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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】温度測定装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/01 20060101AFI20241112BHJP
   G01K 13/20 20210101ALI20241112BHJP
【FI】
A61B5/01 100
G01K13/20
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023554171
(86)(22)【出願日】2021-10-21
(86)【国際出願番号】 JP2021038900
(87)【国際公開番号】W WO2023067753
(87)【国際公開日】2023-04-27
【審査請求日】2024-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 勇三
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121669
【弁理士】
【氏名又は名称】本山 泰
(72)【発明者】
【氏名】田中 雄次郎
(72)【発明者】
【氏名】松永 大地
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-190236(JP,A)
【文献】特開2015-169551(JP,A)
【文献】TANAKA, Y et al.,Robust Skin Attachable Sensor for Core Body Temperature Monitoring,IEEE Sensors Journal,IEEE,2021年04月26日,Volume.21, Issue.14,pp.16118-16123,DOI:10.1109/JSEN.2021.3075864
【文献】松永大地 外3名,体内リズムの可視化をめざしたウェアラブル深部体温センサ技術,NTT技術ジャーナル,2021年05月01日,Vol.33,pp.22-26
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/01
G01K 13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周縁部が生体と接するように配置され、面内方向の熱伝導率が厚さ方向の熱伝導率よりも高い熱伝導異方性と柔軟性とを有する中空構造の熱伝導体と、
前記生体と前記熱伝導体との間の空間を満たすように配置された、柔軟性を有する第1の断熱材と、
前記生体から伝わる熱流の大きさを測定するように前記第1の断熱材に設けられたセンサと、
前記熱伝導体を覆うように配置された、柔軟性を有する第2の断熱材と、
前記センサによって測定された熱流の大きさに基づいて前記生体の内部温度を算出するように構成された電子回路部とを備えることを特徴とする温度測定装置。
【請求項2】
請求項1記載の温度測定装置において、
前記電子回路部は、前記第2の断熱材の内部に設けられることを特徴とする温度測定装置。
【請求項3】
請求項2記載の温度測定装置において、
前記電子回路部は、前記第2の断熱材の内部の複数箇所に分散して設けられることを特徴とする温度測定装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の温度測定装置において、
前記第2の断熱材の内部に空間が形成されていることを特徴とする温度測定装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の温度測定装置において、
複数の前記熱伝導体と複数の前記第2の断熱材とが交互に積層されていることを特徴とする温度測定装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の温度測定装置において、
外側の前記第2の断熱材を覆うように設けられた熱の輻射防止用のフィルムをさらに備えることを特徴とする温度測定装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の温度測定装置において、
前記センサは、
前記生体と向かい合う前記第1の断熱材の面に設けられ、前記生体の表面の温度を計測するように構成された第1の温度センサと、
前記第1の温度センサの直上の前記第1の断熱材の内部の温度を計測するように構成された第2の温度センサとから構成され、
前記電子回路部は、前記第1、第2の温度センサの計測結果に基づいて前記生体の内部温度を算出することを特徴とする温度測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体の内部温度を非侵襲に精度良く測定する温度測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人間の持つ概日リズム、いわゆる体内時計は、睡眠、運動、仕事の質だけでなく、投薬の効果や疾患の発症など我々の体に関する様々なものと密接に関連していることが近年の時間生物学の研究からわかってきた。概日リズムは、ほぼ一定に刻まれているが、生活の中で暴露される光、運動、食生活、また、年齢や性別によっても大きく変化することが知られている。
【0003】
概日リズムを測るための指標としては深部体温が知られている。しかし、一般に深部体温を測る方法は、直腸に温度計を挿入するか、あるいは耳を密閉した状態で鼓膜の温度を測るなどの方法であり、日々の活動中や睡眠中に深部体温を測る方法としては非常にストレスがかかる方法であった。
【0004】
一方、生体の深部体温を非侵襲に測定する技術として、疑似的に熱の流れを一次元等価回路モデルに置き換えて、生体の深部体温を推定する技術が提案されている(非特許文献1参照)。
【0005】
非特許文献1に開示された方法は、図9に示すように生体100とセンサ101の熱等価回路モデルを用いて、生体100の深部体温Tcbtを推定するものである。生体100の深部体温Tcbtは、生体100の表面に、熱抵抗Rsensorを有するセンサ101を置いたとき、生体100の皮膚表面の温度Tskinと、生体100と接する面と反対側のセンサ101の上面の温度Ttopとから、式(1)を用いて推定できる。
cbt=Tskin+α×(Tskin-Ttop) ・・・(1)
【0006】
あるいは、深部体温Tcbtは、生体100の皮膚表面の熱流束Hskinから、式(2)のように推定できる。
cbt=Tskin+α×Hskin ・・・(2)
【0007】
式(1)、式(2)におけるαは生体100の熱抵抗Rbodyに関連する比例係数である。比例係数αは、鼓膜温や直腸温などを測定する他の測定手段により予め校正しておくことができる。
【0008】
ただし、式(1)、式(2)による深部体温Tcbtの推定方法では、外気温が変化したり生体100に風が当たったりすると、熱の流れが1次元的でなくなり、センサ101に流入すべき熱が周囲へと流出し、本来測定されるべき熱流の大きさが減少して、深部体温Tcbtの推定に誤差が生じるという問題がある。このため、病院内の限られた環境での利用に制限され、日常生活の深部体温モニタへの応用が困難になる可能性があった。
【0009】
そこで、発明者らは、深部体温Tcbtの推定誤差を少なくするために、周囲の環境変化があっても1次元的な熱の流れとなるようなセンサ構造を非特許文献1において提案した。この構造では、熱伝導率が良いアルミニウムなどからなる円錐台状やドーム状の金属部材で温度センサを覆うことにより、温度センサがある中央部に対して周囲の温度を高めることで周囲への熱の流れ(損失)を低減する。これにより、深部体温Tcbtの推定誤差を低減することができる。
【0010】
しかしながら、非特許文献1に開示された方法では、金属部材を用いるために温度測定装置が形状変化を許さない固いものとなってしまい、複雑な曲面を有する人体に装着できない可能性があった。また、装着感が悪く、装置を着けた人が固い装置によって怪我をする可能性があった。さらに、アルミニウムなどの金属の場合は熱の伝わり方が等方的であるため、温度センサがある中央部から周囲への熱の輸送を抑制できないという課題があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【文献】Y.Tanaka,D.Matsunaga,T.Tajima,and M.Seyama,“Robust Skin Attachable Sensor for Core Body Temperature Monitoring”,IEEE SENSORS JOURNAL,VOL.21,NO.14,pp.16118-16123,JULY 15,2021
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、生体の様々な部位に装着が可能で、生体への装着感を改善することができ、生体の内部温度を精度良く測定することができる温度測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の温度測定装置は、周縁部が生体と接するように配置され、面内方向の熱伝導率が厚さ方向の熱伝導率よりも高い熱伝導異方性と柔軟性とを有する中空構造の熱伝導体と、前記生体と前記熱伝導体との間の空間を満たすように配置された、柔軟性を有する第1の断熱材と、前記生体から伝わる熱流の大きさを測定するように前記第1の断熱材に設けられたセンサと、前記熱伝導体を覆うように配置された、柔軟性を有する第2の断熱材と、前記センサによって測定された熱流の大きさに基づいて前記生体の内部温度を算出するように構成された電子回路部とを備えることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の温度測定装置の1構成例において、前記電子回路部は、前記第2の断熱材の内部に設けられることを特徴とするものである。
また、本発明の温度測定装置の1構成例において、前記電子回路部は、前記第2の断熱材の内部の複数箇所に分散して設けられることを特徴とするものである。
また、本発明の温度測定装置の1構成例は、前記第2の断熱材の内部に空間が形成されていることを特徴とするものである。
また、本発明の温度測定装置の1構成例は、複数の前記熱伝導体と複数の前記第2の断熱材とが交互に積層されていることを特徴とするものである。
また、本発明の温度測定装置の1構成例は、外側の前記第2の断熱材を覆うように設けられた熱の輻射防止用のフィルムをさらに備えることを特徴とするものである。
また、本発明の温度測定装置の1構成例において、前記センサは、前記生体と向かい合う前記第1の断熱材の面に設けられ、前記生体の表面の温度を計測するように構成された第1の温度センサと、前記第1の温度センサの直上の前記第1の断熱材の内部の温度を計測するように構成された第2の温度センサとから構成され、前記電子回路部は、前記第1、第2の温度センサの計測結果に基づいて前記生体の内部温度を算出することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、熱伝導体を設けることにより、外気の対流状態が変化する場合でも生体の内部温度を精度良く測定することができる。また、本発明では、熱伝導体と第1、第2の断熱材に柔軟性をもたせることにより、温度測定装置を生体の様々な部位に装着することが容易となる。また、生体への装着感を改善することができ、生体が固い装置によって怪我をする可能性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の第1の実施例に係る温度測定装置の構成を示す図である。
図2図2は、本発明の第1の実施例に係る温度測定装置の動作を説明するフローチャートである。
図3図3は、本発明の第1の実施例に係る温度測定装置によって推定した深部体温と鼓膜温度計によって計測した鼓膜温とを示す図である。
図4図4は、本発明の第1の実施例に係る温度測定装置によって推定した深部体温と鼓膜温度計によって計測した鼓膜温の時間変化を示す図である。
図5図5は、本発明の第2の実施例に係る温度測定装置の構成を示す図である。
図6図6は、本発明の第3の実施例に係る温度測定装置の構成を示す図である。
図7図7は、本発明の第4の実施例に係る温度測定装置の構成を示す図である。
図8図8は、本発明の第1~第4の実施例に係る温度測定装置を実現するコンピュータの構成例を示すブロック図である。
図9図9は、生体とセンサの熱等価回路モデルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1の実施例]
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施例に係る温度測定装置の構成を示す図である。温度測定装置は、生体100から伝わる熱流の大きさを測定するセンサ部1と、測定された熱流の大きさに基づいて生体100の深部体温Tcbtを算出する電子回路部2とから構成される。
【0018】
センサ部1は、周縁部が生体100と接するように配置され、面内方向の熱伝導率が厚さ方向の熱伝導率よりも高い熱伝導異方性と柔軟性とを有する中空構造の熱伝導体10と、生体100と熱伝導体10との間の空間を満たすように配置された、柔軟性を有する断熱材11と、生体100と向かい合う断熱材11の面に設けられ、生体100の皮膚表面の温度Tskinを計測する温度センサ12と、温度センサ12の直上の断熱材11の内部の温度Ttopを計測する温度センサ13と、熱伝導体10を覆うように配置された、柔軟性を有する断熱材14とを備えている。
【0019】
電子回路部2は、データの記憶のための記憶部20と、温度センサ12,13の測定結果に基づいて生体100の深部体温Tcbtを算出する演算部21と、深部体温Tcbtのデータを外部端末に送信する通信部22と、記憶部20へのデータの読み書きや通信を制御する制御部23とを備えている。
【0020】
センサ部1は、断熱材11,14と熱伝導体10とが生体100の皮膚と接触するように装着される。例えば生体適合性に優れた両面テープやシリコンラバーを用いてセンサ部1を生体100に装着することが望ましい。
【0021】
熱伝導体10は、外形が例えばドーム状や円錐台状の中空構造の部材である。熱伝導体10は、周縁部が生体100と接するように配置される。熱伝導体10は、厚さ方向と垂直な面内方向の熱伝導率が厚さ方向の熱伝導率よりも高い熱伝導異方性と、柔軟性とを有する。このような熱伝導体10は、例えば高分子フィルムの面内に黒鉛を単結晶に近い構造に配向させることで実現できる。配向方向ではアルミニウム等に対して数倍高い熱伝導性を有する。
【0022】
また、厚さ数μm程度の金属薄膜や金属繊維は柔軟性を有する。そこで、熱伝導体10として、金属薄膜または金属繊維層と高分子フィルムとを交互に積層したものを用いてもよい。金属繊維層は、金属繊維が互いに絡み合いながら面内方向を向くように層状に成型されたものである。金属薄膜または金属繊維層と高分子フィルムとを交互に積層することにより、熱伝導異方性と柔軟性とを実現することができる。金属薄膜を用いる場合には、一部を除去するパターニングを施し、さらに柔軟性を高めるようにしてもよい。
【0023】
薄膜の熱伝導体10は柔らかい。このため、熱伝導体10のみでセンサ部1の全体の形状を保持することは困難である。そこで、中空構造の熱伝導体10の内部の空間には、この空間を満たすように断熱材11が配置される。温度センサ12は、断熱材11の生体側の面に設けられる。温度センサ13は、温度センサ12の直上の断熱材11の内部に設けられる。温度センサ12,12としては、例えば、サーミスタ、熱電対、白金抵抗体、IC(Integrated Circuit)温度センサなどを用いることができる。
【0024】
断熱材11は、温度センサ12,13を保持し、且つ温度センサ12,13に流入する熱に対する抵抗体となる。断熱材11の材料としては、温度センサ12,13を保持しつつ生体100の形状に合わせて変形することが求められ、高分子弾性繊維や発泡高分子等を用いることができる。
【0025】
さらに、熱伝導体10の外側には断熱材14が配置される。断熱材14は、センサ部1の形状保持と、不必要な熱の流れの遮断と、熱伝導体10の保護のために設けられる。断熱材11と同様に、断熱材14の材料としては高分子弾性繊維や発泡高分子等を用いることができる。
【0026】
以上のようにセンサ部1は、断熱材11と熱伝導体10と断熱材14とを積層した構造からなる。熱伝導体10が温度センサ12,13に対して十分に大きい場合、生体100と接する熱伝導体10の周縁部が温度センサ12,13から十分に離れた位置に配置されるので、温度センサ12,13の外側において生体100からの熱流束が熱伝導体10によって集められ、熱伝導体10の天面に輸送される。このように、熱伝導体10は、温度センサ12,13の外側において生体100からの熱流束を効率良く上方に輸送することで、温度センサ12,13から逸れて外気へ流出する熱流束を抑制する機能を果たす。また、熱伝導体10は、面内方向の熱伝導率が厚さ方向の熱伝導率よりも高い熱伝導異方性を有する。このため、熱伝導体10から周囲への熱の輸送を抑制することができる。
【0027】
さらに、断熱材11,14と熱伝導体10とは、柔軟性を有するため、生体100の形状に合わせて変形することが可能である。このため、センサ部1を生体100に装着することが容易となる。また、生体100への装着感を改善することができ、生体100が固い装置によって怪我をする可能性を低減することができる。
【0028】
温度センサ12,13と電子回路部2との間は配線3によって接続されている。図2は本実施例の温度測定装置の動作を説明するフローチャートである。温度センサ12は、生体100の皮膚表面の温度Tskinを計測する。温度センサ13は、生体100から遠ざかる位置の断熱材11の内部の温度Ttopを計測する(図2ステップS100)。温度センサ12,13の計測データは記憶部20にいったん格納される。
【0029】
演算部21は、温度Tskin,Ttopと予め定められた比例係数αとに基づいて、生体100の深部体温Tcbt(内部温度)を例えば式(1)により算出する(図2ステップS101)。
【0030】
通信部22は、深部体温Tcbtのデータを例えばPCやスマートフォン等からなる外部端末に送信する(図2ステップS102)。外部端末は、温度測定装置から受信した深部体温Tcbtの値を表示する。
【0031】
温度測定装置は、以上のステップS100~S102の処理を、例えばユーザから計測終了の指示があるまで(図2ステップS103においてYES)、一定時間毎に実施する。
【0032】
図3に本実施例で推定した深部体温Tcbtと、比較のために鼓膜温度計によって計測した深部温度(鼓膜温)Teとを示す。図3の30,31,32は、それぞれ異なる生体100を対象とする結果を示している。また、図4に本実施例で推定した深部体温Tcbtと鼓膜温Teの時間変化を示す。図3図4によれば、鼓膜温Teに近い推定結果が本実施例によって得られていることが分かる。
【0033】
[第2の実施例]
次に、本発明の第2の実施例について説明する。図5は本発明の第2の実施例に係る温度測定装置の構成を示す図である。本実施例の温度測定装置は、センサ部1と、電子回路部2と、センサ部1と電子回路部2とを覆う輻射防止用フィルム4とから構成される。
【0034】
本実施例では、電子回路部2を、センサ部1の熱伝導体10を覆う断熱材14の内部に設けている。また、センサ部1からの熱の輻射と外部からの熱の吸収とを抑えるためにセンサ部1と電子回路部2とを覆うように輻射防止用フィルム4を設けている。
【0035】
輻射防止用フィルム4としては、熱の輻射率が小さく、日光に含まれる波長の光に対する反射率の大きな薄膜素材を用いることが望ましく、例えばアルミニウムの薄膜を用いることができる。アルミニウムの薄膜を保護するために表面を高分子薄膜で保護してもよい。
【0036】
本実施例では、第1の実施例のようにセンサ部1と電子回路部2を分ける構成と比較して、温度測定装置の、生体100への装着面積を低減することができる。
【0037】
[第3の実施例]
次に、本発明の第3の実施例について説明する。図6は本発明の第3の実施例に係る温度測定装置の構成を示す図である。本実施例の温度測定装置は、センサ部1と、電子回路部2-1,2-2と、センサ部1と電子回路部2-1,2-2とを覆う輻射防止用フィルム4とから構成される。
【0038】
本実施例では、第2の実施例と同様に電子回路部2-1,2-2を断熱材14の内部に設けている。第2の実施例との相違は、電子回路部を複数箇所に分散して設けたことと、断熱材14に空間15を形成したことにより、断熱材14のより大きな変形を可能にしている点である。
【0039】
図6の例では、電子回路部2-1に演算部21と通信部22を設け、電子回路部2-2に記憶部20と制御部23を設けている。この図6の例の分割の仕方は1例であって、別の分け方にしてもよい。また、電子回路部を3つ以上に分割してもよい。
【0040】
[第4の実施例]
次に、本発明の第4の実施例について説明する。図7は本発明の第4の実施例に係る温度測定装置の構成を示す図である。本実施例の温度測定装置は、センサ部1aと、電子回路部2とから構成される。
【0041】
本実施例のセンサ部1aは、熱伝導体10と、断熱材11と、温度センサ12,13と、断熱材14と、熱伝導体16と、熱伝導体16を覆うように配置された、柔軟性を有する断熱材17とを備えている。
【0042】
熱伝導体16は、熱伝導体10と同じ材料からなる。熱伝導体16は、周縁部が生体100と接し、断熱材14を覆うように配置される。
このように、本実施例のセンサ部1aは、断熱材11と熱伝導体10と断熱材14と熱伝導体16と断熱材17を積層した構造からなる。断熱材11,14,17と熱伝導体10,16を交互に積層したことにより、熱伝導体10,16から周囲への熱の輸送をさらに抑制することができる。図7の例では、熱伝導体10,16を2層、断熱材14,17を2層設けているが、それぞれを3層以上設けてもよい。
【0043】
電子回路部2の構成は第1の実施例と同じである。本実施例に第2、第3の実施例の構成を適用してもよい。この場合には、断熱材17の内部に電子回路部2,2-1,2-2および空間15を設けることになる。
【0044】
また、第1~第4の実施例において、電子回路部2,2-1,2-2の基板にポリイミドなどのフレキシブル材料を用いることにより、電子回路部2,2-1,2-2の変形を可能にすることができる。
【0045】
第1~第4の実施例で説明した記憶部20と演算部21と通信部22と制御部23とは、CPU(Central Processing Unit)、記憶装置及びインタフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。このコンピュータの構成例を図8に示す。
【0046】
コンピュータは、CPU200と、記憶装置201と、インタフェース装置(I/F)202とを備えている。I/F202には、温度センサ12,13、通信部22のハードウェア等が接続される。このようなコンピュータにおいて、本発明の温度測定方法を実現させるためのプログラムは、記憶装置201に格納される。CPU200は、記憶装置201に格納されたプログラムに従って第1~第4の実施例で説明した処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、生体の内部温度を非侵襲に測定する技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1,1a…センサ部、2,2-1,2-2…電子回路部、3…配線、4…輻射防止用フィルム、10,16…熱伝導体、11,14,17…断熱材、12,13…温度センサ、15…空間、20…記憶部、21…演算部、22…通信部、23…制御部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9