(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】光電変換モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 31/048 20140101AFI20241112BHJP
H01L 31/049 20140101ALI20241112BHJP
H02S 30/10 20140101ALI20241112BHJP
【FI】
H01L31/04 560
H01L31/04 562
H02S30/10
(21)【出願番号】P 2019180980
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2022-09-28
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187218
【氏名又は名称】堀 宏光
(72)【発明者】
【氏名】下窪 秀基
(72)【発明者】
【氏名】住永 憲治
【審査官】桂城 厚
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-014542(JP,A)
【文献】特開2015-138892(JP,A)
【文献】国際公開第2014/076952(WO,A1)
【文献】特開2010-003861(JP,A)
【文献】特開2001-257372(JP,A)
【文献】特開2009-277891(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0090678(US,A1)
【文献】特開2014-049358(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00-31/078
H01L 31/18-31/20
H10K 30/00-99/00
H02S 10/00-10/40
H02S 30/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電変換素子と、
前記光電変換素子の第1面側に設けられた第1基板と、
前記光電変換素子に関して前記第1基板とは反対の第2面側に設けられ、前記光電変換素子を覆う保護材と、
前記第1基板の表面に沿った方向における前記第1基板の縁を受け入れる受け入れ部を備えたフレームと、
前記第1基板の前記第2面側で、前記保護材の縁を跨って設けられた接着材と、を有し、
前記第1基板の表面に沿った面内において、前記第1基板のサイズは、前記光電変換素子のサイズよりも大きく、
前記第1基板の表面に沿った方向において、前記保護材の縁は、前記第1基板の縁よりも内側に位置し、
前記保護材の縁は、前記第1基板に直接固定されて
おり、
前記接着材から露出した前記保護材の領域は、前記フレームの前記受け入れ部よりも外側に位置し、
前記保護材は、前記フレームの前記受け入れ部よりも外側の位置から、前記フレームの前記受け入れ部内に位置する方の端までの領域において、前記接着材に覆われており、
前記接着材は、前記フレームの前記受け入れ部よりも外側において、前記第2面側に露出している、光電変換モジュール。
【請求項2】
前記保護材は、少なくとも非導電性の材料を有する、請求項1に記載の光電変換モジュール。
【請求項3】
前記保護材は、少なくとも樹脂を含む、請求項1又は2に記載の光電変換モジュール。
【請求項4】
前記接着材の少なくとも一部は、前記受け入れ部内において、少なくとも前記光電変換素子及び前記第1基板を含む光電変換パネルと、前記フレームとの両方に接している、請求項
1から3のいずれか1項に記載の光電変換モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールのように、光電変換パネルを備えた光電変換モジュールが知られている(下記特許文献1)。特許文献1に記載では、光電変換パネルは、第1の基板と、第1の基板上に設けられた光電変換層と、光電変換層を覆う第2の基板と、を有する。第1の基板は光電変換層を形成する基体となる部分である。第2の基板は、ガラスのような透明の基板である。
【0003】
また、光電変換層の受光面側を封止する表面封止材が設けられており、第2の基板は、表面封止材上に積層されている。第1の基板の裏面側(非受光面側)には、絶縁性部材である裏面封止材が設けられている。さらに、裏面保護材であるバックシートが、裏面封止材の裏面側(第1の基板とは反対側)を被覆している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光電変換モジュールにおいて耐火性を高めることが望まれる。例えば、太陽電池モジュールでは耐火性に関する安全規格があり、火災試験(伝播試験)の一例として、火炎を太陽電池モジュールの表面(受光面)にあてて延焼しないかどうかを確認する試験がある。このような火災試験において、本願の発明者は、光電変換モジュールの表面側にあてた火炎が、光電変換モジュールの裏面側の構成にも影響を与える可能性があることを見出した。
【0006】
このような背景の下、より耐火性の高い構造を有する光電変換モジュールが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様に係る光電変換モジュールは、光電変換素子と、光電変換素子の第1面側に設けられた第1基板と、光電変換素子に関して第1基板とは反対の第2面側に設けられ、光電変換素子を覆う保護材と、を有する。第1基板の表面に沿った面内において、第1基板のサイズは、光電変換素子のサイズよりも大きい。第1基板の表面に沿った方向において、保護材の縁は、前記第1基板の縁よりも内側に位置する。
【発明の効果】
【0008】
上記態様によれば、より耐火性の高い構造を有する光電変換モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る光電変換モジュールの平面図である。
【
図2】
図1の2A-2A線に沿った光電変換モジュールの模式的断面図である。
【
図4】第2実施形態に係る光電変換モジュールの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。以下の図面において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがあることに留意すべきである。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る光電変換モジュールの平面図である。
図2は、
図1の2A-2A線に沿った光電変換モジュールの模式的断面図である。
図3は、
図2の領域3A付近の拡大断面図である。
【0012】
光電変換モジュール1は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池モジュールであってよい。この代わりに、光電変換モジュール1は、電気エネルギーを光エネルギーに変換するモジュールであってもよい。光電変換モジュール1は、例えば集積型の光電変換モジュールであってよい。
【0013】
光電変換モジュール1は、光電変換素子10を含む光電変換パネル100と、光電変換パネル100の縁に取り付けられたフレーム200と、を有していてよい。
【0014】
光電変換パネル100は、光電変換素子10と、光電変換素子10の第1面側(表面側)に設けられた第1基板600と、光電変換素子10に関して第1基板600とは反対側(裏面側)に設けられたシート状の保護材900と、を有している。
【0015】
ここで、「表面側」は、光電変換素子10へ光が入射する側、又は光電変換素子10から光が出射する側に相当する。また、「裏面側」は、表面側とは反対側の面に相当する。例えば、光電変換モジュール1が太陽電池モジュールである場合、「表面側」は光が入射する受光面側に相当し、「裏面側」は非受光面側に相当する。
【0016】
第1基板600は、表面側に露出していてよい。第1基板600は、例えば樹脂基板やガラス基板のような透明又は半透明な基板であってよい。第1基板600の表面に沿った面内において、第1基板600のサイズは、後述する光電変換素子10のサイズ、より具体的には第2基板20のサイズよりも大きい。
【0017】
光電変換パネル100は、第1基板600と光電変換素子10との間に、第1封止層400を有していてよい。第1封止層400は、少なくとも光電変換素子10の表面側を覆っていてよい。
【0018】
第1封止層400は、透明又は半透明な絶縁体によって構成されていてよい。例えば、第1封止層400は、合成樹脂によって形成されていてよい。そのような合成樹脂として、例えばEVA樹脂(エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂)、オレフィン系樹脂、PVB(ポリビニルブチラール)樹脂、アイオノマー樹脂もしくはシリコーン樹脂、又はこれらの組み合わせを用いることができる。
【0019】
光電変換素子10は、第2基板20上に層状に設けられていてよい。光電変換素子10は、第2基板20のほぼ全域にわたって形成されていてよい。第2基板20は、光電変換素子10を形成する基体となる部分である。第2基板20は、例えば、樹脂基板、ガラス基板又は金属基板により構成されていてよい。第2基板20の、光電変換素子10側の表面には、不図示の絶縁層が形成されていてもよい。
【0020】
光電変換パネル100は、第2基板20と保護材900との間に、第2封止層800を有していてよい。第2封止層800は、合成樹脂のような絶縁体によって形成されていてよい。そのような合成樹脂として、例えばEVA樹脂(エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂)、オレフィン系樹脂、PVB(ポリビニルブチラール)樹脂、アイオノマー樹脂もしくはシリコーン樹脂、又はこれらの組み合わせを用いることができる。なお、第2封止層800の厚みは、第1封止層400の厚みと同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0021】
保護材900は、光電変換モジュール1の裏面側で、光電変換素子10及び第2基板20を覆っていてよい。保護材900は、第2基板20の表面に沿った面内において、保護材900のサイズは、第2基板20のサイズよりも大きくてよい。保護材900の縁は、光電変換素子10の側部で、第1基板600の裏面又はその付近まで延びていてよい。
【0022】
保護材900の少なくとも一部は、光電変換モジュール1の裏面側に露出していてよい。すなわち、保護材900の少なくとも一部は、光電変換モジュール1の最も裏面側に位置していてよい。
【0023】
保護材900は、少なくとも樹脂を含んでいてよい。保護材900は、例えば、樹脂製の基材と接着剤が互いに積層された積層シートであってもよい。保護材900は、例えばPET樹脂、PVF(ポリフッ化ビニル)樹脂、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)樹脂、ナイロン樹脂もしくはポリアミド樹脂、又はこれらの組み合わせによって構成されていてよい。第2封止材900が複数層の基材を有する場合、各層の基材は、同じ材料によって構成されていてもよく、異なる材料によって構成されていてもよい。
【0024】
光電変換モジュール1は、光電変換素子10の側部にシール材500を有していてもよい。シール材500は、光電変換素子10及び第2基板20の周縁部を囲んでおり、第1基板600の裏面側にも付着していてよい。シール材500は、光電変換パネル100の表面に直交する面において断面において、第2封止材800の裏面側の一面と、第1基板600の裏面側の一面とをなだらかに結ぶよう、傾斜していてよい(
図2)。この場合、保護材900は、第2封止材800の裏面側から第1基板600の裏面側にわたってなだらかに延びることができる。
【0025】
シール材500は、保護材900を構成する材料よりも高い防湿性を有する材料により構成されていることが好ましい。そのようなシール材500の材料として、例えば、ポリイソブチレン(PIB)、ブチルゴムもしくは合成ゴム、又はこれらの組み合わせが挙げられる。これにより、光電変換素子10の側部からの湿気の侵入が防止され、光電変換素子10の劣化を抑制することができる。
【0026】
シール材500は、遮光性を有していてもよい。シール材500の材料としては、例えば、ポリイソブチレン(PIB)、ブチルゴムもしくは合成ゴム、又はこれらの組み合わせを含む材料によって構成されていてもよい。また、シール材500は、カーボンブラックを含有した黒色のブチルゴム等によって構成されていてもよい。
【0027】
光電変換モジュール1が保護材900のうちの光電変換素子10からはみ出した領域の少なくとも一部は、シール材500を覆っていてよい。言い換えると、光電変換モジュール1の表面側からみたときに、シール材500が、保護材900のうちの光電変換素子10からはみ出した領域の少なくとも一部、好ましくは全部を覆っていてよい。シール材500が遮光性を有する場合、シール材500は、第1基板600側から入射した光が保護材900へ照射されることを抑制する。これにより、保護材900が、光電変換素子10よりも外側にわたって延びていたとしても、紫外線の照射に伴う保護材900の劣化を抑制することができる。
【0028】
本実施形態において、保護材900の縁は、第1基板600の縁よりも内側に位置している。ここで、火炎試験において、フレーム200が取り付けられていない光電変換パネル100の表面側に火炎を吹き付けると、火炎の一部が、第1基板600の縁から裏側に回り込み、光電変換パネル100の裏側の端部付近に影響を与える可能性がある。本実施形態では、火に対する耐性が比較的弱い保護材900の縁が、第1基板600の縁よりも内側に位置しているため、保護材900は、光電変換パネル100の裏面側まわり込んだ火炎の影響を受けにくい。したがって、光電変換モジュール1の裏面側の構造として、より耐火性の高い構造を提供することができる。
【0029】
また、保護材900は、少なくとも非導電性の材料を有することが好ましい。具体的には、保護材900は、金属材料を含まない樹脂シートによって構成されていることが好ましい。これにより、保護材900とフレーム200とが互いに近接することによって生じ得る放電を防止することができる。さらに、保護材900が金属材料を含まないため、光電変換モジュール1を軽量化することもできる。
【0030】
フレーム200は、光電変換パネル100の縁に沿って設けられている。フレーム200は、光電変換パネル100の縁を実質的に取り囲むように配置されていてよい。各々のフレーム200は、光電変換パネル100の縁に沿って延びていてよい。
【0031】
フレーム200は、フレーム200の延在方向(横方向)に直交する断面において略C字型の壁部によって構成された受け入れ部210を有していてよい。第1基板600の表面に沿った方向における光電変換パネル100の縁、具体的には第1基板600の縁は、この略C字型の壁部によって構成された受け入れ部210内に挿入されている。
【0032】
光電変換モジュール1は、少なくともフレーム200の受け入れ部210内に、接着材250を有していてよい。具体的には、接着材250は、光電変換パネル100の裏面側であって、光電変換パネル100とフレーム200を構成する壁部との間に設けられていてよい。フレーム200は、接着材250により、光電変換パネル100に固定される。具体的には、接着材250の少なくとも一部は、受け入れ部210内において、少なくとも光電変換パネル100とフレーム200の両方に接していてよい。このように、接着材250は、保護材900の縁の捲れの防止と、光電変換パネル100へのフレーム200の接着との両方を兼ねることができる。接着材250は、特に限定されないが、例えばシリコーン接着材であってよい。
【0033】
接着材250は、第1基板600の裏面側で、保護材900の縁を跨って設けられていることが好ましい。すなわち、接着材250は、保護材900から第1基板600の裏面側にわたって設けられていてよい。これにより、保護材900の縁が捲れることを防止することができる。特に、経年劣化に伴う保護材900の縁が捲れを抑制できる。また、光電変換モジュール1の製造において、保護材900の形成から接着材250の塗布又は接着材250の硬化までにおいて、保護材900の縁の捲れを防止することで、光電変換モジュール1の歩留まりを向上することもできる。なお、本実施形態では、保護材900の縁が第1基板600の縁よりも内側に位置するため、接着材250を保護材900の縁を跨って設けることができる。
【0034】
前述した耐火性の観点、及び/又は保護材900の縁の捲れ防止の観点から、第1基板600の縁から保護材900の縁までの距離L1は、好ましくは1.0mm以上、より好ましくは2.0mm以上である。
【0035】
さらに、接着材250から露出した保護材900の領域は、フレーム200の受け入れ部210よりも外側に位置することが好ましい。すなわち、接着材250から露出した保護材900の部分と、フレーム200の受け入れ部210との間に、ギャップGが存在することが好ましい。フレーム200が取り付けられた状態で前述した火炎試験を行った場合であっても、保護材900は、このギャップGにより、光電変換モジュール1の裏面側まわり込んだ火炎の影響を受けにくい。したがって、光電変換モジュール1の裏面側の構造として、いっそう耐火性の高い構造を提供することができる。
【0036】
光電変換モジュール1は、保護材900の裏面側に、中継器(ジャンクションボックス)700を有していてもよい。中継器700は、光電変換素子10から引き回された一対の配線50と電気的に接続されていてよい。具体的には、一対の配線50は、光電変換素子10から、第2基板20と第2封止層800との間を延び、第2封止層800及び保護材900を貫通して、中継器700と接続されていてよい。
【0037】
以下、光電変換パネル100に設けられた光電変換素子10の構成について
図3を用いて詳細に説明する。
図3は、
図2の領域3A付近を拡大した詳細な断面を示している。
図3では、光電変換素子10の厚み方向において、第1基板600と第2封止層800との間の領域が示されていることに留意されたい。
【0038】
光電変換素子10は、第2基板20の表面側に集積された複数の光電変換セル12を含んでいてよい。各々の光電変換セル12は、光電変換素子10の厚み方向から見て、実質的に帯状の形状を有していてよい。また、複数の光電変換セル12は、
図3のX方向に並んでいてよい。互いに隣接する光電変換セル12は、分割部P3によって互いに分断されていてよい。
【0039】
各々の光電変換セル12は、少なくとも、第1電極層22と、第2電極層24と、光電変換層26と、を含んでいてよい。光電変換層26は、光電変換素子10の厚み方向において、第1電極層22と第2電極層24との間に設けられている。第1電極層22は、光電変換層26と第2基板20との間に設けられている。第2電極層24は、光電変換層26に関して第2基板20とは反対側に位置する。
【0040】
第2電極層24は透明電極層によって構成されていてよい。第2電極層24が透明電極層によって構成されている場合、光電変換層26へ入射する光、又は光電変換層26から出射する光は、第2電極層24を通過する。
【0041】
第2電極層24が透明電極層によって構成される場合、第1電極層22は、不透明電極層によって構成されていてもよく、透明電極層によって構成されていてもよい。第1電極層22は、例えば、モリブデン、チタン又はクロムのような金属によって形成されていてよい。
【0042】
本実施形態では、好ましい一例として、第2電極層24は、n型半導体、より具体的には、n型の導電性を有し、禁制帯幅が広く、比較的低抵抗の材料によって形成される。第2電極層24は、例えば、III族元素を添加した酸化亜鉛(ZnO)や、酸化インジウムスズ(Indium Tin Oxide:ITO)によって構成されていてよい。この場合、第2電極層24は、n型半導体と透明電極層の機能を兼ねることができる。
【0043】
光電変換層26は、例えば、p型の半導体を含んでいてよい。CIS系の光電変換モジュールの一例では、光電変換層26は、I族元素(Cu、Ag、Au等)、III族元素(Al、Ga、In等)及びVI族元素(O、S、Se、Te等)を含む化合物半導体で形成される。光電変換層26は、前述したものに限定されず、光電変換を起こす任意の材料によって構成されていてよい。
【0044】
光電変換セル12の構成は、上記態様に限定されず、様々な態様をとり得ることに留意されたい。例えば、光電変換セル12は、n型半導体とp型半導体の両方が第1電極層と第2電極層との間に挟まれた構成を有していてもよい。この場合、第2電極層はn型半導体によって構成されていなくてよい。また、光電変換セル12は、p-n結合型の構造に限らず、n型半導体とp型半導体との間に真性半導体層(i型半導体)を含むp-i-n結合型の構造を有していてもよい。
【0045】
光電変換セル12は、光電変換層26と第2電極層24との間に不図示のバッファ層を有していてもよい。この場合、バッファ層は、第2電極層24と同じ導電型を有する半導体材料であってもよく、異なる導電型を有する半導体材料であってもよい。バッファ層は、第2電極層24よりも電気抵抗の高い材料によって構成されていればよい。バッファ層は、例えばZn系バッファ層、Cd系バッファ層又はIn系バッファ層であってよい。
【0046】
互いに隣接する光電変換セル12の第1電極層22は、第1分割部P1によって互いに電気的に分断されている。同様に、互いに隣接する光電変換セル12の第2電極層24は、第3分割部P3によって互いに電気的に分断されている。互いに隣接する光電変換セル12の光電変換層26は、第2分割部P2及び第3分割部P3によって互いに分断されている。
【0047】
光電変換素子10は、互いに隣接する光電変換セル12どうしの間に電気接続部34を有していてよい。電気接続部34は、互いに隣接する光電変換セル12どうしを電気的に直列に接続する。本実施形態では、電気接続部34は、第2電極層24から連続する部分によって形成されている。この場合、電気接続部34は、第2電極層24と同じ材料から構成されていてよい。この代わりに、電気接続部34は、第2電極層24と異なる導電材料から構成されていてもよい。電気接続部34は、第2分割部P2のところで光電変換素子10の厚み方向に延びることで、一方の光電変換セル12の第1電極層22と他方の光電変換セル12の第2電極層24とを互いに電気的に接続する。
【0048】
光電変換モジュール1が太陽電池モジュールである場合、各々の光電変換セル12の光電変換層26に光が照射されると起電力が生じ、第1電極層22及び第2電極層24がそれぞれ正極及び負極となる。したがって、ある光電変換セル12で生じた自由電子の一部は、第2電極層24から直接電気接続部34を通って、隣接する光電変換セル12の第1電極層22に移動する。このように、光電変換セル12で生じた自由電子は、第2方向に複数の光電変換セル12を通って流れることになる。
【0049】
光電変換素子10は、光電変換素子10と電気的に接続された一対の配線50を有する。一対の配線50は、外部から光電変換素子10に電力を供給したり、光電変換素子10から外部へ電力を取り出したりすることができる。一対の配線50は、第2基板20と第1基板600との間に設けられている。
【0050】
一対の配線50は、
図3のX方向における光電変換素子10の端に位置する光電変換セル12に隣接して設けられていてよい。一対の配線50は、それぞれ一方向に並んだ光電変換セル12のうちの端に位置する光電変換セル12の第1電極層22が延出して露出した部分(電極層)に接している。これにより、一対の配線50は、光電変換素子10と電気的に接続されている。
【0051】
一対の配線50のそれぞれは、第2基板20の縁において裏面側に引き回されており、第2基板20の裏側を通って、前述したように中継器700に接続されている。
【0052】
シール材500は、光電変換素子10の厚み方向からみて、光電変換セル12、具体的には光電変換が行われる領域に重ならない位置に設けられていてよい。より具体的には、シール材500は、
図3のX方向において、光電変換セル12よりも外側の領域に設けられていてよい。また、シール材500は、前述した配線50の少なくとも一部を覆っていてもよく、配線50よりも外側のみに設けられていても良い。
【0053】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る光電変換モジュールについて、
図4を参照して説明する。
図4は、第2実施形態に係る光電変換モジュールの模式的断面図である。
【0054】
第2実施形態において、第1実施形態と同様又は類似の構成要素については同じ符号が付されていることに留意されたい。また、第1実施形態と同様又は類似の構成要素については、その説明を省略することがあることに留意されたい。
【0055】
第1実施形態では、保護材900は、第2封止材800の裏面側から第1基板600の裏面側にわたってなだらかに曲げられていた(
図2参照)。第2実施形態では、保護材900は、第2封止材800の裏面側で、平板状に形成されている。保護材900は、光電変換素子10よりも外側に延びており、保護材900と第1基板600との間にシール材500が設けられていてよい。このシール材500は、保護材900と第1基板600とを接合する役割を担っていてよい。
【0056】
第2実施形態においても、保護材900の縁は、第1基板600の縁よりも内側に位置している(
図4参照)。これにより、第1実施形態と同様に、火炎試験において、フレーム200が取り付けられていない光電変換パネル100の表面側に火炎を吹き付けたときに、保護材900は、光電変換パネル100の裏面側まわり込んだ火炎の影響を受けにくくなる。
【0057】
第2実施形態において、保護材900は、平板状の形状を有する。したがって、保護材900は、柔軟に曲げられる材料だけでなく、硬質な材料によって構成されていてもよい。具体的には、保護材900は、第1実施形態で例示した材料の他に、例えばガラスのような材料によって構成されていてよい。
【0058】
第2実施形態においても、接着材250は、保護材900の縁を跨って設けられることが好ましい。具体的には、接着材250は、保護材900から第1基板600に跨って設けられている。これにより、保護材900の縁が捲れたり、保護材900の縁から保護材900が剥がれたりすることを抑制することができる。
【0059】
さらに、保護材900は、ガラス基板のような、透明又は半透明な基板によって構成されていてもよい。これにより、光電変換パネル100の裏側から光電変換素子10へ向けて光が透過し得る。この場合、光電変換素子10は、裏側から侵入した光によっても光電変換し得るよう構成されていることが好ましい。これにより、表面側から侵入した光と裏側から侵入した光の両方を利用して光電変換することができるため、光電変換の効率を向上させることができる。
【0060】
上述したように、実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替の実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0061】
1 光電変換モジュール
100 光電変換パネル
10 光電変換素子
20 第2基板
200 フレーム
210 受け入れ部
250 接着材
500 シール材
600 第1基板
900 保護材