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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】配線基板および信号接続構造
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20241112BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
H05K3/46 Z
H05K1/02 P
H05K1/02 N
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022532955
(86)(22)【出願日】2020-07-02
(86)【国際出願番号】 JP2020026030
(87)【国際公開番号】W WO2022003905
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2022-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 勇三
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121669
【弁理士】
【氏名又は名称】本山 泰
(72)【発明者】
【氏名】脇田 斉
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 昇男
【審査官】沼生 泰伸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/105478(WO,A1)
【文献】特開2015-216362(JP,A)
【文献】国際公開第2009/119849(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0191547(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2001/0004942(US,A1)
【文献】堺 淳 外5名,C-2-61 ダイアゴナル配線を用いたプリント配線板の配線収容性と伝送特性,電子情報通信学会総合大会講演論文集,一般社団法人電子情報通信学会,2007年03月07日,2007 1,94
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/46
H05K 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の差動ペアを備える配線基板であって、
前記差動ペアが、第1の信号導体と、第1のビアを介して前記第1の信号導体と接続する第1の接続部と、第2の信号導体と、第2のビアを介して前記第2の信号導体と接続する第2の接続部とを備え、
前記第1の信号導体と前記第2の信号導体それぞれが、前記配線基板の底面に平行な異なる面に、垂直方向に重なり合うように配置され、
前記第1の接続部と前記第2の接続部とが、前記配線基板の上面おいて信号伝送方向に所定の間隔で配置され、
前記複数の差動ペアのうち、隣接する差動ペアが、信号伝送方向に所定の間隔で配置され、かつ、信号伝送方向と垂直な方向に所定の間隔で配置され、
前記第1のビアの前記配線基板の底面に垂直な方向の中心軸と前記第2のビアの前記配線基板の底面に垂直な方向の中心軸との間の距離が、前記第1の接続部の中心と前記第2の接続部の中心との間の距離より短い、配線基板。
【請求項2】
前記第1の信号導体と前記第2の信号導体とを囲う、グラウンド導体を備える請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記第1の信号導体と、前記第2の信号導体とが、ブロードサイドストリップ配線構造を形成する請求項1又は請求項のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項4】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の配線基板の上に、誘電体基板を備える信号接続構造であって、
前記誘電体基板の底面の接続部と、
前記誘電体基板を貫通するビアを介して前記誘電体基板の底面の接続部と接続する前記誘電体基板の上面の接続部を備え、
前記誘電体基板の底面の接続部と、前記配線基板の上面の接続部が導体を介して接続する信号接続構造。
【請求項5】
同軸コネクタを備え、
前記第1の信号導体が、第3のビアを介して、前記第2の信号導体が配置される層と同じ層に配置される第1の接続パタンと接続され、前記第1の接続パタンが、第4のビアを介して、前記配線基板の上面に配置される第2の接続パタンに接続され、前記第2の接続パタンが同軸コネクタの第1のピンに接続され、
前記第2の信号導体が、第5のビアを介して、前記配線基板の上面に配置される第3の接続パタンに接続され、前記第3の接続パタンが前記同軸コネクタの第2のピンに接続される請求項に記載の信号接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差動信号を伝送する配線基板および信号接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ネットワーク上に伝送されるデータ量は増加の一途をたどっており、その増大に対し、データの伝送速度を向上させ、対処する手法が研究開発されている。高速なデータの送受に関しては、同相ノイズ耐性の高い差動信号伝送が有用であり、IC(Integrated Circuit、集積回路)やICを包含するパッケージ基板など高速電子デバイスに広く用いられている。
【0003】
差動信号は、理想的には180度の位相差、あるいは正負の逆転したデータを2つの信号経路を用いて伝送される。これにより、同相ノイズは互いに打ち消しあうことが可能になり、複数の信号の伝送において、差動信号で伝送する場合、正相と負相の信号間で強く結合し、クロストークについて耐性の高い構成となる。
【0004】
例えば、光送受信器においても偏波多重、波長多重、近年では多値化技術が用いられ、それらのデータの入出力には差動信号が利用され、データが多重化されるほどそのチャネル数は増加する。
【0005】
また、光におけるデータ伝送の分野のみならず、電気におけるデータ伝送においても差動信号は幅広く利用されている。前述のデータは、ASIC(Application Specific integrated Circuit、特定用途向け集積回路)などのアクティブ素子からその素子を封入するパッケージ基板、パッケージ基板同士を接続するボードへと伝送される。ここで、パッケージ基板表面はチップ搭載面として機能し、そのチップから生じる信号をパッケージ表面から裏面に伝送させ、パッケージ裏面はボードとの接続パタン、例えばボールグリッドアレイ、ランドグリッドアレイなど、に信号が伝えられる構造を有する。
【0006】
ボールグリッドアレイ、ランドグリッドアレイなどは、パッケージ基板を搭載するボードと半田ボール、半田などで接続される。このボールグリッドアレイのレイアウトは、所定の規格に定められている。近年では、半田ボールの直径が0.1mmφ程度、半田ボールのピッチ間隔が0.3mm程度で高密度な配置が可能である。さらに、信号の入出力部がパッケージ基板の四辺のみならず、内側も使用可能であるため、多数の入出力を有するASICパッケージでは広く用いられている。
【0007】
例えば、非特許文献1、2、3には、多層配線基板中のRFビア差動配線構造の構造・設計手法が開示されている。
【0008】
図7に、非特許文献1、2に開示される、ボールグリッドアレイおよび差動配線を有する接続構造を示す。ボード1501の上にチップ1502を搭載する。差動伝送においては2つの正負信号間を結合させて伝送を行うため、1つの信号に対して少なくとも2本の配線(例えば、図中1511と1512)と2個の接続部(例えば、図中1521と1522)が必要である。非特許文献1、2に開示される接続構造では、少なくとも2個の接続部(例えば、図中1521と1522)をボード1501上の信号伝送方向(図中、x方向)に対して垂直に配置させる構造であり、ボード1501上の配線と高い接続性を有する。
【0009】
また、図8に、非特許文献3に開示される接続構造を示す。ボード1601の上にチップ1602を搭載する。図8には、配線1611と接続部1621の信号経路と配線1612と接続部1622の信号経路とからなる差動ペアと、配線1613と接続部1623の信号経路と配線1614と接続部1624の信号経路とからなる差動ペアとを示す。この接続構造では、信号伝送方向に対して、差動配線ペア間の接続部(例えば、1621と1622)を信号伝送方向と平行に配置し、かつ、隣接する2つの差動配線ペアの配置を互いにオフセットさせる構成により、クロストーク耐性を高めることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【文献】”De-Mystifying the 28 Gb/s PCB Channel: Design to Measurement” Heidi Barnes. DesignCon2014 13-FR3 presentation. https://www.keysight.com/upload/cmc_upload/All/13_FR3Combined_DeMystifyingthe28gbsPCBChannel.pdf
【文献】“Parallel Optical Interconnect between Ceramic BGA Packages on FR4 Board using Embedded Waveguides and Passive Optical Alignments”. Mikko Karppinen., et al. Proceedings of ECTC 2006.
【文献】”Design of Package BGA Pin-out for >25Gb/s High Speed SerDes Considering PCB Via Crosstalk”. Wei Yao. et al., Proceedings of 2015 IEEE Symposium on Electromagnetic Compatibility and Signal Integrity.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、非特許文献1、2に開示される接続構造では、複数の差動チャネルが存在する場合、その接続部のピッチは所定のピッチに定められているため、接続部の配置エリアが増大してしまう課題がある。
【0012】
また、信号配線と同一面に隣接チャネルが存在するので、チャネル間クロストークも増大してしまう課題がある。
【0013】
また、非特許文献3に開示される接続構造では、差動配線がカップルドマイクロストリップ線路で構成され、2つの差動配線を配置するためには、半田ボールの間隔(ピッチ)およびボード上の接続部の間隔(ピッチ)が広くする必要があるので、高密度に配置されたボードには適用できないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述したような課題を解決するために、本発明に係る配線基板は、複数の差動ペアを備える配線基板であって、前記差動ペアが、第1の信号導体と、第1のビアを介して前記第1の信号導体と接続する第1の接続部と、第2の信号導体と、第2のビアを介して前記第2の信号導体と接続する第2の接続部とを備え、前記第1の信号導体と前記第2の信号導体それぞれが、前記配線基板の底面に平行な異なる面に、垂直方向に重なり合うように配置され、前記第1の接続部と前記第2の接続部とが、前記配線基板の上面おいて信号伝送方向に所定の間隔で配置され、前記複数の差動ペアのうち、隣接する差動ペアが、信号伝送方向に所定の間隔で配置され、かつ、信号伝送方向と垂直な方向に所定の間隔で配置され、前記第1のビアの前記配線基板の底面に垂直な方向の中心軸と前記第2のビアの前記配線基板の底面に垂直な方向の中心軸との間の距離が、前記第1の接続部の中心と前記第2の接続部の中心との間の距離より短い。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、差動信号を伝送する配線を高密度で配置でき、高クロストーク耐性を有する配線基板および信号接続構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A図1Aは、本発明の第1の実施の形態に係る信号接続構造の上面図である。
図1B図1Bは、本発明の第1の実施の形態に係る信号接続構造の上面図におけるIB-IB’断面図である。
図1C図1Cは、本発明の第1の実施の形態に係る信号接続構造の上面図におけるIC-IC’断面図である。
図2A図2Aは、本発明の第2の実施の形態に係る信号接続構造の上面図である。
図2B図2Bは、本発明の第2の実施の形態に係る信号接続構造の上面図におけるIIB-IIB’断面図である。
図2C図2Cは、本発明の第2の実施の形態に係る信号接続構造の上面図におけるIIC-IIC’断面図である。
図3A図3Aは、本発明の第3の実施の形態に係る信号接続構造の上面図である。
図3B図3Bは、本発明の第3の実施の形態に係る信号接続構造の上面図におけるIIIB-IIIB’断面図である。
図3C図3Cは、本発明の第3の実施の形態に係る信号接続構造の上面図におけるIIIC-IIIC’断面図である。
図4A図4Aは、本発明の第4の実施の形態に係る信号接続構造の上面図である。
図4B図4Bは、本発明の第4の実施の形態に係る信号接続構造の上面図におけるIVB-IVB’断面図である。
図4C図4Cは、本発明の第4の実施の形態に係る信号接続構造の上面図におけるIVC-IVC’断面図である。
図5A図5Aは、本発明の第5の実施の形態に係る信号接続構造の上面図である。
図5B図5Bは、本発明の第5の実施の形態に係る信号接続構造の上面図におけるVB-VB’断面図である。
図6A図6Aは、本発明の第6の実施の形態に係る信号接続構造の上面図である。
図6B図6Bは、本発明の第6の実施の形態に係る信号接続構造の上面図におけるIVB-IVB’断面図である。
図7図7は、従来の信号接続構造の上面図である。
図8図8は、従来の信号接続構造の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1の実施の形態>
本発明の第1の実施の形態について図1A図1Cを参照して説明する。
【0018】
<信号接続構造の構成>
図1A、B、Cにそれぞれ、本実施の形態に係る信号接続構造の上面図、上面図におけるIB-IB’断面図、上面図におけるIC-IC’断面図を示す。
【0019】
信号接続構造10は、パッケージ基板(以下、「誘電体基板」という。)11を、ボード(以下、「配線基板」という。)21の上に備える。ここで、誘電体基板11の材料には、LTCC(Low Temperature Co-fired Ceramics、低温同時焼成積層セラミックス)、HTCC(High Temperature Co-fired Ceramics、高温同時焼成積層セラミックス)などのセラミック基板材料、ビルドアップ基板など樹脂基板材料を用いる。
【0020】
誘電体基板11は、上面に信号導体121~124と接続部1211~1241、底面に接続部131~134と、ビア141~144を備える。ビア141~144は、誘電体基板11を貫通し、信号導体121~124と接続部131~134とをそれぞれ接続する。
【0021】
配線基板21は、内部に信号導体221~224と、上面に接続部231~234と、ビア241~244を備える。ビア241~244は、信号導体221~224と接続部231~234とをそれぞれ接続する。
【0022】
誘電体基板11の接続部131~134と、配線基板21の接続部231~234とは、それぞれ導体101~104を介して電気的に接続する。導体101~104には半田、半田ボール、導電性ペーストなど導体材料を用いることができる。
【0023】
ここで、接続部1211~1241、接続部131~134と、接続部231~234とは所定のピッチ(間隔)で配置され、導体101~104も同様のピッチ(間隔)で配置される。例えば、接続部1211、1221は間隔を0.5mmとして、信号伝送方向(図中x方向)に並列して配置される。接続部1231、1241も同様に配置される。
【0024】
信号導体221と信号導体222は、配線基板21の底面に平行な面(図1におけるx-y面)であって、異なる面にそれぞれ配線される。
【0025】
さらに、信号導体221と信号導体222は、上方から見て、換言すれば垂直方向に(図中、z方向)重なり合うように配線される。このように、信号導体221と信号導体222は、ブロードサイドストリップ配線構造を形成する。
【0026】
同様に、信号導体223と信号導体224は、ブロードサイドストリップ配線構造を形成するように配線される。
【0027】
この構成により、誘電体基板11の上面の信号導体121から入力される正相信号は、接続部1211、ビア141、接続部131、導体101、接続部231、ビア241を順に通って、配線基板21の信号導体221に搬送される。
【0028】
一方、誘電体基板11の上面の信号導体122から入力される負相信号は、接続部1221、ビア142、接続部132、導体102、接続部232、ビア242を順に通って、配線基板21の信号導体222に搬送される。
【0029】
このように、誘電体基板11と配線基板21には、信号導体221を有する信号路と信号導体222を有する信号路とで差動配線構造が形成され、差動ペアaが形成される。
【0030】
同様に、誘電体基板11と配線基板21には、信号導体223を有する信号路と信号導体224を有する信号路とで差動配線構造が形成され、差動ペアbが形成される。
【0031】
ここで、差動ペアa、b、それぞれにおけるビアおよび接続部は、信号導体221、222で信号が搬送される方向(差動配線伝送方向、図中x方向)と平行線上に並列するように配置される。例えば、差動ペアbは差動ペアaに対して、信号伝送方向(図中x方向)に1mmの間隔(差動ペアの中心のx方向の間隔、図中OSx)で配置される。
【0032】
さらに、差動ペアaと差動ペアbとはそれぞれ平行に配置されるが、同一線上にならないよう所定の間隔でオフセットされて配置される。例えば、差動ペアbは差動ペアaに対して、信号伝送方向と垂直方向(図中y方向)に1mmの間隔(差動ペアの中心のy方向の間隔、図中OSy)で配置される。
【0033】
このように、隣接する差動ペアが、信号伝送方向に所定の間隔で配置され、かつ、信号伝送方向と垂直な方向に所定の間隔で配置される。
【0034】
この構成により、信号伝送方向に対し、接続部を高密度に配置できる。すなわち、配線を高密度に配置できる。
【0035】
また、ブロードサイドストリップ配線構造を形成することにより、配線基板中の信号導体は正負のペアが上下に配置され、配線基板中の上下方向に強く電磁界の結合が生じるモードとなり、信号導体部分での隣接チャネル間クロストークも低く抑えることが可能となる。
【0036】
また、配線基板の層方向に(図中z方向)差動チャネルが形成されることにより、前記配線基板で配線される差動信号のレイアウトを縮小できる。
【0037】
信号接続構造10に、正負の差動信号を入力して搬送させた結果、良好な高周波特性が得られる。
【0038】
また、配線基板は多層基板で構成されてもよく、信号導体に加え、グラウンド導体411、412等として機能する層を信号導体の上下層に備えてもよい。
【0039】
また、グラウンド導体251、252等の間を接続する層間ビアを備えることもできる。または、配線基板21の上面や底面に信号導体以外に配置するグラウンド導体とを接続する貫通ビアを備えることができる。この構成により、信号導体周囲をグラウンド層で覆い、かつ、差動チャネル間をグラウンドに接続するビアで囲うことが可能となり、クロストークをより低く抑えることが可能となる。
【0040】
以上のように、本実施の形態に係る信号接続構造によれば、複数の差動ペアを高密度に配置でき、高クロストーク耐性を得ることができる。
【0041】
<第2実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態に係る信号接続構造を、図2A図2Cを参照して説明する。本実施の形態に係る信号接続構造30は、第1の実施の形態に係る信号接続構造10と略同様の構成を有し、同様の効果を奏する。信号接続構造30は、複数の差動ペアを備える点で信号接続構造10と異なる。
【0042】
<信号接続構造の構成>
図2A、B、Cにそれぞれ、本実施の形態に係る信号接続構造30の上面図、上面図におけるIIB-IIB’断面図、上面図におけるIIC-IIC’断面図を示す。
【0043】
信号接続構造30は、信号導体321から信号導体421までの信号経路と信号導体322から信号導体422までの信号経路とからなる差動ペアaと、信号導体323から信号導体423までの信号経路と信号導体324から信号導体424までの信号経路(図示せず)とからなる差動ペアbと、信号導体325から信号導体425までの信号経路と信号導体326から信号導体426までの信号経路(図示せず)とからなる差動ペアcを備える。
【0044】
差動ペアにおける信号導体321と信号導体322それぞれの接続部3211、3221は間隔を0.5mmとして、信号伝送方向(図中x方向)に並列して配置される。信号導体323と信号導体324の接続部3231、3241、信号導体325と信号導体326の接続部3251、3261についても同様である。
【0045】
それぞれの差動ペアは、信号伝送方向(図中x方向)に平行な異なる直線上に配置される。差動ペアcは差動ペアaに対して、信号伝送方向(図中x方向)に1mmの間隔(差動ペアの中心のx方向の間隔、図中OSx)で、信号伝送方向と垂直方向(図中y方向)に1mmの間隔(差動ペアの中心のy方向の間隔、図中OSy)で配置される。
【0046】
また、差動ペアbは差動ペアcに対して、信号伝送方向(図中x方向)に1mmの間隔(差動ペアの中心のx方向の間隔)で、信号伝送方向と垂直方向(図中y方向)に1mmの間隔(差動ペアの中心のy方向の間隔)で配置される。
【0047】
このように、複数の差動ペアのうち、隣接する差動ペアが、信号伝送方向に所定の間隔で配置され、かつ、信号伝送方向と垂直な方向に所定の間隔で配置される。
【0048】
その結果、差動ペアbは差動ペアaに対して、信号伝送方向と垂直方向(図中y方向)の同一線上に2mmの間隔(差動ペアの中心のx方向の間隔)で配置される。
【0049】
このように、差動ペアを所定の間隔(オフセット)をもって、交互に配置すれば、効率的に配線でき、隣接する差動ペア間のクロストークを抑制することができる。
【0050】
以上のように、本実施の形態に係る信号接続構造によれば、複数の差動ペアを、より高密度に配置でき、高クロストーク耐性を得ることができる。
【0051】
<第3の実施の形態>
次に、本発明の第3の実施の形態に係る信号接続構造を、図3A図3Cを参照して説明する。本実施の形態に係る信号接続構造50は、第1の実施の形態に係る信号接続構造10と略同様の構成を有し、同様の効果を奏する。信号接続構造50は、配線基板の上面にブロードサイドストリップ配線構造を形成する導体のうち、一方の導体を備える点で信号接続構造10と異なる。
【0052】
<信号接続構造の構成>
図3A、B、Cにそれぞれ、本実施の形態に係る信号接続構造50の上面図、上面図におけるIIIB-IIIB’断面図、上面図におけるIIIC-IIIC’断面図を示す。
【0053】
信号接続構造50は、パッケージ基板(誘電体基板)51を、ボード(配線基板)61の上に備える。誘電体基板51は、第1の実施の形態における誘電体基板11と同様の構成を有する。
【0054】
配線基板61は、上面の接続部631に、上面に配置される信号導体621が接続される。また、上面の接続部632にビア642が接続され、ビア642に信号導体622が接続される。ここで、信号導体621と信号導体622がブロードサイドストリップ配線構造を形成する。
【0055】
この構成において、上面に存在する導体621が表面(上面)を空気層で覆われるため、非対称な電磁界モードとなる。そこで、導体621を導体622より幅を広くすることにより、特性インピーダンスを所定の値、例えば差動インピーダンスを100Ωに整合できる。
【0056】
また、配線基板中の信号導体に接続されるビアの長さを短くでき、より広帯域な特性を得ることが可能となる。
【0057】
以上のように、本実施の形態に係る信号接続構造によれば、複数の差動ペアを高密度に配置でき、より広帯域で、高クロストーク耐性を得ることができる。
【0058】
<第4の実施の形態>
次に、本発明の第4の実施の形態に係る信号接続構造を、図4A図4Cを参照して説明する。本実施の形態に係る信号接続構造70は、第1の実施の形態に係る信号接続構造10と略同様の構成を有し、同様の効果を奏する。信号接続構造70は、差動信号線路ビア間にグラウンドに接続するビア(以下、「グラウンドビア」という。)を備える点で信号接続構造10と異なる。
【0059】
<信号接続構造の構成>
図4A、B、Cにそれぞれ、本実施の形態に係る信号接続構造70の上面図、上面図におけるIVB-IVB’断面図、上面図におけるIVC-IVC’断面図を示す。
【0060】
信号接続構造70は、配線基板81において、差動信号線路ビア(ビア841、842)の間にグラウンドビア845を備える。
【0061】
この構成により、チャネル間の電磁界結合が抑制され、よりクロストーク耐性の高い特性を得ることができる。
【0062】
また、本実施の形態ではグラウンドビアを配置する例を示したが、これに限らない。信号配線が配置される層と同層の信号配線周辺に配置したグラウンドパタンを、グラウンドビアで接続してもよい。
【0063】
以上のように、本実施の形態に係る信号接続構造によれば、複数の差動ペアを高密度に配置できるとともに、チャネル間の電磁界結合が抑制されるので、より高クロストーク耐性を得ることができる。
【0064】
<第5の実施の形態>
次に、本発明の第5の実施の形態に係る信号接続構造を、図5A図5Bを参照して説明する。本実施の形態に係る信号接続構造90は、第1の実施の形態に係る信号接続構造10と略同様の構成を有し、同様の効果を奏する。信号接続構造90は、差動信号線路の接続部におけるビアの位置が信号接続構造10と異なる。
【0065】
<信号接続構造の構成>
図5A、Bにそれぞれ、本実施の形態に係る信号接続構造90の上面図と、上面図におけるIVB-IVB’断面図を示す。
【0066】
信号接続構造90は、誘電体基板91の上面に信号導体921と、信号導体921に接続する接続部9211を備え、接続部9211は誘電体基板91の内部のビア941に接続され、ビア941は誘電体基板91の底面の接続部931に接続する。
【0067】
配線基板1001の上面の接続部1031は、信号導体901を介して、誘電体基板91の底面の接続部931に接続する。また、接続部1031は、ビア1041に接続され、ビア1041が信号導体1021に接続される。
【0068】
一方、誘電体基板91の上面の信号導体922は、接続部9221に接続され、接続部9221は誘電体基板91の内部のビア942に接続され、ビア942は誘電体基板91の底面の接続部932に接続する。
【0069】
配線基板1001の上面の接続部1032は、信号導体902を介して、誘電体基板91の底面の接続部932に接続する。また、接続部1032は、ビア1042に接続され、ビア1042が信号導体1022に接続される。
【0070】
ここで、信号導体921~信号導体1021の信号経路と信号導体922~信号導体1022の信号経路は差動ペアを形成する。
【0071】
信号接続構造90において、ビア941とビア1041はそれぞれ、接続部9211、931、1031の範囲において、接続部9211、931、1031の中心よりも、ビア942と1042に近くなるように配置される。
【0072】
ビア942とビア1042はそれぞれ、接続部9221、932、1032の範囲において、接続部9221、932、1032の中心よりも、ビア941と1041に近くなるように配置される。
【0073】
すなわち、ビア941の垂直方向(z方向)の中心軸とビア942のz方向の中心軸との間の距離が、接続部9211の中心と接続部9221の中心との間の距離または接続部931の中心と接続部932の中心との間の距離より短い。
【0074】
また、ビア1041のz方向の中心軸とビア1042のz方向の中心軸との間の距離が、接続部1031の中心と接続部1032の中心との間の距離より短い。
【0075】
この構成により、誘電体基板91、配線基板1001におけるビア間で、より強く電磁界結合をさせることができ、高クロストーク耐性を得ることが可能となる。
【0076】
以上のように、本実施の形態に係る信号接続構造によれば、複数の差動ペアを高密度に配置できるとともに、ビア間の電磁界結合が強くなるので、より高クロストーク耐性を得ることができる。
【0077】
<第6の実施の形態>
次に、本発明の第6の実施の形態に係る信号接続構造を、図6A図6Bを参照して説明する。
【0078】
<信号接続構造の構成>
第6の実施の形態に係る信号接続構造1100は、第1の実施の形態に係る信号接続構造10と、同軸コネクタ1401と、信号接続構造10と同軸コネクタ1401とを接続する構造(以下、「コネクタ接続構造」という。)1200とを備える。
【0079】
詳細には、誘電体基板11の上面の信号導体121に、接続部1211、ビア141、接続部131、導体101、接続部231、ビア241が順に接続し、ビア241が配線基板21の信号導体221に接続する。
【0080】
次に、信号導体221に接続パタン1251が接続され、接続パタン1251にビア1243が接続され、ビア1243が下方の信号導体222と同じ層に配置される接続パタン1261に接続され、ビア1247を通って、配線基板21の上面の接続パタン1271に接続され、接続パタン1271が同軸コネクタ1401のピン1411に接続する。
【0081】
この構成により、誘電体基板11の上面の信号導体121から入力される正相信号は、接続部1211、ビア141、接続部131、導体101、接続部231、ビア241を順に通って、配線基板21の信号導体221に搬送される。
【0082】
次に、接続パタン1251、ビア1243、接続パタン1261、ビア1247、接続パタン1271を通って、同軸コネクタ1401のピン1411に搬送される。
【0083】
一方、誘電体基板11の上面の信号導体122に、接続部1221、ビア142、接続部132、導体102、接続部232、ビア242が順に接続し、ビア242が配線基板21の信号導体222に接続する。
【0084】
次に、信号導体222に、接続パタン1252、接続パタン1262、ビア1242、接続パタン1272が順に接続され、接続パタン1272が同軸コネクタ1401のピン1412に接続する。
【0085】
この構成により、誘電体基板11の上面の信号導体122から入力される負相信号は、接続部1221、ビア142、接続部132、導体102、接続部232、ビア242を順に通って、配線基板21の信号導体222に搬送される。次に、接続パタン1252、接続パタン1262、ビア1242、接続パタン1272を通って、同軸コネクタ1401のピン1412に搬送される。
【0086】
ここで、接続部1211の中心と接続部1221の中心との間隔、すなわちビア141とビア142等の間隔は0.5mm程度である。また、信号導体221と信号導体222は、幅が60~70μm、長さが20mm程度であり、略同等の長さを有するが、接続部1211の中心と接続部1221の中心との間隔の分だけ信号導体222が長い。
【0087】
また、接続パタン1251~1261と接続パタン1252~1262それぞれの長さは1mm程度である。同軸コネクタ1401のピン1411とピン1412との間隔は3mm程度である。
【0088】
また、ビア241とビア1243は、断面の直径が80μmφ径、長さが200μm程度であり、略同一の形状を有する。また、ビア242、1247は、断面の直径が80μmφ径、長さが400μm程度であり、略同一の形状を有する。
【0089】
このように、配線基板21内で信号導体221と信号導体222とが上下に配置され差動信号ペアを形成し、上下方向に電磁界が結合するブロードサイドストリップラインを形成する。
【0090】
さらに、信号導体221が、ビア1243を介して、下方の信号導体222と同じ層に接続されることにより、下方の信号導体222と同じ層で、信号導体221と信号導体222とが、横方向(y方向)に電磁界が結合するブロードサイドストリップラインを形成する。
【0091】
また、この構成により、配線基板21内におけるビア長の差に起因する差動ペア間のスキュー差を無くすことができ、良好な周波数特性を得ることが可能となる。
【0092】
ここで、接続部1211の中心と接続部1221の中心との間隔に相当する信号導体221と信号導体222の長さの差に起因して、差動ペア間のスキュー差は生じるが、このスキュー差は、接続パタン1251、1261と接続パタン1252、1262の長さの差を調整することにより低減することができる。
【0093】
このように、本実施の形態に係る信号接続構造によれば、配線基板の外部の素子、部品に接続する場合、たとえば同軸コネクタに接続して信号を伝送させる場合、差動チャネル内でスキュー差を生じさせず、同軸コネクタ構造を接続することが可能になる。
【0094】
また、本実施の形態に係る信号接続構造は、第1の実施の形態に係る信号接続構造10を備えるので、当然に、第1の実施の形態と同様の効果を奏する。
【0095】
本発明の実施の形態では、差動ペアにおける隣接する接続部が0.5mmの間隔で配置される例を示したが、これに限ることなく、数100μm程度でよく、効率良く配置でき、差動信号を良好に伝送できる範囲であればよい。
【0096】
本発明の実施の形態では、隣接する差動ペアが、x方向の間隔(OSx)およびy方向の間隔(OSy)それぞれ1mmで配置される例を示したが、これに限ることなく、数mm程度でよく、効率良く配置でき、高いクロストーク耐性を有して、差動信号を良好に伝送できる範囲であればよい。
【0097】
本発明の実施の形態では、誘電体基板11の上面の信号導体121から正相信号入力され、誘電体基板11の上面の信号導体122から負相信号が入力される例を示したが、誘電体基板11の上面の信号導体121から負相信号入力され、誘電体基板11の上面の信号導体122から正相信号が入力されてもよい。
【0098】
本発明の実施の形態では、信号接続構造が1組から3組の差動ペアを備える例を示したが、これは信号接続構造の一部を示す例であり、信号接続構造は複数の差動ペアを備えても同様の効果を奏する。
【0099】
本発明の実施の形態では、信号接続構造の構成、製造方法などにおいて、各構成部の構造、寸法、材料等の一例を示したが、これに限らない。信号接続構造の機能を発揮し効果を奏するものであればよい。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は、高周波デバイスにおける配線基板、実装基板等や半導体装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0101】
21 配線基板
221、222 信号導体
231、232 接続部
241、242 ビア
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8