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特許7585877光導波路素子及びそれを用いた光変調デバイス並びに光送信装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】光導波路素子及びそれを用いた光変調デバイス並びに光送信装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/122 20060101AFI20241112BHJP
   G02F 1/01 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
G02B6/122 311
G02F1/01 C
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021031062
(22)【出願日】2021-02-26
(65)【公開番号】P2022131873
(43)【公開日】2022-09-07
【審査請求日】2023-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【弁理士】
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】釘本 有紀
(72)【発明者】
【氏名】村田 祐美
(72)【発明者】
【氏名】片岡 優
(72)【発明者】
【氏名】高野 真悟
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-230741(JP,A)
【文献】特開2014-191301(JP,A)
【文献】特開2016-042575(JP,A)
【文献】米国特許第10444433(US,B1)
【文献】特開2019-095698(JP,A)
【文献】国際公開第2012/114866(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0346429(US,A1)
【文献】特開2007-072433(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12-6/14
G02F 1/00-1/125
G02F 1/21-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学効果を有する材料で形成されるリブ型の光導波路を有する光導波路基板と、前記リブ型の光導波路の入力端又は出力端が形成された位置に、該光導波路を伝搬する光波のモードフィールド径を変化させるスポットサイズ変換手段を備えた光導波路素子において、
該スポットサイズ変換手段は、
該リブ型の光導波路に接続され、該光導波路の幅を拡大するテーパー部分を備えた第1構成層と、
該第1構成層に積層され、該第1構成層の幅よりも狭い幅を有する第2構成層と、
該第2構成層の該リブ型の光導波路に近接する一部を除き、該第2構成層を覆うように配置され、該第2構成層の幅よりも広い幅を有する第3構成層を備え
該第2構成層を構成する材料の屈折率は、該第1構成層を構成する材料や該第3構成層を構成する材料の屈折率よりも高く、
該第1構成層と該第3構成層の屈折率差は0.1より小さいことを特徴とする光導波路素子。
【請求項2】
請求項1に記載の光導波路素子において、該第2構成層の該リブ型の光導波路側の先端部分は、該リブ型の光導波路上に配置されていることを特徴とする光導波路素子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光導波路素子において、該第3構成層の該リブ型の光導波路側の端面は、該第2構成層を伝搬する光波の進行方向に対して90度以外の傾きを有して配置されていることを特徴とする光導波路素子。
【請求項4】
請求項1乃至のいずれかに記載の光導波路素子において、該光導波路基板の端部側に位置する該スポットサイズ変換手段の端面構造は、該第2構成層を取り囲むように、該第1構成層と該第3構成層が配置されていることを特徴とする光導波路素子。
【請求項5】
請求項1乃至のいずれかに記載の光導波路素子において、該光導波路基板の端部側に位置する該スポットサイズ変換手段の端面構造は、該第2構成層が露出しないように、該第1構成層と該第3構成層が配置されていることを特徴とする光導波路素子。
【請求項6】
請求項1乃至のいずれかに記載の光導波路素子において、該光導波路基板は、該光導波路が形成された薄板と、該薄板を保持する保持基板とから構成され、該保持基板を構成する材料の屈折率は、該薄板を構成する材料の屈折率よりも低いことを特徴とする光導波路素子。
【請求項7】
請求項1乃至のいずれかに記載の光導波路素子において、該光導波路基板は、該光導波路が形成された薄板と、該薄板を保持する保持基板と、該薄板と該保持基板との間に中間層を設け、該中間層を構成する材料の屈折率は、該薄板を構成する材料の屈折率よりも低いことを特徴とする光導波路素子。
【請求項8】
請求項1乃至のいずれかに記載の光導波路素子は、該光導波路を伝搬する光波を変調するための変調電極を備え、該光導波路素子と、該光導波路素子の変調電極に入力する変調信号を増幅する電子回路とを筐体の内部に収容することを特徴とする光変調デバイス。
【請求項9】
請求項に記載の光変調デバイスと、該光変調デバイスに変調動作を行わせる変調信号を出力する電子回路とを有することを特徴とする光送信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路素子及びそれを用いた光変調デバイス並びに光送信装置に関し、特に、電気光学効果を有する材料で形成されるリブ型の光導波路を有する光導波路基板と、前記リブ型の光導波路の入力端又は出力端が形成された位置に、該光導波路を伝搬する光波のモードフィールド径を変化させるスポットサイズ変換手段を備えた光導波路素子に関する。
【背景技術】
【0002】
光計測技術分野や光通信技術分野において、電気光学効果を有する材料を光導波路に用いた光変調器などの光導波路素子が多用されている。近年、光導波路素子の小型化、広帯域化や低駆動電圧化などが求められており、小型化のためには、光導波路素子の入力光を素子内で折り返し、入出力を同一方向にする構成が提案されている。折り返しの光導波路では、導波光の曲げ損失を小さくする必要があり、モードフィールド径(MFD)を1μm程度まで微細化することが求められる。また、幅の狭い光導波路を利用する場合には、光導波路に電界を印加する変調電極も光導波路に近接して配置でき、広帯域化や低駆動電圧化にも寄与する。
【0003】
しかしながら、光導波路素子内でのMFDを1μm程度にした場合、素子に結合する光ファイバーのMFDは10μmであることから、光導波路素子内の光導波路と光ファイバーとの間には、MFDにおいて10倍もの差がある。このため、両者の結合部分での結合損が非常に大きくなる。
【0004】
光導波路素子と光ファイバーとの間に、MFDを拡大させるレンズを取り付ける方法等があるが、MFDを1μmから10μmのように10倍程度も変換するレンズは、設計上不可能である。仮に、レンズで変換させるためには、少なくとも光導波路素子の端部における光導波路のMFDは3μm以上である必要がある。
【0005】
また、光導波路素子上の入出射部付近に、MFDを変換するスポットサイズ変換手段(Spot Size Converter,SSC)を設け、光導波路素子内で3~5μm程度までMFDを拡大することが提案されている。そして、SSCと光ファイバーとの間にレンズを配置し、両者を光学的に結合している。
【0006】
特許文献1乃至3に示すようなSSCは、光導波路の端部に向かって、二次元的または三次元的に光導波路の幅や厚みを拡大するリブ型の光導波路が用いられる。この方法のメリットは、デザインが簡易であることが挙げられるが、光導波路を広げることで、マルチモードを誘起してしまうことから、使用可能なデザインに制限がある。また、製造工程が複雑であることに加え、各層におけるリブ形状の配置ずれや各層の表面や側面の荒れの影響を受けて、光挿入損失を十分に下げることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開WO2012/042708号
【文献】国際公開WO2013/146818号
【文献】特許第6369036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、上述したような問題を解決し、製造工程が複雑化せず、光挿入損失を抑制したスポットサイズ変換手段を備えた光導波路素子を提供することである。さらには、その光導波路素子を用いた光変調デバイス並びに光送信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の光導波路素子及びそれを用いた光変調デバイス並びに光送信装置は、以下の技術的特徴を有する。
【0010】
(1) 電気光学効果を有する材料で形成されるリブ型の光導波路を有する光導波路基板と、前記リブ型の光導波路の入力端又は出力端が形成された位置に、該光導波路を伝搬する光波のモードフィールド径を変化させるスポットサイズ変換手段を備えた光導波路素子において、該スポットサイズ変換手段は、該リブ型の光導波路に接続され、該光導波路の幅を拡大するテーパー部分を備えた第1構成層と、該第1構成層に積層され、該第1構成層の幅よりも狭い幅を有する第2構成層と、該第2構成層の該リブ型の光導波路に近接する一部を除き、該第2構成層を覆うように配置され、該第2構成層の幅よりも広い幅を有する第3構成層を備え、該第2構成層を構成する材料の屈折率は、該第1構成層を構成する材料や該第3構成層を構成する材料の屈折率よりも高く、該第1構成層と該第3構成層の屈折率差は0.1より小さいことを特徴とする。
【0012】
) 上記(1)に記載の光導波路素子において、該第2構成層の該リブ型の光導波路側の先端部分は、該リブ型の光導波路上に配置されていることを特徴とする。
【0013】
) 上記(1)又は(2)に記載の光導波路素子において、該第3構成層の該リブ型の光導波路側の端面は、該第2構成層を伝搬する光波の進行方向に対して90度以外の傾きを有して配置されていることを特徴とする。
【0014】
) 上記(1)乃至()のいずれかに記載の光導波路素子において、該光導波路基板の端部側に位置する該スポットサイズ変換手段の端面構造は、該第2構成層を取り囲むように、該第1構成層と該第3構成層が配置されていることを特徴とする。
【0015】
) 上記(1)乃至()のいずれかに記載の光導波路素子において、該光導波路基板の端部側に位置する該スポットサイズ変換手段の端面構造は、該第2構成層が露出しないように、該第1構成層と該第3構成層が配置されていることを特徴とする。
【0016】
) 上記(1)乃至()のいずれかに記載の光導波路素子において、該光導波路基板は、該光導波路が形成された薄板と、該薄板を保持する保持基板とから構成され、該保持基板を構成する材料の屈折率は、該薄板を構成する材料の屈折率よりも低いことを特徴とする。
【0017】
) 上記(1)乃至()のいずれかに記載の光導波路素子において、該光導波路基板は、該光導波路が形成された薄板と、該薄板を保持する保持基板と、該薄板と該保持基板との間に中間層を設け、該中間層を構成する材料の屈折率は、該薄板を構成する材料の屈折率よりも低いことを特徴とする。
【0018】
) 上記(1)乃至()のいずれかに記載の光導波路素子は、該光導波路を伝搬する光波を変調するための変調電極を備え、該光導波路素子と、該光導波路素子の変調電極に入力する変調信号を増幅する電子回路とを筐体の内部に収容することを特徴とする光変調デバイスである。
【0019】
) 上記()に記載の光変調デバイスと、該光変調デバイスに変調動作を行わせる変調信号を出力する電子回路とを有することを特徴とする光送信装置である。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、電気光学効果を有する材料で形成されるリブ型の光導波路を有する光導波路基板と、前記リブ型の光導波路の入力端又は出力端が形成された位置に、該光導波路を伝搬する光波のモードフィールド径を変化させるスポットサイズ変換手段を備えた光導波路素子において、該スポットサイズ変換手段は、該リブ型の光導波路に接続され、該光導波路の幅を拡大するテーパー部分を備えた第1構成層と、該第1構成層に積層され、該第1構成層の幅よりも狭い幅を有する第2構成層と、該第2構成層の該リブ型の光導波路に近接する一部を除き、該第2構成層を覆うように配置され、該第2構成層の幅よりも広い幅を有する第3構成層を備え、該第2構成層を構成する材料の屈折率は、該第1構成層を構成する材料や該第3構成層を構成する材料の屈折率よりも高く、該第1構成層と該第3構成層の屈折率差は0.1より小さいため、各層の配置に係る位置精度を比較的緩やかにでき、各層の表面の荒れによる光挿入損失の発生も低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の光導波路素子に係る第1の実施例を示す平面図である。
図2図1の光導波路素子の断面図であり、(a)一点鎖線A-A’の断面図、(b)一点鎖線B-B’の断面図、(c)一点鎖線C-C’の断面図、(d)一点鎖線D-D’の断面図である。
図3】光導波路基板の他の例を示す図である。
図4】本発明の光導波路素子に係る第2の実施例を示す平面図である。
図5】本発明の光導波路素子に係る第3の実施例を示す平面図である。
図6図5の光導波路素子の断面図であり、(a)一点鎖線E-E’の断面図、(b)一点鎖線F-F’の断面図である。
図7図6の別の実施例を示す図である。
図8図5の応用例を示す図である。
図9】本発明の光変調デバイス及び光送信装置を説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の光導波路素子について、好適例を用いて詳細に説明する。
なお、以下の説明では、光導波路のスポットサイズ変換手段の構造は、出力端を中心に説明するが、入力端であっても同様に構成できることは言うまでもない。
本発明の光導波路素子は、図1及び2に示すように、電気光学効果を有する材料で形成されるリブ型の光導波路10を有する光導波路基板(1,4)と、前記リブ型の光導波路10の入力端又は出力端が形成された位置に、該光導波路を伝搬する光波のモードフィールド径を変化させるスポットサイズ変換手段を備えた光導波路素子において、該スポットサイズ変換手段は、該リブ型の光導波路10に接続され、該光導波路の幅を拡大するテーパー部分11を備えた第1構成層(1)と、該第1構成層に積層され、該第1構成層の幅よりも狭い幅を有する第2構成層(2)と、該第2構成層の該リブ型の光導波路に近接する一部を除き、該第2構成層を覆うように配置され、該第2構成層の幅よりも広い幅を有する第3構成層(3)を備えていることを特徴とする。
【0023】
本発明の光導波路素子に使用される光導波路を構成する材料としては、電気光学効果を有する強誘電体材料、具体的には、ニオブ酸リチウム(LN)やタンタル酸リチウム(LT)、PLZT(ジルコン酸チタン酸鉛ランタン)などの基板や、これらの材料によるエピタキシャル膜などが利用可能である。また、半導体材料や有機材料など種々の材料も光導波路素子の基板として利用可能である。
【0024】
本発明で使用される光導波路10の厚みH1は、1μm以下の極めて細いものであり、LNなどの結晶基板を機械的に研磨して薄板化する方法や、LNなどのエピタキシャル膜を使用する方法がある。エピタキシャル膜の場合には、例えば、SiO基板、サファイア単結晶基板やシリコン単結晶基板など、単結晶基板の結晶方位に合わせて、エピタキシャル膜を、スパッタ法、CVD法、ゾルゲル法などで形成する。
【0025】
図3に示すように、光導波路10を含む第1構成層1を構成する基板の厚み(図3のH1(10)とH1(12)を加えた厚み)が、例えば2~3μm程度と極めて薄いため、光導波路素子の機械的強度を高めるため、第1構成層1の裏面側には、保持基板4が配置される。保持基板4は、SiO基板などのように、第1構成層1(光導波路10)より低屈折率の材料が好ましい。また、第1構成層1と保持基板4とは直接接合や接着剤を用いて接合する方法も利用可能である。さらに、第1構成層と保持基板との間に中間層を用いることで、保持基板の選択肢を広げることが可能となる。例えば、LNより低屈折率で低誘電率のSiOを中間層として数μmの厚みで形成すれば、屈折率の高いSiやアルミナなども保持基板として使うことが可能となる。一方、図2(a)に示すように、保持基板4を結晶成長の土台として使用し、エピタキシャル膜の光導波路10を構成する第1構成層1を設けることも可能である。
【0026】
光導波路10を構成するリブ型の突起の形成方法は、光導波路を形成する層(例えばLN層)を、ドライ又はウェットエッチングすることで形成することができる。また、リブ部の屈折率を高めるため、リブ部の位置にTiなどの高屈折率材料を熱拡散する方法も併せて使用することも可能である。
【0027】
本発明の光導波路素子の特徴であるスポットサイズ変換手段(SSC)は、図1及び図1に示す一点鎖線(A-A’等)における断面図である図2に示すように、リブ型の光導波路10に接続され、該光導波路の幅を拡大するテーパー部分11を備えた第1構成層(1)と、該第1構成層に積層され、該第1構成層の幅よりも狭い幅を有する第2構成層(2)と、該第2構成層の該リブ型の光導波路に近接する一部を除き、該第2構成層を覆うように配置され、該第2構成層の幅よりも広い幅を有する第3構成層(3)から構成される。
【0028】
第2構成層(2)を構成する材料の屈折率は、第1構成層(1)を構成する材料や第3構成層(3)を構成する材料の屈折率よりも高い。また、必要に応じて、第1構成層(1)と第3構成層(3)とは同じ屈折率を有する材料で構成することも可能である。具体的には、第1構成層は、上述のように、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウムなどの結晶や、これらにその他の物質をドープした結晶であっても良い。また、第2構成層としては、Si、Geのいずれかを含む材料を用いることができる。さらに、第3構成層は、第1構成層と同じ材料や、Ta、Nb、Ti、Zr、Ce、Zn、Sb、Ndを含む材料で形成することができる。第3構成層に使用する材料は、第1構成層の屈折率との差が小さいほど、第2構成層から上下層への光のしみ出し量が均等になるため、結合端面のMFDにおいて、第2構成層を挟んだ上下方向の対称性が高くなり、結合損をより小さくすることができる。この観点から、第1、第3構成層の屈折率差は0.1より小さいことが好ましい。
【0029】
本発明に使用するスポットサイズ変換手段では、第1構成層(1)を構成する光導波路10をテーパー部分11を使用してスポットサイズを横方向(図2の幅W1方向)に広げる。しかしながら、第1構成層(1)の上側には、第1構成層より屈折率の高い第2構成層(2)が配置されているため、第1構成層1(11)を伝搬する光波は、第2構成層の方にも引き寄せられながら、スポットサイズが拡大しているため、マルチモードが発生し難く、テーパー部分の角度θ1も、精確に設計する必要は無く、所望の角度より少し小さく(テーパー部分の広がり角が大きく)なっても問題は無い。
【0030】
この光波を第2構成層側に引きつける効果は、第1構成層の光導波路10がテーパー部分11に変化する前に発生させることが効果的である。このため、第2構成層の光導波路10側の先端部分αは、光導波路10とテーパー部分11との接続部βよりも光導波路10側に配置されることがより望ましい。
【0031】
図1の一点鎖線B-B’における断面図である図2(b)に示すように、光導波路10(高さH1:1μm、幅W1:1μmのサイズ,MFD:1μm)の上に、光導波路10(第1構成層1)よりも屈折率の高い第2構成層2を出現させる。しかしながら、第2構成層2の厚みH2は50~100nmと非常に薄いため、第2構成層内にはモードが立たず、第1構成層1の外側に一部が染み出すような形で、ほぼ第1構成層の光導波路と同等のサイズのMFD(図2の円形又は楕円状の点線Lで示す。)が観察される。
【0032】
その後、図1に示すように、第1構成層は緩い角度で先太になり、一点鎖線C-C’の断面図である図2(c)に示すように、その上の第2構成層は、幅W2を3~5μmまで広がっている。第2構成層の幅W2は、第1構成層1と第2構成層2の屈折率の関係により0.05~5μmの範囲で調整される。W2がこれより細い場合、シングルモードを保ちやすい利点はあるが、第2構成層自体の形成が困難である。逆に太い場合にはマルチモードが立ちやすい欠点はあるものの、形成が容易になることから、上述した範囲内で作成することが望ましい。
【0033】
さらに、図1の一点鎖線C-C’から一点鎖線D-D’にかけては、第2構成層2を覆うように、第3構成層3が形成される。上述したように、第3構成層3の屈折率は、第2構成層の屈折率よりも低く、例えば、第1構成層1との同じ屈折率であることが望ましい。図1の一点鎖線D-D’の断面図である図2(d)に示すように、光導波路基板(1,4)の端部側に位置するスポットサイズ変換手段の端面構造は、第2構成層2を取り囲むように、第1構成層1と第3構成層3が配置されている。各構成要素のサイズは、一例として、第2構成層2の幅W2を3~5μmとし、第1構成層1の厚みH1を1μm、第3構成層3の厚みH3を1~4μmに設定できる。このような範囲に設定した際に、光波Lの入力端又は出力端におけるMFDは、図2(d)に示すように、横方向は3~5μm、縦方向は2~5μmまで拡大される。このように、第1構成層から第3構成層までの3種の材料からなるSSCとして、その機能を発現させることが出来る。
【0034】
第3構成層3の形状及び配置に際しては、第2構成層2に沿って伝播する光波に対して、急激な屈折率変化を発生させないように、構成することが好ましい。具体的には、図1に示すように、第3構成層のリブ型光導波路10側の端面(30,31)が光波の伝搬方向(矢印Loutと同じ方向)に対する角度(θ2,θ3)が90度以外に設定する。例えば、図1のθ2で100~170度、θ3で10~80度に設定することが可能である。θ2とθ3は逆の数値であっても良い。さらに、図1では第3構成層の端面(30,31)を一直線上に配置したが、図4に示すように、端面30と31とを鋭角に配置し、第3構成層の幅が徐々に広がるように構成することも可能である。この場合には、θ3は100~170度に設定できる。
【0035】
他の実施例では、図5乃至8に示すように、光導波路基板(1,4)の端部側に位置するスポットサイズ変換手段の端面構造は、第2構成層2が露出しないように、第1構成層1と第3構成層2が配置されている。図5に示すように、第2構造層2は、光導波路基板(1,4)の端部に向けて、幅を徐々に狭くしている。これに対応し、光波の閉じ込め機能を第3構成層3で担うため、図5に示すように、第3構成層の幅W3を、例えば、3~5μmとなるように調整している。この様子を、図5の一点鎖線E-E’及びF-F’における断面図である図6(a)及び(b)に示す。楕円状の点線Lは、光波のMFDの輪郭の概略を示す。
【0036】
光の入力端又は出力端である一点鎖線F-F’における断面図(図6(b))では、第2構成層2は消失しており、第1構成層1と第3構成層3による2種の材料からなるSSCとして、その機能を発現させることが出来る。このような構造は、図1のSSCと比較し、微細導波路である第2構成層2の出来栄えが、SSCの特性に影響を与えることが抑制でき、製造プロセスの裕度が広がるという利点がある。また、基板端面において第2構成層2が無いことにより実効屈折率を下げることが出来るため、反射を小さくすることが出来る点でも有効である。なお、第2構成層2を先細の状態で光の入力端又は出力端付近まで残すことで、第2構成層による閉じ込め効果を維持し、第3構成層3のリッジの側面荒れの影響を小さくすることも可能となる。
【0037】
図6に示す断面図の代わりに、図7に示す断面図の実施例を採用することも可能である。図7では、第3構成層3の幅の変化に対応し、第1構成層1の幅も変化している。これにより、第1構成層と第3構成層が協働して光閉じ込めを行うことができ、光波のMFDの形状も安定化することが可能となる。さらに、第1及び第3構成層に広がって伝搬する際に、予定以上にMFDが大きくなった場合には、図8に示すように、光の入力端又は出力端に向かって、第3構成層、又は第3及び第1構成層の幅を、徐々に狭くする構成を付与することも可能である。当然、第3構成層、又は第3及び第1構成層の幅を、徐々に拡大し、伝搬する光波のMFDをさらに拡大することも可能である。
【0038】
以上のことからも、本発明の光導波路素子は、第1乃至第3構成層の形状及び配置を調整することで、スポットサイズ変換手段として機能させるだけでなく、各層の配置に係る位置精度を比較的緩やかにでき、また、第2構成層の形状・配置により、第3構成層等の各層の表面の荒れによる光挿入損失の発生も低減することが可能となる。
【0039】
なお、上述の説明では、各層の構成が、各々、単一の構成層として説明したが、例えば、第1乃至3構成層の少なくとも一つの層を、2つ以上層の組合せとして構成することも可能である。その際には、形状や材質を若干変化させ、隣接する構成層と協働して適切なMFDとなるように適宜設定することも可能である。
【0040】
次に、本発明の光導波路素子を用いた光変調デバイスと光送信装置について説明する。
上述した光導波路素子は、さらに、光導波路基板1(4)に光導波路10を伝搬する光波を変調する変調電極(不図示)を設け、図9のように、筐体SC内に収容される。さらに、光導波路に光波を入出力する光ファイバFを設けることで、光変調デバイスMDを構成することができる。図9では、光ファイバは、筐体の側壁を貫通する貫通孔を介して筐体内に導入し、光導波路素子に直接接合されている。光導波路素子と光ファイバとは、空間光学系を介して光学的に接続することも可能である。光導波路10の入力端や出力端には、スポットサイズ変換手段(SSC1,SSC2)が設けられている。
【0041】
光変調デバイスMDに変調動作を行わせる変調信号を出力する電子回路(デジタル信号プロセッサーDSP)を、光変調デバイスMDに接続することにより、光送信装置OTAを構成することが可能である。光導波路素子に印加する変調信号は増幅する必要があるため、ドライバ回路DRVが使用される。ドライバ回路DRVやデジタル信号プロセッサーDSPは、筐体SCの外部に配置することも可能であるが、筐体SC内に配置することも可能である。特に、ドライバ回路DRVを筐体内に配置することで、ドライバ回路からの変調信号の伝搬損失をより低減することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
以上説明したように、本発明によれば、製造工程が複雑化せず、光挿入損失を抑制したスポットサイズ変換手段を備えた光導波路素子を提供することが可能となる。さらには、その光導波路素子を用いた光変調デバイス並びに光送信装置を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0043】
1 光導波路基板(第1構成層)
2 第2構成層
3 第3構成層
4 保持基板
10 リブ型光導波路
11 テーパー部分
MD 光変調デバイス
OTA 光送信装置

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9