(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】補助バーナーの位置測定器および位置調整方法
(51)【国際特許分類】
F27D 7/02 20060101AFI20241112BHJP
C22B 15/00 20060101ALI20241112BHJP
F27D 21/00 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
F27D7/02 A
C22B15/00 102
F27D21/00 A
(21)【出願番号】P 2021008002
(22)【出願日】2021-01-21
【審査請求日】2023-10-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001704
【氏名又は名称】弁理士法人山内特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本村 優貴
(72)【発明者】
【氏名】森 勝弘
【審査官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-347447(JP,A)
【文献】特開2017-129548(JP,A)
【文献】特開2014-84522(JP,A)
【文献】特開2002-241855(JP,A)
【文献】特開2003-160821(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
点検口を有するバーナーコーンの内部に配置される補助バーナーの位置測定器であって、
前記点検口から挿入され先端部が前記補助バーナーの側面に当てられる測定棒
と、
前記測定棒の前記先端部に設けられ、円柱状の前記補助バーナーが嵌まるU字形部と、を備え、
前記測定棒には前記先端部からの距離を示す目盛りが付されている
ことを特徴とする補助バーナーの位置測定器。
【請求項2】
点検口を有するバーナーコーンの内部に配置される補助バーナーの位置調整方法であって、
先端部からの距離を示す目盛りが付されている測定棒を備える位置測定器を前記点検口から挿入して前記先端部を前記補助バーナーの側面に当て、
前記位置測定器により前記補助バーナーと前記点検口との距離を測定し、
測定結果に基づいて前記補助バーナーを位置調整する
ことを特徴とする補助バーナーの位置調整方法。
【請求項3】
前記先端部を前記補助バーナーの中央に当て、前記測定棒が前記点検口の内面に設けられた基準溝または基準線に沿うように、前記補助バーナーを位置調整する
ことを特徴とする請求項
2記載の補助バーナーの位置調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補助バーナーの位置測定器および位置調整方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、自熔製錬炉の補助バーナーの位置を測定するための位置測定器、および補助バーナーを適切な位置に調整するための位置調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
銅硫化物、ニッケル硫化物などの非鉄金属硫化物を原料とする熔融製錬には自熔製錬炉が用いられる。自熔製錬炉には製錬原料と反応用ガスとを混合し炉内に供給する精鉱バーナーが備えられている。
【0003】
精鉱バーナーの中心には重油などを燃料とする補助バーナーが設けられている。製錬原料は補助バーナーの周囲を通過するため、製錬原料の衝突により補助バーナーの外面が摩耗する。また、製錬原料や重油の燃焼熱により補助バーナーが溶損することもある。そのため、補助バーナーは定期的に交換が行われる。
【0004】
補助バーナーを交換した際に、補助バーナーが偏って配置されると、炉壁の熱負荷に偏りが生じる。そうすると、炉内の輻射熱が均一でなくなり、精鉱の良好な燃焼ができなくなる。そのため、補助バーナーは交換のたびに位置調整が行なわれる。また、補助バーナーは操業中に上下の位置を調整することもある。補助バーナーの昇降に伴い水平方向に位置がずれることがあるため、上下の位置調整とともに、水平方向への位置調整も行なわれる。特許文献1には補助バーナーを位置調整するための調芯治具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、補助バーナーの位置は点検口から目視で確認する程度であり、正確に知ることはできなかった。そのため、補助バーナーを適切な位置に精度良く位置調整することは困難であった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑み、補助バーナーの位置を測定できる位置測定器、および補助バーナーを適切な位置に調整できる位置調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明の補助バーナーの位置測定器は、点検口を有するバーナーコーンの内部に配置される補助バーナーの位置測定器であって、前記点検口から挿入され先端部が前記補助バーナーの側面に当てられる測定棒と、前記測定棒の前記先端部に設けられ、円柱状の前記補助バーナーが嵌まるU字形部と、を備え、前記測定棒には前記先端部からの距離を示す目盛りが付されていることを特徴とする。
第2発明の補助バーナーの位置調整方法は、点検口を有するバーナーコーンの内部に配置される補助バーナーの位置調整方法であって、先端部からの距離を示す目盛りが付されている測定棒を備える位置測定器を前記点検口から挿入して前記先端部を前記補助バーナーの側面に当て、前記位置測定器により前記補助バーナーと前記点検口との距離を測定し、測定結果に基づいて前記補助バーナーを位置調整することを特徴とする。
第3発明の補助バーナーの位置調整方法は、第2態様において、前記先端部を前記補助バーナーの中央に当て、前記測定棒が前記点検口の内面に設けられた基準溝または基準線に沿うように、前記補助バーナーを位置調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
第1発明によれば、補助バーナーと点検口との距離から、バーナーコーン内における補助バーナーの位置を測定できる。また、U字形部に補助バーナーを嵌めることで、測定棒の先端部を補助バーナーの中央に当てることができる。
第2発明によれば、点検口を基準として奥行方向に補助バーナーを位置調整できる。
第3発明によれば、点検口を基準として横方向に補助バーナーを位置調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】第1実施形態に係る位置測定器の平面図である。
【
図5】補助バーナーの横方向の位置調整の説明図である。
【
図6】補助バーナーの奥行方向の位置調整の説明図である。
【
図7】第2実施形態に係る位置測定器の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
〔第1実施形態〕
(自熔製錬炉)
まず、自熔製錬炉FFの全体構成を説明する。
図1に示すように、自熔製錬炉FFはセトラー11を備えている。セトラー11の一端の上面には反応塔12が立設している。セトラー11の他端の上面には排煙道13が立設している。反応塔12の上端には精鉱バーナー20が設けられている。セトラー11の側壁には、カラミの高さにカラミ抜き口14が、カワの高さにカワ抜き口15が、離れて設けられている。
【0012】
自熔製錬炉FFを用いた銅製錬操業は以下のように行なわれる。
精鉱バーナー20から粉状の製錬原料と、反応用ガス(例えば酸素富化空気)とが反応塔12内に吹き込まれる。製錬原料には少なくとも硫化銅精鉱(以下、単に「銅精鉱」と称する。)とフラックスとが含まれている。フラックスは良質のカラミを製造するために添加されるものであり、例えば珪砂である。また、製錬原料には必要に応じて冷材などが含まれている。
【0013】
反応塔12内に吹きこまれた製錬原料は、補助バーナーの熱、反応塔12の炉壁内の輻射熱などにより昇温され、銅精鉱中の硫黄分および鉄分が燃焼することで熔融する。製錬原料が熔融した熔体はセトラー11内に溜められる。セトラー11内において熔体はカラミとカワとに比重分離する。
【0014】
熔体上部のカラミはカラミ抜き口14から排出され、電気錬かん炉で処理される。熔体下部のカワは、次工程の転炉の要求に応じて適量がカワ抜き口15から抜き出される。反応塔12およびセトラー11内で発生した製錬ガスは、排煙道13を通って自熔製錬炉FFから排出され、排熱ボイラーで熱が回収される。
【0015】
(精鉱バーナー)
つぎに、精鉱バーナー20の構成を説明する。
図2に示すように、精鉱バーナー20は反応用ガスが導入されるウインドボックス21を備えている。ウインドボックス21の下部は下方に絞られたコーン状に形成されており、その下端に円筒状のバーナーコーン22が接続されている。バーナーコーン22は反応塔12の上端に立設している。
【0016】
バーナーコーン22には複数の点検口23が設けられている。複数の点検口23はバーナーコーン22の周方向に異なる位置に配置されている。例えば、第1点検口23と第2点検口23とが、バーナーコーン22を挟んで対称な位置に配置されている。
【0017】
精鉱バーナー20は円柱状の補助バーナー24を備えている。補助バーナー24はウインドボックス21およびバーナーコーン22の内部を貫き、鉛直に配置されている。補助バーナー24の炎が噴射される下端はバーナーコーン22の下端付近に位置している。
【0018】
補助バーナー24の外周を囲むように精鉱シュート25が設けられている。精鉱シュート25は補助バーナー24と同軸の筒部材である。精鉱シュート25はウインドボックス21内に配置されており、ウインドボックス21内で昇降可能となっている。製錬原料は精鉱シュート25を通して自熔製錬炉FF内に供給される。
【0019】
精鉱シュート25の外周を囲むように風速調整器26が設けられている。風速調整器26はウインドボックス21内に配置されており、精鉱シュート25とは独立してウインドボックス21内で昇降可能となっている。風速調整器26を昇降させることで、ウインドボックス21からバーナーコーン22に供給される反応用ガスの流路幅を調整できる。これにより、反応用ガスの流速を調整できる。
【0020】
補助バーナー24は天井からワイヤー27で吊り下げられている。また、ウインドボックス21上には補助バーナー24の水平方向の位置を調整するための位置調整具28が設けられている。位置調整具28の構成は特に限定されない。例えば、位置調整具28はウインドボックス21に固定された台座と補助バーナー24の上端との距離を調整するターンバックルでよい。補助バーナー24を中心として2方向に2つのターンバックルを設ければ、補助バーナー24を水平面内の任意の位置に調整できる。
【0021】
(位置測定器)
つぎに、本実施形態の位置測定器AAを説明する。
位置測定器AAはバーナーコーン22内における補助バーナー24の水平方向の位置を測定するのに用いられる。
図3に示すように、位置測定器AAは測定棒31を有する。測定棒31は、点検口23からバーナーコーン22の内部に挿入した場合に、先端部が補助バーナー24まで届く長さを有する棒材であればよい(
図4参照)。以下、測定棒31の両端部のうち、バーナーコーン22の内部に挿入される方を「先端部」、その反対側を「基端部」と称する。
【0022】
測定棒31は真っ直ぐな棒材であればよく、角棒でもよいし、丸棒でもよい。測定棒31を鋼板などの板材で形成してもよい。測定棒31の素材は、特に限定されないが、精鉱による腐食を防止するため、ステンレス鋼が好ましい。
図3に示すように先端部を他の部分より細くしてもよいし、全体にわたって同じ太さとしてもよい。
【0023】
測定棒31の基端部寄りの一定区間には目盛り32が付されている。目盛り32は測定棒31の先端部からの距離を示すものである。目盛り32は先端部からの距離をcm、mm、inchなど所定の単位で示す複数の線から構成される。また、目盛り32は予め定められた基準となる距離を示す1つまたは複数の線または印から構成されてもよい。
【0024】
(位置調整方法)
つぎに、補助バーナー24の位置調整方法を説明する。
図4に示すように、バーナーコーン22の点検口23から測定棒31を挿入し、その先端部を補助バーナー24の側面に当てる。ここで、測定棒31を点検口23の内面のうち下面23aに沿わせる。また、
図5に示すように、測定棒31の先端部を補助バーナー24の中央(点検口23から見て補助バーナー24の幅方向の中央)に当てる。そうすると、測定棒31は平面視において補助バーナー24の外周面に対して法線方向に配置される。
【0025】
点検口23の下面23aには予め基準溝23bが形成されている。基準溝23bは適切な位置(例えば、バーナーコーン22の中心)に配置された補助バーナー24の中央に向かってのびる溝である。また、基準溝23bの幅は測定棒31の幅よりも若干広く、測定棒31が嵌まる形状となっている。なお、測定棒31が凸面または稜線を有する場合には、基準溝23bは凸面または稜線が嵌まる形状であればよく、測定棒31の幅より狭くてもよい。
【0026】
図5において実線で示すように、補助バーナー24が適切な位置からずれていると、測定棒31は基準溝23bに対して角度を有して配置される。この場合、測定棒31が基準溝23bに沿うように、位置調整具28を操作して補助バーナー24を位置調整する。これにより、点検口23を基準として横方向(
図5における上下方向)に補助バーナー24を位置調整できる。
【0027】
なお、点検口23の下面23aには、基準溝23bの代わりに基準線を設けてもよい。この場合、測定棒31が基準線に沿うように補助バーナー24を位置調整すれば、補助バーナー24を横方向に適切な位置に配置できる。
【0028】
つぎに、
図6に示すように、点検口23から測定棒31を挿入し、その先端部を補助バーナー24の側面に当てる。なお、補助バーナー24の横方向の位置調整を行なった後はこの状態になっている。そして、例えば、点検口23の開口部の縁を基準として目盛り32を読み取り、補助バーナー24の側面と点検口23の縁との距離を測定する。補助バーナー24と点検口23との距離から、バーナーコーン22内における補助バーナー24の位置を測定できる。
【0029】
そして、測定結果に基づいて補助バーナー24を位置調整する。例えば、補助バーナー24と点検口23との距離が予め定められた距離となるように、位置調整具28を操作して補助バーナー24を位置調整する。
【0030】
補助バーナー24の適切な位置がバーナーコーン22の中心である場合、バーナーコーン22の中心を挟んで対向する位置に配置された2つの点検口23のそれぞれから測定棒31を挿入し、両方の距離が等しくなるように、補助バーナー24を位置調整してもよい。この場合、2本の測定棒31を2つの点検口23の両方に挿入して両方の距離を同時に測定してもよいし、1本の測定棒31を2つの点検口23に交互に挿入して両方の距離を測定してもよい。
【0031】
これにより、点検口23を基準として奥行方向(
図6における左右方向)に補助バーナー24を位置調整できる。
【0032】
〔第2実施形態〕
つぎに、第2実施形態の位置測定器BBを説明する。
図7に示すように、位置測定器BBは測定棒31の先端部にU字形部33が設けられている。U字形部33は内径が補助バーナー24の外径よりも若干大きい円弧状の部材である。そのため、U字形部33の内部に補助バーナー24を嵌めることができる。U字形部33に補助バーナー24を嵌めることで、測定棒31の先端部を補助バーナー24の中央に当てることができる。すなわち、測定棒31を補助バーナー24の外周面に対して法線方向に配置した状態を維持できる。
【0033】
図8に示すように、補助バーナー24を位置調整する際には、点検口23から測定棒31を挿入しU字形部33に補助バーナー24を嵌める。そうすると、測定棒31の先端部が補助バーナー24の中央に当たる。
【0034】
第1実施形態の位置測定器AAは、測定棒31の先端部に補助バーナー24を保持する部材が設けられていない。そのため、測定棒31の先端部を補助バーナー24の中央に当てた状態を維持するには熟練が必要である。また、操業中は補助バーナー24の周りを通過する精鉱が邪魔となり、補助バーナー24を視認できない。そのため、触感を頼りに測定棒31の先端部を補助バーナー24の中央に当てる必要がある。
【0035】
これに対し、本実施形態の位置測定器BBは測定棒31の先端部にU字形部33が設けられているため、測定棒31の先端部を補助バーナー24の中央に当てた状態を維持することが容易である。また、精鉱により補助バーナー24を視認できなくても、測定棒31の先端部を補助バーナー24の中央に当てることが容易である。
【0036】
補助バーナー24の位置調整方法は第1実施形態と同様である。ただし、本実施形態の位置測定器BBを用いれば、精鉱が供給されている状態、すなわち操業中でも補助バーナー24を位置調整できる。
【符号の説明】
【0037】
AA、BB 位置測定器
31 測定棒
32 目盛り
33 U字形部