(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】光導波路素子とそれを用いた光変調デバイス並びに光送信装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/035 20060101AFI20241112BHJP
G02B 6/124 20060101ALI20241112BHJP
G02B 6/42 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
G02F1/035
G02B6/124
G02B6/42
(21)【出願番号】P 2021059222
(22)【出願日】2021-03-31
【審査請求日】2023-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】坂井 猛
(72)【発明者】
【氏名】片岡 利夫
(72)【発明者】
【氏名】片岡 優
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-209018(JP,A)
【文献】特開2019-045749(JP,A)
【文献】特開2014-235218(JP,A)
【文献】特開平11-281837(JP,A)
【文献】特開2019-039984(JP,A)
【文献】特開2020-016717(JP,A)
【文献】特開2011-191564(JP,A)
【文献】特開2019-095698(JP,A)
【文献】特開2011-077133(JP,A)
【文献】米国特許第06885795(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0209704(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00-1/125
G02F 1/21-7/00
G02B 6/12-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光導波路を形成した基板を備えた光導波路素子において、
該光導波路は、該光導波路の入力部と出力部とを該基板の同一端に配置する折り返し型光導波路であり、
該入力部と該出力部との間隔が1500μm以下であり、
該光導波路の一部に合流又は分岐するモニタ用光導波路に接続されたグレーティングを備え、
該グレーティングを介して
、該光導波路を伝搬する光波の少なくとも一部を出力
し、
該モニタ用光導波路から該グレーティングに伝搬する光波の進行方向の延長線上には、該光導波路の一部が配置されており、前記一部の光導波路は、該光導波路の分岐部及び合波部ではないことを特徴とする光導波路素子。
【請求項2】
請求項1に記載の光導波路素子において、該光導波路がマッハツェンダー型光導波路を備え、該グレーティングにより
、該マッハツェンダー型光導波路の出力部からの光波の少なくとも一部を出力することを特徴とする光導波路素子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光導波路素子において、該光導波路はリブ型光導波路であることを特徴とする光導波路素子。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の光導波路素子において、該光導波路の端部には、光波のモードフィールド径を変化させるスポットサイズ変換部が設けられていることを特徴とする光導波路素子。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれかに記載の光導波路素子において、該光導波路を伝搬する光波の少なくとも一部を出力する該グレーティングの上面側には、受光素子が配置されていることを特徴とする光導波路素子。
【請求項6】
請求項5に記載の光導波路素子において、該グレーティングから出力される光波で該受光素子に入射しない光波を吸収する光吸収部材を設けることを特徴とする光導波路素子。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の光導波路素子において、該モニタ用光導波路に接続されている該グレーティングに対して、該モニタ用光導波路が配置されている側と反対の側には、光吸収部材が配置されていることを特徴とする光導波路素子。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の光導波路素子において、
該光導波路に光波を入力する他のグレーティングを備え、光波を出力する該グレーティング又は光波を入力する前記他のグレーティングのいずれかが配置された部分では、光導波路の幅が広げて構成されていることを特徴とする光導波路素子。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の光導波路素子において、該基板の上面の一部に補強部材が配置され、該グレーティングは該補強部材が配置されていない位置に形成されていることを特徴とする光導波路素子。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の光導波路素子と、該光導波路素子を収容する筐体と、該光導波路素子に光波を入出力する光ファイバとを有することを特徴とする光変調デバイス。
【請求項11】
請求項10に記載の光変調デバイスにおいて、該光導波路を伝搬する光波を変調する変調電極を該基板に設け、該変調電極に入力する変調信号を増幅する電子回路を該筐体の内部又は外部に有することを特徴とする光変調デバイス。
【請求項12】
請求項11に記載の光変調デバイスと、該光変調デバイスに変調動作を行わせる変調信号を出力する電子回路とを有することを特徴とする光送信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路素子とそれを用いた光変調デバイス並びに光送信装置に関し、特に、光導波路を形成した基板を備えた光導波路素子に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信分野や光計測分野において、ニオブ酸リチウム(LN)などの電気光学効果を有する基板に光導波路を形成し、光導波路を伝搬する光波を変調する変調電極を備えた光変調器などの光導波路素子が多用されている。
【0003】
HB-CDM(High Bandwidth Coherent Driver Modulator)のように、近年の光変調デバイスにおいては、光導波路素子を駆動するドライバ回路を光導波路素子と一緒に筐体内に組み込み、さらに全体のパッケージを小型化することなどが求められている。ドライバ回路を光導波路素子の一端側に配置し、高周波信号を光導波路素子に入力する場合、光導波路素子の他端側には、光波を入力する入力部と光波を出力する出力部を一緒に配置することが提案されている。
【0004】
このように光入出力を基板の同一端に配置するには、特許文献1に示すような折り返し光導波路を形成する必要がある。従来のLNを用いた光変調器では、形成される光導波路の幅は、光ファイバのコア径と同じ10μm程度であった。このため、10μmの幅の光導波路を折り返した場合には、基板の小型化が難しく、しかも折り返し部での伝搬損失も大きくなるという問題を生じていた。
【0005】
この問題を解消するため、光導波路の幅を1μm程度に狭くした光導波路素子が提案されている。ただし、光導波路素子と光ファイバとを接続するには、伝搬する光波のモードフィールド径(MFD)が大きく異なるため、単純に接続した場合には、接続損失も大きくなる。このため、光導波路素子の光導波路の入力部及び出力部に、MFDを変化させるスポットサイズ変換部(SSC)を設けることも提案されている。
【0006】
図1は、HB-CDMに用いられる光導波路素子の一例であり、基板1に折り返しの光導波路2を設け、さらに、光導波路の入力部や出力部にSSC(入力部のSSCを符号3で示す。)が設けられている。Linは光ファイバを介して入力される入力光である。また、2つの出力部から出た光波は偏波合成部4を経て出力光Loutとして光ファイバーに入力される。光導波路の形状も単純に折り返すだけでなく、複数のマッハツェンダー型光導波路を入れ子状(ネスト型)に配置するなど、複雑化している。
【0007】
図1では、光波が入力用光ファイバーから入力部のSSC3、光導波路2(マッハツェンダー型光導波路)、出力部のSSC及び出力用光ファイバーの順で複数の構成パーツを順次伝搬している。仮に、光変調器全体の伝搬損失が大きい場合には、光波の伝搬箇所が多岐に亘るため、どの箇所に問題があるかを容易に特定できないという問題がある。
また、SSCが光導波路の幅を徐々に拡大するように形成する場合には、SSCは光導波路の形成時に同時に形成され、容易に光導波路の検査(評価)を行うことができる。しかしながら、光導波路形成後に別の材料を追加するなどしてSSCを形成する場合には、光導波路形成時点での光導波路のMFDが小さく光の入出力は困難であるため光導波路の検査(評価)は容易ではなかった。
また、基板の一部にミラーを形成し光波を反射させる構成も考えられるが、MFDが小さい場合は開口数(NA)が大きくなるため、光波全体を反射させるためには十分大きな高い面精度を有するミラーを基板上に形成する必要があり現実的ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2020-134874号公報
【文献】国際公開WO2012/042708号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、上述したような問題を解決し、伝搬損失や結合損失など光損失が発生している箇所を容易に特定することが可能な光導波路素子を提供することである。また、この光導波路素子を用いた光変調デバイス及び光送信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の光導波路素子、光変調デバイス、及び光送信装置は、以下のような技術的特徴を有する。
(1) 光導波路を形成した基板を備えた光導波路素子において、該光導波路は、該光導波路の入力部と出力部とを該基板の同一端に配置する折り返し型光導波路であり、該入力部と該出力部との間隔が1500μm以下であり、該光導波路の一部に合流又は分岐するモニタ用光導波路に接続されたグレーティングを備え、該グレーティングを介して、該光導波路を伝搬する光波の少なくとも一部を出力し、該モニタ用光導波路から該グレーティングに伝搬する光波の進行方向の延長線上には、該光導波路の一部が配置されており、前記一部の光導波路は、該光導波路の分岐部及び合波部ではないことを特徴とする。
【0011】
(2) 上記(1)に記載の光導波路素子において、該光導波路がマッハツェンダー型光導波路を備え、該グレーティングにより、該マッハツェンダー型光導波路の出力部からの光波の少なくとも一部を出力することを特徴とする。
【0012】
(3) 上記(1)又は(2)に記載の光導波路素子において、該光導波路はリブ型光導波路であることを特徴とする。
【0013】
(4) 上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の光導波路素子において、該光導波路の端部には、光波のモードフィールド径を変化させるスポットサイズ変換部が設けられていることを特徴とする。
【0014】
(5) 上記(2)乃至(4)のいずれかに記載の光導波路素子において、該光導波路を伝搬する光波の少なくとも一部を出力する該グレーティングの上面側には、受光素子が配置されていることを特徴とする。
【0015】
(6) 上記(5)に記載の光導波路素子において、該グレーティングから出力される光波で該受光素子に入射しない光波を吸収する光吸収部材を設けることを特徴とする。
【0016】
(7) 上記(1)乃至(6)のいずれかに記載の光導波路素子において、該モニタ用光導波路に接続されている該グレーティングに対して、該モニタ用光導波路が配置されている側と反対の側には、光吸収部材が配置されていることを特徴とする。
【0017】
(8) 上記(1)乃至(7)のいずれかに記載の光導波路素子において、該光導波路に光波を入力する他のグレーティングを備え、光波を出力する該グレーティング又は光波を入力する前記他のグレーティングのいずれかが配置された部分では、光導波路の幅が広げて構成されていることを特徴とする。
【0018】
(9) 上記(1)乃至(8)のいずれかに記載の光導波路素子において、該基板の上面の一部に補強部材が配置され、該グレーティングは該補強部材が配置されていない位置に形成されていることを特徴とする。
【0019】
(10) 上記(1)乃至(9)のいずれかに記載の光導波路素子と、該光導波路素子を収容する筐体と、該光導波路素子に光波を入出力する光ファイバとを有することを特徴とする光変調デバイスである。
【0020】
(11) 上記(10)に記載の光変調デバイスにおいて、該光導波路を伝搬する光波を変調する変調電極を該基板に設け、該変調電極に入力する変調信号を増幅する電子回路を該筐体の内部又は外部に有することを特徴とする。
【0021】
(12) 上記(11)に記載の光変調デバイスと、該光変調デバイスに変調動作を行わせる変調信号を出力する電子回路とを有することを特徴とする光送信装置である。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、光導波路を形成した基板を備えた光導波路素子において、該光導波路は、該光導波路の入力部と出力部とを該基板の同一端に配置する折り返し型光導波路であり、該入力部と該出力部との間隔が1500μm以下であり、該光導波路の一部に合流又は分岐するモニタ用光導波路に接続されたグレーティングを備え、該グレーティングを介して、該光導波路を伝搬する光波の少なくとも一部を出力し、該モニタ用光導波路から該グレーティングに伝搬する光波の進行方向の延長線上には、該光導波路の一部が配置されており、前記一部の光導波路は、該光導波路の分岐部及び合波部ではないように構成している。このため、該グレーティングを介して光波を特定の光導波路に入力したり、該グレーティングを介して特定の光導波路を伝搬する光波の一部を導出することが簡単に可能となる。これにより、光導波路素子の特定箇所の光損失を容易に検査することが可能となる。しかも、折り返し型光導波路におけるノイズ光の混入を抑制することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】従来の光導波路素子の一例を示す平面図である。
【
図2】本発明に係る光導波路素子の第1の実施例を示す平面図である。
【
図3】
図2の光導波路素子における光導波路とグレーティングについて説明する側面図である。
【
図4】本発明に係る光導波路素子の第2の実施例を示す平面図である。
【
図5】
図4の光導波路素子に用いられるモニタ用光導波路とグレーティングについて説明する側面図である。
【
図6】
図4の光導波路素子に用いられるモニタ用光導波路とグレーティングについて説明する平面図である。
【
図7】グレーティングの上側に受光素子を配置する様子を説明する側面図である。
【
図8】光導波路素子の光波の入力部を用いて検査する方法を説明する平面図である。
【
図9】光導波路素子の光波の出力部を用いて検査する方法を説明する平面図である。
【
図10】本発明に係る光導波路素子の他の検査方法を説明する平面図である。
【
図11】グレーティングの後段に光吸収部材(電極等)を配置する様子を説明する平面図である。
【
図12】本発明に係る光変調デバイスと光送信装置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明について好適例を用いて詳細に説明する。
本発明は、
図2乃至6に示すように、光導波路2を形成した基板1を備えた光導波路素子において、該光導波路2の一部に形成されたグレーティング6、又は該光導波路2の一部に合流又は分岐するモニタ用光導波路5に接続されたグレーティング6を備え、該グレーティング6を介して、該光導波路に光波を入力するか、又は該光導波路を伝搬する光波の少なくとも一部を出力することを特徴とする。
【0025】
電気光学効果を有する基板1としては、ニオブ酸リチウム(LN)やタンタル酸リチウム(LT)、PLZT(ジルコン酸チタン酸鉛ランタン)などの基板や、これらの材料による気相成長膜やこれらの材料を異種の基板に接合した複合基板などが利用可能である。
また、半導体材料や有機材料など種々の材料も利用可能である。
【0026】
光導波路の形成方法としては、光導波路以外の基板表面をエッチングしたり、光導波路の両側に溝を形成するなど、基板の光導波路に対応する部分を凸状としたリブ型光導波路を利用することが可能である。また、Tiなどを熱拡散法やプロトン交換法などで基板表面に高屈折率部分を形成することで光導波路を形成することも可能である。リブ型光導波路部分に高屈折率材料を拡散するなど、複合的な光導波路を形成することも可能である。
【0027】
光導波路を形成した基板は、変調信号のマイクロ波と光波との速度整合を図るため、10μm以下、より好ましくは5μm以下、更に好ましくは1μm未満の厚さ(厚さの下限は0.3μm以上が好ましい)まで研磨され、薄板化される。リブ型光導波路の高さは、1μm以下に設定することが好ましい。また、保持基板の上に気相成長膜を上述の基板の厚さ程度で形成し、当該膜を上述のような光導波路の形状に加工することも可能である。
【0028】
光導波路を形成した基板(薄板、薄膜)は、機械的強度を高めるため、直接接合又は樹脂等の接着層を介して、保持基板に接着固定される。直接接合する保持基板としては、光導波路や光導波路を形成した基板よりも屈折率が低く、光導波路などと熱膨張率が近い材料、例えば石英等が好適に利用される。また、低屈折率の中間層を介して保持基板に接合する際には、光導波路を形成した基板と同じ材料、例えばLN基板などを補強基板として利用することや、シリコンなどの高屈折率の基板を保持基板として利用することも可能である。
【0029】
光導波路素子を光変調器として使用する際には、光導波路、特に、マッハツェンダー型光導波路の分岐導波路に沿って変調電極が配置される。また、本発明の光導波路素子には、特許文献2などのように、光波のMFDを変化させるスポットサイズ変換部(SSC)3が配置されても良い。特に、光導波路形成後に別の材料を追加するなどしてSSCを形成する場合のように、MFDが小さい光導波路を使用する場合でも、後述するグレーティングを用いることにより、高い面精度を有するミラーを必要とせず、容易に光導波路の検査を行うことが可能となる。
【0030】
図2及び
図3に示すように、本発明の光導波路素子の特徴の一つは、光導波路2の一部にグレーティング6を形成することである。グレーティング6を介して、外部の光源7からの光波を光導波路2に入力することや、光導波路2を伝搬している光波の一部を外部に出力し、例えば、受光素子(PD1,PD2)で受光することが可能となる。本発明の「光導波路」はその一部にスポットサイズ変換部(SSC)3を形成する場合も含まれる。光導波路を形成後に別の材料を追加してSSCを形成する場合や、光導波路を加工してSSCを形成する場合であっても、必要に応じて、当該SSCの一部にグレーティングを形成することも可能である。
【0031】
また、
図4乃至6に示すように、光導波路2に接続するモニタ用光導波路5を用いることも可能である。本発明に使用されるモニタ用光導波路5は、光導波路2の途中から光波を入力したり、光導波路2の途中から光波の一部を導出するために使用される。光導波路2とモニタ用光導波路5との合流や分岐には、Y字型の光導波路を用いた合流部や分岐部の構成に限らず、光カプラーなどの合波又は分岐手段を用いることも可能である。
【0032】
本発明に使用されるグレーティング6は、光導波路の表面に周期的な凹凸又は周期的な密度分布を形成することで構成することが可能である。光波の入出力を容易にするため、グレーティング6の部分では光導波路の幅を広げて構成することも可能である。
【0033】
図2又は
図4の光導波路素子を用いた検査方法を説明する。以下では、
図4の実施例を中心に説明する。当然、
図2の実施例にも同様に適用できることは言うまでもない。光源7からの検査光をグレーティングに入射し、グレーティングから入った検査光は光導波路2に直接入力されるか、モニタ用光導波路5を介して光導波路2に入力される。そして複数のマッハツェンダー型光導波路を経た検査光は、光導波路2に形成されたグレーティングから、又は、出力側に配置されたモニタ用光導波路及びグレーティングを経て外部に出射され、受光素子(PD1,PD2)で検出される。この検査方法では、SSC3を経ずに光導波路2自体の光損失を測定することができるため、基板1に形成された光導波路2の状態(特性)を容易に判定(評価)することができる。
【0034】
また、光導波路2の状態を判定した上で、光源7に代えて光導波路素子の入力部に光ファイバ等で検査光を入力し、
図2又は
図4の受光素子(PD1,PD2)で検査光を受光することで、入力部のSSCの状態や入力用光ファイバと入力部との接続状態を判定することが可能となる。
【0035】
さらに、光導波路2の状態を判定した上で、光源7から検査光を入力し、光導波路素子の出力部から出射する光波を、光ファイバや偏波合成手段を含む光学部品を経て検出することで、出力部のSSCの状態や出力側の光学系と出力部との接続状態を判定することも可能となる。
【0036】
図5はグレーティング6やモニタ用光導波路5の様子を説明する側面図であり、
図6は平面図である。グレーティング6の斜め上側から光源7により光波がグレーティング6に入射される。グレーティング6の出射側では、モニタ用光導波路5を経てグレーティング6に入射した光波は、グレーティング6の斜め後側に放出され、受光素子(PD)で検出される。
【0037】
図4のグレーティングは検査で使用されると、その後不要となる。光導波路2に光波を入力するグレーティング6やモニタ用光導波路5は、グレーティング6の表面を電極等で覆うことにより光波が入らず、そのまま放置しても特に問題は無い。しかしながら、光導波路2を伝搬する光波の一部を抽出するモニタ用光導波路5及びグレーティング6は、常に光波の一部を導出しているため、有効利用することが求められる。その一例として、
図7に示すように、グレーティング6の上側に受光素子8を配置し、光導波路2を伝搬する光波をモニタし、変調電極(DCバイアス電極を含む)のバイアス制御に使用することも可能である。グレーティング6は光波を上方に放射する特性があるため、従来のエバネッセント光等を検出するよりもより高感度で光波をモニタすることが可能となる。
【0038】
図8は、
図4の入力側のグレーティング6等を省略したものであり、光ファイバ等の入力光を検査光として、光導波路素子の入力部(SSC3)に入射し、入力側のSSC3及び光導波路2の光損失などの光学特性を一度に測定することを可能としている。また、受光素子(PD1,PD2)で検査光を受光しモニタすることで、入力側の光ファイバと光導波路素子の入力部とのアライメントを調整することも可能である。
【0039】
図9は、
図4の出力側のグレーティング6等を省略したものであり、光源7から検査光をグレーティング6に入力し、光導波路2及び光導波路素子の出力部(SSC3)の出射光を検出することで、光導波路2及び出力部のSSC3の光損失を一度に測定することを可能としている。また、出力側の光ファイバや光学部品などと光導波路素子の出力部とのアライメントを調整することも可能である。
【0040】
図10は、光導波路2の入力部及び出力部のみでなく、マッハツェンダー型光導波路毎の光損失を測定するため、マッハツェンダー型光導波路の入力部又は出力部にモニタ用光導波路5とグレーティング6を接続配置したものである。具体的には
図10は複数のマッハツェンダー型光導波路を入れ子状に配置した構成であり、サブマッハツェンダー型光導波路や、それらを各分岐導波路に持つメインマッハツェンダー型光導波路の入力部や出力部などにもモニタ用光導波路5とグレーティング6を接続配置している。
【0041】
マッハツェンダー型光導波路の出力部に配置されたグレーティング等は、検査終了後に、受光素子をグレーティングの上側に配置固定し、当該マッハツェンダー型光導波路の変調状態をモニタするために使用することも可能である。
また、モニタ用光導波路5とグレーティング6は
図10に記載のその他のマッハツェンダー型光導波路の入力部又は出力部に形成してもよい。
【0042】
モニタ用光導波路5からグレーティング6に入射した光波は、グレーティング6によりグレーティング6の後方上向きに放射されるが、光波の一部は、グレーティング6の後方の基板1内を伝搬する。このため、モニタ用光導波路5からグレーティング6に伝搬する光波の進行方向の延長線上には、光導波路2の分岐部及び合波部、並びに基板1の外に配置される光学部品の光路が配置されないようにすることが好ましい。特に、
図10のように光入出力を基板の同一端に配置する折り返し型光導波路の場合、光の入力部と出力部が例えば1500μm以下、場合によって1000μm以下程度と非常に近接するためこのような構成は特に好ましい。これにより、ノイズ光の混入を抑制することが可能となる。
【0043】
また、ノイズ光を効果的に除去するためには、例えば、
図11に示すように、グレーティング6に対して、モニタ用光導波路5が配置されている側と反対の側に、金属(電極等)などの光吸収部材(AB2)が配置されてもよい。なお、ここでの「反対の側」とは、例えば、グレーティング6の後方の基板1内を伝搬する光波の少なくとも一部を直接的もしくは間接的に吸収する位置であればよい。
【0044】
また、受光素子で受光できなかったグレーティングからの高次の回折光やそれらの多重反射光を吸収するため、
図3に示すように、受光素子(PD1)の後側に、金属などの光吸収部材(AB1)を配置することも可能である。当該技術は、
図4の光導波路素子にも同様に適用できる。また、
図7に示すようにグレーティングの上側に受光素子8を配置した場合にも、受光素子8の上側に光吸収部材を配置することができる。光吸収部材に金属を設けた場合、それを接地電極と接続して用いることも可能である。
【0045】
基板1の光導波路の入力部や出力部には、光ファイバや光学部品と基板1との接続をサポートするため補強部材10が配置される。この補強部材10とグレーティング6との干渉を避けるため、
図12に示すように、グレーティング6は補強部材10が配置されていない位置に形成することが好ましい。
【0046】
図12に示すように、本発明の光導波路素子(基板1)を金属等の筐体CA内に収容し、筐体の外部と光導波路素子とを光ファイバFで接続することで、コンパクトな光変調デバイスMDを提供することができる。当然、基板1の光導波路の入射部又は出射部に光ファイバを直接接続するだけでなく、空間光学系を介して光学的に接続することも可能である。
【0047】
光変調デバイスMDに変調動作を行わせる変調信号S0を出力する電子回路(デジタル信号プロセッサーDSP)を、光変調デバイスMDに接続することにより、光送信装置OTAを構成することが可能である。光導波路素子に印加する変調信号Sは増幅する必要があるため、ドライバ回路DRVが使用される。ドライバ回路DRVやデジタル信号プロセッサーDSPは、筐体CAの外部に配置することも可能であるが、筐体CA内に配置することも可能である。特に、ドライバ回路DRVを筐体内に配置することで、ドライバ回路からの変調信号の伝搬損失をより低減することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上のように、本発明によれば、伝搬損失や結合損失など光損失が発生している箇所を容易に特定することが可能な光導波路素子を提供することが可能となる。また、この光導波路素子を用いた光変調デバイス及び光送信装置を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0049】
1 基板
2 光導波路
3 スポットサイズ変化部(SSC)
5 モニタ用光導波路
6 グレーティング