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特許7586797密着膜形成材料、パターン形成方法、及び密着膜の形成方法
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  • 特許-密着膜形成材料、パターン形成方法、及び密着膜の形成方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】密着膜形成材料、パターン形成方法、及び密着膜の形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/11 20060101AFI20241112BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20241112BHJP
   C08F 220/28 20060101ALI20241112BHJP
   C08G 59/32 20060101ALI20241112BHJP
   G03F 7/039 20060101ALN20241112BHJP
【FI】
G03F7/11
H01L21/30 563
C08F220/28
C08G59/32
G03F7/039 601
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021153704
(22)【出願日】2021-09-22
(65)【公開番号】P2023045354
(43)【公開日】2023-04-03
【審査請求日】2023-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】郡 大佑
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 佑典
(72)【発明者】
【氏名】中原 貴佳
(72)【発明者】
【氏名】渡部 衛
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-107185(JP,A)
【文献】特開2016-117878(JP,A)
【文献】特開2021-138851(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/11
H01L 21/027
C08F 220/28
C08G 59/32
G03F 7/039
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ素含有中間膜とレジスト上層膜との間に形成される密着膜の密着膜形成材料であって、
(A)下記一般式(3)および下記一般式(2)で示される構造単位を有する樹脂、
(B)熱酸発生剤および、
(C)有機溶剤
を含むものであり、
前記(A)成分において下記一般式(3)で示される構造単位のモル分率が5%以上であり、下記一般式(2)で示される構造単位のモル分率が30%以上であるものであることを特徴とする密着膜形成材料。
【化1】
(式中、R は水素原子またはメチル基であり、R は水素原子、または炭素数1~3の直鎖または分岐状のアルキル基を表す。L は単結合または炭素数1~2のアルキレン基であり、前記アルキレン基の水素原子が水酸基に置換されても良く、前記アルキレン基を構成するメチレン基がカルボニル基に置換されても良い。)
【化2】
(式中、Rは、水素原子またはメチル基であり、Rは、下記式(2-1)~(2-3)から選択される基である。)
【化3】
(上記式中、破線は結合手を示す。)
【請求項2】
前記ケイ素含有中間膜が、ケイ素含有レジスト中間膜、又は無機ハードマスク中間膜であることを特徴とする請求項1に記載の密着膜形成材料。
【請求項3】
さらに(D)光酸発生剤として、下記一般式(4)で示される化合物を一種類以上含有するものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の密着膜形成材料。
【化4】
(式中、R、R及びRは、それぞれ独立にヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数1~10の直鎖状、又は炭素数3~10の分岐状もしくは環状のアルキル基又はアルケニル基を示すか、あるいはヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数6~21のアリール基またはアラルキル基を示す。また、R、R及びRのうちいずれか二つは相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。Yは下記一般式(5)又は下記一般式(6)のいずれかを示す。)
【化5】
【化6】
(式中、RおよびRは相互に独立であり、ヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数3~40の脂肪族環構造を含む一価の炭化水素基を示す。)
【請求項4】
前記一般式(5)が下記一般式(7)で示されるものであることを特徴とする請求項3に記載の密着膜形成材料。
【化7】
(式中、R10は水素原子又はトリフルオロメチル基を表す。R11はヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数3~35の脂肪族環構造を含む一価の炭化水素基を示す。)
【請求項5】
前記(A)樹脂の重量平均分子量が、1,000~30,000であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の密着膜形成材料。
【請求項6】
さらに、(E)界面活性剤、(F)架橋剤、(G)可塑剤、および(H)色素のうちから少なくとも1種以上を含有するものであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の密着膜形成材料。
【請求項7】
被加工基板にパターンを形成する方法であって、
(I-1)前記被加工基板上に、レジスト下層膜を形成する工程、
(I-2)該レジスト下層膜上に、ケイ素含有レジスト中間膜を形成する工程、
(I-3)該ケイ素含有レジスト中間膜上に、密着膜形成材料を塗布後、熱処理することにより密着膜を形成する工程、
(I-4)該密着膜上に、フォトレジスト材料を用いてレジスト上層膜を形成する工程、
(I-5)該レジスト上層膜をパターン露光した後、現像液で現像して、前記レジスト上層膜にパターンを形成する工程、
(I-6)該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして、ドライエッチングで前記密着膜にパターンを転写する工程、
(I-7)該パターンが形成された密着膜をマスクにして、ドライエッチングで前記ケイ素含有レジスト中間膜にパターンを転写する工程、
(I-8)該パターンが転写されたケイ素含有レジスト中間膜をマスクにして、ドライエッチングで前記レジスト下層膜にパターンを転写する工程、及び
(I-9)該パターンが転写されたレジスト下層膜をマスクにして前記被加工基板にドライエッチングでパターンを転写する工程、
を有するパターン形成方法であって、
前記密着膜形成材料を、
(A)下記一般式(1)および下記一般式(2)で示される構造単位を有する樹脂、
(B)熱酸発生剤および、
(C)有機溶剤
を含むものであり、
前記(A)成分において下記一般式(1)で示される構造単位のモル分率が5%以上であり、下記一般式(2)で示される構造単位のモル分率が30%以上であるものとすることを特徴とするパターン形成方法。
【化8】
(式中、R は水素原子またはメチル基であり、L は単結合、-C(=O)O-を含む2価の有機基、または-C(=O)NR -を含む2価の有機基を表す。R は水素原子、または炭素数1~3の直鎖または分岐状のアルキル基を表す。)
【化9】
(式中、R は、水素原子またはメチル基であり、R は、下記式(2-1)~(2-3)から選択される基である。)
【化10】
(上記式中、破線は結合手を示す。)
【請求項8】
被加工基板にパターンを形成する方法であって、
(II-1)前記被加工基板上に、レジスト下層膜を形成する工程、
(II-2)該レジスト下層膜上に、ケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、及びケイ素酸化窒化膜から選ばれる無機ハードマスク中間膜を形成する工程、
(II-3)該無機ハードマスク中間膜上に、密着膜形成材料を塗布後、熱処理することにより密着膜を形成する工程、
(II-4)該密着膜上に、フォトレジスト材料を用いてレジスト上層膜を形成する工程、
(II-5)該レジスト上層膜をパターン露光した後、現像液で現像して、前記レジスト上層膜にパターンを形成する工程、
(II-6)該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして、ドライエッチングで前記密着膜にパターンを転写する工程、
(II-7)該パターンが形成された密着膜をマスクにして、ドライエッチングで前記無機ハードマスク中間膜にパターンを転写する工程、
(II-8)該パターンが転写された無機ハードマスク中間膜をマスクにして、ドライエッチングで前記レジスト下層膜にパターンを転写する工程、及び
(II-9)該パターンが転写されたレジスト下層膜をマスクにして前記被加工基板にドライエッチングでパターンを転写する工程、
を有するパターン形成方法であって、
前記密着膜形成材料を、
(A)下記一般式(1)および下記一般式(2)で示される構造単位を有する樹脂、
(B)熱酸発生剤および、
(C)有機溶剤
を含むものであり、
前記(A)成分において下記一般式(1)で示される構造単位のモル分率が5%以上であり、下記一般式(2)で示される構造単位のモル分率が30%以上であるものとすることを特徴とするパターン形成方法。
【化11】
(式中、R は水素原子またはメチル基であり、L は単結合、-C(=O)O-を含む2価の有機基、または-C(=O)NR -を含む2価の有機基を表す。R は水素原子、または炭素数1~3の直鎖または分岐状のアルキル基を表す。)
【化12】
(式中、R は、水素原子またはメチル基であり、R は、下記式(2-1)~(2-3)から選択される基である。)
【化13】
(上記式中、破線は結合手を示す。)
【請求項9】
前記無機ハードマスク中間膜をCVD法あるいはALD法によって形成することを特徴とする請求項8に記載のパターン形成方法。
【請求項10】
前記レジスト上層膜に回路パターンを形成する方法として、波長が10nm以上300nm以下の光リソグラフィー、電子線による直接描画、ナノインプリンティングまたはこれらの組み合わせを用いることを特徴とする請求項7から請求項9のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項11】
現像方法として、アルカリ現像または有機溶剤による現像を用いることを特徴とする請求項7から請求項10のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項12】
前記被加工基板として、半導体装置基板、又は該半導体装置基板上に金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、金属酸化炭化膜及び金属酸化窒化膜のいずれかが成膜されたものを用いることを特徴とする請求項7から請求項11のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項13】
前記金属として、ケイ素、チタン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、クロム、ゲルマニウム、銅、銀、金、アルミニウム、インジウム、ガリウム、ヒ素、パラジウム、鉄、タンタル、イリジウム、コバルト、マンガン、モリブデンまたはこれらの合金を用いることを特徴とする請求項12に記載のパターン形成方法。
【請求項14】
半導体装置の製造工程で使用される密着層として機能する密着膜の形成方法であって、被加工基板上に請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の密着膜形成材料を回転塗布し、該密着膜形成材料を塗布した基板を100℃以上300℃以下の温度で10~600秒間の範囲で熱処理することにより硬化膜を形成することを特徴とする密着膜の形成方法。
【請求項15】
半導体装置の製造工程で使用される密着層として機能する密着膜の形成方法であって、被加工基板上に請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の密着膜形成材料を回転塗布し、該密着膜形成材料を塗布した基板を酸素濃度0.1%以上21%以下の雰囲気で熱処理することにより硬化膜を形成することを特徴とする密着膜の形成方法。
【請求項16】
半導体装置の製造工程で使用される密着層として機能する密着膜の形成方法であって、被加工基板上に請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の密着膜形成材料を回転塗布し、該密着膜形成材料を塗布した基板を酸素濃度0.1%未満の雰囲気で熱処理することにより硬化膜を形成することを特徴とする密着膜の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密着膜形成材料、該密着膜形成材料を用いたパターン形成方法、及び上記密着膜形成材料を用いた密着膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターン寸法の微細化が急速に進んでいる。リソグラフィー技術は、この微細化に併せ、光源の短波長化とそれに対するレジスト組成物の適切な選択により、微細パターンの形成を達成してきた。その中心となったのは単層で使用するポジ型フォトレジスト組成物である。この単層ポジ型フォトレジスト組成物は、塩素系あるいはフッ素系のガスプラズマによるドライエッチングに対しエッチング耐性を持つ骨格をレジスト樹脂中に持たせ、かつ露光部が溶解するようなレジスト機構を持たせることによって、露光部を溶解させてパターンを形成し、残存したレジストパターンをエッチングマスクとしてフォトレジスト組成物を塗布した被加工基板をドライエッチング加工するものである。
【0003】
ところが、使用するフォトレジスト膜の膜厚をそのままで微細化、即ちパターン幅をより小さくした場合、フォトレジスト膜の解像性能が低下し、また現像液によりフォトレジスト膜をパターン現像しようとすると、いわゆるアスペクト比が大きくなりすぎ、結果としてパターン崩壊が起こってしまう。このため微細化に伴いフォトレジスト膜の膜厚は薄膜化されてきた。
【0004】
一方、被加工基板の加工には、通常パターンが形成されたフォトレジスト膜をエッチングマスクとして、ドライエッチングにより被加工基板を加工する方法が用いられるが、現実的にはフォトレジスト膜と被加工基板の間に完全なエッチング選択性を取ることのできるドライエッチング方法がないため、被加工基板の加工中にフォトレジスト膜もダメージを受け、被加工基板の加工中にフォトレジスト膜が崩壊し、レジストパターンを正確に被加工基板に転写できなくなる。そこで、パターンの微細化に伴い、フォトレジスト組成物により高いドライエッチング耐性が求められてきた。また、露光波長の短波長化によりフォトレジスト組成物に使用する樹脂は、露光波長における光吸収の小さな樹脂が求められたため、i線、KrF、ArFへの変化に対し、ノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン、脂肪族多環状骨格を持った樹脂へと変化してきているが、現実的には上記ドライエッチング条件におけるエッチング速度は速いものになってきてしまっており、解像性の高い最近のフォトレジスト組成物は、むしろエッチング耐性が弱くなる傾向がある。
【0005】
このことから、より薄くよりエッチング耐性の弱いフォトレジスト膜で被加工基板をドライエッチング加工しなければならないことになり、この加工工程における材料及びプロセスの確保は急務になってきている。
【0006】
このような問題点を解決する方法の一つとして、多層レジスト法がある。この方法は、フォトレジスト膜(即ち、レジスト上層膜)とエッチング選択性が異なる中間膜をレジスト上層膜と被加工基板の間に介在させ、レジスト上層膜にパターンを得た後、レジスト上層膜パターンをドライエッチングマスクとして、ドライエッチングにより中間膜にパターンを転写し、さらに中間膜をドライエッチングマスクとして、ドライエッチングにより被加工基板にパターンを転写する方法である。
【0007】
多層レジスト法の一つに、単層レジスト法で使用されている一般的なレジスト組成物を用いて行うことができる3層レジスト法がある。この3層レジスト法では、例えば、被加工基板上にノボラック等による有機膜をレジスト下層膜として成膜し、その上にケイ素含有膜をケイ素含有レジスト中間膜として成膜し、その上に通常の有機系フォトレジスト膜をレジスト上層膜として形成する。フッ素系ガスプラズマによるドライエッチングに対しては、有機系のレジスト上層膜は、ケイ素含有レジスト中間膜に対して良好なエッチング選択比が取れるため、レジスト上層膜パターンはフッ素系ガスプラズマによるドライエッチングを用いることでケイ素含有レジスト中間膜に転写される。さらに、酸素ガス又は水素ガスを用いたエッチングに対しては、ケイ素含有レジスト中間膜は、レジスト下層膜に対して良好なエッチング選択比を取ることができるため、ケイ素含有レジスト中間膜パターンは酸素ガス又は水素ガスを用いたエッチングによってレジスト下層膜に転写される。この方法によれば、直接被加工基板を加工するための十分な膜厚を持ったパターンを形成することが難しいフォトレジスト組成物や、基板を加工するためにはドライエッチング耐性が十分でないフォトレジスト組成物を用いても、ケイ素含有膜(ケイ素含有レジスト中間膜)にパターンを転写することができれば、加工に十分なドライエッチング耐性を持つノボラック等による有機膜(レジスト下層膜)のパターンを得ることができる。
【0008】
一方、近年においては、ArF液浸リソグラフフィー、EUVリソグラフィーなどの登場により、より微細なパターンの形成が可能となりつつあるが、一方で超微細パターンと基板との接触面積が小さいため極めて倒れが発生し易く、パターン倒れの抑制が非常に大きな課題である。昨今では微細パターンにおけるレジスト上層膜とレジスト下層膜との界面での相互作用がパターン倒れに影響を与えるとされ、レジスト下層膜の性能改善も必要とされている。
【0009】
パターン倒れを抑制するために、ラクトン構造やウレア構造のような極性官能基を含有するレジスト下層膜を用いてレジスト上層膜との密着性を向上させる材料が報告されている(特許文献1、2)。しかしながら、より微細なパターン形成が求められる現状においてこれらの材料ではパターン倒れ抑制性能が十分とは言えない。さらに、フェノール性水酸基含有の樹脂とビニルエーテル基を有する化合物を組み合わせたレジスト下層膜が報告されているが、熱硬化性が十分とは言えない(特許文献3)。以上のことからより高いパターン倒れ抑制性能および密着性を有する材料が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】国際公開第2003/017002号
【文献】国際公開第2018/143359号
【文献】特許第5708938号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、半導体装置製造工程における多層レジスト法による微細パターニングプロセスにおいて、レジスト上層膜との高い密着性を有し、微細パターンの倒れ抑止効果を有するとともに良好なパターン形状を形成できる密着膜を与える密着膜形成材料、該材料を用いたパターン形成方法、及び上記密着膜の形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明では、
ケイ素含有中間膜とレジスト上層膜との間に形成される密着膜の密着膜形成材料であって、
(A)下記一般式(1)および下記一般式(2)で示される構造単位を有する樹脂、
(B)熱酸発生剤および、
(C)有機溶剤
を含むものであり、
前記(A)成分において下記一般式(1)で示される構造単位のモル分率が5%以上であり、下記一般式(2)で示される構造単位のモル分率が30%以上であるものである密着膜形成材料を提供する。
【化1】
(式中、Rは水素原子またはメチル基であり、Lは単結合、-C(=O)O-を含む2価の有機基、または-C(=O)NR-を含む2価の有機基を表す。Rは水素原子、または炭素数1~3の直鎖または分岐状のアルキル基を表す。)
【化2】
(式中、Rは、水素原子またはメチル基であり、Rは、下記式(2-1)~(2-3)から選択される基である。)
【化3】
(上記式中、破線は結合手を示す。)
【0013】
このような密着膜形成材料であれば、レジスト上層膜との高い密着性を有し、微細パターンの倒れ抑止効果を有するとともに良好なパターン形状を与える密着膜を形成することができる。
【0014】
さらに本発明では前記一般式(1)が下記一般式(3)で表されるものであることが好ましい。
【化4】
(式中、R、Rは前記と同じである。Lは単結合または炭素数1~2のアルキレン基であり、前記アルキレン基の水素原子が水酸基に置換されても良く、前記アルキレン基を構成するメチレン基がカルボニル基に置換されても良い。)
【0015】
このようなアミド結合を含むカテコール構造単位の導入により、レジスト上層膜だけでなくケイ素含有中間膜との密着性も向上させ、微細パターンの倒れ抑止効果を高めることができる。
【0016】
また、本発明では、前記ケイ素含有中間膜が、ケイ素含有レジスト中間膜、又は無機ハードマスク中間膜であることが好ましい。
【0017】
本発明では、ケイ素含有中間膜としてこのような中間膜を好適に用いることができる。
【0018】
また、本発明では、さらに(D)光酸発生剤として、下記一般式(4)で示される化合物を一種類以上含有するものであることが好ましい。
【化5】
(式中、R、R及びRは、それぞれ独立にヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数1~10の直鎖状、又は炭素数3~10の分岐状もしくは環状のアルキル基又はアルケニル基を示すか、あるいはヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数6~21のアリール基またはアラルキル基を示す。また、R、R及びRのうちいずれか二つは相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。Yは下記一般式(5)又は下記一般式(6)のいずれかを示す。)
【化6】
【化7】
(式中、RおよびRは相互に独立であり、ヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数3~40の脂肪族環構造を含む一価の炭化水素基を示す。)
【0019】
このような密着膜形成材料であれば、微細パターンの倒れ抑止効果を有し、かつ、レジスト上層膜のパターン形状、露光感度等を適度に調整することができる。
【0020】
この時、前記一般式(5)が下記一般式(7)で示されるものであることが好ましい。
【化8】
(式中、R10は水素原子又はトリフルオロメチル基を表す。R11はヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数3~35の脂肪族環構造を含む一価の炭化水素基を示す。)
【0021】
このような密着膜形成材料であれば、十分な酸性度を有し、酸拡散を適度に調整することが可能であり、加えてレジスト上層膜由来の残渣低減に効果的な場合がある。
【0022】
また、本発明では、前記(A)樹脂の重量平均分子量が、1,000~30,000であることが好ましい。
【0023】
このような重量平均分子量の範囲の樹脂を含む密着膜形成材料であれば、優れた成膜性を有し、また加熱硬化時の昇華物の発生を抑え、昇華物による装置の汚染を抑制することができる。また、塗布欠陥の発生を抑制できる。
【0024】
また、本発明では、さらに、(E)界面活性剤、(F)架橋剤、(G)可塑剤、および(H)色素のうちから少なくとも1種以上を含有するものであることが好ましい。
【0025】
これらの各種添加剤の有無/選択により、成膜性、埋め込み性、光学特性、昇華物の低減など顧客要求に応じた性能の微調整が可能となり、実用上好ましい。
【0026】
また、本発明では、
被加工基板にパターンを形成する方法であって、
(I-1)前記被加工基板上に、レジスト下層膜を形成する工程、
(I-2)該レジスト下層膜上に、ケイ素含有レジスト中間膜を形成する工程、
(I-3)該ケイ素含有レジスト中間膜上に、上記の密着膜形成材料を塗布後、熱処理することにより密着膜を形成する工程、
(I-4)該密着膜上に、フォトレジスト材料を用いてレジスト上層膜を形成する工程、
(I-5)該レジスト上層膜をパターン露光した後、現像液で現像して、前記レジスト上層膜にパターンを形成する工程、
(I-6)該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして、ドライエッチングで前記密着膜にパターンを転写する工程、
(I-7)該パターンが形成された密着膜をマスクにして、ドライエッチングで前記ケイ素含有レジスト中間膜にパターンを転写する工程、
(I-8)該パターンが転写されたケイ素含有レジスト中間膜をマスクにして、ドライエッチングで前記レジスト下層膜にパターンを転写する工程、及び
(I-9)該パターンが転写されたレジスト下層膜をマスクにして前記被加工基板にドライエッチングでパターンを転写する工程、
を有するパターン形成方法を提供する。
【0027】
また、本発明では、
被加工基板にパターンを形成する方法であって、
(II-1)前記被加工基板上に、レジスト下層膜を形成する工程、
(II-2)該レジスト下層膜上に、ケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、及びケイ素酸化窒化膜から選ばれる無機ハードマスク中間膜を形成する工程、
(II-3)該無機ハードマスク中間膜上に、上記の密着膜形成材料を塗布後、熱処理することにより密着膜を形成する工程、
(II-4)該密着膜上に、フォトレジスト材料を用いてレジスト上層膜を形成する工程、
(II-5)該レジスト上層膜をパターン露光した後、現像液で現像して、前記レジスト上層膜にパターンを形成する工程、
(II-6)該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして、ドライエッチングで前記密着膜にパターンを転写する工程、
(II-7)該パターンが形成された密着膜をマスクにして、ドライエッチングで前記無機ハードマスク中間膜にパターンを転写する工程、
(II-8)該パターンが転写された無機ハードマスク中間膜をマスクにして、ドライエッチングで前記レジスト下層膜にパターンを転写する工程、及び
(II-9)該パターンが転写されたレジスト下層膜をマスクにして前記被加工基板にドライエッチングでパターンを転写する工程、
を有するパターン形成方法を提供する。
【0028】
このように、本発明の密着膜形成材料は、ケイ素含有中間膜(ケイ素含有レジスト中間膜、無機ハードマスク中間膜)上に上記の密着膜を形成した4層レジストプロセスなどの種々のパターン形成方法に好適に用いることができ、これらのパターン形成方法であれば、密着膜形成によりパターン倒れを効果的に緩和でき、レジスト上層膜のフォトリソグラフィーに好適である。
【0029】
この時、前記無機ハードマスク中間膜をCVD法あるいはALD法によって形成することが好ましい。
【0030】
また、本発明では、前記レジスト上層膜に回路パターンを形成する方法として、波長が10nm以上300nm以下の光リソグラフィー、電子線による直接描画、ナノインプリンティングまたはこれらの組み合わせを用いることが好ましい。
【0031】
また、本発明では、現像方法として、アルカリ現像または有機溶剤による現像を用いることが好ましい。
【0032】
本発明では、上記のようなパターン形成方法を用いることで、パターン形成を良好かつ効率的に行うことができる。
【0033】
また、本発明では、前記被加工基板として、半導体装置基板、又は該半導体装置基板上に金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、金属酸化炭化膜及び金属酸化窒化膜のいずれかが成膜されたものを用いることが好ましい。
【0034】
この時、前記金属として、ケイ素、チタン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、クロム、ゲルマニウム、銅、銀、金、アルミニウム、インジウム、ガリウム、ヒ素、パラジウム、鉄、タンタル、イリジウム、コバルト、マンガン、モリブデンまたはこれらの合金を用いることが好ましい。
【0035】
本発明のパターン形成方法であれば、上記のような被加工基板を上記のように加工してパターンを形成することができる。
【0036】
また、本発明では、半導体装置の製造工程で使用される密着層として機能する密着膜の形成方法であって、被加工基板上に上記の密着膜形成材料を回転塗布し、該密着膜形成材料を塗布した基板を100℃以上300℃以下の温度で10~600秒間の範囲で熱処理することにより硬化膜を形成する密着膜の形成方法を提供する。
【0037】
また、本発明では、半導体装置の製造工程で使用される密着層として機能する密着膜の形成方法であって、被加工基板上に上記の密着膜形成材料を回転塗布し、該密着膜形成材料を塗布した基板を酸素濃度0.1%以上21%以下の雰囲気で熱処理することにより硬化膜を形成する密着膜の形成方法を提供する。
【0038】
このような方法により、密着膜形成時の架橋反応を促進させ、レジスト上層膜とのミキシングをより高度に抑制することができる。また、熱処理温度、時間及び酸素濃度を上記範囲の中で適宜調整することにより、用途に適した密着膜のパターンの倒れ抑止効果を有し、かつ、レジスト上層膜のパターン形状調整特性を得ることができる。
【0039】
また、本発明では、半導体装置の製造工程で使用される密着層として機能する密着膜の形成方法であって、被加工基板上に上記の密着膜形成材料を回転塗布し、該密着膜形成材料を塗布した基板を酸素濃度0.1%未満の雰囲気で熱処理することにより硬化膜を形成する密着膜の形成方法を提供する。
【0040】
このような方法により、被加工基板が酸素雰囲気下での加熱に不安定な素材を含む場合であっても、被加工基板の劣化を起こすことなく、密着膜形成時の架橋反応を促進させ、上層膜とのインターミキシングをより高度に抑制することができ有用である。
【発明の効果】
【0041】
以上説明したように、本発明であれば、レジスト上層膜との高い密着性を有し、微細パターンの倒れ抑止効果を有する密着膜形成材料を提供できる。また、この密着膜形成材料は、高い密着性を有し、微細パターンの倒れ抑止効果を有するとともに、レジスト上層膜のパターン形状、露光感度等を適度に調整することが可能である。そのため、例えば、ケイ素含有中間膜上に該密着膜を形成した4層レジストプロセス、といった多層レジストプロセスにおいて極めて有用である。また、本発明の密着膜の形成方法であれば、被加工基板上で十分に硬化し、かつ、レジスト上層膜との高い密着性を有する密着膜を形成することができる。また、本発明のパターン形成方法であれば、多層レジストプロセスにおいて、被加工基板に微細なパターンを高精度で形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明の4層レジストプロセスによるパターン形成方法の一例の説明図である。
図2】実施例における密着性測定方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
上述のように、半導体装置製造工程における多層レジスト法による微細パターニングプロセスにおいて、レジスト上層膜との高い密着性を有し、微細パターンの倒れ抑止効果を有する密着膜形成材料、該材料を用いたパターン形成方法、密着膜の形成方法が求められていた。
【0044】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、多層リソグラフィーにおいて、密着膜形成によるレジスト上層膜との高い密着性を有し、微細パターンの倒れ抑止効果を有する密着膜形成材料、該材料を用いたパターン形成方法の探索を行ってきた。その結果、特定の末端構造を有する樹脂を主成分とする密着膜形成材料、該材料を用いたパターン形成方法、及び密着膜の形成方法が非常に有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0045】
即ち、本発明は、
ケイ素含有中間膜とレジスト上層膜との間に形成される密着膜の密着膜形成材料であって、
(A)下記一般式(1)および下記一般式(2)で示される構造単位を有する樹脂、
(B)熱酸発生剤および、
(C)有機溶剤
を含むものであり、
前記(A)成分において下記一般式(1)で示される構造単位のモル分率が5%以上であり、下記一般式(2)で示される構造単位のモル分率が30%以上であるものである密着膜形成材料である。
【化9】
(式中、Rは水素原子またはメチル基であり、Lは単結合、-C(=O)O-を含む2価の有機基、または-C(=O)NR-を含む2価の有機基を表す。Rは水素原子、または炭素数1~3の直鎖または分岐状のアルキル基を表す。)
【化10】
(式中、Rは、水素原子またはメチル基であり、Rは、下記式(2-1)~(2-3)から選択される基である。)
【化11】
(上記式中、破線は結合手を示す。)
【0046】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0047】
[密着膜形成材料]
本発明では、ケイ素含有中間膜とレジスト上層膜との間に形成される密着膜を与える密着膜形成材料であって、上記密着膜形成材料は、(A)下記一般式(1)および下記一般式(2)で示される構造単位を有する樹脂、(B)熱酸発生剤、および(C)有機溶剤を含むものであり、上記(A)成分において下記一般式(1)で示される構造単位のモル分率が5%以上であり、下記一般式(2)で示される構造単位のモル分率が30%以上であるものである密着膜形成材料を提供する。
【化12】
(式中、Rは水素原子またはメチル基であり、Lは単結合、-C(=O)O-を含む2価の有機基、または-C(=O)NR-を含む2価の有機基を表す。Rは水素原子、または炭素数1~3の直鎖または分岐状のアルキル基を表す。)
【化13】
(式中、Rは、水素原子またはメチル基であり、Rは、下記式(2-1)~(2-3)から選択される基である。)
【化14】
(上記式中、破線は結合手を示す。)
【0048】
なお、本発明の密着膜形成材料において、(A)樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。さらに、上記密着膜形成材料は、上記(A)~(C)成分以外の成分を含んでもよい。以下各成分について説明する。
【0049】
[(A)樹脂]
本発明の密着膜形成材料に含まれる(A)樹脂は、下記一般式(1)および下記一般式(2)で示される構造単位を有するものであり、上記(A)成分において下記一般式(1)で示される構造単位のモル分率が5%以上であり、下記一般式(2)で示される構造単位のモル分率が30%以上であるものである。
【化15】
(式中、Rは水素原子またはメチル基であり、Lは単結合、-C(=O)O-を含む2価の有機基、または-C(=O)NR-を含む2価の有機基を表す。Rは水素原子、または炭素数1~3の直鎖または分岐状のアルキル基を表す。)
【化16】
(式中、Rは、水素原子またはメチル基であり、Rは、下記式(2-1)~(2-3)から選択される基である。)
【化17】
(上記式中、破線は結合手を示す。)
【0050】
上記一般式(1)で表される構造単位は密着性基として機能し、具体的にはカテコール基末端構造がケイ素含有中間膜およびレジスト上層膜と水素結合などの相互作用を起こすことにより密着性が向上すると考えられる。
【0051】
上記一般式(1)中のLの単結合以外の具体例としては以下のものなどを例示できる。
【化18】
【0052】
【化19】
(式中、破線は結合手を示す。)
【0053】
また、上記一般式(1)で表される構造単位が下記一般式(3)で表される構造であることが好ましい。
【化20】
(式中、R、Rは前記と同じである。Lは単結合または炭素数1~2のアルキレン基であり、前記アルキレン基の水素原子が水酸基に置換されても良く、前記アルキレン基を構成するメチレン基がカルボニル基に置換されても良い。)
【0054】
上記一般式(3)で表される構造単位として具体的には下記などを例示することができる。これらの中でも密着性、原料入手の容易さの観点からLが炭素数2のアルキレン基(エチレン基)であるものがとくに好ましい。
【0055】
【化21】
【0056】
上記一般式(2)で表される構造単位は架橋基として機能する。下図のようにエポキシまたはオキセタン構造の硬化時に起こる開環反応により生成する水酸基の相互作用により、レジスト上層膜およびケイ素含有中間膜との密着性を損うことなく硬化性を付与することができる。
【0057】
【化22】
(Rは上記と同じである。)
【0058】
また、上記一般式(2)で表される構造単位として具体的には下記などを例示することができる。
【化23】
(Rは上記と同じである。)
【0059】
また、本発明の密着膜形成材料に含まれる(A)樹脂は、構造単位に上記一般式(1)および上記一般式(2)で示される構造単位を有するものであり、上記一般式(1)または上記一般式(2)で示される構造単位を各々1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0060】
構造単位を複数組み合わせることにより、密着性を向上させ微細パターンの倒れ抑止効果を高めるだけでなく、レジスト上層膜のパターン形状、露光感度等を適度に調整するこが可能となる。
【0061】
さらに本発明においては、(A)樹脂中の上記一般式(1)で示される構造単位のモル分率は5%以上であり、5%以上50%以下であることが好ましく、5%以上30%以下であることがより好ましく、10%以上30%以下が更に好ましい。また、上記一般式(2)で示される構造単位のモル分率は30%以上であり、30%以上95%以下であることが好ましく、40%以上90%以下であることがより好ましく、50%以上90%以下が更に好ましい。このような範囲で構造単位を組み合わせることで硬化性を維持しつつ、密着性を付与することが可能となる。
【0062】
なお、上記一般式(1)および上記一般式(2)で示される構造単位のモル分率が合計で100%にならない場合、樹脂(A)は他の構造単位を含む。その場合の他の構造単位としては、他のアクリル酸エステル、他のメタクリル酸エステル、他のアクリル酸アミド、他のメタクリル酸アミド、クロトン酸エステル、マレイン酸エステル、イタコン酸エステルなどのα,β-不飽和カルボン酸エステル類;メタクリル酸、アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸などのα,β-不飽和カルボン酸類;アクリロニトリル;メタクリロニトリル;5,5-ジメチル-3-メチレン-2-オキソテトラヒドロフランなどのα,β-不飽和ラクトン類;ノルボルネン誘導体、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデセン誘導体などの環状オレフィン類;無水マレイン酸、無水イタコン酸などのα,β-不飽和カルボン酸無水物;アリルエーテル類;ビニルエーテル類;ビニルエステル類;ビニルシラン類に由来するいずれかの構造単位を組み合わせて用いることができる。
【0063】
このような樹脂を含む密着膜形成材料を半導体装置等の製造工程における微細加工に適用される多層レジスト膜形成に用いることで、レジスト上層膜との高い密着性を有し、微細パターンの倒れ抑止効果を有する密着膜を形成するための容易に製造可能な密着膜形成材料、密着膜の形成方法、及びパターン形成方法を提供することが可能となる。
【0064】
上記樹脂は、公知の方法によって、必要に応じて保護基で保護した各単量体を重合させ、その後必要に応じて脱保護反応を行うことで合成することができる。重合反応は、特に限定されないが、好ましくはラジカル重合、アニオン重合である。これらの方法については、特開2004-115630号公報を参考にすることができる。
【0065】
上記樹脂は重量平均分子量(Mw)が1,000~30,000であることが好ましく、5,000~25,000であることがより好ましく、5,000~15,000であることが更に好ましい。Mwが1,000以上であれば優れた成膜性を有し、また加熱硬化時の昇華物の発生を抑え、昇華物による装置の汚染を抑制することができる。一方、Mwが30,000以下であれば、溶剤への溶解性不足による塗布性不良や塗布欠陥の発生を抑制できる。また、上記樹脂は、分子量分布(Mw/Mn)が1.0~3.0であることが好ましく、1.0~2.5であることがより好ましい。なお、本発明においてMw及び分子量分布は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒として用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算測定値である。
【0066】
[(B)熱酸発生剤]
本発明の密着膜形成材料においては、熱による架橋反応を促進させるために(B)熱酸発生剤を添加する。
【0067】
本発明の密着膜形成材料において使用可能な熱酸発生剤(B)としては、
一般式(8)などが挙げられる。
【0068】
【化24】
(式中、Kは非求核性対向イオンを表す。R12、R13、R14、R15はそれぞれ水素原子または炭素数1~12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルケニル基、オキソアルキル基又はオキソアルケニル基、炭素数6~20のアリール基、又は炭素数7~12のアラルキル基又はアリールオキソアルキル基を示し、これらの基の水素原子の一部又は全部がアルコキシ基等によって置換されていてもよい。また、R12とR13、R12とR13とR14とは環を形成してもよく、環を形成する場合には、R12とR13及びR12とR13とR14は炭素数3~10のアルキレン基、又は式中の窒素原子を環の中に有する複素芳香族環を示す。)
【0069】
上記、R12、R13、R14、R15は互いに同一であっても異なっていてもよく、具体的にはアルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロプロピルメチル基、4-メチルシクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等が挙げられる。アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。オキソアルキル基としては、2-オキソシクロペンチル基、2-オキソシクロヘキシル基等が挙げられ、2-オキソプロピル基、2-シクロペンチル-2-オキソエチル基、2-シクロヘキシル-2-オキソエチル基、2-(4-メチルシクロヘキシル)-2-オキソエチル基等を挙げることができる。オキソアルケニル基としては、2-オキソ-4-シクロヘキセニル基、2-オキソ-4-プロペニル基等が挙げられる。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等や、p-メトキシフェニル基、m-メトキシフェニル基、o-メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、p-tert-ブトキシフェニル基、m-tert-ブトキシフェニル基等のアルコキシフェニル基、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、エチルフェニル基、4-tert-ブチルフェニル基、4-ブチルフェニル基、ジメチルフェニル基等のアルキルフェニル基、メチルナフチル基、エチルナフチル基等のアルキルナフチル基、メトキシナフチル基、エトキシナフチル基等のアルコキシナフチル基、ジメチルナフチル基、ジエチルナフチル基等のジアルキルナフチル基、ジメトキシナフチル基、ジエトキシナフチル基等のジアルコキシナフチル基等が挙げられる。アラルキル基としてはベンジル基、フェニルエチル基、フェネチル基等が挙げられる。アリールオキソアルキル基としては、2-フェニル-2-オキソエチル基、2-(1-ナフチル)-2-オキソエチル基、2-(2-ナフチル)-2-オキソエチル基等の2-アリール-2-オキソエチル基等が挙げられる。
【0070】
また、R12、R13、R14、R15が式中の窒素原子を環の中に有する複素芳香族環は、イミダゾール誘導体(例えばイミダゾール、4-メチルイミダゾール、4-メチル-2-フェニルイミダゾール等)、ピラゾール誘導体、フラザン誘導体、ピロリン誘導体(例えばピロリン、2-メチル-1-ピロリン等)、ピロリジン誘導体(例えばピロリジン、N-メチルピロリジン、ピロリジノン、N-メチルピロリドン等)、イミダゾリン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ピリジン誘導体(例えばピリジン、メチルピリジン、エチルピリジン、プロピルピリジン、ブチルピリジン、4-(1-ブチルペンチル)ピリジン、ジメチルピリジン、トリメチルピリジン、トリエチルピリジン、フェニルピリジン、3-メチル-2-フェニルピリジン、4-tert-ブチルピリジン、ジフェニルピリジン、ベンジルピリジン、メトキシピリジン、ブトキシピリジン、ジメトキシピリジン、1-メチル-2-ピリドン、4-ピロリジノピリジン、1-メチル-4-フェニルピリジン、2-(1-エチルプロピル)ピリジン、アミノピリジン、ジメチルアミノピリジン等)、ピリダジン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾリジン誘導体、ピペリジン誘導体、ピペラジン誘導体、モルホリン誘導体、インドール誘導体、イソインドール誘導体、1H-インダゾール誘導体、インドリン誘導体、キノリン誘導体(例えばキノリン、3-キノリンカルボニトリル等)、イソキノリン誘導体、シンノリン誘導体、キナゾリン誘導体、キノキサリン誘導体、フタラジン誘導体、プリン誘導体、プテリジン誘導体、カルバゾール誘導体、フェナントリジン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、1,10-フェナントロリン誘導体、アデニン誘導体、アデノシン誘導体、グアニン誘導体、グアノシン誘導体、ウラシル誘導体、ウリジン誘導体等が例示される。
【0071】
上記、Kの非求核性対向イオンとしては塩化物イオン、臭化物イオン等のハライドイオン、トリフレート、1,1,1-トリフルオロエタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート等のフルオロアルキルスルホネート、トシレート、ベンゼンスルホネート、4-フルオロベンゼンスルホネート、1,2,3,4,5-ペンタフルオロベンゼンスルホネート等のアリールスルホネート、メシレート、ブタンスルホネート等のアルキルスルホネート、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、ビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド、ビス(パーフルオロブチルスルホニル)イミド等のイミド酸、トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、トリス(パーフルオロエチルスルホニル)メチドなどのメチド酸、更には下記一般式(9)に示されるα位がフルオロ置換されたスルホネート、下記一般式(10)に示される、α、β位がフルオロ置換されたスルホネートが挙げられる。
【0072】
【化25】
【化26】
(上記一般式(9)中、R16は水素原子、炭素数1~20の直鎖状、分岐状、環状のアルキル基、アシル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数6~20のアリール基、アリーロキシ基である。上記一般式(10)中、R17は水素原子、炭素数1~20の直鎖状、分岐状、環状のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数6~20のアリール基である。)
【0073】
上記記載の熱酸発生剤としては具体的に下記などを例示することができる。
【化27】
【0074】
上記の熱酸発生剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0075】
熱酸発生剤の添加量は、上記記載の(A)樹脂100質量部に対して好ましくは0.05~50質量部、より好ましくは0.1~10質量部である。0.05質量部以上であれば、酸発生量が少なく、架橋反応が不十分となる恐れが少なく、50質量部以下であれば、上層レジストへ酸が移動することによるミキシング現象が起こる恐れが少ない。
【0076】
[(C)有機溶剤]
本発明の密着膜の形成方法に用いる密着膜形成材料に含まれる(C)有機溶剤としては、上記(A)樹脂、(B)熱酸発生剤、存在する場合には後述の(D)光酸発生剤、その他添加剤等が溶解するものであれば特に制限はない。具体的には、特開2007-199653号公報中の[0091]~[0092]段落に記載されている溶剤などの沸点が180℃未満の溶剤を使用することができる。中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、2-ヘプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン及びこれらのうち2種以上の混合物が好ましく用いられる。
【0077】
有機溶剤の配合量は、密着膜の設定膜厚に応じて調整することが望ましいが、通常、上記記載の(A)樹脂100質量部に対して、100~50,000質量部の範囲である。
【0078】
このような密着膜形成材料であれば、回転塗布で塗布することができ、また前述のような(A)樹脂を含有するため、レジスト上層膜との高い密着性を有し、微細パターンの倒れ抑止効果を有する密着膜を形成するための密着膜形成用組成物となる。
【0079】
[(D)光酸発生剤]
また、本発明の密着膜形成材料は、(D)成分として光酸発生剤を含有することが好ましい。光酸発生剤としては下記一般式(4)で示されるものが好ましい。
【化28】
(式中、R、R及びRは、それぞれ独立にヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数1~10の直鎖状、又は炭素数3~10の分岐状もしくは環状のアルキル基又はアルケニル基を示すか、あるいはヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数6~21のアリール基またはアラルキル基を示す。また、R、R及びRのうちいずれか二つは相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。Yは下記一般式(5)又は下記一般式(6)のいずれかを示す。)
【化29】
【化30】
(式中、RおよびRは相互に独立であり、ヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数3~40の脂肪族環構造を含む一価の炭化水素基を示す。)
【0080】
このとき、上記一般式(5)が下記一般式(7)で示されるものがより好ましい。
【化31】
(式中、R10は水素原子又はトリフルオロメチル基を表す。R11はヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数3~35の脂肪族環構造を含む一価の炭化水素基を示す。)
【0081】
上記一般式(4)中のR、R、およびRとしては、それぞれ独立にヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数1~10の直鎖状、又は炭素数3~10の分岐状もしくは環状のアルキル基又はアルケニル基を示すか、あるいはヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数6~21のアリール基またはアラルキル基である。具体的にはメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロプロピルメチル基、4-メチルシクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基、ナフチル基、チエニル基等のアリール基、ベンジル基、1-フェニルエチル基、2-フェニルエチル基等のアラルキル基等が挙げられ、好ましくはアリール基である。また、これらの基の水素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子といったヘテロ原子と置き換わっていてもよく、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子が介在していてもよく、その結果ヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物、ハロアルキル基等を形成又は介在してもよい。また、R、R及びRのうちいずれか二つは相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。
【0082】
上記一般式(4)中のR、R、RおよびSで表される部分構造の具体例としては、トリフェニルスルホニウム、4-ヒドロキシフェニルジフェニルスルホニウム、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(4-ヒドロキシフェニル)スルホニウム、4-tert-ブトキシフェニルジフェニルスルホニウム、ビス(4-tert-ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(4-tert-ブトキシフェニル)スルホニウム、3-tert-ブトキシフェニルジフェニルスルホニウム、ビス(3-tert-ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(3-tert-ブトキシフェニル)スルホニウム、3,4-ジ-tert-ブトキシフェニルジフェニルスルホニウム、ビス(3,4-ジ-tert-ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(3,4-ジ-tert-ブトキシフェニル)スルホニウム、ジフェニル(4-チオフェノキシフェニル)スルホニウム、4-tert-ブトキシカルボニルメチルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、トリス(4-tert-ブトキシカルボニルメチルオキシフェニル)スルホニウム、(4-tert-ブトキシフェニル)ビス(4-ジメチルアミノフェニル)スルホニウム、トリス(4-ジメチルアミノフェニル)スルホニウム、2-ナフチルジフェニルスルホニウム、(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)ジフェニルスルホニウム、(4-n-ヘキシルオキシ-3,5-ジメチルフェニル)ジフェニルスルホニウム、ジメチル(2-ナフチル)スルホニウム、4-ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウム、4-メトキシフェニルジメチルスルホニウム、トリメチルスルホニウム、2-オキソシクロヘキシルシクロヘキシルメチルスルホニウム、トリナフチルスルホニウム、トリベンジルスルホニウム、ジフェニルメチルスルホニウム、ジメチルフェニルスルホニウム、2-オキソ-2-フェニルエチルチアシクロペンタニウム、ジフェニル2-チエニルスルホニウム、4-n-ブトキシナフチル-1-チアシクロペンタニウム、2-n-ブトキシナフチル-1-チアシクロペンタニウム、4-メトキシナフチル-1-チアシクロペンタニウム、2-メトキシナフチル-1-チアシクロペンタニウム等が挙げられる。より好ましくはトリフェニルスルホニウム、4-tert-ブチルフェニルジフェニルスルホニウム、4-tert-ブトキシフェニルジフェニルスルホニウム、トリス(4-tert-ブチルフェニル)スルホニウム、トリス(4-tert-ブトキシフェニル)スルホニウム、ジメチルフェニルスルホニウム等が挙げられる。
【0083】
さらに下記構造で示されるものなども例示できる。
【0084】
【化32】
【0085】
また、上記一般式(4)中のYとしては、上記一般式(5)または上記一般式(6)のいずれかであるがこれらに限定されない。上記一般式(5)又は上記一般式(6)中、R及びRは相互に独立にヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数3~40の脂肪族環構造を含む一価の炭化水素基を示し、好ましくは1-ノルボルニル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基、4-オキソ-1-アダマンチル基である。
【0086】
更に、上記一般式(5)が上記一般式(7)で示されるものであることが好ましい。上記一般式(7)中、R10は水素原子又はトリフルオロメチル基を表し、好ましくはトリフルオロメチル基である。R11はヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数3~35の脂肪族環構造を含む一価の炭化水素基を示し、好ましくは1-ノルボルニル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基、4-オキソ-1-アダマンチル基である。
【0087】
上記一般式(5)、(6)、(7)で示されるY-としては、具体的には以下のものを例示することができるが、これらに限定されない。
【0088】
【化33】
【0089】
【化34】
【0090】
【化35】
【0091】
【化36】
【0092】
【化37】
【0093】
【化38】
【0094】
【化39】
【0095】
【化40】
【0096】
上記(D)光酸発生剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることでレジスト上層膜のパターン形状、露光感度等を適度に調整することができる。(D)光酸発生剤を添加する場合の添加量は、上記(A)樹脂100質量部に対して好ましくは0.5質量部~20質量部であり、より好ましくは1~15質量部である。(D)光酸発生剤の添加量が上記範囲内であれば解像性が良好であり、レジスト現像後又は剥離時において欠陥要因となる異物の問題が生じる恐れがない。
【0097】
[その他の添加剤]
本発明の密着膜形成材料には、上記(A)~(D)成分の他に、さらに(E)界面活性剤、(F)架橋剤、(G)可塑剤および(H)色素のうち1種以上を含有することができる。以下各成分について説明する。
【0098】
[(E)界面活性剤]
本発明の密着膜形成材料には、スピンコーティングにおける塗布性を向上させるために(E)界面活性剤を添加することができる。界面活性剤としては、例えば、特開2009-269953号公報中の[0142]~[0147]記載のものを用いることができる。界面活性剤を添加する場合の添加量は、上記(A)樹脂100質量部に対して好ましくは0.001~20質量部、より好ましくは0.01~10質量部である。
【0099】
[(F)架橋剤]
また、本発明の密着膜形成材料には、硬化性を高め、レジスト上層膜とのインターミキシングを更に抑制するために、(F)架橋剤を添加することもできる。架橋剤としては、特に限定されることはなく、公知の種々の系統の架橋剤を広く用いることができる。一例として、メラミン系架橋剤、グリコールウリル系架橋剤、ベンゾグアナミン系架橋剤、ウレア系架橋剤、β-ヒドロキシアルキルアミド系架橋剤、イソシアヌレート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、フェノール系架橋剤(多核フェノール系架橋剤)を例示できる。
【0100】
上記(F)架橋剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができ、架橋剤を添加する場合の添加量は、上記(A)樹脂100質量部に対して好ましくは5~50質量部であり、より好ましくは10~40質量部である。添加量が5質量部以上であれば十分な硬化性を発現し、レジスト上層膜とのインターミキシングを抑制することができる。一方、添加量が50質量部以下であれば、組成物中の(A)樹脂の比率が低くなることによる密着性劣化の恐れがない。
【0101】
メラミン系架橋剤として、具体的には、ヘキサメトキシメチル化メラミン、ヘキサブトキシメチル化メラミン、これらのアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体を例示できる。グリコールウリル系架橋剤として、具体的には、テトラメトキシメチル化グリコールウリル、テトラブトキシメチル化グリコールウリル、これらのアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体を例示できる。ベンゾグアナミン系架橋剤として、具体的には、テトラメトキシメチル化ベンゾグアナミン、テトラブトキシメチル化ベンゾグアナミン、これらのアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体を例示できる。ウレア系架橋剤として、具体的には、ジメトキシメチル化ジメトキシエチレンウレア、このアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体を例示できる。β-ヒドロキシアルキルアミド系架橋剤として具体的には、N,N,N’,N’-テトラ(2-ヒドロキシエチル)アジピン酸アミドを例示できる。イソシアヌレート系架橋剤として具体的には、トリグリシジルイソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートを例示できる。アジリジン系架橋剤として具体的には、4,4’-ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、2,2-ビスヒドロキシメチルブタノール-トリス[3-(1-アジリジニル)プロピオナート]を例示できる。オキサゾリン系架橋剤として具体的には、2,2’-イソプロピリデンビス(4-ベンジル-2-オキサゾリン)、2,2’-イソプロピリデンビス(4-フェニル-2-オキサゾリン)、2,2’-メチレンビス4,5-ジフェニル-2-オキサゾリン、2,2’-メチレンビス-4-フェニル-2-オキサゾリン、2,2’-メチレンビス-4-tertブチル-2-オキサゾリン、2,2’-ビス(2-オキサゾリン)、1,3-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、1,4-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、2-イソプロペニルオキサゾリン共重合体を例示できる。エポキシ系架橋剤として具体的には、ジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ポリ(メタクリル酸グリシジル)、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテルを例示できる。
【0102】
多核フェノール系架橋剤としては、具体的には下記一般式(12)で示される化合物を例示することができる。
【化41】
(式中、Qは単結合、又は、炭素数1~20のq価の炭化水素基である。R18は水素原子、又は、炭素数1~20のアルキル基である。qは1~5の整数である。)
【0103】
Qは単結合、又は、炭素数1~20のq価の炭化水素基である。qは1~5の整数であり、2または3であることがより好ましい。Qとしては具体的には、メタン、エタン、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルペンタン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、エチルイソプロピルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン、メチルナフタレン、エチルナフタレン、エイコサンを例示できる。R18は水素原子、又は、炭素数1~20のアルキル基である。炭素数1~20のアルキル基として具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、エチルヘキシル基、デシル基、エイコサニル基を例示でき、水素原子またはメチル基が好ましい。
【0104】
上記一般式(12)で示される化合物の例として、具体的には下記の化合物を例示できる。この中でも密着膜の硬化性および膜厚均一性向上の観点からトリフェノールメタン、トリフェノールエタン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、トリス(4-ヒドロキシフェニル)-1-エチル-4-イソプロピルベンゼンのヘキサメトキシメチル化体が好ましい。
【0105】
【化42】
【0106】
【化43】
【0107】
[(G)可塑剤]
また、本発明の密着膜形成材料には、可塑剤を添加することができる。可塑剤としては、特に限定されることはなく、公知の種々の系統の可塑剤を広く用いることができる。一例として、フタル酸エステル類、アジピン酸エステル類、リン酸エステル類、トリメリット酸エステル類、クエン酸エステル類などの低分子化合物、ポリエーテル系、ポリエステル系、特開2013-253227記載のポリアセタール系重合体などのポリマーを例示できる。可塑剤を添加する場合の添加量は、上記(A)樹脂100質量部に対して好ましくは5~500質量部、より好ましくは10~200質量部である。
【0108】
[(H)色素]
また、本発明の密着膜形成材料には、多層リソグラフィーのパターニングの際の解像性を更に向上させるために、色素を添加することができる。色素としては、露光波長において適度な吸収を有する化合物であれば特に限定されることはなく、公知の種々の化合物を広く用いることができる。一例として、ベンゼン類、ナフタレン類、アントラセン類、フェナントレン類、ピレン類、イソシアヌル酸類、トリアジン類を例示できる。色素を添加する場合の添加量は、上記(A)樹脂100質量部に対して好ましくは0.01~10質量部、より好ましくは0.1~5質量部である。
【0109】
また、本発明の密着膜形成材料は、レジスト下層膜及びケイ素含有中間膜を用いた4層レジストプロセス等といった多層レジストプロセス用密着膜材料として、極めて有用である。
【0110】
上記ケイ素含有中間膜は、後述するパターン形成方法に応じて、ケイ素含有レジスト中間膜、又は無機ハードマスク中間膜とすることができる。上記無機ハードマスク中間膜は、ケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、及びケイ素酸化窒化膜から選ばれることが好ましい。
【0111】
[密着膜の形成方法]
本発明では、上述の密着膜形成材料を用い、半導体装置製造工程における多層レジスト法による微細パターニングプロセスにおいて、レジスト上層膜との高い密着性を有し、微細パターンの倒れ抑止効果を有する密着膜を形成する方法を提供する。
【0112】
本発明の密着膜の形成方法では、上記の密着膜形成材料を、スピンコート(回転塗布)法等で被加工基板上にコーティングする。スピンコート後、有機溶媒を蒸発させ、レジスト上層膜やケイ素含有中間膜とのインターミキシング防止のため、架橋反応を促進させるためのベーク(熱処理)を行う。ベークは100℃以上300℃以下、10~600秒の範囲内で行うことが好ましく、より好ましくは200℃以上250℃以下、10~300秒の範囲内で行う。密着膜へのダメージやウエハーの変形への影響を考えると、リソグラフィーのウエハープロセスでの加熱温度の上限は、300℃以下とすることが好ましく、より好ましくは250℃以下である。
【0113】
また、本発明の密着膜の形成方法では、被加工基板上に本発明の密着膜形成材料を、上記同様スピンコート法等でコーティングし、該密着膜形成材料を、酸素濃度0.1%以上21%以下の雰囲気中で焼成して硬化させることにより密着膜を形成することもできる。本発明の密着膜形成材料をこのような酸素雰囲気中で焼成することにより、十分に硬化した膜を得ることができる。
【0114】
ベーク中の雰囲気としては空気中のみならず、N、Ar、He等の不活性ガスを封入してもよい。この時、酸素濃度0.1%未満の雰囲気とすることができる。また、ベーク温度等は、上記と同様とすることができる。被加工基板が酸素雰囲気下での加熱に不安定な素材を含む場合であっても、被加工基板の劣化を起こすことなく、密着膜形成時の架橋反応を促進させることができる。
【0115】
[パターン形成方法]
本発明では、前述のような密着膜形成材料を用いた4層レジストプロセスによるパターン形成方法として、以下の2つの方法を提供する。
【0116】
1つ目の方法は、まず、
被加工基板にパターンを形成する方法であって、少なくとも、
(I-1)被加工基板上に有機膜材料を用いてレジスト下層膜を形成し、
(I-2)該レジスト下層膜上にケイ素原子を含有するレジスト中間層膜材料を用いてケイ素含有中間膜(ケイ素含有レジスト中間膜)を形成し、
(I-3)該ケイ素含有レジスト中間膜上に本発明の密着膜形成材料を塗布後、熱処理することにより密着膜を形成し、
(I-4)該密着膜上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料(フォトレジスト材料)を用いてレジスト上層膜を形成して多層レジスト膜とし、
(I-5)上記レジスト上層膜のパターン回路領域を露光(パターン露光)した後、現像液で現像して、上記レジスト上層膜にパターンを形成し、
(I-6)該パターンが形成されたレジスト上層膜をエッチングマスクにして上記密着膜をドライエッチングして密着膜にパターンを転写し、
(I-7)該パターンが形成された密着膜をエッチングマスクにして上記ケイ素含有レジスト中間膜をドライエッチングしてケイ素含有レジスト中間膜にパターンを転写し、
(I-8)該パターンが形成されたケイ素含有レジスト中間膜をエッチングマスクにして上記レジスト下層膜をドライエッチングしてレジスト下層膜にパターンを転写し、
(I-9)さらに、該パターンが形成されたレジスト下層膜をエッチングマスクにして上記被加工基板をドライエッチングして上記被加工基板にパターンを転写するパターン形成方法を提供する。
【0117】
上記4層レジストプロセスのケイ素含有レジスト中間膜としては、ポリシルセスキオキサンベースの中間膜も好ましく用いられる。ケイ素含有レジスト中間膜に反射防止効果を持たせることによって、反射を抑えることができる。特に193nm露光用としては、レジスト下層膜として芳香族基を多く含み基板エッチング耐性が高い材料を用いると、k値が高くなり、基板反射が高くなるが、ケイ素含有レジスト中間膜で反射を抑えることによって基板反射を0.5%以下にすることができる。反射防止効果があるケイ素含有レジスト中間膜としては、248nm、157nm露光用としてはアントラセン、193nm露光用としてはフェニル基又はケイ素-ケイ素結合を有する吸光基をペンダントし、酸あるいは熱で架橋するポリシルセスキオキサンが好ましく用いられる。
【0118】
この場合、CVD法よりもスピンコート法によるケイ素含有レジスト中間膜の形成の方が、簡便でコスト的なメリットがある。
【0119】
また、2つ目の方法として、ケイ素含有中間膜として無機ハードマスク中間膜を形成してもよく、この場合には、
被加工基板にパターンを形成する方法であって、少なくとも、
(II-1)被加工基板上に有機膜材料を用いてレジスト下層膜を形成し、
(II-2)該レジスト下層膜上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、及びケイ素酸化窒化膜から選ばれる無機ハードマスク中間膜を形成し、
(II-3)該無機ハードマスク中間膜上に、本発明の密着膜形成材料を塗布後、熱処理することにより密着膜を形成し、
(II-4)該密着膜上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料(フォトレジスト材料)を用いてレジスト上層膜を形成し、
(II-5)上記レジスト上層膜のパターン回路領域を露光(パターン露光)した後、現像液で現像して、上記レジスト上層膜にパターンを形成し、
(II-6)該パターンが形成されたレジスト上層膜をエッチングマスクにして上記密着膜をドライエッチングして密着膜パターンを転写し、
(II-7)該パターンが形成された密着膜をエッチングマスクにして上記無機ハードマスク中間膜をドライエッチングして無機ハードマスク中間膜にパターンを転写し、
(II-8)該パターンが形成された無機ハードマスク中間膜をエッチングマスクにして上記レジスト下層膜をドライエッチングしてレジスト下層膜にパターンを転写し、
(II-9)さらに、該パターンが形成されたレジスト下層膜をエッチングマスクにして上記被加工基板をドライエッチングして上記被加工基板にパターンを転写することができる。
【0120】
レジスト下層膜としては特に限定されず、公知のものをいずれも用いることができる。例えば、レジスト下層膜材料を、スピンコート法などを用いて被加工基板上にコーティングする。スピンコート後、溶媒を蒸発し、ケイ素含有中間膜とのミキシング防止のため、架橋反応を促進させるためにベークを行う。ベークは100℃以上600℃以下の温度範囲内で行い、10秒~600秒間、好ましくは10~300秒の範囲内で行う。ベーク温度100℃以上では、硬化が十分に進み、上層膜又は中間膜とのミキシングを生じることがない。ベーク温度600℃以下とすれば、ベース樹脂の熱分解を抑制でき、膜厚が減少せず、膜表面が均一になる。また、レジスト下層膜の厚さは適宜選定されるが、2~20,000nm、特に50~15,000nmとすることが好ましい。
【0121】
上記のように、レジスト下層膜の上に無機ハードマスク中間膜を形成する場合は、CVD法やALD法等で、ケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、及びケイ素酸化窒化膜(SiON膜)を形成できる。例えばケイ素窒化膜の形成方法としては、特開2002-334869号公報、国際公開第2004/066377号に記載されている。無機ハードマスク中間膜の膜厚は5~200nmが好ましく、より好ましくは10~100nmである。また、無機ハードマスク中間膜としては、反射防止膜としての効果が高いSiON膜が最も好ましく用いられる。SiON膜を形成する時の基板温度は300~500℃となるために、レジスト下層膜としては300~500℃の温度に耐える必要がある。
【0122】
上記4層レジストプロセスにおけるレジスト上層膜は、ポジ型でもネガ型でもどちらでもよく、通常用いられているフォトレジスト組成物と同じものを用いることができる。フォトレジスト組成物をスピンコート後、プリベークを行うが、60~180℃で10~300秒の範囲が好ましい。その後常法に従い、露光を行い、さらに、ポストエクスポジュアーベーク(PEB)、現像を行い、レジスト上層膜パターンを得る。なお、レジスト上層膜の厚さは特に制限されないが、30~500nmが好ましく、特に50~400nmが好ましい。
【0123】
レジスト上層膜に回路パターン(レジスト上層膜パターン)を形成する。回路パターンの形成においては、波長が10nm以上300nm以下の光を用いたリソグラフィー、電子線による直接描画、ナノインプリンティング、又はこれらの組み合わせによって回路パターンを形成することが好ましい。
【0124】
なお、露光光としては、波長300nm以下の高エネルギー線、具体的には遠紫外線、KrFエキシマレーザー光(248nm)、ArFエキシマレーザー光(193nm)、Fレーザー光(157nm)、Krレーザー光(146nm)、Arレーザー光(126nm)、3~20nmの軟X線(EUV)、電子ビーム(EB)、イオンビーム、X線等を挙げることができる。特に超微細パターンを加工する露光光であるArFエキシマレーザー光(193nm)、3~20nmの軟X線(EUV)、電子ビーム(EB)を用いることが好ましい。
【0125】
また、回路パターンの形成中の現像方法において、アルカリ現像又は有機溶剤によって回路パターンを現像することが好ましい。
【0126】
次に、得られたレジスト上層膜パターンをマスクにしてエッチングを行う。4層レジストプロセスにおける密着膜のエッチングは、酸素系のガスを用いてレジスト上層膜パターンをマスクにして行う。これにより、密着膜パターンを形成する。
【0127】
次いで、得られた密着膜パターンをマスクにしてエッチングを行う。ケイ素含有レジスト中間膜や無機ハードマスク中間膜のエッチングは、フロン系のガスを用いて密着膜パターンをマスクにして行う。これにより、ケイ素含有レジスト中間膜パターンや無機ハードマスク中間膜パターンを形成する。
【0128】
密着膜のエッチングはケイ素含有中間膜のエッチングに先立って連続して行われる場合もあるし、密着膜だけのエッチングを行ってからエッチング装置を変える等してケイ素含有中間膜のエッチングを行うこともできる。
【0129】
次いで、得られたケイ素含有レジスト中間膜パターンや無機ハードマスク中間膜パターンをマスクにして、レジスト下層膜のエッチング加工を行う。
【0130】
次の被加工基板のエッチングも、常法によって行うことができ、例えば被加工基板がSiO、SiN、シリカ系低誘電率絶縁膜であればフロン系ガスを主体としたエッチング、p-SiやAl、Wでは塩素系、臭素系ガスを主体としたエッチングを行う。基板加工をフロン系ガスでエッチングした場合、4層レジストプロセスにおけるケイ素含有中間膜パターンは基板加工と同時に剥離される。塩素系、臭素系ガスで基板をエッチングした場合は、ケイ素含有中間膜パターンの剥離は基板加工後にフロン系ガスによるドライエッチング剥離を別途行う必要がある。
【0131】
なお、被加工基板としては、特に限定されるものではなく、半導体装置基板、又は該半導体装置基板上に金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、金属酸化炭化膜及び金属酸化窒化膜のいずれかが成膜されたものを用いることができる。上記金属として、ケイ素、チタン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、クロム、ゲルマニウム、銅、銀、金、アルミニウム、インジウム、ガリウム、ヒ素、パラジウム、鉄、タンタル、イリジウム、コバルト、マンガン、モリブデンまたはこれらの合金を用いることができる。
【0132】
具体的には、Si、α-Si、p-Si、SiO、SiN、SiON、W、TiN、Al等の基板や、該基板上に被加工層が成膜されたもの等が用いられる。被加工層としては、Si、SiO、SiON、SiN、p-Si、α-Si、W、W-Si、Al、Cu、Al-Si等種々のLow-k膜及びそのストッパー膜が用いられ、通常50~10,000nm、特に100~5,000nmの厚さに形成し得る。なお、被加工層を成膜する場合、基板と被加工層とは、異なる材質のものが用いられる。
【0133】
4層レジストプロセスの一例について、図1を用いて具体的に示すと下記の通りである。4層レジストプロセスの場合、図1(A)に示したように、基板1の上に積層された被加工層2上に有機膜材料を用いてレジスト下層膜3を形成した後、ケイ素含有中間膜4を形成し、その上に本発明の密着膜形成材料を用いて密着膜5を形成し、その上にレジスト上層膜6を形成する。
【0134】
次いで、図1(B)に示したように、レジスト上層膜の露光部分(所用部分)7を露光し、PEB及び現像を行ってレジスト上層膜パターン6aを形成する(図1(C))。この得られたレジスト上層膜パターン6aをマスクとし、O系ガスを用いて密着膜5をエッチング加工して密着膜パターン5aを形成する。(図1(D))。この得られた密着膜パターン5aをマスクとし、CF系ガスを用いてケイ素含有中間膜4をエッチング加工してケイ素含有中間膜パターン4aを形成する(図1(E))。密着膜パターン5aを除去後、この得られたケイ素含有中間膜パターン4aをマスクとし、O系ガスを用いてレジスト下層膜3をエッチング加工し、レジスト下層膜パターン3aを形成する(図1(F))。さらにケイ素含有中間膜パターン4aを除去後、レジスト下層膜パターン3aをマスクに被加工層2をエッチング加工し、パターン2aを形成する(図1(G))。
【0135】
このように、本発明のパターン形成方法であれば、多層レジストプロセスにおいて、被加工基板に微細なパターンを高精度で形成することができる。
【実施例
【0136】
以下、合成例、実施例、及び比較例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、分子量の測定法は具体的に下記の方法により行った。テトラヒドロフランを溶離液(溶媒)としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を求め、分散度(Mw/Mn)を求めた。
【0137】
密着膜形成材料用の(A)樹脂として用いる重合体(A1)~(A8)及び比較重合体(R1)~(R9)の合成には、下記に示す単量体(B1)~(B12)を用いた。
【化44】
【0138】
[合成例1]重合体(A1)の合成
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)37.5gを窒素雰囲気下80℃にて加熱撹拌した。これに、(B1)7.22g、(B6)42.78g、PGMEA82.5gの混合物と、ジメチル2,2-アゾビス(2-メチルプロピオネート)4.07gとPGMEA30.0gの混合物を、同時かつ別々に、2時間かけて添加した。さらに24時間加熱撹拌後、室温まで冷却し、目的とする重合体(A1)のPGMEA溶液を得た。分析の結果、重合体(A1)の重量平均分子量(Mw)は14,300、分散度(Mw/Mn)は1.95であった。
【化45】
【0139】
[合成例2~17]重合体(A2)~(A8)および比較重合体(R1)~(R9)の合成
使用する原料単量体の種類及びモル比率を各重合体の構造に合わせて変更した以外は、合成例1に準じた方法により、以下に示されるような重合体(A2)~(A8)および比較重合体(R1)~(R9)を生成物として得た。また、GPCより求めた重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を示す。
【0140】
【化46】
【0141】
【化47】
【0142】
密着膜形成材料(AL-1~14、比較AL-1~9)の調製
密着膜形成材料及び比較材料の調製には、上記重合体(A1)~(A8)及び上記比較重合体(R1)~(R9)、熱酸発生剤として(T1)~(T3)、光酸発生剤として(P1)~(P3)、架橋剤として(X1)を用いた。PF636(OMNOVA社製)0.1質量%を含むプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を用い表1に示す割合で溶解させた後、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって密着膜形成材料(AL-1~14、比較AL-1~9)をそれぞれ調製した。
【0143】
(熱酸発生剤)
【化48】
【0144】
(光酸発生剤)
【化49】
【0145】
(架橋剤)
【化50】
【0146】
【表1】
【0147】
実施例1 溶剤耐性評価(実施例1-1~1-14、比較例1-1~1-9)
上記で調製した密着膜形成材料(AL-1~14、比較AL-1~9)をシリコン基板上に塗布し、220℃で60秒焼成した後、膜厚を測定し、その上にPGMEA溶剤をディスペンスし、30秒間放置しスピンドライ、100℃で60秒間ベークしてPGMEA溶剤を蒸発させ、膜厚を再度測定しPGMEA処理前後の膜厚差を求めることにより溶剤耐性を評価した。結果を表2に示す。
【0148】
【表2】
【0149】
表2に示されるように、本発明の密着膜形成材料(AL-1~14)を使用した実施例1-1~1-14では、溶剤処理による膜厚の減少がほとんどなく溶剤耐性良好な膜が得られることが分かる。一方、架橋に寄与する上記一般式(2)で表される構造単位の部位がない比較例1-6および少ない比較例1-7では十分な溶剤耐性を確保できていないことが分かる。また、上記一般式(1)で表される構造単位の導入率が少ない比較例1-8では残膜率がやや低めな傾向となった。
【0150】
実施例2 密着性試験(実施例2-1~2-14、比較例2-1~2-9)
上記の密着膜形成材料(AL-1~14、比較AL-1~9)を、SiOウエハー基板上に塗布し、ホットプレートを用いて大気中、220℃で60秒焼成することにより膜厚200nmの密着膜を形成した。この密着膜付のウエハーを、1×1cmの正方形に切り出し、専用治具を用いて切り出したウエハーにエポキシ接着剤付きのアルミピンを取り付けた。その後、オーブンを用いて150℃で1時間、加熱しアルミピンを基板に接着させた。室温まで冷却した後、薄膜密着強度測定装置(Sebastian Five-A)を用いて抵抗力により、初期の密着性を評価した。
【0151】
図2に密着性測定方法を示す説明図を示す。図2の8はシリコンウエハー(基板)、9は硬化皮膜、10は接着剤付きアルミピン、11は支持台、12はつかみであり、13は引張方向を示す。密着力は12点測定の平均値であり、数値が高いほど密着膜の基板に対する密着性が高い。得られた数値を比較することにより密着性を評価した。その結果を表3に示す。
【0152】
【表3】
【0153】
表3に示されるように、本発明の密着膜形成材料(AL-1~14)を使用した実施例2-1~2-14は、上記一般式(1)で表される構造単位の寄与により、類似構造かつ水酸基数が1つの構造を導入した比較例2-1~25に比べ密着力が優れることがわかる。また、上記一般式(1)で表される構造単位の導入量が少ない比較AL-8を用いた比較例2-8においては十分な密着力が発現していないことがわかる。また、比較AL-6、7を用いた比較例2-6、2-7の結果から上記一般式(2)で表される構造単位も密着力向上に寄与することがわかる。さらに比較AL-9においては架橋剤を用いているため硬化方法が異なるが、重合体中に含まれる水酸基が多いにも関わらず密着力が低いことがわかる。この結果から本発明の上記一般式(1)および上記一般式(2)で表される構造単位を適切な割合で組み合わせることで密着力向上に有効に機能することがわかる。
【0154】
実施例3 パターン形成試験(実施例3-1~3-14、比較例3-1~3-7)
シリコンウエハー基板上に、信越化学工業(株)製スピンオンカーボンODL-301(カーボン含有量88質量%)を塗布して350℃で60秒間ベークして膜厚200nmのレジスト下層膜を形成した。その上にCVD-SiONハードマスク中間膜を形成し、更に上記密着膜形成材料(AL-1~14、比較AL-1~5、8、9)を塗布して220℃で60秒間ベークして膜厚20nmの密着膜を形成し、その上にレジスト上層膜材料のArF用単層レジストを塗布し、105℃で60秒間ベークして膜厚100nmのレジスト上層膜を形成した。レジスト上層膜上に液浸保護膜材料(TC-1)を塗布し90℃で60秒間ベークし膜厚50nmの保護膜を形成した。なお、比較AL-6、7については実施例1の結果の通り、溶剤耐性が確保できないためレジスト上層膜を塗布することができず、そのためパターン形成試験を実施することができなかった。
【0155】
レジスト上層膜材料(ArF用単層レジスト)としては、ポリマー(PRP-A1)、酸発生剤(PAG1)、塩基性化合物(Amine1)を、FC-430(住友スリーエム(株)製)0.1質量%を含む溶媒中に表4の割合で溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって調製した。
【0156】
【表4】
【0157】
レジスト用ポリマー:PRP-A1
分子量(Mw)=7,800
分散度(Mw/Mn)=1.88
【化51】
【0158】
酸発生剤:PAG1
【化52】
【0159】
塩基性化合物:Amine1
【化53】
【0160】
液浸保護膜材料(TC-1)としては、保護膜ポリマー(PP1)を有機溶剤中に表5の割合で溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって調製した。
【0161】
【表5】
【0162】
保護膜ポリマー:PP1
分子量(Mw)=8,800
分散度(Mw/Mn)=1.69
【化54】
【0163】
次いで、ArF液浸露光装置((株)ニコン製;NSR-S610C,NA1.30、σ0.98/0.65、35度ダイポールs偏光照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク)で露光し、100℃で60秒間ベーク(PEB)し、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で30秒間現像し、40nmの1:1ラインアンドスペースパターンを得た。このパターンを対象とし、電子顕微鏡にて断面形状およびパターンラフネスを観察した。また、露光量を大きくすることでライン寸法を細らせた場合にラインが倒れずに解像する最小寸法を求め、倒れ限界(nm)とした。数値が小さいほど倒れ耐性が高く好ましい。
【0164】
得られたパターン断面形状を(株)日立製作所製電子顕微鏡(S-4700)で、パターンラフネスを(株)日立ハイテクノロジーズ製電子顕微鏡(CG4000)にて評価した。その結果を表6に示す。
【0165】
【表6】
【0166】
表6に示されるように、本発明の密着膜形成材料(AL-1~14)を使用した実施例3-1~3-14は比較例3-1~3-7に比べ優れた倒れ抑制性能を示し、より微細なパターン形成が可能であることが分かる。さらに、実施例3-9~3-14のように光酸発生剤を適宜調整することにより光酸発生剤を含まない実施例3-1、2、4、6~8よりもパターンラフネスを改善できることが分かる。一方で、本発明の密着膜形成材料に含まれる構造単位を十分に含まず密着力の低い比較例3-1~3-7はパターン倒れ抑制性能が低く、また、本発明とは異なり架橋剤を添加して架橋剤の働きのみによって硬化させた比較例3-7においてはパターンの断面形状の劣化も観察された。
【0167】
以上のことから、本発明の密着膜形成材料であれば、レジスト上層膜との高い密着性を有し、微細パターンの倒れ抑止効果を有するため、多層レジスト法に用いる密着膜材料として極めて有用であり、またこれを用いた本発明のパターン形成方法であれば、被加工基板に微細なパターンを高精度で形成することができる。
【0168】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0169】
1…基板、 2…被加工層、 2a…パターン(被加工層に形成されるパターン)、
3…レジスト下層膜、 3a…レジスト下層膜パターン、
4…ケイ素含有中間膜、 4a…ケイ素含有中間膜パターン、
5…密着膜、 5a…密着膜パターン、
6…レジスト上層膜、 6a…レジスト上層膜パターン、 7…露光部分、
8…シリコンウエハー、 9…硬化皮膜、 10…接着剤付きアルミピン、
11…支持台、 12…つかみ、 13…引張方向。
図1
図2