(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】基板載置台及び基板処理方法。
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20241112BHJP
H05H 1/46 20060101ALN20241112BHJP
H01L 21/3065 20060101ALN20241112BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H05H1/46 L
H01L21/302 101G
(21)【出願番号】P 2021009775
(22)【出願日】2021-01-25
【審査請求日】2023-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002756
【氏名又は名称】弁理士法人弥生特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】邊見 篤
【審査官】宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第1999/000837(WO,A1)
【文献】再公表特許第2013/054776(JP,A1)
【文献】特開2007-251073(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0032096(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1638497(KR,B1)
【文献】特開2001-135713(JP,A)
【文献】特開2003-100709(JP,A)
【文献】特開2016-143760(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H05H 1/46
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を載置する載置面を備える載置台本体と、
前記載置面に開口するように前記載置台本体に縦方向に形成された複数の孔と、
前記複数の孔に各々設けられ、前記基板を支持して前記載置面と当該載置面の上方の位置との間で移動させるための複数の支持体と、
前記載置台本体及び前記支持体の温度を調整する温度調整部と、
前記各支持体を昇降させる昇降機構と、
前記昇降機構による昇降を停止した前記各支持体により前記基板が前記載置面に載置されつつ当該基板が上方へ付勢された状態とするために、変形することによって前記各支持体の縦方向の長さが変化するように当該各支持体に設けられる弾性部材と、
を有し、
前記支持体は縦方向に伸びるピンであり、前記基板に接する先端部と、当該先端部の下方に設けられる本体部と、を備え、
前記先端部と前記本体部との間に前記弾性部材が介在し、
前記先端部は、上側が蓋により塞がれ当該蓋と共に昇降する筒体であり、
前記本体部の上端側には前記筒体内に位置する進入部が設けられ、
前記進入部は前記筒体の内周面に沿う外周面を備え、
前記先端部をなす前記蓋と前記進入部との間に前記弾性部材が、当該蓋及び当該進入部の各々に接続されて設けられる基板載置台。
【請求項2】
前記先端部をなす筒体において互いに対向する位置に、縦方向を長手方向とする長穴が設けられ、
前記進入部は、当該進入部を水平方向に貫き前記各長穴に進入する棒状部材を備える請求項1記載の基板載置台。
【請求項3】
前記進入部は、第1柱部と、前記第1柱部の上面の中心部が上方に突出して設けられる第2柱部と、を備え、
前記棒状部材は、前記第1柱部を水平方向に貫いて設けられ、
前記弾性部材は、前記蓋と前記第1柱部との間に当該蓋及び当該第1柱部の各々に接続されて設けられる請求項2記載の基板載置台。
【請求項4】
前記先端部は、前記基板に対向して接する平坦面を備える請求項
1ないし3のいずれか一つに記載の基板載置台。
【請求項5】
前記載置台本体は静電チャックを備え、前記載置面は当該静電チャックにより構成される請求項1ないし4のいずれか一つに記載の基板載置台。
【請求項6】
前記載置面には凹凸が形成され、
前記温度調整部には、当該載置面と前記基板との間に形成される隙間、及び前記孔と前記支持体との間に形成される隙間にガスを供給するためのガス供給部が含まれる請求項1ないし5のいずれか一つに記載の基板載置台。
【請求項7】
載置面を備える載置台本体に基板を載置して処理を行う基板処理方法において、
前記載置面に開口するように当該載置台本体に縦方向に形成される複数の孔に各々設けられる支持体を当該載置面に対して突出させ、前記載置面の上方の位置にて前記基板を支持する工程と、
昇降機構により複数の前記支持体を下降させる工程と、
変形することによって前記各支持体の縦方向の長さが変化するように当該各支持体に設けられる弾性部材により、前記基板が前記載置面に載置されつつ、前記昇降機構による昇降を停止した前記各支持体により当該基板が上方へ付勢された状態とする工程と、
温度調整部により前記載置台本体及び前記支持体の温度を調整し、前記載置面に載置された前記基板に処理を行う処理工程と、
を備え
、
前記支持体は縦方向に伸びるピンであり、前記基板に接する先端部と、当該先端部の下方に設けられる本体部と、を備え、
前記先端部と前記本体部との間に前記弾性部材が介在し、
前記先端部は、上側が蓋により塞がれ当該蓋と共に昇降する筒体であり、
前記本体部の上端側には前記筒体内に位置する進入部が設けられ、
前記進入部は前記筒体の内周面に沿う外周面を備え、
前記先端部をなす前記蓋と前記進入部との間に前記弾性部材が、当該蓋及び当該進入部の各々に接続されて設けられる基板処理方法。
【請求項8】
前記載置面には凹凸が形成され、
前記処理工程は、前記基板の面内の温度を調整するために当該載置面と前記基板との間に形成される隙間、及び前記貫通孔と前記支持体との間に形成される隙間にガスを供給する工程を含む請求項7記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記載置
台本体及び前記支持体が各々熱膨張して前記載置面と前記本体部との距離が変化するときに、前記弾性部材の変形により当該距離の変化に応じて前記本体部と前記先端部との距離を変化させる工程を備える請求項
7または
8記載の基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板載置台及び基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイ(Flat Panel Display:FPD)の製造工程においては、真空雰囲気が形成された処理容器内の基板に対して、エッチングなどの各種の処理が行われる。そのような基板への処理は、当該基板の温度を調整可能に構成された載置台に基板が載置された状態で行われる。その載置台は、搬送機構との間で基板を受け渡すために基板を支持した状態で昇降自在な複数のリフトピンを備えた構成とされる。例えば特許文献1ではプラズマの電磁界の均一性を高めるために、基板にプラズマ処理を行う際に、リフトピン(昇降ピン)の先端が載置台上の基板の裏面に対して70~130μm下方に位置した状態となるように制御される処理装置について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、基板の面内で均一性高い処理を行うことができるように当該基板を載置台に載置することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の基板載置台は、基板を載置する載置面を備える載置台本体と、
前記載置面に開口するように前記載置台本体に縦方向に形成された複数の孔と、
前記複数の孔に各々設けられ、前記基板を支持して前記載置面と当該載置面の上方の位置との間で移動させるための複数の支持体と、
前記載置台本体及び前記支持体の温度を調整する温度調整部と、
前記各支持体を昇降させる昇降機構と、
前記昇降機構による昇降を停止した前記各支持体により前記基板が前記載置面に載置されつつ当該基板が上方へ付勢された状態とするために、変形することによって前記各支持体の縦方向の長さが変化するように当該各支持体に設けられる弾性部材と、を有し、
前記支持体は縦方向に伸びるピンであり、前記基板に接する先端部と、当該先端部の下方に設けられる本体部と、を備え、
前記先端部と前記本体部との間に前記弾性部材が介在し、
前記先端部は、上側が蓋により塞がれ当該蓋と共に昇降する筒体であり、
前記本体部の上端側には前記筒体内に位置する進入部が設けられ、
前記進入部は前記筒体の内周面に沿う外周面を備え、
前記先端部をなす前記蓋と前記進入部との間に前記弾性部材が、当該蓋及び当該進入部の各々に接続されて設けられる。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、基板の面内で均一性高い処理を行うことができるように当該基板を載置台に載置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の一実施形態である基板の載置台を含むエッチング装置の縦断側面図である。
【
図3】前記載置台に設けられるリフトピンの上端部の斜視図である。
【
図4】比較例における基板の載置台の表層部の縦断側面図である。
【
図5】前記エッチング装置において処理が行われる手順を示す説明図である。
【
図6】前記エッチング装置において処理が行われる手順を示す説明図である。
【
図7】前記エッチング装置において処理が行われる手順を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の基板載置台の一実施形態である載置台3が設けられた基板処理装置1について、
図1の縦断側面図を参照しながら説明する。基板処理装置1は、FPD製造用の矩形のガラス製の基板Gに対してプラズマエッチング処理を行う。当該基板処理装置1は、金属製であると共に接地された処理容器11を備えており、処理容器11の側壁には、ゲートバルブ12により開閉される基板Gの搬送口13が設けられている。処理容器11の下方には排気口14が開口しており、当該排気口14は排気管を介して真空ポンプなどにより構成される真空排気部15に接続されている。真空排気部15により、排気口14を介して処理容器11内が排気され、所望の圧力の真空雰囲気とされる。
【0009】
処理容器11の底部に上記の載置台3が設けられている。載置台3は基板Gに処理を行う際に、当該基板Gの面内の各部の温度を揃えて均一性高い処理が行われるように構成されており、その詳しい構成については後述する。処理容器11の上方には、載置台3と対向するように、後述のシャワーヘッド24を兼ねた金属からなる窓部材を介して、渦巻き状の誘導結合アンテナ21が設けられている。誘導結合アンテナ21には、プラズマ生成用のソース電源22が、整合器23を介して接続されている。ソース電源22から誘導結合アンテナ21に高周波電力が供給されると、処理容器11内にプラズマ形成用の電界が発生し、処理容器11内に供給される処理ガスがプラズマ化される。なお、窓部材は誘電体で形成されてもよく、その場合はシャワーヘッドは窓部材とは別に設けられる。
【0010】
誘導結合アンテナ21の下方には、金属からなる窓部材を兼ねたシャワーヘッド24が設けられている。シャワーヘッド24は、絶縁部25を介して処理容器11の上部を密閉し、載置台3に向けて開口する多数のガス吐出孔26を備えている。シャワーヘッド24は、配管を介して処理ガスの供給源27に接続されている。シャワーヘッド24は、処理容器11の上部に設けられて誘導結合アンテナ21を収容する不図示のアンテナ室の天井部から、不図示の吊り下げ部材によって吊り下げられて支持されている。
【0011】
続いて載置台3について、その表層部を拡大して示す
図2も参照して説明する。載置台3は、静電チャック31、サセプタ32、流路形成部33、絶縁層34、カバー35、昇降機構5及びリフトピン6により構成されている。これらの構成部材のうち、静電チャック31、サセプタ32、流路形成部33及びカバー35については、角柱状に形成された載置台本体30をなす。流路形成部33、サセプタ32、静電チャック31については、この順で上方へ向けて重なることで積層体をなし、この積層体の側周を絶縁部材であるカバー35が囲むことで、上記の載置台本体30が構成されている。静電チャック31の上面は、基板Gの載置面36として構成されている。
【0012】
サセプタ32及び流路形成部33については金属製であり、整合器28を介してバイアス電源29に接続される電極をなす。バイアス電源29からサセプタ32及び流路形成部33への電力供給によりプラズマと載置面36との間に電位差が発生し、処理容器11内に生じたプラズマを構成するイオンが、載置面36に載置された基板Gに引き込まれる。流路形成部33及びカバー35の下方に絶縁層34が設けられており、当該流路形成部33と処理容器11の底部とが絶縁される。
【0013】
静電チャック31及びサセプタ32については縦方向、より具体的には鉛直方向に、これらの部材を貫通する貫通孔37が形成されている。従って、貫通孔37の上端は静電チャック31の載置面36に開口している。この貫通孔37は多数、横方向に互いに離れて形成されている。また、流路形成部33にも、当該流路形成部33を鉛直方向に貫通する貫通孔16が多数、横方向に互いに離れて形成されており、当該各貫通孔16にはガイド部材38が設けられている。ガイド部材38は、起立した円筒をなすように構成されている。図中41はOリングであり、ガイド部材38の下部側の外周面と、上記した流路形成部33の貫通孔16を形成する周面との間の隙間をシールする。
【0014】
円筒であるガイド部材38の貫通孔17と、上記の貫通孔37とは互いに重なっており、当該ガイド部材38の貫通孔17及び貫通孔37に挿通されて、リフトピン6が設けられる。従って、リフトピン6は、貫通孔37及びガイド部材38の数に対応して、載置台3に多数設けられている。リフトピン6の形状を概略的に述べると鉛直方向に伸びる細長の円柱であり、その下部側は処理容器11の底部を貫通して、処理容器11の外部に設けられる昇降機構5に接続されている。昇降機構5によって各リフトピン6は、基板Gを水平に支持した状態で鉛直に昇降可能である。なお、リフトピン6の上端部は、図示しない搬送機構と載置台3との間で基板Gを受け渡すときを除いて、貫通孔37に収まる状態(載置台3へ格納された状態)となる。なお、図中において昇降機構5は全てのリフトピン6を同時に昇降する構造として描かれているが、それぞれのリフトピン6を個別に昇降する構造であってもよい。
【0015】
図中39はガイド部材38の内周面に設けられるOリングであり、当該内周面とリフトピン6の側周面との間の隙間をシールする。このOリング39及び上記のOリング41により、後述の伝熱ガスの通流する領域が区画され、処理容器11外への漏洩が防止される。また、リフトピン6の下部側はベローズ42に囲まれている。ベローズ42は処理容器11の開口部と、リフトピン6の下部側に設けられるフランジ43とを接続し、処理容器11の気密性を担保する。基板Gの支持体であるリフトピン6については、後にさらに詳しく構成を説明する。
【0016】
載置台本体30についてさらに説明すると、サセプタ32の下部から上方に伸びるガス流路40が複数形成されており、ガス流路40の上端は静電チャック31の載置面36に開口する。またガス流路40の下部側は流路形成部33を横方向に伸びることで、ガイド部材38の上部側とサセプタ32及び流路形成部33との間に形成される隙間を介して、貫通孔37に接続されている。ガス流路40には例えばヘリウムガスである伝熱ガスの供給源51が接続されており、当該供給源51から温度調整された伝熱ガスが供給される。既述のようにガス流路40は貫通孔37に接続されているため、伝熱ガスはガス流路40を介して静電チャック31の載置面36上に供給される他に、リフトピン6と貫通孔37の周面との間の隙間にも供給され、当該隙間から載置面36上に供給される。なお、そのように各部に供給される伝熱ガスの温度は、処理容器11に形成されるプラズマの温度よりも低く、当該伝熱ガスは基板Gを冷却させる作用を有する。
【0017】
流路形成部33の内部には流体の流路44が形成されている。当該流路44には、流体の温度を調整するためのチラーユニット45が接続されており、流路44及びチラーユニット45により、流体の循環路が形成されている。チラーユニット45にて所望の温度となるように温度調整された流体が流路44の上流側に供給され、熱交換により載置台本体30の温度が調整される。そして、当該流体は流路44の下流側からチラーユニット45に供給され、再び温度調整された後に流路44に供給される。このように循環する流体は、プラズマにより加熱された基板Gを冷却する冷媒として作用する。流路44、チラーユニット45、ガス流路40、伝熱ガスの供給源51は温度調整部をなし、ガス流路40及び伝熱ガスの供給源51はガス供給部をなす。
【0018】
静電チャック31については、既述した載置面36を備える絶縁層47と、絶縁層47に埋設されて設けられる電極48とを含み、電極48は直流電源49に接続されている。プラズマの形成時において電極48に直流電源49より直流電圧が印加されることで、絶縁層47を介して電極48と基板Gとの間に静電引力が発生し、基板Gは載置面36に吸着される。
図2に模式的に示すように、上記の載置面36には微小な凹凸が形成されている。従って、当該凹凸を構成する凸部に基板Gの裏面が接して吸着される。なお、当該凹凸は静電チャック31の製造工程において不可避的に形成されるものではなく、設計上、形成されているものであり、
図2中に示す凸部の高さH1は例えば1μm~100μmである。上記したガス流路40から載置面36に供給された伝熱ガスは、基板Gの裏面と、上記の凹凸を形成する凹部とがなす隙間を通流し、基板Gの面内全体に亘って供給される。
【0019】
上記したリフトピン6について、上端部の斜視図である
図3も参照してさらに説明する。リフトピン6は弾性部材であるバネ61を備えており、そのバネ61の伸縮(変形)によって当該リフトピン6の鉛直方向の長さが変化するように構成されている。そして、静電チャック31に基板Gが吸着されてプラズマ処理が行われる際に、リフトピン6の上端は基板Gの裏面に接し、且つ圧縮されたバネ61の復元力により、基板Gを上方に付勢した状態とされる。後に詳しく述べるようにそのような状態とされることで、基板Gの面内の温度分布の均一性が高まる。なお、この状態において昇降機構5によるリフトピン6の昇降は停止している。
【0020】
リフトピン6は、ピン本体部62と、ピン本体部62の上側に設けられるピンヘッド71と、により構成されている。ピン本体部62は胴部63と、ヘッドガイド部64と、バネガイド部65と、を備えている。胴部63は細長の円棒であり、その胴部63の上端面の中心部が鉛直上方に突出することで、ヘッドガイド部64が形成されている。このヘッドガイド部64は、起立した円柱形で縦長である。そして、ヘッドガイド部64の上端面の中心部が鉛直上方に突出することで、起立した円柱形のバネガイド部65が形成されている。また、ヘッドガイド部64を水平方向に貫く棒状部材であるピン66が設けられ、ピン66の両端部はヘッドガイド部64から突出している。
【0021】
リフトピン6の先端部をなすピンヘッド71は、上面に水平な円形部を有する円柱部72と、円柱部72の周縁が鉛直下方に伸びることで形成される円筒型の周壁73と、を備えている。即ち、ピンヘッド71は、上側が塞がれた有蓋の円筒体として構成されている(円柱部72が蓋に相当する)。円柱部72の上面の水平な円形部は、基板Gに対向する水平な平坦面74として形成されており、既述したように当該基板Gに接する。そして、周壁73の下部は上記したヘッドガイド部64の上部を囲むように、胴部63の上方に位置している。従って、上記のヘッドガイド部64及びバネガイド部65は、筒体である周壁73内に位置する進入部をなす。ヘッドガイド部64の外周面は、周壁73の内周面に沿って形成されており、後述のようにピンヘッド71が鉛直方向(即ち、リフトピン6の長さ方向)に移動する際におけるガイドの役割を有する。なお、円柱部72と周壁73は一体の部材としてピンヘッド71を構成してもよく、また、別部材を接合してピンヘッド71を構成してもよい。
【0022】
周壁73の下部における互いに対向する位置に、貫通孔が形成されている。即ち、周壁73には2つの貫通孔が設けられており、これらの貫通孔は縦方向に伸びる長穴75として構成されている。上記のピン66の両端部は長穴75に進入している。当該ピン66により、後述のように配置されるバネ61の弾性によってピンヘッド71がピン本体部62から脱離してしまうことが防止されている。
【0023】
長穴75よりも上方の位置に、ピンヘッド71及びヘッドガイド部64に囲まれることで、リフトピン6の外部に対して区画された空間70が形成されており、上記のバネガイド部65は当該空間70に設けられている。バネ61はコイルバネであり、バネガイド部65に巻回されることで、その軸芯が鉛直方向に沿うように当該空間70に設けられている。そしてバネ61は円柱部72、ヘッドガイド部64に各々接続されており、これらの円柱部72、ヘッドガイド部64が互いに離間するように付勢している。ピンヘッド71に対して相対的に下方へ向う力が加えられると、バネ61が縮むことでピンヘッド71が鉛直下方に移動し、当該ピンヘッド71はピン本体部62の胴部63に対して近づく。このピンヘッド71の移動により、リフトピン6の長さが小さくなる。
【0024】
以上に述べたリフトピン6を備える載置台3の作用効果を説明するために、
図4の比較例の載置台3Aについて説明する。この載置台3Aについては、リフトピン6の代わりにリフトピン6Aが設けられることを除いて、載置台3と同様の構成である。リフトピン6Aにはバネ61が設けられておらず、従って、リフトピン6Aについては伸縮がなされない。そして、この載置台3Aでは基板Gの処理時にリフトピン6Aの上端は、基板Gから離れた状態とされるものとする。載置台3へ格納された状態となったときに基板Gが載置面36から浮くことを防ぎ、当該載置面36に載置されて後述のように温度調整されるようにするために、昇降機構5の動作精度を考慮してそのようなリフトピン6Aの配置とされる。
【0025】
図4中の各矢印は、基板Gの処理時における伝熱を模式的に示している。当該基板の処理時には、プラズマの熱が基板Gへ伝わる。ハッチングを付した矢印は、このプラズマからの伝熱を示している。一方、既述したように流路形成部33の流路44に温度調整された流体(冷媒)が供給されることで、載置面36をはじめとする載置台本体30の各部において熱交換がなされる。この熱交換について、黒く塗りつぶした矢印で示している。また、リフトピン6Aと載置台本体30との間、及びリフトピン6Aの上下において各々伝熱する。当該伝熱を白抜きの矢印で示している。より具体的に述べると、Oリング39、41及びガイド部材38を介することで、リフトピン6Aの上端部と載置台本体30との間で伝熱がなされ、さらにリフトピン6Aの各部でも伝熱する。従って、この白抜きの矢印は、固体間における伝熱を示していることになる。このように、載置台本体30を介して流路44の冷媒とリフトピン6Aとの間でも熱交換が行われ、当該冷媒は、載置台本体30、リフトピン6Aの各々を温度調整する。
【0026】
そして図中、伝熱ガスを介する伝熱についてドットを付した矢印で示している。載置面36に示したこのドット付きの矢印については、伝熱量の大きい箇所ほど太く示している。上記したように流路44の冷媒の作用により、載置面36は温度調整されている。基板Gは載置面36の凸部に接することで、この凸部との間で熱交換がなされる。そして、基板Gにおいて、載置面36に対向するが接していない箇所(即ち載置面36の凹部に対向する箇所)についても伝熱ガスを介することにより、当該載置面36との間で熱交換がなされる。ミクロ的に見ればこのような伝熱ガスを介するか否かという違いは有るが、載置面36の凹凸は比較的密に形成されることから、基板Gにおいて当該載置面36に対向している各部位については載置面36に対する伝熱量が揃うように冷却されることで、同じ温度ないしは略同じ温度となる。また、流路44の冷媒によって温度調整された載置面36の作用だけでなく、上記したように伝熱ガスそのものも基板Gを冷却させることに寄与する。なお、貫通孔37内のリフトピン6Aの上端部については、上記の固体間における伝熱(白抜きの矢印で示した伝熱)に加え、貫通孔37に供給される伝熱ガスを介した載置台本体30との間の伝熱も行われることで温度調整された状態となっている。
【0027】
しかしこの比較例の載置台3Aにおいて、基板Gの貫通孔37に対向する部位については、他の部位と異なり載置面36との接触が無い。つまり、基板Gの貫通孔37に対向する部位については、載置面36に対向する部位と異なり、温度調整された部材の接触による伝熱がなされず、伝熱ガスによる冷却のみがなされる。従って、基板Gにおいて貫通孔37に対向する部位と載置面36に対向する部位との間に温度差が生じる。より具体的には、貫通孔37に対向する部位の温度が、載置面36に対向する部位の温度に比べて温度が高くなる。そして、このような温度差に起因して、基板Gの面内におけるエッチング処理にばらつきが生じてしまうおそれが有る。
【0028】
また、基板Gの処理中において、例えばリフトピン6A及び昇降機構5の熱膨張量と、載置台本体30の熱膨張量とが異なることに起因して、リフトピン6Aの上端に対して載置面36がより高い位置に移動するように、互いの位置関係が変化する場合が有る。そうなると基板Gの貫通孔37に対向する部位と、既述のように温度調整されているリフトピン6Aの上端との間の伝熱ガスを介した伝熱量が少なくなり、上記した基板Gの面内の温度差が大きくなってしまうおそれが有る。
【0029】
図2に戻って、載置台3における伝熱の様子を説明する。
図2の各矢印は、
図4の各矢印と同様に、伝熱を表している。載置台3では既述したように基板Gの処理時において、リフトピン6の上端の平坦面74が当該基板Gに接する。リフトピン6Aと同じく、リフトピン6の上端部は流路44の流体及び伝熱ガスの作用により温度調整される。従って、平坦面74は、載置面36と同じないしは略同じ温度とされた状態で基板Gに接しており、それにより基板Gにおいて貫通孔37に対向する部位と載置面36に対向する部位との温度差が解消される。このように載置台3に載置される基板Gについては、貫通孔37に対向する部位についても載置面36に対向する部位と同様に、伝熱ガスが供給されることに加えて温度調整された部材が接触し、その接触による伝熱がなされることで、面内におけるエッチング処理の均一性が高くなる。
【0030】
そして既述したようにバネ61の復元力により、リフトピン6は付勢された状態となっている。基板Gの処理の進行に伴い、載置台本体30の各部が熱膨張し、載置面36の高さが上昇する。そうなるとバネ61が伸びる(変形する)ことにより、載置面36とリフトピン6のピン本体部62との距離の変化が長くなることに応じて、ピン本体部62における胴部63とピンヘッド71との距離も長くなる。つまり、載置面36の高さの変化に追従するようにリフトピン6の平坦面74の高さが上昇して、当該平坦面74が基板Gに接する状態が維持される。
【0031】
ところで基板処理装置1は、制御部10を備えており(
図1参照)、制御部10は、プログラム、メモリ、CPUを含む。プログラムには、基板処理装置1の各部に制御信号を送信することで、後述する手順で基板Gの処理を実行するように命令(ステップ群)が組み込まれている。具体的に各電源のオンオフ、処理ガス及び伝熱ガスの供給、昇降機構5によるリフトピン6の昇降などの各動作が、上記の制御信号の送信により制御される。上記のプログラムは、例えばコンパクトディスク、ハードディスク、DVDなどの記憶媒体に格納されて、制御部10にインストールされる。
【0032】
基板処理装置1の動作について、
図5~
図7を参照して順を追って説明する。
図5~
図7では、図面の煩雑化を防ぐために基板処理装置1の一部の構成要素については表示を省略し、リフトピン6については2本のみ表示している。先ず、載置台3の流路44に温度調整された流体が通流する状態で、外部から処理容器11内に搬送機構が進入すると、載置台3に格納された状態となっていたリフトピン6が昇降機構5により上昇し、当該リフトピン6の上端部が載置面36上に突出する。そして、リフトピン6の平坦面74に基板Gが支持され、基板Gの重さの分だけバネ61が縮んでピンヘッド71が下降し、リフトピン6が短くなる。搬送機構は処理容器11の外部に退避し、ゲートバルブ12が閉じられる(
図5)。
【0033】
昇降機構5によりリフトピン6が下降し、載置台3の載置面36上に基板Gが載置されると、昇降機構5の動作が停止することでリフトピン6の下降が停止する。リフトピン6の平坦面74は、基板Gの裏面に接したままの状態となっている。そして、載置台本体30のガス流路40に伝熱ガスが供給されると共に、シャワーヘッド24を介して処理容器11内に処理ガスが供給される。その一方で、処理容器11内は所望の圧力の真空雰囲気となるように排気される。
【0034】
そしてソース電源22及びバイアス電源29がオンになり、処理ガスからプラズマPが生成すると共に、プラズマPを構成するイオンが載置台3に引き込まれる。また、このプラズマPの形成と共に直流電源49がオンになることで、基板Gは静電チャック31に密着した状態となる。この状態のとき、
図2で述べたように昇降機構5によるリフトピン6の昇降は停止すると共に、当該リフトピン6の平坦面74は基板Gの裏面に接して当該裏面を上方へ付勢している。即ち、リフトピン6のバネ61による押圧力に抗して、静電チャック31による基板Gの吸着が行われた状態となっている(
図6)。
【0035】
上記のプラズマP中の活性種及び載置台3に引き込まれるイオンの作用により、基板Gの表面がエッチングされる。
図2で述べたように、流路44に供給される流体と伝熱ガスとの作用により、リフトピン6の平坦面74、載置面36の各々の温度が調整され、これらの部材に接する基板Gの面内各部が均一性高い温度とされた状態で、エッチングが進行する。そしてこのエッチングの進行中、例えば載置台3のサセプタ32及び流路形成部33が比較的大きく熱膨張することで、処理容器11内における静電チャック31の載置面36の高さが上昇し、基板Gの裏面の高さも上昇する。その基板Gの高さの上昇に伴い、バネ61の弾性によりリフトピン6の平坦面74が、基板Gの裏面に接したまま上昇する(
図7)。従って基板Gについては、面内各部の温度の均一性が高い状態で引き続きエッチングされ、面内各部のエッチング量が揃う。
【0036】
プラズマPの形成から所定時間が経過すると、ソース電源22、バイアス電源29、直流電源49が各々オフになり、プラズマPの形成、イオンの引き込み、基板Gの載置台3への吸着が各々停止する。また、処理容器11内への処理ガスの供給が停止する。リフトピン6の上端が載置面36上へ突出して基板Gが載置面36から離れ、図示しない搬送機構により基板Gが受け渡されると、リフトピン6は下降して載置台3に格納された状態に戻る。
【0037】
このように載置台3を備えた基板処理装置1によれば、静電チャック31により吸着された基板Gの面内の各部における温度が均一性高く調整される。その結果として、基板Gの面内の各部において、エッチング量の均一性を高くすることができる。また、リフトピン6について、基板Gに接する上端面を平坦面74として構成しているので、基板Gとリフトピン6との接触面積が比較的大きくなる。それにより、より確実に基板Gの面内各部における温度の均一性を高くすることができる。
【0038】
ところで
図4で示した比較例の載置台3Aについて、上記したようにリフトピン6Aの上端を載置台3Aに収納する際に、当該リフトピン6Aの上端が基板Gを載置面36から突き上げない高さにする必要が有る。更に、既述したように各部の熱膨張量に起因してリフトピン6Aの上端と基板Gとの距離とが拡大されるが、この距離が大きくなりすぎると、リフトピン6Aと基板Gとの間の伝熱に影響してしまう。このような事情から、リフトピン6Aについては高さの許容範囲が比較的狭く、基板Gの処理温度に応じてリフトピン6Aの上端の高さを精度高く調整する必要が有る。つまり、調整の手間が比較的大きい。しかし載置台3のリフトピン6については、バネ61の弾性により伸縮する構成であり、載置面36に載置された基板Gに接触する状態が担保されればよいため、リフトピン6Aに比べれば高さについての許容範囲が大きく、高さの調整の手間が緩和されるという利点が有る。
【0039】
ところで、載置台3において仮に静電チャック31ではない部材により基板Gの載置面が形成され、当該載置面は静電チャック31の載置面36と同様に温度調整されるものとする。その場合であっても、リフトピン6が基板Gを上方に付勢したときに、例えば基板Gが自重により載置面に密着することで温度調整がなされればよい。従って、本技術の載置台においては、静電チャック31を備えることに限られない。ただし、基板Gをより確実に載置面に密着させて温度調整するために、既述したように静電チャック31を設け、当該静電チャック31により載置面36を構成することが好ましい。
【0040】
また、載置台3をエッチング装置である基板処理装置1に適用する例を示したが、成膜処理などの他の処理を行う装置にも適用し、基板Gの面内の温度の均一性を高くして、処理の均一性を高くすることができる。なお、載置台3についてはプラズマ処理を行う装置に適用することにも限られない。またFPD製造用の基板Gの処理に適用することにも限られず、半導体ウエハなどの他の種類の基板の処理にも適用することができる。
【0041】
ところで流路44に供給される流体について、既述した例では基板Gを冷却する冷媒であるが、基板Gの処理温度を比較的高く維持する必要のある処理であって、処理環境が比較的低い温度になりやすい場合には、当該基板Gを加熱する熱媒体として作用するものであってもよい。伝熱ガスについても、基板Gの処理環境よりも高く、基板Gを加熱する作用を有するように温度調整されて載置台3に供給されてもよい。さらに、載置台3において、流路44の代りに例えばヒーターが設けられ、当該ヒーターの熱が載置台本体30とリフトピン6とに伝わり、載置面36とリフトピン6の平坦面74とが各々温度調整されるものであってもよい。つまり、載置台3に設けられる温度調整機構としてはリフトピン6と載置台本体30とを各々温度調整できるものであればよく、チラーユニット45及び流路44により構成されることには限られない。
【0042】
またリフトピンの構成としては既述したリフトピン6の構成とすることに限られない。例えば既述したピン本体部62の上端に弾性部材である樹脂の成形体が設けられ、当該樹脂の成形体が基板Gの裏面に接すると共に、その変形によって生じる弾性によって上方に付勢する構成であってもよい。ただしリフトピン6では、上記したようにピン本体部62は、ピンヘッド71が移動する際のガイドとなるように当該ピンヘッド71内に進入した構成とされ、ピン本体部62とピンヘッド71とに囲まれる空間70にバネ61が設けられている。つまり、リフトピン6では外部から区画された空間にバネ61が設けられた構成となっている。そのために処理ガスや処理中に発生する生成物がバネ61に接触し難いので、バネ61の変質や異物の付着によって当該バネ61の弾性が低下してしまうことが抑制されるという利点が有る。なおリフトピン6において、バネ61の代わりに弾性部材として樹脂が空間70に設けられる構成であってもよい。そのように弾性部材としては、バネであることには限られない。なお、弾性部材としてバネを用いる場合は、コイルバネ以外にも例えば皿バネ等を用いることができる。
【0043】
なお、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0044】
[評価試験]
続いて、本技術に関連して行われた評価試験について説明する。この評価試験では、基板処理装置1の載置台3に、その上面にサーモラベル(登録商標)が貼付された基板Gを載置して既述したようにプラズマを形成した。そして、そのプラズマ形成時のサーモラベルが貼付された位置における基板Gの温度を測定した。サーモラベルを貼付した位置について詳しく述べると、一つは貫通孔37の直上位置であり、他の一つは伝熱ガスが吐出される開口に重ならずに基板Gが平坦に保たれる位置である。つまり、この平坦に保たれる位置とは、ガス流路40についての載置面36における開口及び貫通孔37の各々に重ならない位置であり、以降は平面部とする。
【0045】
また、比較例の載置台3Aを備えた基板処理装置1についても同様の試験を行い、プラズマ形成時における平面部及び貫通孔37の直上における基板Gの温度を測定した。なおプラズマ形成時においては、既述の実施形態と同様に伝熱ガスの供給、バイアス電源29からの電力供給、流路44における流体の通流が行われているものとする。この評価試験における条件を示すと、ソース電源22からの供給電力は9000W、バイアス電源29からの供給電力は6000W、プラズマの形成時間は60秒、処理容器11内の圧力は10mTorr(1.33Pa)、供給される伝熱ガスの圧力は3Torr(400Pa)、流路44に供給する流体の温度は100℃である。
【0046】
図8に評価試験の結果を表すグラフを示している。載置台3、3A共に基板Gの平面部における温度は130℃であった。載置台3Aについて、貫通孔37の直上における基板Gの温度は140℃である。それに対して載置台3について、貫通孔37の直上における基板Gの温度は130℃である。このように載置台3の基板Gについては、平面部と貫通孔37の直上とで温度が同じとなり、実施形態で述べた効果が奏されることが確認された。
【符号の説明】
【0047】
3 載置台
30 載置台本体
36 載置面
37 貫通孔
5 昇降機構
6 リフトピン
61 バネ