(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】インクおよび画像形成方法
(51)【国際特許分類】
C09D 11/38 20140101AFI20241112BHJP
C09D 11/54 20140101ALI20241112BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20241112BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241112BHJP
C09D 11/322 20140101ALI20241112BHJP
【FI】
C09D11/38
C09D11/54
B41M5/00 120
B41M5/00 132
B41J2/01 501
C09D11/322
(21)【出願番号】P 2020204077
(22)【出願日】2020-12-09
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】梅村 和彦
(72)【発明者】
【氏名】山本 誓
(72)【発明者】
【氏名】廣川 悠哉
(72)【発明者】
【氏名】萩原 弘規
(72)【発明者】
【氏名】齋賀 拓也
(72)【発明者】
【氏名】中川 智裕
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/013337(WO,A1)
【文献】特開2020-007518(JP,A)
【文献】国際公開第2018/221045(WO,A1)
【文献】特開2004-203903(JP,A)
【文献】特開2019-199621(JP,A)
【文献】特開2020-169286(JP,A)
【文献】特開2005-272847(JP,A)
【文献】特開2017-190369(JP,A)
【文献】特開2008-231219(JP,A)
【文献】特開2010-121034(JP,A)
【文献】特開2020-070334(JP,A)
【文献】特開2016-022706(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0293644(US,A1)
【文献】特開2016-193975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の有機溶剤、顔料および水を含むインクであって、
前記複数の有機溶剤が、1,2-プロパンジオールおよび1,2-ヘキサンジオールを含み、
前記インクはさらに、ポリオキシエチレンエーテル化合物を含
み、
前記ポリオキシエチレンエーテル化合物は、ポリエチレングリコールトリメチルノニルエーテルであるインク。
【請求項2】
さらに、ウレタン樹脂および/またはアクリル樹脂を含有する請求項1に記載のインク。
【請求項3】
前記ウレタン樹脂および/またはアクリル樹脂が樹脂粒子である請求項2に記載のインク。
【請求項4】
記録媒体上にインクジェット方式によりインクを用いて画像を形成する方法であって、
前記記録媒体上に少なくとも凝集剤を含む処理液を塗布した後に、前記インクとして請求項1~3のいずれかに記載のインクを用いて画像を形成する画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクおよび画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、他の記録方式に比べて、プロセスが簡単で、フルカラー化が容易であり、簡略な構成の装置であっても、高解像度の画像が得られることから、パーソナルから、オフィス用途、商用印刷や工業印刷の分野へと広がりつつある。
前記商用印刷の分野では、記録媒体として、普通紙の他に、コート紙、アート紙等の塗工紙、さらにはPETや(OPP)ポリプロピレンなどの軟包装向け高分子フィルムが使用されており、印刷物がポストカードやパッケージなど、商品として取り扱われる。
塗工紙や高分子フィルムなどの難吸収性基材に水性インクで画像を形成しようとするといわゆるビーディングが発生しやすいことが知られている。
【0003】
下記特許文献1には、水に溶解して10重量%の水溶液とした際に表面張力が30mN/m以下となる、例えば1,2-アルカンジオールのような非水溶剤と、0.1重量%以上の有機アミンとを少なくとも含有するインク組成物が開示されている。
また下記特許文献2には、複数の顔料、複数の水溶性樹脂、界面活性剤、及び水溶性有機溶剤を含有するインクであって、前記界面活性剤が、グリフィン法によるHLB値が13.0以上のポリオキシエチレンアルキルエーテルであるインクが開示されている。
また下記特許文献3には、画像濃度の低下及びインク吐出性の悪化を生じることなく、ビーディングを抑制できるインクを提供することを目的として、インクの濃縮時の粘弾性を特定範囲に定める技術が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、印刷のダウンタイムを低減し、高い生産性を実現するために、インクジェット記録方式においては吐出安定性が求められる。また、インクには耐擦過性が求められるが、耐擦過性を有するインクは、記録ヘッド部においてインクの固着が発生しやすく、吐出安定性が不良になり易い。以上から、吐出安定性と耐擦過性を両立させることは当業界では困難な事項とされている。
しかし、上記特許文献1~3に開示されたような従来技術では、吐出安定性と耐擦過性の両立という観点からは依然として改善の余地があった。
【0005】
したがって本発明の目的は、塗工紙や高分子フィルムなどの難吸収性基材に画像を形成した場合にもビーディングが発生しにくく、連続吐出安定性と耐擦過性を両立し得る、インクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、下記構成1)により解決される。
1)複数の有機溶剤、顔料および水を含むインクであって、
前記複数の有機溶剤が、1,2-プロパンジオールおよび1,2-ヘキサンジオールを含み、
前記インクはさらに、ポリオキシエチレンエーテル化合物を含み、
前記ポリオキシエチレンエーテル化合物は、ポリエチレングリコールトリメチルノニルエーテルであるインク。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、塗工紙や高分子フィルムなどの難吸収性基材に画像を形成した場合にもビーディングが発生しにくく、連続吐出安定性と耐擦過性を両立し得る、インクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】インクジェット記録装置の一例を示す斜視説明図である。
【
図2】インクジェット記録装置におけるメインタンクの一例を示す斜視説明図である。
【
図3】本発明に好適に適用され得る記録装置、記録方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態についてさらに詳しく説明する。
本発明のインクは、複数の有機溶剤、顔料および水を含み、前記複数の有機溶剤が、1,2-プロパンジオールおよび1,2-ヘキサンジオールを含み、前記インクはさらに、ポリオキシエチレンエーテル化合物を含むものである。
【0010】
これら複数の有機溶剤とポリオキシエチレンエーテル化合物との組み合わせによれば、塗工紙や高分子フィルムなどの難吸収性基材に画像を形成した場合にもビーディングが発生せず、また、高い連続吐出安定性および耐擦過性が得られる。
1,2-ヘキサンジオールは、比較的水分保持力が低く、インク中の水分を揮発させやすい。そのため、難吸収性基材に着弾したインク滴から素早く水分を乾燥させ、インク中に含まれる顔料の偏在、凝集を起こりにくくする効果がある。また、同時に1,2-ヘキサンジオール自体は沸点が高く揮発しにくいため顔料の流動、偏在、凝集を起こりにくくする効果がある。
一方、1,2-プロパンジオールは比較的水分保持力が高いため、インクジェット用ノズル近傍でインクから水分が揮発しノズル内でインクが乾燥してインクの吐出異常やノズル詰まりの原因となることを防止しやすい効果がある。
1,2-ヘキサンジオールの含有量はインク全体中、5質量%~20質量%であるのが好ましく、7質量%~13質量%であるのがさらに好ましい。この範囲によれば、さらなるビーディング抑制効果が発揮され、かつ吐出異常を発生させにくい。
1,2-プロパンジオールの含有量はインク全体の5質量%~30質量%が好ましく、7質量%~25質量%であるのがさらに好ましい。この範囲によれば、さらなるビーディング抑制効果が発揮され、かつ吐出異常を発生させにくい。
【0011】
また、ポリオキシエチレンエーテル化合物は、前記複数の有機溶剤と併用することにより、ビーディングの抑制と吐出異常の抑制をより高いレベルで両立させることができる。これは、ポリオキシエチレンエーテル化合物のインク中の溶解性が十分に高いため、難吸収性基材に着弾した瞬間のインク滴の最表面にポリオキシエチレンエーテル化合物が存在し、液滴の広がりを促進できることが理由であると考察している。また、ノズル近傍のインク表面にもポリオキシエチレンエーテル化合物が存在し、インクのメニスカス形成を容易にするため、吐出安定性の向上を実現できていると考察している。
ポリオキシエチレンエーテル化合物の含有量は、インク全体の0.05質量%~2.0質量%が好ましく、0.5質量%~1.5質量%であるのがさらに好ましい。この範囲によれば、さらなるビーディング抑制効果が発揮され、かつ吐出異常を発生させにくい。
【0012】
ポリオキシエチレンエーテル化合物は、一般式RO(C2H4O)nHで表すことができる。該一般式中、Rはアルキル基であり、好ましい炭素数は10~18である。またnは繰り返し数であり、例えば2~10である。
中でも本発明ではポリオキシエチレンエーテル化合物として、ポリエチレングリコールトリメチルノニルエーテル(Cas.No 60828-78-6、(別名:ポリ(オキシエチレン)=3,5-ジメチル-1-(2-メチルプロピル)ヘキシル=エーテル))を挙げることができる。該化合物を使用することにより、本発明の効果がとくに高まる。
ポリエチレングリコールトリメチルノニルエーテルの市販品としては、ダウ・ケミカル日本株式会社製トライトンHW-1000、シグマ-アルドリッチ社製Tergitol TMN6、TMN10、TMN-3等が挙げられる。
【0013】
また本発明のインクには、耐擦過性を向上させるという観点から、ウレタン樹脂および/またはアクリル樹脂を含有させるのが好ましい。
これらの樹脂は記録媒体上で成膜、接着し、インク中の顔料を固定する役割を担う。
用途によるが、一般に耐擦過性を向上させるためにはウレタン樹脂を用いるのが好ましい。しかし、ウレタン樹脂は乾燥性に劣る場合があり、アクリル樹脂との併用がインクの取り扱い、記録媒体の種類に対する適応性を向上させやすい。ウレタン樹脂および/またはアクリル樹脂は、樹脂粒子の形態であることが好ましく、樹脂エマルジョンであることがさらに好ましい。水溶性の樹脂はインクの粘度上昇や温度に対する特性の変化を生じやすいが、エマルジョン状態であれば、特性の変化を抑制しやすい。
【0014】
前記樹脂としては、樹脂粒子を、水を分散媒として分散した樹脂エマルションの状態で、顔料や有機溶剤などの材料と混合してインクを得ることが可能である。前記樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0015】
ウレタン樹脂としては、高い耐擦過性及び定着性の点から、ポリカーボネートウレタン樹脂が好ましい。前記ポリカーボネートウレタン樹脂としては、例えば、三井化学株式会社製タケラックWS-4000、W-6010、W-6110;第一工業製薬株式会社製のユーコートシリーズ、などが挙げられる。
【0016】
アクリル樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、スチレン-ブタジエン樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル-スチレン樹脂、ブタジエン樹脂、スチレン樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は親水性部分と疎水性部分とを併せ持つ重合体であることが好ましい。
【0017】
市販の樹脂エマルションとしては、例えば、マイクロジェルE-1002、E-5002(スチレン-アクリル系樹脂エマルション、日本ペイント株式会社製)、ボンコート400、ボンコート4001(アクリル系樹脂エマルション、DIC株式会社製)、ボンコート5454(スチレン-アクリル系樹脂エマルション、DIC株式会社製)、SAE-1014(スチレン-アクリル系樹脂エマルション、日本ゼオン株式会社製)、サイビノールSK-200(アクリル系樹脂エマルション、サイデン化学株式会社製)などが挙げられる。
【0018】
樹脂粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な定着性、高い画像硬度を得る点から、10nm以上1,000nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が特に好ましい。
【0019】
前記樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、高い耐擦過性及び定着性の点から、インク全量に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましい。
【0020】
本発明のインクは、前記構成材料以外にも、下記のような材料を使用することもできる。
【0021】
<有機溶剤>
本発明に使用する有機溶剤としては特に制限されず、水溶性有機溶剤を用いることができる。例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。
水溶性有機溶剤の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル-1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等のアミド類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
湿潤剤として機能するだけでなく、良好な乾燥性を得られることから、沸点が250℃以下の有機溶剤を用いることが好ましい。
有機溶剤のインク中における含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上60質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
【0022】
インクにおける水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%~60質量%がより好ましい。
【0023】
顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができる。これらは、1種単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。また、混晶を使用しても良い。
顔料としては、例えば、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンダ顔料、シアン顔料、白色顔料、緑色顔料、橙色顔料、金色や銀色などの光沢色顔料やメタリック顔料などを用いることができる。
無機顔料として、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
また、有機顔料としては、アゾ顔料、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。これらの顔料のうち、溶媒と親和性の良いものが好ましく用いられる。その他、樹脂中空粒子、無機中空粒子の使用も可能である。
顔料の具体例として、黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料があげられる。
さらに、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、150、153、155、180、185、213、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、207、208、209、213、219、224、254、264、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3、15:4(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36、等がある。
必要に応じて染料を添加してもよい。
染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能であり、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー 17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド 52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー 9,45,249、C.I.アシッドブラック 1,2,24,94、C.I.フードブラック 1,2、C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド 1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー 1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック 19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド 14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック 3,4,35が挙げられる。
【0024】
インク中の色材の含有量は、画像濃度の向上、良好な定着性や吐出安定性の点から、0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
【0025】
顔料を分散してインクを得るためには、顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法、顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法、分散剤を用いて分散させる方法、などが挙げられる。
顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法としては、例えば、顔料(例えばカーボン)にスルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加することで、水中に分散可能とする方法が挙げられる。
顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法としては、顔料をマイクロカプセルに包含させ、水中に分散可能とする方法が挙げられる。これは、樹脂被覆顔料と言い換えることができる。この場合、インクに配合される顔料はすべて樹脂に被覆されている必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲において、被覆されない顔料や、部分的に被覆された顔料がインク中に分散していてもよい。
分散剤を用いて分散させる方法としては、界面活性剤に代表される、公知の低分子型の分散剤、高分子型の分散剤を用いて分散する方法が挙げられる。
分散剤としては、顔料に応じて例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を使用することが可能である。
竹本油脂社製RT-100(ノニオン系界面活性剤)や、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物も、分散剤として好適に使用できる。
分散剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0026】
<顔料分散体>
顔料に、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを得ることが可能である。また、顔料と、その他水や分散剤などを混合して顔料分散体としたものに、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを製造することも可能である。
前記顔料分散体は、水、顔料、顔料分散剤、必要に応じてその他の成分を混合、分散し、粒径を調整して得られる。分散は分散機を用いると良い。
顔料分散体における顔料の粒径については特に制限はないが、顔料の分散安定性が良好となり、吐出安定性、画像濃度などの画像品質も高くなる点から、最大個数換算で最大頻度が20nm以上500nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。顔料の粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
前記顔料分散体における顔料の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な吐出安定性が得られ、また、画像濃度を高める点から、0.1質量%以上50質量%以下が好ましく、0.1質量%以上30質量%以下がより好ましい。
前記顔料分散体は、必要に応じて、フィルター、遠心分離装置などで粗大粒子をろ過し、脱気することが好ましい。
【0027】
樹脂粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な定着性、高い画像硬度を得る点から、10nm以上1,000nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が特に好ましい。
前記体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0028】
樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、定着性、インクの保存安定性の点から、インク全量に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましい。
【0029】
インク中の固形分の粒径については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、吐出安定性、画像濃度などの画像品質を高くする点から、最大個数換算で最大頻度が20nm以上1000nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。固形分は樹脂粒子や顔料の粒子等が含まれる。粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0030】
<添加剤>
インクには、必要に応じて、界面活性剤、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤等を加えても良い。
【0031】
本発明には必要に応じて界面活性剤を併用してもよい。
<界面活性剤>
界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
シリコーン系界面活性剤には特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。中でも高pHでも分解しないものが好ましく、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。また、前記シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。前記パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。前記パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。前記パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH4、NH3CH2CH2OH、NH2(CH2CH2OH)2、NH(CH2CH2OH)3等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えばラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩、などが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0032】
前記シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤が水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。
このような界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、ビックケミー株式会社、信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、日本エマルジョン株式会社、共栄社化学などから入手できる。
ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、市販品を用いることができ、例えば、KF-618、KF-642、KF-643(信越化学工業株式会社)、EMALEX-SS-5602、SS-1906EX(日本エマルジョン株式会社)、FZ-2105、FZ-2118、FZ-2154、FZ-2161、FZ-2162、FZ-2163、FZ-2164(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社)、BYK-33、BYK-387(ビックケミー株式会社)、TSF4440、TSF4452、TSF4453(東芝シリコン株式会社)などが挙げられる。
【0033】
前記フッ素系界面活性剤としては、フッ素置換した炭素数が2~16の化合物が好ましく、フッ素置換した炭素数が4~16である化合物がより好ましい。
上記のフッ素系界面活性剤としては市販品を使用してもよい。この市販品としては、例えば、サーフロンS-111、S-112、S-113、S-121、S-131、S-132、S-141、S-145(いずれも、旭硝子株式会社製);フルラードFC-93、FC-95、FC-98、FC-129、FC-135、FC-170C、FC-430、FC-431(いずれも、住友スリーエム株式会社製);メガファックF-470、F-1405、F-474(いずれも、大日本インキ化学工業株式会社製);ゾニール(Zonyl)TBS、FSP、FSA、FSN-100、FSN、FSO-100、FSO、FS-300、UR、キャプストーンFS-30、FS-31、FS-3100、FS-34、FS-35(いずれも、Chemours社製);FT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW(いずれも、株式会社ネオス社製)、ポリフォックスPF-136A,PF-156A、PF-151N、PF-154、PF-159(オムノバ社製)、ユニダインDSN-403N(ダイキン工業株式会社製)などが挙げられ、これらの中でも、良好な印字品質、特に発色性、紙に対する浸透性、濡れ性、均染性が著しく向上する点から、Chemours社製のFS-3100、FS-34、FS-300、株式会社ネオス製のFT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW、オムノバ社製のポリフォックスPF-151N及びダイキン工業株式会社製のユニダインDSN-403Nが特に好ましい。
【0034】
<消泡剤>
消泡剤としては、特に制限はなく、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、破泡効果に優れる点から、シリコーン系消泡剤が好ましい。
【0035】
<防腐防黴剤>
防腐防黴剤としては、特に制限はなく、例えば、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンなどが挙げられる。
【0036】
<防錆剤>
防錆剤としては、特に制限はなく、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0037】
<pH調整剤>
pH調整剤としては、pHを7以上に調整することが可能であれば、特に制限はなく、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミンなどが挙げられる。
【0038】
インクの物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力、pH等が以下の範囲であることが好ましい。
インクの25℃での粘度は、印字濃度や文字品位が向上し、また、良好な吐出性が得られる点から、5mPa・s以上30mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上25mPa・s以下がより好ましい。ここで、粘度は、例えば回転式粘度計(東機産業社製RE-80L)を使用することができる。測定条件としては、25℃で、標準コーンローター(1°34’×R24)、サンプル液量1.2mL、回転数50rpm、3分間で測定可能である。
インクの表面張力としては、記録媒体上で好適にインクがレベリングされ、インクの乾燥時間が短縮される点から、25℃で、35mN/m以下が好ましく、32mN/m以下がより好ましい。
インクのpHとしては、接液する金属部材の腐食防止の観点から、7~12が好ましく、8~11がより好ましい。
【0039】
本発明の画像形成方法は、記録媒体上にインクジェット方式によりインクを用いて画像を形成する方法であって、前記記録媒体上に少なくとも凝集剤を含む処理液を塗布した後に、前記インクとして本発明のインクを用いて画像を形成する方法である。
【0040】
<処理液>
処理液は、凝集剤、有機溶剤、水を含有し、必要に応じて界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤等を含有しても良い。
有機溶剤、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤は、インクに用いる材料と同様の材料を使用でき、その他、公知の処理液に用いられる材料を使用できる。
凝集剤の種類は特に限定されず、水溶性カチオンポリマー、酸、多価金属塩等が挙げられる。
【0041】
凝集剤は、処理液中、例えば10~30質量%含有される。
【0042】
<後処理液>
後処理液は、透明な層を形成することが可能であれば、特に限定されない。後処理液は、有機溶剤、水、樹脂、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤等、必要に応じて選択し、混合して得られる。また、後処理液は、記録媒体に形成された記録領域の全域に塗布しても良いし、インク像が形成された領域のみに塗布しても良い。
【0043】
<処理液付与工程及び処理液付与手段>
処理液付与工程は、記録媒体上に本発明における処理液を付与する工程であり、処理液付与手段により実施される。
処理液の付与に際しては、被印刷物がポリエチレンテレフタレート(PET)等の非浸透性基材であれば、被印刷物表面を導電性のローラやプラズマによるコロナ処理を施してもよい。一般にコロナ処理は有機材料の親水性を向上させ、水性液体の濡れ性、塗布均一性を向上させる。
前記処理液の付与方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、インクジェット法、ブレードコート法、グラビアコート法、グラビアオフセットコート法、バーコート法、ロールコート法、スプレーコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、Uコンマコート法、AKKUコート法、スムージングコート法、マイクログラビアコート法、リバースロールコート法、4本ロールコート法、5本ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法などが挙げられる。これらの中でも、ロールコート法、スプレーコート法が好ましい。
【0044】
処理液を付与された記録媒体に対しては、必要に応じて、記録媒体を加熱して処理液を乾燥させる加熱工程を行ってもよいが、加熱工程を行わなくてもよい。なお、加熱工程は、例えば、ロールヒーター、ドラムヒーター、温風などの公知の加熱手段により被印刷物を加熱して被印刷物に付与された処理液を乾燥させる工程である。
【0045】
<インク付与工程及びインク付与手段>
インク付与工程は、本発明のインクを付与する工程であり、インク付与手段により実施される。
本発明においては例えばインクジェット方式が使用され得る。
【0046】
<記録装置、記録方法>
本発明のインクは、インクジェット記録方式による各種記録装置、例えば、プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機、立体造形装置などに好適に使用することができる。
本発明において、記録装置、記録方法とは、記録媒体に対してインクや各種処理液等を吐出することが可能な装置、当該装置を用いて記録を行う方法である。記録媒体とは、インクや各種処理液が一時的にでも付着可能なものを意味する。
この記録装置には、インクを吐出するヘッド部分だけでなく、記録媒体の給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置と称される装置などを含むことができる。
記録装置、記録方法は、加熱工程に用いる加熱手段、乾燥工程に用いる乾燥手段を有しても良い。加熱手段、乾燥手段には、例えば、記録媒体の印字面や裏面を加熱、乾燥する手段が含まれる。加熱手段、乾燥手段としては、特に限定されないが、例えば、温風ヒーター、赤外線ヒーターを用いることができる。加熱、乾燥は、印字前、印字中、印字後などに行うことができる。
また、記録装置、記録方法は、インクによって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、幾何学模様などのパターン等を形成するもの、3次元像を造形するものも含まれる。
また、記録装置には、特に限定しない限り、吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、吐出ヘッドを移動させないライン型装置のいずれも含まれる。
更に、この記録装置には、卓上型だけでなく、A0サイズの記録媒体への印刷も可能とする広幅の記録装置や、例えばロール状に巻き取られた連続用紙を記録媒体として用いることが可能な連帳プリンタも含まれる。
記録装置の一例について
図1乃至
図2を参照して説明する。
図1は同装置の斜視説明図である。
図2はメインタンクの斜視説明図である。記録装置の一例としての画像形成装置400は、シリアル型画像形成装置である。画像形成装置400の外装401内に機構部420が設けられている。ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色用のメインタンク410(410k、410c、410m、410y)の各インク収容部411は、例えばアルミニウムラミネートフィルム等の包装部材により形成されている。インク収容部411は、例えば、プラスチックス製の収容容器ケース414内に収容される。これによりメインタンク410は、各色のインクカートリッジとして用いられる。
一方、装置本体のカバー401cを開いたときの開口の奥側にはカートリッジホルダ404が設けられている。カートリッジホルダ404には、メインタンク410が着脱自在に装着される。これにより、各色用の供給チューブ436を介して、メインタンク410の各インク排出口413と各色用の吐出ヘッド434とが連通し、吐出ヘッド434から記録媒体へインクを吐出可能となる。
【0047】
この記録装置には、インクを吐出する部分だけでなく、前処理装置、後処理装置と称される装置などを含むことができる。
前処理装置、後処理装置の一態様として、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)などのインクの場合と同様に、前処理液や、後処理液を有する液体収容部と液体吐出ヘッドを追加し、前処理液や、後処理液をインクジェット記録方式で吐出する態様がある。
前処理装置、後処理装置の他の態様として、インクジェット記録方式以外の、例えば、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法による前処理装置、後処理装置を設ける態様がある。
【0048】
図3は、本発明に好適に適用され得る記録装置、記録方法を説明するための図である。
図3に示す記録装置は、処理液を塗布する処理液塗布装置2と、ブラックインク(K)、シアンインク(C)、マゼンタインク(M)、イエローインク(Y)を吐出するインク吐出ヘッド3と、乾燥装置5と
、被印刷物(記録媒体)1を搬送する搬送ベルト6とを有する。
記録方法は、被印刷物1に処理液を付与する処理液付与工程、インク吐出ヘッド3により被印刷物1にインクを付与し、印刷部分7を形成するインク付与工程、インク付与後の被印刷物1を乾燥する乾燥工程を有する。
記録装置、記録方法は、加熱工程に用いる加熱手段、乾燥工程に用いる乾燥手段を有してもよい。加熱手段、乾燥手段には、例えば、被印刷物の印字面や裏面を加熱、乾燥する手段が含まれる。加熱手段、乾燥手段としては、特に限定されないが、例えば、温風ヒーター、赤外線ヒーターを用いることができる。加熱、乾燥は、印字前、印字中、印字後などに行うことができる。
また、記録装置、記録方法は、インクによって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、幾何学模様などのパターン等を形成するもの、3次元像を造形するものも含まれる。
また、記録装置には、特に限定しない限り、吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、吐出ヘッドを移動させないライン型装置のいずれも含まれる。
更に、この記録装置には、卓上型だけでなく、A0サイズの被印刷物への印刷も可能とする広幅の記録装置や、例えばロール状に巻き取られた連続用紙を被印刷物として用いることが可能な連帳プリンタも含まれる。
【0049】
前記難吸収性基材としては、例えば、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ナイロンフィルムなどが挙げられる。
前記ポリプロピレンフィルムとしては、例えば、東洋紡製P-2002、P-2161、P-4166、SUNTOX製PA-20、PA-30、PA-20W、フタムラ化学製FOA、FOS、FORなどが挙げられる。
前記ポリエチレンテレフタレートフィルムとしては、例えば、東洋紡製E-5100、E-5102、東レ製P60、P375、帝人デュポンフィルム製G2、G2P2、K、SLなどが挙げられる。
また、前記ナイロンフィルムの例としては、東洋紡製ハーデンフィルムN-1100、N-1102、N-1200、ユニチカ製ON、NX、MS、NKなどが挙げられる。
また、コート紙なども挙げられる。例えば王子製紙製OK-TOPコートやコルゲート用着色ライナーなどである。
【実施例】
【0050】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、特に記載が無い場合、実施例及び比較例の調製、評価等は、25℃、相対湿度60%の条件下で行った。また、「部」とあるのは質量部を意味する。
【0051】
(顔料分散体の調製例1)
<分散剤分散型ブラック顔料分散体の調製>
Cabot Corporation社製のカーボンブラック(Black Pear ls 1000)100g、ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物(パイオニンA-45-PN、竹本油脂株式会社製)15g、及びイオン交換水280gを混合した混合物をプレミックスした後、ダイノーミル(シンマルエンタープライゼス株式会社製)で直径0.3mmジルコニアビーズを用いて、回転速度10m/sec、液温10℃の条件で30分間分散し、顔料分散体を得た。
次に、得られた顔料分散体とジルコニアビーズを分離し、平均孔径0.8μmのメンブレンフィルター(セルロースアセテートタイプ)で濾過した。その後、固形分濃度が20質量%になるように水分量を調整し、分散剤分散型ブラック顔料分散体を得た。
【0052】
下記表1に示す処方(質量%)にてインクを調合した。インクの調合は1Lのビーカーに原材料を投入し、十分に撹拌した後、フィルターでろ過することにより行った。
【0053】
【0054】
インクに用いた材料:
ポリオキシエチレンエーテル化合物はダウ・ケミカル日本株式会社製 トライトンHW-1000(ポリエチレングリコールトリメチルノニルエーテル)を用いた。
その他の界面活性剤として、日信化学工業株式会社製 サーフィノール440(アセチレングリコール系界面活性剤)、BYK社製 BYK-345(ポリシロキサン系界面活性剤)を用いた。
ウレタン樹脂粒子は タケラックWS-6021(固形分 30.0質量%、三井化学株式会社製)またはスーパーフレックス460S(固形分38質量%、第一工業製薬株式会社製)を用いた。
アクリル樹脂粒子は ボンコート400(固形分38.0質量%、DIC株式会社製)またはトークリルW463(固形分 45質量%、トーヨーケム株式会社製)を用いた。
表1の顔料分散体、樹脂粒子の数値は、固形分に相当する。
【0055】
処理液は以下の手順で得た。
純水70部と1,2-プロパンジオール20部をビーカーにとり、攪拌しながら硫酸マグネシウム(ナイカイ塩業株式会社製、製品名:硫酸マグネシウム)10部を徐々に投入しすべて溶解したのちさらに30分間撹拌した後、フィルターでろ過して処理液を得た。
【0056】
評価方法
得られたインクを
図3に示す印刷装置に充填し、記録媒体に対してブラックインクを吐出して3cm四方のベタ画像を5か所印刷し、70℃のエアオーブンで十分乾燥させた。
【0057】
記録媒体は以下のものを使用した。
普通紙 マイペーパー (株)リコー製
光沢紙 OK-TOP 王子製紙株式会社製
PET ルミラーT60(厚さ25μm) 東レ株式会社製
【0058】
下記表2に示す記録媒体上に、処理液を10g/mm
2ローラ塗布し、乾燥させた後、処理液が塗布された領域に対してインクを上記条件で
図3に示す印刷装置にて吐出した。
得られたベタ画像を目視で観察し、下記評価基準に基づいてビーディングを評価した。なお、3以上が実使用可能なレベルである。
[評価基準]
5:ビーディングは観察されない
4:ややビーディング観察されるが、実使用上は問題ない
3:ビーディングが観察されるが、実使用上は問題ない
2:明らかにビーディングが観察され、実使用上の問題が生じる
1:激しいビーディングが観察され、実使用上の問題が生じる
【0059】
次に、乾いた綿布(カナキン3号)を用い、400gの加重をかけてベタ画像を50回以上擦過した。擦過後のベタ画像を目視で観察し、下記評価基準に基づいて耐擦過性を評価した。なお、4以上が実使用可能なレベルである。
[評価基準]
5:50回以上擦っても傷が観察されない
4:50回擦るとやや傷が観察されるが、画像明度には影響せず実使用上は問題ない
3:50回擦ると傷が観察され、画像明度がやや低下し、実使用上は問題が生じる
2:20回以上50回未満擦ると傷が観察され、画像明度が低下して実使用上の問題が生じる
1:20回未満擦ると傷が観察され、画像明度が低下して実使用上の問題が生じる
【0060】
インクジェットプリンター(株式会社リコー製IPSiO GXe5500)にて、A4サイズの全面ベタ画像を100枚光沢紙きれいモードにて連続印刷を行い、目視で印刷した画像を観察し、下記評価基準に基づき「吐出安定性」を判定した。
[評価基準]
A:100枚終了後まで画像が変化しない。
B:50枚から100枚終了までに画像にスジやムラが発生する。
C:50枚終了以前に画像にスジやムラが発生する。
なお、AおよびBが実使用可能なレベルである。
【0061】
評価結果を表2に示す。
【0062】
【0063】
実施例および比較例の結果から、本発明により、ビーディング、耐擦過性、吐出安定性に優れたインクおよび画像形成方法が得られたことが分かる。
【符号の説明】
【0064】
1 被印刷物
2 処理液塗布装置
3 インク吐出ヘッド
5 乾燥装置
6 搬送ベルト
7 印刷部分
400 画像形成装置
401 画像形成装置の外装
401c 装置本体のカバー
404 カートリッジホルダ
410 メインタンク
410k、410c、410m、410y ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色用のメインタンク
411 インク収容部
413 インク排出口
414 収容容器ケース
420 機構部
434 吐出ヘッド
436 供給チューブ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0065】
【文献】特開2005-194500号公報
【文献】特開2012-72359号公報
【文献】特開2017-165961号公報