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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】包装袋
(51)【国際特許分類】
   B65D 33/38 20060101AFI20241112BHJP
   B65D 30/02 20060101ALI20241112BHJP
   B65D 81/24 20060101ALI20241112BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
B65D33/38
B65D30/02
B65D81/24 E
B65D65/40 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023001711
(22)【出願日】2023-01-10
(62)【分割の表示】P 2022076445の分割
【原出願日】2017-05-01
(65)【公開番号】P2023029540
(43)【公開日】2023-03-03
【審査請求日】2023-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】ZACROS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】岡本 大
(72)【発明者】
【氏名】美尾 篤
(72)【発明者】
【氏名】野村 純平
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 豊明
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-335134(JP,A)
【文献】国際公開第2016/013595(WO,A1)
【文献】特開2004-315067(JP,A)
【文献】特開2009-013285(JP,A)
【文献】特開2015-013683(JP,A)
【文献】特開2006-168003(JP,A)
【文献】特開平11-060757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 33/38
B65D 30/02
B65D 81/24
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋本体と、
前記袋本体に接合された注出口と、を有し、
前記袋本体は、少なくとも基材層と、第1の中間層と、シーラント層とをこの順で有する積層体を形成材料とし、前記シーラント層を内側とし対向する前記シーラント層同士を貼り合わせることで袋状を呈するものであり、
前記注出口は、対向する前記シーラント層同士に挟持されて接合され、
前記第1の中間層は、前記基材層と前記シーラント層とを接着し、
前記基材層が、フッ素系樹脂を形成材料とする層とその他の層とを含み、
前記第1の中間層が、ポリエチレン系樹脂と、エラストマー成分と、エポキシ基を有する成分とを含み、
前記エポキシ基を有する成分が、1,2-ポリブタジエンにエポキシを部分的に導入したものであり、かつ数平均分子量が500以上4000以下である包装袋。
【請求項2】
袋本体と、
前記袋本体に接合された注出口と、を有し、
前記袋本体は、少なくとも基材層と、第1の中間層と、シーラント層とをこの順で有する積層体を形成材料とし、前記シーラント層を内側とし対向する前記シーラント層同士を貼り合わせることで袋状を呈するものであり、
前記注出口は、対向する前記シーラント層同士に挟持されて接合され、
前記第1の中間層は、前記基材層と前記シーラント層とを接着し、
前記基材層が、フッ素系樹脂を形成材料とする層とその他の層とを含み、
前記第1の中間層が、ポリエチレン系樹脂と、エラストマー成分と、エポキシ基を有する成分とを含み、
前記エラストマー成分として、スチレン含有率が8質量%以上24質量%以下であるスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体を含む包装袋。
【請求項3】
前記その他の層が、補強層、ガスバリア層、遮光層、印刷層、金属箔、および合成紙からなる群から選択される少なくとも1層である請求項1または2に記載の包装袋。
【請求項4】
前記基材層の外側の面に、表面樹脂層と、
前記基材層と前記表面樹脂層との間に挟持された第2の中間層と、を有する請求項1~のいずれか1項に記載の包装袋。
【請求項5】
前記注出口が、形成材料として環状オレフィン系樹脂を含む請求項1~のいずれか1項に記載の包装袋。
【請求項6】
前記注出口が、二色成形品であり、
少なくとも内容物と接触する部分が、環状オレフィン系樹脂を含む請求項1~のいずれか1項に記載の包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品、化粧品、食品等の包装材料として使用される樹脂フィルムは、これら内容物の有効成分の劣化を抑制するため、水蒸気透過率が低いことが求められる。特に、医薬品等の生体に適用される製品の包装材料として、ポリオレフィン等のシーラント樹脂を用いた包装袋が用いられている(例えば、特許文献1)。ポリオレフィン等のシーラント樹脂を用いた包装袋は、ポリオレフィンが有する疎水性のため、水蒸気透過率を低く抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-084044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ポリオレフィン等のシーラント樹脂を用いた包装袋は、医薬品等をシーラント樹脂層で吸着したり、生体材料に含まれるタンパク質等の成分を変質させたりする可能性がある。これは、疎水性を有するポリオレフィンは、同時に親油性が高いためであると推測される。そこで、医薬品等を吸着しにくい包装袋が求められていた。
【0005】
また、特許文献1に記載されているような包装袋は、市場要求に応じて、さらなる水蒸気透過率の低減化が求められていた。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、水蒸気透過率が低く、非吸着性に優れる新規の包装袋を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様は、袋本体と、袋本体に接合された注出口と、を有し、袋本体は、少なくとも基材層と、第1の中間層と、シーラント層とをこの順で有する積層体を形成材料とし、シーラント層を内側とし対向するシーラント層同士を貼り合わせることで袋状を呈するものであり、注出口は、対向するシーラント層同士に挟持されて接合され、第1の中間層が、ポリエチレン系樹脂と、変性ポリエチレン系樹脂とを含み、基材層が、フッ素系樹脂を形成材料とする層を含む包装袋を提供する。
【0008】
本発明の一態様においては、ポリエチレン系樹脂が、直鎖状低密度ポリエチレンである構成としてもよい。
【0009】
本発明の一態様においては、変性ポリエチレン系樹脂が、無水マレイン酸変性ポリエチレンである構成としてもよい。
【0010】
本発明の一態様は、袋本体と、袋本体に接合された注出口と、を有し、袋本体は、少なくとも基材層と、第1の中間層と、シーラント層とをこの順で有する積層体を形成材料とし、シーラント層を内側とし対向するシーラント層同士を貼り合わせることで袋状を呈し、注出口は、対向するシーラント層同士に挟持されて接合され、第1の中間層が、ポリエチレン系樹脂と、エラストマー成分と、エポキシ基を有する成分とを含み、基材層が、フッ素系樹脂を形成材料とする層を含む包装袋を提供する。
【0011】
本発明の一態様においては、エポキシ基を有する成分が、1,2-ポリブタジエンにエポキシを部分的に導入したものであり、かつ数平均分子量が500以上4000以下である構成としてもよい。
【0012】
本発明の一態様においては、エラストマー成分として、スチレン含有率が8質量%以上24質量%以下であるスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体を含む構成としてもよい。
【0013】
本発明の一態様においては、フッ素系樹脂を形成材料とする層の厚みが20μm以上60μm以下である構成としてもよい。
【0014】
本発明の一態様においては、フッ素系樹脂がポリクロロ三フッ化エチレンである構成としてもよい。
【0015】
本発明の一態様においては、シーラント層が、環状オレフィン系樹脂を含む構成としてもよい。
【0016】
本発明の一態様においては、基材層の外側の面に、表面樹脂層と、基材層と表面樹脂層との間に挟持された第2の中間層と、を有する構成としてもよい。
【0017】
本発明の一態様においては、注出口が、形成材料として環状オレフィン系樹脂を含む構成としてもよい。
【0018】
本発明の一態様においては、注出口が、二色成形品であり、少なくとも内容物と接触する部分が、環状オレフィン系樹脂を含む構成としてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様によれば、水蒸気透過率が低く、非吸着性に優れる新規の包装袋が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施形態の包装袋31の平面図。
図2図1のII-II線に沿う断面図。
図3】注出口20周辺を示す斜視図。
図4】第2実施形態の包装袋の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
≪第1実施形態≫
<包装袋>
以下、図1および図2を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る包装袋について説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法や比率などは適宜異ならせてある。
【0022】
本実施形態の包装袋は、医薬品、細胞、組織、臓器、生体材料、血液、体液、酵素、抗体、美容製品、栄養剤、保健剤、化粧品、食品等の内容物を収容する包装袋である。本実施形態の包装袋は、医薬品を収容する包装袋として好適に用いられる。包装袋の形態は、例えば三方袋、四方袋、合掌貼り袋、ガゼット袋、自立袋、パウチ、バッグインボックス用の内袋やドラム缶内装袋などの大型の袋等が挙げられる。
【0023】
本実施形態の包装袋に収容される内容物の具体的な状態、形状等は、特に限定されない。上記内容物は、例えば、固体、液体、気体、粉体、粒体、混合物、組成物、分散物などであってもよい。また、内容物が液体である場合、液体は、薬剤を含んだ水溶液であってもよい。内容物を包装袋内に収容する際、窒素等の不活性ガスまたは液体を充填してもよい。
【0024】
図1は、第1実施形態の包装袋31の平面図である。図2は、図1のII-II線に沿う断面図である。図1および図2に示すように、包装袋31は、袋本体17と、袋本体17に接合された注出口20と、を有する。
【0025】
袋本体17は、積層体10を形成材料とし、2枚の積層体10同士を貼り合わせることで袋状に成形されている。注出口20は、対向する積層体10同士に挟持されて接合されている。
【0026】
包装袋31は、積層体10と注出口20とが接合した第1接合部14と、積層体10同士が接合した第2接合部15とを有する。平面視において、第1接合部14と第2接合部とは連続しており、袋本体17の周縁部に閉環状に設けられている。また、包装袋31は、第1接合部14および第2接合部15の一部が、積層体10を断面V字状に山折りとした折り返し部を有していてもよい。
【0027】
袋本体17は、内容物16を充填するための空間5を形成している。なお、図面において、内容物16の具体的な状態、形状等は図示しない。内容物16を充填する前において、袋本体17は、空間5に内容物16を充填するための充填口を有していてもよい。
【0028】
[積層体]
積層体10は、基材層11と、第1の中間層12と、シーラント層13とをこの順で有する。図に示す袋本体17は、2枚の積層体10を用い、各積層体のシーラント層13同士を対向させ、シーラント層13同士を貼り合わせたものである。
【0029】
(基材層)
第1実施形態において、基材層11は、空間5の外側に露出する層である。本実施形態の基材層11は、フッ素系樹脂を形成材料とする層を含む。基材層11がフッ素系樹脂を形成材料とする層を含むと、機械的強度や光学的性質に優れ、水蒸気透過率が低い包装袋を提供できる。
【0030】
フッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル(EPA)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロ三フッ化エチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体(ECTFE)などが挙げられる。中でも、ポリクロロ三フッ化エチレン(PCTFE)が好ましい。上述した樹脂は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
2枚の積層体10を、シーラント層13にてヒートシールする際には、シーラント層13は含む樹脂が溶融するまでシーラント層13を加熱する必要がある。その際、積層体10の変形や劣化を抑制するため、ヒートシール時の加熱温度は、基材層11が含む樹脂の溶融温度よりも低い必要がある。そのため、基材層11が含む樹脂の種類によって、シーラント層13が含む樹脂の種類が制限される。
【0032】
本実施形態の積層体10においては、フッ素系樹脂として、これまで基材層に適用されてきた樹脂と比べてガラス転移温度が高いものを使用することで、シーラント層13を形成する材料の選択肢を広くすることができる。
【0033】
本実施形態において、フッ素系樹脂を形成材料とする層の厚みは、20μm以上60μm以下が好ましい。フッ素系樹脂を形成材料とする層の厚みが20μm以上であると、包装袋31の水蒸気透過率を十分低くすることができる。また、フッ素系樹脂を形成材料とする層の厚みが60μm以下であると、生産コストを削減することができる。
【0034】
基材層11は、1層からなる単層構成でもよく、2層以上の積層構成でもよい。基材層11を構成してもよい層(以下、「その他の層」と称する。)は適宜選択が可能である。その他の層としては、例えば補強層、ガスバリア層、遮光層、印刷層、金属箔、合成紙などが挙げられる。その他の層は、フッ素系樹脂を含まない構成とすることができる。
【0035】
補強層としては、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(O-PET)、二軸延伸ナイロン(O-Ny)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)等の補強樹脂層が挙げられる。
ガスバリア層は、例えば無機物やガスバリア性樹脂等から構成することができる。無機物としては、金属蒸着層やアルミナ等の金属酸化物が挙げられる。ガスバリア性樹脂としては、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、塩化ビニリデン等が挙げられる。
【0036】
積層体10は、基材層11の第1の中間層12とは反対の面11aに、印刷層またはコート層を有してもよい。
【0037】
印刷層は、基材層11の表面(面11a)にインキを印刷することにより、包装袋31に識別性や意匠性を付与することができる。
【0038】
コート層は、基材層11または基材層11上に設けられた印刷層などのその他の層を保護するためのものである。このようなコート層としては、薄膜の樹脂層(樹脂フィルム)や紫外線硬化型の樹脂などが挙げられる。
【0039】
(第1の中間層)
第1の中間層12は、基材層11とシーラント層13とを接着するものである。本実施形態の第1の中間層12は、ポリエチレン系樹脂と、変性ポリエチレン系樹脂とを含むか、ポリエチレン系樹脂と、エラストマー成分と、エポキシ基を含む樹脂組成物と、を含むかのいずれかであることが好ましい。
【0040】
本明細書においては、ポリエチレン樹脂と変性ポリエチレン樹脂とを含む第1の中間層を「中間層(1)」と称することがある。また、ポリエチレン系樹脂と、エラストマー成分と、エポキシ基を含む樹脂組成物と、を含む第1の中間層を「中間層(2)」と称することがある。
【0041】
「中間層(1)」
中間層(1)に含まれるポリエチレン樹脂としては、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられ、直鎖状低密度ポリエチレンであることが好ましい。
【0042】
中間層(1)に含まれる変性ポリエチレン樹脂は、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたポリエチレン樹脂であって、ポリエチレン樹脂中に、カルボキシ基や無水カルボン酸基等の酸官能基を有するものである。本実施形態においては、ポリエチレン樹脂を酸変性して得られたものが好ましい。
酸変性方法としては、有機過酸化物や脂肪族アゾ化合物等のラジカル重合開始剤の存在下で、ポリエチレン樹脂と酸官能基含有モノマーとを溶融混練するグラフト変性が挙げられる。
【0043】
変性前のポリエチレン樹脂材料は、原料モノマーとしてエチレンを含むものであれば限定されず、公知のポリエチレン樹脂が適宜用いられる。具体的には、ポリエチレン樹脂として上述した例の他、;エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-1-オクテン共重合体等のエチレン・α-オレフィン共重合体;エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のエチレン系共重合樹脂等が挙げられる。
【0044】
酸官能基含有モノマーは、エチレン性二重結合と、カルボキシ基又はカルボン酸無水物基とを同一分子内に持つ化合物であって、各種の不飽和モノカルボン酸、ジカルボン酸、又はジカルボン酸の酸無水物が挙げられる。
カルボキシ基を有する酸官能基含有モノマー(カルボキシ基含有モノマー)としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、ナジック酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、テトラヒドロフタル酸、エンド-ビシクロ[2.2.1]-5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸(エンディック酸)などのα,β-不飽和カルボン酸モノマーが挙げられる。
カルボン酸無水物基を有する酸官能基含有モノマー(カルボン酸無水物基含有モノマー)としては、無水マレイン酸、無水ナジック酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水エンディック酸などの不飽和ジカルボン酸無水物モノマーが挙げられる。
これらの酸官能基含有モノマーは、第1の中間層12を構成する成分において1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0045】
なかでも酸官能基含有モノマーとしては、酸無水物基を有する酸官能基含有モノマーが好ましく、カルボン酸無水物基含有モノマーがより好ましく、無水マレイン酸が特に好ましい。
酸変性に用いた酸官能基含有モノマーの一部が未反応である場合は、未反応の酸官能基含有モノマーによる接着力の低下を防ぐため、予め未反応の酸官能基含有モノマーを除去したものを用いることが好ましい。
【0046】
中間層(1)に含まれる変性ポリエチレン樹脂は無水マレイン酸変性ポリエチレンであることが好ましい。
【0047】
中間層(1)においては、ポリエチレン樹脂と変性ポリエチレン樹脂の合計を質量100%としたとき、ポリエチレン樹脂と変性ポリエチレン樹脂の合計量に対するポリエチレン樹脂の割合の下限値は、10%以上が好ましく、20%以上がさらに好ましい。また、ポリエチレン樹脂と変性ポリエチレン樹脂の合計量に対するポリエチレン樹脂の割合の上限値は、70%以下が好ましく、60%以下がさらに好ましい。例えば、ポリエチレン樹脂と変性ポリエチレン樹脂との混合比は、[ポリエチレン樹脂]:[変性ポリエチレン樹脂]=20:80~60:40を取ることができる。
【0048】
第1の中間層12にポリエチレン樹脂と変性ポリエチレン樹脂との混合材料を用いることにより、シーラント層13と基材層11との間の密着性が向上する。このため層間剥離が生じにくい積層体10を提供できる。
【0049】
「中間層(2)」
中間層(2)は、ポリエチレン系樹脂と、エラストマー成分と、エポキシ基を有する成分とを含む樹脂組成物を含む。
【0050】
中間層(2)に含まれるポリエチレン系樹脂は、ポリエチレン系樹脂および変性ポリエチレン系樹脂の混合物に含まれるポリエチレン系樹脂と同様である。上記樹脂組成物に含まれるポリエチレン系樹脂は、バイオマスポリエチレン、石油由来のポリエチレン、両者の混合物のいずれでもよい。
【0051】
中間層(2)に含まれるポリエチレン系樹脂においては、上記樹脂組成物中のポリエチレン系樹脂はメタロセン系触媒により重合されたポリエチレンが好ましい。なかでも、メタロセン系触媒により重合されたC4-LLDPE、C6-LLDPE、C8-LLDPE等のエチレン-αオレフィン共重合体、長鎖分岐ポリエチレン等が好適な例である。
メタセロン系触媒により重合されたポリエチレン系樹脂は、分子量分布が狭い傾向にある。このため接着阻害要因となりうる低分子量成分が少なく、接着剤として用いた場合に高い接着性が得られると考えられる。
【0052】
上記樹脂組成物中のポリエチレン系樹脂の密度は、0.890g/cm以上0.940g/cm以下が好ましく、0.910cm以上0.930g/cm以下がより好ましい。
【0053】
上記樹脂組成物中のポリエチレン系樹脂の含有量は、55質量部以上90質量部以下であり、60質量部以上80質量部以下が好ましい。
ポリエチレン系樹脂の含有量が上記上限値以下であると、後述のエラストマー成分との粘着性を発揮し、接着性が高くなる。
【0054】
中間層(2)に含まれるエラストマー成分としては、スチレン系エラストマー、アクリル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、エステル系エラストマー等が挙げられる。但し、エラストマー成分は後述するエポキシ基を有する成分を除く。
なかでも、スチレン系エラストマーが好ましく、例えば、ポリスチレン等からなるハードセグメントと、ポリエチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン等からなるソフトセグメントとを有するブロック共重合体が挙げられる。スチレン系エラストマーに使用可能なスチレン系重合体としては、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-エチレン共重合体等の芳香族オレフィン-脂肪族オレフィンの共重合体が挙げられる。
【0055】
スチレン系エラストマーはスチレン-ブチレン-スチレン共重合体(SBS)に水素添加して完全に分子内の不飽和結合を開環させたスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体(SEBS)であることが好ましい。
またそのスチレン含有率は8質量%以上24質量%以下であることが好ましく、10質量%以上20質量%以下がより好ましい。
スチレン含有率が上記上限値以下であると、樹脂の硬化を抑制でき、接着性の低下を抑制できる。
【0056】
中間層(2)に含まれるエラストマー成分の具体的な例としては、JSR株式会社のダイナロン、旭化成ケミカルズ株式会社のタフテックHシリーズ、クレイトンポリマー株式会社のクレイトンGポリマーなどが挙げられる。
【0057】
中間層(2)において、エラストマー成分の含有量は、10質量部以上45質量部以下であり、20質量部以上40質量部以下が好ましい。
エラストマー成分の含有量が上記上限値以下であると、接着剤層を形成したときの引張強度の低下を抑制し、接着強度の低下を防止できる。
【0058】
上記ポリエチレン系樹脂と上記エラストマー成分との合計は100質量部とする。
【0059】
中間層(2)に含まれるエポキシ基を有する成分は、エポキシ基およびビニル基を有する成分が好ましい。エポキシ基およびビニル基を有する成分は、1,2‐ビニル構造を有する成分が好ましく、ブタジエンを部分的にエポキシ化した、エポキシ化ポリブタジエンが好ましい。1,2-ポリブタジエンを部分的にエポキシ化したものが特に好ましい。
【0060】
エポキシ基を有する成分の具体的な例としては、日本曹達株式会社の液状ポリブタジエンJP-100,JP-200や株式会社アデカのアデカサイザーBF-1000などが挙げられる。
【0061】
エポキシ基を有する成分の数平均分子量は500以上4,000以下であることが好ましい。
エポキシ基を有する成分の数平均分子量が上記上限値以下であると、常温で固形状態となることによる粘着性の低下を抑制でき、接着性の低下を防止できる。
本実施形態において数平均分子量は、GPC(ゲルパーミネーションクロマトグラフィー)によって測定されるポリスチレン換算の値とする。
【0062】
中間層(2)においては、上記ポリエチレン系樹脂および上記エラストマー成分の総量100質量部に対する、エポキシ基を有する成分の含有量が0.1質量部以上1.5質量部以下であり、0.5質量部以上1.0質量部以下が好ましい。
エポキシ基を有する成分の含有量が上記上限値以下であると、接着阻害の要因となる樹脂組成物中の低分子成分を低減できる。
【0063】
中間層(2)において、上記エラストマー成分と、エポキシ基を有する成分とは共通する繰り返し単位を有し、互いに相溶する。エラストマー成分とエポキシ基を有する成分とは、スチレン系エラストマー同士、アクリル系エラストマー同士の組み合わせが好ましい。
【0064】
中間層(2)の樹脂組成物は、ポリエチレン系樹脂、エラストマー成分およびエポキシ基を有する成分を、それぞれ特定の配合比で混合したことを特徴とする。本実施形態の樹脂組成物は、エポキシ基を有する成分中のエポキシ基がフッ素系樹脂のフッ素成分と相溶し、フッ素系樹脂との接着性に優れる。エポキシ基を有すると、金属材料との接着も可能となる。
【0065】
中間層(2)においては、ポリエチレン系樹脂、エラストマー成分およびエポキシ基を有する成分を、それぞれ特定の配合比で混合したことにより、ポリエチレン系樹脂が「海」、エラストマー成分が「島」に相当する、いわゆる海島構造を形成する。さらに、エラストマー成分にエポキシ基を有する成分が相溶することにより、エポキシ基を有する成分を樹脂組成物中に均一に分散させることができる。これにより、エポキシ基が、ポリエチレン系樹脂とエラストマー成分とで保護され、水分によるエポキシ基の開環を抑制できると推察される。
【0066】
第1の中間層12にポリエチレン系樹脂、エラストマー成分およびエポキシ基を有する成分の混合材料を用いることにより、シーラント層13と基材層11との間の密着性が向上する。このため層間剥離が生じにくい積層体10を提供できる。
【0067】
以上のような材料を用いて第1の中間層12を形成することで、基材層11と第1の中間層12もしくは第1の中間層12とシーラント層13での層間剥離が生じにくい包装袋31を提供できる。また、第1の中間層12の密着性不良を抑制することで、これに起因した、包装袋31の割れの発生を抑制することができる。
【0068】
(シーラント層)
シーラント層13は、積層体10をヒートシール等により貼り合わせて袋状に形成する際に用いられる。シーラント層13は、包装袋31において、空間5に面しており、内容物16と接触する層である。
【0069】
本実施形態においては、基材層11がガラス転移温度の高いフッ素系樹脂を形成材料とする層を含む。これにより、ヒートシール等を用いたシーラント層13同士の貼り合わせを、高温で行うことができる。このため、シーラント層13を形成する材料として、ガラス転移温度の高い材料を使用することができる。
【0070】
また、シーラント層13を形成する材料のガラス転移温度が高いほど、内容物16に対する非吸着性に優れることが知られている。本実施形態のシーラント層13は、環状オレフィン系樹脂を含むことが好ましい。シーラント層13が環状オレフィン系樹脂を含むと、内容物16に対する非吸着性に優れる包装袋を提供できる。
【0071】
環状オレフィン系樹脂としては、環状オレフィンポリマー(COP)、環状オレフィンコポリマー(COC)等が挙げられる。シーラント層13を構成する樹脂成分が、環状オレフィン系樹脂の1または2種以上であってもよく、環状オレフィン系樹脂と他の樹脂またはエラストマー等との混合物であってもよい。
【0072】
COPとしては、例えば環状オレフィンの単独重合体もしくは2種以上の環状オレフィンの共重合体、またはその水素添加物が挙げられる。環状オレフィンポリマーは、好ましくは非結晶性の重合体であり、より好ましくは、メタセシス等による環状オレフィンの開環重合体、またはその水素添加物である。環状オレフィンポリマーは、環状オレフィンコポリマー等に比べて脂環式構造を含有する比率が高く、内容物16に対する非吸着性に優れる。
【0073】
COCとしては、例えば1もしくは2種以上の環状オレフィンと、1もしくは2種以上の非環状オレフィンとの共重合体、またはその水素添加物が挙げられる。環状オレフィンコポリマーは、好ましくは非結晶性の重合体であり、より好ましくは、環状オレフィンとエチレンとの共重合体、またはその水素添加物である。
【0074】
環状オレフィン系樹脂の構成モノマーとして使用される環状オレフィンは、少なくとも1つの環構造を有する不飽和炭化水素(オレフィン)である。例えば、炭素原子数が3~20のシクロアルカンを有するビニルシクロアルカンおよびその誘導体、炭素原子数が3~20のモノシクロアルケンおよびその誘導体、ノルボルネン骨格を有する環状オレフィン(ノルボルネン系モノマー)等が挙げられる。
【0075】
ノルボルネン系モノマーとしては、ビシクロ[2.2.1]-2-ヘプテン(ノルボルネン)およびその誘導体が挙げられる。誘導体としては、アルキル基等の置換基を有する化合物、ノルボルナジエンのように不飽和結合を2以上有する化合物、3つ以上の環構造を有し、そのうち2つの環構造がノルボルネン骨格を構成する化合物が挙げられる。3つ以上の環構造を有するノルボルネン系モノマーとしては、トリシクロ[5.2.1.02,6]デセン(ジヒドロジシクロペンタジエン)や、ノルボルネンまたはジヒドロジシクロペンタジエンに1分子以上のシクロペンタジエンがディールス・アルダー反応により付加した化合物(例えばテトラシクロドデセン、ペンタシクロペンタデセン、ヘキサシクロヘプタデセン等)、これらの水素添加物、二重結合の位置が異なる異性体、アルキル置換体等が挙げられる。
【0076】
COCの構成モノマーとして使用される非環状オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン等のα-オレフィン、3-デセン、3-ドデセン等のアルケン類が挙げられる。
【0077】
シーラント層13を形成する材料のガラス転移温度は、100℃以上170℃以下が好ましく、105℃以上160℃以下がより好ましい。シーラント層13を形成する材料のガラス転移温度が100℃以上であると、シーラント層13は、内容物16に対する非吸着性に優れる傾向がある。また、シーラント層13を形成する材料のガラス転移温度が170℃以下であると、積層体10を貼り合わせる際、高温を必要としないので成形性に優れる。
【0078】
シーラント層13の厚みは、20μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましい。シーラント層13の厚みが20μm以上であると、積層体10のシーラント層13同士をヒートシール等により貼り合わせて、積層体10を袋状に形成することができる。また、シーラント層13の厚みは、60μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。シーラント層13の厚みが60μm以下であると、生産コストを削減することができる。シーラント層13の厚みにおける、上限値と下限値とは任意に組み合わせることができる。
【0079】
シーラント層13が環状オレフィン系樹脂を含む場合、シーラント層13が厚くなるほど、包装袋の水蒸気透過率は低くなることが分かっている。一方で、シーラント層13が厚くなるほど、シーラント層13が割れやすくなり、包装袋31の落下強度が低下することが分かっている。したがって、包装袋の水蒸気透過率を低くする観点からは、シーラント層13は厚い方が好ましいが、落下強度を高くする観点からは、シーラント層13は薄い方が好ましい。
【0080】
本実施形態において基材層11は水蒸気透過率の低いフッ素系樹脂を形成材料とする層を含む。これにより、基材層がフッ素系樹脂以外の樹脂を形成材料とする場合と比べてシーラント層13を薄くしても、包装袋31の水蒸気透過率を十分低くすることができる。すなわち、水蒸気に対するバリア性に優れる包装袋31を提供できる。また、シーラント層13が薄くなると、シーラント層13が割れにくくなり、包装袋31の落下強度が高まることが分かっている。このため、基材層がフッ素系樹脂を形成材料とする層を含むことにより、水蒸気に対するバリア性と取扱性との両方に優れる包装袋を提供できる。
【0081】
積層体10同士が接合した第2接合部15の積層構成は、基材層11/第1の中間層12/シーラント層13/シーラント層13/第1の中間層12/基材層11」の順になっている。第2接合部15は、積層体10のシーラント層13に含まれる樹脂が融着することで形成される。
【0082】
[注出口]
注出口20は、対向するシーラント層13同士に挟持されて接合されている。注出口20は、環状オレフィン系樹脂を含むことが好ましく、少なくとも内容物16と接する部分に環状オレフィン系樹脂を含むことが好ましい。注出口20を形成する環状オレフィン系樹脂としては、シーラント層13を形成する環状オレフィン系樹脂と同様のものが挙げられる。注出口20を形成する材料と、シーラント層13を形成する材料とは、同じであってもよく、異なっていてもよい。本実施形態においては、注出口20およびシーラント層13は同一の材料から形成されていることが好ましい。
【0083】
図3は、注出口20周辺を示す斜視図である。図3に示すように、注出口20は、第1成形体21と第2成形体22とからなる二色成形品である。
【0084】
第1成形体21は、筒状の形状を有し、内部に内容物16を取り出すための流路23を有する。第1成形体21は、少なくとも空間5に収容された部分を有する。第1成形体21は、形成材料として環状オレフィン系樹脂またはポリオレフィン樹脂を含むことが好ましく、環状オレフィン系樹脂を含むことがより好ましい。第1成形体21が環状オレフィン系樹脂から形成されると、非吸着性に優れる包装袋を提供できる。
【0085】
第2成形体22は、筒状の形状を有し、第1成形体21の外周面21aに形成されている。ただし、第2成形体22は、第1成形体21の空間5に収容される部分の外周面には形成されていない。第2成形体22は、第1成形体21と比べて、軸方向の長さが短くなっている。第2成形体22は、形成材料としてポリオレフィン樹脂を含むことが好ましい。
【0086】
ポリオレフィン樹脂としては、1種のオレフィンの単独重合体(ホモポリマー)でもよく、2種以上のオレフィンの共重合体(コポリマー)でもよい。オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、α-オレフィン等の非環状オレフィンが挙げられる。ポリオレフィンの具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-α-オレフィンコポリマー等が挙げられる。
これらのポリオレフィンは、酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルアルコール等、非オレフィン系のビニルモノマーを少量含むコポリマーであってもよい。オレフィンの由来は、石油由来オレフィン、植物由来オレフィン、または両者の併用でもよい。
第2成形体22を形成するポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン系樹脂が好ましく、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)がより好ましい。
【0087】
第2成形体22がポリオレフィン樹脂から形成されると、袋本体17を形成する積層体10と注出口20とが接合しやすく、取扱性や耐久性にも優れる。
【0088】
積層体10と注出口20とが接合した第1接合部14の積層構成は、基材層11/第1の中間層12/シーラント層13/注出口20/シーラント層13/第1の中間層12/基材層11」の順になっている。第1接合部14は、積層体10のシーラント層13と注出口20とに含まれる樹脂が融着することで形成される。
【0089】
第1接合部14において、積層体10は、注出口20のうち第1成形体21と接合してもよいし、第2成形体22と接合してもよい。第1接合部14において、積層体10と第1成形体21とが接合した部分と、積層体10と第2成形体22とが接合した部分と、の両方が含まれていてもよい。
【0090】
[その他の構成]
包装袋31は、注出口以外にも、注入口、コック、ラベル、開封用ツマミ、取っ手等の付属物を設けることもできる。付属物が樹脂成形品である場合は、上述の注出口と同様の構成としてもよい。
【0091】
<包装袋の製造方法>
包装袋31の製造方法は、積層体10を形成する工程と、積層体10と注出口20とを接合する工程と、を有する。
【0092】
積層体10を形成する工程においては、基材層11の原料となる樹脂と、第1の中間層12の原料となる樹脂と、シーラント層13の原料となる樹脂と、を同時に溶融押出成形することで積層体10を形成する。また、基材層11、第1の中間層12、シーラント層13をドライラミネート法、押出ラミネート法などの方法により積層して、積層体10を形成することもできる。
【0093】
積層体10と注出口20とを接合する工程においては、まず、積層体10のシーラント層13同士を対向させた状態で、積層体10の間に注出口20を挟み込む。次に、積層体10と注出口20とを接合して第1接合部14を形成する。積層体10同士を接合して第2接合部15を形成する。こうして、包装袋31が製造される。
【0094】
以上の構成によれば、水蒸気透過率が低く、非吸着性に優れる新規の包装袋を提供できる。
【0095】
≪第2実施形態≫
<包装袋>
以下、図4を参照しながら、本発明の第2実施形態に係る包装袋について説明する。図4は、第2実施形態の包装袋の断面図であり、図2に相当する図である。本実施形態において第1実施形態と共通する構成については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0096】
図4に示すように、第2実施形態の包装袋32は、袋本体117と、袋本体117に接合された注出口20と、を有する。袋本体117は、積層体110を形成材料とし、2枚の積層体110同士を貼り合わせることで袋状に成形されている。
【0097】
第2実施形態の積層体110は、表面樹脂層111と、第2の中間層112と、基材層11と、第1の中間層12と、シーラント層13とをこの順で有する。
【0098】
図4に示す袋本体117は、2枚の積層体110を用い、各積層体のシーラント層13同士を対向させ、シーラント層13同士を貼り合わせたものである。
【0099】
第2実施形態における第2の中間層112は、第1の中間層12が含む材料と同一の材料を含んでいてもよい。第2の中間層112は、第1の中間層12と同一の材料を含んでいてもよいし、異なる材料を含んでいてもよい。
【0100】
(表面樹脂層)
第2実施形態における表面樹脂層111は、ポリオレフィン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂等からなる層である。中でも表面樹脂層111は、ポリオレフィン系樹脂からなることが好ましく、環状オレフィン系樹脂を含むポリオレフィン系樹脂からなることがより好ましい。
【0101】
環状オレフィン系樹脂としては、シーラント層13が含む材料と同一の材料であってもよい。表面樹脂層111は、シーラント層13と同一の材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。
【0102】
表面樹脂層111は、1層からなる単層構成でもよく、2層以上の積層構成でもよい。表面樹脂層111の第2の中間層112とは反対の面111aには、例えば印刷層または有色の樹脂層が設けられていてもよい。
【0103】
以上の構成によれば、第1実施形態と同様に、水蒸気透過率が低く、非吸着性に優れる新規の包装袋を提供できる。第2実施形態では、表面樹脂層111の樹脂を任意に選定することにより、包装袋32の表面の印刷性を改善したり、すべり性を改善したりすることができる。
【0104】
また、第2実施形態で用いられている積層体110は5層構成であるため、第1実施形態と比べて包装袋32の強度が高い。また、第2実施形態では、第1実施形態と比べて積層体110のカールを抑制できる。特に、第1の中間層12と第2の中間層112とを同一の材料で形成することにより、基材層11の内側の面と外側の面とで性質が同一となり、積層体110のカールをより抑制できる。積層体110のカールを抑制した結果、包装袋32の製造工程において積層体110の加工がしやすくなる。
【0105】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【実施例
【0106】
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0107】
[実施例1~13、比較例1]
基材層、中間層、シーラント層をこの順で有する3層構成の積層体を製造した。表1に示す各層の原料となる樹脂をそれぞれ別々に加熱、溶融混合したものを、同時多層押出成形が可能な押出機を用いて同時多層製膜を行って製膜し、3層構成の積層体を得た。
【0108】
これとは別に、表面樹脂層、第2の中間層、基材層、第1の中間層、シーラント層をこの順で有する5層構成の積層体を製造した。表2に示す各層の原料となる樹脂を用い、3層構成の積層体と同様に製膜し、5層構成の積層体を得た。なお、表1および表2において[ ]内の数値は各層の厚みである。
【0109】
また、これらの積層体とは別に、内側がCOPから構成され、外側の一部がポリエチレン(PE)から構成された筒状の注出口を二色成形法により成形した。
積層体の間に注出口を挟み込み、積層体と注出口との間の第1接合部、および積層体10同士の間の第2接合部を接合して、包装袋を製造した。
【0110】
【表1】
【0111】
【表2】
【0112】
なお、基材層、シーラント層および表面樹脂層の原料として、以下の材料を用いた。
COP:シクロオレフィンポリマー。日本ゼオン株式会社製、ZEONOR(登録商標)1020Rを使用。
PE:直鎖状低密度ポリエチレン。東ソー株式会社製、ニポロン(ρ=0.930g/cm、内層用)を使用。
PCTFE: ポリクロロ三フッ化エチレン樹脂。ダイキン工業株式会社製、DF0050-C1を使用。
MAH-ETFE:フッ素系樹脂。旭硝子株式会社製、フルオンLH-8000(ρ=1.75g/cm、Tm=180℃、メルトマスフローレイト=4g/10分(試験温度230℃、荷重2.16kgf))を使用。
【0113】
表3に、中間層1~4の組成を示す。なお、表3において、各材料の比率は質量比(%)である。
【0114】
【表3】
【0115】
表3の材料は、下記の市販品を用いた。
・エラストマー:クレイトン株式会社製、Kraton G1657M(スチレン含有率13質量%、ρ=0.90g/cm、メルトマスフローレイト=22g/10分(試験温度230℃、荷重5kgf)を使用。
・エポキシ化ポリブタジエン:株式会社アデカ製、エポキシ化1,2-ポリブタジエン(ρ=0.99g/cm、Mn=1000)を使用。
【0116】
<評価>
実施例1~13、比較例1の各包装袋について、以下の各試験を行った。各試験の結果を、表4に示す。
【0117】
[内容物の劣化]
実施例および比較例の包装袋に、内容物として0.05質量%ニトログリセリン注射液100mLを充填した。これに、110℃、0.106MPaの条件で40分間高圧蒸気滅菌を施すことにより、内容物を含んだ包装袋を得た。前記内容物を含んだ包装袋を40℃で3ヶ月間保存し、ニトログリセリン注射液の含有量を目視で確認した。
○:内容物の含有量が充填量の95%以上であった。
△:内容物の含有量が充填量の80%以上であった。
×:内容物の含有量が充填量の80%未満であった。
【0118】
[落下強度]
実施例および比較例の包装袋をそれぞれ100個用意して、以下の条件下にて落下試験を行った。
周辺温度:20℃
落下高さ:2.0m
【0119】
上述の試験結果に基づいて、以下の基準で評価した。
◎:破損した包装袋がなかった。
○:破損した包装袋が1個であった。
△:破損した包装袋が2個であった。
×:破損した包装袋が3個以上であった。
【0120】
【表4】
【0121】
表4に示すように、本発明を適用した実施例1~13の包装袋は、内容物の劣化を抑制することができた。このことから、実施例1~13の包装袋は、内容物の吸着を抑制できたと考えられる。また、実施例1~13の包装袋は、落下強度にも優れていた。一方、比較例1においては、内容物の劣化を確認した。これは、比較例1の包装袋における中間層の接着不良に起因するものと思われる。また、比較例1の包装袋は、落下強度も劣っていた。
【符号の説明】
【0122】
5…空間、10…積層体、11…基材層、11a…面、12…第1の中間層、13…シーラント層、111…表面樹脂層、112…第2の中間層、16…内容物、17…袋本体、20…注出口、31、32…包装袋
図1
図2
図3
図4