(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】水力発電装置およびその製造方法、ならびに発電システム
(51)【国際特許分類】
B29C 64/10 20170101AFI20241112BHJP
E02B 9/00 20060101ALI20241112BHJP
F03B 7/00 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
B29C64/10
E02B9/00 Z
F03B7/00
(21)【出願番号】P 2020030192
(22)【出願日】2020-02-26
【審査請求日】2022-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 啓
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-238083(JP,A)
【文献】特開2012-026433(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102014205062(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/10
E02B 9/00
F03B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水路に配置される水力発電装置であって、
水流に対して並行または垂直方向に延びる水車軸に直接または間接的に固定され、かつ算術平均高さSaが4μm以上
30μm以下の熱可塑性樹脂、算術平均高さSaが0.01μm以上
10μm以下の光硬化樹脂、あるいは膜厚1nm以上200μm以下の金属またはシリカでコーティングされた熱可塑性樹脂または光硬化樹脂で構成される回転体と、前記回転体の中心に固定された水車軸とからなる水車と、
前記水車を水流の水力によって回転運動するように前記水車軸で支え、かつ前記水路中に配置される金属または樹脂製の導水手段と、
発電手段と、
を備えることを特徴とする水力発電装置。
【請求項2】
前記回転体が円盤または螺旋盤である、請求項1に記載の水力発電装置。
【請求項3】
前記水車が拡大乃至収縮機構を有し、前記回転体および前記導水手段の少なくともいずれかの大きさが可変である、請求項1から2のいずれかに記載の水力発電装置。
【請求項4】
前記回転体が
、膜厚1nm以上200μm以下の金属またはシリカでコーティングされた熱可塑性樹脂または光硬化樹脂で構成される、請求項1から3のいずれかに記載の水力発電装置。
【請求項5】
流体中の異物を分離する異物分離手段を前記導水手段上に有する、請求項1から4のいずれかに記載の水力発電装置。
【請求項6】
流体中の異物を回収する異物回収手段を前記回転体または前記導水手段上に有する、請求項1から5のいずれかに記載の水力発電装置。
【請求項7】
前記異物回収手段によって回収した異物を分解する異物分解手段を有する、請求項6に記載の水力発電装置。
【請求項8】
異常の発生を通報する異常通報手段を有する、請求項1から7のいずれかに記載の水力発電装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の水力発電装置を製造する方法であって、
前記回転体および前記導水手段の少なくともいずれかを、金属またはシリカでコーティングする、水力発電装置の製造方法。
【請求項10】
前記回転体および前記導水手段の少なくともいずれかを、シリカまたは金属コーティング液を用いたディップ法によりシリカまたは金属でコーティングする、請求項9に記載の水力発電装置の製造方法。
【請求項11】
前記回転体および前記導水手段の少なくともいずれかを、電解めっき法により金属でコーティングする、請求項9に記載の水力発電装置の製造方法。
【請求項12】
請求項1から8のいずれかに記載の水力発電装置を製造する方法であって、
前記水力発電装置を設置する水路の水路情報と、水車の材質、形状、大きさ、および構造を含む水車のデータベースの情報とに基づき、造形する水車の造形情報を決定する決定工程と、
決定した水車の造形情報に基づき三次元プリンターで水車を造形する造形工程と、を含む水力発電装置の製造方法。
【請求項13】
前記水路情報が、水路の形状、大きさ、構造、水量、および水質から選択される少なくとも1種である、請求項12に記載の水力発電装置の製造方法。
【請求項14】
請求項1から8のいずれかに記載の水力発電装置で発電した電気を使用することにより、外部電源を必要とすることなく、水の浄化、センサ、照明、および生物駆除の少なくともいずれかを行う、発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水力発電装置および水力発電装置の製造方法、ならびに発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、欧州、およびアジア等の新興国において、環境性および再生エネルギーの有効活用の観点から、出力100kW以下のマイクロ水力発電が普及し始めてきているが、メンテンナンス性やコスト等を満足できるものは提供されていない。その要因の一つとして、マイクロ水力発電装置は、それぞれの水路の形状、大きさ、水量等に合わせたオーダーメイドな設計が必要であり、そのため、部品コストがかかってしまうという問題がある。
【0003】
そこで、コスト削減を図るため、射出成型で作製した樹脂製の回転体が使用されることが多くなっているが、さらに型を作らない、三次元的な構造物を造形する方法として三次元(3D)プリンター(以下、「3DP」と称することもある)の活用が考えられる。このような3DPによる造形方式としては、例えば、液体状の光硬化樹脂として樹脂溶液を紫外線レーザーで一層ずつ硬化させて積層していくSLA(Stereolithography)方式、ステレオリソグラフィー方式などが開示されている(例えば、特許文献1および2参照)。
最近では、量産製造の世界に3DPを普及させる動きがあり、プロトタイプの作製以外にも多くのアプリケーションに使われ始めているが、現在までのところ、3DPによる、水の流れを有効に活用した耐久性の高いマイクロ水力発電装置は提供されていなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、水の流れを有効活用でき、耐久性に優れた低落差低流量対応型のマイクロ水力発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための手段としての本発明の水力発電装置は、水路に配置される水力発電装置であって、水流に対して並行または垂直方向に延びる水車軸に直接または間接的に固定され、かつ算術平均高さSaが4μm以上30μm以下の熱可塑性樹脂、算術平均高さSaが0.01μm以上10μm以下の光硬化樹脂、あるいは膜厚1nm以上200μm以下の金属またはシリカでコーティングされた熱可塑性樹脂または光硬化樹脂で構成される回転体と、前記回転体の中心に固定された水車軸とからなる水車と、前記水車を水流の水力によって回転運動するように前記水車軸で支え、かつ前記水路中に配置される金属または樹脂製の導水手段と、発電手段と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、水の流れを有効活用でき、耐久性に優れた低落差低流量対応型のマイクロ水力発電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る水力発電装置の製造方法の一例を示す概略図である。
【
図2】
図2は、第2の実施形態に係る水力発電装置の製造方法の一例を示す概略図である。
【
図3】
図3は、螺旋式水車の一例を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、円盤式水車の一例を示す斜視図である。
【
図5A】
図5Aは、フランシス式水車の一例を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、ペルトン式水車の一例を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、ダリウス式水車の一例を示す概略斜視図である。
【
図8】
図8は、水車の拡大乃至収縮機構の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(水力発電装置)
本発明の水力発電装置は、水路に配置される水力発電装置であって、水流に対して並行または垂直方向に延びる水車軸に直接または間接的に固定され、かつ算術平均高さSaが4μm以上50μm以下の熱可塑性樹脂、算術平均高さSaが0.01μm以上20μm以下の光硬化樹脂、あるいは膜厚1nm以上200μm以下の金属またはシリカでコーティングされた熱可塑性樹脂または光硬化樹脂で構成される回転体と、前記回転体の中心に固定された水車軸とからなる水車と、前記水車を水流の水力によって回転運動するように前記水車軸で支え、かつ前記水路中に配置される金属または樹脂製の導水手段と、発電手段と、を備え、さらに必要に応じてその他の手段を備える。
【0009】
従来のマイクロ水力発電装置では、コストパフォーマンスや耐久性などの点から、導入することが困難であり、限定された地域でしか使用されていないという課題がある。また、従来のマイクロ水力発電装置は、メンテンナンスの維持において、材料の入手に数週間程度かかる場合があり、その場合には、発電を提供する機会を逃してしまうという問題がある。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明者が鋭意検討を重ねた結果、水力発電装置における水車の回転体を、所定の樹脂材料を用いて3DPで造形することによって、水の流れを有効活用でき、耐久性に優れた低落差低流量対応型の水力発電装置を提供できることを知見した。
この場合、強度と表面性の観点から、熱可塑性樹脂または光硬化樹脂を用い、3DPとしてLS(Laser Sintering)方式、HSS(High Speed Sintering)方式、または光造形(ステレオリソグラフィー(SLA)方式等)を採用することによって、回転体の算術平均高さSaおよび表面形状を制御することができ、特徴的な流動挙動が得られ、水の流れを有効活用できると共に、耐久性を向上させることができる。また、所定の膜厚の金属またはシリカでコーティングされた前記熱可塑性樹脂もしくは前記光硬化樹脂で回転体を形成することによっても上記同様の効果が得られると共に、Z方向への耐久性がさらに向上することを知見した。
さらに、3DPによって、従来の射出成型では作製できなかった自由な形状、大きさ、構造の水車を容易に効率よく作製することができると共に、異物分離手段、異物回収手段、異物分解手段、および異常通報手段の少なくともいずれかを簡易に組み込むことができる。
【0011】
本発明においては、螺旋式水車(
図3参照)、円盤式水車(
図4参照)などの一般的に使用される形状および構造の水力発電装置を用いることができる。改良型としては、ダリウス式水車(
図7参照)、フランシス式水車(
図5Aおよび
図5B参照)、ペルトン式水車(
図6参照)などの水力発電装置であってもよい。これらの中でも、従来導入することが困難であった、小さな用水路であっても導入することができる低落差低流量対応型とするため、螺旋式水車(
図3参照)を備えた水力発電装置がより好ましい。
図3に示す螺旋式水車については、例えば、特許第5845498号公報などに詳細に記載されている。
図4に示す円盤式水車については、例えば、特開2018-135862号公報などに詳細に記載されている。
【0012】
水力発電装置は、回転体(円盤または螺旋盤)を有する水車と、水を水車に導入するための導水手段と、回転体に接続された発電手段とを有し、異物分離手段、異物回収手段、異物分解手段、および異常通報手段の少なくともいずれかを有することが好ましく、さらに必要に応じてその他の手段を有する。
【0013】
<水車>
水車は、回転体と、該回転体の中心に固定された水車軸とからなる。
【0014】
-水車軸-
水車軸は、回転体の大きさ、形状、重量などに応じてその形状、大きさ、材質などについて適宜選定することができる。
水車軸の材質としては、金属、樹脂などが挙げられる。
金属としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、ステンレス鋼、チタン、ニッケル合金、炭素鋼、クロム鋼、マンガン鋼などが挙げられる。
樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、テフロン(登録商標)、MCナイロン樹脂、超高分子量ポリエチレン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルトルエン樹脂、ポリ-N-ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0015】
-回転体-
回転体は、水流に対して並行または垂直方向に延びる水車軸に直接あるいは間接的に固定される。
水車は拡大乃至収縮機構を有し、回転体および導水手段の少なくともいずれかの大きさが可変であることが好ましい。
拡大乃至収縮機構としては、例えば、水量に対し向かう方向のみに折り曲げ可能なものや、2~複数段からなり、最外部に収納できる形状を有する機構、
図8に示すような横方向に扇子のように広げられるも機構、などが挙げられる。
回転体は、円盤または螺旋盤であることが好ましい。
回転体は、格子状構造であることが、軽量化の観点から好ましく、直接水に接触する裏側を格子状構造にすることも軽量化の観点から好適である。
前記回転体は、(1)算術平均高さSaが4μm以上50μm以下の熱可塑性樹脂、(2)算術平均高さSaが0.01μm以上20μm以下の光硬化樹脂、または(3)膜厚1μm以上200μm以下の金属またはシリカでコーティングされた熱可塑性樹脂もしくは光硬化樹脂で構成される。
【0016】
-(1)熱可塑性樹脂-
熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリアミド12(PA12)、ポリアミド11(PA11)、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリアミド9T(PA9T)、ポリアミド10T(PA10T)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、熱可塑性エラストマー(TPE)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物を用い、HSS(High Speed Sintering)方式、選択的レーザー焼結(SLS)方式などによって、回転体を造形することができる。
熱可塑性樹脂の算術平均高さSaは4μm以上50μm以下であり、10μm以上30μm以下が好ましい。熱可塑性樹脂の算術平均高さSaが4μm以上50μm以下であると、良好な強度および表面形状を有する回転体が得られ、水車の耐久性が向上する。
ここで、算術平均高さは、例えば、光学顕微鏡や接触式または光学式3Dスキャナーまたは、形状解析レーザー顕微鏡により、測定することができる。
【0017】
-(2)光硬化樹脂-
光硬化樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、ジアリルフタレート樹脂、アクリル樹脂、およびメタクリル樹脂から選択される少なくとも1種の樹脂の前駆体を重合させてなる樹脂が挙げられる。
上記光硬化樹脂の前駆体および重合開始剤を含む硬化型組成物を用い、ステレオリソグラフィー(SLA)方式によって、回転体を造形することができる。
前記硬化型組成物は、ステレオリソグラフィー(SLA)方式に好適に用いられるが、ステレオリソグラフィー以外の方式にも用いることが可能である。例えば、インクジェット方式での使用も考えられるが、硬化型組成物の粘度やナノファイバーの繊維径に対応できる吐出機構を考慮する必要がある。
光硬化樹脂の算術平均高さSaは0.01μm以上20μm以下であり、1μm以上10μm以下が好ましい。光硬化樹脂の算術平均高さSaが0.01μm以上20μm以下であると、良好な強度および表面形状を有する回転体が得られ、水車の耐久性が向上する。
【0018】
-(3)金属またはシリカでコーティングされた熱可塑性樹脂もしくは光硬化樹脂-
上記のように形成された熱可塑性樹脂もしくは光硬化樹脂に、金属またはシリカでコーティングすることによって、Z方向への耐久性が向上する。ここで、コーティングを施す場合の算術平均高さSaについては、熱可塑性樹脂の場合は上記(1)、光硬化樹脂の場合は上記(2)に記載の算術平均高さSaとすることが好ましいが、コーティングにより耐久性を向上できるので、これに限定されない。
金属またはシリカの膜厚は1μm以上200μm以下であり、20μm以上200μm以下が好ましい。金属またはシリカの膜厚が1μm以上200μm以下であると、Z方向への耐久性に優れた回転体が得られる。
金属のコーティングとしては、金属コーティング液を用いたディップ法、電解めっき法などが挙げられる。
金属としては、例えば、銀、金、白金、銅、亜鉛、コバルト、ニッケル、鉄、亜鉛、クロム、またはこれらの合金などが挙げられる。
【0019】
シリカのコーティングとしては、シリカコーティング液を用いたディップ法などが挙げられる。
【0020】
上記(2)で用いられる硬化型組成物は、上記光硬化樹脂の前駆体および重合開始剤を含み、ナノファイバーを含むことが好ましく、さらに必要に応じて、その他の成分を含む。
【0021】
-重合開始剤-
硬化型組成物は、電子線および電磁波を吸収する重合開始剤を含有する。電子線および電磁波を吸収する重合開始剤を用いることで反応が進行し、ポリマー化が伸長することにより樹脂が固化し硬化物を得ることができる。
重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤、アニオン重合開始剤、および光熱変換剤から選択される少なくとも1種が好ましい。
重合開始剤の含有量は、硬化型組成物の全量に対して、0.01質量%以上5質量%以下が好ましい。
【0022】
-電子線および電磁波-
硬化型組成物は電子線および電磁波の照射により重合するものであり、電子線および電磁波としては、必要に応じて適宜変更することができる。
電子線および電磁波としては、重合開始剤を励起させるのに十分な強度を有していることが好ましい。
電子線および電磁波としては、例えば、紫外線(UV)、半導体レーザー、DLP(Digital Light Processing、登録商標)タイプでの光源、赤外線レーザーなどが挙げられる。
電磁波の波長としては、250nm以上1,000nm以下が好ましい。UV波長の開始剤を使用するときは250nm以上420nm以下の波長が好ましく、赤外線レーザーの波長が必要なときは、700nm以上900nm以下の波長が好ましい。
電子線および電磁波は、2種以上であってもよく、同時もしくは順番に切り替えて使用してもよい。
【0023】
-ナノファイバー-
硬化型組成物は、ナノファイバーを含有することが好ましい。
前記ナノファイバーとしては、セラミック、ガラス、セルロース、アルミナ、チタニア、カーボン、およびシロキサンから選択されるいずれかから構成される。光硬化樹脂内にナノファイバーが内包された樹脂を用いることにより、耐熱性および強度をより向上させることができる。
【0024】
ナノファイバーとしては、セラミック、ガラス、セルロース、アルミナ、チタニア、カーボン、シロキサンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、上記の他にも、強度および耐熱性向上の点から、例えば、国際公開第2008/057844号パンフレットに記載のナノファイバーなどが挙げられる。
【0025】
ナノファイバーの形状としては、特に制限はなく、必要に応じて適宜変更することが可能である。
ナノファイバーの繊維径は1μm以上30μm以下が好ましく、2μm以上25μm以下がより好ましく、4μm以上15μm以下がさらに好ましい。
ナノファイバーの繊維長は50μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましく、300μm以上がさらに好ましい。ナノファイバーの繊維長の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3,000μm以下が好ましい。
ナノファイバーの繊維径および繊維長が上記数値範囲であると、回転体の耐熱性および強度をより向上させることができると共に、回転体の表面の粗さをナノファイバーが無添加である場合の硬化物と同程度にすることができる。
ナノファイバーの繊維径および繊維長は、平均値を表し、回転体において、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)により測定を行い、5箇所の平均を求めて得られる。
【0026】
ナノファイバーと樹脂成分との密着性を向上させる観点から、収束剤の添加やナノファイバーの表面処理を行ってもよい。これらの中でも、表面が疎水化処理されたナノファイバーが好ましく用いられる。
疎水化処理に用いる疎水化剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ジメチルジクロロシラン(DMDS)等のシランカップリング剤、ジメチルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル等のシリコーンオイルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、シランカップリング剤が好ましい。
【0027】
ナノファイバーの含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、回転体の全量に対して、5質量%以上が好ましい。ナノファイバーを5質量%以上含むことにより、耐熱性および強度の向上効果が得られる。
一方、ナノファイバーの含有量は、回転体の全量に対して、合計で90質量%以下であることが好ましい。この場合、ナノファイバーが多く含まれることによって造形が困難になることを防ぐことができる。
ナノファイバーの含有量は、回転体を構成する硬化型組成物の粘度との兼ね合いから、10質量%以上60質量%以下がより好ましい。また、回転体の強度をより向上させるために、20質量%以上60質量%以下がさらに好ましい。
【0028】
<その他の成分>
硬化型組成物は、必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、消泡剤、収束剤、架橋剤、減粘剤、表面処理剤、可塑剤、平滑化剤、溶媒などが挙げられる。
【0029】
<導水手段>
導水手段は、水車を水流の水力によって回転運動するように水車軸で支え、かつ前記水路中に配置される金属または樹脂製の手段である。
金属としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、ステンレス鋼、チタン、ニッケル合金、炭素鋼、クロム鋼、マンガン鋼などが挙げられる。
樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、テフロン(登録商標)、MCナイロン樹脂、超高分子量ポリエチレン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルトルエン樹脂、ポリ-N-ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
導水手段は、水車の回転体に水を導水することができるものであれば、その形状、大きさ、構造などについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0030】
<発電手段>
発電手段としては、水車の回転体の回転運動エネルギーを電気エネルギーに変換することができるものであれば特に制限はなく、交流発電機または直流発電機のどちらであってもよく、目的に応じて適宜選定することができ、例えば、回転磁石式の交流発電機、整流子付直流発電機、マグネットポンプなどが挙げられる。
回転磁石式の交流発電機としては、特に制限はないが、例えば、自転車の照明などに用いるダイナモなどを用いることができる。
マグネットポンプは、ローターに内蔵された従動マグネットが、該マグネットと磁石結合された駆動マグネットの回転により同期回転して流体を吸入圧送することができるものであり、回転磁石が磁力により回転体の回転と連動して回転可能であり、該回転磁石と該回転体とが、水の流通が不能に隔離されて配置されている。このマグネットポンプは、メカニカルシールなどの軸封装置を用いていないため、長期間使用してもポンプの腐食やポンプ回りの汚れがなく、メカニカルシール部の劣化などによる水漏れが生じないものである。
【0031】
<異物分離手段>
マイクロ水力発電装置は、液体中の異物を分離する異物分離手段を導水手段上に有することが好ましい。異物分離手段を導水手段上に有することによって、水車に導入される水から異物を分離することができ、回転体が壊れるのを防止でき、長期間に亘って効率よく発電を行うことができる。
前記異物分離手段の大きさ、形状、構造、材質などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
異物分離手段としては、例えば、網、スクリーン、フィルタなどが挙げられる。
【0032】
<異物回収手段>
マイクロ水力発電装置は、流体中の異物を回収する異物回収手段を回転体または導水手段上に有することが好ましい。
前記異物回収手段の大きさ、形状、構造、材質などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
異物回収手段としては、例えば、回収容器、吸着フィルタ、分離フィルタとの組合せ、特定物の回収容器などが挙げられる。
【0033】
<異物分解手段>
マイクロ水力発電装置は、上記異物回収手段によって回収した異物を分解する手段である。
前記異物分解手段の大きさ、形状、構造、材質などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
異物分解手段としては、異物の種類に応じて異なり適宜選定することができ、例えば、マイクロバブル発生装置、UV照射機、0.1μm以下のろ過フィルタなどが挙げられる。
【0034】
<異常通報手段>
マイクロ水力発電装置は、異常の発生を通報する異常通報手段を有することが好ましい。 異常としては、例えば、マイクロ水力発電装置の動作不良、動作不能、流路の詰まり、水路の水量の減少などが挙げられる。
異常通報手段としては、例えば、ディスプレイ、メール、スピーカー、ライト、WiFiを利用した携帯アプリなどが挙げられる。
【0035】
<その他の手段>
その他の手段としては、例えば、制御手段、蓄電手段などが挙げられる。
制御手段は、本発明の水力発電装置の動作を制御するための手段である。制御手段にはROMやRAMなどの記憶手段およびCPU、FPGAなどの計算手段を含んでよい。記憶手段には、水車や導水手段に特定の動作を行わせるためのプログラムが記憶されていてよく、かかるプログラムに基づいて各手段の動作を制御する。
【0036】
蓄電手段は、水力発電装置によって発電された電力を蓄える手段であり、例えば、リチウムイオン二次電池、ニッケルカドミウム電池、鉛蓄電池などが挙げられる。
【0037】
本発明の水力発電装置は、従来導入することが困難であった、小さな用水路に導入することができる低落差低流量対応型であり、例えば、河川、農業用水、農業用水路、工業用水、工場、ビル、下水処理場等の排水路、プラント内の導水路などに設置することができる。
【0038】
(水力発電装置の製造方法)
本発明の水力発電装置の製造方法は、本発明のマイクロ水力発電装置を製造する方法であって、薄層形成工程と、硬化工程と、コーティング工程とを含み、さらに必要に応じてその他の工程を含む。
【0039】
<薄層形成工程>
薄層形成工程としては、適宜変更することが可能である。水力発電装置における水車(回転体)および導水手段の製造方法としては、自由液面法、規制液面法などを採用することができる。自由液面法では、例えば、硬化型組成物が供給される貯蔵部内にステージを配置させ、ステージを下げることで、ステージ上に硬化型組成物からなる薄層を形成する。また、硬化型組成物の粘度によっては、薄層が平面になりにくい場合があり、必要に応じて、硬化型組成物をならす工程を行ってもよい。また、規制液面法では、例えば、硬化型組成物が供給される貯蔵部内にステージを配置させ、ステージを上げることで、ステージ下に硬化型組成物からなる薄層を形成する。
【0040】
<硬化工程>
硬化工程としては、電子線および電磁波を照射することができればよく、適宜変更することが可能である。電子線および電磁波の照射の際には、電子線および電磁波を照射する照射ユニットを所望の位置に移動させて照射を行ってもよいし、ある程度の範囲を一括して照射してもよい。照射の範囲は適宜変更することができ、照射の範囲が狭いほど、精密な硬化物が得られる。放射線を照射する方向としては、薄層の上方向から行ってもよいし、下方向から行ってもよい。
【0041】
水車および導水手段の製造装置としては、特に制限はなく、公知の装置を用いることができ、例えば、上述の規制液面法として、特許第5774825号公報に記載の一次元規制方式による製造装置を用いることができ、特許第5605589号公報に記載の二次元規制方式による製造装置を用いることができる。これらの中でも、一次元規制方式、二次元規制方式でのステレオリソグラフィーによる造形が高粘度材料を使用できるため好ましい。
【0042】
所望の箇所に電子線および電磁波を照射する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ガルバノミラー等を用いて照射位置を変えてもよく、照射ユニットを所望の位置に移動させてもよく、ステージを移動させてもよく、あるいは、ガルバノミラーの代わりにfθレンズとポリゴンミラーの組合せを使用してもよく、さらに2光子を利用した造形方法を使用してもよい、その分、高解像であることが期待できる。また、4Kや8K対応のDLPやLCD方式を光源として、使用してもよい。
【0043】
水車および導水手段の製造方法においては、必要に応じて、薄層形成工程と硬化工程を所定回数繰り返し、水車および導水手段を製造する。所定回数繰り返すことにより、硬化型組成物が硬化した部分が積層して積層物が得られる。積層物を作製しながら、マイクロ波等により反応を進行させてもよく、造形物をIRヒーター等で加熱してもよい。このような積層物を本発明のフィルタの硬化物としてもよいし、造形物が完成した後に加熱工程を行い、積層物全体を加熱して硬化物としてもよい。全体を加熱することにより、硬化物の耐熱性や強度をより向上させることができ、荷重たわみ温度をより高くすることができる。しかし、本発明においては、このように最後に追加加熱工程を行わなくても良好な耐熱性や強度を得られるという利点がある。
【0044】
また、各種材料を用いて硬化型組成物を作製した後、かつ薄層形成工程の前に、硬化型組成物を撹拌する工程(撹拌工程)を行ってもよい。撹拌することによって、硬化型組成物中における各成分のムラを防止でき、高精密な硬化物が得られやすくなる。撹拌工程には、超音波を使用した振動により撹拌する方法を用いてもよい。
【0045】
製造された硬化物としての水車および導水手段は、JIS K7191の測定方法において、1.8MPaで荷重をかけたときの荷重たわみ温度は60℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、80℃以上がさらに好ましい。水車および導水手段が上記荷重たわみ温度の好適な範囲を満たす場合、水車および導水手段の強度、硬度がより向上し、水車および導水手段の使用の幅が広がり、実用の製品としても使用に耐え得る。
【0046】
なお、水車および導水手段を製造する方法としては、適宜操作を変更することができ、例えば、硬化型組成物を順次硬化・積層させた後、積層物全体を加熱してもよい。全体を加熱することで、硬化物の耐熱性や強度が向上する。
本発明においては、耐熱性や強度に優れた水車および導水手段が得られ、造形が完了した後に積層物全体を加熱せずとも、荷重たわみ温度が60℃以上になることを達成しやすくなる。
【0047】
<コーティング工程>
本発明のマイクロ水力発電装置の製造方法により製造された本発明の水力発電装置における水車(回転体)および導水手段の少なくともいずれかに、金属またはシリカでコーティングを施すことによって、強度と表面性状を調整することができる。
回転体および導水手段の少なくともいずれかを、シリカコーティング液または金属コーティング液を用いたディップ法によりシリカまたは金属でコーティングすることが好ましい。
回転体および前記導水手段の少なくともいずれかを、電解めっき法により金属でコーティングすることが好ましい。
【0048】
本発明の水力発電装置の製造方法は、水力発電装置を製造する方法であって、
前記水力発電装置を設置する水路の水路情報と、水車の材質、形状、大きさ、および構造を含むフィンのデータベースの情報とに基づき、造形する水車の造形情報を決定する決定工程と、決定した水車の造形情報に基づき三次元プリンターで水車を造形する造形工程と、を含み、さらに必要に応じてその他の工程を含む。
【0049】
前記水路情報が、水路の場所、形状、大きさ、構造、水量、および水質から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
前記決定工程は決定手段により実施される。前記決定手段としては、各種の情報から対象物保持部材の造形情報を決定する機能を実現可能なものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、コンピュータ、サーバ装置、携帯端末などを用いて実現することができる。
【0050】
本発明の水力発電装置の製造方法においては、三次元プリンターを用いることによって、数が少なくても比較的安価に、短時間で複雑な形状および構造であっても造形可能である。
三次元プリンターとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱溶融積層方式(FDM)、マテリアルジェット方式、バインダージェット方式、粉末積層法、光造形方式等の様々なものを選択可能である。
【0051】
ここで、本発明の水力発電装置の製造方法の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0052】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係るマイクロ水力発電装置の製造方法を説明するための概略図である。
まず、
図1(A)に示すように、薄層形成工程によりステージ10上に薄層20を形成する。
次に、
図1(B)に示すように、薄層20の少なくとも一部に放射線30を照射して硬化させる硬化工程を行う。これにより、
図1(C)に示すように、薄層20の少なくとも一部が硬化され、硬化物40が得られる。
その後、所望の構造の水車および導水手段となるように、薄層20の他の部分に放射線30を照射する。
これ以降、一連の処理を所定回数繰り返すことにより、
図3に示すような螺旋式水車が得られる。
最後に、図示を省略しているが、製造された水車の回転体および導水手段に対して、金属またはシリカでコーティングすることによって、水車の回転体および導水手段の強度と表面形状を調整することができる。
【0053】
<第2の実施形態>
図2は、第2の実施形態に係るマイクロ水力発電装置の製造方法を説明するための概略図である。
まず、
図2(A)に示すように、薄層形成工程によりステージ10下に薄層20を形成する。
次に、
図2(B)に示すように、薄層20の少なくとも一部に放射線30を照射して硬化させる硬化工程を行う。これにより、
図2(C)に示すように、薄層20の少なくとも一部が硬化され、硬化物40が得られる。
その後、所望の構造の水車および導水手段となるように、薄層20の他の部分に放射線30を照射する。
これ以降、一連の処理を所定回数繰り返すことにより、
図3に示すような螺旋式水車が得られる。
最後に、図示を省略しているが、製造された水車の回転体および導水手段に対して、金属またはシリカでコーティングすることによって、水車の回転体および導水手段の強度と表面形状を調整することができる。
【0054】
(発電システム)
本発明の発電システムは、本発明の水力発電装置で発電した電気を使用することにより、外部電源を必要とすることなく、水の浄化、センサ、照明、および生物駆除の少なくともいずれかを行うことを特徴とする。
【0055】
センサとしては、水量、発電システムの稼働状況、温湿度、照度、人感、CO2、加速度、UV、騒音、地磁気、気圧などの様々なセンサに応用でき、読み取ったデータをPCやスマートフォン等に無線通信で送信することができる。
生物駆除としては、例えば、汚水等に集まる有害生物(大腸菌等の原核生物や微生物、蚊やボウフラなど)を、レーザーで死滅する方法などが挙げられる。
前記発電システムによると、外部電源を用いることなく、水の浄化、センサ、照明、および生物駆除の少なくともいずれかを行うことができる。したがって、非電化地域、未開発地域、山間部や離島などの電源設備がない場所でも、常に水が流れている河川や水路があれば発電システムを導入することができる。
【実施例】
【0056】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0057】
(硬化型組成物の調製例1)
下記の組成を混合して、硬化型組成物を調製した。得られた硬化型組成物は23℃で液体であった。
[組成]
・不飽和ポリエステル樹脂(DIC株式会社製、XO-CU-122-1):99.5質量%
・ラジカル重合開始剤(BASF社製、irgacure1173):0.3質量%
・消泡剤(DIC株式会社製、RS-408):0.2質量%
【0058】
(実施例1)
<水車の作製>
熱可塑性樹脂(PA12、HP社製)を用い、HSS(High Speed Sintering)方式により、算術平均高さSaが4μmの熱可塑性樹脂から構成される円盤である回転体を有する実施例1の螺旋式水車(
図3参照)を作製した。
ここで、回転体の算術平均高さSaは、以下のようにして測定した。以下の実施例2~11および比較例1~2でも同様にして回転体の算術平均高さSaを測定した。
【0059】
<算術平均高さSa>
形状解析レーザー顕微鏡 KEYENCE社製VK-X1000を用いて、測定点はできるだけ中心部分周辺を3点測定し、平均値を算術平均高さSaとした。
【0060】
(実施例2)
<水車の作製>
熱可塑性樹脂(PA12、HP社製)を用い、HSS(High Speed Sintering)方式により、算術平均高さSaが4μmの熱可塑性樹脂から構成される螺旋盤である回転体を有する実施例2の螺旋式水車(
図3参照)を作製した。
【0061】
(実施例3)
<水車の作製>
熱可塑性樹脂(PA12、HP社製)を用い、HSS(High Speed Sintering)方式により、算術平均高さSaが8μmの熱可塑性樹脂から構成される螺旋盤である回転体を有する実施例3の螺旋式水車(
図3参照)を作製した。
なお、実施例3では、回転体に水車軸をネジもしくは、はめ込みにより固定している(間接)。
【0062】
(実施例4)
<水車の作製>
上記硬化型組成物を用い、ステレオリソグラフィー(SLA)方式により、算術平均高さSaが0.01μmの光硬化樹脂から構成される螺旋盤である回転体を有する実施例4の螺旋式水車(
図3参照)を作製した。
【0063】
(実施例5)
<水車の作製>
上記硬化型組成物を用い、ステレオリソグラフィー(SLA)方式により、算術平均高さSaが1μmの光硬化樹脂から構成される螺旋盤である回転体を有する実施例4の螺旋式水車(
図3参照)を作製した。
【0064】
(実施例6)
<水車の作製>
熱可塑性樹脂(PA12、HP社製)を用い、HSS(High Speed Sintering)方式により、算術平均高さSaが3μmの熱可塑性樹脂から構成される螺旋盤である回転体を有する螺旋式水車(
図3参照)を作製した。
次に、作製した螺旋式水車の回転体に金属コーティング液(ROVAL社製、厚膜ローバル)を用いたディップ法により膜厚10μmの金属(亜鉛)層を形成した。以上により、実施例6の水車を作製した。
【0065】
(実施例7)
<水車の作製>
熱可塑性樹脂(PA12、HP社製)を用い、HSS(High Speed Sintering)方式により、算術平均高さSaが4μmの熱可塑性樹脂から構成される螺旋盤である回転体を有する螺旋式水車(
図3参照)を作製した。
次に、作製した螺旋式水車の回転体に電解めっき法(Meltex社製、アンカー1127)により膜厚200μmの金属(クロム)層を形成した。以上により、実施例7の水車を作製した。
【0066】
(実施例8)
<水車の作製>
熱可塑性樹脂(PA12、HP社製)を用い、HSS(High Speed Sintering)方式により、算術平均高さSaが8μmの熱可塑性樹脂から構成される螺旋盤である回転体を有する螺旋式水車(
図3参照)を作製した。
次に、作製した螺旋式水車の回転体にシリカコーティング液(メチルメトキシシランと
0.05質量%のTMAHを添加した溶液)を用いたディップ法により膜厚1μmのシリカ層を形成した。以上により、実施例8の水車を作製した。
【0067】
(実施例9)
<水車の作製>
上記硬化型組成物を用い、ステレオリソグラフィー(SLA)方式により、算術平均高さSaが3μmの光硬化樹脂から構成される螺旋盤である回転体を有する螺旋式水車(
図3参照)を作製した。
次に、作製した螺旋式水車の回転体に金属コーティング液(ROVAL社製、厚膜ローバル)を用いたディップ法により膜厚100μmの金属(亜鉛)層を形成した。以上により、実施例9の水車を作製した。
【0068】
(実施例10)
<水車の作製>
熱可塑性樹脂(PA12、HP社製)を用い、LS(Laser Sintering)方式により、算術平均高さSaが50μmの熱可塑性樹脂から構成される円盤である回転体を有するフランシス式水車(
図5Aおよび
図5B参照)を作製した。
【0069】
(実施例11)
<水車の作製>
熱可塑性樹脂(PA12、HP社製)を用い、HSS(High Speed Sintering)方式により、算術平均高さSaが20μmの熱可塑性樹脂から構成される円盤である回転体を有するフランシス式水車(
図5Aおよび
図5B参照)を作製した。
【0070】
(比較例1)
<水車の作製>
熱可塑性樹脂(PA12、HP社製)を用い、射出成型によって、算術平均高さSaが1μmの熱可塑性樹脂から構成される螺旋盤である回転体を有する比較例1の螺旋式水車(
図3参照)を作製した。
この比較例1の螺旋式水車を備えた水力発電装置を用いて、耐久性試験をした結果、中心軸から離れてしまった。
【0071】
(比較例2)
<水車の作製>
熱可塑性樹脂(PA12、HP社製)を用い、射出成型によって、算術平均高さSaが0.3μmの熱可塑性樹脂から構成される螺旋盤である回転体を有する比較例2の螺旋式水車(
図3参照)を作製した。
この比較例2の螺旋式水車を備えた水力発電装置を用いて、耐久性試験をした結果、中心軸から離れてしまった。
【0072】
次に、作製した各水車を装着した水力発電装置を用いて、以下のようにして、耐久性試験を行った。結果を表2に示した。
【0073】
<耐久性試験>
水力発電装置を水流に設置し、24時間1箇月、およそ100L/sのスピードで水を流し続ける耐久性試験を行った。試験終了時の水車の形状を観察し、以下の基準で評価した。
[評価基準]
〇:水車の形状を維持している
×:水車の羽が壊れている(90度以上に折れ曲がったり、破損している)、羽が主軸から脱輪してしまった
【0074】
【0075】
【0076】
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1> 水路に配置される水力発電装置であって、
水流に対して並行または垂直方向に延びる水車軸に直接または間接的に固定され、かつ算術平均高さSaが4μm以上50μm以下の熱可塑性樹脂、算術平均高さSaが0.01μm以上20μm以下の光硬化樹脂、あるいは膜厚1nm以上200μm以下の金属またはシリカでコーティングされた熱可塑性樹脂または光硬化樹脂で構成される回転体と、前記回転体の中心に固定された水車軸とからなる水車と、
前記水車を水流の水力によって回転運動するように前記水車軸で支え、かつ前記水路中に配置される金属または樹脂製の導水手段と、
発電手段と、
を備えることを特徴とする水力発電装置である。
<2> 前記回転体が円盤または螺旋盤である、前記<1>に記載の水力発電装置である。
<3> 前記水車が拡大乃至収縮機構を有し、前記回転体および前記導水手段の少なくともいずれかの大きさが可変である、前記<1>から<2>のいずれかに記載の水力発電装置である。
<4> 前記回転体が格子状構造である、前記<1>から<3>のいずれかに記載の水力発電装置である。
<5> 流体中の異物を分離する異物分離手段を前記導水手段上に有する、前記<1>から<4>のいずれかに記載の水力発電装置である。
<6> 流体中の異物を回収する異物回収手段を前記回転体または前記導水手段上に有する、前記<1>から<5>のいずれかに記載の水力発電装置である。
<7> 前記異物回収手段によって回収した異物を分解する異物分解手段を有する、前記<6>に記載の水力発電装置である。
<8> 異常の発生を通報する異常通報手段を有する、前記<1>から<7>のいずれかに記載の水力発電装置である。
<9> 前記<1>から<8>のいずれかに記載の水力発電装置を製造する方法であって、
前記回転体および前記導水手段の少なくともいずれかを、金属またはシリカでコーティングする、水力発電装置の製造方法である。
<10> 前記回転体および前記導水手段の少なくともいずれかを、シリカまたは金属コーティング液を用いたディップ法によりシリカまたは金属でコーティングする、前記<9>に記載の水力発電装置の製造方法である。
<11> 前記回転体および前記導水手段の少なくともいずれかを、電解めっき法により金属でコーティングする、前記<9>に記載の水力発電装置の製造方法である。
<12> 前記<1>から<8>のいずれかに記載の水力発電装置を製造する方法であって、
前記水力発電装置を設置する水路の水路情報と、水車の材質、形状、大きさ、および構造を含む水車のデータベースの情報とに基づき、造形する水車の造形情報を決定する決定工程と、
決定した水車の造形情報に基づき三次元プリンターで水車を造形する造形工程と、を含む水力発電装置の製造方法である。
<13> 前記水路情報が、水路の形状、大きさ、構造、水量、および水質から選択される少なくとも1種である、前記<12>に記載の水力発電装置の製造方法である。
<14> 前記<1>から<8>のいずれかに記載の水力発電装置で発電した電気を使用することにより、外部電源を必要とすることなく、水の浄化、センサ、照明、および生物駆除の少なくともいずれかを行う、発電システムである。
【0077】
前記<1>から<8>のいずれかに記載の水力発電装置、前記<9>から<13>のいずれかに記載の水力発電装置の製造方法、および前記<14>に記載の発電システムによると、従来における諸問題を解決し、本発明の目的を達成することができる。
【符号の説明】
【0078】
10 ステージ
20 硬化型組成物
30 電子線および電磁波
40 硬化物
【先行技術文献】
【特許文献】
【0079】
【文献】特許第5605589号公報
【文献】特許第5774825号公報