IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

7585971アミノオルガノキシアルコキシシラン化合物の製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】アミノオルガノキシアルコキシシラン化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/10 20060101AFI20241112BHJP
【FI】
C07F7/10 C
C07F7/10 T
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021090745
(22)【出願日】2021-05-31
(65)【公開番号】P2022183433
(43)【公開日】2022-12-13
【審査請求日】2023-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥村 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】殿村 洋一
【審査官】伊佐地 公美
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-098459(JP,A)
【文献】特開2013-060376(JP,A)
【文献】特開2016-088854(JP,A)
【文献】Zhurnal obshchei Khimii,1984年,Vol. 54,pp. 657-662
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立して、炭素数1~10アルキル基、アリール基またはアラルキル基を表すか、R 1 のアルキル基の炭素原子とR 2 のアルキル基の炭素原子とが、直接または1個以上の窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれるヘテロ原子を介して結合して形成した炭素数3~6の環を表し、R3、炭素数1~10アルキレン基、アリーレン基またはアラルキレン基を表す。)
で表される不飽和結合含有アミン化合物と、下記一般式(2)
【化2】
(式中、R4およびR5は、それぞれ独立して炭素数1~10の1価炭化水素基を表し、nは、0~2の整数である。)
で表されるハイドロジェンオルガノキシシラン化合物を白金触媒存在下にてヒドロシリル化反応させる、下記一般式(3)
【化3】
(式中、R1~R5およびnは、前記と同じ意味を表す。)
で表されるアミノオルガノキシアルコキシシラン化合物の製造方法において、
下記一般式(4)
【化4】
[式中、R6は、炭素数1~10アルキレン基、アリーレン基またはアラルキレン基を表し、Xは、ハロゲン原子を表し、Aは、下記一般式(5)または(6)で表される置換基を表す。
【化5】
(式中、R7~R10は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~5の直鎖状のアルキル基を表す。)]
で表されるハロゲン化不飽和炭化水素化合物の存在下にて前記ヒドロシリル化反応を行うアミノオルガノキシアルコキシシラン化合物の製造方法。
【請求項2】
補触媒として、下記一般式(7)
【化6】
(式中、R11は、水素原子または炭素数1~30のk価の炭化水素基を表し、R12は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~20の1価炭化水素基を表し、kは、1または2の整数である。)
で表されるカルボン酸アミド化合物を用いる請求項1記載のアミノオルガノキシアルコキシシラン化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノオルガノキシアルコキシシラン化合物の製造方法に関し、さらに詳述すると、塗料添加剤、接着剤、シランカップリング剤、繊維処理剤、表面処理剤等として有用なアミノオルガノキシアルコキシシラン化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アミノオルガノキシアルコキシシラン化合物は、塗料添加剤、接着剤、シランカップリング剤、繊維処理剤、表面処理剤、樹脂変性剤として有用である。このようなアミノオルガノキシアルコキシシラン化合物としては、アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン等が知られている。
【0003】
上記アミノオルガノキシアルコキシシラン化合物は、通常、ハロゲン基を有する有機ケイ素化合物と、1級または2級アミン化合物との置換反応や、非特許文献1に記載されているようなアミノ基を有する不飽和結合含有化合物とハイドロジェンオルガノキシシラン化合物との白金触媒によるヒドロシリル化反応によって製造される。
しかし、非特許文献1の方法は、工程が簡便かつ廃棄物が少ない一方で、付加位置の選択性が低く、異性体が多量に生成してしまうという問題点があった。
この問題点を解決すべく、例えば、特許文献1では、無機酸のアンモニウム塩を添加することにより、異性体の生成を抑制する方法が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-98459号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】Zh.Obshch.Khim.,(1984)54,657
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の方法は、非特許文献1と比較すると異性体の生成が抑制されるが、依然として相当量の異性体が生成しており、抑制効果は十分ではなかった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、ヒドロシリル化反応時の異性体の生成を抑制でき、異性体含有量のより少ないアミノオルガノキシアルコキシシラン化合物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、白金触媒を用いる不飽和結合含有アミン化合物と、ハイドロジェンオルガノキシシラン化合物とのヒドロシリル化反応をハロゲン化不飽和炭化水素存在下にて行うことで、付加異性体の生成を抑制でき、異性体含有量の少ないアミノオルガノキシアルコキシシラン化合物が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、
1. 下記一般式(1)
【化1】
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立して、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれるヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の1価炭化水素基を表し、互いに結合してこれらが結合する窒素原子と共に環を形成していてもよく、R3は、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれるヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の2価炭化水素基を表す。)
で表される不飽和結合含有アミン化合物と、下記一般式(2)
【化2】
(式中、R4およびR5は、それぞれ独立して炭素数1~10の1価炭化水素基を表し、nは、0~2の整数である。)
で表されるハイドロジェンオルガノキシシラン化合物を白金触媒存在下にてヒドロシリル化反応させる、下記一般式(3)
【化3】
(式中、R1~R5およびnは、前記と同じ意味を表す。)
で表されるアミノオルガノキシアルコキシシラン化合物の製造方法において、
下記一般式(4)
【化4】
[式中、R6は、炭素数1~20の2価炭化水素基を表し、Xは、ハロゲン原子を表し、Aは、下記一般式(5)または(6)で表される置換基を表す。
【化5】
(式中、R7~R10は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~20の1価炭炭化水素基を表す。)]
で表されるハロゲン化不飽和炭化水素化合物の存在下にて前記ヒドロシリル化反応を行うアミノオルガノキシアルコキシシラン化合物の製造方法、
2. 補触媒として、下記一般式(7)
【化6】
(式中、R11は、水素原子または炭素数1~30のk価の炭化水素基を表し、R12は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~20の1価炭化水素基を表し、kは、1または2の整数である。)
で表されるカルボン酸アミド化合物を用いる1のアミノオルガノキシアルコキシシラン化合物の製造方法
を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、異性体含有量の少ないアミノオルガノキシアルコキシシラン化合物を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明の下記一般式(3)
【0012】
【化7】
【0013】
で表されるアミノオルガノキシアルコキシシラン化合物の製造方法は、下記一般式(1)
【0014】
【化8】
【0015】
で表される不飽和結合含有アミン化合物と、下記一般式(2)
【0016】
【化9】
【0017】
で表されるハイドロジェンオルガノキシシラン化合物を白金触媒存在下にてヒドロシリル化反応させる際に、下記一般式(4)
【0018】
【化10】
【0019】
で表されるハロゲン化不飽和炭化水素化合物の存在下にて反応を行うことを特徴とする。
【0020】
上記一般式(1)および(3)において、R1およびR2は、それぞれ独立して、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれるヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20、好ましくは炭素数1~10、より好ましくは炭素数1~5の1価炭化水素基である。
1およびR2の1価炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、イコシル基等の直鎖状のアルキル基;イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、テキシル、2-エチルヘキシル基等の分岐鎖状のアルキル基;シクロペンチル、シクロヘキシル基等の環状のアルキル基;ビニル、アリル(2-プロペニル)、1-プロペニル基等のアルケニル基;フェニル、トリル基等のアリール基;ベンジル基等のアラルキル基;アミノメチル、アミノエチル、メチルアミノエチル、ジメチルアミノエチル、ジフェニルアミノエチル、アミノプロピル、2,3-ジアミノプロピル基等のアミノアルキル基;ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル等のヒドロキシアルキル基;メトキシメチル、エトキシメチル、メトキシエチル、メトキシプロピル基等のアルコキシアルキル基;メチルチオメチル、エチルチオメチル、メチルチオエチル、メチルチオプロピル基等のチオアルキル基等が挙げられる。これらの中でも、特に原料の入手容易性の点からメチル基、エチル基、イソプロピル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基が好ましい。
【0021】
また、R1とR2とが結合してこれらが結合する窒素原子と共に環を形成している場合、R1の炭素原子とR2の炭素原子とが直接結合したものの他、R1の炭素原子とR2の炭素原子とが、1個以上の窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれるヘテロ原子を介して結合して環を形成したものであってもよく、具体的にはピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環等が挙げられる。R1とR2とが環を形成した場合の環中に含まれる炭素数は、好ましくは3~6である。
【0022】
上記一般式(1)および(3)において、R3は、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれるヘテロ原子を含んでいてもよい、炭素数1~20、好ましくは1~10、より好ましくは炭素数1~5の2価炭化水素基である。
3の2価炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ヘキサメチレン、オクタメチレン、デカメチレン基等の直鎖状のアルキレン基;プロピレン、メチルプロピレン、イソブチレン基等の分岐鎖状のアルキレン基;シクロペンチレン、シクロヘキシレン、シクロヘキシレンエチレン基等の環状のまたは環状構造を含むアルキレン基;フェニレン基等のアリーレン基;メチレンフェニレン、メチレンフェニレンメチレン基等のアラルキレン基;メチレンビニレン、メチレンビニレンメチレン基等のアルケニレン基等が挙げられる。これらの中でも、特に原料の入手容易性の点から、メチレン基が好ましい。
【0023】
また、R3の2価炭化水素基は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子から選ばれるヘテロ原子を含んでいてもよい。具体的には、オキサメチレン、オキサエチレン基等のオキサアルキレン基;アザメチレン、アザエチレン基等のアザアルキレン基;チアメチレン、チアエチレン基等のチアアルキレン基;メチレンオキシメチレン、エチレンオキシエチレン基等のオキシアルキレン基;メチレンアミノメチレン、メチレンメチルアミノメチレン、エチレンメチルアミノエチレン基等のアミノアルキレン基;メチレンチオメチレン、エチレンチオエチレン基等のチオアルキレン基等が挙げられる。
【0024】
一般式(1)で表される不飽和結合含有アミン化合物(以下、不飽和結合含有アミン化合物(1)という。)の具体例としては、アリルジメチルアミン、アリルジエチルアミン、アリルジn-プロピルアミン、アリルジn-ブチルアミン、N-アリルピペリジン、N-アリルモルホリン、1-アリル-4-メチルピペラジン等が挙げられる。
【0025】
上記一般式(2)および(3)において、R4およびR5は、それぞれ独立して炭素数1~10、好ましくは炭素数1~5、より好ましくは炭素数1~3の1価炭化水素基であり、nは0~2の整数である。
4およびR5の1価炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、ヘn-キシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-デシル基等の直鎖状のアルキル基;イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、テキシル、2-エチルヘキシル基等の分岐鎖状のアルキル基;シクロペンチル、シクロヘキシル基等の環状のアルキル基;ビニル、アリル(2-プロペニル)、1-プロペニル基等のアルケニル基;フェニル、トリル基等のアリール基;ベンジル基等のアラルキル基等が挙げられる。これらの中でも、特に原料の入手容易性の点から、メチル基、エチル基が好ましい。
【0026】
一般式(2)で表されるハイドロジェンオルガノキシシラン化合物(以下、ハイドロジェンオルガノキシシラン化合物(2)という。)の具体例としては、トリメトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン等が挙げられる。
【0027】
本発明の製造方法において、不飽和結合含有アミン化合物(1)と、ハイドロジェンオルガノキシシラン化合物(2)との配合比は特に限定されないが、反応性、生産性の点から、不飽和結合含有アミン化合物(1)1モルに対し、ハイドロジェンオルガノキシシラン化合物(2)0.1~4モルの範囲が好ましく、0.2~2モルの範囲がより好ましい。
【0028】
本発明で用いる白金触媒としては、例えば、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のトルエンまたはキシレン溶液、テトラキストリフェニルホスフィン白金、ジクロロビストリフェニルホスフィン白金、ジクロロビスアセトニトリル白金、ジクロロビスベンゾニトリル白金、ジクロロシクロオクタジエン白金、白金-活性炭等が挙げられる。
白金触媒の使用量は特に限定されないが、反応性、生産性の点から、不飽和結合含有アミン化合物(1)1モルに対し、0.000001~0.01モルの範囲が好ましく、0.00001~0.001モルの範囲がより好ましい。
【0029】
上記一般式(4)において、R6は炭素数1~20、好ましくは1~10、より好ましくは1~5の2価炭化水素基である。
6の2価炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチレン、エチレン、トリメチレン、プロピレン、メチルプロピレン、テトラメチレン、ヘキサメチレン、オクタメチレン、デカメチレン、イソブチレン基等のアルキレン基;フェニレン基等のアリーレン基;メチレンフェニレン、メチレンフェニレンメチレン基等のアラルキレン基等が挙げられる。これらの中でも、特に原料の入手容易性の点から、メチレン基が好ましい。
Xは、ハロゲン原子であり、具体的には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、これらの中でも、特に入手容易性と助剤効果の点から、臭素原子が好ましい。
Aは、下記一般式(5)または(6)で表される置換基を表す。
【0030】
【化11】
【0031】
式(5)および(6)において、R7~R10は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~20、好ましくは炭素数1~10、より好ましくは炭素数1~5の1価炭化水素基である。
7~R10の1価炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-デシル基等の直鎖状のアルキル基;イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、テキシル、2-エチルヘキシル基等の分岐鎖状のアルキル基;シクロペンチル、シクロヘキシル基等の環状のアルキル基;ビニル基等のアルケニル基;フェニル、トリル基等のアリール基;ベンジル基等のアラルキル基等が挙げられる。これらの中でも、特に原料の入手容易性の点から、水素原子、メチル基、エチル基が好ましい。
【0032】
一般式(5)で表される置換基の具体例としては、ビニル、イソプロペニル、1-プロペン-1-イル、1-ブテン-1-イル、2-ブテン-2-イル、1-ブテン-2-イル、1-フェニルビニル、2-フェニルビニル基等が挙げられる。
一般式(6)で表される置換基の具体例としては、エチニル、プロパルキル、1-ブチン-1-イル、3-メチル-1-プロピン-1-イル、フェニルエチニル基等が挙げられる。
【0033】
上記一般式(4)で表されるハロゲン化不飽和炭化水素化合物(以下、ハロゲン化不飽和炭化水素化合物(4)という。)の具体例としては、塩化アリル、臭化アリル、ヨウ化アリル、4-クロロ-1-ブテン、4-ブロモ-1-ブテン、4-ヨード-1-ブテン、塩化プロパルギル、臭化プロパルギル、ヨードプロパルギル等が挙げられる。これらの中でも、特に原料の入手容易性と助剤効果の点から、塩化アリル、臭化アリル、塩化プロパルギル、臭化プロパルギルが好ましい。
【0034】
本発明の製造方法において、ハロゲン化不飽和炭化水素化合物(4)の使用量は特に限定されないが、反応性、選択性、生産性の点から、不飽和結合含有アミン化合物(1)1モルに対し、0.00001~0.1モルの範囲が好ましく、0.0001~0.05モルの範囲がより好ましい。
【0035】
本発明の製造方法では、さらなる異性体生成抑制効果発現の観点から、必要に応じて補触媒として下記一般式(7)で表されるカルボン酸アミド化合物(以下、カルボン酸アミド化合物(7)という。)を用いることができる。
【0036】
【化12】
【0037】
上記一般式(7)において、R11は、水素原子(この場合、kは1である。)または炭素数1~30、好ましくは1~20、より好ましくは1~10のk価の炭化水素基であり、kは、1または2の整数である。
11が1価の場合の1価炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、n-ヘキシル、ペンタデシル、ヘプタデシル基等の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基;シクロヘキシル基等の環状のアルキル基;フェニル基等のアリール基;ビニル基等のアルケニル基等が挙げられる。
【0038】
一方、R11が2価の場合の2価炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチレン、エチレン、トリメチレン、プロピレン基等のアルキレン基;ビニレン基等のアルケニレン基;フェニレン基等のアリーレン基等が挙げられる。これらの中でも、特に原料の入手容易性と助剤効果の点から、水素原子、メチル基、フェニル基、メチレン基が好ましい。
【0039】
また、R12は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1~30、好ましくは炭素数1~15、より好ましくは1~6の1価炭化水素基である。
12の1価炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ヘキシル基等の直鎖状のアルキル基;イソプロピル基等の分岐鎖状のアルキル基;シクロヘキシル基等の環状のアルキル基;フェニル基等のアリール基等が挙げられる。これらの中でも、特に原料の入手容易性と助剤効果の点から、特に水素原子、メチル基が好ましい。
【0040】
カルボン酸アミド化合物(7)の具体例としては、ホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、アクリルアミド、マロンアミド、スクシンアミド、マレアミド、フマルアミド、ベンズアミド、フタルアミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド等が挙げられ、原料の入手容易性と助剤効果の点から、ホルムアミド、アセトアミド、ベンズアミド、ステアリン酸アミド、マロンアミドが好ましい。
【0041】
本発明において、カルボン酸アミド化合物(7)の使用量は、補触媒としての効果を奏する量であれば特に限定されないが、不飽和結合含有アミン化合物(1)1モルに対し、0.00001~10モルの範囲が好ましく、0.001~1モルの範囲がより好ましい。
【0042】
本発明の製造方法における反応温度は特に限定されないが、0~200℃が好ましく、20~150℃がより好ましい。
反応時間も特に限定されないが、1~40時間が好ましく、1~20時間がより好ましい。反応雰囲気は、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気が好ましい。
【0043】
なお、本発明の製造方法における反応は、無溶媒でも進行するが、溶媒を用いることもできる。
使用可能な溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素系溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0044】
以上説明した一連の反応で得られる上記一般式(3)で表されるアミノオルガノキシアルコキシシラン化合物の具体例としては、(3-ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、(3-ジメチルアミノプロピル)ジメトキシメチルシラン、(3-ジメチルアミノプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3-ジメチルアミノプロピル)トリエトキシシラン、(3-ジメチルアミノプロピル)ジエトキシメチルシラン、(3-ジメチルアミノプロピル)エトキシジメチルシラン、(3-ジエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、(3-ジエチルアミノプロピル)ジメトキシメチルシラン、(3-ジエチルアミノプロピル)メトキシジメチルシラン、(3-ジエチルアミノプロピル)トリエトキシシラン、(3-ジエチルアミノプロピル)ジエトキシメチルシラン、(3-ジエチルアミノプロピル)エトキシジメチルシラン、(3-ジプロピルアミノプロピル)トリメトキシシラン、(3-ジプロピルアミノプロピル)ジメトキシメチルシラン、(3-ジプロピルアミノプロピル)メトキシジメチルシラン、(3-ジプロピルアミノプロピル)トリエトキシシラン、(3-ジプロピルアミノプロピル)ジエトキシメチルシラン、(3-ジプロピルアミノプロピル)エトキシジメチルシラン、(3-ジブチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、(3-ジブチルアミノプロピル)ジメトキシメチルシラン、(3-ジブチルアミノプロピル)メトキシジメチルシラン、(3-ジブチルアミノプロピル)トリエトキシシラン、(3-ジブチルアミノプロピル)ジエトキシメチルシラン、(3-ジブチルアミノプロピル)エトキシジメチルシラン、トリメトキシ(3-メチルフェニルアミノプロピル)シラン、ジメトキシメチル(3-メチルフェニルアミノプロピル)シラン、メトキシジメチル(3-メチルフェニルアミノプロピル)シラン、トリエトキシ(3-メチルフェニルアミノプロピル)シラン、ジエトキシメチル(3-メチルフェニルアミノプロピル)シラン、エトキシジメチル(3-メチルフェニルアミノプロピル)シラン、トリメトキシ(3-ピペリジニルプロピル)シラン、ジメトキシメチル(3-ピペリジニルプロピル)シラン、メトキシジメチル(3-ピペリジニルプロピル)シラン、トリエトキシ(3-ピペリジニルプロピル)シラン、ジエトキシメチル(3-ピペリジニルプロピル)シラン、エトキシジメチル(3-ピペリジニルプロピル)シラン、トリメトキシ(3-モルホリニルプロピル)シラン、ジメトキシメチル(3-モルホリニルプロピル)シラン、メトキシジメチル(3-モルホリニルプロピル)シラン、トリエトキシ(3-モルホリニルプロピル)シラン、ジエトキシメチル(3-モルホリニルプロピル)シラン、エトキシジメチル(3-モルホリニルプロピル)シラン、トリメトキシ(3-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロピル)シラン、ジメトキシメチル(3-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロピル)シラン、メトキシジメチル(3-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロピル)シラン、トリエトキシ(3-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロピル)シラン、ジエトキシメチル(3-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロピル)シラン、エトキシジメチル(3-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロピル)シラン等が挙げられる。
【実施例
【0045】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0046】
[実施例1]
撹拌機、還流器、滴下ロートおよび温度計を備えたフラスコに、N-アリルモルホリン12.4g(0.1モル)、白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体の3質量%トルエン溶液0.14g(Ptとして4.2mg)、臭化アリル12mg(0.0001モル)を仕込み、55℃に加熱した。内温が安定した後、ジメトキシメチルシラン9.6g(0.09モル)を1時間かけて滴下し、その温度で4時間撹拌した。
反応液をガスクロマトグラフィーおよびGC-MSで分析したところ、ジメトキシメチル(3-モルホリニルプロピル)シランが主生成物として得られ、異性体であるジメトキシメチル(1-メチル-2-モルホリニルエチル)シランとの生成比は、97.6:2.4(GC分析による質量比、以下同様)であった。
【0047】
[比較例1]
臭化アリルを添加しなかった以外は、実施例1と同様に反応を行ったところ、反応液中のジメトキシメチル(3-モルホリニルプロピル)シランとジメトキシメチル(1-メチル-2-モルホリニルエチル)シランとの生成比は89.9:10.1であった。
【0048】
[実施例2]
撹拌機、還流器、滴下ロートおよび温度計を備えたフラスコに、N-アリルモルホリン6.4g(0.05モル)、白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体の3質量%トルエン溶液0.03g(Ptとして0.9mg)、塩化アリル38mg(0.0005モル)を仕込み、70℃に加熱した。内温が安定した後、ジメトキシメチルシラン4.2g(0.04モル)を1時間かけて滴下し、その温度で1.5時間撹拌した。
反応液をガスクロマトグラフィーおよびGC-MSで分析したところ、ジメトキシメチル(3-モルホリニルプロピル)シランが主生成物として得られ、異性体であるジメトキシメチル(1-メチル-2-モルホリニルエチル)シランとの生成比は、96.2:3.8であった。
【0049】
[実施例3]
撹拌機、還流器、滴下ロートおよび温度計を備えたフラスコに、N-アリルモルホリン12.7g(0.1モル)、白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体の3質量%トルエン溶液0.14g(Ptとして4.2mg)、臭化プロパルギル12mg(0.0001モル)を仕込み、55℃に加熱した。内温が安定した後、ジメトキシメチルシラン9.7g(0.09モル)を1時間かけて滴下し、その温度で4時間撹拌した。
反応液をガスクロマトグラフィーおよびGC-MSで分析したところ、ジメトキシメチル(3-モルホリニルプロピル)シランが主生成物として得られ、異性体であるジメトキシメチル(1-メチル-2-モルホリニルエチル)シランとの生成比は、97.3:2.7であった。
【0050】
[実施例4]
撹拌機、還流器、滴下ロートおよび温度計を備えたフラスコに、N-アリルモルホリン127.4g(1.002モル)、白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体の3質量%トルエン溶液1.3g(Ptとして39mg)、マロンアミド2.05g(0.020モル)、臭化アリル0.12g(0.001モル)を仕込み、55℃に加熱した。内温が安定した後、ジメトキシメチルシラン95.60g(0.900モル)を6時間かけて滴下し、その温度で4.5時間撹拌した。
反応液をガスクロマトグラフィーおよびGC-MSで分析したところ、ジメトキシメチル(3-モルホリニルプロピル)シランが主生成物として得られ、異性体であるジメトキシメチル(1-メチル-2-モルホリニルエチル)シランとの生成比は、99.0:1.0以上であった。反応液を蒸留し、ジメトキシメチル(3-モルホリニルプロピル)シラン(100℃/0.5kPa)を150.5g(単離収率71.7%)で得た。
【0051】
[実施例5]
撹拌機、還流器、滴下ロートおよび温度計を備えたフラスコに、N-アリルモルホリン6.4g(0.05モル)、白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体の3質量%トルエン溶液0.03g(Ptとして0.9mg)、マロンアミド0.05g(0.0005モル)、臭化アリル6mg(0.00005モル)を仕込み、55℃に加熱した。内温が安定した後、トリメトキシシラン4.8g(0.039モル)を1時間かけて滴下し、その温度で4時間撹拌した。
反応液をガスクロマトグラフィーおよびGC-MSで分析したところ、トリメトキシ(3-モルホリニルプロピル)シランが主生成物として得られ、異性体であるトリメトキシ(1-メチル-2-モルホリニルエチル)シランとの生成比は、99.0:1.0以上であった。
【0052】
[実施例6]
撹拌機、還流器、滴下ロートおよび温度計を備えたフラスコに、1-アリル-4-メチルピペラジン7.1g(0.05モル)、白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体の3質量%トルエン溶液0.06g(Ptとして1.8mg)、マロンアミド0.1g(0.001モル)、臭化アリル6mg(0.00005モル)を仕込み、55℃に加熱した。内温が安定した後、トリメトキシシラン5.5g(0.045モル)を1時間かけて滴下し、その温度で9.5時間撹拌した。
反応液をガスクロマトグラフィーおよびGC-MSで分析したところ、トリメトキシ(3-(4-メチルピペラジニル)プロピル)シランが主生成物として得られ、異性体であるトリメトキシ(1-メチル-2-(4-メチルピペラジニル)エチル)シランとの生成比は、99.0:1.0以上であった。
【0053】
[実施例7]
撹拌機、還流器、滴下ロートおよび温度計を備えたフラスコに、アリルジメチルアミン8.6g(0.10モル)、白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体の3質量%トルエン溶液0.13g(Ptとして3.9mg)、マロンアミド0.2g(0.002モル)、臭化アリル12mg(0.0001モル)を仕込み、55℃に加熱した。内温が安定した後、ジメトキシメチルシラン9.6g(0.09モル)を1時間かけて滴下し、その温度で4時間撹拌した。
反応液をガスクロマトグラフィーおよびGC-MSで分析したところ、(3-ジメチルアミノプロピル)ジメトキシメチルシランが主生成物として得られ、異性体である(2-ジメチルアミノ-1-メチルエチル)ジメトキシメチルシランとの生成比は、91.1:8.9であった。
【0054】
[比較例2]
臭化アリルを添加しなかった以外は実施例5と同様に反応を行ったところ、反応液中の、(3-ジメチルアミノプロピル)ジメトキシメチルシランと(2-ジメチルアミノ-1-メチルエチル)ジメトキシメチルシランとの生成は56.6:43.4であった。