同様に、別体のシート部材も高い速乾性を有する素材によって構成されていることで、着用物品の乾燥性が向上する。
【0052】
(態様22)
別体のシート部材は、当該別体のシート部材の周縁部に沿って糸で縫い付けることにより、着用物品を構成している生地に接合される、態様21に記載の着用物品。
【0053】
態様22の着用物品によれば、糸で縫われた周縁部よりも内側の領域は、生地と別体のシート部材とが厚さ方向に密着(接合)しておらず、別体のシート部材と生地との間に空間が形成されている。つまり、別体のシート部材全体が生地に接合されている状態ではないため、全体が接合されている場合と比較すると、別体のシート部材のうち生地と接する面において空気と接触する面積が広くなり、水分を蒸発させやすくなる。それにより、乾燥性が向上する。
【0054】
(態様23)
厚さ方向に見たときに、別体のシート部材と伸縮抑制部とが重複する部分を有する、態様21又は22に記載の着用物品。
【0055】
態様23の着用物品によれば、伸縮抑制部が設けられていることにより、着用物品を構成している生地に収縮力の変化が生じ、生地の肌側面と別体のシート部材の非肌側面との間に、空間がより形成されやすくなる。そのような空間から空気が逃げやすくなることで、乾燥性が向上する。
【0056】
(態様24)
別体のシート部材の大きさは、上下方向の長さが50mm以下、且つ、左右方向の長さが150mm以下である、態様21~23の何れかに記載の着用物品。
【0057】
態様24の着用物品によれば、別体のシート部材が大きくなりすぎると、当該シート部材の部分が乾燥しにくくなるおそれがあるが、上述した範囲内の大きさとすることで、生地に対して十分な係合力を維持できる面積を確保しつつ、乾燥しやすくなる。
【0058】
(態様25)
別体のシート部材の厚さは、3mm以下である、態様21~24の何れかに記載の着用物品。
【0059】
態様25の着用物品によれば、生地に対して十分な係合力を維持できる厚みを確保しつつ、厚すぎないことで、乾燥しやすさも維持できる。
【0060】
(態様26)
着用物品の前側の胴回り領域と後側の胴回り領域とを左右方向の両側端で切断し、上下方向に展開した状態において、上下方向において前側係合領域の上端と後側係合領域の上端との間、且つ、左右方向において前側係合領域及び後側係合領域の最も一方側の端と前側係合領域及び後側係合領域の最も他方側の端との間の領域S1の面積は、それ以外の領域S2の面積よりも小さい、態様2~25の何れかに記載の着用物品。
【0061】
態様26の着用物品によれば、着用物品を構成している生地のうち領域S1は、吸収パッドの装着時に吸収パッドによって覆われる領域である。そのため、仮に、着用物品の洗濯後の乾燥が若干不十分であったり、別の要因で吸収パッドを装着後に着用物品が濡れることがあった場合に、領域S1は、吸収パッドによって覆われていることでその後の乾燥性が低くなり易いが、着用物品を構成する生地において、領域S1の面積が領域S2の面積よりも小さいことにより、逆の場合と比較して、着用物品の全体の乾燥性の低下を抑制しやすい。
【0062】
(態様27)
着用物品の前側の胴回り領域と後側の胴回り領域とを左右方向の両側端で切断し、上下方向に展開した状態において、上下方向において前側係合領域の上端と後側係合領域の上端との間、且つ、左右方向において前側係合領域及び後側係合領域の最も一方側の端と前側係合領域及び後側係合領域の最も他方側の端との間の領域S1の面積は、それ以外の領域S2の面積よりも大きい、態様2~25の何れかに記載の着用物品。
【0063】
態様27の着用物品によれば、着用物品の洗濯後の乾燥が若干不十分であっても、領域S1は、吸収パッドによって覆われるため肌が濡れにくく、着用感が悪化しにくい。
【0064】
===実施形態===
本発明の実施形態に係る着用物品の一例として、尿等の排泄物を吸収する吸収パッド100を内部に取り付けて使用することが可能な、パッド併用タイプのパンツ型着用物品1(以下では、単に「着用物品1」とも呼ぶ)について説明する。
【0065】
<着用物品1の基本的構成>
図1は、本実施形態に係る着用物品1の概略斜視図である。着用物品1は、図1に示すパンツ型状態において、互いに直交する「上下方向」と「左右方向」と「前後方向」とを有している。上下方向のうち、着用者が着用物品1を着用した状態で着用者の胴側となる方を「上側」とし、着用者の股下側となる方を「下側」とする。また、前後方向のうち、着用状態で着用者の腹側となる方を「前側」とし、着用者の背側となる方を「後側」とする。また、着用物品1を構成している各資材(シート部材)は、各々「厚さ方向」を有している。厚さ方向のうち、着用者が着用物品1を着用した状態で着用者の肌に近い側を「肌側」とし、その反対側を「非肌側」とする。
【0066】
本実施形態の着用物品1は、上下方向の上側に設けられた胴回り開口BHと、上下方向の下側且つ左右方向の両側に設けられた一対の脚回り開口LH,LHを備えたパンツ型に形成されている。パンツ型の内側には、吸収パッド100を着脱自在に取り付け可能であり、吸収パッド100を交換することで、着用物品1自体は繰り返して使用(着用)することができる。例えば、吸収パッド100が取り付けられた着用物品1をユーザー(使用者)が着用した状態で尿等の排泄が行われた場合、排泄物を吸収して汚れた吸収パッド100を着用物品1から取り外して新しい吸収パッド100に交換することで、着用物品1を再利用することが可能である。また、着用物品1は洗濯することも可能であり、長期間(例えば2週間以上)にわたって衛生的に使用することができる。
【0067】
図2Aは、自然状態において着用物品1を前後方向の前側から見たときの平面図である。図2Bは、自然状態において着用物品1を前後方向の後側から見たときの平面図である。ここで、「自然状態」とは、着用物品1を所定時間放置したときの状態である。例えば、折り畳まれて収容されている着用物品1をパッケージから取り出した後、歪が生じないように静かに広げて机等の平面に置く。そして、このような平面平置きで5分間経過させ、着用物品1の表面にほとんど皺が残らないようにした状態を自然状態とする。
【0068】
着用物品1は、本体部10と、伸縮抑制部20と、係合領域30とを有している。本体部10は、着用物品1の外装を構成する部位であり、伸縮性を有するシート部材によって形成されている。本実施形態において、本体部10を形成するシート部材は、「織り生地」若しくは「編み生地」によって構成されており、上下方向及び左右方向にそれぞれ伸縮性を有している。なお、「織り生地」とは、平行に並べた多数のたて糸に対して、よこ糸を直角に交錯させて平面状に構成した生地であり、例えば「布帛」と呼ばれる生地を例示できる。織り生地では、伸縮性の高い糸を用いたり、糸の密度を変更したりすることで、伸縮性を有する織り生地を形成することができる。一方、「編み生地」とは、糸をループにして、このループに他のループを連結させて平面状に構成した生地であり、例えば「ニット」と呼ばれる生地を例示できる。編み生地は多数のループを連結させることで構成されているため、各々のループを変形させることにより、小さな力でも大きく伸縮させることができる。以下では、編み生地を用いて本体部10(着用物品1)が構成されているものとして説明を行う。
【0069】
本体部10は、上下方向に沿って筒状に編まれた、所謂丸編み生地によって構成されている。筒状の本体部10の上端部は、一部が上下方向の上側から下側に折り返されることで、胴回り折り返し部11が形成されている。この胴回り折り返し部11によって、丸編み生地の上端部(すなわち、胴回り開口BH)における糸のほつれが抑制される。さらに、胴回り折り返し部11には、他の部分よりも伸縮し難い糸が編み込まれている。これにより、胴回り開口BHの周縁に沿った収縮力が強くなり、着用物品1の着用時において、胴回り開口BHのずれ落ちが抑制され、フィット性を高めることができる。なお、丸編み生地の上端部を折り返すのではなく、当該上端部に別体のシート部材を積層させ接合することによって胴回り開口BHの周縁に沿って大きな収縮力が作用するようにしても良い。
【0070】
一方、本体部10の下端部では、丸編み生地の前側と後側とが縫い合わされた股下縫い部12が形成されている。股下縫い部12によって、本体部10の下端部が接合されることで、筒状の丸編み生地が、一対の脚回り開口LH,LHを有するパンツ型に形成される(後述する図3参照)。本実施形態において、股下縫い部12は、着用物品1の上下方向における最も下側に位置している(図2A及び図2B参照)。
【0071】
一対の脚回り開口LH,LHは、本体部10の一部を切断することによって形成される(図3参照)。そして、各々の脚回り開口LH,LHの周縁部には、脚回りかがり縫い部13が形成されている。脚回りかがり縫い部13は、脚回り開口LHの周縁に沿って、編み生地の端を糸で巻き込むように縫うことで形成され、これにより、脚回り開口LHの切断箇所における糸のほつれが抑制される。また、脚回りかがり縫い部13が形成されることによって、着用時における脚回り開口LHのフィット性が高められ、尿等の排泄物の横漏れを抑制しやすくすることができる。
【0072】
図2A及び図2Bに示されるように、自然状態の着用物品1の上下方向において、脚回り開口LHの上端をLHtとする。上端LHtは、左右方向において、最も外側の端よりもやや内側に位置している。同様に、自然状態の着用物品1の上下方向において、脚回り開口LHの下端をLHbとする。下端LHbは、着用物品1の上下方向における最も下側、且つ、脚回り開口LHの左右方向における最も内側に位置している。
【0073】
着用物品1で、上下方向において脚回り開口LHの上端LHtと下端LHb(すなわち、着用物品1の下端)との間、且つ、左右方向において一対の脚回り開口LHの下端LHb,LHbの間(すなわち、脚回り開口LHの内側端同士の間)の斜線部で示される領域をクロッチ領域CRと定義する。クロッチ領域CRは、着用物品1の着用時に、主に着用者(ユーザー)の股間部に位置する領域であり、吸収パッド100を取り付けた際には、該吸収パッド100の少なくとも一部を保持する領域でもある。また、着用物品1で、上下方向において脚回り開口LHの上端LHtと着用物品1の上端との間に位置する領域を胴回り領域BRと定義する。胴回り領域BRは、着用物品1の着用時に、主に着用者(ユーザー)の胴回り部(腹部及び臀部~腰部)に位置する領域である。
【0074】
伸縮抑制部20は、着用物品1の上下方向における伸縮を抑制する伸縮抑制手段としての機能を有する部位である。本実施形態では、上下方向に所定の長さを有する複数の伸縮抑制部20が着用物品1の本体部10の所定の位置に設けられている。具体的には、着用物品1(本体部10)の前後方向の前側において、左右方向の中央部に前側中央伸縮抑制部21が設けられ、前側中央伸縮抑制部21の左右方向両側に一対の前側サイド伸縮抑制部23,23(両側部伸縮抑制手段に相当)が設けられている(図2A参照)。同様に、着用物品1(本体部10)の前後方向の後側において、左右方向の中央部に後側中央伸縮抑制部22が設けられ、後側中央伸縮抑制部22の左右方向両側に一対の後側サイド伸縮抑制部24,24(両側部伸縮抑制手段)が設けられている(図2B参照)。
【0075】
着用者(ユーザー)が着用物品1を着用する際には、一対の脚回り開口LHに脚を通した後、胴回り領域BRを掴んで股間部に引き上げる動作が行われるが、上述したように、本体部10は伸縮性を有する編み生地(若しくは織り生地)によって形成されている。そのため、着用物品1を引き上げる動作において本体部10が上下方向に過度に伸長してしまうと、着用物品1を引き上げ難くなるおそれがある。これに対して、本実施形態の着用物品1では、伸縮抑制部20が設けられた部分において、本体部10の上下方向の伸縮(伸長)が抑制されるため、着用物品1を上方に引き上やすくすることができる。
【0076】
伸縮抑制部20(伸縮抑制手段)は、本体部10を構成している編み生地に対して、上下方向に沿って当該編み生地の伸縮性を低減する加工が施されることによって実現される。例えば、本体部10を構成する編み生地の所定の領域に、伸縮性の低い糸を縫い込む(所謂「ステッチ」)加工を行うことで上下方向における伸縮性を低減することができる。また、編み生地を編む際に、所定の部位において編み方のパターンを変更したり、糸の伸縮性を変更したりすることで、編み生地中の一部で伸縮性を低減するようにしても良い。その他、編み生地中の所定の箇所に圧搾加工(エンボス加工等)を施すことで伸縮性を低減させるのであっても良い。
【0077】
係合領域30は、着用物品1に対して吸収パッド100を着脱自在に取り付けるための領域であり、本体部10の厚さ方向の肌側に設けられている。本実施形態では、前後方向の前側において、胴回り領域BRの肌側面に矩形状の前側係合領域31が設けられ(図2A参照)、前後方向の後側において、胴回り領域BRの肌側面に矩形状の後側係合領域32が設けられている。
【0078】
着用物品1に設けられている係合領域30と、吸収パッド100に設けられる吸収パッド係合領域120(後述する図4参照)とを互いに係合させることによって、着用物品1の内側(肌側)に吸収パッド100を取り付けて保持することができる。また、係合領域30は、ユーザーが着用物品1に対して吸収パッド100を取り付ける際の、基準(つまり目印)としての機能も有し、当該係合領域30を視認することにより、着用物品1の正しい位置に吸収パッド100を取り付けることが可能となる。
【0079】
本実施形態において、係合領域30には、本体部10を構成する編み生地とは異なる別体のシート部材が設けられることが好ましい。別体のシート部材としては、例えば、基材シートの表面に係合用の突出部(オス材、フック)若しくは被係合用の突出部(メス材、ループ)が複数設けられた公知の面ファスナーを用いることができる。なお、視認性を高めるために、面ファスナーの色は、本体部10を構成する編み生地とは異なる色を有していることがより好ましい。但し、係合領域30として、必ずしも別体のシート部材が設けられている必要は無く、着用物品1の肌側面において、吸収パッド係合領域120を着脱自在に係合させることが可能な領域が形成されていれば良い。例えば、本体部10を構成する編み生地自体が吸収パッド係合領域120と着脱自在に係合可能である場合には、本体部10の肌側面の所定の領域が、本体部10とは異なる色のインクで印刷されることによって係合領域30が形成されるのであっても良い。
【0080】
ここで、着用物品1の製造方法の概略について説明する。図3A図3Cは、着用物品1の製造方法について説明する図である。同図3では、着用物品1が、上述した「編み生地」によって形成される場合について説明する。
【0081】
先ず、図3Aに示されるように、糸を円形にぐるぐると編むことによって筒状の編み生地10A(所謂「丸編み」)を形成する。このとき、円筒状に丸編みされた生地10Aの中心軸の方向(図1の上下方向に相当)に沿って、伸縮抑制部20(21~24)も形成される。伸縮抑制部20は、上述したように、編みのパターンを変更することや、異なる糸を縫い込むこと等の加工を施すことによって形成される。なお、丸編み生地10Aの形成工程(図3A)とは異なる工程において伸縮抑制部20が形成されるのであっても良い。例えば、丸編み生地10Aが形成された後で、別途伸縮抑制部20(伸縮抑制手段)を形成するための加工が施されるのであっても良い。
【0082】
次いで、丸編み生地10Aを上下方向(軸方向)の所定の位置で切断して、図3Bのように、個々の着用物品1を構成する本体部10を切り出す。ここでは、上下方向における位置C1及び位置C2にて丸編み生地10Aが切断される(図3A参照)。切断位置C1が本体部10の上下方向の上側になり、切断位置C2が本体部10上下方向の下側になる。また、本体部10から脚回り開口LHとなる部分が切断される。図3Bでは、筒状の本体部10の下端部において、左右方向の両側部が斜めに切断されることにより、一対の脚回り開口LH,LHとなる部分が形成される。
【0083】
次いで、図3Cのように、筒状の本体部10の上下方向の上端部が折り返され、胴回り折り返し部11が形成される。また、筒状の本体部10の上下方向の下端部において、前側の下端縁12fと、後側の下端縁12bとが前後に縫い合わされて股下縫い部12が形成される。これにより、筒状の本体部10がパンツ型に形成される。そして、切断された脚回り開口LHの周縁に沿ってかがり縫いが行われ、脚回りかがり縫い部13が形成される。最後に、本体部10の内側(肌側)に、別体のシート部材(例えば面ファスナー)が取り付けられる等により、係合領域30(31,32)が形成される。これにより、図1図2で説明した着用物品1が形成される。なお、図3Cで説明した加工が実施される順番は変更されても良い。
【0084】
<着用物品1の伸縮性について>
着用物品1は、上下方向及び左右方向に伸縮性を有することを説明したが、具体的には、本体部10を構成している編み生地からサンプル片を切り出して引張試験を行った際に、以下の条件を満たしたときに、伸縮性を有するものとする。すなわち、50mm×200mmのサンプル片を、それぞれ上下方向及び左右方向に5Nの力で引っ張ったときの当該サンプル片の伸び率の最大値が200%以上である場合に、伸縮性を有するものとする。
【0085】
引張試験は、例えば下記のようにして行うことができる。先ず、着用物品1の本体部10から、上下方向に220mm、左右方向に50mmの長さを有する矩形状のサンプル片を切り出す。なお、サンプル片の上下方向において、220mmのうち両端部の10mm分は、それぞれ引張試験機のチャックの掴みしろである。また、サンプル片を切り出す際には、伸縮抑制部20及び係合領域30が含まれないようにすることが望ましい。次に、切り出したサンプル片の上下方向の両端部10mmmずつを公知の引っ張り試験器(例えば、インストロン社製万能材料試験機)のチャックで挟み込む。このとき、引っ張り試験器のチャック間の間隔G=200mmとする。この状態からチャック間の間隔を開く方向に200mm/min程度の引っ張り速度でサンプル片を引っ張って伸長させ、引張試験による引っ張り力(力の大きさ)が5Nとなったときのチャック間の間隔G(mm)を測定する。そして、サンプル片の引張前の長さに対する引っ張り後の長さ(=G/G)の値を算出し、伸び率として記録する。この試験を複数回繰り返し、伸び率(G/G)の最大値を求める。その結果、伸び率(G/G)の最大値が200%以上であれば、着用物品1(本体部10)を構成している生地は、上下方向において伸縮性を有しているものとする。なお、チャックの掴みしろの大きさは適宜変更可能である。
【0086】
同様に、着用物品1の本体部10から、左右方向に220mm、上下方向に50mmの長さを有する矩形状のサンプル片を切り出して、上記の手順に従って左右方向の引張試験を行う。そして、伸び率が200%以上であれば、着用物品1(本体部10)を構成している生地は、左右方向において伸縮性を有しているものとする。なお、着用物品1から左右方向に長いサンプル片を切り出す際には、伸縮抑制部20が含まれても良いものとする。伸縮抑制部20は、主に上下方向における伸縮性を低減させる機能を有しており、左右方向における伸縮性の測定には大きな影響を及ぼさないためである。
【0087】
<吸収パッド100の基本構成>
図4は、吸収パッド100の平面図、及び、断面図である。吸収パッド100は、平面視略長方形状であり、互いに直交する縦方向と幅方向と厚さ方向とを有する。縦方向は、着用物品1に取り付ける際に、着用物品1の上下方向(及び前後方向)に沿う方向であり、横方向は、着用物品1に取り付ける際に、着用物品1の左右方向に沿う方向である。縦方向の前側は、吸収パッド100を着用物品1に取り付けたときに着用者の腹側(着用物品1の前後方向の前側)に位置する側であり、縦方向の後側は、吸収パッド100を着用物品1に取り付けたときに着用者の背側(着用物品1の前後方向の後側)に位置する側であるものとする。
【0088】
吸収パッド100は、吸収体110と、吸収体110の肌側に配置されたトップシート111と、吸収体110の非肌側に配置されたバックシート112と、トップシート111よりも肌側において、左右方向の両側に一対設けられたサイドシート115,115を有している。また、着用物品1の係合領域30と係合するための吸収パッド係合領域120を有している。
【0089】
吸収体110は、高分子吸収剤(吸収性ポリマー:super absorbent polymer、「SAP」とも言う)と、パルプ繊維等の液体吸収性繊維とを有し、本実施形態では、図4の破線で示されるように縦方向の中央部が左右方向の内側に窪んだ、略砂時計形状に形成されている。SAPを含有する液体吸収性繊維は、液透過性のコアラップシート(不図示)で覆われていても良い。また、吸収体110の構成は上記に限定されず、例えば、親水性のシートにSAP層を付着させたSAPシートや、液体吸収性繊維をエアレイド法によってシート状に成形したエアレイドシート等を例示できる。
【0090】
トップシート111は、吸収体110の肌側に配置された液透過性のシート部材であり、吸収パッド100の使用時には、装着者の肌や排泄口と直接接触する部材である。そのため、トップシート111はなるべく柔軟で肌当たりが柔らかいシート部材であることが望ましい。本実施形態のトップシート111を構成するシート部材としては、例えば、エアスルー不織布等を例示できる。また、吸収体110とトップシート111との厚さ方向に間に、トップシート111と略同様に液透過性のセカンドシート(図4では不図示)が設けられていても良い。
【0091】
バックシート112は、吸収パッド100の厚さ方向において吸収体110よりも非肌側に配置された液不透過性且つ通気性のシート部材である。このバックシート112が設けられていることにより、吸収パッド100によって吸収された尿等の排泄液が、厚さ方向の非肌側に浸透してしまうことが抑制される。したがって、吸収パッド100を着用物品1の肌側に取り付けて使用する際に、吸収パッド100によって吸収された尿等の排泄液が、非肌側の着用物品1に浸透してしまうことを抑制できる。本実施形態のバックシート112を構成するシート部材としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンの樹脂フィルム等を例示できる。
【0092】
サイドシート115は、吸収パッド100の肌側面における横方向の両側部を構成する部材である。吸収パッド100の使用時には、サイドシート115も着用者の肌と直接接触する可能性が高いため、トップシート111と同様に、なるべく柔軟なシート部材であることが望ましい。本実施形態のサイドシート115を構成するシート部材としては、例えば、エアスルー不織布等を例示できる。
【0093】
また、一対のサイドシート115,115の横方向における内側端部には、糸ゴム等の吸収パッド弾性部材116がそれぞれ縦方向に沿って伸長された状態で設けられている。サイドシート115の横方向における内側端は、図4のA-A断面図に示されるように横方向の外側に折り返されており、当該折り返された部分に挟み込まれるようにして吸収パッド弾性部材116が取り付けられている。吸収パッド100の使用時には、吸収パッド弾性部材116が発現する伸縮性に基づいて、一対のサイドシート115,115の内側端部が厚さ方向の肌側に起立して、防漏壁(立体ギャザー)として機能することにより、尿等の横漏れを抑制することができる。
【0094】
吸収パッド係合領域120は、バックシート112の非肌側面に設けられ、着用物品1の係合領域30と着脱自在に係合する部位であり、縦方向の前側端部に配置される前側吸収パッド係合領域121と、縦方向の後側端部に配置される後側吸収パッド係合領域122と、を有している。吸収パッド係合領域120には、例えば、着用物品1の係合領域30に対応する面ファスナー等のシート部材が設けられる。また、上述した係合領域30と同様の理由により、ユーザーが係合位置を視認しやすいよう、吸収パッド係合領域120はバックシート112の色とは異なる色で形成されていることが好ましい。
【0095】
吸収パッド100を着用物品1に取り付けて使用する際には、吸収パッド100の縦方向における中央位置CLにて、吸収パッド100の肌側面が内側となるように二つ折りにする。そして、二つ折りにした吸収パッド100を着用物品1の胴回り開口BHの上側から差し入れ、吸収パッド100の縦方向における中央位置CLが、着用物品1の最下端部(股下縫い部12と重なる位置)に配置されるように調整する。この状態で、前側吸収パッド係合領域121を着用物品1の前側係合領域31と係合させ、後側吸収パッド係合領域122を着用物品1の後側係合領域32と係合させる。なお、吸収パッド係合領域120の縦方向(上下方向)における位置は、吸収パッド100を着用物品1の内側に差し入れた状態において、着用物品1の係合領域30と重複するように、予め調整されているため、係合領域30,120同士を簡単に係合させることができる。このようにすることで、着用物品1に対して吸収パッド100を正しく取り付けることができる。
【0096】
<吸収パッド100を併用する際の着用物品1の着用動作について>
続いて、吸収パッド100を併用する際の着用物品1の具体的な着用動作について説明する。
【0097】
先ず、比較例として、従来型の着用物品200において吸収パッド300を併用して着用する場合の動作について説明する。図5は、従来型の着用物品200(比較例)の概略平面図である。図6A図6Cは、着用物品200と吸収パッド300とを併用する場合の着用物品200の着用方法について説明する図である。
【0098】
図5に示される比較例の着用物品200は、胴回り開口BHと一対の脚回り開口LH,LHを有し、ある程度の伸縮性を備えたパンツ型着用物品であるが、本実施形態の着用物品1とは異なり、脚回り開口LH,LHが股下部(着用物品200の左右方向中央位置における下端)よりも下側に突き出た形状の、所謂「ボクサーパンツ」型である。そして、着用物品200には、着用物品1の伸縮抑制部20や係合領域30に相当する構成が設けられていない。また、吸収パッド300は、図4で説明した吸収パッド100と略同様の構成を有するが、吸収パッド係合領域120に相当する領域は設けられていない。
【0099】
比較例において、着用物品200と吸収パッド300とを併用する場合、先ず、図6Aのように、着用者の股下部に、吸収パッド300をあてがった状態で、着用物品200の脚回り開口LH,LHに着用者の両脚を通して、膝上辺りまで引き上げる。
【0100】
次いで、図6Bのように、片方の手で吸収パッド300を押さえて身体からずれないようにしながら、もう片方の手で着用物品200を掴んで、上方へ引っ張り上げる動作が行われる。着用物品200は、図5で説明したようにボクサーパンツ型であることから、下側に突き出た脚回り開口LHと着用者の脚との間で摩擦力が作用して、着用者の脚に脚回り開口LH(裾)が引っ掛かりやすい。そのため、着用物品200を引っ張り上げようとすると、図6Bのように引っ張られた部分が上下方向に大きく伸長してしまい、着用物品200の全体を片手で股下部まで引っ張り上げるのは困難である。そのため、引っ張り上げる手や引っ張る位置を適宜変更しながら、時間をかけて着用物品200を股下部まで引っ張り上げる必要があり、装着性に問題が生じていた。また、引っ張り上げる過程で、両手が塞がっているため、壁や椅子等に手をかけて着用者自身の身体を支えることが難しく、安全の確保に十分注意する必要がある。
【0101】
着用物品200が着用者の股下部付近まで引っ張り上げられた後、図6Cのように、股下部にしっかりとフィットさせるために着用物品200及び吸収パッド300の位置を調整する動作が行われる。このとき、着用物品200が前後左右上下に引っ張られるのに応じて、吸収パッド300の位置がずれてしまう場合がある。例えば、着用物品200の位置を調整するために斜め上方に引っ張ると、吸収パッド300も引っ張られた方向にずれやすくなる。この場合、吸収パッド300を逆方向に引っ張って、再度位置を調整する必要が生じるが、前側を引っ張ると今度は後側がずれてしまう等、吸収パッド300を股間部の適切な位置にフィットさせることは難しい。
【0102】
なお、着用物品200及び吸収パッド300を着用する動作において、介護者等の第三者に補助してもらうことも考えられるが、着用者や第三者の精神的な負担が大きくなる場合があるため、着用者が一人で簡単に着用できることが望ましい。
【0103】
次に、本実施形態の着用物品1において吸収パッド100を併用して着用する場合の動作について説明する。図7A図7Cは、着用物品1と吸収パッド100とを併用する場合の着用物品1の着用方法について説明する図である。
【0104】
本実施形態では、先ず、着用物品1に対して吸収パッド100を取り付ける。吸収パッド100の取り付けは、上述したように、吸収パッド100の吸収パッド係合領域120と着用物品1の係合領域30とを係合させることによって行われる。そして、図7Aのように、吸収パッド100が取り付けられた状態の着用物品1の脚回り開口LH,LHに着用者の両脚を通して、膝上辺りまで引き上げる。
【0105】
次いで、着用物品1の胴回り領域BRを掴んで、上方へ引っ張り上げる。図7Bでは、着用者が両手を用いて胴回り領域BRの左右方向両側部を掴んで上方へ引っ張っている。本実施形態では、吸収パッド100が予め着用物品1に取り付けられているため、比較例の図6Bのように吸収パッドを片方の手で押さえておく必要が無いため、両手を使って着用物品1を引っ張り上げたり、片手で身体を支えながら引っ張り上げたりすることができる。また、着用物品1は、脚繰りが斜めにカットされているため、比較例のようなボクサーパンツ型の着用物品200と比べて、着用時に、脚回り開口LHが着用者の脚に引っかかり難い。さらに、着用物品1には上下方向の伸縮を抑制する手段として、伸縮抑制部20が設けられている。したがって、図6Bのように、脚回り開口LHが着用者の脚に引っかかって着用物品1が上下に長く伸長してしまうことが抑制され、着用物品1の全体をスムーズに引っ張り上げることができる。
【0106】
着用物品1が着用者の股下部付近まで引っ張り上げられた後、図7Cのように、着用物品1及び吸収パッド100の位置調整が行われる。着用物品1では、係合領域30(吸収パッド係合領域120)を介して着用物品1と吸収パッド100とがしっかりと係合されているため、着用物品1を引っ張って位置を調整することで、吸収パッド100の位置も連動して調整することができる。したがって、吸収パッド100を着用者の股間部に適切にフィットさせることができる。
【0107】
<着用物品1の変形について>
着用物品1を着用する際には、先ず、図7Aのように胴回り開口BH及び脚回り開口LHに着用者の両脚を通す必要がある。その際、両手で着用物品1を左右方向の両側に引っ張って胴回り開口BH及び脚回り開口LHを広げる動作が行われる。着用物品1のように伸縮性の高い編み生地によって形成されたパンツ型着用物品は、通常、弱い力でも簡単に伸長させやすいため、胴回り開口BH等を左右方向に大きく広げることができる。
【0108】
しかしながら、そのような着用物品を左右方向に大きく伸長させた場合、上下方向に収縮が生じやすくなるおそれがある。図8A及び図8Bは、編み生地によって構成されたパンツ型の着用物品を左右方向に伸長させた場合に生じる変形の様子について説明する図である。図8Aは、自然状態における着用物品1を表している。同図8Aの自然状態において、着用物品1の左右方向の長さをL、着用物品の上下方向の長さをHとする。
【0109】
図8Bは、着用物品1の胴回り領域BRを自然状態から左右方向に200%の長さまで伸長させたときの状態について表している。つまり、着用物品1の左右方向の長さが2Lとなるまで伸長させたときの状態を表している。図8Bにおいて、着用物品1の上下方向の長さは、Hよりも短いHとなっている(H<H)。すなわち、着用物品1を自然状態から左右方向の寸法が200%になるまで広げると、上下方向の寸法がHからHへ収縮する。これは、着用物品1を構成している編み生地の性質による。
【0110】
上述したように、一般な編み生地は、糸によってループを形成し、隣り合うループ同士を連結させることにより平面状に形成されている。そして、連結した複数のループを或る方向(例えば、所謂「コース方向」)に引っ張ると、各々のループが当該或る方向と交差する方向(所謂「ウェール方向」)に潰れるように変形する。これにより、編み生地が引っ張られた方向と交差する方向に収縮する。
【0111】
本実施形態の着用物品1では、上下方向の所定位置に係合領域30が設けられ、当該係合領域30に吸収パッド100の吸収パッド係合領域120を係合させることによって、吸収パッド100が取り付けられる。そのため、8A及び図8Bのように着用物品1が上下方向に収縮した場合、係合領域30の上下方向における位置が変化してしまい、吸収パッド100に設けられた吸収パッド係合領域120との間に上下方向の位置ずれが生じ、両者が係合し難くなるおそれがある。
【0112】
そこで、着用物品1では、自然状態から左右方向に伸長させた際に、係合領域30の上端から着用物品1の下端までの距離が収縮し難くなるように脚回り開口LHを形成することで、係合領域30の上下方向における位置ずれを生じ難くしている。例えば、図8Bにおいて、胴回り領域BRが左右方向に200%伸長されたときに、該胴回り領域BRは上下方向に大きく収縮する。一方、胴回り領域よりも下方で、一対の脚回り開口LH,LHの左右方向の間に位置するクロッチ領域CRでは、胴回り領域BRと比較して左右方向の伸長が小さいため、上下方向の収縮も小さくなる。すなわち、脚回り開口LHの大きさや形状を調整することにより、着用物品1のクロッチ領域CRにおける上下方向の収縮量を調整することができる。以下、着用物品1の上下方向における収縮量について説明する。
【0113】
図9A及び図9Bは、着用物品1を自然状態から左右方向に200%に広げたときの上下方向における収縮量について説明する図である。同図9A及び図9Bは、吸収パッド100が取り付けられた状態の着用物品1を左右方向から見たときの断面を模式的に表している。図9Aは、自然状態における着用物品1及び吸収パッド100を表しており、図9Bは、着用物品1の胴回り領域BRを自然状態(図9A)から左右方向に200%広げたときの状態を表している。なお、着用物品1は前後方向の前側と後側にそれぞれ係合領域30(31,32)を備えているが、前後何れの係合領域30(31,32)についても同様に考えることができるため、ここでは前側に設けられた前側係合領域31に着目して説明を行う。
【0114】
着用物品1に吸収パッド100を取り付ける際には、縦方向における中央位置CLを折り目として吸収パッド100を二つ折りにした状態で、着用物品1の胴回り開口BHの上側から内部に差し入れ、吸収パッド100の折り目が着用物品1の最も下側(図9Aの下端1b)に当たるように配置する。この状態で、着用物品1の前側係合領域31と、吸収パッド100の前側吸収パッド係合領域121とが互いに係合可能となるように、係合領域30及び吸収パッド係合領域120の上下方向における高さが調整されている。すなわち、吸収パッド100の折り目(CL)が着用物品1の下端1bに配置された状態で、上下方向において、前側係合領域31と前側吸収パッド係合領域121とが重複する部分を有している。また、図9Aの自然状態において、前側係合領域31の上端31tから着用物品1の下端1bまでの上下方向の長さをhとし、前側係合領域31の上下方向における長さ(上端31tと下端31bとの間の距離)をL31とする。
【0115】
次に、着用物品1の胴回り領域BRを左右方向の両側に引っ張って、自然状態から左右方向に200%まで伸長させると、図9Bのように着用物品1が上下方向に収縮した状態となる。そして、図9Bの状態で、前側係合領域31の上端31tの上下方向における位置(高さ)を、図9Aにおける上端31tの上下方向における位置と同じ高さに揃えると、着用物品1の下端位置は図9Aの1bから図9Bの1bへ移動する。このとき、前側係合領域31の上端31tから着用物品1の収縮状態における下端1bまでの上下方向の長さはhとなる。つまり、着用物品1を自然状態から左右方向に200%まで伸長させることによって、前側係合領域31の上端31tから着用物品1の下端1bまでの上下方向の長さhが(h-h)だけ収縮したことになる。言い換えると、着用物品1の下端1bの上下方向における位置が、(h-h)だけ上側に移動したことになる。
【0116】
一方、図9Bにおいて、吸収パッド100は左右方向へ伸長されておらず、上下方向の収縮は発生しない。したがって、着用物品1の下端1bの位置が(h-h)だけ上方へ移動するのに伴って、吸収パッド100の位置も全体的に(h-h)だけ上方へ移動する。すなわち、吸収パッド100の前側吸収パッド係合領域121の位置が(h-h)だけ上方へ移動する。その結果、前側吸収パッド係合領域121と着用物品1の前側係合領域31とが上下方向において重複する部分を有していない場合には、前側吸収パッド係合領域121と前側係合領域31とを係合させることが困難となる。
【0117】
逆に言うと、前側吸収パッド係合領域121の位置が(h-h)だけ上方へ移動した場合であっても、上下方向において前側係合領域31と重複する部分を有していれば、前側吸収パッド係合領域121と前側係合領域31とを係合させることが可能となる。例えば、図9Bでは、上下方向において、前側吸収パッド係合領域121の下端121bが、前側係合領域31の上端31tよりも下側、且つ、下端31bよりも上側に位置しているため、前側吸収パッド係合領域121と前側係合領域31とが重複する部分を有し、両者は係合可能となっている。つまり、前側係合領域31の上下方向における長さL31が、前側吸収パッド係合領域121の上方への移動量(h-h)よりも大きければ、前側吸収パッド係合領域121と前側係合領域31とを係合させることができる(L31>h-h)。
【0118】
本実施形態の着用物品1では、自然状態から左右方向に200%に広げたときの、前側係合領域31の上端31tから着用物品1の下端1bまでの上下方向の長さhが、自然状態のときの、前側係合領域31の上端31tから着用物品1の下端1bまでの上下方向の長さhよりも、前側係合領域31の上下方向における長さL31の2倍以上短くならないように、一対の脚回り開口LH,LHが形成されている(h>h-L31×2)。言い換えると、前側係合領域31の上下方向における長さL31が、前側吸収パッド係合領域121の上方への移動量(h-h)の半分よりも大きくなるように脚回り開口LH,LHが形成されている(L31>(h-h)/2)。
【0119】
これにより、着用物品1を着用する際に胴回り領域BRを左右方向に広げた場合であっても、脚回り開口LH,LHの間のクロッチ領域CRでは上下方向における収縮が制限され、着用物品1に設けられた係合領域30と、吸収パッド100に設けられた吸収パッド係合領域120とが上下方向において重複する部分(係合可能な部分)を有する確率が高くなる。したがって、吸収パッド100を着用物品1に係合させやすくすることができる。
【0120】
なお、前側係合領域31の上下方向における長さL31が、前側吸収パッド係合領域121の上方への移動量(h-h)よりも大きくなるようにすれば(L31>h-h)、係合領域30と吸収パッド係合領域120とが上下方向において重複する部分を有する確率をより高くすることができる。これにより、吸収パッド100を着用物品1により係合させやすくすることができる。
【0121】
また、着用物品1は、自然状態において、脚回り開口LHの上端LHtが、着用物品の1左右方向の中央位置における下端(図9Aにおける1b)よりも上側に位置しており、脚回り開口LHが斜めに切れ上がったショーツ型形状を有している(図2等参照)。このように脚回り開口LHが上下方向に所定の幅を有していることにより、図5で例示したようなボクサーパンツ型の着用物品と比較して、胴回り領域BRの上下方向における幅が狭くなる。すなわち、着用物品1の上下方向の全体に占める胴回り領域BRの割合が小さくなり、クロッチ領域CRの割合が大きくなる。上述したように、着用物品1を左右に広げた場合、胴回り領域BRにおける上下方向の収縮が大きいのに対して、クロッチ領域CRでは胴回り領域BRと比較して上下方向の収縮は小さい。したがって、係合領域30の上端から着用物品1の下端までの領域の上下方向における収縮量も相対的に小さくなり、係合領域30と吸収パッド係合領域120との上下方向における位置ずれが生じ難くなる(図9B参照)。これにより、吸収パッド100を着用物品1により係合させやすくすることができる。
【0122】
また、着用物品1の係合領域30は、胴回り領域BRに設けられている。そして、図2Aに示されるように、上下方向において、係合領域30(31)の上端31tは胴回り領域BRの中央位置CLBRよりも下側に位置している。本実施形態では、係合領域30の上端と着用物品1の下端との間の上下方向における距離の変化(収縮)を小さくすることで、係合領域30と吸収パッド係合領域120との上下方向における位置ずれを生じ難くしている。したがって、係合領域30の上端が胴回り領域BRの上方に位置していた場合、係合領域30の上端と着用物品1の下端との間の上下方向における距離が長くなるため、その分収縮の割合も大きくなり、吸収パッド係合領域120との上下方向における位置ずれが生じやすくなる。これに対して、係合領域30の上端が、胴回り領域BRの中央位置よりも下側に位置していることにより、逆の場合と比較して、係合領域30の上端から着用物品1の下端までの距離が短くなる。これにより、着用物品1の上下方向における収縮に伴う係合領域30の上下方向における移動量が小さくなり、吸収パッド100を着用物品1により係合させやすくすることができる。
【0123】
また、係合領域30の伸縮性は、着用物品1(本体部10)を構成している生地の伸縮性よりも低いことが好ましい。すなわち、係合領域30を上下方向及び左右方向に単位長さだけ伸長させるときに要する力は、本体部10を構成している編み生地を上下方向及び左右方向に単位長さだけ伸長させるときに要する力よりも大きいことが好ましい。このような構成であれば、着用物品1を左右方向に引っ張ったときに、係合領域30よりも上側の領域における伸長の影響が、係合領域30より下側の領域(クロッチ領域CRを含む)に及びにくくなる。すなわち、係合領域30を境界として、下側の領域(クロッチ領域CR)における上下方向の収縮が抑制されやすくなる。また、係合領域30自体が上下方向に伸縮し難いため、全体として着用物品1の上下方向における収縮が抑制されやすくなる。これにより、係合領域30が上下方向に移動し難くなり、吸収パッド100を着用物品1に係合させやすくすることができる。
【0124】
さらに、左右方向において、係合領域30とクロッチ領域CRとが重複する部分を有していることが好ましい。他の領域と比較して伸縮性の低い係合領域30では着用物品1が左右方向に伸長し難くなるため、当該係合領域30と重複する部分においてクロッチ領域CRの左右方向における伸長が抑制されやすくなる。したがって、着用物品1が左右方向に広げられた場合であっても、クロッチ領域CRの上下方向における収縮は抑制され、係合領域30が上下方向に移動し難くなる。これにより、吸収パッド100を着用物品1により係合させやすくすることができる。
【0125】
また、着用物品1のクロッチ領域CRには、上下方向に所定の長さを有する伸縮抑制手段(伸縮抑制部20)が設けられている。図2では、クロッチ領域CRの上下方向の全体に亘って、伸縮抑制手段として中央伸縮抑制部21,22が設けられている。中央伸縮抑制部21,22は、伸縮性の高い編み生地によって構成された本体部10の所定の部分に伸縮性の低い糸を縫い込む等の加工を施すことで形成されており、そのような加工が施されていない部分と比較して上下方向に収縮し難くなっている。したがって、着用物品1が左右方向に伸長された場合であっても、クロッチ領域CRのうち伸縮抑制手段(中央伸縮抑制部21,22)が設けられた部分は上下方向に収縮し難くなる。これにより、係合領域30の上下方向における移動量が小さくなり、吸収パッド100を着用物品1に係合させやすくすることができる。
【0126】
また、伸縮抑制手段(中央伸縮抑制部21,22)は、上下方向において、クロッチ領域CRから、クロッチ領域CRの上端よりも上側の胴回り領域BRまで連続して設けられている。したがって、中央伸縮抑制部21,22が設けられている部分では、着用物品1の上下方向の広い範囲に亘って、上下方向の収縮が抑制されやすくなる。これにより、係合領域30の上下方向における移動量が小さくなり、吸収パッド100を着用物品1により係合させやすくすることができる。
【0127】
また、伸縮抑制手段(中央伸縮抑制部21,22)は、左右方向における中央部に設けられている。着用物品1を左右方向の両側に広げようとする場合、左右方向の中央部が最も収縮しやすくなる。すなわち、着用物品1は、左右方向の中央部において、上下方向の収縮が最も大きくなりやすい。これに対して、左右方向の中央部に中央伸縮抑制部21,22が設けられていることにより、着用物品1の左右方向の中央部における過度な収縮が抑制されやすくなる。したがって、係合領域30の上下方向における移動量が小さくなり、吸収パッド100を着用物品1により係合させやすくすることができる。
【0128】
また、中央伸縮抑制部21(22)の左右方向の両側には、上下方向に所定の長さを有する一対のサイド伸縮抑制部23,23(24,24)(両側部伸縮抑制手段)が設けられている(図2参照)。このサイド伸縮抑制部23(24)も、中央伸縮抑制部21(22)と同様に、本体部10の上下方向への伸縮を抑制する伸縮抑制手段としての機能を有している。したがって、着用物品1を左右方向の両側に広げようとしたときに、サイド伸縮抑制部23(24)が設けられていることによって、左右方向の両側部においても上下方向の収縮が抑制されやすくなる。すなわち、着用物品1の左右方向における広い範囲で上下方向の収縮が抑制されやすくなり、係合領域30の上下方向における移動量を小さくすることができる。これにより、吸収パッド100を着用物品1により係合させやすくすることができる。
【0129】
なお、本実施形態の着用物品1において、伸縮抑制手段(伸縮抑制部20)は弾性部材を含んでいない。すなわち、本体部10に伸縮抑制部20を形成する際に、シリコンやラバー等の弾性を有する部材を溶着や圧着する加工は施されない。仮に、弾性を有する部材が伸縮抑制部20に含まれていた場合、当該弾性部材が発現する弾性力により、着用物品1は、自然状態においても上下方向に収縮しやすくなるおそれがある。これに対して、伸縮抑制手段(伸縮抑制部20)に弾性部材が含まれていなければ、少なくとも自然状態において、着用物品1は上下方向に収縮していないため、着用物品1を左右方向に広げたときに上下方向の収縮が過度に大きくなってしまうことを抑制することができる。したがって、係合領域30の上下方向における移動量を小さくすることができる。
【0130】
また、一対の脚回り開口LH,LHには、その周縁に沿ってそれぞれ脚回りかがり縫い部13が設けられている。当該脚回りかがり縫い部13によって、クロッチ領域CRの両側部に設けられた脚回り開口LH,LHの周縁の剛性が高められるため、クロッチ領域CRの両側部における伸縮性が弱められる。したがって、クロッチ領域CRの両側部が上下方向に収縮し難くなり、係合領域30の上端と着用物品1の下端との間の上下方向における距離が変動し難くなり、係合領域30の上下方向における移動量を小さくすることができる。これにより、吸収パッド100を着用物品1により係合させやすくすることができる。
【0131】
また、着用物品1(クロッチ領域CR)の下端部には、左右方向に沿って所定の長さを有する股下縫い部12が設けられている。当該股下縫い部12によって、クロッチ領域CRの下端部における剛性が高められ、左右方向の伸縮が抑制されやすくなる。すなわち、胴回り領域BRが左右方向に広げられた場合であっても、クロッチ領域CRは左右方向に伸長し難くなる。したがって、クロッチ領域CRの上下方向の収縮も抑制され、係合領域30の上下方向における移動量を小さくすることができる。これにより、吸収パッド100を着用物品1により係合させやすくすることができる。
【0132】
そして、着用物品1では、股下縫い部12と脚回りかがり縫い部13とが交差する部分を有している。両者が連結して骨格の様に機能することにより、クロッチ領域CRの下端部及び両側部の剛性が高められ、クロッチ領域CRの全体として過度な伸縮が抑制されやすくなる。すなわち、クロッチ領域CRの左右方向における伸長、及び、上下方向における収縮がより抑制されやすくなる。これにより、係合領域30の上下方向における移動量が小さくなり、吸収パッド100を着用物品1により係合させやすくすることができる。
【0133】
また、着用物品1において、胴回り領BRを自然状態から左右方向に200%広げたときにおける係合領域30の上端から着用物品1の下端までの最大長さ(図9Aにおけるh)を、自然状態における係合領域30の上端から着用物品1の下端までの最大長さ(図9Aにおけるh)まで伸長させるのに要する力は、胴回り領BRを自然状態から左右方向に200%広げるときに要する力の1/5以下であることが好ましい。すなわち、着用物品1を左右方向に200%広げることによって、係合領域30の上端から着用物品1の下端までの上下方向の長さが収縮した場合であっても、収縮した分の長さを弱い力で伸長させることが可能であることが好ましい。このような構成であれば、着用物品1を左右方向に広げて吸収パッド100を差し入れる際に、着用物品1の上下方向の寸法が収縮していたとしても、吸収パッド100を股下側に軽く押し込むことで、上下方向の寸法を元の状態(自然状態における上下方向の寸法)に戻すことができる。
【0134】
つまり、逆の場合(胴回り領BRを自然状態から左右方向に200%広げたときにおける係合領域30の上端から着用物品1の下端までの最大長さを、自然状態における係合領域30の上端から着用物品1の下端までの最大長さまで伸長させるのに要する力が、胴回り領BRを自然状態から左右に200%広げるときに要する力の1/5よりも大きい場合)と比較して、係合領域30の上端から着用物品1の下端までの長さを、元の状態に戻しやすくすることができる。したがって、着用物品1の係合領域30と吸収パッド係合領域120との上下方向における位置ずれが生じ難くなり、吸収パッド100を着用物品1により係合させやすくすることができる。
【0135】
<着用物品1の収容体について>
製造工場等で製造された着用物品1は、コンパクトに折り畳まれ、所定の収容部材に1個または複数個ずつ収容された状態で出荷され、市場に流通する。以下では、収容部材70に複数の着用物品1が収容された着用物品の収容体90について説明する。
【0136】
図10は、着用物品収容体90(以下、単に「収容体90」とも呼ぶ)の一例を表す概略斜視図である。収容体90は、袋状の部材である収容部材70と、該収容部材70の内部に収容される1以上の着用物品1とを有している。なお、収容体90には、吸収パッド100は収容されておらず、ユーザーが着用物品1と吸収パッド100とを併用する際には、別途吸収パッド100を購入する等により準備する必要がある。
【0137】
収容体90は、図10に示されるように、互いに交差する第1方向と、第2方向と、第3方向と、を有している。そして、第1方向の一方側を上側とし、他方側を下側とする。同様に、第2方向の一方側を右側、他方側を左側とし、第3方向の一方側を前側、他方側を後側とする。
【0138】
収容部材70は、図10に示されるような略直方体形状の容器であり、収容部材70を構成するシート部材である基材シート71を折り曲げて、所定の部位を接合することによって形成される。基材シート71は、樹脂製のシート部材であり、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の液不透過性の樹脂を使用できる。収容部材70に着用物品1を収容する際には、先ず。基材シート71を折り曲げて、第1方向の上端部に開口を有する袋状に形成し(不図示)、上端部の開口から所定数の着用物品1を収容する。着用物品1を収容した後、上端部にて図1のように基材シート71を折り曲げ(例えば、ガゼット折り)、対向する面同士を接合して開口を閉じる。これにより、図10の様な略直方体状の収容体90となる。但し、収容部材70の形状や基材シート71の折り曲げ方、着用物品1の封入方法はこの限りではない。
【0139】
収容部材70の第3方向の前側の面は、収容体90の正面に相当し、販売店等でユーザーが目視する面である。そして、収容部材70の正面には複数の文字や絵からなる情報が表示(印刷)されている。図10の例では、商品名表示部72と、商品イメージ表示部73と、説明表示部74と、注記表示部75とが設けられている。商品名表示部72は、着用物品1の商品名を表す情報が表示される部分であり、ユーザーは、商品名表示部72を目印として多種類の吸収性物品のなかから着用物品1を選択して購入することができる。商品イメージ表示部73は、着用物品1やユーザーに関する画像を表す情報が表示される部分である。ユーザーは、商品イメージ表示部73を視認することで、商品の概要やその商品がどのような人を着用対象者としているのかを一見して理解しやすくなる。
【0140】
説明表示部74は、着用物品1の商品説明を表す情報が表示される部分であり、少なくとも吸収パッド100と併用されることを想起させる表示を備える。図10では、着用物品1が吸収パッドと併用可能であることや、併用する吸収パッド(吸収パッド100)を説明する情報が表示されている。注記表示部75は、説明表示部74に表示された情報以外の注記が表示される部分であって、ユーザーの利益となる情報を表している。図10では、着用物品1が繰り返して使用できることを表す情報が表示され、ユーザーは、着用物品1が再利用可能であることを認識することができる。
【0141】
なお、これらの情報表示部72~75は、収容部材70を構成する基材シート71に印刷されているのではなく、基材シート71の表面に所定の情報が表示されたシールを貼り付けること等によって構成されるのであっても良い。また、基材シート71が透明なシート部材である場合には、所定の情報が表示されたカード等を内部に封入して、外側から当該カードを視認可能にすること等によって構成されていても良い。
【0142】
このような収容体90として市場に流通することで、当該収容体90を視認したユーザーは、着用物品1の機能や使用態様を認識しやすくなり、着用物品1を正しく使用することができるようになる。
【0143】
<着用物品1の洗濯について>
着用物品1は洗濯して繰り返し使用することが可能であることを説明したが、洗濯を行った場合、乾きやすさが重要である。例えば、着用物品1の着用者が風呂に入っている間に、着用物品1を洗濯して乾かしておき、風呂から出た後に洗濯後の着用物品1を再度着用するような使用態様を想定した場合、着用物品1が高い乾燥性を備えていることが好ましい。
【0144】
本実施形態の着用物品1は、以下のような構成により、乾燥性を高めている。先ず、乾燥性を高める構成として、着用物品1を構成する生地の観点から説明する。本実施形態において、着用物品1(本体部10)を構成している生地は、ポリエステル、又はポリエチレンを90重量%以上含んでいる。ポリエステル及びポリエチレンは、綿と比較して伸度が高い素材であり、そのような素材を多く含むことで、より伸び易さを実現することができる。また、ポリエステル及びポリエチレンは、非吸水性であり、且つ、高い速乾性を有する素材であるため、洗濯後の乾燥時間を短縮することができ、着用物品1の乾燥性が向上する。なお、生地の組成(各素材の重量%)は、測定により確認可能であり、或いは、製品のタグに記載されている「混用率」を確認しても良い。
【0145】
また、本実施形態において、着用物品1を構成している生地は、吸水性素材を含んでいない。吸水性素材とは、例えば、綿やレーヨン等である。吸水性素材を含まないことで、生地が水を含みにくくなり、故に、洗濯後の乾燥時間を短縮でき、着用物品1の乾燥性を向上させる。
【0146】
また、着用物品1を構成している生地は、ポリエステル、又はポリエチレンよりも伸縮性が高い素材を10重量%未満含んでいる。そのようなより伸縮性の高い素材としては、例えば、ポリウレタン等が挙げられる。着用物品1を構成している生地のうち、90重量%以上はポリエステル又はポリエチレンであるので、上述した伸縮性がより高い素材が残りの10重量%未満に含まれることで、良好な乾燥性を担保しつつ、伸縮性の向上を実現できる。なお、そのような高伸縮性素材の混用率が多すぎる(10重量%以上になる)と、着用物品1(本体部10)に皺がよってしまうほど縮んでしまうおそれや、縮み過ぎて、脚回り開口LH、LHに脚を通す際に脚がひっかかり易くなるおそれもあるため、混用率は10重量%未満であることが好ましい。
【0147】
また、着用物品1を構成している生地は、ポリエステル、又はポリエチレンよりも伸縮性が高い素材を含む領域と含まない領域とを有する。例えば、着用物品1において特にフィット性が必要なところに伸縮性の高い素材を配置する(すなわち、より伸縮性が高い素材を含む領域を形成する)ことで、着用物品1の一部に限定してフィット性をより高めることができ、機能性が向上する。また、一部のフィット性を高めるだけでなく、例えば、より伸縮性が高い素材を含む領域を、間隔を空けて複数箇所設ける等により、着用物品1の全体としてのフィット感を向上させることもできる。
【0148】
次に、乾燥性を高める構成として、係合領域30の観点から説明する。係合領域30には、上述したように、本体部10を構成する編み生地とは異なる別体のシート部材(例えば、面ファスナー)が設けられることが好ましく、そして、当該別体のシート部材は、ポリエチレン又はポリエステルで構成されていることが好ましい。別体のシート部材は、本体部10に接合されるため、本体部10と同様に、別体のシート部材も高い速乾性を有する素材によって構成されていることで、着用物品1の乾燥性が向上する。
【0149】
また、別体のシート部材は、当該別体のシート部材の周縁部に沿って糸で縫い付けることにより、着用物品1を構成している生地(本体部10)に接合される。よって、糸で縫われた周縁部よりも内側の領域は、生地と別体のシート部材とが厚さ方向に密着(接合)しておらず、別体のシート部材と生地との間に空間が形成されている。つまり、別体のシート部材全体が生地に接合されている状態ではないため、全体が接合されている場合と比較すると、別体のシート部材のうち生地と接する面において空気と接触する面積が広くなり、水分を蒸発させやすくなる。そのような空気が逃げやすい構成を有することにより、乾燥性が向上する。
【0150】
さらに、本実施形態において、厚さ方向に見たときに、別体のシート部材と伸縮抑制部20(前側中央伸縮抑制部21及び後側中央伸縮抑制部22)とが重複する部分を有する(図2参照)。具体的には、別体のシート部材は、収縮力の異なる領域(伸縮抑制部20)を跨ぐように配置されている。伸縮抑制部20が設けられていることにより、着用物品1を構成している生地に収縮力の変化が生じ、生地の肌側面と別体のシート部材の非肌側面との間に、空間がより形成されやすくなる。そのような空間から空気が逃げやすくなることで、乾燥性が向上する。
【0151】
また、別体のシート部材の大きさは、上下方向の長さが50mm以下、且つ、左右方向の長さが150mm以下であることが好ましい。別体のシート部材が大きくなりすぎると、当該シート部材の部分が乾燥しにくくなるおそれがあるが、上述した範囲内の大きさとすることで、生地に対して十分な係合力を維持できる面積を確保しつつ、乾燥しやすくなる。
【0152】
また、別体のシート部材の厚さは、3mm以下であることが好ましい。それにより、生地に対して十分な係合力を維持できる厚みを確保しつつ、厚すぎないことで、乾燥しやすさも維持できる。
【0153】
続いて、乾燥性を高める構成として、さらに別の観点から説明する。図11は、着用物品1の前側の胴回り領域BRと後側の胴回り領域BRとを左右方向の両側端で切断し、上下方向に展開した状態を示す概略平面図である。具体的に、上述の展開した状態とは、上下方向に展開して、自然状態で水平面上に静置した状態である。図11の展開状態においては、上下方向において前側係合領域31の上端31ueと後側係合領域32の上端32ueとの間、且つ、左右方向において前側係合領域31及び後側係合領域32の最も一方側(左側)の端31pe、32peと前側係合領域31及び後側係合領域32の最も他方側(右側)の端31re、32reとの間の領域S1(図11にて斜線で示した部分)の面積は、それ以外の領域S2の面積よりも小さい。着用物品1を構成している生地のうち領域S1は、通常、吸収パッド100の装着時に吸収パッド100によって覆われる領域である。そのため、仮に、着用物品1の洗濯後の乾燥が若干不十分であったり、別の要因で吸収パッド100を装着後に着用物品1が濡れることがあった場合に、領域S1は、吸収パッド100によって覆われていることでその後の乾燥性が低くなり易い。しかしながら、着用物品1を構成する生地において、領域S1の面積が領域S2の面積よりも小さいことにより、逆の場合と比較して、着用物品1の全体の乾燥性の低下を抑制しやすい。
【0154】
なお、本実施形態において、上述の領域S1の面積は、それ以外の領域S2の面積よりも小さいが、これに限定されるものではない。上記とは逆に、領域S1の面積は、それ以外の領域S2の面積よりも大きくてもよい。この場合、着用物品1の洗濯後の乾燥が若干不十分であっても、領域S1は、吸収パッド100によって覆われるため肌が濡れにくく、着用感が悪化しにくい。
【0155】
===その他===
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。
【0156】
上述の実施形態では、本体部10の伸縮を抑制する伸縮抑制手段として、伸縮抑制部20が設けられることを説明したが、伸縮抑制部20以外の伸縮抑制手段が設けられていても良い。例えば、係合領域30に面ファスナー等の別体のシート部材が設けられている場合には、当該係合領域30においても本体部10の伸縮が抑制される。すなわち、係合領域30も伸縮抑制手段としての機能を備える場合がある。
【符号の説明】
【0157】
1 着用物品(パンツ型着用物品)、
1b 下端(自然状態)、1b 下端(収縮時)、
10 本体部、
11 胴回り折り返し部、12 股下縫い部、13 脚回りかがり縫い部、
20 伸縮抑制部(伸縮抑制手段)、
21 前側中央伸縮抑制部、22 後側中央伸縮抑制部、
23 前側サイド伸縮抑制部(両側部伸縮抑制手段)、
24 後側サイド伸縮抑制部(両側部伸縮抑制手段)、
30 係合領域、
31 前側係合領域、31b 下端、
31pe 一方側の端、31re 他方側の端、31t 上端、31ue 上端、
32 後側係合領域、
32pe 一方側の端、32re 他方側の端、32ue 上端、
70 収容部材、
71 基材シート、
72 商品名表示部、73 商品イメージ表示部、74 説明表示部、
75 注記表示部、
90 着用物品収容体、
100 吸収パッド、
110 吸収体、111 トップシート、112 バックシート、
115 サイドシート、116 吸収パッド弾性部材、
120 吸収パッド係合領域、
121 前側吸収パッド係合領域、
122 後側吸収パッド係合領域、
200 着用物品(比較例)、
300 吸収パッド(比較例)、
BH 胴回り開口、
LH 脚回り開口、LHt 上端、LHb 下端、
BR 胴回り領域、
CR クロッチ領域、
長さ(自然状態)、h 長さ(収縮時)
S1 領域、S2 領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
図11