(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】成膜装置及び成膜方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/31 20060101AFI20241112BHJP
H01L 21/316 20060101ALI20241112BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20241112BHJP
C23C 16/44 20060101ALI20241112BHJP
C30B 29/18 20060101ALI20241112BHJP
C30B 25/12 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
H01L21/31 C
H01L21/316 X
H01L21/68 N
C23C16/44 Z
C30B29/18
C30B25/12
(21)【出願番号】P 2021003756
(22)【出願日】2021-01-13
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】加藤 寿
(72)【発明者】
【氏名】中坪 敏行
【審査官】桑原 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-225325(JP,A)
【文献】特開平11-036076(JP,A)
【文献】特開2015-228404(JP,A)
【文献】特開2009-071122(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
H01L 21/316
H01L 21/683
C23C 16/44
C30B 29/18
C30B 25/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理容器と、
前記処理容器内に設けられ、表面に凹部を有するサセプタであり、該凹部は基板の中心を含みかつ端部を含まない領域を支持する支持部と該支持部の周囲に位置して該支持部よりも窪んだ溝部とを含む、サセプタと、
前記サセプタの表面に処理ガスを供給する処理ガス供給部と、
前記溝部にパージガスを供給するパージガス供給部と、
前記支持部の周囲であり、前記支持部に支持された前記基板の裏面と前記溝部の底面との間に設けられた多孔質リングと、
を備え
、
前記多孔質リングの内側面は、前記支持部の外壁面と接する、
成膜装置。
【請求項2】
前記多孔質リングは、前記凹部の内壁面との間に隙間を形成するように設けられる、
請求項
1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記パージガス供給部は、前記溝部の底面と前記多孔質リングの裏面との間に前記パージガスを供給する、
請求項
1又は
2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記多孔質リングは、SiCにより形成されている、
請求項
1乃至
3のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記凹部は、前記溝部に沿って設けられ、該溝部の底面から突出する突出部を更に含む、
請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記サセプタは、前記支持部を含む領域において表面から裏面まで連通する多孔質部を含む、
請求項1乃至
5のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記基板は、円板状を有し、
前記凹部は、前記基板よりも径が大きい円形を有する、
請求項1乃至
6のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項8】
処理容器内に設けられ、表面に凹部を有するサセプタであり、該凹部は基板の中心を含みかつ端部を含まない領域を支持する支持部と該支持部の周囲に位置して該支持部よりも窪んだ溝部とを含む、サセプタを備える成膜装置において基板に処理を施す成膜方法であって、
前記成膜装置は、前記支持部の周囲であり、前記支持部に支持された前記基板の裏面と前記溝部の底面との間に設けられた多孔質リングを備え、
前記多孔質リングの内側面は、前記支持部の外壁面と接し、
当該成膜方法は、
前記支持部により前記基板を支持した状態で前記溝部へのパージガスの供給を開始する工程と、
前記溝部に前記パージガスを供給した状態で前記サセプタの表面に処理ガスを供給する工程と、
前記処理ガスの供給を停止する工程と、
前記処理ガスの供給を停止した後に前記パージガスの供給を停止する工程と、
を有する、成膜方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、成膜装置及び成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
処理容器内にてサセプタの上に載置したウエハを公転させながらウエハに対して処理ガスを供給して処理を行う基板処理装置において、サセプタの表面にウエハを載置する凹部を設けた構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。この基板処理装置では、ウエハの中央部を下方側から支持するための載置台を凹部内に設け、ウエハの周縁部を凹部の底面から浮かせている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、基板の裏面端部への成膜を抑制できる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様による成膜装置は、処理容器と、前記処理容器内に設けられ、表面に凹部を有するサセプタであり、該凹部は基板の中心を含みかつ端部を含まない領域を支持する支持部と該支持部の周囲に位置して該支持部よりも窪んだ溝部とを含む、サセプタと、前記サセプタの表面に処理ガスを供給する処理ガス供給部と、前記溝部にパージガスを供給するパージガス供給部と、前記支持部の周囲であり、前記支持部に支持された前記基板の裏面と前記溝部の底面との間に設けられた多孔質リングと、を備え、前記多孔質リングの内側面は、前記支持部の外壁面と接する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、基板の裏面端部への成膜を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図5】
図1の成膜装置のサセプタの一例を示す平面図
【
図7】
図6における一点鎖線IIV-IIVにおいて切断した断面を示す図
【
図14】従来のサセプタを用いたときのウエハへの膜の堆積を説明するための図
【
図15】
図1の成膜装置のサセプタの別の一例を示す断面図
【
図16】実施形態の成膜方法の一例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付の図面を参照しながら、本開示の限定的でない例示の実施形態について説明する。添付の全図面中、同一又は対応する部材又は部品については、同一又は対応する参照符号を付し、重複する説明を省略する。
【0009】
〔成膜装置〕
図1~
図4を参照し、実施形態の成膜装置の一例について説明する。実施形態の成膜装置は、平面形状が概ね円形である処理容器1と、処理容器1内に設けられ、当該処理容器1の中心に回転中心を有するサセプタ2と、を備えており、基板(例えばウエハW)に対して成膜処理を行う装置として構成されている。以下、成膜装置の各部について説明する。
【0010】
処理容器1は、内部を減圧可能な真空容器である。処理容器1は、天板11及び容器本体12を有する。天板11は、容器本体12上にシール部材13を介して着脱自在に取り付けられている。天板11の上面における中央には、分離ガス供給管51が設けられている。分離ガス供給管51は、処理容器1内の中心領域Cにおいて互いに異なる処理ガス同士が混ざり合うことを抑制するために、窒素(N2)ガスを分離ガスとして供給する。
【0011】
処理容器1の底部14の上方には、ヒータユニット7が設けられている(
図1)。ヒータユニット7は、サセプタ2を介してサセプタ2上のウエハWを成膜温度(例えば300℃)に加熱する。ヒータユニット7の側方側にはカバー部材71aが設けられ、ヒータユニット7の上方にはヒータユニット7を覆う覆い部材7aが設けられている。底部14には、ヒータユニット7の下方側において、ヒータユニット7の配置空間をパージするためのパージガス供給管73が周方向に亘って複数箇所に設けられている。
【0012】
サセプタ2は、中心にて概略円筒形状のコア部21に固定されている。サセプタ2は、コア部21の下面に接続されると共に鉛直方向に伸びる回転軸22によって、鉛直軸周りこの例では時計周りに回転自在に構成されている。回転軸22は、駆動部23により鉛直軸周りに回転する。回転軸22及び駆動部23は、ケース体20に収納されている。ケース体20は、上部のフランジ部分が処理容器1の底部14の下面に気密に取り付けられている。また、ケース体20には、サセプタ2の下方領域にN2ガスをパージガスとして供給するためのパージガス供給管72が接続されている。処理容器1の底部14におけるコア部21の外周側は、サセプタ2に下方側から近接するように円環状に形成されて突出部12aをなしている。
【0013】
サセプタ2の表面には、凹部24が設けられている。凹部24は、平面視で円形状を有し、ウエハWを落とし込んで保持する。ウエハWは、例えば円板状(円形)のシリコンウエハであってよい。凹部24は、サセプタ2の回転方向(周方向)に沿って複数箇所に形成されている。
図1~
図4の例では、凹部24は、サセプタ2の回転方向(周方向)に沿って5箇所に形成されている。各々の凹部24は、ウエハWの外縁との間に隙間領域(クリアランス)を設けるために、平面視でウエハWよりも径が大きくなるように形成されている。サセプタ2の直径寸法は、例えば1000mm程度となっている。凹部24には、ウエハWを下方側から突き上げて昇降させるための例えば3本の昇降ピン(図示せず)が突没する貫通孔24aが形成されている。なお、
図2及び
図3では、凹部24の直径寸法について簡略化して示している。また、
図1~
図3では、貫通孔24aの図示を省略している。
【0014】
凹部24の通過領域と各々対向する位置には、各々例えば石英からなる6本のノズル31、32、34、35、41、42が処理容器1の周方向に互いに間隔をおいて放射状に配置されている。各ノズル31、32、34、35、41、42は、例えば処理容器1の外壁面から中心領域Cに向かってウエハWに対向して水平に伸びるように各々取り付けられている。この例では、後述の搬送口15から見てサセプタ2の回転方向にプラズマ発生用ガスノズル34、分離ガスノズル41、クリーニングガスノズル35、第1の処理ガスノズル31、分離ガスノズル42及び第2の処理ガスノズル32がこの順番で配列されている。プラズマ発生用ガスノズル34の上方には、プラズマ発生用ガスノズル34から吐出されるガスをプラズマ化するために、プラズマ発生部80が設けられている。プラズマ発生部80については、後述する。
【0015】
第1の処理ガスノズル31及び第2の処理ガスノズル32は、夫々第1の処理ガス供給部、第2の処理ガス供給部をなし、分離ガスノズル41、42は、各々分離ガス供給部をなし、クリーニングガスノズル35は、クリーニングガス供給部をなす。なお、
図2及び
図4では、プラズマ発生用ガスノズル34が見えるようにプラズマ発生部80及び後述の筐体90を取り外した状態、
図3はこれらプラズマ発生部80及び筐体90を取り付けた状態を表している。
【0016】
各ノズル31、32、34、35、41、42は、流量調整バルブを介して夫々以下の各ガス供給源(図示せず)に夫々接続されている。すなわち、第1の処理ガスノズル31は、Si(シリコン)を含む第1の処理ガスの供給源に接続されている。第1の処理ガスは、例えばBTBAS(ビスターシャルブチルアミノシラン、SiH2(NH-C(CH3)3)2)ガスであってよい。第2の処理ガスノズル32は、第2の処理ガス(例えばオゾン(O3)ガスと酸素(O2)ガスとの混合ガス)の供給源(詳しくはオゾナイザーの設けられた酸素ガス供給源)に接続されている。プラズマ発生用ガスノズル34は、例えばアルゴン(Ar)ガスとO2ガスとの混合ガスからなるプラズマ発生用ガスの供給源に接続されている。分離ガスノズル41、42は、分離ガスであるN2ガスのガス供給源に各々接続されている。ノズル31、32、34、41、42の例えば下面には、サセプタ2の半径方向に沿って複数箇所にガス吐出孔(図示せず)が例えば等間隔に形成されている。
【0017】
第1の処理ガスノズル31の下方領域は、第1の処理ガスをウエハWに吸着させるための第1の処理領域P1となる。第2の処理ガスノズル32の下方領域は、ウエハWに吸着した第1の処理ガスの成分と第2の処理ガスとを反応させるための第2の処理領域P2となる。分離ガスノズル41、42は、各々第1の処理領域P1と第2の処理領域P2とを分離する分離領域Dを形成するためのものである。分離領域Dにおける処理容器1の天板11には、
図2及び
図3に示されるように、概略扇形の凸状部4が設けられており、分離ガスノズル41、42は、凸状部4内に収められている。従って、分離ガスノズル41、42におけるサセプタ2の周方向両側には、各処理ガス同士の混合を阻止するために、凸状部4の下面である低い天井面が配置され、天井面の前記周方向両側には、当該天井面よりも高い天井面が配置されている。凸状部4の周縁部(処理容器1の外縁側の部位)は、各処理ガス同士の混合を阻止するために、サセプタ2の外端面に対向すると共に容器本体12に対して僅かに離間するように、L字型に屈曲している。
【0018】
次に、プラズマ発生部80について説明する。プラズマ発生部80は、金属線からなるアンテナ83をコイル状に巻回して構成されており、サセプタ2の中央部から周縁部に亘ってウエハWの通過領域を跨ぐように配置されている。アンテナ83は、整合器84を介して周波数が例えば13.56MHz及び出力電力が例えば5000Wの高周波電源85に接続されると共に、処理容器1の内部領域から気密に区画されるように配置されている。プラズマ発生部80と整合器84及び高周波電源85とは、接続電極86により電気的に接続されている。すなわち、プラズマ発生用ガスノズル34の上方における天板11は、平面視で概略扇形に開口しており、例えば石英等からなる筐体90によって気密に塞がれている。筐体90は、周縁部が周方向に亘ってフランジ状に水平に伸び出すと共に、中央部が処理容器1の内部領域に向かって窪むように形成されており、筐体90の内側にアンテナ83が収納されている。筐体90と天板11との間には、シール部材11aが設けられている。筐体90は、押圧部材91により、周縁部が下方側に向かって押圧されている。
【0019】
筐体90の下面は、当該筐体90の下方領域へのN
2ガスやO
3ガス等の侵入を阻止するために、
図1に示されるように、外縁部が周方向に亘って下方側(サセプタ2側)に垂直に伸び出して、ガス規制用の突起部92をなしている。突起部92の内周面、筐体90の下面及びサセプタ2の上面により囲まれた領域には、プラズマ発生用ガスノズル34が収納されている。
【0020】
筐体90とアンテナ83との間には、
図1及び
図3に示されるように、上方が開口する概略箱型のファラデーシールド95が配置されている。ファラデーシールド95は、導電性の板状体である金属板により構成されると共に接地されている。ファラデーシールド95の底面には、アンテナ83の巻回方向に対して直交する方向に伸びるように形成されたスリット97が周方向に亘ってアンテナ83の下方位置に設けられている。スリット97は、アンテナ83において発生する電界及び磁界(電磁界)のうち電界成分が下方のウエハWに向かうことを阻止すると共に、磁界をウエハWに到達させる。ファラデーシールド95とアンテナ83との間には、絶縁板94が介在している。絶縁板94は、例えば石英により形成され、ファラデーシールド95とアンテナ83とを絶縁する。
【0021】
サセプタ2の外周側において当該サセプタ2よりも僅かに下方の位置には、円環状のサイドリング100が配置されている。サイドリング100の上面には、互いに周方向に離間するように2箇所に排気口61、62が形成されている。言い換えると、処理容器1の底部14に2つの排気口が形成され、これら排気口に対応する位置におけるサイドリング100に、排気口61、62が形成されている。排気口61は、第1の処理ガスノズル31と、当該第1の処理ガスノズル31よりもサセプタの回転方向下流側における分離領域Dとの間において、当該分離領域D側に寄った位置に形成されている。排気口62は、プラズマ発生用ガスノズル34と、当該プラズマ発生用ガスノズル34よりもサセプタの回転方向下流側における分離領域Dとの間において、当該分離領域D側に寄った位置に形成されている。
【0022】
排気口61は、第1の処理ガス及び分離ガスを排気するためのものであり、排気口62は、第2の処理ガス及び分離ガスに加えて、プラズマ発生用ガスを排気するためのものである。また、クリーニング時には、クリーニングガスを排気する。そして、筐体90の外縁側におけるサイドリング100の上面には、当該筐体90を避けてガスを排気口62に通流させるための溝状のガス流路101が形成されている。排気口61、62は、
図1に示されるように、各々バタフライバルブ等の圧力調整部65の介設された排気配管63により、真空排気機構である例えば真空ポンプ64に接続されている。
【0023】
天板11の下面における中央には、
図2に示されるように、凸状部4における中心領域C側の部位と連続して周方向に亘って概略円環状に形成されると共に、その下面が凸状部4の下面と同じ高さに形成された突出部5が設けられている。突出部5よりもサセプタ2の回転中心の側におけるコア部21の上方には、中心領域Cにおいて第1の処理ガスと第2の処理ガスとが互いに混ざり合うことを抑制するためのラビリンス構造部110が配置されている。ラビリンス構造部110は、サセプタ2側から天板11側に向かって周方向に亘って垂直に伸びる第1の壁部111と、天板11側からサセプタ2に向かって周方向に亘って垂直に伸びる第2の壁部112と、をサセプタ2の半径方向に交互に配置した構成を有する。
【0024】
処理容器1の側壁には、
図2及び
図3に示されるように外部の搬送アーム(図示せず)とサセプタ2との間においてウエハWの受け渡しを行うための搬送口15が形成されている。搬送口15は、ゲートバルブGより気密に開閉される。搬送口15を臨む位置におけるサセプタ2の下方側には、昇降ピン(図示せず)が設けられている。昇降ピンは、サセプタ2の貫通孔24aを介してウエハWを裏面側から持ち上げる。
【0025】
成膜装置には、装置全体の動作のコントロールを行うためのコンピュータからなる制御部120が設けられている。制御部120のメモリ内には、後述の成膜方法を行うためのプログラムが格納されている。プログラムは、後述の装置の動作を実行するようにステップ群が組まれており、ハードディスク、コンパクトディスク、光磁気ディスク、メモリカード、フレキシブルディスク等の記憶媒体である記憶部121から制御部120内にインストールされる。
【0026】
〔サセプタ構造〕
図5~
図9を参照し、実施形態の成膜装置のサセプタ2の一例について説明する。
【0027】
サセプタ2は、例えば石英により形成されている。サセプタ2は、前述したように、中心にて概略円筒形状のコア部21に固定されている。サセプタ2は、コア部21の下面に接続されると共に鉛直方向に伸びる回転軸22によって、鉛直軸周りこの例では時計周りに回転自在に構成されている(
図1~
図4)。
【0028】
サセプタ2は、凹部24、支持部25、溝部26、多孔質リング27、パージガス供給部28及び円環突起29を含む。
【0029】
凹部24は、サセプタ2の回転方向(周方向)に沿って複数箇所(
図5では6箇所)に形成されている。各凹部24は、円形状を有する。各凹部24は、ウエハWの外縁との間に隙間領域(クリアランス)を設けるために、平面視でウエハWよりも径が大きくなるように形成されている。一実施形態において、ウエハの直径寸法rは300mmであり、凹部の直径寸法Rは302mmである。
【0030】
支持部25は、各凹部24の底面に設けられている。支持部25は、ウエハWの中央部を下方側から支持する。支持部25は、円筒形状となるように構成されると共に、上面が水平面として形成されている。支持部25は、ウエハWの周縁部を周方向に亘って凹部24の底面から浮かせるために、すなわち当該周縁部が支持部25に触れない(支持部25からはみ出す)ように、平面視でウエハWよりも小さい円状となるように形成されている。従って、支持部25は、当該支持部25上にウエハWが載置されると、ウエハWの周縁部が周方向に亘って凹部24の底面を臨むように形成されている。
【0031】
支持部25の高さ寸法hは、例えば支持部25上にウエハWを載置したときに、ウエハWの表面とサセプタ2の表面とが揃うように設定されている。一実施形態において、支持部25の高さ寸法hは0.03mm~0.2mm程度であり、支持部25の直径寸法dは297mmである。
【0032】
溝部26は、支持部25の周囲、より具体的には、凹部24の内壁面と支持部25の外壁面との間に形成されている。溝部26は、円環状を有する。支持部25は、平面視で凹部24の中心に配置されている。すなわち、平面視で支持部25の中心位置は、凹部24の中心位置と一致する。これにより、平面視で溝部26の幅寸法Lは、周方向に亘って一定となっている。一実施形態において、溝部26の幅寸法Lは2.5mmである。
【0033】
多孔質リング27は、支持部25の周縁部において、支持部25に支持されたウエハWの裏面と溝部26の底面との間に配置されている。多孔質リング27は、円環状を有する。一実施形態において、多孔質リング27は、内縁部が支持部25の外壁面に形成された段部25a上に、凹部24の内壁面との間に隙間Vをあけて配置されている。多孔質リング27は、例えばSiC、SiN等の多孔質材料により形成されている。
【0034】
パージガス供給部28は、溝部26にパージガスを供給する。一実施形態において、パージガス供給部28は、処理容器1内の中心領域Cから各々の凹部24に形成された溝部26まで放射状に延びるガス流路を含む(
図5)。パージガス供給部28は、例えば分離ガス供給管51から処理容器1内の中心領域Cに供給される分離ガスを、各々の凹部24に形成された溝部26まで誘導する流路であってよい。溝部26に供給されたパージガスは、多孔質リング27を介してウエハWの裏面に供給される。これにより、パージガスの流速を抑えて広く均等に供給できるので、パージガスによるウエハWの浮遊を抑制できる。パージガス供給部28は、例えば支持部25上にウエハWを載置した状態でサセプタ2の表面に処理ガスを供給する際、パージガスを溝部26に供給する。溝部26に供給されたパージガスは、ウエハWの裏面端部、溝部26の内壁面、溝部26の底面等に処理ガスが接触することを抑制する。そのため、ウエハWの裏面端部、溝部26の内壁面、溝部26の底面等への膜の堆積が抑制される。その結果、堆積膜が累積されることにより溝部26において発生するパーティクルを低減でき、歩留まりが向上する。また、ウエハWの裏面端部への成膜を抑制できるので、ウエハWの裏面端部に堆積した膜をエッチングして除去する工程の時間を短縮したり、省略したりできるため、生産性が向上する。また、溝部26への成膜が抑制されることにより、サセプタ2に堆積した膜を除去するドライクリーニングの時間を短縮できるので、サセプタ2がエッチングガスに曝される時間が短くなり、サセプタ2の寿命を延ばすことができる。その結果、サセプタ2の交換に伴うコストを削減できる。また、メンテナンス周期を延ばすことができるため生産性が向上する。
【0035】
一実施形態において、パージガス供給部28は、サセプタ2の表面への処理ガスの供給を開始する前に溝部26へのパージガスの供給を開始し、サセプタ2の表面への処理ガスの供給を停止した後に溝部26へのパージガスの供給を停止する。パージガス供給部28は、例えばサセプタ2の内部に穴をあけることにより形成されてもよく、サセプタ2の表面に溝を設けることにより形成されてもよい。
【0036】
円環突起29は、溝部26に沿って設けられている。円環突起29は、平面視で円環状を有し、溝部26の底面から突出する。一実施形態において、円環突起29は、溝部26の底面に対する多孔質リング27の下面の高さ27hよりも低い高さ29hを有する。円環突起29は、凹部24の内壁面の側から支持部25の外壁面の側に向けてパージガス供給部28から供給されるパージガスを、溝部26の周方向に分散させる。これにより、パージガス供給部28から溝部26に供給されたパージガスがウエハW裏面の全周に亘って均一に供給される。
【0037】
図10~
図14を参照し、凹部24の内壁面と支持部25の外壁面との間に溝部26を形成し、溝部26にパージガスを供給するパージガス供給部28を設けた理由について説明する。
【0038】
まず、支持部25を設けずに、凹部24の底面にウエハWを直接載置した場合について説明する。サセプタ2に載置する前の未処理のウエハWが常温の場合には、当該サセプタ2にウエハWを載置すると、面内において温度ばらつきが生じて、その後、成膜温度に向かって昇温すると共に、温度ばらつきが小さくなっていく。一方、成膜装置とは別の熱処理装置にてウエハWに対して既に別の熱処理が行われている場合には、当該成膜装置への搬送途中においてウエハWの自然放熱が行われることになり、このときの降温速度は、ウエハWの面内において不均一となる。従って、ウエハWに対して予め熱処理が行われている場合には、サセプタ2に載置された時、ウエハWは既に温度ばらつきが生じており、その後、サセプタ2からの入熱により次第に温度ばらつきが小さくなっていく。
【0039】
そのため、未処理のウエハWについて、常温の場合であっても、既に熱処理が行われている場合であっても、サセプタ2に載置された時に、面内において温度ばらつきが生じる。このとき、ウエハWの温度ばらつきに基づいて、当該ウエハWが山状に(上に凸に)反る場合があり、このようにウエハWが山状に反っていると、ウエハWは、中央部がサセプタ2の表面から離間すると共に、周縁部にてサセプタ2と接触することになる。そして、
図10に示されるように、山状に反ったウエハWが凹部24の底面に直接載置されていると、ウエハWの均熱化に伴って当該ウエハWが平坦に伸びていく時に、ウエハWの周縁部とサセプタ2の表面(詳しくは凹部24の底面)とが互いに擦れ合う。その結果、パーティクルPが発生する。パーティクルPは、
図11に示されるように、例えばウエハWが水平に伸び切った時に、当該ウエハWの周縁部の側を回り込んでウエハWの表面に付着してしまう。従って、ウエハWの表面におけるパーティクルPの付着数をできるだけ少なくするためには、凹部24の底面にウエハWを直接載置することは好ましくない。
【0040】
そこで、
図12及び
図13に示されるように、凹部24の底面に支持部25を設けることにより、ウエハWの周縁部が凹部24の底面に接触せず、ウエハWの表面におけるパーティクルの付着数を低減できると考えられる。この場合、ウエハWに処理ガスを供給して成膜処理を施す際、ウエハWの周縁部に供給される処理ガスの一部がウエハWの周縁部と凹部24の内壁面との間を通ってウエハWの裏面側に回り込み、ウエハWの裏面端部に膜が堆積する場合がある。ウエハWの裏面端部に堆積する膜の膜厚は、例えば
図14に示されるように、ウエハWの表面に堆積する膜の膜厚と同程度以上になり得る。そして、ウエハWの裏面端部に堆積する膜の膜厚が厚くなると、膜剥がれが生じてパーティクルが発生する。なお、
図14中、横軸は直径寸法rが300mmのウエハWの径方向位置を示し、縦軸はウエハWの表面に堆積した膜の膜厚を1としたときのウエハWの裏面に堆積した膜の膜厚を示す。
【0041】
そこで、実施形態では、凹部24の内壁面と支持部25の外壁面との間に円環状の溝部26を形成し、溝部26にパージガスを供給するパージガス供給部28を設けている。これにより、支持部25上にウエハWを載置した状態でサセプタ2の表面に処理ガスを供給する際、溝部26にパージガスを供給できる。溝部26に供給されたパージガスは、ウエハWの裏面端部、溝部26の内壁面、溝部26の底面等に処理ガスが接触することを抑制する。そのため、ウエハWの裏面端部、溝部26の内壁面、溝部26の底面等への膜の堆積が抑制される。このように、実施形態では、ウエハWの周縁部とサセプタ2の表面との擦れによるパーティクルPの発生を抑制すると共に、ウエハWの裏面端部、溝部26の内壁面、溝部26の底面等への膜の堆積を抑制できる。
【0042】
〔サセプタ構造の変形例〕
図15を参照し、実施形態の成膜装置のサセプタの別の一例について説明する。
図15に示されるサセプタ2Aは、支持部25を含む領域において表面から裏面まで連通する多孔質部25bを含む点で、前述のサセプタ2と異なる。なお、その他の構成については、前述のサセプタ2と同じであってよい。
【0043】
多孔質部25bは、支持部25を含む領域において表面から裏面まで連通する。多孔質部25bは、例えば平面視でウエハWよりも径が小さくなるように形成されている。多孔質部25bは、サセプタ2に固定されていてもよく、サセプタ2に対して着脱可能であってもよい。多孔質部25bがサセプタ2に対して着脱可能である場合、多孔質部25bをサセプタ2に対して回転可能に構成してもよい。多孔質部25bは、例えば多孔質リング27と同じ材料であるSiC、SiN等により形成されている。
【0044】
このように、支持部25を含む領域において多孔質部25bを設けることにより、支持部25上にウエハWを載置する際、支持部25の上面とウエハWの裏面との間に入り込むパージガスを、多孔質部25bを介してサセプタ2Aの下方に放出できる。これにより、支持部25上にウエハWを載置する際の位置ずれを抑制できる。
【0045】
〔成膜方法〕
図16を参照し、実施形態の成膜方法の一例について説明する。以下では、前述の成膜装置においてウエハWにシリコン酸化膜(SiO
2膜)を成膜する場合を例に挙げて説明する。なお、サセプタ2は、当該サセプタ2上に載置されるウエハWが成膜温度(例えば300℃程度)となるように、ヒータユニット7によって既に加熱されているものとする。
【0046】
まず、処理容器1内にウエハWを搬入する(ステップS1)。一実施形態において、ゲートバルブGを開放して、サセプタ2を間欠的に回転させながら、搬送アーム(図示せず)により搬送口15を介してサセプタ2上に例えば5枚のウエハWを載置する。これらウエハWは、凹部24の中心位置に各々載置され、従って当該凹部24の内壁面から周方向に亘って離間するように(接触しないように)配置される。このとき、各々のウエハWは、常温であるか、あるいは既に別の熱処理が既に施されていて、サセプタ2上に載置された時、
図13に示されるように、当該ウエハWの面内における温度ばらつきに基づいて山状に反る場合がある。
【0047】
次いで、ゲートバルブGを閉じ、真空ポンプ64により処理容器1内を引き切りの状態にすると共に、サセプタ2を例えば2rpm~240rpmで時計周りに回転させる。このとき、凹部24に溝部26が形成されているので、ウエハWが山状に反っている場合でも、ウエハWの周縁部はサセプタ2の表面や支持部25の表面から離間しているので、当該周縁部と支持部25との摺動によるパーティクルの発生が抑制される。
【0048】
次いで、溝部26へのパージガスの供給を開始する(ステップS2)。一実施形態において、分離ガス供給管51からN2ガスを所定の流量で吐出し、パージガス供給部28を介して溝部26にパージガスとしてN2ガスを供給する。
【0049】
次いで、サセプタ2の表面への処理ガスの供給を開始する(ステップS3)。一実施形態において、第1の処理ガスノズル31及び第2の処理ガスノズル32から夫々第1の処理ガス及び第2の処理ガスを吐出すると共に、プラズマ発生用ガスノズル34からプラズマ発生用ガスを吐出する。また、分離ガスノズル41、42から分離ガスを所定の流量で吐出し、分離ガス供給管51及びパージガス供給管72、72からもN2ガスを所定の流量で吐出する。そして、圧力調整部65により処理容器1内を予め設定した処理圧力に調整すると共に、プラズマ発生部80に対して高周波電力を供給する。
【0050】
このとき、ウエハWに対して供給される各処理ガスは、ウエハWの周縁部と凹部24の内周面との間の隙間を介してウエハWの裏面側の領域に回り込もうとするが、溝部26にパージガスが供給されているので、溝部26への処理ガスの回り込みが抑制される。これにより、ウエハWの裏面端部、溝部26の内壁面、溝部26の底面等への膜の堆積が抑制される。
【0051】
そして、ウエハWの表面では、サセプタ2の回転によって第1の処理領域P1において第1の処理ガスが吸着し、次いで第2の処理領域P2においてウエハW上に吸着した第1の処理ガスと第2の処理ガスとの反応が起こる。これにより、ウエハWの表面に薄膜成分であるシリコン酸化膜の分子層が1層あるいは複数層形成されて反応生成物が形成される。このとき、反応生成物には、例えば第1の処理ガスに含まれる残留基のため、水分(OH基)や有機物等の不純物が含まれている場合がある。
【0052】
一方、プラズマ発生部80の下方側では、高周波電源85から供給される高周波電力により発生した電界及び磁界のうち電界は、ファラデーシールド95により反射あるいは吸収(減衰)されて、処理容器1内への到達が阻害される(遮断される)。磁界は、ファラデーシールド95のスリット97を通過して、筐体90の底面を介して処理容器1内に到達する。従って、プラズマ発生用ガスノズル34から吐出されたプラズマ発生用ガスは、スリット97を介して通過してきた磁界によって活性化されて、例えばイオンやラジカル等のプラズマが生成する。
【0053】
そして、磁界により発生したプラズマ(活性種)がウエハWの表面に接触すると、反応生成物の改質処理が行われる。具体的には、例えばプラズマがウエハWの表面に衝突することにより、例えばこの反応生成物から前記不純物が放出されたり、反応生成物内の元素が再配列されて緻密化(高密度化)が図られたりすることになる。こうしてサセプタ2の回転を続けることにより、ウエハW表面への第1の処理ガスの吸着、ウエハW表面に吸着した第1の処理ガスの成分の反応及び反応生成物のプラズマ改質がこの順番で多数回に亘って行われて、反応生成物が積層されて薄膜が形成される。
【0054】
また、第1の処理領域P1と第2の処理領域P2との間にN2ガスを供給しているので、第1の処理ガスと第2の処理ガス及びプラズマ発生用ガスとが互いに混合しないように各ガスが排気される。更に、サセプタ2の下方側にパージガスを供給しているため、サセプタ2の下方側に拡散しようとするガスは、前記パージガスにより排気口61、62側へと押し戻される。
【0055】
成膜処理を終えた後、サセプタ2の表面への処理ガスの供給を停止する(ステップS4)。一実施形態において、各ノズル31、32、34、41、42からのガスの供給を停止させる。
【0056】
サセプタ2の表面への処理ガスの供給を停止した後、溝部26へのパージガスの供給を停止する(ステップS5)。一実施形態において、パージガス供給部28から溝部26へのN2ガスの供給を停止する。
【0057】
次いで、ウエハWを搬出する(ステップS6)。一実施形態において、サセプタ2の回転を停止させる。そして、サセプタ2を間欠的に回転させ、搬送口15からウエハWを1枚ずつ搬出する。総てのウエハWを搬出したら、1ラン(1回転の成膜処理)が終了する。
【0058】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 処理容器
2 サセプタ
24 凹部
25 支持部
26 溝部
31 第1の処理ガスノズル
32 第2の処理ガスノズル
28 パージガス供給部
W ウエハ