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特許7585683撮影装置、撮影システム、移動体及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】撮影装置、撮影システム、移動体及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/56 20230101AFI20241112BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20241112BHJP
   G03B 15/02 20210101ALI20241112BHJP
   G03B 17/02 20210101ALI20241112BHJP
   G03B 17/55 20210101ALI20241112BHJP
   H04N 23/50 20230101ALI20241112BHJP
   H04N 23/52 20230101ALI20241112BHJP
【FI】
H04N23/56
G03B15/00 L
G03B15/02 J
G03B17/02
G03B17/55
H04N23/50
H04N23/52
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020158886
(22)【出願日】2020-09-23
(65)【公開番号】P2022052468
(43)【公開日】2022-04-04
【審査請求日】2023-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】高巣 修作
【審査官】登丸 久寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-053096(JP,A)
【文献】特開2011-095222(JP,A)
【文献】特開2014-035370(JP,A)
【文献】特開2007-151685(JP,A)
【文献】特開2005-319101(JP,A)
【文献】特開2019-058499(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/52
H04N 23/56
H04N 23/50
G03B 15/00
G03B 17/55
G03B 17/02
G03B 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を撮影する撮影装置であって、
撮影レンズと、
前記撮影レンズによる前記対象物の像を撮像する撮像手段と、
前記撮影装置による撮影領域を照明光により照明する照明手段と、
記照明光に基づくエネルギーにより、前記撮影レンズを加熱する加熱手段と、を有し、
前記加熱手段は、前記照明光の少なくとも一部を前記撮影レンズに向けて偏向させる照明偏向部材を含み、前記照明偏向部材を用いて前記撮影レンズに照射される光の前記エネルギーにより、前記撮影レンズを加熱する
撮影装置。
【請求項2】
前記撮影レンズは、複数の撮影レンズ素子を含み、
前記加熱手段は、前記複数の撮影レンズ素子のうち、最も前記対象物側に設けられた撮影前玉を加熱する
請求項1に記載の撮影装置。
【請求項3】
前記照明偏向部材は、前記照明偏向部材の少なくとも一部が前記照明光の少なくとも一部を遮る遮光位置と、前記照明偏向部材が前記照明光を遮らない非遮光位置との間で移動可能に設けられ、前記遮光位置に前記照明偏向部材を配置することで、前記照明偏向部材の少なくとも一部が前記照明光の少なくとも一部を前記撮影レンズに照射する
請求項1、又は2に記載の撮影装置。
【請求項4】
前記照明偏向部材は、前記撮影装置の少なくとも一部を遮蔽可能で且つ開閉可能に設けられた外装部材に取り付けられ、前記外装部材の開閉動作に連動して前記遮光位置と前記非遮光位置との間を移動する
請求項3に記載の撮影装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の撮影装置を有する
撮影システム。
【請求項6】
前記照明手段は、複数の照明レンズ素子を含む照明レンズを有し、
前記撮影レンズは、複数の撮影レンズ素子を含み、
前記加熱手段は、前記複数の撮影レンズ素子のうちの最も前記対象物側に設けられた撮影前玉、及び前記複数の照明レンズ素子のうちの最も前記対象物側に設けられた照明前玉の両方を加熱する
請求項5に記載の撮影システム。
【請求項7】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の撮影装置、或いは請求項5又は6に記載の撮影システムの何れか1つを有し、
前記対象物は構造物の壁面であり、
移動しながら、前記撮影装置又は前記撮影システムにより前記構造物の壁面を撮影する
移動体。
【請求項8】
撮影レンズを有し、対象物を撮影する撮影装置による撮影方法であって、
前記撮影レンズによる前記対象物の像を撮像する工程と
前記撮影装置による撮影領域を照明光により照明する工程と、
記照明光に基づくエネルギーにより、前記撮影レンズを加熱する工程と、を行い、
前記加熱する工程では、前記照明光の少なくとも一部を前記撮影レンズに向けて偏向させる照明偏向部材を用いて前記撮影レンズに照射される光の前記エネルギーにより、前記撮影レンズを加熱する
撮影方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影装置、撮影システム、移動体及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、対象物を撮影する撮影装置が知られている。また、撮影装置に含まれる撮影レンズの結露を防止するために、アルミニウム等の熱伝導率の高い素材により構成されたレンズホルダを、撮像素子等の撮像手段を設けた基板に当接させることで、撮像手段の発熱を伝熱して撮影レンズを加熱する構成が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら特許文献1の構成では、撮影レンズを効率よく加熱できず、結露を十分に防止できない場合がある。
【0004】
本発明は、撮影レンズを効率よく加熱可能な撮影装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る撮影装置は、対象物を撮影する撮影装置であって、撮影レンズと、前記撮影レンズによる前記対象物の像を撮像する撮像手段と、前記撮影装置による撮影領域を照明光により照明する照明手段と、記照明光に基づくエネルギーにより、前記撮影レンズを加熱する加熱手段と、を有し、前記加熱手段は、前記照明光の少なくとも一部を前記撮影レンズに向けて偏向させる照明偏向部材を含み、前記照明偏向部材を用いて前記撮影レンズに照射される光の前記エネルギーにより、前記撮影レンズを加熱する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、撮影レンズを効率よく加熱できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係る撮影システムの構成例を示す斜視図である。
図2】実施形態に係るカメラユニットの構成例を示す斜視図である。
図3】実施形態に係る照明ユニットの構成例を示す斜視図である。
図4】実施形態に係る撮影システムのハードウェア構成例を示すブロック図である。
図5】車両からトンネル壁面までの距離が短い場合での撮影を説明する図であり、(a)は走行方向から車両をみた図、(b)はトンネル内部の車両の走行を示す図である。
図6】車両からトンネル壁面までの距離が長い場合での撮影を説明する図であり、(a)は走行方向から車両をみた図、(b)はトンネル内部の車両の走行を示す図である。
図7】カメラユニットと照明ユニットの位置/姿勢変動の影響を示す図であり、(a)は位置/姿勢変動がない場合を示す図、(b)は位置/姿勢変動がある場合を示す図である。
図8】ガイドシャフト及びガイドシャフト保持部材の構成例を示す図である。
図9】トンネルの壁面に対して傾いた時の撮影領域と照明領域の関係を示す図である。
図10】インデックスプランジャの構成例を示す図である。
図11】撮影方向に対して照明方向を傾ける効果例を説明する図である。
図12】照明光と撮影光の傾き、照明配光角、及び照明領域の関係を示す図であり、(a)はカメラユニットと照明ユニットとトンネルの壁面の関係を示す図、(b)は撮影領域と照明領域が重なっている状態で車両がトンネルの壁面から遠のいた場合を示す図である。
図13】照明光と撮影光の傾き、照明配光角、及び照明領域の関係を示す図であり、(c)は撮影領域と照明領域が重なっている状態で車両がトンネルの壁面に近づいた場合を示す図、(d)は撮影光を照明光に対して傾けた例を示す図である。
図14】車両の蛇行と撮影領域と照明領域の関係例を説明する図である。
図15】実施形態に係る撮影システムの動作例を示すフローチャートである。
図16】第1実施形態に係る撮影システムの構成例を示す斜視図である。
図17】外装カバーが遮蔽された状態の撮影システムを示す斜視図である。
図18】第1実施形態に係る照明反射部材の構成例を示す斜視図である。
図19】第1実施形態に係る照明反射部材の構成例を示す側面図である。
図20】外装カバー内での各構成の配置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部には同一符号を付し、重複した説明を適宜省略する。
【0009】
また以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための撮影装置を例示するものであって、本発明を以下に示す実施形態に限定するものではない。以下に記載されている構成部品の形状、その相対的配置、パラメータの値等は特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張している場合がある。
【0010】
実施形態に係る撮影装置は、対象物を撮影する撮影装置であって、撮影レンズと、撮影レンズによる対象物の像を撮像する撮像手段と、撮影装置の撮影範囲を照明可能な照明光に基づくエネルギーにより、撮影レンズを加熱する加熱手段とを有する。
【0011】
例えば加熱手段は、照明光の少なくとも一部を撮影レンズに向けて偏向させる照明偏向部材を含み、照明偏向部材を用いて撮影レンズに照射される光のエネルギーにより撮影レンズを加熱する。照明光のエネルギーを用いて撮影レンズを加熱することで、CCD(Charge Coupled Device)等の撮像手段の発熱を利用する場合と比較して、撮影レンズを効率よく加熱可能にする。
【0012】
なお、実施形態の説明で用いる用語において、構造物とは、複数の材料や部材等を用い、重量を支えられた構造で構成されたものをいう。構造物は、例えば、道路、トンネル、ビル、ダム、又は堤防等を含む。また移動体とは、移動することができるものをいう。移動体は、例えば、自動車や鉄道等の車両、又はドローン等の飛行体等を含む。また実施形態における撮影画像は、静止画、動画及び映像を含むものとする。
【0013】
以下では、実施形態に係る撮影装置を含む撮影システムを一例として、実施形態を説明する。
【0014】
[実施形態]
<撮影システムの全体構成>
図1は、実施形態に係る撮影システムの構成の一例を説明する斜視図である。撮影システム100は、スライドユニット200と、カメラユニット300と、照明ユニット400とを有する。
【0015】
カメラユニット300は、トンネルの壁面を撮影し、照明ユニット400は、カメラユニット300による撮影のために、トンネルの壁面に向けて光を照明する。
【0016】
スライドユニット200は、カメラユニット300及び照明ユニット400を図1の太矢印方向にスライドさせるための部材である。カメラユニット300及び照明ユニット400は、スライドユニット200により、図1の太矢印方向にその位置を変化させることができる。
【0017】
またスライドユニット200は、レール210及び220と、ベース230と、ガイドシャフト240と、ガイドシャフト保持部材251及び252と、フレーム261及び262とを備えている。
【0018】
カメラユニット300は、フレーム261に固定されたレール210上をスライドすることで、図1の太矢印方向における位置を可変とする。同様に、照明ユニット400は、フレーム262に固定されたレール220上をスライドすることで、図1の太矢印方向における位置を可変とする。
【0019】
レール210及び220は、レール軸が略平行となるようにフレーム261及び262にそれぞれ固定されている。ベース230は、フレーム261及び262に固定され、両者を接続するとともに、撮影システム100のベースとなる。
【0020】
ガイドシャフト240は、カメラユニット300及び照明ユニット400を安定した精度でスライドさせるために用いられる部材であり、金属製の丸棒等である。丸棒の長手方向がカメラユニット300及び照明ユニット400のスライド方向に沿うように設置されている。
【0021】
ガイドシャフト240は、ガイドシャフト240を保持するガイドシャフト保持部材251及び252にそれぞれ設けられた貫通孔に通され、保持されている。なお、ガイドシャフト240とその周辺の部材の構成及び作用については別途詳述する。
【0022】
ここで、図1では、スライドユニット200により、カメラユニット300及び照明ユニット400の両方をスライドさせる構成を示したが、これに限定されるものではない。カメラユニット300をスライドさせるユニットと、照明ユニット400をスライドさせるユニットを別々にした構成としてもよい。
【0023】
撮影システム100は、カメラユニット300及び照明ユニット400のスライド方向が車両の走行方向と交差するように、車両のルーフ等に取り付けられる。換言すると、図1の太矢印方向は、撮影システム100が取り付けられた車両の走行方向に対して交差している。このように取り付けることで、車両の走行方向と交差する平面内において、カメラユニット300及び照明ユニット400の位置を変化させることができる。
【0024】
なお、撮影システム100が取り付けつけられる車両の部分は、ルーフに限定されるものではない。車両の前方、又は後方のボンネット等であってもよいし、車両がトラックであれば荷台等であってもよい。また、車両への撮影システム100の取り付けに関し、ルーフに取り付ける場合は、車両用のスキーキャリヤ等と同様に、フック部品等を用いて行えばよい。
【0025】
<カメラユニットの構成>
次に図2は、実施形態に係るカメラユニット300の構成の一例を説明する斜視図である。
【0026】
カメラユニット300は、ベースプレート310と、レール接続部321及び322と、カメラ331~334と、シャフト連結部341及び342と、インデックスプランジャ350とを有する。
【0027】
レール接続部321及び322は、ベースプレート310とレール210を接続するための部材である。レール接続部321及び322は、レール軸と直交する方向の断面が「コ」の字形の形状をしている。レール210が双頭レールの場合、双頭レールの頭の一方に「コ」の字形状を被せるようにして、レール接続部321及び322は、レール210に接続される。
【0028】
レール接続部321及び322は同一形状であり、レールの軸方向の異なる2つの位置でレール210と接続する。レール接続部321及び322にベースプレート310を固定することにより、カメラユニット300はレール軸の方向(図1の太矢印方向)にスライド可能となる。
【0029】
カメラ331~334は、ベースプレート310の平面部に固定されている。ここで、カメラ331は、レンズ331-1と、ラインCCD(Charge Coupled Device)331-2とを有する。レンズ331-1は、レンズ331-1の光軸方向にある被写体の像をラインCCD331-2の撮影面上に結像させる。ラインCCD331-2は、結像した被写体の像を撮影する。
【0030】
またレンズ331-1の内部には、絞り331-1a(図4参照)が設けられている。絞り331-1aは、絞り羽根を有する虹彩絞りであり、直径が可変の開口である。絞り羽根にモータ等の駆動源を接続し、制御信号に基づいてモータを駆動させることで開口の直径を変化させることができる。これによりレンズ331-1を通過する光の光量を変化させ、レンズ331-1により結像される被写体の像の明るさを変化させることができる。
【0031】
ラインCCD331-2は、画素が一次元状(ライン状)に配列されているCCDであり、実施形態では、カメラ331は、ラインCCD331-2の画素の配列方向が車両の走行方向と交差するようにベースプレート310に固定されている。なお、カメラ332~334も、カメラ331と同様の構成を備えるが、上述したものと同様であるため、説明を省略する。
【0032】
トンネルは、車両の走行方向と交差する断面が半円状の形状をしている。これに合わせ、カメラ331~334は、図2のように、それぞれが有するレンズの光軸がトンネルの壁面と交差するように放射状に配置されている。換言すると、それぞれがトンネルの壁面に対向するように、カメラ331~334はベースプレート310の平面部に放射状に配置されている。
【0033】
カメラ331~334がそれぞれ撮影するライン画像をカメラの配列方向に繋ぎ合せることで、トンネルの形状に沿って、トンネルの壁面のライン画像を撮影することができる。そして車両を走行させながら上記のライン画像を所定の時間間隔で連続的に撮影し、ライン画像の画素の配列方向と直交する方向に、撮影したライン画像を繋ぎ合せることで、トンネルの壁面のエリア画像(2次元画像)を取得することができる。なお、所定の時間間隔はラインCCDによるライン画像の取得周期等である。
【0034】
ここで、上述ではカメラの台数を4台とする例を示したが、これに限定されるものではない。トンネルの大きさ等の条件に応じてカメラの台数を増減させてもよい。また、レンズ331-1の結像倍率、視野及びFナンバ等は、撮影したい条件に合わせて決定してもよい。
【0035】
さらに、上述ではカメラ331がラインCCDを備える例を示したが、これに限定されるものではなく、カメラ331は、画素が二次元的に配列されているエリアCCDを備えてもよい。さらにCCDに代えてCMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)等を用いてもよい。
【0036】
一方、シャフト連結部341及び342は、ガイドシャフト240と連結するための部材である。またインデックスプランジャ350は、スライド方向における所望の位置でカメラユニット300を固定するための部材である。シャフト連結部341及び342と、インデックスプランジャ350の構成及び作用については、別途詳述する。
【0037】
<照明ユニットの構成>
次に図3は、実施形態に係る照明ユニット400の構成の一例を説明する斜視図である。
【0038】
照明ユニット400は、ベースプレート410と、レール接続部と、照明光源部431~436と、シャフト連結部441及び442と、インデックスプランジャ450とを有する。レール接続部とレール220との関係は、上述したレール接続部321及び322とレール210との関係と同様である。
【0039】
照明光源部431~436は、ベースプレート410の平面部に固定されている。照明光源部431は、レンズ431-1と光源431-2とを有する。
【0040】
光源431-2は、レンズ431-1を介して、レンズ431-1の光軸方向にある被写体を照明する。またレンズ431-1の内部には、絞り431-1aが設けられている(図4参照)。
【0041】
絞り431-1aは直径が可変の開口であり、開口の直径を変化させることで、レンズ431-1により照明される照明光の光量(明るさ)を変化させることができる。光源431-2として、メタルハライドライトやLED(Light Emitting Diode)等を用いることができる。なお、照明光源部432~436も照明光源部431と同様の構成を備えるが、上記と同様であるため説明を省略する。
【0042】
上述したようにトンネルは、車両の走行方向と交差する断面が半円状の形状をしている。これに合わせ、照明光源部431~436は、図3に示すように、それぞれが備えるレンズの光軸がトンネルの壁面と交差するように放射状に配置されている。換言すると、照明光源部431~436は、トンネルの壁面に対向するように、ベースプレート410の平面部に放射状に配置されている。照明ユニット400は、車両の走行方向と交差する方向(ラインCCDの画素の配列方向)に沿ったライン状の光をトンネルの壁面に照明することができる。
【0043】
なお、上述では、照明光源部の台数を6台とした例を説明したが、これに限定されるものではなく増減させてもよい。また照明光源部の台数は、カメラの台数と必ずしも一致する必要はなく、明るさ等の条件に応じて台数を決めてよい。さらにレンズの画角やFナンバ等も撮影したい条件に応じて決定してもよい。
【0044】
また、上述では、照明光源部431~436のそれぞれの位置を、レンズの光軸方向に前後に少しずつずらした構成を示したが、これは照明光源部同士の物理的な干渉を防止するためである。
【0045】
一方、シャフト連結部441及び442は、ガイドシャフト240と連結するための部材である。またインデックスプランジャ450は、スライド方向における所望の位置で照明ユニット400を固定するための部材である。シャフト連結部441及び442と、インデックスプランジャ450の構成及び作用については別途詳述する。
【0046】
<撮影システムのハードウェア構成>
次に、図4は、撮影システム100のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。撮影システム100は、カメラユニット300と、照明ユニット400と、センサ制御ボード110と、TOF(Time of Flight)センサ141と、IMU(Inertial Measurement Unit)170と、車速計/移動距離計171と、操作部118とを有する。
【0047】
TOFセンサ141は、トンネル600の壁面からTOFセンサ141までの距離を検出し、トンネル600の壁面から撮影システム100までの距離を検出できる。
【0048】
より具体的には、トンネル600の壁面にTOFセンサ141から光を照射し、その反射光を受光するまでの時間に基づいてトンネル600の壁面までの距離を検出する。受光素子にエリアセンサを用いたTOFセンサ141を用いると、距離に応じて表示色が異なる2次元の等高線画像を得ることができる。
【0049】
IMU170は、車両500の運動を司る3軸の角度/角速度と加速度を計測し、また車速計/移動距離計171は、車両500の速度/移動距離を計測できる。
【0050】
IMU170及び車速計/移動距離計171で計測されたデータは、センサ制御ボード110を介してHDD114に出力されて記憶され、後に壁面の画像のサイズや傾き等を、画像処理で幾何補正するために使用される。
【0051】
カメラユニット300は、レンズ331-1、332-1、333-1及び334-1と、ラインCCD331-2、332-2、333-2及び334-2とを備えている。またレンズ331-1は絞り331-1aを、レンズ332-1は絞り332-1aを、レンズ333-1は絞り333-1aを、レンズ334-1は絞り334-1aを、それぞれ内部に備えている。但し、図4では、図を簡略化するため、レンズ331-1、絞り331-1a及びラインCCD331-2のみを図示し、他のレンズ、絞り及びラインCCDの図示を省略している。
【0052】
照明ユニット400は、レンズ431-1、432-1、433-1、434-1、435-1及び436-1と、光源431-2、432-2、433-2、434-2、435-2及び436-2とを備えている。またレンズ431-1は絞り431-1aを、レンズ432-1は絞り432-1aを、レンズ433-1は絞り433-1aを、レンズ434-1は絞り434-1aを、レンズ435-1は絞り435-1aを、レンズ436-1は絞り436-1aを、それぞれ内部に備えている。但し、図4では、図を簡略化するため、レンズ431-1、絞り431-1a及び光源431-2のみを図示し、他のレンズ、絞り及び光源の図示を省略している。
【0053】
センサ制御ボード110は、CPU(Central Processing Unit)111と、ROM(Read Only Memory)112と、RAM(Random Access Memory)113と、HDD(Hard Disk Drive)114と、外部I/F(Inter/Face)115と、ブザー116とを有し、それぞれがシステムバス117で相互に電気的に接続されている。ここで、センサ制御ボード110はコンピュータの一例である。
【0054】
ROM112は各種プログラムやデータ、各種の設定情報等を格納し、RAM113はプログラムやデータを一時保持する。CPU111はROM112等からプログラムやデータ、設定情報等をRAM113上に読み出し、処理を実行することで、撮影システム100全体の制御や画像データの処理を実現する。ここで、画像データの処理とは、カメラ331~334がそれぞれ撮影したライン画像を繋ぎ合せる処理や、車両を走行させながらカメラ331~334が所定の時間間隔で連続的に撮影したライン画像を、車両の走行方向で繋ぎ合せる処理等をいう。またCPU111は、別途、図15及び図18を用いて詳述する各種機能を実現できる。
【0055】
なお、CPU111の実現する制御、画像データの処理、及び各種機能の一部又は全部は、FPGA(Field-Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)で実現されてもよい。
【0056】
HDD114は、カメラユニット300から入力した画像データや、TOFセンサ141、IMU170及び車速計/移動距離計171から入力したセンサデータ等を記憶する。なお、HDD114はセンサ制御ボードの外部に設けられてもよい。
【0057】
外部I/F115はユーザが撮影システム100を操作するためのユーザインターフェースの機能や、撮影システム100がPC(Personal Computer)等の外部装置とデータや信号のやりとりを行うためのインターフェースの機能を実現する。
【0058】
ブザー116は、ユーザに警告を報知するためのビープ音を発生させるものである。
【0059】
外部I/F115を介してPC(Personal Computer)等の外部装置にセンサ制御ボード110を接続し、センサ制御ボード110と外部装置との間で、画像データ等のデータの送受を行えるように構成してもよい。
【0060】
操作部118は、撮影システム100を操作するためのユーザインターフェースである。操作部118は、マウスやキーボード等の入力部と、ディスプレイ等の表示部とを含んで構成される。操作部118としてノートPC等を利用できる。
【0061】
撮影の際には、例えば、カメラユニット300、照明ユニット400、TOFセンサ141、IMU170、車速計/移動距離計171及びセンサ制御ボード110は車両のルーフ部に設置される。操作部118は車両の内部に設けられ、オペレータ等により操作される。なお、オペレータは、撮影システム100を操作して撮影作業を行う者である。オペレータは、車両の運転者でもよいし、車両の運転者以外の者でもよい。また自動運転車等で撮影を行う場合は、人に代えて装置又は機器等がオペレータの役割を担ってもよい。
【0062】
オペレータは、車両の走行中に、操作部118における録画開始ボタンと停止ボタンを操作することで撮影の開始と停止を指示し、撮影を行うことができる。
【0063】
<撮影方法、作用効果等>
次に、実施形態に係る撮影システム100による撮影方法、及び作用効果等を説明する。
【0064】
撮影システム100では、スライドユニット200によりカメラユニット300及び照明ユニット400がスライドし、車両の走行方向と交差する方向において、所定の道路構造の長さに基づき定めた2つの位置で固定される。
【0065】
所定の道路構造の長さとは、車両の走行方向と交差する方向における歩道の幅である。
【0066】
ここで、歩道とは、歩行者が通行するための道路であり、車道等に併設され、歩行者の通行のために構造的に区画された道路の部分をいう。歩道の幅は、歩行者の通行量に応じて様々であるが、一般には1.5~3m程度である。
【0067】
歩道の幅が1.5mの場合、歩道の幅に基づき定めた2つの位置の間隔を1.5mに定めてもよい。或いは歩道の幅が3m等で車両の幅を超える場合は、歩道の幅に基づき定めた2つの位置の間隔を、車両の最大幅として定めてもよい。
【0068】
また、歩道の他に、監査路や路側帯がある場合は、歩道の幅に基づき定めた2つの位置の間隔を、歩道の幅と監査路、または路側帯の幅との差分の長さとして定めてもよい。
【0069】
2つの位置で画像を取得する場合、まず、車両の走行方向と交差する方向において、歩道の幅に基づき定めた2つの位置のうちの一方の位置に、カメラユニット300及び照明ユニット400を固定し、所望の領域のトンネルの壁面のエリア画像を取得する。次に、2つの位置のうちの他方の位置に、カメラユニット300及び照明ユニット400を固定し、所望の領域のトンネルの壁面のエリア画像を取得する。
【0070】
以下、図5及び図6を参照して、2つの位置でトンネル600の壁面を撮影する方法の詳細を説明する。図5は、撮影システム100からトンネル600の壁面までの距離が短い場合の撮影の様子の一例を説明する図であり、(a)は走行方向から車両500をみた図であり、(b)はトンネル600の内部を車両500が走行する様子を示す図である。
【0071】
図5(a)では、撮影システム100は、車両500のルーフの上に固定されている。カメラユニット300及び照明ユニット400は、走行方向に向かってスライドユニット200の右端にスライドされ、インデックスプランジャ350及び450によりそれぞれスライドユニット200に固定されている。
【0072】
一方、図5(b)では、道路700のセンターに対し、左側に車線710があり、右側に車線720がある。車両500は車線720において、紙面に対し、手前の方向に走行している。
【0073】
この例では、車線710(車両500の対向車線)側に歩道730がある。車線720側には歩道はないため、歩道がある場合と比較して、車両500はトンネル600の車両500側の壁面に近い位置を走行している。
【0074】
カメラユニット300及び照明ユニット400は、走行方向に向かってスライドユニット200の右端、すなわちトンネル600の車両500側の壁面から遠ざかる位置にある。この場合のカメラユニット300及び照明ユニット400の位置を、以降ではポジションAと呼ぶ。
【0075】
図5(b)の破線100Aは、撮影システム100による撮影範囲を表す。つまり、撮影システム100は、トンネル600の壁面のうち、破線100Aで示されている撮影範囲内の領域600A(太線で示されている領域)を撮影している。太線で示されているように、実施形態ではトンネルの壁面(覆工部)と地面との境目までを撮影する。
【0076】
車両500を走行させながら撮影システム100による撮影を行うことで、トンネル600の入口から出口までにおいて、紙面に対して図5(b)の右側半分の壁面が撮影される。
【0077】
一方、図6は、撮影システムからトンネルの壁面までの距離が長い時の撮影の様子の一例を説明する図であり、(a)は走行方向から車両500をみた図であり、(b)はトンネル600の内部を車両500が走行する様子を示す図である。なお、図5と重複する部分は説明を省略し、相違点を説明する。
【0078】
図6では、カメラユニット300及び照明ユニット400は、走行方向に向かってスライドユニット200の左端にスライドされ、インデックスプランジャ350及び450によりそれぞれスライドユニット200に固定されている。
【0079】
一方、図6(b)では、車両500は車線710において、紙面に対し、手前の方向に走行している。
【0080】
この例では、車線710(車両500が走行する車線)側に歩道730がある。つまり車両500は、図5(b)の場合とは反対側の車線を逆方向に走行している。この場合は、走行車線側に歩道がない場合と比較して、車両500は、トンネル600の車両500側の壁面から遠い位置を走行することになる。
【0081】
カメラユニット300及び照明ユニット400は、走行方向に向かってスライドユニット200の左端、すなわちトンネル600の車両500側の壁面に近づく位置にある。この場合のカメラユニット300及び照明ユニット400の位置を、以降ではポジションBと呼ぶ。
【0082】
図6(b)の破線100Bは、撮影システム100による撮影範囲を表す。つまり、撮影システム100は、トンネル600の壁面のうち、破線100Bで示されている撮影範囲内の領域600B(太線で示されている領域)を撮影している。太線で示されているように、実施形態ではトンネルの壁面(覆工部)と地面との境目までを撮影する。
【0083】
車両500を走行させながら撮影システム100による撮影を行うことで、トンネル600の入口から出口までにおいて、紙面に対して図6(b)の右側半分の壁面が撮影される。
【0084】
図5の状態で撮影された壁面の画像と、図6の状態で撮影された壁面の画像を繋ぎ合せることで、トンネル600の入口から出口までの全壁面の撮影画像を取得することができる。
【0085】
ここで、カメラユニット300の各カメラで撮影する画像は、それぞれ撮影領域がオーバーラップしていることが望ましい。また画像を繋ぎ合せて一枚の展開図画像を作成するため、図5の歩道無し側の画像と図6の歩道有り側の画像は、天井部分がオーバーラップするように撮影することが望ましい。換言すると、往きと帰りでトンネル600の壁面を撮影する場合、トンネル600の壁面で撮影されていない領域が生じないように、往きの撮影領域と帰りの撮影領域を、車両500の走行方向と交差する方向にオーバーラップさせて撮影することが望ましい。
【0086】
実施形態によれば、歩道の有無に応じて、カメラユニット300及び照明ユニット400をポジションA及びBに切替えて固定するだけで、簡単に、車両500側の壁面から撮影システム100までの距離、すなわち被写体距離を略一定にすることができる。その結果、歩道の有無によらず、フォーカス状態、撮影倍率及び照明の明るさ等の撮影条件を共通にした撮影が可能となる。また、共通の撮影条件で右側半分と左側半分のトンネルの壁面を撮影できるため、両者を繋ぎ合せる画像処理も容易に行うことができる。
【0087】
以上によりカメラのフォーカス調整や対象物の断面形状の測定といった手間をかけることなく、適切にトンネルの壁面を撮影することができる。
【0088】
また、上記の他に以下の効果も得られる。例えば、車両の走行中にカメラのフォーカス調整等を行うと、走行に伴う振動や、急ブレーキ、急加速等の不規則な動きにより、調整機構が故障する可能性がある。
【0089】
また、調整機構にカム溝とカムフォロアを採用するカム機構を用いた場合、車両の走行による振動によって、徐々にカムフォロアがカム溝を移動し、フォーカス状態が変わってしまう場合もある。さらにトンネル内の粉塵が機構内部に入り込むと、動作不良を招く虞もある。
【0090】
実施形態によれば、車両の走行中にカメラのフォーカス調整等を行わないため、これらの故障の可能性を低減させることができる。またスライド機構が簡単であるため、装置コストを低減できるという効果もある。さらにフォーカス調整のために、被写体のテクスチャのコントラストを検知する等の複雑な画像処理を行わなくてよいため、演算コストを低減することができる。
【0091】
さらに、そもそも暗くて特徴量の少ないトンネルを走行する場合、コントラストを検出すること自体が難しく、十分な精度でコントラスト検出を行おうとすると、感度の高い高価な撮像素子が必要となる。実施形態によれば、このような技術的難易度や撮像素子のコストをも低減することができる。
【0092】
また、カメラユニットでライン撮像素子を用いる場合、1ライン分の画像しか得られないため、撮影画像を利用したフォーカス調整が難しくなる。実施形態でよれば、フォーカス調整に撮影した画像を利用しないため、カメラユニットにライン撮像素子を使用することもできる。これにより後述するような照明効率のよい撮影が可能となる。
【0093】
加えて、上記の他に以下の効果も得られる。例えば、トンネル600の中心から比較的ずれた位置にカメラユニット300及び照明ユニット400を置いて撮影したとする。ここでトンネル600の中心とは、トンネル600の半円状の断面形状における半円の略中心を指す。
【0094】
この場合、トンネル600の天井付近の壁面の画像(図2のカメラ331で取得した画像)と、トンネル600の地面付近の壁面の画像(図2のカメラ334で取得した画像)とで、撮影倍率等の条件の差が大きくなる。その結果、トンネル600の天井付近と地面付近とで、画像の解像度が大きく異なる等の不具合が生じる。
【0095】
また、このような不具合をなくすため、トンネルの壁面までの距離が略一定になるように、車線を無視して道路の中央を車両で走行しながら、トンネルの壁面の撮影を行う方法もある(例えば、特開2011-095222参照)。
【0096】
しかし、この方法では撮影時に対向車と衝突する虞があるため、車両の通行が少ない夜間に行ったり、道路を封鎖して行ったりする必要があって不便である。またトンネル内の道路に中央分離帯が設けられていると、そもそも上記の方法による撮影は不可能である。
【0097】
これに対し、実施形態によれば、車両500がトンネル600の壁面に近いときも遠いときも、カメラユニット300及び照明ユニット400をトンネル600の中心に近づけることができるため、トンネルの領域ごとでの撮影条件の差を抑制できる。従って、車両の通行止め等をすることなく、本来の車線を走行しながら、トンネル600の天井付近と地面付近とで、画像の解像度が異なる等の不具合を抑制した撮影を行うことができる。
【0098】
なお、実施形態では、スライドユニット200を図1の太矢印方向に位置を変化させる例を示したが、これに限定されないものではない。車両の走行方向と交差する平面内における任意の方向に、スライドユニット200の位置を変化させる構成としてもよい。
【0099】
また実施形態では、スライドユニット200により、図1の太矢印方向における異なる2つの位置でカメラユニット300及び照明ユニット400を固定する例を示したが、これに限定されるものではない。車両の走行方向と交差する平面内であって、トンネルの壁面に対向する方向における異なる2つの位置で、カメラユニット300及び照明ユニット400を固定してもよい。
【0100】
ここで、「トンネルの壁面に対向する方向」について補足する。上述したように、トンネルは、車両の走行方向と直交する断面が半円状の形状をしている。従って、トンネルの壁面のうち、地面付近では壁面は水平方向を向いており、天井付近では壁面は鉛直下方向を向いている。「トンネルの壁面に対向する方向」とは、場所により向きが異なる壁面に対し、対向する方向をいう。地面付近における「トンネルの壁面に対向する方向」は、略水平方向等である。一方、天井付近における「トンネルの壁面に対向する方向」は、略鉛直上方向である。
【0101】
次に、実施形態に係るガイドシャフト240の構成及び作用の詳細について説明する。
【0102】
カメラユニット300と照明ユニット400は別体の構成要素であり、それぞれ独立してスライドする。そのため、ガイドシャフト240を適用しない構成とした場合、スライドする際にそれぞれが独立して、ピッチング、ヨーイング、ローリング等の動きを不規則に起こす可能性がある。
【0103】
また撮影システム100を車両から着脱する場合に、カメラユニット300と照明ユニット400との相互の位置、又は姿勢(以降、位置/姿勢と示す)が変動する可能性がある。さらに走行中の振動でそれぞれの位置/姿勢が変動したり、温度等の影響によるフレーム261及び262やベースプレート310及び410等の部材の変形で、それぞれの位置/姿勢が変動したりする可能性もある。
【0104】
このような変動があると、カメラユニット300による撮影領域に照明光が適切に当たらず、明るさ不足で撮影ができないという不具合が生じる場合がある。
【0105】
一例として、図7は、カメラユニット300と照明ユニット400の相互の位置/姿勢が変動し、カメラユニット300による撮影領域に照明光が適切に当たらなくなった状態を説明する図である。図7(a)は、カメラユニット300と照明ユニット400の相互の位置/姿勢の変動がない場合を示す図であり、図7(b)は、カメラユニット300と照明ユニット400の相互の位置/姿勢の変動がある場合を示す図である。
【0106】
図7(a)は、図の太矢印の方向に走行する車両500を上方からみた図である。600はトンネルの壁面である。撮影範囲361は、カメラユニット300による撮影範囲を表し、トンネル600の壁面と撮影範囲361の交差する部分がカメラユニット300による壁面の撮影領域に該当する。照明範囲461は、照明ユニット400による照明範囲を表し、トンネル600の壁面と照明範囲461の交差する部分が照明ユニット400による壁面の照明領域に該当する。
【0107】
図7(a)では、カメラユニット300と照明ユニット400との相互の位置/姿勢の変動がないため、カメラユニット300による撮影領域と照明ユニット400による照明領域が重なっている。つまり、照明光は撮影領域を適切に照明している。
【0108】
一方、図7(b)では、カメラユニット300及び照明ユニット400の姿勢がそれぞれ独立に変動することにより、撮影範囲362と照明範囲462が図7(a)の状態から変化し、トンネル600の壁面における撮影領域と照明領域が重ならなくなっている。つまり、カメラユニット300と照明ユニット400との相互の位置/姿勢の変動により、照明光は撮影領域を適切に照明していない。
【0109】
特に実施形態では、撮像素子にラインCCDを用い、車両500の走行方向における撮影範囲(領域)を狭くしている。この場合、狭い領域に照明光を集中すればよいため、照明効率がよいという効果があり、暗いトンネルの内部では十分な照明光量が必要となるため、より好適である。しかしその反面で、車両500の走行方向における撮影領域が狭いため、カメラユニット300と照明ユニット400との相互の位置/姿勢が変動すると、カメラユニット300の撮影領域に照明光が適切に当たらない不具合が生じやすくなる。
【0110】
そこで、撮影領域を照明光が適切に照明しない不具合を抑制するため、実施形態の撮影システム100は、ガイドシャフト240を備えている。以下、図8を用いて具体的に説明する。図8は、実施形態に係るガイドシャフト及びガイドシャフト保持部材の構成の一例を説明する図である。
【0111】
図8において、ガイドシャフト240は、ガイドシャフト保持部材251及び252により保持されている。シャフト連結部341及び342は、カメラユニット300のベースプレート310に固定されている。
【0112】
またシャフト連結部341及び342は、それぞれ貫通孔341-1及び342-1を備えている。貫通孔341-1及び342-1にガイドシャフト240を通すことで、ガイドシャフト240とカメラユニット300は連結される。同様に、シャフト連結部441及び442がそれぞれ備える貫通孔に、ガイドシャフト240を通すことで、ガイドシャフト240と照明ユニット400は連結される。
【0113】
カメラユニット300及び照明ユニット400は、それぞれガイドシャフト240と連結しながらスライドする。つまり、共通の部材をガイド(案内)にしてスライドすることができる。
【0114】
そのため、カメラユニット300及び照明ユニット400の何れか一方の位置/姿勢が変動したときは、他方もそれに連動して変動する。つまり、両者の相対的な位置/姿勢の関係を維持したまま、カメラユニット300と照明ユニット400をスライドさせたり静止させたりすることが可能となる。これにより、カメラユニット300と照明ユニット400との相対的な位置/姿勢の変動を抑制し、撮影領域を照明光が適切に照明しない不具合を抑制することができる。
【0115】
次に図9は、トンネルの壁面に対してカメラユニット300が傾いた場合のカメラユニット300の撮影領域の一例と、トンネルの壁面に対して照明ユニット400が傾いた場合の照明ユニット400の照明領域の一例を説明する図である。
【0116】
図9において、照明ユニット400は、光軸465を光軸とする発散光である照明光466を、トンネル600の壁面に照射している。照明光466の配光角(発散角)αは、1.65度等である。カメラユニット300は、トンネル600の壁面を撮影している。光軸365は、カメラユニット300の光軸である。
【0117】
車両500の蛇行運転等によりカメラユニット300と照明ユニット400の位置が変動すると、図9に示されているように、カメラユニット300と照明ユニット400がトンネルに壁面に対してそれぞれ傾く場合がある。この場合にも、カメラユニット300と照明ユニット400の相対的な位置/姿勢の関係は維持されるため、図示されているように、カメラユニット300による撮影領域と照明ユニット400による照明領域が重なっている状態を維持することができる。
【0118】
このように、車両500の蛇行運転等でカメラユニット300と照明ユニット400の位置が変動した場合にも、照明ユニット400によりカメラユニット300の撮影領域を適切に照明することができる。なお、本実施形態では特にラインCCDを用いる場合を示したが、エリアCCD等を用いる場合であっても、同様の効果が得られる。
【0119】
次に、実施形態に係るインデックスプランジャ350及び450の構成及び作用の詳細を、図10を参照して説明する。図10は、インデックスプランジャ350及び450の構成の一例を説明する図である。
【0120】
図10において、インデックスプランジャ350は、カメラユニット300のベースプレート310の平面部に固定され、インデックスプランジャ450は、照明ユニット400のベースプレート410の平面部に固定されている。
【0121】
上述したように、カメラユニット300はレール210上をスライドし、照明ユニット400はレール220上をスライドする。インデックスプランジャ350及び450は同様の構成及び作用を有するため、ここではインデックスプランジャ450を例に説明する。
【0122】
インデックスプランジャ450は、プランジャ451と、プランジャ保持部452とを有する。プランジャ451は、丸棒状で地面側に突出したピンと、ピンに地面側への付勢力を与えるスプリングと、ピンとスプリングを押さえるスプリング押さえ部とを有する。プランジャ保持部452は、プランジャ451を保持する。
【0123】
一方、スライドユニット200におけるベース230には、照明ユニット400のスライド方向において、照明ユニット400を固定したい位置に上記ピンと嵌合するための嵌合孔231が設けられている。従って、照明ユニット400がスライドする際、嵌合孔231がない位置では、ピンは、ベース230にぶつかった状態であり、照明ユニット400を固定するようには作用しない。
【0124】
照明ユニット400がスライドして嵌合孔231がある位置にくると、ピンはスプリングによる付勢力で嵌合孔231に向かって突出し、嵌合孔231と嵌合する。これにより照明ユニット400はスライドできなくなって、照明ユニット400は固定される。固定を解除して、照明ユニット400を再度スライドさせたいときは、手動で固定解除機構を操作し、固定を解除する。
【0125】
実施形態では、ベース230において、スライド方向におけるポジションAとポジションBに相当する位置に、それぞれ嵌合孔が設けられている。これにより、車両の走行方向と交差する平面内における異なる2つの位置に、照明ユニット400を固定することができる。同様にして、カメラユニット300も、インデックスプランジャ350により、車両の走行方向と交差する平面内における異なる2つの位置に固定することができる。
【0126】
なお、実施形態では、ベース230に設けた嵌合孔231にピンを嵌合させ、照明ユニット400等を固定する例を示したが、これに限定されるものではない。フレーム262やレール220等に設けた嵌合孔にピンを嵌合させて固定してもよいし、突き当てにより照明ユニット等を位置決めしたうえで、ボルト等でクランプすることで固定してもよい。
【0127】
次に、実施形態において、カメラユニット300による撮影方向(画像の取得方向)に対し、照明ユニット400による照明光の照明方向を傾けることの効果の一例を、図11を参照して説明する。
【0128】
図11は、図7と同様に、太矢印の方向に走行する車両500を上方からみた図である。撮影方向363は、カメラユニット300による撮影方向であり、カメラユニットが有するレンズの光軸方向と同義である。撮影範囲364は、カメラユニット300により撮影される範囲を表す。トンネル600の壁面と撮影範囲364とが交差する部分がカメラユニット300による壁面の撮影領域に該当する。
【0129】
照明方向463は、照明ユニット400による照明方向であり、照明ユニットが有するレンズの光軸方向と同義である。照明範囲464は、照明ユニット400により照明される範囲を表す。トンネル600の壁面と照明範囲464とが交差する部分が照明ユニット400による壁面の照明領域に該当する。
【0130】
上述したように、車両500の走行中の振動等により、カメラユニット300と照明ユニット400の位置/姿勢が変動すると、カメラユニット300による撮影領域に照明光が適切に当たらず、明るさ不足で撮影ができない不具合が生じる。
【0131】
そこで、実施形態では、トンネル600の壁面の撮影領域に向け、カメラユニット300の撮影方向に対して照明ユニット400の照明方向を傾けて照明する。図11の例では、角度θの傾きで照明される様子が示されている。
【0132】
このように照明を傾け、車両の走行方向における照明領域の中央により近い付近を撮影領域とすることで、撮影領域に照明光が当たらないという不具合を抑制することができる。
【0133】
ここで、図12及び図13は、それぞれカメラユニット300の光軸365と照明ユニット400の光軸465の傾き角度θと、照明光の配光角αと、カメラユニット300からトンネル600の壁面までの距離Lと、照明領域Sとの関係の一例を説明する図である。
【0134】
図12(a)は、カメラユニット300と、照明ユニット400と、トンネル600の壁面との関係の一例を説明する図である。図12(a)において、カメラユニット300の光軸365はトンネル600の壁面に対して垂直であり、照明ユニット400による照明光466の光軸465は、カメラユニット300の光軸365に対して傾き角度θで傾いている。なお、この「垂直」は厳密に90度をいうものではなく、トンネル600の壁面の傾斜や車両500の蛇行等に応じて90度から多少のずれがあってもよい。この点は以下においても同様である。
【0135】
照明光466は、配光角αでトンネル600の壁面を照明している。カメラユニット300からトンネル600の壁面までの距離Lは、車両500の蛇行運転等により、LminからLmaxまで変動するとする。照明領域Sは、照明光466によるトンネル600の照明領域である。照明光は円形領域を照明する光であり、照明領域Sはこの円形領域の直径を示している。但し、照明光は、円形領域を照明する光に限定されるものではなく、矩形領域を照明する光や楕円領域を照明する光であってもよい。
【0136】
一方、図12(b)は、カメラユニット300による撮影領域と照明ユニット400による照明領域が重なっている状態で、車両500がトンネル600の壁面から最も遠ざかった場合を示す図である。
【0137】
一例として、傾き角度θが2.5度、配光角αが1.65度とすると、照明領域Sは330mmとなる。この場合、カメラユニット300からトンネル600の壁面までの距離が5200mmの時に、トンネル600の壁面において、カメラユニット300の光軸365は照明領域Sの最端部(図12(b)では最右端)に位置する。従って、カメラユニット300からトンネル600の壁面までの距離5200mmは、カメラユニット300による撮影領域と照明ユニット400による照明領域が重なる状態を維持可能な最大距離Lmaxの一例となる。
【0138】
図13(c)は、カメラユニット300による撮影領域と照明ユニット400による照明領域が重なっている状態で、車両500がトンネル600の壁面から最も近づいた場合を示す図である。
【0139】
一例として、上記と同様に、角度θが2.5度、配光角αが1.65度とすると、照明領域Sは330mmとなる。この場合、カメラユニット300からトンネル600の壁面までの距離が2600mmの時に、トンネル600の壁面において、カメラユニット300の光軸365は照明領域Sの最端部(図13(c)では最左端)に位置する。従って、カメラユニット300からトンネル600の壁面までの距離2600mmは、カメラユニット300による撮影領域と照明ユニット400による照明領域が重なる状態を維持可能な最小距離Lminの一例となる。
【0140】
なお、上述では、照明ユニット400により、トンネル600の壁面に配光角αの発散光を照明する例を示したが、発散光に限定されず、平行光により照明してもよい。
【0141】
発散光を照明する場合、照明ユニット400からトンネル600の壁面までの距離に応じて、トンネル600の壁面における照明領域を変化させることができる。照明ユニット400からトンネル600の壁面までの距離Lが長いほど、より広い領域を照明することができる。
【0142】
一方、平行光を照明する場合、照明ユニット400からトンネル600の壁面までの距離Lによらず、トンネル600の壁面において一定の領域を照明することができる。
【0143】
また上述では、カメラユニット300の光軸365の方向をトンネル600の壁面に対して垂直方向とし、照明ユニット400の光軸465をカメラユニット300の光軸365に対して傾ける例を示したが、これに限定されるものではない。図13(d)に示されているように、照明ユニット400の光軸465の方向をトンネル600の壁面に対して垂直方向とし、カメラユニット300の光軸365を照明ユニット400の光軸465に対して傾けてもよい。図13(d)は、カメラユニット300の光軸365を照明ユニット400の光軸465に対して傾き角度θだけ傾けた例を示している。換言すると、照明ユニット400の光軸465とカメラユニット300の光軸365は傾き角度θで相対的に傾いていればよい。
【0144】
このように照明ユニット400の光軸465とカメラユニット300の光軸365とを相対的に傾けることで、カメラユニット300の撮影領域に向けて、光を照明することができる。トンネル600の壁面における水平方向の撮影領域(水平方向の撮影視野)が狭い場合であっても、カメラユニット300による撮影領域を照明ユニット400からの光で適切に照明することができる。
【0145】
また、ガイドシャフト240を用いて、カメラユニット300と照明ユニット400との相対的な位置/姿勢の関係を維持する構成と、照明方向を傾けて照明する構成とを組み合わせることで、より効果が顕著となる。換言すると、撮像素子にラインCCDを用い、照明効率がよい状態で撮影を行った場合であっても、照明ユニット400による照明光がカメラユニット300による撮影領域を適切に照明しないという不具合を、より顕著に抑制することができる。
【0146】
また、車の蛇行でトンネルと壁面の距離が変動する場合やトンネルサイズが異なる場合においても、照明ユニット400による照明光がカメラユニット300による撮影領域を適切に照明しないという不具合を抑制することができる。
【0147】
図14は、車両500の蛇行と、カメラユニット300の撮影領域と、照明ユニット400の照明領域の関係の一例を説明する図である。車両500は、図14に矢印で示されている方向に、蛇行しながら走行している。
【0148】
図14の右側に示されているように、カメラユニット300からトンネル600の壁面までの最大距離Lmaxが5200mmの時に、トンネル600の壁面において、カメラユニット300の光軸365は照明領域Sの最端部(図14では最左端)に位置する。つまりカメラユニット300による撮影領域と照明ユニット400による照明領域が重なる状態を維持可能な一方の限界である。
【0149】
一方、図14の左側に示されているように、カメラユニット300からトンネル600の壁面までの最小距離Lminが2600mmの時に、トンネル600の壁面において、カメラユニット300の光軸365は照明領域Sの最端部(図14では最右端)に位置する。つまりカメラユニット300による撮影領域と照明ユニット400による照明領域が重なる状態を維持可能な他方の限界である。
【0150】
角度θが2.5度、配光角αが1.65度の条件下(図12参照)では、カメラユニット300からトンネル600の壁面までの距離Lが2600mm~5200mmの範囲で、車両500の蛇行が許容されることが分かる。
【0151】
<撮影システムの動作>
次に、実施形態に係る撮影システム100の動作を、図15を用いて説明する。図15は撮影システム100の動作の一例を示すフローチャートである。
【0152】
まず、ステップS141で、撮影システム100は、車両500に取り付けられる。
【0153】
続いて、ステップ142において、スライドユニット200により、カメラユニット300及び照明ユニット400はポジションAに固定される。この場合、カメラユニット300及び照明ユニット400のスライドと、ポジションAでの固定は、ユーザが手動で実施する。
【0154】
続いて、ステップS143において、トンネル600の入口から出口まで車両500を走行させながら、トンネル600の歩道730がない側の壁面の領域600Aの撮影が行われる。この場合、車両500がトンネル600の入口に進入するときに、撮影が開始される。撮影開始の指示は、ユーザが行う。
【0155】
車両500がトンネル600の出口まで到達したら、撮影は停止される。撮影停止の指示は、ユーザが行う。ここまででトンネル600の全壁面のうち、半分の壁面の画像データがHDD114に記憶される。
【0156】
続いて、ステップS144において、スライドユニット200により、カメラユニット300及び照明ユニット400はポジションBに固定される。この場合、カメラユニット300及び照明ユニット400のスライドと、ポジションBでの固定は、ユーザが手動で実施する。
【0157】
続いて、ステップS145において、ステップS1103における走行方向とは逆の方向に、トンネル600の入口から出口まで車両500を走行させながら、トンネル600の歩道730がある側の壁面の領域600Bの撮影が行われる。上述と同様に、撮影開始/停止の指示は、ユーザが行う。これにより、トンネル600の全壁面のうち、残りの半分の壁面が撮影され、HDD114に記憶される。
【0158】
続いて、ステップS146において、撮影された画像は、ユーザにより問題がないかが確認され、問題ない場合は(ステップS146、No)、撮影は終了する。一方、問題がある場合は(ステップS146、Yes)、ステップS1102に戻り、再度撮影が行われる。
【0159】
以上により、カメラのフォーカス調整や対象物の断面形状の測定といった手間をかけずに、トンネルの壁面等の対象物を撮影することができる。
【0160】
なお、実施形態では、カメラユニット300及び照明ユニット400のポジションA及びBでの固定を、スライドユニット200に対して行う例を述べたが、このような固定を車両500に対して行ってもよい。以下にその構成を説明する。
【0161】
カメラユニット300及び照明ユニット400を車両固定用ベースプレートに取り付けておく。ポジションAの場合、走行方向に向かって車両のルーフの右端に、フック部品を用いて車両固定用ベースプレートを固定することで、カメラユニット300及び照明ユニット400を固定する。
【0162】
ポジションBの場合、走行方向に向かって車両のルーフの左端に、フック部品を用いて上記車両固定用ベースプレートを固定することで、カメラユニット300及び照明ユニット400を固定する。
【0163】
また、ガイドシャフト240と、ガイドシャフト保持部材251及び252と同様の部品を車両固定用ベースプレートに設け、シャフト連結部341及び342、並びに441及び442と、ガイドシャフト240とを連結させる。これによりカメラユニット300及び照明ユニット400の位置/姿勢の変動の影響を抑制できる。
【0164】
なお、この例の場合、撮影システム100は、スライドユニット200を有さなくてもよい。また、カメラユニット300及び照明ユニット400は、それぞれインデックスプランジャ350及び450を有さなくてもよい。
【0165】
以上により、車両500に固定した場合においても、カメラユニット300及び照明ユニット400のポジションA及びBでの固定を、スライドユニット200に対して行った場合と同様の効果を得ることができる。
【0166】
[第1実施形態]
次に、第1実施形態に係る撮影装置を含む撮影システム100aについて説明する。なお、上述した実施形態と同一の構成部には同一の部品番号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0167】
<撮影システム100aの構成例>
まず、図16及び図17を参照して、撮影システム100aの構成を説明する。図16は、第1実施形態に係る撮影システム100aの構成の一例を説明する斜視図であり、図17は、外装カバーが遮蔽された状態の撮影システム100aを示す斜視図である。
【0168】
図16及び図17に示すように、撮影システム100aは、架台270と、外装カバー280と、カメラユニット300と、照明ユニット400とを有する。これらのうち、架台270、外装カバー280及びカメラユニット300は、撮影装置180を構成している。また照明ユニット400は照明装置の一例である。
【0169】
架台270は、外装カバー280と、カメラユニット300と、照明ユニット400とを載置する部材である。移動体の一例としての車両は、外装カバー280、カメラユニット300及び照明ユニット400を、架台270を介して車両のルーフ上などに固定することができる。
【0170】
架台270は、開閉方向271に沿って開閉可能に外装カバー280を載置している。外装カバー280は、撮影装置180の少なくとも一部を遮蔽可能で且つ開閉可能に設けられた外装部材の一例である。外装カバー280は、例えばカメラユニット300及び照明ユニット400を遮蔽することで防塵及び防滴を図ることができる。外装カバー280の材質には、金属又は樹脂等を適用可能である。図16は外装カバー280が開放された状態を示し、図17は外装カバー280が遮蔽された状態を示している。
【0171】
外装カバー280が開放されると、カメラ331等を含むカメラユニット300、及び照明光源部431等を含む照明ユニット400は外部に露出され、撮影可能な状態になる。一方、外装カバー280が遮蔽されると、カメラユニット300及び照明ユニット400は遮蔽され、撮影不能な状態になる。撮影装置180による撮影を行わない時には、外装カバー280が遮蔽された状態にする。外装カバー280の開閉動作は、例えば撮影システム100aの撮影者が行うことができるが、モータ等を駆動源に電動で開閉させる構成してもよい。
【0172】
また外装カバー280は、外装カバー280の内側に、外装カバー280の開閉動作に連動して移動可能に照明反射部材を固定している。なお、図16及び図17では、照明反射部材は外装カバー280に隠れて不図示になっている。
【0173】
<照明反射部材の構成例>
次に図18及び図19を参照して、上記の照明反射部材の構成について説明する。図18は、照明反射部材の構成の一例を説明する斜視図であり、図19は断面図である。それぞれ照明反射部材の周辺の構成を示す拡大図である。
【0174】
照明光源部431は、照明レンズ431aを含み、トンネル壁面におけるカメラ331の撮影領域を照明するユニットである。照明光源部431は、破線の矢印で示す照明方向381に沿って照明光を照射する。なお、照明光源部431による照明光は発散又は集束する光であり、照明方向381は照明光の中心軸が沿う方向を示している。
【0175】
照明レンズ431aは、レンズ鏡胴が固定する複数のレンズ素子により構成される組レンズであり、カメラ331の撮影領域に照明光を集光することができる。なお、レンズ素子は、組レンズを構成する1つのレンズ単体を意味する。照明前玉431bは、照明レンズ431aを構成する複数のレンズ素子のうち、トンネル壁面に最も近い位置にあるレンズ素子である。
【0176】
カメラ331は、撮影レンズ331aと、撮像素子331cとを含み、トンネル壁面を撮影するユニットである。撮影レンズ331aは、レンズ鏡胴が固定する複数のレンズ素子により構成される組レンズであり、トンネル壁面が照明光を反射した反射光を集光し、撮像素子331cの撮像面上にトンネル壁面の像を形成することができる。
【0177】
撮像素子331cは、撮影レンズ331aによるトンネル壁面の像を撮像する撮像手段の一例である。撮像素子331cは、CCD等の撮像素子であり、撮影レンズ331aによるトンネル壁面の像を撮像した画像を出力できる。撮影前玉331bは、撮影レンズ331aを構成する複数のレンズ素子のうち、トンネル壁面に最も近い位置にあるレンズ素子である。
【0178】
照明反射部材371は、撮影装置180による撮影領域を照明可能な照明光の少なくとも一部を撮影レンズ331aに向けて偏向させる照明偏向部材の一例である。照明反射部材371は、例えば反射面を有する平面ミラーである。但し、照明偏向部材は照明反射部材371に限定されるものではない。照明偏向部材は、照明光の少なくとも一部を撮影レンズに向けて偏向させるものであれば、平面ミラーに代えて、例えば球面ミラー又は非球面ミラー等を備えてもよいし、回折構造を有する回折素子を備えてもよい。また照明光を拡散反射する拡散面、又は照明光を散乱させる散乱面等を備えてもよい。
【0179】
照明反射部材371は、照明光源部431の照明光を、破線の矢印で示す反射方向382に沿って反射する。なお、照明反射部材371による反射光も、照明光源部431による照明光と同様に発散又は集束する光であり、反射方向382は反射光の中心軸が沿う方向を示している。
【0180】
また、照明反射部材371は、外装カバー280(図16参照)の内側に固定されており、外装カバー280の開閉動作に伴って、照明方向381と交差する開閉方向271に沿って移動可能である。
【0181】
外装カバー280が遮蔽された場合、例えば撮影装置180による撮影を行わない場合には、図18に示すように、外装カバー280は、照明反射部材371の少なくとも一部が照明光の少なくとも一部を遮る遮光位置383に、照明反射部材371を配置する。なお、遮光位置383は、開閉方向271に交差する軸を指し、外装カバー280はこの軸上に照明反射部材371を配置できる。
【0182】
この状態では、照明反射部材371は照明光を反射し、照明光の少なくとも一部を撮影レンズ331aに照射する。照明反射部材371は、照射した光で撮影レンズ331aを加熱することができる。換言すると、照明反射部材371は、照明光に基づくエネルギーにより撮影レンズ331aを加熱する加熱手段として機能する。この加熱によって撮影レンズ331aの結露を防止できるようになっている。
【0183】
なお、撮影レンズ331aの結露防止のために撮影レンズ331aを加熱する際には、撮影システム100a全体が動作しなくてもよく、少なくとも照明光源部431が動作可能な状態であればよい。従って加熱の際には、照明光源部431以外の構成には電力供給せず照明光源部431のみに電力供給すると、消費電力を低減できるため好適である。
【0184】
ここで、照明反射部材371は、撮影前玉331bに光を照射することがより好ましい。撮影前玉331bは、外部との界面を有するため、撮影レンズ331aのうちで最も結露しやすい部分である。この撮影前玉331bに光を照射することで、撮影前玉331bを直接的に加熱し、撮影前玉331bの結露を好適に防止できる。また撮影前玉331bは、照射された光の一部を透過するため、撮影前玉331bに照射された光の撮影前玉331bの透過光を、撮影レンズ331aを構成する撮影前玉331b以外のレンズ素子にも到達させることができる。そのため、撮影前玉331b以外のレンズ素子も並行して加熱し、これらのレンズ素子の結露も防止できるようになっている。
【0185】
但し、照明反射部材371が光を照射する対象となる撮影レンズ331aの領域は、撮影前玉331bに限定されるものではなく、撮影レンズ331aのレンズ鏡胴であってもよい。また撮影装置180は、撮影レンズ331aだけでなく、照明レンズ431aにも照明光の少なくとも一部を照射するように照明反射部材371を配置してもよい。照明レンズ431aに光を照射する場合にも、照明前玉431bに光を照射すると、撮影前玉331bに光を照射する場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0186】
一方、外装カバー280が開放された場合、例えば撮影装置180による撮影を行う場合には、外装カバー280は、照明反射部材371が照明光を遮らない非遮光位置384に、照明反射部材371を配置する。なお、非遮光位置384は、開閉方向271に交差する軸を指し、外装カバー280はこの軸上に照明反射部材371を配置できる。
【0187】
この場合には、照明反射部材371は、照明光源部431による照明光の光路から外れた位置に配置されるため、撮影装置180による撮影を阻害しない状態にできる。
【0188】
ここで、図20は、外装カバー280内での各構成の配置の一例を示す図である。なお、図20は、外装カバー280が遮蔽された状態を示している。
【0189】
図20に示すように、外装カバー280は、図18及び図19で説明した照明光源部431、カメラ331及び照明反射部材371以外にも、照明光源部432、カメラ332、照明反射部材372、照明光源部433、カメラ333、及び照明反射部材373等を内側に配置する。照明反射部材372及び373も、照明反射部材371と同様に、外装カバー280の内側に固定され、外装カバー280の開閉動作に連動して遮光位置と非遮光位置との間を移動できる。
【0190】
そして、照明反射部材372は照明光源部432による照明光の少なくとも一部を、少なくともカメラ332の撮影レンズに照射及び加熱して、少なくとも該撮影レンズの結露を防止できるようになっている。また照明反射部材373は、照明光源部433による照明光の少なくとも一部を、少なくともカメラ333の撮影レンズに照射及び加熱して、少なくとも該撮影レンズの結露を防止できるようになっている。この場合にも、照明反射部材371で説明したものと同様の作用を得ることができる。
【0191】
<撮影装置180及び撮影システム100aの作用効果>
次に撮影装置180及び撮影システム100aの作用効果について説明する。
従来、撮影装置では、撮影装置に含まれる撮影レンズ又は照明レンズ等の外気に触れる部分が結露する場合がある。特に対象物としてトンネルの壁面を撮影する場合には、トンネル内は湿度が非常に高くなりやすいため、トンネルの外部から内部に進入した際に、結露が発生しやすい。撮影レンズ又は照明レンズ等のレンズ面が結露すると、レンズ面に付着した水分が撮影光又は照明光に作用することで、撮影される画像の品質が低下し、画像解析を適切に行えなくなる場合がある。
【0192】
また、撮影装置に含まれる撮影レンズの結露を防止するために、アルミニウム等の熱伝導率の高い素材により構成されたレンズホルダを、CCD等の撮像素子を設けた基板に当接させることで、撮像手段の発熱を伝熱して撮影レンズを加熱する構成が開示されている。
【0193】
しなかしながらこの構成では、撮像素子の発熱を伝熱するため、撮像素子が動作していないと十分な熱が得られなかったり、またレンズホルダを伝熱する間に熱が拡散したりして、十分な加熱効率が得られない場合がある。レンズホルダにおける熱の拡散は、レンズのサイズが大きくなるほどより顕著になり、加熱効率はより低下する。
【0194】
本実施形態では、撮影装置の撮影範囲を照明可能な照明光に基づくエネルギーにより、撮影レンズを加熱する加熱手段を有する。例えば加熱手段は、照明光の少なくとも一部を撮影レンズに向けて偏向させる照明反射部材(照明偏向部材)を含み、照明反射部材を用いて撮影レンズに照射される光のエネルギーにより撮影レンズを加熱する。照明光のエネルギーを用いて撮影レンズを加熱することで、伝熱部材を介さずに撮影レンズを加熱できるため、伝熱部材の熱拡散の影響等をなくし、撮影レンズを効率よく加熱することができる。
【0195】
また本実施形態では、撮影レンズは、複数の撮影レンズ素子を含み、加熱手段は、複数の撮影レンズ素子のうち、最も対象物側に設けられた撮影前玉を加熱する。これにより撮影レンズのうちで最も結露しやすい部分である撮影前玉を直接的に加熱し、撮影前玉の結露をより好適に防止することができる。
【0196】
また撮影前玉は照射された光の一部を透過するため、撮影レンズを構成する撮影前玉以外のレンズ素子にも透過光を到達させて並行して加熱でき、これらのレンズ素子の結露も好適に防止できる。
【0197】
また本実施形態では、撮影システムは、照明偏向部材の少なくとも一部が、撮影システムの撮影範囲を照明可能な照明光の少なくとも一部を遮る遮光位置と、照明反射部材が上記照明光を遮らない非遮光位置との間で移動可能に照明反射部材を設ける。これにより、撮影システムにより撮影を行う際には、照明反射部材を非遮光位置に配置でき、照明反射部材が照明光を遮って撮影を阻害することを防ぐことができる。また結露防止のために撮影レンズを加熱する状態と、撮影を行う状態とを簡単に切り替えることができる。
【0198】
また本実施形態では、照明反射部材は、撮影装置を遮蔽可能で且つ開閉可能に設けられた外装カバー(外装部材)に取り付けられ、外装カバーの開閉動作に連動して遮光位置と非遮光位置との間を移動する。撮影システムでは、撮影を行わない場合には、撮影ユニット及び照明ユニット等を外装カバーで遮蔽して防塵及び防滴し、撮影を行う場合には外装カバーを開放する。この構成により、切替のための専用の構成を追加することなく、結露防止のために撮影レンズを加熱する状態と、撮影を行う状態とを簡単に切り替えることができる。
【0199】
但し、照明反射部材は、必ずしも外装カバーの開閉動作に連動する必要はなく、外装カバーとは独立して遮光位置と非遮光位置との間を移動可能に構成することもできる。
【0200】
また本実施形態では、照明装置は、複数の照明レンズ素子を含む照明レンズを有し、撮影レンズは、複数の撮影レンズ素子を含む。加熱手段は、複数の撮影レンズ素子のうちの最もトンネルの壁面(対象物)側に設けられた撮影前玉、及び複数の照明レンズ素子のうちの最もトンネルの壁面対象物側に設けられた照明前玉の両方を加熱できる。この構成により、撮影レンズと照明レンズの両方の結露を防止可能になる。
【0201】
[その他の好適な実施形態]
上述した第1実施形態では、加熱手段が照明偏向部材を含み、照明偏向部材が照射する光のエネルギーにより撮影レンズを加熱する構成を例示したが、加熱手段の構成は、これに限定されるものではない。
【0202】
例えば、加熱手段は、撮影装置による撮影領域を照明可能な照明光の少なくとも一部を受光して、吸収した光のエネルギーを熱エネルギーに変換する変換部材を含むこともできる。変換部材は、一部を撮影レンズに当接させて熱エネルギーを伝達することで、撮影レンズを加熱する。変換部材には、例えば照明光の吸収率が高い色に着色した部材を適用可能である。
【0203】
この構成でも、変換部材が発熱した熱エネルギーを用いて、伝熱部材を介さずに撮影レンズを加熱でき、第1実施形態で説明したものと同様の作用効果を得ることができる。
【0204】
以上、本発明の実施形態の例について記述したが、本発明は斯かる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0205】
具体的には、カメラを搭載する車両としては2輪車、一般車等の4輪車、建設・農業・産業車両、鉄道車両、特殊車両であってもよく、また、ドローン等の飛行体であってもよい。これらまとめて移動体と称する。
【0206】
また実施形態では、対象物の一例としてトンネルを説明したが、これに限るものではなく、対象物には、気体、液体、粉体、粒体物質の輸送に用いる配管も含まれる。また、対象物には、昇降機(エレベータ)が走行する縦穴状の鉄筋コンクリート構造等の昇降路(エレベータシャフト)も含まれる。
【0207】
なお、実施形態の説明で用いた序数、数量等の数字は、全て本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明は例示された数字に制限されない。また、構成要素間の接続関係は、本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明の機能を実現する接続関係はこれに限定されない。
【0208】
また、機能ブロック図におけるブロックの分割は一例であり、複数のブロックを一つのブロックとして実現する、一つのブロックを複数に分割する、及び/又は、一部の機能を他のブロックに移してもよい。また、類似する機能を有する複数のブロックの機能を単一のハードウェア又はソフトウェアが並列又は時分割に処理してもよい。
【0209】
また実施形態は、撮影方法も含む。例えば、撮影方法は、撮影レンズを有し、対象物を撮影する撮影装置による撮影方法であって、前記撮影レンズによる前記対象物の像を撮像する工程と前記撮影装置による撮影領域を照明可能な照明光に基づくエネルギーにより、前記撮影レンズを加熱する工程と、を行う。このような撮影方法により、上述の撮影装置と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0210】
100 撮影システム
180 撮影装置
270 架台
271 開閉方向
280 外装カバー(外装部材の一例)
300 カメラユニット
331~334 カメラ
331a 撮影レンズ
331b 撮影前玉
331c 撮影素子(撮像手段の一例)
331-1、334-1 レンズ
371 照明反射部材(照明偏向部材の一例)
381 照明方向
382 反射方向
383 遮光位置
384 非遮光位置
400 照明ユニット(照明装置の一例)
431~436 照明光源部
431a 照明レンズ
431b 照明前玉
500 車両(移動体の一例)
600 トンネル(構造物の一例)
601~603 壁面(対象物の一例)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0211】
【文献】特許第5005186号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20