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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】シリコン単結晶製造装置
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/06 20060101AFI20241112BHJP
   C30B 15/00 20060101ALI20241112BHJP
   G01J 5/00 20220101ALN20241112BHJP
【FI】
C30B29/06 502Z
C30B15/00 Z
G01J5/00 101D
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021118511
(22)【出願日】2021-07-19
(65)【公開番号】P2023014521
(43)【公開日】2023-01-31
【審査請求日】2023-07-24
(73)【特許権者】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】尼ヶ▲崎▼ 晋
【審査官】神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-243911(JP,A)
【文献】特開平01-126295(JP,A)
【文献】特開2021-042086(JP,A)
【文献】特開2019-043828(JP,A)
【文献】特開平06-129911(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 29/06
C30B 15/00
G01J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバと、
前記チャンバ内に配置された坩堝と、
測定対象からの輻射光を検出する検出素子、前記輻射光を前記検出素子に集光するレンズ、前記測定対象を視認するためのファインダー、および前記輻射光と可視光を分離するビームスプリッタを有する放射温度計と、
前記ファインダーおよび前記レンズを介して、前記測定対象に向けて前記レンズの光軸と一致する軸線に沿ってレーザー光線を出射するレーザー装置と、
前記放射温度計による測定位置の調整が可能な状態で前記放射温度計を支持する調整装置と、を備え
前記放射温度計は、中心が前記レンズの光軸と一致するマーキングを有し、
前記レーザー装置は、フォーカス可変機構を有するシリコン単結晶製造装置。
【請求項2】
チャンバと、
前記チャンバ内に配置された坩堝と、
測定対象からの輻射光を検出する検出素子、前記輻射光を前記検出素子に集光するレンズ、前記測定対象を視認するためのファインダー、および前記輻射光と可視光を分離するビームスプリッタを有する放射温度計と、
前記ファインダーおよび前記レンズを介して、前記測定対象に向けて前記レンズの光軸と一致する軸線に沿ってレーザー光線を出射するレーザー装置と、
前記放射温度計による測定位置の調整が可能な状態で前記放射温度計を支持する調整装置と、を備え、
前記放射温度計で測定される輻射光の光路、および前記レーザー装置から出射されるレーザー光線を、入射方向に対して直交方向に反射する反射部を有するシリコン単結晶製造装置。
【請求項3】
請求項に記載のシリコン単結晶製造装置において、
前記反射部は、アルミ蒸着ミラーにより形成されているミラー本体を有するシリコン単結晶製造装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載のシリコン単結晶製造装置において、
前記調整装置は、前記放射温度計を支持する二軸ゴニオステージであるシリコン単結晶製造装置。
【請求項5】
請求項に記載のシリコン単結晶製造装置において、
前記二軸ゴニオステージを支持するベースプレートと、
前記放射温度計と前記二軸ゴニオステージとの間に配置されるマウントプレートと、
前記ベースプレートに形成された雌ネジ孔に螺合する軸部と、前記マウントプレートの下面に接触する頭部とを有する複数のストッパボルトと、
前記ストッパボルトの高さを固定するナットと、を有するシリコン単結晶製造装置。
【請求項6】
チャンバと、
前記チャンバ内に配置された坩堝と、
測定対象からの輻射光を検出する検出素子、前記輻射光を前記検出素子に集光するレンズ、前記測定対象を視認するためのファインダー、および前記輻射光と可視光を分離するビームスプリッタを有する放射温度計と、
前記ファインダーおよび前記レンズを介して、前記測定対象に向けて前記レンズの光軸と一致する軸線に沿ってレーザー光線を出射するレーザー装置と、
前記放射温度計による測定位置の調整が可能な状態で前記放射温度計を支持する調整装置と、を備え、
前記坩堝が着脱可能に取り付けられ、前記坩堝を回転及び昇降駆動させる坩堝軸と、
前記坩堝軸に着脱可能に取り付けられ、前記レーザー装置から出射されるレーザー光線が照射される座標板と、を備えるシリコン単結晶製造装置。
【請求項7】
請求項に記載のシリコン単結晶製造装置において、
前記レーザー装置は、光源本体と、前記光源本体を前記ファインダーに固定するための光源固定治具と、を有し、
前記光源固定治具は、
前記光源本体を収容する筒体部と、
前記筒体部を前記ファインダーに接続する接続ナットとを備え、
前記筒体部は、筒状をなして前記光源本体を収容する筒体部本体と、前記筒体部本体の端部の外周面に形成された拡径部と、を有し、
前記接続ナットは、前記拡径部を外周側から覆う接続ナット本体と、前記接続ナット本体の内周面に形成され、前記拡径部を前記ファインダーとは反対の側から係止する係止部と、を有し、
前記拡径部と前記係止部とは、前記ファインダー側に向かうに従って拡径するテーパ面を介して接触するように形成されているシリコン単結晶製造装置。
【請求項8】
チャンバと、
前記チャンバ内に配置された坩堝と、
測定対象からの輻射光を検出する検出素子、前記輻射光を前記検出素子に集光するレンズ、前記測定対象を視認するためのファインダー、および前記輻射光と可視光を分離するビームスプリッタを有する放射温度計と、
前記ファインダーおよび前記レンズを介して、前記測定対象に向けて前記レンズの光軸と一致する軸線に沿ってレーザー光線を出射するレーザー装置と、
前記放射温度計による測定位置の調整が可能な状態で前記放射温度計を支持する調整装置と、を備え、
前記レーザー装置は、光源本体と、前記光源本体を前記ファインダーに固定するための光源固定治具と、を有し、
前記光源固定治具は、
前記光源本体を収容する筒体部と、
前記筒体部を前記ファインダーに接続する接続ナットとを備え、
前記筒体部は、筒状をなして前記光源本体を収容する筒体部本体と、前記筒体部本体の端部の外周面に形成された拡径部と、を有し、
前記接続ナットは、前記拡径部を外周側から覆う接続ナット本体と、前記接続ナット本体の内周面に形成され、前記拡径部を前記ファインダーとは反対の側から係止する係止部と、を有し、
前記拡径部と前記係止部とは、前記ファインダー側に向かうに従って拡径するテーパ面を介して接触するように形成されているシリコン単結晶製造装置。
【請求項9】
請求項6から請求項8のいずれか一項に記載のシリコン単結晶製造装置において、
前記調整装置は、前記放射温度計を支持する二軸ゴニオステージであるシリコン単結晶製造装置。
【請求項10】
請求項9に記載のシリコン単結晶製造装置において、
前記二軸ゴニオステージを支持するベースプレートと、
前記放射温度計と前記二軸ゴニオステージとの間に配置されるマウントプレートと、
前記ベースプレートに形成された雌ネジ孔に螺合する軸部と、前記マウントプレートの下面に接触する頭部とを有する複数のストッパボルトと、
前記ストッパボルトの高さを固定するナットと、を有するシリコン単結晶製造装置。
【請求項11】
請求項1に記載のシリコン単結晶製造装置において、
前記調整装置は、前記放射温度計を支持する二軸ゴニオステージであるシリコン単結晶製造装置。
【請求項12】
請求項11に記載のシリコン単結晶製造装置において、
前記二軸ゴニオステージを支持するベースプレートと、
前記放射温度計と前記二軸ゴニオステージとの間に配置されるマウントプレートと、
前記ベースプレートに形成された雌ネジ孔に螺合する軸部と、前記マウントプレートの下面に接触する頭部とを有する複数のストッパボルトと、
前記ストッパボルトの高さを固定するナットと、を有するシリコン単結晶製造装置。
【請求項13】
請求項1、請求項11、および請求項12のいずれか一項に記載のシリコン単結晶製造装置において、
前記放射温度計で測定される輻射光の光路、および前記レーザー装置から出射されるレーザー光線を、入射方向に対して直交方向に反射する反射部を有するシリコン単結晶製造装置。
【請求項14】
請求項13に記載のシリコン単結晶製造装置において、
前記反射部は、アルミ蒸着ミラーにより形成されているミラー本体を有するシリコン単結晶製造装置。
【請求項15】
請求項1から請求項5、および請求項11から請求項14のいずれか一項に記載のシリコン単結晶製造装置において、
前記坩堝が着脱可能に取り付けられ、前記坩堝を回転及び昇降駆動させる坩堝軸と、
前記坩堝軸に着脱可能に取り付けられ、前記レーザー装置から出射されるレーザー光線が照射される座標板と、を備えるシリコン単結晶製造装置。
【請求項16】
請求項1から請求項5、および請求項11から請求項15のいずれか一項に記載のシリコン単結晶製造装置において、
前記レーザー装置は、光源本体と、前記光源本体を前記ファインダーに固定するための光源固定治具と、を有し、
前記光源固定治具は、
前記光源本体を収容する筒体部と、
前記筒体部を前記ファインダーに接続する接続ナットとを備え、
前記筒体部は、筒状をなして前記光源本体を収容する筒体部本体と、前記筒体部本体の端部の外周面に形成された拡径部と、を有し、
前記接続ナットは、前記拡径部を外周側から覆う接続ナット本体と、前記接続ナット本体の内周面に形成され、前記拡径部を前記ファインダーとは反対の側から係止する係止部と、を有し、
前記拡径部と前記係止部とは、前記ファインダー側に向かうに従って拡径するテーパ面を介して接触するように形成されているシリコン単結晶製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン単結晶製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
チョクラルスキー法(CZ法)によるシリコン単結晶の引き上げは、坩堝内のシリコン融液に種結晶を着床させ、引き上げワイヤーにより種結晶を上方に引き上げることにより行われる。
シリコン単結晶の引き上げにおいて、坩堝内のシリコン融液表面の温度は重要なパラメータの一つであり、シリコン融液表面の温度を正確に測定することにより、シリコン単結晶の品質を精密に制御することが可能となる。
特許文献1には、プルチャンバの上部に放射温度計と二次元温度計を配置し、これら二つの温度計を用いて、シリコン融液表面の温度を測定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-218402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、放射温度計では、通常、付属のファインダーを目視することによって測定位置の位置合わせを行うが、プルチャンバの上部に配置された放射温度計のファインダーから坩堝までの測定距離が長く、測定者の目視調整では、見る人の感覚および見る角度により測定位置が変動して安定しないという課題がある。
加えて、チャンバ内にシリコン融液が無いときはチャンバ内は暗闇にあり、これまで通常はシリコン融液(発光物)がある状態で目視調整を行うことが常であった。しかし、この場合、目視によりマーキングは見えるが、目標位置が正確に分からないという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、放射温度計によりシリコン融液表面の温度を計測するシリコン単結晶製造装置において、放射温度計による測定位置を目標位置に対して正確に合わせることができるシリコン単結晶製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のシリコン単結晶製造装置は、チャンバと、前記チャンバ内に配置された坩堝と、測定対象からの輻射光を検出する検出素子、前記輻射光を前記検出素子に集光するレンズ、および前記測定対象を視認するためのファインダーを有する放射温度計と、前記ファインダーおよび前記レンズを介して、前記測定対象に向けて前記レンズの光軸と一致する軸線に沿って光を供給する光源と、前記放射温度計による測定位置を調整が可能な状態で前記放射温度計を支持する調整装置と、を備えることを特徴とする。
上記シリコン単結晶製造装置において、前記光源は、レーザー光線を出射するレーザー装置であってよい。
【0007】
上記シリコン単結晶製造装置において、前記放射温度計は、中心が前記レンズの光軸と一致するマーキングを有し、前記レーザー装置は、フォーカス可変機構を有してよい。
【0008】
上記シリコン単結晶製造装置において、前記調整装置は、前記放射温度計を支持する二軸ゴニオステージであってよい。
【0009】
上記シリコン単結晶製造装置において、前記二軸ゴニオステージを支持するベースプレートと、前記放射温度計と前記二軸ゴニオステージとの間に配置されるマウントプレートと、前記ベースプレートに形成された雌ネジ孔に螺合する軸部と、前記マウントプレートの下面に接触する頭部とを有する複数のストッパボルトと、前記ストッパボルトの高さを固定するナットと、を有してもよい。
【0010】
上記シリコン単結晶製造装置において、前記放射温度計で測定される輻射光の光路、および前記光源から供給される光を、入射方向に対して直交方向に反射する反射部を有してよい。
上記シリコン単結晶製造装置において、前記反射部は、アルミ蒸着ミラーにより形成されているミラー本体を有してもよい。
【0011】
上記シリコン単結晶製造装置において、前記坩堝が着脱可能に取り付けられ、前記坩堝を回転及び昇降駆動させる坩堝軸と、前記坩堝軸に着脱可能に取り付けられ、前記光源から供給される前記光が照射される座標板と、を備えてもよい。
【0012】
上記シリコン単結晶製造装置において、前記光源は、光源本体と、前記光源本体を前記ファインダーに固定するための光源固定治具と、を有し、前記光源固定治具は、前記光源本体を収容する筒体部と、前記筒体部を前記ファインダーに接続する接続ナットとを備え、前記筒体部は、筒状をなして前記光源本体を収容する筒体部本体と、前記筒体部本体の端部の外周面に形成された拡径部と、を有し、前記接続ナットは、前記拡径部を外周側から覆う接続ナット本体と、前記接続ナット本体の内周面に形成され、前記拡径部を前記ファインダーとは反対の側から係止する係止部と、を有し、前記拡径部と前記係止部とは、前記ファインダー側に向かうに従って拡径するテーパ面を介して接触するように形成されてよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、放射温度計によりシリコン融液表面の温度を計測するシリコン単結晶製造装置において、放射温度計によって測定される位置を目標位置に正確に合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態のシリコン単結晶製造装置の概略構成を示す縦断面図である。
図2】本発明の実施形態のプルチャンバ蓋体に固定された放射温度計ユニットの一部を分解した斜視図である。
図3】本発明の実施形態の調整装置の一部を分解した斜視図である。
図4】本発明の実施形態の放射温度計および反射部の構造を説明する一部断面視した側面図である。
図5】本発明の実施形態のレーザー装置の断面図である。
図6】本発明の実施形態の座標板の平面図および側面図である。
図7】円板固定工程における座標板の固定状態を説明する概略図である。
図8】照射工程において、拡散させたレーザー光線のパターンによりマーキングが座標板上に投影される様子を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態のシリコン単結晶製造装置1の概略構成を示す縦断面図である。シリコン単結晶製造装置1は、CZ法を用いてシリコン単結晶SMを製造する。
図1に示されるように、シリコン単結晶製造装置1は、チャンバ50と、坩堝51と、ヒーター52と、引き上げ部53と、熱遮蔽体54と、断熱材55と、坩堝軸56と、放射温度計ユニット2と、を備えている。
【0016】
チャンバ50は、結晶の引き上げを行うメインチャンバ57と、メインチャンバ57の上部に接続され、引き上げられた結晶が収容されるプルチャンバ58とを備えている。プルチャンバ58には、アルゴン(Ar)ガスなどの不活性ガスをメインチャンバ57内に導入するガス導入口59が設けられている。メインチャンバ57の下部には、真空ポンプの駆動により、メインチャンバ57内の気体を排出するガス排気口(図示せず)が設けられている。
プルチャンバ58は、円筒形状のプルチャンバ本体58Aと、プルチャンバ本体58Aの上端を塞ぐプルチャンバ蓋体58Bとを有する。プルチャンバ蓋体58Bには、測定用窓58Cが設けられている。測定用窓58Cは、シリコン融液Mからの輻射光を透過する材料、例えば石英によって形成することができる。メインチャンバ57には、メインチャンバ57内を観察するための観察窓57Aが設けられている。
【0017】
放射温度計ユニット2は、プルチャンバ蓋体58Bに固定されており、測定用窓58Cを介して、シリコン融液表面の測定位置の温度を測定する。なお、放射温度計ユニット2からシリコン融液表面までの距離は、約6mである。
プルチャンバ58の上部には、メンテナンスデッキ60が設けられている。作業者は、メンテナンスデッキ60上で、放射温度計ユニット2に関する作業(調整、測定など)を行うことができる。
【0018】
坩堝51は、メインチャンバ57内に配置され、シリコン融液Mを貯留する。
ヒーター52は、坩堝51の外側に所定間隔を隔てて配置され、坩堝51内のシリコン融液Mを加熱する。引き上げ部53は、一端に種結晶SCが取り付けられるケーブル61と、ケーブル61を昇降及び回転させる引き上げ駆動部62とを備えている。
【0019】
熱遮蔽体54は、引き上げられるシリコン単結晶SMを囲むように設けられ、ヒーター52からシリコン単結晶SMへの輻射熱を遮断する。坩堝軸56は、坩堝51を下方から支持する支持軸であり、坩堝51を所定の速度で回転及び昇降させる駆動装置(図示せず)に接続されている。なお、坩堝51は、坩堝軸56に対して着脱可能に取り付けられ、坩堝軸56には坩堝51に替えて後述する座標板35を着脱可能に取り付けることができる。
【0020】
次に、放射温度計ユニット2について説明する。
放射温度計ユニット2は、シリコン単結晶SMの製造時に、坩堝51内のシリコン融液表面の温度を測定する放射温度計3を備えるユニットである。
図2は、プルチャンバ蓋体58Bに固定された放射温度計ユニット2の一部を分解した斜視図である。なお、図2は、放射温度計3のファインダー17が見えるように、レーザー装置5が放射温度計3に取り付けられていない状態を表している。
【0021】
図2に示されるように、放射温度計ユニット2は、シリコン融液表面の温度を非接触で計測する放射温度計3と、放射温度計3による測定位置を調整する調整装置4と、レーザー光線を出射するレーザー装置5と、反射部6とを備えている。反射部6は、放射温度計3で測定される輻射光の光路P、およびレーザー装置5から出射されるレーザー光線を、入射方向に対して直交方向に反射する。
放射温度計3のファインダー17は、通常は目視による温度測定の際に使用されるが、本発明の放射温度計ユニット2では、ファインダー17にレーザー装置5を取り付けている。レーザー装置5は、レーザー光線などの光を供給する光源として機能する装置である。レーザー装置5がファインダーに取り付けられていることにより、レーザー装置5は、放射温度計3のレンズ15(図4参照)の光軸Aと一致する軸線に沿ってレーザー光線を出射する。このレーザー光線は、反射部6で直交方向に反射されてシリコン融液Mの表面に照射される。一方、放射温度計3で測定されるシリコン融液Mからの輻射光(赤外線)の光路Pは、反射部6で直交方向に反射されてレンズ15に入射される。したがって、光路Pは、反射部6で反射されたレーザー光線の光路と一致し、レーザー光線の照射位置は、放射温度計3の測定位置に対応するため、放射温度計3の測定位置の調整に利用できる。
【0022】
放射温度計3は、調整装置4を介してプルチャンバ蓋体58Bに固定されている。本実施形態の放射温度計ユニット2では、放射温度計3は、レンズ15の光軸Aが略水平となるように配置されており、反射部6を介して光路Pを略鉛直方向に変換している。
【0023】
図3は、調整装置4の一部を分解した斜視図である。調整装置4は、プルチャンバ蓋体58Bに固定され、放射温度計3を支持し、放射温度計3による測定位置を調整する装置である。
調整装置4は、プルチャンバ蓋体58Bに固定されるベースプレート7と、ベースプレート7上に固定される二軸ゴニオステージ8と、二軸ゴニオステージ8上に固定され、放射温度計3を支持するマウントプレート9と、を備えている。
【0024】
ベースプレート7は、例えばボルトB1(図2参照)などの締結部材によってプルチャンバ蓋体58Bに固定される板状部材である。ベースプレート7は、放射温度計3および二軸ゴニオステージ8を支持するのに十分な強度を有する板によって形成することができる。ベースプレート7は、プルチャンバ蓋体58Bにその上面が水平となるように固定される。ベースプレート7の上面には、例えばボルト(図示せず)によって二軸ゴニオステージ8が固定される。
【0025】
ベースプレート7には、複数のストッパボルト10を取り付けることができる。ストッパボルト10は、ベースプレート7の雌ネジ孔に螺合する軸部10Aと、樹脂製のパッドが設けられた頭部10Bとを有するボルトである。ストッパボルト10は、頭部10Bのパッドがマウントプレート9の下面に接触するように調整される。
【0026】
二軸ゴニオステージ8は、調整装置4によって支持された放射温度計3の姿勢調整に使用される装置である。二軸ゴニオステージ8により放射温度計3の姿勢が調整されることによって、レンズ15の光軸Aの角度が調整されて、放射温度計3による測定位置が調整される。
二軸ゴニオステージ8は、2つの一軸ゴニオステージ(傾斜ステージ)を各々の回転中心が互いに直交するように組み合わせたものであり、ベースプレート7上に配置される第一ゴニオステージ11と、第一ゴニオステージ11の上方に接続される第二ゴニオステージ12とを備える。
【0027】
第一ゴニオステージ11は、第一固定ステージ11Aと、第一固定ステージ11Aの上方に接続されている第一可動ステージ11Bと、第一ハンドル11Cとを有する。第一固定ステージ11Aの上面は、Y軸(図3参照)と平行な軸線を中心とする円筒状の曲面であり、第一可動ステージ11Bの下面は、第一固定ステージ11Aの上面に沿う曲面である。第一ハンドル11Cを回動させることにより、第一可動ステージ11BがY軸と平行な軸回りに回動する。
【0028】
第二ゴニオステージ12は、第二固定ステージ12Aと、第二固定ステージ12Aの上方に接続されている第二可動ステージ12Bと、第二ハンドル12Cとを有する。第二固定ステージ12Aの上面は、X軸(図3参照)と平行をなす軸線を中心とする円筒状の曲面であり、第二可動ステージ12Bの下面は、第二固定ステージ12Aの上面に沿う曲面である。第二ハンドル12Cを回動させることにより、第二可動ステージ12BがX軸と平行な軸回りに回動する。
ここで、X軸は、チャンバ50の中心を通過して水平に延びる軸線であり、Y軸はX軸に直交し水平方向に延びる軸線である。
【0029】
マウントプレート9は、例えばボルトB2などの締結部材によって第二ゴニオステージ12の上面に固定され、放射温度計3と二軸ゴニオステージ8との間に配置される板状部材である。マウントプレート9は放射温度計3を支持するのに十分な強度を有する板によって形成することができる。マウントプレート9には、マウントプレート9上に放射温度計3を固定する際に使用する、複数の放射温度計固定孔9Aが形成されている。
【0030】
次に、放射温度計3の構成について説明する。図4は、放射温度計3および反射部6の構造を説明する一部断面視した側面図である。
図4に示されるように、放射温度計3は、略円筒形状のケーシング14と、ケーシング14内に配置されたレンズ15と、ケーシング14内に配置された検出素子16と、ファインダー17と、を備える。
【0031】
レンズ15は、その光軸Aがケーシング14の中心軸と一致するように配置されている。すなわち、ケーシング14の中心軸が水平となるように放射温度計3を設置することによって、レンズ15の光軸Aを水平とすることができる。
放射温度計3は、ケーシング14に形成された開口部14Aを介して取り込まれた測定対象の輻射光をレンズ15およびビームスプリッタ18を介して検出素子16に集光する方式の放射温度計である。ビームスプリッタ18は、輻射光と可視光を分離するためのもので、例えば、ハーフミラーを使用することができる。
【0032】
検出素子16は、輻射光に感応し、輻射光のエネルギーに対応した電気信号を発生する素子である。
放射温度計3は、その中心がレンズ15の光軸Aと一致するマーキング(例えば黒丸)を有している。マーキングは、その中心が測定中心となるように記されている。このマーキングは、通常は、レンズ15に直接形成すれば良いが、レンズ15以外に形成してもよい。また、放射温度計3の距離係数は、測定距離(本実施形態であれば、例えば6,000mm)と測定対象物の大きさに応じて選択する。
【0033】
次に、反射部6について説明する。反射部6は、輻射光の光路Pを直角に曲げるための機構である。
図4に示されるように、反射部6は、放射温度計3のケーシング14に固定されるミラーケーシング30と、ミラーケーシング30内に固定されるミラー本体31と、ミラーケーシング30の下方に接続され、ミラーケーシング30と測定用窓58Cとの間をシールドするシールドパイプ32とを有する。なお、二軸ゴニオステージ8によって放射温度計3を傾けた際に、シールドパイプ32が測定用窓58Cに衝突しないように、シールドパイプ32と測定用窓58Cとの間には僅かな隙間が設定されている。
ミラーケーシング30は、ミラー本体31がレンズ15の光軸Aに対して適切な角度となるように、ミラー本体31を収容するケーシングである。ミラーケーシング30は、外部の光を遮断する機能を有する。
【0034】
ミラー本体31は、輻射光(赤外線)およびレーザー光線を反射可能な材料によって形成されている。ミラー本体31は例えば、アルミ蒸着ミラーにより形成することができる。アルミ蒸着ミラーは、石英ガラスの片面に金蒸着コーティングを施した金蒸着ガラスミラーよりも波長帯域が広く、レーザー反射にも適している。ミラー本体31は、アルミ蒸着ミラーに限らず、例えば金蒸着ミラーを採用してもよい。金蒸着コートのミラーは赤外波長や近赤外波長で最良条件においては高反射率を持つが、シリコンは600℃程度で0.6μm(600nm)程度の波長と言われ、さらに高温では短波長となる。その領域ではアルミ蒸着ミラーと金蒸着ミラーの反射率に大差はない。このため、金蒸着ミラーに比べて安価なアルミ蒸着ミラーを用いることができる。
シールドパイプ32は、ミラーケーシング30の下方に接続される円筒状の部材である。シールドパイプ32は、ミラーケーシング30と測定用窓58Cとの間で、外部の光を遮断する機能を有する。
【0035】
次に、レーザー装置5について説明する。図5は、レーザー装置5の断面図である。
図5に示されるように、レーザー装置5は、レーザープロジェクタ19(光源本体)と、レーザープロジェクタ19を放射温度計3のファインダー17に固定するためのレーザー固定治具20(光源固定治具)と、を有する。レーザープロジェクタ19は、レーザー固定治具20により、レーザー光線の軸線Bとレンズ15の光軸Aとが一致するように固定される。これにより、レーザープロジェクタ19から出射されたレーザー光線は、パターン形状をスポットパターン(光点)とした場合に、放射温度計3の測定位置(標的)の中心に照射される。
【0036】
レーザープロジェクタ19は、レーザー光線を出射して、照射対象にレーザーパターンを照射する装置である。レーザープロジェクタ19は、円柱状をなし、一端にレーザー照射口19Aが設けられている。レーザープロジェクタ19は、レーザープロジェクタ19の軸線方向にレーザー光線を出射する。
レーザープロジェクタ19は、フォーカス調整部19Bを操作してフォーカスを調整することにより、パターン形状を、スポットパターンや、広がりを持った拡散パターンにすることができる。すなわち、レーザープロジェクタ19は、フォーカス可変機構を有する。レーザープロジェクタ19は、例えば、複数の電池からなる電池パックにより電源供給を行うことができる。レーザープロジェクタ19の電源供給は、ケーブル19Cを介して行われる。
レーザープロジェクタ19は、例えば、竹中オプトニック社製のLDSシリーズを採用することができる。
【0037】
レーザー固定治具20は、レーザープロジェクタ19を収容する筒体部21と、筒体部21の一端に取り付けられて放射温度計3のファインダー17に固定される接続ナット22と、筒体部21の他端を塞ぐとともにレーザープロジェクタ19の他端を支持する押さえナット23と、を備えている。
【0038】
筒体部21は、筒状をなす部材であり、レーザープロジェクタ19が嵌め合わされる円筒状の内周面を有する筒体部本体24と、筒体部本体24の一端側の内周面に形成された突条部25と、筒体部本体24の一端の外周面に形成された拡径部26と、筒体部本体24の外周面と内周面との間を貫通する調整用開口部27と、を有している。
【0039】
突条部25は、筒体部本体24の内周側に、筒体部本体24の内周面の全周にわたって突出するように形成されている。突条部25は、筒体部21に収容されたレーザープロジェクタ19の先端に接触して、レーザープロジェクタ19が軸線Bに沿って筒体部本体24の一端側(B1方向)に移動することを規制する部位である。
【0040】
拡径部26は、筒体部本体24が拡径された部位であり、拡径部26の外径は筒体部本体24の外径よりもやや大きく、かつ、後述する接続ナット本体22Aの内周面と嵌め合わされる寸法である。拡径部26のB2方向を向く面であって、後述する接続ナット22と当接する面は、B1方向に向かうに従って漸次拡径するテーパ形状をなすテーパ面26Aである。なお、B2方向は、B1方向とは反対側の方向である。
【0041】
調整用開口部27は、筒体部21に収容されたレーザープロジェクタ19のフォーカス調整部19Bの操作を可能にする開口である。
【0042】
押さえナット23は、筒体部本体24の外周面に形成された雄ネジ溝24Aと螺合する押さえナット本体23Aと、押さえナット本体23Aの内周面に形成されたナット突条部23Bと、を有している。ナット突条部23Bは、押さえナット本体23Aの内周面に全周にわたって形成されている。
押さえナット23は、レーザープロジェクタ19のB1方向への移動を規制する部材である。
また、レーザー固定治具20は、レーザープロジェクタ19と押さえナット23のナット突条部23Bとの間に配置されて緩衝材として機能するゴムリング28を有する。
【0043】
接続ナット22は、筒体部21を保持するとともに、放射温度計3のファインダー17に螺合する部材である。
具体的には、接続ナット22は、筒体部21の拡径部26を外周側から覆うとともに、放射温度計3のファインダー17の外周面に形成された雄ネジ溝と螺合する接続ナット本体22Aと、接続ナット本体22Aの内周面に形成され、拡径部26をファインダー17とは反対の側から係止する係止部22Bと、を有しているユニオン式ナットである。
係止部22Bは、接続ナット本体22Aの内周面の全周にわたって形成されている。係止部22Bの内径は、筒体部21の拡径部26の外径より小さく、かつ、筒体部本体24の外径よりも僅かに大きい寸法である。
【0044】
係止部22BのB1方向に向く面であって、筒体部21の拡径部26と当接する面は、B1方向に向かうに従って漸次拡径するテーパ形状をなすテーパ面22Cである。拡径部26のテーパ面26Aと係止部22Bのテーパ面22Cとは、互いに面接触するように形成されている。
このように、筒体部21と接続ナット22とがテーパ面26A,22Cを介して接触していることにより、レーザー固定治具20の取り付けおよび取り外しを行う際に、筒体部21の角度の再現性を高めることができる。これにより、レーザープロジェクタ19およびレーザー固定治具20の再利用が容易となり、放射温度計3の測定位置の調整時のみ利用することができ、1台のレーザープロジェクタ19を複数台のシリコン単結晶製造装置1で使い回しできるので、コスト低減を図ることができる。
また、筒体部21と接続ナット22とがテーパ面26A,22Cを介して接触していることにより、レーザー光線の軸線Bとレンズ15の光軸Aとが一致しない場合に、筒体部21の角度を容易に微調整することができる。
【0045】
レーザー固定治具20は、レーザー固定治具20を用いてレーザープロジェクタ19を放射温度計3に取り付ける際に、筒体部21の端面とファインダー17との間に配置されるリング部材29を有している。リング部材29は、外径が筒体部21の拡径部26の外径と略同じであり、内径が筒体部本体24の内径と略同じとなるように形成されている。リング部材29は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene, PTFE)のような樹脂によって形成されている。
【0046】
次に、レーザー固定治具20を用いたレーザープロジェクタ19の取り付け方法について説明する。
まず、筒体部21の内周面とリング部材29の内周面とがずれないように、筒体部21のB1方向側の端面にリング部材29を接着剤によって貼り付ける。次いで、接続ナット22に筒体部21を挿入するようにして接続ナット22と筒体部21とを組み合わせる。
次いで、レーザープロジェクタ19を筒体部21の内部に挿入する。次いで、ゴムリング28を押さえナット23に貼り付けた後、押さえナット23を筒体部21に取り付ける。以上により、レーザープロジェクタ19を組み込んだレーザー固定治具20を組み立てる。
そして、レーザー固定治具20の接続ナット22を放射温度計3のファインダー17に取り付ける。これにより、放射温度計3にレーザープロジェクタ19が取り付けられる。
【0047】
次に、調整装置4を用いた放射温度計3による測定位置の調整の際に使用する、座標板35について説明する。座標板35は、放射温度計3による測定位置の調整の際に、坩堝51を取り外した後の坩堝軸56の上端に固定されて、シリコン融液表面を模した仮想液面として機能する円板である。
【0048】
図6は、座標板35の平面図および側面図である。図6に示されるように、座標板35は、円板状をなす部材である。座標板35は、その主面が水平をなすように、坩堝軸56の上端に固定される。
座標板35は、例えば、坩堝軸56と接触しても問題無い材質、例えばポリテトラフルオロエチレンのような樹脂によって形成されていることが好ましい。
座標板35は、一面に目標位置を記す際に座標として機能するパターンが溝加工により形成されている。パターンとしては、格子状のパターン(図6(a))でもよいし、同心円状の複数の円および、中心から放射状に延びる複数の線からなるパターン(図6(b))でもよい。さらに、これらの各パターンを、座標板35の表面および裏面にそれぞれ形成してもよい。
【0049】
次に、上記シリコン単結晶製造装置1を用いた、温度測定位置の調整方法について説明する。
シリコン単結晶の製造方法は、目標位置決定工程と、座標板固定工程と、照射工程と、調整工程と、を有する。
【0050】
目標位置決定工程は、シリコン融液表面のうち、温度を測定することにより効果的な結晶品質制御が可能となる目標位置を決定する工程である。
目標位置決定工程では、例えば、二次元温度計によって測定されたシリコン融液表面の温度分布を測定する。次いで、測定された温度分布に基づき温度が他の領域よりも低温であり続ける常低温領域を特定する。次いで、この常低温領域の内側に目標位置を設定する。
【0051】
座標板固定工程では、図7に示されるように、坩堝51を取り外した状態で、坩堝軸56の上端に座標板35を取り付ける。次いで、坩堝軸56を上下動させることにより、座標板35の上面がシリコン融液表面の高さと同じになるように座標板35を移動させる。
【0052】
照射工程は、放射温度計ユニット2をプルチャンバ58に取り付けた後、レーザー装置5に電力を投入し、フォーカス可変機構を操作して、拡散させたレーザー光線を座標板35に照射する。図8に示されるように、放射温度計3のマーキングが、拡散させたレーザー光線のパターンLPにより、座標板35上に投影される。ここで、レーザー光線の軸線B(図5参照)とレンズ15の光軸A(図4参照)とが一致していない場合、すなわち、拡散させたレーザー光線のパターンLPの中心に投影されたマーキングが位置しない場合、レーザー固定治具20の筒体部21の角度を微調整する。
【0053】
調整工程では、目標位置決定工程にて決定した目標位置と、投影されたマーキングの中心が一致するように、調整装置4を操作する。この際、メンテナンスデッキ60上の作業者とは別に、観察窓57Aを介して座標板35を観察する作業者を配置することが好ましい。
具体的には、まず最初にマウントプレート9の下面に接触するストッパボルト10の頭部をストッパボルト10のネジをベースプレート7にねじ込むことで下げてマウントプレート9の下面より5~10mm程度を離しておく。次いで二軸ゴニオステージ8の第一ハンドル11Cを回転させることにより、Y軸に沿う軸を中心に放射温度計3を回転させ、第二ハンドル12Cを回転させることにより、X軸に沿う軸を中心に放射温度計3を回転させる。二軸ゴニオステージ8を用いることで、例えば0.1°の傾きを与えることで、6m離れた測定位置が約10.5mm(tan0.1°×6,000mm)動くことになる。これにより、放射温度計3の測定位置を厳密に調整することができる。
目標位置への調整を完了した後、ストッパボルト10のねじ込みをベースプレート7より緩めることでストッパボルト10の頭部を上げていく。マウントプレート9の下面へ接触させたところでストッパボルト10とベースプレート7との間に配置した二個の六角ナット10Cをベースプレート7の側へ締めこむことにより、ストッパボルト10の高さを固定させる。
次いで、坩堝軸56から座標板35を取り外して、坩堝51を取り付ける。また、ファインダー17からレーザー固定治具20を取り外す。
【0054】
以上の工程により、放射温度計3による測定位置を目標位置に正確に合わせることができる。よって、所望の位置でシリコン融液表面の温度測定を行いながら、シリコン単結晶の引き上げが可能となる。
【0055】
また、調整装置4として二軸ゴニオステージ8を使用することによって、放射温度計3による測定位置の微調整を可能とすることができる。さらに、二軸ゴニオステージ8による角度調整のみで放射温度計3の測定位置を変更するため、調整後にマウントプレート9等を固定するボルトを締める必要が無く、測定位置の変動がない。
また、二軸ゴニオステージ8の調整後、ストッパボルト10の頭部をマウントプレート9の下面に接触させた状態でストッパボルト10を固定することにより、経時変化またはシリコン単結晶製造装置1より発生する機械微振動などで二軸ゴニオステージ8の変動による温度測定位置の変動を抑止することができる。
【0056】
また、ゴニオステージは水平面での設置が推奨されているため、輻射光の光路Pを反射部6によって直交方向に反射させる構成としたことによって、二軸ゴニオステージ8を用いた調整作業が可能となった。また、反射部6と二軸ゴニオステージ8の組み合わせにより、メンテナンスデッキ60上での作業が可能となり、調整作業を容易とすることができる。
また、反射部6のミラーとしてアルミ蒸着ミラーを採用したことにより、輻射光のみならず、レーザー光線の反射にも適した反射部6とすることができる。
また、照射されるレーザー光線に関して、拡散させたレーザー光線によりマーキングを投影する構成としたことにより、正確に標的と一致するマーキングを有効活用して、調整の正確性を向上させることができる。
また、レーザープロジェクタ19として、複数の電池からなる電池パックにより電源供給を行うことができるものを使用することにより、レーザープロジェクタ19の携帯性が高まり、高所での作業を容易とすることができる。
また、調整工程の際に、シリコン融液表面を模した仮想液面として機能する座標板35を用いることによって、レーザー光線によって座標板35に投影されるマーキングによる測定位置を正確に把握でき、この測定位置を目標位置に正確に合わせることができる。
【0057】
[変形例]
本発明は、以上の各実施形態で説明した構成のものに限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変形例は、本発明に含まれる。
上記実施形態では、光源としてレーザープロジェクタ19を備えるレーザー装置5を採用したが、これに限ることはなく、光にある程度の直進性がある光源であればよい。例えば、LED光源のような光源の採用も可能である。
上記実施形態では、調整装置4として二軸ゴニオステージを採用したが、放射温度計3による測定位置を調整できる装置であれば他の構成を採用することができる。例えば、調整装置4として、X軸・Y軸・θ軸が各々独立した構造のステージ装置の採用も可能である。
また、上記実施形態では、レーザープロジェクタ19から出射されるレーザー光線のパターン形状を拡散パターンとしたが、スポットパターンとしてもよい。これにより、マーキングを有さない放射温度計にも本発明を適用可能となる。
また、上記実施形態では、反射部6を設けて輻射光を反射する構成としたが、これに限ることはなく、放射温度計3が直接輻射光を取り込む構成としてもよい。例えば、二軸ゴニオステージ上にL字ブラケットを取り付けて、このL字ブラケットに放射温度計3を光軸が鉛直方向に沿うように取り付けることによって、反射部6を省略することができる。
また、座標板35は、円板とする必要はなく、多角形状としてもよい。放射温度計3に設けるマーキングは黒丸に限定されず、その形状や色は適宜設定できる。
【符号の説明】
【0058】
1…シリコン単結晶製造装置、2…放射温度計ユニット、3…放射温度計、4…調整装置、5…レーザー装置(光源)、6…反射部、7…ベースプレート、8…二軸ゴニオステージ、9…マウントプレート、10…ストッパボルト、10A…軸部、10B…頭部、10C…ナット、15…レンズ、16…検出素子、17…ファインダー、19…レーザープロジェクタ(光源本体)、19B…フォーカス調整部、20…レーザー固定治具(光源固定治具)、21…筒体部、22…接続ナット、22A…接続ナット本体、22B…係止部、24…筒体部本体、26…拡径部、31…ミラー本体、35…座標板、50…チャンバ、51…坩堝51、53…引き上げ部、A…光軸、B…レーザー光線の軸線、M…シリコン融液、P…光路、SM…シリコン単結晶。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8