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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】環境情報取得装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20241112BHJP
【FI】
A01G7/00 603
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020214898
(22)【出願日】2020-12-24
(65)【公開番号】P2022100732
(43)【公開日】2022-07-06
【審査請求日】2023-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(72)【発明者】
【氏名】光藤 雄一
(72)【発明者】
【氏名】守行 正悟
(72)【発明者】
【氏名】王 蕊
(72)【発明者】
【氏名】篠原 洋太
(72)【発明者】
【氏名】磯▲崎▼ 真英
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 泰永
【審査官】小林 直暉
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-137477(JP,A)
【文献】特開2012-170361(JP,A)
【文献】特開2019-154398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の主茎に沿って配置される通信ケーブルと、
前記植物の葉面環境の情報、前記植物の近傍環境の情報、および前記植物の果実に関する情報のうち少なくとも一つを取得するための一以上のセンサと、
前記一以上のセンサから取得された情報を収集する制御装置と、を備え、
前記通信ケーブルは複数の接続口を備え、
前記一以上のセンサおよび前記制御装置は、前記複数の接続口の任意の位置に着脱自在に接続可能なものであり、
前記制御装置は、前記制御装置が接続された接続口の位置と、前記一以上のセンサが接続された接続口との位置関係に基づいて、前記制御装置の設置位置の位置情報を基準として、前記一以上のセンサのそれぞれの位置を推定する位置推定部を更に備え、
前記位置推定部は、電源電圧と、前記センサが接続された接続口に設けられた抵抗による電圧値とを比較することで、前記制御装置の設置位置から前記センサが接続された接続口までの高さ情報を含む位置情報を推定し、
前記制御装置が接続された接続口と前記センサが接続された接続口との間隔に所定の調整量を付加して、接続口間の前記高さ情報を補正する、
環境情報取得装置。
【請求項2】
前記通信ケーブルの少なくとも一部を前記植物の主茎に固定させる固定部を更に備える、
請求項1に記載の環境情報取得装置。
【請求項3】
前記通信ケーブルを、他の通信ケーブルと接続させる中継コネクタを更に備える、
請求項1または2に記載の環境情報取得装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記一以上のセンサへの電力の供給を制御する供給制御部と、前記一以上のセンサにより検出された結果を記憶部に記憶させる記憶制御部と、前記一以上のセンサにより検出された結果を外部装置に送信させる通信制御部とを備える、
請求項1から3のうち何れか1項に記載の環境情報取得装置。
【請求項5】
前記供給制御部は、所定周期または前記通信制御部により前記外部装置からの指示を受信した場合に前記一以上のセンサに電力を供給する、
請求項4に記載の環境情報取得装置。
【請求項6】
前記通信制御部は、所定周期または前記通信制御部により前記外部装置からの指示を受信した場合に前記記憶部に記憶された前記一以上のセンサの検出結果を前記外部装置に送信する、
請求項4に記載の環境情報取得装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境情報取得装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、育成対象の植物の周辺温度や湿度等の環境を取得する技術として、圃場内の多点で計測したり、温度センサや湿度センサに無線を接続してセンサの検出結果を無線通信によって取得する技術が知られている(例えば、特許文献1~2、非特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-46386号公報
【文献】特開2019-118282号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】高倉直、「温室・ハウスで何のために何をどのように計測するのか」、農業および園芸、Vol.91、No.8、Page.789-794(2016.08.01)
【文献】杉原敏昭ほか、「施設園芸における熱および湿度分布に関する計測ケーススタディ -多点計測手法の提案と実施-」、計測自動制御学会論文集、2016年52巻3号、p.195-204
【文献】増井崇裕ほか、「高密度無線センサネットワークを利用した農業技術の形式知化に関する検討」、情報処理学会シンポジウム論文集11,95-100,2010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、同じ苗やその近傍の多点について、複数項目の計測結果を取得することについては考慮されていなかった。したがって、適切な植物の環境情報が取得できない場合があった。
【0006】
本発明の態様は、このような事情を考慮してなされたものであり、植物の環境情報を、より適切に取得することができる環境情報取得装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る環境情報取得装置は、以下の構成を採用した。
本発明の第1の態様である環境情報取得装置は、植物の主茎に沿って配置される通信ケーブルと、前記植物の葉面環境の情報、前記植物の近傍環境の情報、および前記植物の果実に関する情報のうち少なくとも一つを取得するための一以上のセンサと、前記一以上のセンサから取得された情報を収集する制御装置と、を備え、前記通信ケーブルは複数の接続口を備え、前記一以上のセンサおよび前記制御装置は、前記接続口に着脱自在である環境情報取得装置である。
【0008】
本発明の第2の態様の環境情報取得装置は、更に、前記通信ケーブルの少なくとも一部を前記植物の主茎に固定させる固定部を備えるものである。
【0009】
本発明の第3の態様である環境情報取得装置は、更に、前記通信ケーブルを他の通信ケーブルと接続させる中継コネクタを更に備えるものである。
【0010】
本発明の第4の態様である環境情報取得装置は、更に、前記制御装置は、前記一以上のセンサへの電力の供給を制御する供給制御部と、前記一以上のセンサにより検出された結果を記憶部に記憶させる記憶制御部と、前記一以上のセンサにより検出された結果を外部装置に送信させる通信制御部とを備えるものである。
【0011】
本発明の第5の態様である環境情報取得装置は、更に、前記制御装置は、前記制御装置が接続された接続口の位置と、前記一以上のセンサが接続された接続口との位置に基づいて、前記制御装置の設置位置を基準とした前記一以上のセンサのそれぞれの位置を推定する位置推定部を備えるものである。
【0012】
本発明の第6の態様である環境情報取得装置は、更に、前記供給制御部は、所定周期または前記通信制御部により前記外部装置からの指示を受信した場合に前記一以上のセンサに電力を供給するものである。
【0013】
本発明の第7の態様である環境情報取得装置は、更に、前記通信制御部は、所定周期または前記通信制御部により前記外部装置からの指示を受信した場合に前記記憶部に記憶された前記一以上のセンサの検出結果を前記外部装置に送信するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の態様によれば、植物の環境情報を、より適切に取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態に係る環境情報取得装置を含む環境情報取得システム1の構成図である。
図2】近傍環境センサ130について説明するための図である。
図3】果実センサ140について説明するための図である。
図4】果実センサ140の具体例について説明するための図である。
図5】実施形態に係る制御装置150の構成図である。
図6】アドレス線を備える通信ケーブル110Aの概略構成の一例を示す図である。
図7】センサ取得情報159Aの内容について説明するための図である。
図8】植物の生長に応じた通信ケーブルおよびセンサの設置について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照し、本発明の環境情報取得装置の実施形態について説明する。
【0017】
[全体構成]
図1は、実施形態に係る環境情報取得装置を含む環境情報取得システム1の構成図である。環境情報取得システム1は、例えば、環境情報取得装置100と、情報処理装置200とを備える。環境情報取得装置100と、情報処理装置200とは、例えば、ネットワークNWを介して通信可能に接続されている。ネットワークNWは、例えば、Wi-Fi網、セルラー網、インターネット、WAN(Wide Area Network)、LAN(Local Area Network)、プロバイダ装置、無線基地局等を含む。環境情報取得システム1には、環境情報取得装置100が一以上含まれてよい。環境情報取得装置100は、例えば、植物の苗ごとに設けられる。また、環境情報取得装置100は、植物の株ごとに設けられていてもよい。情報処理装置200は、「外部装置」の一例である。
【0018】
環境情報取得装置100は、例えば、対象の苗の環境情報を計測し、計測した情報を記憶したり、所定のタイミングでネットワークNWを介して情報処理装置200に送信する。情報処理装置200は、ネットワークNWを介して一以上の環境情報取得装置100によって計測された環境情報を取得し、取得した情報を統合的に分析または解析して、苗ごとの成長状況を分析したり、圃場等の所定領域の環境の分析、収穫時期の推定等を行う。情報処理装置200は、例えば、汎用のPC(Personal Computer)やサーバ装置である。また、情報処理装置200は、サーバ装置や記憶装置によって実現されるクラウドコンピューティングシステムでもよい。また、情報処理装置200は、スマートフォンやタブレット端末等の通信端末でもよい。
【0019】
[環境情報取得装置]
次に、環境情報取得装置100について具体的に説明する。環境情報取得装置100は、例えば、通信ケーブル110と、葉面環境センサ120と、近傍環境センサ130と、果実センサ140と、制御装置150とを備える。葉面環境センサ120、近傍環境センサ130、および果実センサ140は、「一以上のセンサ」の一例である。なお、環境情報取得装置100は、葉面環境センサ120、近傍環境センサ130、および果実センサ140のうち少なくとも一つを一以上含んでいればよい。
【0020】
通信ケーブル110は、例えば、対象の植物PLの主茎MSに沿って配置される。主茎MSに沿うとは、主茎MSからの距離が所定距離以内を含む。例えば、通信ケーブル110は、固定部160によって、少なくとも一部が主茎MSに固定される。固定部160は、例えば、主茎MSと通信ケーブル110とをまとめて把持するクリップ状のものでもよく、通信ケーブル110と主茎MSとを径内に収容させて保持するリング状のものでもよい。また、通信ケーブル110は、主茎MSに巻き付けることで主茎MSに沿わせてもよい。このように、固定部160を用いて通信ケーブル110の少なくとも一部を主茎MSに固定することで、通信ケーブル110の位置を成長に伴って移動させることができる。なお、通信ケーブル110は、固定部160によって固定された部分以外の部分を撓ませておいてもよい。この場合、固定部160によって固定される位置が、成長点に近いほど撓ませる量を大きくしてもよい。成長点とは、例えば、主茎PLの先端付近である。
【0021】
また、通信ケーブル110は、葉面環境センサ120、近傍環境センサ130、果実センサ140、および制御装置150と着脱可能に接続し、接続時に信号の送受信や電力の供給等が可能な複数の接続口112を備える。接続口112は、例えば、所定間隔ごとに一以上が設けられている。また、接続口112は、通信規格等によって定められた形状であり、凹型でも凸型でもよく、コネクタ等を備えていてもよい。また、異なる位置に設けられた接続口112のそれぞれは、同一方向を向いていてもよく、異なる方向を向いていてもよい。葉面環境センサ120、近傍環境センサ130、および果実センサ140のそれぞれは、例えば、所定長のコードを有し、その端部が接続口112に接続される。
【0022】
また、通信ケーブル110には、他の通信ケーブルと接続させる中継コネクタ114が設けられていてもよい。中継コネクタ114は、例えば、通信規格等によって定められた形状である。中継コネクタ114は、例えば、通信ケーブル110の両端または一端に設けられる。また、中継コネクタ114により他の通信ケーブルを接続可能とすることで、通信ケーブル110を分岐させることができる。したがって、茎が分岐する場合に、それぞれの茎に沿って通信ケーブル110を配置させることができる。中継コネクタ114は、例えば、葉面環境センサ120、近傍環境センサ130、果実センサ140、および制御装置150が着脱可能に接続されてよい。
【0023】
葉面環境センサ120は、植物PLの葉面の環境情報を取得する。葉面環境センサ120は、例えば、葉の表面の照度(または日照度合)や裏面の温湿度(温度または湿度のうち一方または双方)、葉色、葉から排出される二酸化炭素の濃度等を検出する。葉面環境センサ120は、植物PLの枝から生えた複数の葉のうち一以上の葉に取り付けられる。
【0024】
近傍環境センサ130は、植物PLの近傍の環境情報を取得する。図2は、近傍環境センサ130について説明するための図である。近傍環境センサ130は、例えば、茎部センサ132と、近傍センサ134とを備える。茎部センサ132は、主茎MSに接するように取り付けられる。茎部センサ132は、例えば、取り付けられた位置での照度(または日照度合)、温湿度、二酸化炭素の濃度等を検出する。また、茎部センサ132は、主茎MS内の転流状態(例えば、光光合成産物や栄養塩類の輸送状態)を検出してもよい。
【0025】
近傍センサ134は、例えば、コードCDの長さを利用して主茎MSの近傍に取り付けられる。近傍とは、例えば、主茎MSからの距離D1が所定距離Dth以内の範囲である。また、近傍とは、植物PLの頂芽等の所定位置からの距離が所定距離Dth以内の範囲であってもよい。なお、所定距離Dthは、植物種に応じて変更してもよい。近傍センサ134は、例えば、センサ付近の照度(または日照度合)、温湿度、二酸化炭素の濃度等を検出する。また、近傍環境センサ130は、茎部センサ132または近傍センサ134の一方を備えていなくてもよい。
【0026】
果実センサ140は、植物PLに実った果実に関する情報を検出する。図3は、果実センサ140について説明するための図である。図3では、主茎MSから伸びた枝BLに3個のトマトTO1~TO3が実った例を示している。トマトTO1~TO3は果実の一例である。果実センサ140は、枝BLにある全ての果実に取り付けられてもよく、大きさや色、位置に応じて一以上の果実に取り付けられてもよい。図3の例では、接続口112に接続されたコードCDを介してトマトTO1~TO3のそれぞれに果実センサ140-1~140-3が取り付けられている。
【0027】
図4は、果実センサ140の具体例について説明するための図である。なお、図4の例では、図3に示すトマトTO1に取り付けられた果実センサ140-1を示しているが、他の果実センサの構成についても同様である。果実センサ140-1は、例えば、日照センサ141-1と、温湿度センサ142-1と、カラーセンサ143-1と、薄膜実温センサ144-1とを備える。果実センサ140-1は、例えば、架線部(コードCD)等の応力、もしくは重力によってトマトTO1に圧着させている。また、果実センサ140-1は、接着または取り付け部材等によって取り付けられていてもよい。
【0028】
日照センサ141-1は、設置位置での照度(または日照度合)を取得する。温湿度センサ142-1は、果実の周囲の温度または湿度のうち一方または双方を取得する。カラーセンサ143-1は、例えば、トマトTO1の表面(取り付けられた位置)の色の情報を取得する。薄膜実温センサ144-1は、トマトTO1の内部の温度を取得する。
【0029】
例えば、葉面環境センサ120、近傍環境センサ130、および果実センサ140は、それぞれ、植物PLの高さの異なる位置に一以上設けられる。図1の例では、葉面環境センサ120A~120C、近傍環境センサ130A~130B、および果実センサ140が設けられている。上述したそれぞれのセンサは、制御装置150の制御によって動作し、センサによって取得(計測)された結果(センシングデータ)は、通信ケーブル110を介して制御装置150に出力される。
【0030】
制御装置150は、葉面環境センサ120-1~120-3、近傍環境センサ130-1~130-2、および果実センサ140のうち、一以上のセンサから取得された情報を収集する。図5は、実施形態に係る制御装置150の構成図である。制御装置150は、例えば、接続部151と、通信装置152と、バッテリ153と、位置取得装置154と、通信制御部155と、記憶制御部156と、供給制御部157と、センサ位置推定部158と、記憶部159とを備える。通信制御部155、記憶制御部156、供給制御部157、およびセンサ位置推定部158のそれぞれは、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)等のハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予め制御装置150のHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリ等の記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROM等の着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体(非一過性の記憶媒体)がドライブ装置に装着されることで制御装置150のHDDやフラッシュメモリにインストールされてもよい。
【0031】
記憶部159は、上記の各種記憶装置、或いはSSD(Solid State Drive)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、ROM(Read Only Memory)、またはRAM(Random Access Memory)等により実現されてもよい。記憶部159には、例えば、センサ取得情報159A、プログラム、その他の各種情報等が格納される。センサ取得情報159Aには、例えば、葉面環境センサ120、近傍環境センサ130、および果実センサ140等の通信ケーブル110に接続されたセンサ群により計測された結果が格納される。センサ取得情報159Aの詳細については、後述する。
【0032】
接続部151は、通信ケーブル110の接続口112や中継コネクタ114と接続して通信を行う接続端子である。接続端子は、接続口112や中継コネクタ114と着脱可能な形状である。また、接続部151は、通信ケーブル110に接続された一以上のセンサ(葉面環境センサ120、近傍環境センサ130、果実センサ140)により検出された情報を取得する。
【0033】
通信装置152は、ネットワークNWを介して情報処理装置200またはその他の装置と通信を行う。
【0034】
バッテリ153は、エネルギー源であり、例えば、ニッケル・水素電池、リチウムイオン二次電池、ナトリウムイオン電池等のような充電と放電とを繰り返すことができる電池である。なお、バッテリ153は、バッテリ153の電流値、電圧値、温度を検出するバッテリセンサを備えている。また、バッテリ153は、例えば外部の充電設備と接続して充放電装置から供給される電力を充電するようにしてもよい。また、実施形態では、バッテリ153に代えて、乾電池や太陽電池等のエネルギー源が用いられてもよい。
【0035】
位置取得装置154は、制御装置150の位置を取得する。位置取得装置154は、例えば、制御装置150に内蔵されたGPS(Global Positioning System)装置を用いて、制御装置150の位置情報を取得する。また、位置取得装置154は、制御装置150に内容されたGNSS(Global Navigation Satellite System)受信機を用いて制御装置150の位置情報を取得してもよい。位置情報には、例えば、緯度経度情報の他、高さ(高度)情報が含まれていてもよい。
【0036】
通信制御部155は、通信装置152における通信制御(例えば、情報処理装置200への情報の送信、および情報処理装置200からの情報の受信)等を行う。例えば、通信制御部155は、所定周期または情報処理装置200からの指示に基づいて、記憶部159に記憶されたセンサ取得情報159Aを情報処理装置200に送信させる。また、通信制御部155は、通信装置152が受信した情報処理装置200からの制御情報を供給制御部157等に出力する。
【0037】
記憶制御部156は、接続部151により取得した通信ケーブル110に接続された一以上のセンサからの情報を、時間情報(例えば、計測時間や取得時間)と対応付けてセンサ取得情報159Aに格納させる。
【0038】
供給制御部157は、通信ケーブル110に接続された葉面環境センサ120、近傍環境センサ130、および果実センサ140(以下、単に「一以上のセンサ」と称する場合がある)に、バッテリ153に蓄積された電力を供給する。例えば、供給制御部157は、所定周期または情報処理装置200からの指示に基づいて、接続口112に接続されたセンサへの電力供給のオンオフを切り替えてもよい。また、供給制御部157は、センサごとに電力供給のオンオフを制御してもよい。一以上のセンサは、電力が供給されている間、所定周期で上述した項目の計測を行い、通信ケーブル110を介して制御装置150に計測結果を出力する。
【0039】
また、供給制御部157は、バッテリ153が備えるバッテリセンサの出力に基づいて、バッテリ153のSOC(State Of Charge;バッテリ充電率)を導出し、導出したSOCが所定値未満である場合に、バッテリ153のSOCが少ないことや充電が必要であることを示す情報を情報処理装置200等に送信するための制御を行ってもよい。
【0040】
センサ位置推定部158は、通信ケーブル110の一以上の接続口112に取り付けられたセンサの位置情報(推定位置情報)を取得する。例えば、接続口112が通信ケーブル110に所定の間隔で設けられている場合、センサ位置推定部158は、通信ケーブル110に設けられた制御装置150の位置情報と、制御装置150が取り付けられた接続口112の位置と、センサが取り付けられた接続口112との位置に基づいて、センサの位置を推定する。例えば、接続口Aに制御装置150が取り付けられており、センサが接続口Aから所定距離(例えば、X[cm])下方に存在する接続口Bに接続されている場合、センサ位置推定部158は、接続口Aの位置を位置取得装置154で取得した位置とし、接続口Bに接続されたセンサの位置を、接続口Aの位置から、高さをX[cm]下げた位置として推定する。このように、センサ位置推定部158は、制御装置150の位置情報と、各接続口の位置関係とに基づいて、センサの位置を推定することができる。また、センサ位置推定部158は、どの接続口112に接続されているかによって、センサの識別情報を割り当てて、各センサの位置情報を推定してもよい。
【0041】
また、センサ位置推定部158は、通信ケーブル110にアドレス線(ADDR)を備える場合には、アドレス線からの情報を用いて位置情報を取得してもよい。図6は、アドレス線を備える通信ケーブル110Aの概略構成の一例を示す図である。通信ケーブル110Aには、ケーブルの両端に設けられた中継コネクタ114A-1、114A―2と、2つの接続口112A-1、112A-2とを備えている。また、図6の例では、電源供給線VDDと、アドレス線ADDR、グランド線GND、信号線SDA、クロック線SCLが示されている。電源供給線VDDは、例えば、バッテリ153からの電力を接続口に接続されたセンサに供給するための線である。信号線SDAは、一以上のセンサからの検出信号(検出情報)を制御装置150に送信したり、制御装置150からの制御信号をセンサに送信するための線である。クロック線SCLは、通信ケーブル110Aに接続されたセンサの処理を同期させるためのクロック信号を制御装置150からセンサに送信するための線である。
【0042】
図6において、通信ケーブル110A内のアドレス線ADDRは、図6に示すケーブル最頂部付近(中継コネクタ114A-1付近)で電源供給線VDDに接続され、最下部付近(中継コネクタ114A-2付近)でグランド線GNDに接続されている。また、アドレス線ADDRには、接続口112A-1、112A-2のコネクタごとに抵抗Ra、Rbが設けられている。ここで、アドレス線の電圧は、複数の抵抗で分圧され、接続口112のコネクタごとに異なる。したがって、センサ位置推定部158は、電源VDDの電圧に対するアドレス線ADDRの電圧Va、Vbを計測し、計測された電圧Va、Vbと電源VDDとを比較することで、中継コネクタ114A-1、114A-2から接続口までの位置情報を推定することができる。したがって、仮に中継コネクタ114A-1、114A―2の一方に制御装置150が取り付けた場合には、取り付けた制御装置150の位置を基準に、接続口112に接続されたセンサの位置情報を推定することができる。
【0043】
また、センサ位置推定部158は、例えば、抵抗Ra、Rbの抵抗値に比例したアドレス(識別情報)を設定することで、高さ情報とセンサの固有アドレス(識別情報)とを対応付けて取得することができる。センサ位置推定部158は、例えば、通信ケーブル110に識別情報を設定することで、どの通信ケーブルの何番目の接続口に接続されたセンサの高さを推定することができる。
【0044】
なお、通信ケーブル110(以下、通信ケーブル110Aも含む)2は、主茎MSに沿って配置されるが、部分的に通信ケーブルが撓む場所もあり得る。したがって、センサ位置推定部158は、接続口112の間隔に所定の調整量を付加して、接続口間の高さ情報を補正してもよい。また、センサ位置推定部158は、高さ情報に加えて緯度経度の位置を補正してもよい。また、通信ケーブル110は、固定部160からの距離が遠いほど撓む可能性が高いため、固定部160からの距離に応じて補正量を調整してもよい。
【0045】
上述したように、センサ位置推定部158によって、一以上のセンサの位置を推定することで、例えば、植物PLが成長して主茎MSが伸びた場合や、風等の影響で主茎MSが曲がった場合であっても、制御装置150の位置に応じてリアルタイムに各センサの位置を、より正確な位置に変更することができる。
【0046】
記憶制御部156は、一以上のセンサのそれぞれから得られた情報およびセンサ位置推定部158により推定された情報を時間情報に対応付けてセンサ取得情報159Aに格納する。図7は、センサ取得情報159Aの内容について説明するための図である。センサ取得情報159Aは、センサを識別するための識別情報であるセンサIDに、位置情報と、日時情報と、センサ情報とが対応付けられている。センサIDは、センサが接続した通信ケーブル110の接続口112の位置に基づいて、センサ位置推定部158により設定される識別情報である。センサ取得情報159Aは、センサ位置推定部158により推定される推定位置情報である。日時情報は、センサが計測した日時情報または制御装置150が計測結果を取得した日時情報である。センサ情報は、センサによって取得される情報(計測結果)である。センサ取得情報159Aは、例えば、通信ケーブル110を識別する識別情報であるケーブルIDごとに格納されてよい。このように、通信ケーブル110を基準に、同じ苗やその近傍の多点について、複数項目の計測結果を取得することができる。したがって、植物のより適切な環境情報を取得することができる。
【0047】
[植物の成長に応じた通信ケーブルの配置]
次に、本実施形態の環境情報取得装置100において、植物の成長に応じた通信ケーブルの配置の具体例について説明する。図8は、植物の生長に応じた通信ケーブルおよびセンサの設置について説明するための図である。図8の例では、時間の経過による植物PL1の成長に伴う通信ケーブルおよびセンサの設置の様子を示している。図8の例では、時刻T1が最も早く、時刻T2、T3の順に遅くなっているものとする。なお、通信ケーブルやセンサ群の配置は、作業者等によって行われる。
【0048】
時刻T1では、植物PL1の成長に合わせて通信ケーブル110Bが植物PL1の主茎に沿って取り付けられている。通信ケーブル110Bは、例えば、植物PL1が所定の成長条件を満たす場合に取り付けられる。所定の成長条件とは、例えば、植物PL1が環境情報取得装置100の荷重に耐えられる程度まで成長したと推定される場合であり、具体的には、植物PLの高さが所定の高さになった場合、または主茎の径が所定値以上になった場合等である。
【0049】
時刻T1において、通信ケーブル110Bは、固定部160Bで植物PL1の主茎に固定されている。通信ケーブル110Bの両端には、中継コネクタ114B-1、114B-2が設けられおり、中継コネクタ114B-1には、制御装置150が接続されている。例えば、トマトの場合には、ほぼ3葉ごとに1花房のパターンで生長してゆく。したがって、これを1段(1セット)として各センサを取り付け、数段ごとに中継コネクタ114で通信ケーブルを継ぎ足すようにする。また、トマトの場合、3葉は互いに重ならないように別の方向に出るため、葉の反対側の空間が空く。したがって、作業員は、その空間に近傍環境センサを配置する。時刻T1において、通信ケーブル110Bには、葉面環境センサ120B-1~120B-2、および近傍環境センサ130B-1~130B-2が各接続口に接続されている。制御装置150は、自己が設置された接続口の位置と、センサ位置推定部158により推定された位置情報と、それぞれのセンサが接続される接続口の位置とに基づいて、センサごとの位置情報を推定すると共に、各センサの検出結果を収集する。
【0050】
時刻T2では、更に植物PLが成長した場面を示している。この場合、作業者は、通信ケーブル110Bに、時刻T1での構成に加えて果実センサ140B-1を取り付けると共に、中継コネクタ114Bに他の通信ケーブル110Cを取り付ける。通信ケーブル110Cは、固定部160Cで植物PL1の主茎に固定されている。通信ケーブル110-Cの両端には、中継コネクタ114C-1、114C-2が設けられおり、中継コネクタ114B-1と114C-2とが接続される。通信ケーブル110Cには、葉面環境センサ120C-1~120C-3と、近傍環境センサ130C-1~130C-2と、制御装置150が接続口に接続されている。また、時刻T2において、作業者は、中継コネクタ114C-1に頂部センサ145を取り付けている。頂部センサ145は、近傍環境センサの一例であり、植物PLの頂部付近の照度(または日照度合)、温湿度、二酸化炭素濃度等が検出される。
【0051】
制御装置150は、通信ケーブル110Cに接続されたセンサだけでなく、中継コネクタ114C-2を介して連結された通信ケーブル110Bに接続されたセンサの位置情報を推定し、各センサの計測結果を取得する。このように、複数の通信ケーブルを連結した場合であっても、同様に制御装置150の位置情報に基づいて、各センサの位置を推定することができる。なお、実施形態では、通信ケーブルに接続されるセンサの数に応じて複数の制御装置150を接続してもよい。この場合、それぞれの制御装置150は、周辺のセンサに対する制御を行う。また、複数の制御装置150を備える場合には、複数の制御装置150のうち位置情報の基準となる制御装置(マスタコントローラ)を設定し、設定した制御装置の位置情報に基づいて他の制御装置および各センサの位置を推測してもよい。
【0052】
時刻T3では、植物PL1の下方の実が収穫され、葉も落ちている、そのため、作業者は、通信ケーブル110Bを通信ケーブル110Cから取り外す。これにより、制御装置150は、通信ケーブル110Cに接続されたセンサに基づく計測のみを継続して行う。
【0053】
このように、本実施形態の環境情報取得装置100によれば、植物PL1の成長に応じて通信ケーブルやセンサを着脱させることができるため、通信ケーブルやセンサの無駄をなくして、より低コストで効率的に環境計測を行うことができる。
【0054】
[情報処理装置の処理]
情報処理装置200は、所定周期、またはセンサ取得情報の送信指示を制御装置150に送信したタイミングに基づいて、センサ取得情報159Aを制御装置150から取得する。情報処理装置200は、一以上の制御装置150から取得したセンサ取得情報159Aに基づいて、統合的に分析または解析して、苗ごとの成長状況を分析したり、圃場等の所定領域の環境の分析、収穫時期の推定等を行う。例えば、情報処理装置200は、一以上のセンサから得られる各位置での温湿度の計測結果に基づいて圃場全体の温度分布や湿度分布等を分析することができる。また、情報処理装置200は、例えば、一以上のセンサから得られる照度と位置情報に基づいて、苗の下部と上部の日照量を比較して、植物の吸収光量(吸光係数)等を分析(推定)することができる。
【0055】
また、情報処理装置200は、例えば、照度に基づいて輻射の影響を受けているセンサを特定し、そのセンサの温度の計測結果を補正または排除することで、疑似的に輻射の影響を避けた温湿度を分析することができる。また、情報処理装置200は、上述した分析結果に基づいて、収穫時期や収量予測を行うことができる。例えば、収量予測は、主に植物が吸収した光エネルギー(吸収光量)が、どの程度の量および速度で果実に変換されるかで導出されるため、この2つを位置(水平・垂直方向)ごとに正確に取得することで、圃場全体の予想収量の確度を上げることができる。なお、情報処理装置200における分析内容についてはこれに限定されるものではない。
【0056】
[変形例]
上述した実施形態では、植物の一例としてトマトを用いたが、トマトに代えて、ナスやパプリカ、ピーマン、ゴーヤ、キュウリ等の主茎が地面から高さ方向に延伸する植物であってもよい。また、植物は、リンゴや柿等の幹が地面から高さ方向に延伸する植物であってもよい。この場合、通信ケーブルは、幹に沿って配置されると共に、枝で通信ケーブルを分岐させ、枝に沿って配置してもよい。また、本実施形態は、ブドウやスイカ等の水平方向に延びる植物に適用させてもよい。
【0057】
また、実施形態において、制御装置150のセンサ位置推定部158の機能は、情報処理装置200側に設けられていてもよい。また、上述の実施形態では、制御装置150の位置情報に基づいてセンサの位置を推定したが、制御装置150に代えて、通信ケーブルの位置情報(どの通信ケーブルがどの位置に配置したかを示す情報)をケーブルIDごとに予め情報処理装置200に登録させておき、ケーブルIDごとに取得されるセンサ情報および、センサが接続される接続口の位置に基づいて、情報処理装置200側でセンサごとの位置を推定してもよい。
【0058】
上述した実施形態によれば、環境情報取得装置100において、植物の主茎に沿って配置される通信ケーブル110と、植物の葉面環境の情報、植物の近傍環境の情報、および植物の果実に関する情報のうち少なくとも一つを取得するための一以上のセンサと、一以上のセンサから取得された情報を収集する制御装置150と、を備え、通信ケーブル110は複数の接続口を備え、一以上のセンサおよび制御装置150は、接続口に着脱自在であることにより、植物の環境情報を、より適切に取得することができる。
【0059】
具体的には、上述した実施形態によれば、植物の主茎に沿うように通信ケーブルを配置することで、植物の主茎に沿って通信・電力供給路を構築することができる。また、配置された通信ケーブルにセンサ(計測器)を接続可能な複数の接続口(取付器)を備え、そこにセンサを接続して計測結果を取得することで、苗や株ごとに多数の計測点から測定結果を取得することができる。また、実施形態によれば、通信ケーブルの中継コネクタを介して新たな通信ケーブルを接続することで、主茎から分岐した支茎や葉、実等、植物の形状にあわせて通信ケーブルやセンサを配置することができる。これにより、植物の近傍の環境情報を高密度かつ多項目で取得することができる。
【0060】
また、実施形態によれば、植物の近傍の環境情報を得ることで、植物の生育情報を詳細に把握したり、生育や収量の予測精度を向上させることができる。また、実施形態によれば、施設栽培において、環境情報の空間分布を把握することで、圃場等の施設内の空調をより高度に制御できる。
【0061】
また、実施形態によれば、例えば、農業分野において、稠密かつ多項目な環境情報あるいは生育情報を取得することができる。なお、本実施形態は、例えば、施設園芸分野で利用可能で温室環境制御システムメーカー、ICT(Information and Communication Technology)システムメーカー等において適用可能である。また、本実施形態は、施設園芸分野以外でも果樹園、茶園、露地圃場、畜産・牧畜等でも適用可能である。また、本実施形態は、農業分野の以外の健康管理・医療、あるいはエンターテイメント分野等にも広く適用することができる。
【0062】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0063】
1…環境情報取得システム、100…環境情報取得装置、110…通信ケーブル、120…葉面環境センサ、130…近傍環境センサ、140…果実センサ、150…制御装置、151…接続部、152…通信装置、153…バッテリ、154…位置取得装置、155…通信制御部、156…記憶制御部、157…供給制御部、158…センサ位置推定部、159…記憶部、200…情報処理装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8