(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】通信制御装置、通信制御方法および通信制御プログラム
(51)【国際特許分類】
H04L 61/5014 20220101AFI20241112BHJP
【FI】
H04L61/5014
(21)【出願番号】P 2023500148
(86)(22)【出願日】2021-02-16
(86)【国際出願番号】 JP2021005728
(87)【国際公開番号】W WO2022176020
(87)【国際公開日】2022-08-25
【審査請求日】2023-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西口 雅人
(72)【発明者】
【氏名】中務 諭士
(72)【発明者】
【氏名】柴田 貴博
(72)【発明者】
【氏名】金澤 俊之
(72)【発明者】
【氏名】岩橋 宏樹
【審査官】速水 雄太
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-017631(JP,A)
【文献】特開2013-046176(JP,A)
【文献】特開2012-175199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/00-12/66
41/00-101/695
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの端末を収容するエッジルータの切り替えに関する情報を取得する取得部と、
前記取得部が前記切り替えに関する情報を取得した場合には、切り替え元エッジルータに対して、DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)パケットの遮断およびマルチキャスト通信の解除を設定する設定部と、
前記設定部が前記DHCPパケットの遮断および前記マルチキャスト通信の解除を設定した場合には、切り替え先エッジルータに対して、前記ユーザの設定情報を投入する投入部と、
前記取得部によって取得された前記切り替えに関する情報に基づいて、DHC
Pサーバに対して、前記端末によるIP(Internet Protocol)アドレスの再取得の誘起を指示する指示部と、
前記DHCPサーバから、前記再取得の誘起が完了した通知を受け付ける受付部と
、
前記受付部が前記完了した通知を受け付けた場合には、前記切り替え元エッジルータに対して、前記ユーザの設定情報を削除する削除部と
を備えることを特徴とする通信制御装置。
【請求項2】
前記指示部は、前記再取得の誘起を所定の単位ごとに、所定の時間間隔で指示することを特徴とする請求項
1に記載の通信制御装置。
【請求項3】
前記指示部は、前記再取得の誘起を、装置、LAG(Link Aggregation Group)、またはユーザごとに指示することを特徴とする請求項
2に記載の通信制御装置。
【請求項4】
通信制御装置によって実行される通信制御方法であって、
ユーザの端末を収容するエッジルータの切り替えに関する情報を取得する取得工程と、
前記取得工程が前記切り替えに関する情報を取得した場合には、切り替え元エッジルータに対して、DHCPパケットの遮断およびマルチキャスト通信の解除を設定する設定工程と、
前記設定工程が前記DHCPパケットの遮断および前記マルチキャスト通信の解除を設定した場合には、切り替え先エッジルータに対して、前記ユーザの設定情報を投入する投入工程と、
前記取得工程によって取得された前記切り替えに関する情報に基づいて、DHCPサーバに対して、前記端末によるIPアドレスの再取得の誘起を指示する指示工程と、
前記DHCPサーバから、前記再取得の誘起が完了した通知を受け付ける受付工程と
、
前記受付工程が前記完了した通知を受け付けた場合には、前記切り替え元エッジルータに対して、前記ユーザの設定情報を削除する削除工程と
を含むことを特徴とする通信制御方法。
【請求項5】
ユーザの端末を収容するエッジルータの切り替えに関する情報を取得する取得ステップと、
前記取得ステップが前記切り替えに関する情報を取得した場合には、切り替え元エッジルータに対して、DHCPパケットの遮断およびマルチキャスト通信の解除を設定する設定ステップと、
前記設定ステップが前記DHCPパケットの遮断および前記マルチキャスト通信の解除を設定した場合には、切り替え先エッジルータに対して、前記ユーザの設定情報を投入する投入ステップと、
前記取得ステップによって取得された前記切り替えに関する情報に基づいて、DHCPサーバに対して、前記端末によるIPアドレスの再取得の誘起を指示する指示ステップと、
前記DHCPサーバから、前記再取得の誘起が完了した通知を受け付ける受付ステップと
、
前記受付ステップ前記完了した通知を受け付けた場合には、前記切り替え元エッジルータに対して、前記ユーザの設定情報を削除する削除ステップと
をコンピュータに実行させることを特徴とする通信制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信制御装置、通信制御方法および通信制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
キャリアネットワークにおいて、通信事業者都合の保守目的で行われる、ユーザの端末(適宜、「ユーザ端末」または「端末」)を収容するエッジルータの切り替え(適宜、「保守収容替え」)がある。エッジルータの切り替えを行う際は、切り替え元のエッジルータ(適宜、「切り替え元エッジルータ」)から収容中のユーザの設定情報(適宜、「ユーザコンフィグ」)を削除後、切り替え先のエッジルータ(適宜、「切り替え先エッジルータ」)に同一の情報を投入する。キャリアネットワークにおけるエッジルータには、セキュリティ目的で、uRPF(unicast Reverse Path Forwarding)が適用される場合があり、uRPFは、インターネット関連技術の標準化団体であるIETF(Internet Engineering Task Force)から適用が推奨されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
図6を用いて、従来の保守収容替えについて説明する。
図6は、従来のエッジルータの保守収容替えを説明するための図である。まず、エッジ制御装置110は、切り替え元エッジルータ20Aから、ユーザ端末30(30A、30B、30C、30D)に対応する設定情報22(22A、22B、22C、22D)を削除する。次に、エッジ制御装置110は、切り替え先エッジルータ20Bに、設定情報22と同一の情報である設定情報23(23A、23B、23C、23D)を投入する。ここで、ユーザの設定情報(ユーザコンフィグ)は、ユーザ個々の転送設定を含む情報であり、例えば、IP(Internet Protocol)アドレス、VLAN(Virtual Local Area Network:仮想LAN)、ACL(Access Control List:アクセス制御リスト)に関する情報である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】NTT Communications、“uRPFの導入”、[online]、[2021年2月3日検索]、インターネット<https://www.ntt.com/business/services/network/internet-connect/ocn-business/bocn/gijyutsu/urpf.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来技術では、キャリアネットワークのエッジルータの保守収容替えにおいて、ユーザ通信へのサービス影響が発生する場合があった。なぜならば、従来技術では、収容先エッジの切り替えを端末側で検知することができないことに加えて、エッジルータに適用されたuPRFによって、端末のDHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)リースタイマ超過まで通信断が発生するからである。本来であれば、ユーザコンフィグ投入が完了した時点で、切り替え先と端末とのIPリーチャビリティが確保されるにも関わらず、エッジルータにおけるDHCPバインディングテーブルが更新されるまで、uRPFによってユーザ通信が遮断されてしまう。
【0006】
図7を用いて、従来の保守収容替えの流れについて説明する。
図7は、従来のエッジルータの保守収容替えを説明するためのシーケンス図である。まず、ユーザ端末30は、DHCPサーバ40に対して、DHCPv6(Dynamic Host Configuration Protocol version 6)要請やDHCPv6要求を送信する(ステップS201)。一方、DHCPサーバ40は、ユーザ端末30に対して、DHCPv6広告やDHCPv6応答を送信する(ステップS201)。このとき、切り替え元エッジルータ20Aは、ユーザ端末30とDHCPサーバ40間のDHCPパケットをリレーする。その結果、DHCPサーバ40からユーザ端末30に対して、IPアドレスが払い出され、アドレスの有効時間を示すリースタイマが作動する(ステップS202)。
【0007】
次に、エッジ制御装置110は、保守収容替えが開始されると(ステップS203)、切り替え元エッジルータ20Aのユーザコンフィグを削除し(ステップS204)、切り替え先エッジルータ20Bのユーザコンフィグを設定する(ステップS205)。なお、エッジ制御装置110が切り替え元エッジルータ20Aのユーザコンフィグを削除する必要があるのは、複数エッジルータにユーザコンフィグが重複した状態では、マルチキャスト二重配信や複数エッジのDHCPリレー等が発生するためである。
【0008】
そして、リースタイマ(T1)超過後、ユーザ端末30は、エッジルータ20をリレーして、DHCP更新を送信する(ステップS206、S207)。このとき、切り替え元エッジルータ20Aのユーザコンフィグが削除されているため、切り替え先エッジルータ20BがDHCPパケットをリレーする。その結果、切り替え先エッジルータ20BのDHCPバインディングテーブルが更新され(ステップS208)、IPアドレスが再度払い出される。ここで、ユーザ端末30が多数の場合には、マルチキャストされる再取得要求によってエッジルータの負荷増加や、L2(Layer 2)区間の一時的な圧迫が起こることもある。
【0009】
上述したように、従来の保守収容替えでは、リースタイマ超過後に発出されるアドレス再取得要求を契機とした切り替えとなるため、通信断時間が長引くという課題があった。また、複数端末からの大量のDHCPアドレス再取得要求メッセージによるエッジルータの負荷増大やL2区間の圧迫といった課題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る通信制御装置は、ユーザの端末を収容するエッジルータの切り替えに関する情報を取得する取得部と、前記取得部によって取得された前記切り替えに関する情報に基づいて、DHCPサーバに対して、前記端末によるIPアドレスの再取得の誘起を指示する指示部と、前記DHCPサーバから、前記再取得の誘起が完了した通知を受け付ける受付部とを備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る通信制御方法は、通信制御装置によって実行される通信制御方法であって、ユーザの端末を収容するエッジルータの切り替えに関する情報を取得する取得工程と、前記取得工程によって取得された前記切り替えに関する情報に基づいて、DHCPサーバに対して、前記端末によるIPアドレスの再取得の誘起を指示する指示工程と、前記DHCPサーバから、前記再取得の誘起が完了した通知を受け付ける受付工程とを含むことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る通信制御プログラムは、ユーザの端末を収容するエッジルータの切り替えに関する情報を取得する取得ステップと、前記取得ステップによって取得された前記切り替えに関する情報に基づいて、DHCPサーバに対して、前記端末によるIPアドレスの再取得の誘起を指示する指示ステップと、前記DHCPサーバから、前記再取得の誘起が完了した通知を受け付ける受付ステップとをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、キャリアネットワークのエッジルータの保守収容替えにおいて、ユーザ通信へのサービス影響をより低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係るエッジ制御システムの構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係るエッジ制御装置の構成例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係るアドレス再取得誘起指示方式の具体例を示す図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係るエッジ制御処理全体の流れの一例を示すシーケンス図である。
【
図5】
図5は、プログラムを実行するコンピュータを示す図である。
【
図6】
図6は、従来のエッジルータの保守収容替えを説明するための図である。
【
図7】
図7は、従来のエッジルータの保守収容替えを説明するためのシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係るエッジ制御装置(適宜、通信制御装置)、エッジ制御方法(適宜、通信制御方法)およびエッジ制御プログラム(適宜、通信制御プログラム)の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態により限定されるものではない。
【0016】
〔第1の実施形態〕
以下に、第1の実施形態(適宜、本実施形態)に係るエッジ制御システムの構成、エッジ制御装置の構成、アドレス再取得誘起指示方式の具体例、エッジ制御処理全体の流れを順に説明し、最後に本実施形態の効果を説明する。
【0017】
[エッジ制御システムの構成]
図1を用いて、本実施形態に係るエッジ制御システム(適宜、本システム)100の構成を詳細に説明する。
図1は、第1の実施形態に係るエッジ制御システムの構成例を示す図である。本システム100は、エッジ制御装置10、エッジルータ20(20A、20B)、ユーザ端末30(30A、30B、30C、30D)、DHCPサーバ40、ユーザDB(データベース)50(50A、50B)、およびコア網60A、アクセス網60Bからなる通信網60を有する。ここで、エッジ制御装置10とエッジルータ20とユーザ端末30とDHCPサーバ40とユーザDB50とは、通信網60または図示しない所定の通信網を介して、有線または無線により通信可能に接続される。なお、
図1に示したエッジ制御システム100には、複数台のエッジ制御装置10や、複数台のDHCPサーバ40が含まれてもよい。
【0018】
エッジ制御装置10は、ユーザ情報を管理するユーザDB50Aを持ち、エッジルータ20に対してユーザコンフィグ21を投入する(
図1(1)参照)。
図1では、エッジ制御装置10がエッジルータ20Bにユーザコンフィグ21を投入しているが、エッジルータ20Aにユーザコンフィグ21を投入することもできる。また、エッジ制御装置10とDHCPサーバ間には、連携インターフェースが導入されており、エッジ制御装置10とDHCPサーバとは、相互に各種情報を送受信することができる(
図1(2)参照)。
【0019】
DHCPサーバ40は、ユーザ端末30へアドレスを払い出す(
図1(3)参照)。また、DHCPサーバ40は、ユーザ情報を管理するDB40Bを持ち、ユーザを識別した上でユーザ端末30との通信を行う(
図1(4)参照)。なお、DHCPサーバ40は、ユーザの識別にあたって、IPやDHCPのオプション値等を参照する。
【0020】
エッジルータ20では、セキュリティのためにuRPFが適用される(
図1(5)参照)。また、エッジルータ20は、DHCPパケットをリレーする(
図1(6)参照)。なお、各エッジルータは、同じブロードキャストドメインに属する。エッジ制御装置10による詳細なエッジ制御処理については、[エッジ制御処理全体の流れ]にて後述する。
【0021】
本実施形態に係るエッジ制御システム100では、エッジルータ20を制御するエッジ制御装置10とDHCPサーバ40に連携インターフェースを設け、エッジ制御装置10がDHCPサーバ40に対して、アドレス再取得誘起を指示することを可能にする。DHCPサーバ40は、指示をもとにユーザ端末30へアドレス再取得誘起メッセージを送る。このため、エッジ制御装置10とDHCPサーバ40の連携によるユーザ端末30へのアドレス再取得誘起をはじめとした、ユーザ通信の通信断を極小化可能なエッジルータ20の切り替え手順(シーケンス)を提案する。
【0022】
また、本システム100は、アドレス再取得誘起指示の際に、誘起対象のユーザおよび指示の時間間隔をエッジ制御装置10が設定できる機能を有する。このため、対象ユーザの限定(装置単位、LAG(Link Aggregation Group)単位、ユーザ単位)やメッセージの時間間隔の調整によって、エッジルータ20やL2区間へのDHCPアドレス再取得メッセージによるバースト的な負荷を軽減することができる。
【0023】
[エッジ制御装置の構成]
図2を用いて、本実施形態に係るエッジ制御装置10の構成を詳細に説明する。
図2は、本実施形態に係るエッジ制御装置の構成例を示すブロック図である。エッジ制御装置10は、入力部11、出力部12、通信部13、記憶部14および制御部15を有する。
【0024】
入力部11は、当該エッジ制御装置10への各種情報の入力を司る。入力部11は、例えば、マウスやキーボード等であり、当該エッジ制御装置10への設定情報等の入力を受け付ける。また、出力部12は、当該エッジ制御装置10からの各種情報の出力を司る。出力部12は、例えば、ディスプレイ等であり、当該エッジ制御装置10に記憶された設定情報等を出力する。
【0025】
通信部13は、他の装置との間でのデータ通信を司る。例えば、通信部13は、各通信装置との間でデータ通信を行う。また、通信部13は、図示しないオペレータの端末との間でデータ通信を行うことができる。
【0026】
記憶部14は、制御部15が動作する際に参照する各種情報や、制御部15が動作した際に取得した各種情報を記憶する。ここで、記憶部14は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置等である。なお、
図2の例では、記憶部14は、エッジ制御装置10の内部に設置されているが、エッジ制御装置10の外部に設置されてもよいし、複数の記憶部が設置されていてもよい。
【0027】
制御部15は、当該エッジ制御装置10全体の制御を司る。制御部15は、取得部15a、設定部15b、投入部15c、指示部15d、受付部15eおよび削除部15fを有する。ここで、制御部15は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等の電子回路やASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路である。
【0028】
取得部15aは、ユーザの端末30を収容するエッジルータ20Aの切り替えに関する情報を取得する。例えば、取得部15aは、切り替えに関する情報として、切り替え元エッジルータ20Aの情報、収容されるユーザの端末30の情報、切り替え先エッジルータ20Bの情報、エッジルータの切り替えの目的、切り替え開始予定時刻、切り替え終了予定時刻等を取得する。一方、取得部15aは、取得した切り替えに関する情報を記憶部14に格納してもよい。
【0029】
設定部15bは、取得部15aが切り替えに関する情報を取得した場合には、切り替え元エッジルータ20Aに対して、DHCPパケットの遮断およびマルチキャスト通信の解除を設定する。例えば、設定部15bは、エッジルータの切り替えの目的として、エッジルータ20Aの保守収容替えの情報を取得した場合には、エッジルータ20Aに対して、DHCPパケットを遮断する設定と、マルチキャスト配信を解除する設定を行う。
【0030】
投入部15cは、設定部15bがDHCPパケットの遮断およびマルチキャスト通信の解除を設定した場合には、切り替え先エッジルータ20Bに対して、ユーザの設定情報を投入する。例えば、投入部15cは、保守収容替えの切り替え元のエッジルータ20Aに対して、DHCPパケットを遮断する設定と、マルチキャスト配信を解除する設定を行った場合には、保守収容替えの切り替え先のエッジルータ20Bに対して、IPアドレス設定、VLAN、ACL等のユーザ個々の転送設定に関する情報を投入する。
【0031】
指示部15dは、取得部15aによって取得された切り替えに関する情報に基づいて、DHCPサーバ40に対して、ユーザの端末30によるIPアドレスの再取得の誘起を指示する。例えば、指示部15dは、ユーザの端末30によるIPアドレスの再取得の誘起を所定の単位ごとに、所定の時間間隔で指示する。また、指示部15dは、ユーザの端末30によるIPアドレスの再取得の誘起を、装置、LAG、またはユーザごとに指示する。なお、指示部15dによる詳細なアドレス再取得誘起指示処理については、[アドレス再取得誘起指示方式]にて後述する。
【0032】
受付部15eは、DHCPサーバ40から、ユーザの端末30によるIPアドレスの再取得の誘起が完了した通知を受け付ける。例えば、受付部15eは、DHCPサーバ40がユーザの端末30に対してDHCPv6再設定を送信した場合には、DHCPサーバ40がエッジ制御装置10に対して送信する再取得の誘起が完了した通知を受け付ける。
【0033】
削除部15fは、受付部15eがユーザの端末30によるIPアドレスの再取得の誘起が完了した通知を受け付けた場合には、切り替え元エッジルータ20Aに対して、ユーザの設定情報を削除する。例えば、保守収容替えの切り替え元のエッジルータ20Aに記憶されているユーザの端末30のIPアドレス設定、VLAN、ACL等のユーザ個々の転送設定に関する情報を削除する。
【0034】
[アドレス再取得誘起指示方式]
図3を用いて、本実施形態に係るアドレス再取得誘起指示方式を詳細に説明する。
図3は、第1の実施形態に係るアドレス再取得誘起指示方式の具体例を示す図である。
図3では、アドレス再取得誘起指示方式として、指示方式1、指示方式2および指示方式3を示しているが、特に限定されない。
【0035】
まず、エッジ制御装置10の指示部15dは、保守収容替えに係るユーザの情報をユーザDB50Aから取得する。このとき、指示部15dは、ユーザの情報として、人数Nのユーザに対応するユーザ識別子{ユーザ識別子1、ユーザ識別子2、・・・ユーザ識別子N}を取得し、当該ユーザ識別子をもとに再取得誘起指示メッセージを以下の方式で生成する。なお、指示部15dが生成する再取得誘起指示メッセージの方式に関する設定は、静的に、または動的に変更することができる。
【0036】
指示方式1では、指示部15dは、DHCPサーバ40に対して、1メッセージ当たり1ユーザを含む指示メッセージを送信する。
図3の指示方式1では、ユーザ1、ユーザ2およびユーザ3に対応する3つの指示メッセージを送信している。なお、各メッセージの送信の時間間隔は任意に設定することができる(
図3指示方式1参照)。例えば、指示部15dは、個別ユーザを対象とする場合やL2区間への再取得パケットの流量を平準化するような場合には、指示方式1を用いて、指示メッセージを送信する。
【0037】
指示方式2では、指示部15dは、DHCPサーバ40に対して、1メッセージ当たり複数ユーザを含む指示メッセージを送信する。
図3の指示方式2では、{ユーザ1、ユーザ2、ユーザ3・・・}を全て含む1つの指示メッセージを送信している(
図3指示方式2参照)。例えば、指示部15dは、エッジ制御装置10の負荷を抑えるために、複数の対象ユーザを一括指示するような場合には、指示方式2を用いて、指示メッセージを送信する。
【0038】
指示方式3では、指示部15dは、DHCPサーバ40に対して、複数ユーザを含む複数の指示メッセージを送信する。
図3の指示方式3では、{ユーザ1、ユーザ2、・・・}と{ユーザ10、ユーザ11、・・・}とに対応する2つの指示メッセージを送信している。なお、各メッセージの送信の時間間隔は任意に設定することができる(
図3指示方式3参照)。指示部15dは、指示方式1と指示方式2の折衷案としての目的で指示する場合には、指示方式3を用いて、指示メッセージを送信する。
【0039】
上述のように、本実施形態に係るエッジ制御システム100では、エッジ制御装置10は、エッジ制御装置10からDHCPサーバ40への再取得誘起指示において対象ユーザを指定する機能を有し、任意のユーザ単位、時間間隔で指示メッセージを送ることができる。また、本システム100では、対向のDHCPサーバ40は、指定されたユーザに再取得を誘起させることができる。さらに、エッジ制御装置10は、対象ユーザの限定(例:装置単位、LAG単位、ユーザ単位)やメッセージの時間間隔を調整することで、エッジルータやL2区間へのDHCPアドレス再取得メッセージによるバースト的な負荷を軽減することができる。
【0040】
[エッジ制御処理全体の流れ]
図4を用いて、本実施形態に係るエッジ制御処理の全体の流れを詳細に説明する。
図4は、第1の実施形態に係るエッジ制御処理全体の流れの一例を示すシーケンス図である。ここで、エッジ制御装置10とDHCPサーバ40間には、連携インターフェースが導入されている。連携インターフェースは、エッジ制御装置10からDHCPサーバ40への、アドレス再取得誘起指示を可能とし、DHCPサーバ40からエッジ制御装置10への、アドレス再取得誘起完了通知を可能とし、エッジ制御装置10、DHCPサーバ40相互のリースタイマ情報取得を可能とする。
【0041】
まず、ユーザ端末30は、DHCPサーバ40に対して、DHCPv6(Dynamic Host Configuration Protocol version 6)要請やDHCPv6要求を送信する(ステップS101)。一方、DHCPサーバ40は、ユーザ端末30に対して、DHCPv6広告やDHCPv6応答を送信する(ステップS101)。このとき、切り替え元エッジルータ20Aは、ユーザ端末30とDHCPサーバ40間のDHCPパケットをリレーする。その結果、DHCPサーバ40からユーザ端末30に対して、IPアドレスが払い出され、アドレスの有効時間を示すリースタイマが作動する(ステップS102)。
【0042】
次に、エッジ制御装置10の取得部15aは、保守収容替えに関する情報を取得し、保守収容替えを開始する(ステップS103)。エッジ制御装置10の設定部15bは、切り替え元エッジルータ20Aに対して、DHCPパケットの遮断の設定(DHCP遮断フィルタ設定)を行う(ステップS104)。また、設定部15bは、切り替え元エッジルータ20Aに対して、マルチキャスト通信の解除の設定(マルチキャスト設定削除)を行う(ステップS105)。
【0043】
ステップS104、S105では、設定部15bは、ユーザコンフィグを削除せずにDHCPパケットを遮断するフィルタの設定と、マルチキャスト設定の削除を行い、切り替え元エッジルータ20AからのDHCPリレーおよびマルチキャスト配信を防止している。なお、ステップS104とステップS105の処理は同時に行われてもよい。また、ステップS105の処理がステップS104の処理より先に行われてもよい。
【0044】
続いて、エッジ制御装置10の投入部15cは、切り替え先エッジルータ20Bに対して、ユーザの設定情報の投入(ユーザコンフィグ設定)を行う(ステップS106)。このとき、DHCP遮断とマルチキャスト設定削除を事前に行っていることで、ユーザコンフィグを複数のエッジルータに投入した状態でも悪影響がない。例えば、上記の処理では、複数のエッジルータから端末に映像等が多重配信されることによる、ネットワークの帯域圧迫や端末側の予期せぬ動作が起こらない。
【0045】
そして、エッジ制御装置10の指示部15dは、DHCPサーバ40に対して、ユーザの端末30によるIPアドレスの再取得の誘起の指示(再取得誘起指示)を行う(ステップS107)。このとき、指示部15dが指示する誘起は、DHCPv4(Dynamic Host Configuration Protocol version 4)では「FORCERENEW(RFC3203)」、DHCPv6では「RECONFIGURE(RFC3315)」であるが、特に限定されない。
【0046】
一方、再取得誘起指示を受け付けたDHCPサーバ40は、ユーザ端末30に対して、DHCPv6再設定を送信する(ステップS108)。そして、ユーザ端末30は、アドレス再取得のために、切り替え元エッジルータ20Aに対して、DHCPv6更新を送信する(ステップS109)。このとき、DHCPサーバ40の再取得誘起により、ユーザ端末30から、リースタイマ超過時刻が無視されてアドレス再取得要求が発出されることとなる。なお、切り替え元エッジルータ20AにはDHCP遮断フィルタを設定されているため、一時的に通信断が発生する。
【0047】
また、ユーザ端末30は、アドレス再取得のために、切り替え先エッジルータ20Bに対して、DHCPv6更新を送信する(ステップS110)。このとき、切り替え元エッジルータ20AはDHCP遮断フィルタを設定されているため、切り替え先エッジルータ20BがDHCPパケットをリレーする。その結果、切り替え先エッジルータ20BのDHCPバインディングテーブルが更新され(ステップS111)、IPアドレスが再度払い出され、一時的な通信断が解消される。
【0048】
最後に、エッジ制御装置10の受付部15eは、DHCPサーバ40から、ユーザの端末30によるIPアドレスの再取得の誘起が完了した通知(再取得誘起完了通知)の受付を行う(ステップS112)。また、エッジ制御装置10の削除部15fは、切り替え元エッジルータ20Aに対して、ユーザの設定情報の削除(ユーザコンフィグ削除)を行い(ステップS113)、処理を終了する。このとき、ユーザの収容先エッジルータが切り替わった後、削除部15fが切り替え元エッジルータ20Aからユーザコンフィグを削除することにより、通信断となる期間を極小化することができる。
【0049】
上述のように、本実施形態に係るエッジ制御システム100では、エッジ制御装置10とDHCPサーバ40の連携によるユーザ端末30へのアドレス再取得の誘起の指示を行うことにより、保守収容替えにおけるユーザへのサービス影響の極小化を実現する。また、エッジ制御装置10とDHCPサーバ40間が連携し、任意のタイミングでのDHCPアドレス再取得誘起が可能になることで、端末のリースタイマを無視して網側から強制的に収容替えを完了させることができる。
【0050】
[第1の実施形態の効果]
第1に、上述した本実施形態に係るエッジ制御処理では、ユーザの端末を収容するエッジルータの切り替えに関する情報を取得し、取得したエッジルータの切り替えに関する情報に基づいて、DHCPサーバに対して、ユーザの端末によるIPアドレスの再取得の誘起を指示し、DHCPサーバから、再取得の誘起が完了した通知を受け付ける。このため、本処理では、キャリアネットワークのエッジルータの保守収容替えにおいて、ユーザ通信へのサービス影響をより低減することができる。
【0051】
第2に、上述した本実施形態に係るエッジ制御処理では、エッジルータの切り替えに関する情報を取得した場合には、切り替え元エッジルータに対して、DHCPパケットの遮断およびマルチキャスト通信の解除を設定し、DHCPパケットの遮断および前記マルチキャスト通信の解除を設定した場合には、切り替え先エッジルータに対して、ユーザの設定情報を投入し、ユーザの端末によるIPアドレスの再取得の誘起が完了した通知を受け付けた場合には、切り替え元エッジルータに対して、ユーザの設定情報を削除する。このため、本処理では、キャリアネットワークのエッジルータの保守収容替えにおいて、エッジルータによる通信の悪影響の発生を低減し、ユーザ通信へのサービス影響をより低減することができる。
【0052】
第3に、上述した本実施形態に係るエッジ制御処理では、ユーザの端末によるIPアドレスの再取得の誘起を所定の単位ごとに、所定の時間間隔で指示する。このため、本処理では、キャリアネットワークのエッジルータの保守収容替えにおいて、大量のアドレス再取得要求によるエッジルータの負担増大やL2区間の圧迫を低減し、ユーザ通信へのサービス影響をより低減することができる。
【0053】
第4に、上述した本実施形態に係るエッジ制御処理では、ユーザの端末によるIPアドレスの再取得の誘起を、装置、LAG、またはユーザごとに指示する。このため、本処理では、キャリアネットワークのエッジルータの保守収容替えにおいて、大量のアドレス再取得要求によるエッジルータの負担増大やL2区間の圧迫をより効果的に低減し、ユーザ通信へのサービス影響をより低減することができる。
【0054】
〔システム構成等〕
上記実施形態に係る図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示のごとく構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0055】
また、上記実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0056】
〔プログラム〕
また、上記実施形態において説明したエッジ制御装置10が実行する処理をコンピュータが実行可能な言語で記述したプログラムを作成することもできる。この場合、コンピュータがプログラムを実行することにより、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、かかるプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータに読み込ませて実行することにより上記実施形態と同様の処理を実現してもよい。
【0057】
図5は、プログラムを実行するコンピュータを示す図である。
図5に例示するように、コンピュータ1000は、例えば、メモリ1010と、CPU1020と、ハードディスクドライブインタフェース1030と、ディスクドライブインタフェース1040と、シリアルポートインタフェース1050と、ビデオアダプタ1060と、ネットワークインタフェース1070とを有し、これらの各部はバス1080によって接続される。
【0058】
メモリ1010は、
図5に例示するように、ROM(Read Only Memory)1011及びRAM1012を含む。ROM1011は、例えば、BIOS(Basic Input Output System)等のブートプログラムを記憶する。ハードディスクドライブインタフェース1030は、
図5に例示するように、ハードディスクドライブ1090に接続される。ディスクドライブインタフェース1040は、
図5に例示するように、ディスクドライブ1100に接続される。例えば、磁気ディスクや光ディスク等の着脱可能な記憶媒体が、ディスクドライブ1100に挿入される。シリアルポートインタフェース1050は、
図5に例示するように、例えば、マウス1110、キーボード1120に接続される。ビデオアダプタ1060は、
図5に例示するように、例えばディスプレイ1130に接続される。
【0059】
ここで、
図5に例示するように、ハードディスクドライブ1090は、例えば、OS1091、アプリケーションプログラム1092、プログラムモジュール1093、プログラムデータ1094を記憶する。すなわち、上記のプログラムは、コンピュータ1000によって実行される指令が記述されたプログラムモジュールとして、例えば、ハードディスクドライブ1090に記憶される。
【0060】
また、上記実施形態で説明した各種データは、プログラムデータとして、例えば、メモリ1010やハードディスクドライブ1090に記憶される。そして、CPU1020が、メモリ1010やハードディスクドライブ1090に記憶されたプログラムモジュール1093やプログラムデータ1094を必要に応じてRAM1012に読み出し、各種処理手順を実行する。
【0061】
なお、プログラムに係るプログラムモジュール1093やプログラムデータ1094は、ハードディスクドライブ1090に記憶される場合に限られず、例えば着脱可能な記憶媒体に記憶され、ディスクドライブ等を介してCPU1020によって読み出されてもよい。あるいは、プログラムに係るプログラムモジュール1093やプログラムデータ1094は、ネットワーク(LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等)を介して接続された他のコンピュータに記憶され、ネットワークインタフェース1070を介してCPU1020によって読み出されてもよい。
【0062】
上記の実施形態やその変形は、本願が開示する技術に含まれると同様に、請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0063】
10、110 エッジ制御装置(通信制御装置)
11 入力部
12 出力部
13 通信部
14 記憶部
15 制御部
15a 取得部
15b 設定部
15c 投入部
15d 指示部
15e 受付部
15f 削除部
20、20A、20B エッジルータ
21、22、22A、22B、22C、22D、23、23A、23B、23C、23D ユーザの設定情報(ユーザコンフィグ)
30、30A、30B、30C、30D ユーザ端末
40 DHCPサーバ
50、50A、50B ユーザDB
60、60A、60B 通信網
100 エッジ制御システム