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特許7585773光導波路素子、光変調器、光変調モジュール、及び光送信装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】光導波路素子、光変調器、光変調モジュール、及び光送信装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/035 20060101AFI20241112BHJP
【FI】
G02F1/035
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020214027
(22)【出願日】2020-12-23
(65)【公開番号】P2022099941
(43)【公開日】2022-07-05
【審査請求日】2023-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 徳一
(72)【発明者】
【氏名】菅又 徹
【審査官】奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-194574(JP,A)
【文献】特開2020-166164(JP,A)
【文献】特開2016-126054(JP,A)
【文献】特開2005-037547(JP,A)
【文献】中国実用新案第206497266(CN,U)
【文献】特許第6933287(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00- 1/125
G02F 1/21- 7/00
G02B 6/12- 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光導波路が形成された基板と、
前記基板の上に形成された中間層と、
前記中間層の上に形成された信号電極およびグランド電極と、
を有する光導波路素子であって、
前記光導波路は、前記基板上に延在する凸部により構成され、
前記信号電極は、前記光導波路に沿って延在して前記光導波路を伝搬する光波を制御する作用部と、前記光導波路の上を交差する交差部と、を有し、
前記中間層は、
前記作用部の下部及び前記交差部の下部に形成され、
前記交差部における厚さが、前記作用部における厚さより厚く形成されており、
前記交差部における層数が前記作用部における層数よりも多く、前記交差部において樹脂から成る感光性永久膜の層を含む、
光導波路素子。
【請求項2】
前記中間層は、その厚さが、前記作用部から前記交差部へ向かって段階的に及び又は連続的に厚くなるように形成されている、
請求項1に記載の光導波路素子。
【請求項3】
前記中間層は、前記交差部における厚さが、前記光導波路を構成する凸部の高さよりも厚く形成されている、
請求項1または2に記載の光導波路素子。
【請求項4】
前記グランド電極は、前記信号電極との間の間隔が、前記作用部におけるよりも前記交差部において広く形成されている、
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の光導波路素子。
【請求項5】
前記グランド電極は、前記信号電極との間の間隔が、前記作用部におけるよりも前記交差部において広く形成されている、
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の光導波路素子。
【請求項6】
前記グランド電極は、前記信号電極との間の間隔が、前記作用部から前記交差部に向かって段階的に及び又は連続的に広くなるように形成されている、
請求項5に記載の光導波路素子。
【請求項7】
前記グランド電極は、前記交差部における前記信号電極との間の間隔が、前記光導波路を構成する凸部の幅の3倍よりも広く形成されている、
請求項5または6に記載の光導波路素子。
【請求項8】
光の変調を行う光変調素子である請求項1ないし7のいずれか一項に記載の光導波路素子と、
前記光導波路素子を収容する筐体と、
前記光導波路素子に光を入力する光ファイバと、
前記光導波路素子が出力する光を前記筐体の外部へ導く光ファイバと、
を備える光変調器。
【請求項9】
光の変調を行う光変調素子である請求項1ないし7のいずれか一項に記載の光導波路素子と、前記光導波路素子を駆動する駆動回路と、を備える光変調モジュール。
【請求項10】
請求項8に記載の光変調器または請求項9に記載の光変調モジュールと、
前記光導波路素子に変調動作を行わせるための電気信号を生成する電子回路と、
を備える光送信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路素子、光変調器、光変調モジュール、及び光送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高速/大容量光ファイバ通信システムにおいては、基板上に形成された光導波路と、光導波路を伝搬する光波を制御する制御電極と、で構成される光導波路素子としての光変調素子を組み込んだ光変調器が多く用いられている。中でも、電気光学効果を有するLiNbO(以下、LNともいう)を基板に用いた光変調素子は、光の損失が少なく且つ広帯域な光変調特性を実現し得ることから、高速/大容量光ファイバ通信システムに広く用いられている。
【0003】
特に、光ファイバ通信システムにおける変調方式は、近年の伝送容量の増大化の流れを受け、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)やDP-QPSK(Dual Polarization - Quadrature Phase Shift Keying)等、多値変調や、多値変調に偏波多重を取り入れた伝送フォーマットが主流となっており、基幹光伝送ネットワークにおいて用いられるほか、メトロネットワークにも導入されつつある。
【0004】
また、近年では、光変調器自身を小型化しつつ更なる低電圧駆動および高速変調を実現するため、基板中における信号電界と導波光との相互作用をより強めるべく薄膜化(又は薄板化)したLN基板(例えば、厚さ20μm以下)の表面に帯状の凸部を形成して構成されるリブ型光導波路またはリッジ型光導波路(以下、総称して凸状光導波路という)を用いた光変調器も実用化されつつある(例えば、特許文献1、2)。
【0005】
また、光変調素子そのものの小型化に加えて、電子回路と光変調素子とを一つの筐体に収容し、光変調モジュールとして集積化する等の取り組みも進められている。例えば、光変調素子と当該光変調素子を駆動する高周波ドライバアンプとを一つの筐体内に集積して収容し、光入出力部を当該筐体の一の面に並列配置することで、小型・集積化を図った光変調モジュールが提案されている。このような光変調モジュールに用いられる光変調素子では、当該光変調素子を構成する基板の一の辺に光導波路の光入力端と光出力端とが配されるように、光導波路は、基板上において光の伝搬方向が折り返されるように形成される(例えば、特許文献3)。以下、このような光伝搬方向の折返し部分を含む光導波路で構成される光変調素子を折返し型光変調素子という。
【0006】
ところで、QPSK変調を行う光変調器(QPSK光変調器)やDP-QPSK変調を行う光変調器(DP-QPSK光変調器)は、所謂ネスト型と呼ばれる入れ子構造になった複数のマッハツェンダ型光導波路を備え、そのそれぞれが、高周波信号が印加される信号電極を少なくとも一つ備える。基板上に形成される信号電極は、基板面内において当該信号電極を挟んで延在するグランド電極と共に、例えばコプレーナ伝送線路を構成するのが一般的である。この場合、コプレーナ伝送線路のインピーダンスを基板面内において一定に保つべく、信号電極とグランド電極とは、基板面内において一定の間隔を保つように形成される(例えば、特許文献3の図1参照)。また、基板面上に形成したバッファ層等の中間層の上に信号電極およびグランド電極を形成する場合には、上記と同様の理由から、中間層は基板面内において一様な厚さで形成されるのが一般的である。
【0007】
また、これらの信号電極は、基板外部の電気回路との接続のため、LN基板の外周近傍まで延在するように形成される。このため、基板上には、複数の光導波路と複数の信号電極とが複雑に交差し、光導波路の上を信号電極が横断する複数の交差部が形成される。
【0008】
このような交差部では、光導波路の上を交差する信号電極から当該信号電極の下部にある光導波路の部分に電界が印加されることとなり、当該光導波路を伝搬する光の位相を僅かながら変化させて当該位相を変調することとなる。このような交差部における光の位相変化ないし位相変調は、信号電極によって光導波路内に発生する正常な変調のための光位相変化に対する雑音として働き、光変調動作を擾乱し得る。以下、このような交差部において発生する雑音としての位相変調を、擾乱変調と称する。
【0009】
光変調器における光変調動作に対する擾乱変調の雑音効果の程度は、交差部において信号電極から光導波路に加わる電界が強いほど大きく、また、交差部の数に比例した加算効果によっても(例えば、信号電極に沿った交差部の長さ(交差長)の総和に応じて)大きくなる。
【0010】
例えば、従来の、LN基板の平らな表面にTi等の金属を拡散して形成された光導波路(いわゆる、平面光導波路)と、そのLN基板の基板平面に形成される信号電極と、が交差する構成においては、信号電極は光導波路の上面(基板面)にのみ形成されるのに対し、上述のような凸状光導波路と信号電極とが交差する構成では、信号電極は凸状光導波路の凸部の上面及び2つの側面にも形成され得る。このため、交差部において信号電極から光導波路に加わる電界は、平面導波路の場合に比べて凸状光導波路の場合に強くなり、したがって、擾乱変調による雑音は、平面光導波路の場合に比べて凸状光導波路においてより大きく発生し得る。
【0011】
また、上述したような折返し型光変調素子では、光の折返し部を含まない光導波路で構成される非折返し型の光変調素子に比べて、電極と光導波路との交差部はより多く存在することとなり(例えば、特許文献3の図1参照)、擾乱変調による雑音もより大きなものとなり得る。例えば、上述したDP-QPSK変調素子の場合、非折返し型の光変調素子では、一つの電極における交差部の数は2ないし4個程度であって交差長の総和は数十ミクロン(例えば20μmから40μmの範囲)であるのに対し、折返し型光変調素子では、一つの電極における交差部の数は十数か所に及ぶ場合があり、交差長の総和は数百ミクロンから数ミリとなり得る。
【0012】
したがって、特に凸状光導波路を用いて構成される折返し型光変調素子においては、交差部で発生する擾乱変調による雑音は、正常な光変調動作に対し無視し得ないほど大きなものとなり得る。
【0013】
また、上記のような交差部は、LN基板に限らずInP等の半導体を基板に用いた光導波路素子や、Siを基板に用いるシリコン・フォトニクス導波路デバイスなどの、種々の光導波路素子でも同様に形成され得る。また、そのような光導波路素子は、マッハツェンダ型光導波路を用いる光変調器だけでなく、方向性結合器やY分岐を構成する光導波路を用いた光変調器、あるいは光スイッチ等の種々の光導波路素子であり得る。
【0014】
そして、光導波路素子の更なる小型化、多チャンネル化、及び又は高集積化に伴って光導波路パターン及び電極パターンが複雑化すれば、基板上における交差部の数は増々増加し、擾乱変調による雑音は、無視し得ない要因となって光導波路素子の性能を制限することとなり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】特開2007-264548号公報
【文献】国際公開第2018/1031916号明細書
【文献】特開2019-152732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記背景より、凸状光導波路と電気信号を伝搬する信号電極との複数の交差部を有する光導波路素子において、交差部における擾乱変調の発生を効果的に抑制して、良好な動作特性を実現することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一の態様は、光導波路が形成された基板と、前記基板の上に形成された中間層と、前記中間層の上に形成された信号電極およびグランド電極と、を有する光導波路素子であって、前記光導波路は、前記基板上に延在する凸部により構成され、前記信号電極は、前記光導波路に沿って延在して前記光導波路を伝搬する光波を制御する作用部と、前記光導波路の上を交差する交差部と、を有し、前記中間層は、前記作用部の下部及び前記交差部の下部に形成され、前記交差部における厚さが、前記作用部における厚さより厚く形成されており、前記交差部における層数が前記作用部における層数よりも多く、前記交差部において樹脂から成る感光性永久膜の層を含む。
本発明の他の態様によると、前記中間層は、その厚さが、前記作用部から前記交差部へ向かって段階的に及び又は連続的に厚くなるように形成されている。
本発明の他の態様によると、前記中間層は、前記交差部における厚さが、前記光導波路を構成する凸部の高さよりも厚く形成されている。
本発明の他の態様によると、前記グランド電極は、前記信号電極との間の間隔が、前記作用部におけるよりも前記交差部において広く形成されている。
本発明の他の態様によると、前記グランド電極は、前記信号電極との間の間隔が、前記作用部におけるよりも前記交差部において広く形成されている。
本発明の他の態様によると、前記グランド電極は、前記信号電極との間の間隔が、前記作用部から前記交差部に向かって段階的に及び又は連続的に広くなるように形成されている。
本発明の他の態様によると、前記グランド電極は、前記交差部における前記信号電極との間の間隔が、前記光導波路を構成する凸部の幅の3倍よりも広く形成されている。
本発明の他の態様は、光の変調を行う光変調素子である上記いずれかの光導波路素子と、前記光導波路素子を収容する筐体と、前記光導波路素子に光を入力する光ファイバと、前記光導波路素子が出力する光を前記筐体の外部へ導く光ファイバと、を備える光変調器である。
本発明の他の態様は、光の変調を行う光変調素子である上記いずれかの光導波路素子と、前記光導波路素子を駆動する駆動回路と、を備える光変調モジュールである。
本発明の更に他の態様は、前記光変調器または前記光変調モジュールと、前記光導波路素子に変調動作を行わせるための電気信号を生成する電子回路と、を備える光送信装置である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、凸状光導波路と電気信号を伝搬する電極との複数の交差部を有する光導波路素子において、交差部における擾乱変調の発生を効果的に抑制して、良好な動作特性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1の実施形態に係る光変調器の構成を示す図である。
図2図1に示す光変調器に用いられる光変調素子の構成を示す図である。
図3図2に示す光変調素子の光変調部Aの部分詳細図である。
図4図2に示す光折り返し部Bの部分詳細図である。
図5図3に示す光変調部AのV-V断面矢視図である。
図6図4に示す光折り返し部BのVI-VI断面矢視図である。
図7図4に示す光折り返し部BのVII-VII断面矢視図である。
図8図2に示す光変調素子の変形例に係る、図5に示すV-V断面矢視図に相当する図である。
図9図2に示す光変調素子の変形例に係る、図6に示すVI-VI断面矢視図に相当する図である。
図10図2に示す光変調素子の変形例に係る、図7に示すVII-VII断面矢視図に相当する図である。
図11】本発明の第2の実施形態に係る光変調器の構成を示す図である。
図12図11に示す光変調器に用いられる光変調素子の構成を示す図である。
図13図12に示す光変調素子の光変調部Cの部分詳細図である。
図14図12に示す光変調素子の光折り返し部Dの部分詳細図である。
図15図13に示す光変調部CのXV-XV断面矢視図である。
図16図14に示す光折り返し部DのXVIー-XVI断面矢視図である。
図17図12に示す光変調素子から、一の信号電極と、これに隣接するグランド電極と、を取り出して示した図である。
図18】本発明の第3の実施形態に係る光変調モジュールの構成を示す図である。
図19】本発明の第4の実施形態に係る光送信装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
[1.第1の実施形態]
まず、第1の実施形態について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る光導波路素子である光変調素子を用いた光変調器100の構成を示す図である。光変調器100は、筐体102と、当該筐体102内に収容された光変調素子104と、中継基板106と、を有する。光変調素子104は、例えば、DP-QPSK変調器構成である。筐体102は、最終的にはその開口部に板体であるカバー(不図示)が固定されて、その内部が気密封止される。
【0021】
光変調器100は、また、光変調素子104の変調に用いる高周波電気信号を入力するための信号ピン108と、光変調素子104の動作点の調整等に用いる電気信号を入力するための信号ピン110と、を有する。
【0022】
さらに、光変調器100は、筐体102内に光を入力するための入力光ファイバ114と、光変調素子104により変調された光を筐体102の外部へ導く出力光ファイバ120と、を筐体102の同一面に有する。
【0023】
ここで、入力光ファイバ114及び出力光ファイバ120は、固定部材であるサポート122及び124を介して筐体102にそれぞれ固定されている。入力光ファイバ114から入力された光は、サポート122内に配されたレンズ130によりコリメートされた後、レンズ134を介して光変調素子104へ入力される。ただし、これは一例であって、光変調素子104への光の入力は、従来技術に従い、例えば、入力光ファイバ114を、サポート122を介して筐体102内に導入し、当該導入した入力光ファイバ114の端面を光変調素子104の基板220(後述)の端面に接続することで行うものとすることもできる。
【0024】
光変調器100は、また、光変調素子104から出力される2つの変調された光を偏波合成する光学ユニット116を有する。光学ユニット116から出力される偏波合成後の光は、サポート124内に配されたレンズ118により集光されて出力光ファイバ120へ結合される。
【0025】
中継基板106は、当該中継基板106に形成された導体パターン(不図示)により、信号ピン108から入力される高周波電気信号および信号ピン110から入力される動作点調整用等の電気信号を、光変調素子104へ中継する。中継基板106上の上記導体パターンは、例えばワイヤボンディング等により、光変調素子104の電極の一端を構成するパッド(後述)にそれぞれ接続される。また、光変調器100は、所定のインピーダンスを有する終端器112を筐体102内に備える。
【0026】
図2は、図1に示す光変調器100の筐体102内に収容される光変調素子104の、構成の一例を示す図である。また、図3および図4は、それぞれ、図2に示す光変調素子104の光変調部A及び光折り返し部Bの部分詳細図である。
【0027】
光変調素子104は、基板220上に形成された光導波路230(図示太線点線の全体)で構成され、例えば200GのDP-QPSK変調を行う。基板220は、例えば、20μm以下(例えば2μm)の厚さに加工され薄膜化された、電気光学効果を有するXカットのLN基板である。また、光導波路230は、薄膜化された基板220の表面に形成された、帯状に延在する凸部で構成された凸状光導波路(例えば、リブ型光導波路又はリッジ型光導波路)である。ここで、LN基板は、応力が加わると光弾性効果により屈折率が局所的に変化し得るため、基板全体の機械強度を補強すべく、一般的にはSi(シリコン)基板やガラス基板、LN等の支持板に接着される。本実施形態では、後述するように、基板220は、支持板500に接着されている。
【0028】
基板220は、例えば矩形であり、図示上下方向に延在して対向する図示左右の2つの辺280a、280b、および図示左右方向に延在して対向する図示上下の辺280c、280dを有する。
【0029】
光導波路230は、基板220の図示左方の辺280aの図示上側において入力光ファイバ114からの入力光(図示右方を向く矢印)を受ける入力導波路232と、入力された光を同じ光量を有する2つの光に分岐する分岐導波路234と、を含む。また、光導波路230は、分岐導波路234により分岐されたそれぞれの光を変調する2つの変調部である、いわゆるネスト型マッハツェンダ型光導波路240a、240bを含む。
【0030】
ネスト型マッハツェンダ型光導波路240a、240bは、それぞれ、一対の並行導波路を成す2つの導波路部分に設けられたそれぞれ2つのマッハツェンダ型光導波路244a、244b、および244c、244dを含む。図3に示すように、マッハツェンダ型光導波路244a及び244bは、それぞれ、並行導波路246a-1と246a-2、及び並行導波路246b-1と246b-2、を有する。また、マッハツェンダ型光導波路244c及び244dは、それぞれ、並行導波路246c-1と246c-2、及び並行導波路246d-1と246d-2、を有する。
【0031】
以下、ネスト型マッハツェンダ型光導波路240aおよび240bを総称してネスト型マッハツェンダ型光導波路240ともいい、マッハツェンダ型光導波路244a、244b、244c、および244dを総称してマッハツェンダ型光導波路244ともいうものとする。また、並行導波路246a-1、246a-2、246b-1、246b-2、246c-1、246c-2、246d-1、および246d-2を総称して、並行導波路246ともいうものとする。
【0032】
図2に示すように、ネスト型マッハツェンダ型光導波路240は、光変調部Aと光折り返し部Bとを含む(それぞれ、図示二点鎖線の矩形で示された部分)。ネスト型マッハツェンダ型光導波路240は、分岐導波路234により2つに分岐された入力光のそれぞれについて、光折り返し部Bにおいて光の伝搬方向を180度折り返したのち、光変調部AにおいてQPSK変調し、変調後の光(出力)をそれぞれの出力導波路248a、248bから図示左方へ出力する。これら2つの出力光は、その後、基板220外に配された光学ユニット116により偏波合成されて一つの光ビームにまとめられる。
【0033】
基板220上には、後述する中間層502が形成されており(図5)、中間層502上には、ネスト型マッハツェンダ型光導波路240a、240bを構成する合計4つのマッハツェンダ型光導波路244a、244b、244c、244dのそれぞれに変調動作を行わせるための、高周波電気信号が入力される4つの信号電極250a、250b、250c、250dが設けられている(図2)。
【0034】
具体的には、図3に示す光変調部Aにおいて、信号電極250aは、マッハツェンダ型光導波路244aを構成する並行導波路246a-1と246a-2との間にあって、これらの並行導波路に沿って延在する作用部300a(図示斜線ハッチング部分)を有し、マッハツェンダ型光導波路244aに変調動作を行わせる。同様に、信号電極250b、250c、250dは、それぞれ、光変調部Aにおいて、マッハツェンダ型光導波路244b、244c、244dを構成するそれぞれ2つの並行導波路246との間にあってこれらの並行導波路に沿って延在する作用部300b、300c、300dを有し、マッハツェンダ型光導波路244b、244c、244dに変調動作を行わせる。以下、作用部300a、300b、300c、300dを総称して、作用部300ともいうものとする。
【0035】
図2において、信号電極250a、250b、250c、250dは、それぞれ、基板220の図示右方へ延在し、光折り返し部Bにおいて8本の並行導波路246の上を交差したのち、辺280bまで延在してパッド252a、252b、252c、252dに接続されている(図2図4)。図4に示すように、信号電極250a、250b、250c、250dは、光折り返し部Bにおいて、それぞれ8本の並行導波路246の上を交差して、それぞれ8個の交差部400(図示点線楕円で示す部分)を形成する。ここで、図4においては、冗長な表現を避けて理解を容易にするため、信号電極250と並行導波路246a-1および246a-2との交差部についてのみ符号400を付しているが、図示において同様の点線楕円で示す信号電極250と他の並行導波路246との交差部も、交差部400であるものと理解されたい。したがって、図4においては、合計32個の交差部400が存在している。
【0036】
すなわち、信号電極250は、並行導波路246に沿って延在して当該並行導波路246を伝搬する光波を制御する作用部300と、並行導波路246の上を交差する交差部400と、を有する。
【0037】
図2を参照し、信号電極250a、250b、250c、250dの図示左方は、図示下方へ折れ曲がって基板220の辺280dまで延在し、パッド254a、254b、254c、254dに接続されている。
【0038】
信号電極250a、250b、250c、250dは、従来技術に従い、基板220の面上においてこれら信号電極250a、250b、250c、250dのそれぞれを挟むように形成されたグランド電極270a、270b、270c、270d、270eと共に、例えば、所定のインピーダンスを有するコプレーナ伝送線路を構成している。以下、グランド電極270a、270b、270c、270d、270eを総称してグランド電極270ともいうものとする。
【0039】
図2の図示右側の辺280bに配されたパッド252a、252b、252c、252dは、ワイヤボンディング等により、中継基板106と接続される。また、図示下側の辺280dに配されたパッド254a、254b、254c、254dは、終端器112を構成する4つの終端抵抗(不図示)にそれぞれ接続される。これにより、信号ピン108から中継基板106を介してパッド252a、252b、252c、252dに入力される高周波電気信号は、進行波となって信号電極250a、250b、250c、250dを伝搬し、作用部300a、300b、300c、300dにおいてマッハツェンダ型光導波路244a、244b、244c、244dを伝搬する光波をそれぞれ変調する。
【0040】
ここで、信号電極250が基板220内に形成する電界と、マッハツェンダ型光導波路244を伝搬する導波光と、の相互作用をより強めて高速変調動作をより低電圧で行い得るように、基板220は、20μm以下の厚さ、好適には10μm以下の厚さに形成される。本実施形態では、例えば、基板220の厚さは1.2μm、光導波路230を構成する凸部の高さは0.8μmである。なお、基板220は、後述するように、その裏面(図2に示す面に対向する面)が、ガラス等の支持板500に接着されている(図5参照)。
【0041】
光変調素子104には、また、基板220上に形成された中間層502の上に、いわゆるDCドリフトによるバイアス点の変動を補償して動作点を調整するためのバイアス電極262a、262b、262cが設けられている。バイアス電極262aは、ネスト型マッハツェンダ型光導波路240a、240bのバイアス点変動の補償に用いられる。また、バイアス電極262bおよび262cは、それぞれ、マッハツェンダ型光導波路244a、244b、および244c、244dのバイアス点変動の補償に用いられる。
【0042】
これらのバイアス電極262a、262b、262cは、それぞれ、基板220の図示上側の辺280cまで延在し、中継基板106を介して信号ピン110のいずれかと接続される。対応する信号ピン110は、筐体102の外部に設けられるバイアス制御回路と接続される。これにより、当該バイアス制御回路によりバイアス電極262a、262b、262cが駆動されて、対応する各マッハツェンダ型光導波路に対しバイアス点変動を補償するように動作点が調整される。
【0043】
バイアス電極262は、直流ないし低周波の電気信号が印加される電極であり、例えば、基板220の厚さが20μmの場合、0.3μm以上、5μm以下の範囲の厚さで形成される。これに対し、信号電極250a、250b、250c、250dは、印加される高周波電気信号の導体損失を低減するべく、例えば20μm以上、40μm以下の範囲で形成される。尚、信号電極250a等の厚さは、インピーダンスやマイクロ波実効屈折率を所望の値に設定するため基板220の厚さに応じて決定され、基板220の厚さが厚い場合にはより厚く、基板220の厚さが薄い場合にはより薄く決定され得る。
【0044】
上記のように構成される光変調素子104では、信号電極250のそれぞれは、並行導波路246上を交差する8つの交差部400を含む。そして、これらの交差部400のそれぞれにおいて、上述した擾乱変調が発生し、光変調素子104としての変調動作を劣化させ得る。このため、光変調素子104では、特に、基板220上に設けられる中間層502が、作用部300と交差部400との間において互いに異なる厚さで形成されており、具体的には、交差部400における厚さが、作用部300における厚さより厚く形成されている。
【0045】
作用部300における断面構造は、作用部300a、300b、300c、300dにおいて互いに同じであるので、ここでは、作用部300cを例にとり、作用部300の断面構造について説明する。図5は、図3に示す光変調部AのV-V断面矢視図であり、作用部300cの断面構造を示す図である。
【0046】
基板220は、補強のためガラス等の支持板500に接着固定されている。基板220上には、凸状光導波路であるマッハツェンダ型光導波路244cの並行導波路246c-1および246c-2を構成する凸部504c-1、504c-2が形成されている。ここで、図5に示す破線円形は、並行導波路246c-1および246c-2を伝搬する光波のフィールド径を模式的に示している。
【0047】
基板220上には中間層502が形成され、その上に信号電極250cおよびグランド電極270c、270dが形成されている。中間層502は、例えばSiO(二酸化ケイ素)であり、作用部300cにおいては厚さt1を有する。信号電極250cとグランド電極270c及び270dとの間隔W1は、従来技術に従い、これらが構成するコプレーナ伝送線路に求められるインピーダンス、および並行導波路246c-1、246c-2を構成する凸部504c-1、504c-2の幅aを含む、種々の設計条件から定められる。
【0048】
図6は、図4に示す光折り返し部Bにおける、信号電極250cと並行導波路246a-1及び246a-2との2つの交差部400の部分の、信号電極250cに沿ったVI-VI断面矢視図である。また、図7は、図4に示す光折り返し部Bにおける、信号電極250cと並行導波路246a-1との交差部400の部分の、並行導波路246a-1に沿ったVII-VII断面矢視図である。ここで、光折り返し部Bにおける他の交差部400の断面構造も、図6及び図7に示す断面構造と同じであるものと理解されたい。
【0049】
図6において、基板220上には、凸状光導波路であるマッハツェンダ型光導波路244aの並行導波路246a-1および246a-2を構成する凸部504a-1、504a-2が形成されている。ここで、図6に示す破線円形は、図5と同様に、並行導波路246a-1および246a-2を伝搬する光波のフィールド径を模式的に示している。
【0050】
図6及び図7に示すこれらの交差部400では、図4に示す作用部300cと同様に、基板220上に中間層502が形成され、その上に信号電極250cおよびグランド電極270c、270dが形成されている。ただし、図4に示す作用部300cの構成とは異なり、図6及び図7に示す交差部400では、中間層502は、作用部300cにおける厚さt1より厚い厚さt2(>t1)で形成されている。
【0051】
上記構成により、交差部400において信号電極250から並行導波路246に印加される電界は、作用部300において信号電極250から並行導波路246に印加される電界に比べて低減されるので、個々の交差部400において生じる擾乱変調の程度ないし強度が、作用部300における正常な光変調の強度に対して効果的に低減される。そして、個々の交差部400における擾乱変調が低減される結果、それぞれの並行導波路246にそって形成される複数の交差部400からの擾乱変調の加算効果も低減されることとなり、光変調素子104全体として、良好な動作特性を実現することができる。
【0052】
ここで、交差部400において並行導波路246に発生する電界強度を効果的に低減するため、電界効率を高めるために形成した凸部の高さを実効的に半減若しくは相殺するよう、例えば交差部400における中間層502の厚さt2は、作用部300における並行導波路246の凸部(凸部504c-1等)の高さbの1/2倍より大きいことが望ましく、高さbより厚くするとより好ましい。
【0053】
なお、中間層502の厚さが作用部300と交差部400とにおいてそれぞれt1及びt2(>t1)となるように、中間層502は、例えば、基板220上において光変調部Aが形成された部分と光折り返し部Bが形成された部分との間の任意の位置、例えば図2に示すライン282の位置を境に、図示左側において厚さt1、図示右側において厚さt2となるように形成され得る。
【0054】
ただし、基板220上の面内における中間層502の厚みの変化の態様は、上記には限られず、作用部300及び交差部400においてその厚さがそれぞれt1及びt2で形成される限りにおいて、任意の態様であるものとすることができる。中間層502の厚さは、その上に設けられる信号電極250とグランド電極270とが構成するコプレーナ伝送線路のインピーダンスに影響することから、中間層502は、当該インピーダンスが基板220上の面内の位置に依存して急峻に変化しないように、その厚さがt1からt2へ段階的に又は連続的に変化するよう形成されることが好ましい。具体的には、例えば、図2において光変調部Aと光折り返し部Bとの間の任意の位置に設けられた2つのライン282および284で挟まれた領域を、中間層502の厚さを変化させる遷移領域として用いて、当該領域において、中間層502を、図示左方から図示右方へ向かって厚さがt1からt2へ段階的に又は連続的に増加するよう形成するものとすることができる。
【0055】
ここで、上述した第1の実施形態では、中間層502は単一の層で形成されるものとしたが、中間層502の構成はこれには限られない。中間層502は、複数の層により構成されていてもよい。また、例えば、中間層502は、交差部400において、作用部300における層数よりも多くの層で構成されていてもよい。
【0056】
図8図9、及び図10は、第1の実施形態に係る光変調素子104において用いることのできる、中間層502の変形例である中間層502-1の構成を示す図であり、それぞれ、図2に示す光変調素子104についての図5(V-V断面矢視図)、図6(VI-VI断面矢視図)および図7(VII-VII断面矢視図)に相当する。なお、図8図9、および図10において、図5図6、及び図7に示す構成要素と同じ構成要素については、図5図6、及び図7における符号と同一の符号を用いて示し、上述した図5図6、及び図7についての説明を援用する。
【0057】
中間層502-1は、作用部300においては単層(層数1)で形成され、交差部400においては、作用部300における層数1よりも多い2つの層で構成されている。具体的には、中間層502-1は、図8に示す作用部300cにおいては、図5に示す中間層502と同様に、厚さt1を有する1つの層で形成されている。これに対し、図9および図10に示す交差部400においては、図6および図7に示す中間層502とは異なり、中間層502-1は、第1層900aと第2層900bと、の2つの層で構成されている。
【0058】
より具体的には、第1層900aは、図8に示す作用部300cにおける中間層502-1の層が交差部400の部分にまで延在したものである。その意味では、中間層502-1は、交差部400では第1層900aと第2層900bの2つの層で構成され、作用部300cにおいては第1層900aのみで構成されている、ということもできる。
【0059】
このように、中間層502-1を交差部400において第1層900aと第2層900bとの2層で構成することにより、例えば、第1層900aを無機材料で構成して絶縁性や誘電率等の電気的特性の要求条件を満たしつつ、第2層900bを厚膜形成に適した材料で構成して交差部400における中間層502-1を容易に厚く形成することができる。
【0060】
中間層502-1の構成としては、例えば、第1層900aをSiOにより構成し、第2層900bを樹脂で構成するものとすることができる。第2層900bを構成する樹脂は、例えば、フォトレジストであって、カップリング剤(架橋剤)を含み、熱により架橋反応が進行して硬化する、いわゆる感光性永久膜であるものとすることができる。
【0061】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態について説明する。図11は、本発明の第2の実施形態に係る光変調器100-1の構成を示す図である。また、図12は、図11に示す光変調器100が備える光変調素子104-1の構成を示す図である。図13および図14は、それぞれ、図12に示す光変調素子104-1の光変調部Cおよび光折り返し部Dの部分詳細図である。また、図15は、図13に示す光変調部CのXV-XV断面矢視図であり、図16は、図14に示す光折り返し部DのXVI-XVI断面矢視図である。
【0062】
なお、図11図12図13図14図15図16においては、それぞれ、図1図2図3図4図5図7に示す第1の実施形態に係る光変調器100と同じ構成要素については、図1図2図3図4図5図7おける符号と同じ符号を用いるものとして、上述したこれらの図についての説明を援用する。
【0063】
光変調器100-1は、図1に示す光変調器100と同様の構成を有するが、光導波路素子として光変調素子104に代えて光変調素子104-1を備える点が異なる。光変調素子104-1は、図2に示す第1の実施形態に係る光変調素子104と同様の構成を有し、ネスト型マッハツェンダ型光導波路240は、光変調部Cと光折り返し部Dとを含む。図12に示すネスト型マッハツェンダ型光導波路240の光変調部Cおよび光折り返し部Dは、図2に示すネスト型マッハツェンダ型光導波路240の光変調部Aおよび光折り返し部Bと同様であるが、並行導波路246の周辺の構成(具体的には、中間層、信号電極、及びグランド電極の構成)が光変調部Aおよび光折り返し部Bと異なっている。
【0064】
光変調素子104-1は、図2に示す第1の実施形態に係る光変調素子104と同様の構成を有するが、中間層502に代えて中間層502-2を備える点、および、グランド電極270a、270b、270c、270d、270eに代えてグランド電極270-1a、270-1b、270-1c、270-1d、270-1eを備える点が異なる。以下、グランド電極270-1a、270-1b、270-1c、270-1d、270-1eを総称してグランド電極270-1ともいうものとする。
【0065】
中間層502-2は、中間層502と同様の構成を有するが、その厚さが、作用部300および交差部400において同じ厚さt1となっている(図15図16)。
【0066】
グランド電極270-1は、図2に示す光変調素子104のグランド電極270と同様の構成を有するが、交差部400における信号電極250とグランド電極270-1との間の距離が、作用部300における信号電極250とグランド電極270-1との間の距離W1(図15)より大きいな値W2(>W1)となっている点が異なる(図16)。ここで、図15には、作用部300cにおける断面構成が示されているが、他の作用部300a、300b、300dも、図15と同様の断面構成を有するものと理解されたい。また、図16には、並行導波路246a-1と信号電極250cとの交差部400の断面構成が示されているが、他の並行導波路246と信号電極250との交差部400も、図16と同様の断面構成を有するものと理解されたい。
【0067】
上記の構成を有する光変調素子104-1は、並行導波路246と信号電極250との交差部400において、信号電極250とグランド電極270-1との間の距離W2が、作用部300における信号電極250とグランド電極270-1との間の距離W1よりも広く設定されているので、交差部400において信号電極250から並行導波路246に印加される電界は、作用部300において信号電極250から並行導波路246に印加される電界に比べて低減される。このため、個々の交差部400において生じる擾乱変調の程度ないし強度は、信号電極250の全体に亘ってグランド電極270との間隔が同じ間隔で設けられる従来の構成に比べて低減されることとなり、光変調素子104-1全体としての良好な動作特性が実現され得る。
【0068】
なお、交差部400において並行導波路246に発生する電界強度を効果的に低減するため、交差部400における信号電極250とグランド電極270-1との間隔W2は、作用部300における並行導波路246の凸部(例えば凸部504c-1等)の幅aの1.5倍以上であることが望ましく、幅aの3倍以上であればより好適である。
【0069】
ここで、信号電極250とグランド電極270との間の間隔は、これらが構成するコプレーナ伝送線路のインピーダンスに影響することから、当該間隔は、上記インピーダンスが基板220上の面内の位置に依存して急峻に変化しないように、段階的に及び又は連続的に変化する態様で設けられることが好ましい。
【0070】
本実施形態では、グランド電極270-1は、信号電極250とグランド電極270-1との間の間隔が交差部400から作用部300へ向かってW2からW1へ段階的に及び又は連続的に減少するように形成されている。具体的には、本実施形態では、グランド電極270-1は、信号電極250に沿って4つの部分に分けて、信号電極250との間隔が段階的に又は連続的に変化するように異なるように形成されている。
【0071】
一例として、図17は、図12に示す光変調素子104-1の、信号電極250a及びグランド電極270-1a、270-1bの部分を取り出して示した図である。他の信号電極250b、250c、250dと、対応するグランド電極270-1と、の間隔も、図17に示す信号電極250aとグランド電極270-1a、270-1bとの間隔と同様の態様で設けられているものと理解されたい。
【0072】
図17において、グランド電極270-1a、270-1bは、4つの区間S1,S2、S3,S4に分けて、それぞれの区間において、信号電極250aとの間隔が、W2からW1に向かって段階的に又は連続的に狭くなるように形成されている。より具体的には、交差部400を含む区間S1ではW2に設定され、作用部300を含む区間S4ではW1に設定されている。また、区間S1とS4との間には、区間S1からS4に向かって順に区間S2及びS3が設けられている。間隔W2を有する区間S1に隣接する区間S2では、上記間隔はW2より小さくW1より大きな中間的な間隔W3に設定されている。また、区間S2と区間S4との間にある区間S3では、上記間隔は、区間S2からS1に向かってW3からW1へ連続的に変化するように、当該間隔がテーパ状に設けられている。
【0073】
なお、図12及び図17では、グランド電極270-1は、区間S1と区間S2との境界において、信号電極250と対向するエッジが平面視直角の角部を有するように描かれているが、これらの角部は、上述したインピーダンスがこれらの位置において急峻に変化しないように、例えば曲線的に設けられていることが好ましい。
【0074】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。本実施形態は、第1の実施形態に係る光変調器100が備える光変調素子104を用いた光変調モジュール1000である。図18は、本実施形態に係る光変調モジュール1000の構成を示す図である。図18において、図1に示す第1の実施形態に係る光変調器100と同一の構成要素については、図1に示す符号と同じ符号を用いて示すものとし、上述した図1についての説明を援用する。
【0075】
光変調モジュール1000は、図1に示す光変調器100と同様の構成を有するが、中継基板106に代えて、回路基板1006を備える点が、光変調器100と異なる。回路基板1006は、駆動回路1008を備える。駆動回路1008は、信号ピン108を介して外部から供給される例えば変調信号に基づいて、光変調素子104を駆動する高周波電気信号を生成し、当該生成した高周波電気信号を光変調素子104へ出力する。
【0076】
上記の構成を有する光変調モジュール1000は、上述した第1の実施形態に係る光変調器100と同様に、光変調素子104を備えるので、光変調器100と同様に、交差部400において発生する擾乱変調を低減して良好な変調動作を実現することができる。
【0077】
なお、本実施形態では、光変調モジュール1000は、一例として光変調素子104を備えるものとしたが、図8及び図9に示す変形例に係る光変調素子や、図12に示す第2の実施形態に係る光変調素子104-1を備えるものとしてもよい。
【0078】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。本実施形態は、第1の実施形態に係る光変調器100を搭載した光送信装置1100である。図19は、本実施形態に係る光送信装置1100の構成を示す図である。この光送信装置1100は、光変調器100と、光変調器100に光を入射する光源1104と、変調器駆動部1106と、変調信号生成部1108と、を有する。なお、光変調器100及び変調器駆動部1106に代えて、第2の実施形態に係る光変調器100-1又は第3の実施形態に係る光変調モジュール1000を用いることもできる。
【0079】
変調信号生成部1108は、光変調器100に変調動作を行わせるための電気信号を生成する電子回路であり、外部から与えられる送信データに基づき、光変調器100に当該変調データに従った光変調動作を行わせるための高周波信号である変調信号を生成して、変調器駆動部1106へ出力する。
【0080】
変調器駆動部1106は、変調信号生成部1108から入力される変調信号を増幅して、光変調器100が備える光変調素子104の4つの信号電極250a、250b、250c、250dを駆動するための4つの高周波電気信号を出力する。尚、上述したように、光変調器100および変調器駆動部1106に代えて、例えば変調器駆動部1106に相当する回路を含む駆動回路1008を筐体102の内部に備えた、光変調モジュール1000を用いることもできる。
【0081】
当該4つの高周波電気信号は、光変調器100の信号ピン108に入力されて、光変調素子104を駆動する。これにより、光源1104から出力された光は、光変調器100により、例えばDP-QPSK変調され、変調光となって光送信装置1100から出力される。
【0082】
特に、光送信装置1100では、上述した第1の実施形態に係る光変調器100と同様に、光変調素子104を備えた光変調器100、光変調素子104-1を備えた光変調器100-1、又は光変調モジュール1000を用いているので、良好な変調特性を実現して、良好な光伝送を行うことができる。
【0083】
なお、本発明は上記実施形態の構成およびその代替構成に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。
【0084】
例えば、上述した実施形態においては、中間層502、502-2、及び中間層502-1の第1層900aの素材としてSiO、中間層502-1の第2層900bとして感光性永久膜を用いるものとしたが、中間層502、502-1、502-2を構成する素材は、これらには限られない。中間層502、502-1、502-2には、それぞれ、光変調素子104および104-1の設計から定まる電気的特性及び又は機械的特性の要求条件を満たす限りにおいて、任意の材料を用いることができる。そのような材料には、例えば、窒化ケイ素等の無機物や、感光性永久膜以外の熱硬化性又は熱可塑性の樹脂が含まれ得る。
【0085】
また、第1の実施形態に係る光変調素子104の特徴構成と、第2の実施形態に係る光変調素子104-1とを組み合わせて用いて、一つの光変調素子を構成してもよい。例えば、光変調素子104-1において、中間層502-2を、中間層502または中間層502-1と同様に、交差部400における厚さが作用部に300おける厚さt1よりも厚くなるよう構成してもよい。これにより、交差部400における擾乱変調の発生を更に抑制して、さらに良好な光変調動作を実現することができる。
【0086】
また、上述した実施形態では、光導波路素子の一例として、LN(LiNbO3)である基板220により形成された光変調素子104を示したが、これには限られない、光導波路素子は、任意の材料(LNのほか、InP、Siなど)の基板で構成される、任意の機能(光変調のほか、光スイッチ、光方向性結合器など)を有する素子であるものとすることができる。そのような素子は、例えば、いわゆるシリコン・フォトニクス導波路デバイスであり得る。
【0087】
また、上述した実施形態では、基板220は、一例としてXカット(基板法線方向が結晶軸のX軸)のLN基板(いわゆるX板)であるものしたが、ZカットのLN基板を基板220として用いることもできる。
【0088】
以上説明したように、上述した第1の実施形態に係る光変調器100を構成する光導波路素子である光変調素子104は、光導波路230が形成された基板220と、基板220の上に形成された中間層502と、中間層502の上に形成された信号電極250およびグランド電極270と、を有する。光導波路230は、基板220上に延在する凸部(例えば、凸部504c-1、504c-2)により構成される。また、信号電極250は、光導波路230の一部である例えば並行導波路246に沿って延在して当該並行導波路246を伝搬する光波を制御する作用部300と、並行導波路246の上を交差する交差部400と、を有する。そして、中間層502は、交差部400における厚さt2が、作用部300における厚さt1より厚く形成されている。
【0089】
この構成によれば、凸状光導波路と信号電極との交差部における擾乱変調の発生を効果的に抑制して、良好な変調動作特性を実現することができる。
【0090】
また、中間層502は、その厚さが、作用部300から交差部400へ向かって段階的に及び又は連続的に厚くなるように形成されている。この構成によれば、例えばコプレーナ伝送線路を構成する信号電極250のインピーダンスが、基板220の平面内において急峻に変化してしまうのを防止することができる。
【0091】
また、中間層502、502-1は、一つ又は複数の層により形成され得る。中間層502-1は、交差部400における層数が、作用部300における層数よりも多く形成されている。具体的には、中間層502-1は、作用部300においては第1層900aのみの単層であり、交差部400においては第1層900a及び第2層900bの2層で構成されている。中間層502-1は、交差部400において、例えば樹脂から成る第2層900bを含む。この構成によれば、例えば第1層900aを無機材料で構成して絶縁性や誘電率等の電気的特性の要求条件を満たしつつ、第2層900bを厚膜形成に適した樹脂材料等で構成して、交差部400における中間層502-1を容易に厚く形成することができる。
【0092】
また、中間層502は、交差部400における厚さt2が、光導波路230を構成する凸部(例えば、凸部504c-1等)の高さbよりも厚く形成されている。この構成によれば、交差部400において光導波路230(具体的には、並行導波路246)に印加される電界の強度を十分に低減して、当該交差部400において発生する擾乱変調を効果的に低減することができる。
【0093】
また、グランド電極270-1は、信号電極250との間隔が、作用部300における間隔W1に対し交差部400においてより広い間隔W2で形成されている。この構成によれば、中間層502-2を基板220の全体において一様な厚さで容易に形成しつつ、交差部400における擾乱変調の発生を効果的に抑制して、良好な変調動作特性を実現することができる。
【0094】
また、グランド電極270-1は、信号電極250との間隔が、作用部300から交差部400に向かって、W1からW2へ段階的に及び又は連続的に広くなるように形成されている。この構成によれば、例えばコプレーナ伝送線路を構成する信号電極250のインピーダンスが、基板220の平面内において急峻に変化してしまうのを防止することができる。
【0095】
また、グランド電極270は、交差部400における信号電極250との間隔W2が、光導波路230を構成する凸部(例えば、並行導波路246を構成する凸部504c-1等)の幅aの3倍よりも広く形成されている。この構成によれば、交差部400において光導波路230(具体的には、並行導波路246)に印加される電界の強度を十分に低減して、当該交差部400において発生する擾乱変調を効果的に低減することができる。
【0096】
また、第1の実施形態に係る光変調器100は、光の変調を行う光導波路素子である上述の光変調素子104(上述した変形例を含む)および光変調素子104-1のいずれかの光変調素子と、その光導波路素子を収容する筐体102と、光導波路素子に光を入力する入力光ファイバ114と、光導波路素子が出力する光を筐体102の外部へ導く出力光ファイバ120と、を備える。
【0097】
また、第3の実施形態に係る光変調モジュール1000は、光導波路素子である光の変調を行う光変調素子104(上述した変形例を含む)および光変調素子104-1のいずれかの光変調素子と、当該光導波路素子を駆動する駆動回路1008と、を備える。
【0098】
また、第4の実施形態に係る光送信装置1100は、光変調器100または光変調モジュール1000と、光変調素子104に変調動作を行わせるための電気信号を生成する電子回路である変調信号生成部1108と、を備える。
【0099】
これらの構成によれば、良好な特性を有する光変調器100、光変調モジュール1000、又は光送信装置1100を実現することができる。
【符号の説明】
【0100】
100、100-1…光変調器、102…筐体、104、104-1…光変調素子、106…中継基板、108、110…信号ピン、112…終端器、114…入力光ファイバ、116…光学ユニット、118、130、134…レンズ、120…出力光ファイバ、122、124…サポート、220…基板、230…光導波路、232…入力導波路、234…分岐導波路、240a、240b…ネスト型マッハツェンダ型光導波路、244a、244b、244c、244d…マッハツェンダ型光導波路、246a-1、246a-2、246b-1、246b-2、246c-1、246c-2、246d-1、246d-2…並行導波路、248a、248b…出力導波路、250a、250b、250c、250d…信号電極、252a、252b、252c、252d、254a、254b、254c、254d…パッド、262a、262b、262c…バイアス電極、300,300b、300c、300d…作用部、400…交差部、500…支持板、502、502-1、502-2…中間層、504a-1、504a-2、504c-1、504c-2…凸部、900a…第1層、900b…第2層、1000…光変調モジュール、1006…回路基板、1008…駆動回路、1100…光送信装置、1104…光源、1106…変調器駆動部、1108…変調信号生成部。
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