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特許7586823パイ用澱粉組成物、パイ用組成物およびそれらを含むパイ用生地
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】パイ用澱粉組成物、パイ用組成物およびそれらを含むパイ用生地
(51)【国際特許分類】
   A21D 2/18 20060101AFI20241112BHJP
   A21D 13/16 20170101ALI20241112BHJP
   A21D 13/31 20170101ALI20241112BHJP
   A21D 13/60 20170101ALI20241112BHJP
【FI】
A21D2/18
A21D13/16
A21D13/31
A21D13/60
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2021536914
(86)(22)【出願日】2020-07-15
(86)【国際出願番号】 JP2020027452
(87)【国際公開番号】W WO2021020120
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】P 2019142381
(32)【優先日】2019-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J-オイルミルズ
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100128761
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 恭子
(72)【発明者】
【氏名】三崎 順子
(72)【発明者】
【氏名】長澤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】曽我 貞夫
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-103392(JP,A)
【文献】特開2015-136311(JP,A)
【文献】特開2012-213367(JP,A)
【文献】特開2017-018018(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アセチル基を有しており、冷水膨潤度が1超15未満である加工澱粉を含み、前記加工澱粉のアセチル基含量が、0.3質量%超2.5質量%以下である、練りパイ用澱粉組成物。
【請求項2】
前記加工澱粉の冷水膨潤度が1超5未満である、請求項1に記載の練りパイ用澱粉組成物。
【請求項3】
前記加工澱粉が、アセチル化澱粉またはアセチル化リン酸架橋澱粉である、請求項1または2に記載の練りパイ用澱粉組成物。
【請求項4】
請求項1からのいずれか一項に記載の練りパイ用澱粉組成物を、前記加工澱粉質量換算で0.3質量%以上40質量%以下含む、練りパイ用組成物。
【請求項5】
練りパイ用生地であって、前記生地中に、請求項に記載の練りパイ用組成物を、前記加工澱粉質量換算で0.1質量%以上20質量%以下含む、練りパイ用生地。
【請求項6】
可塑性油脂組成物を15質量%以上50質量%以下含む、請求項に記載の練りパイ用生地。
【請求項7】
前記可塑性油脂組成物がチップ状可塑性油脂組成物を含む、請求項に記載の練りパイ用生地。
【請求項8】
請求項からのいずれか一項に記載の練りパイ用生地の製造方法であって、
前記練りパイ用組成物を準備する工程と、
前記練りパイ用組成物、前記可塑性油脂組成物および水を混合する工程と、
を含む、練りパイ用生地の製造方法。
【請求項9】
請求項からのいずれか一項に記載の練りパイ用生地を加熱調理する工程を含む、練りパイの製造方法。
【請求項10】
前記加熱調理が油ちょうである、請求項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記練りパイが包餡パイであり、前記練りパイ用生地に餡を包む工程を含む、請求項または10に記載の製造方法。
【請求項12】
アセチル基を有しており、冷水膨潤度が5以上15未満である加工澱粉を含み、前記加工澱粉のアセチル基含量が、0.3質量%超2.5質量%以下である、パイ用澱粉組成物。
【請求項13】
前記加工澱粉が、アセチル化澱粉またはアセチル化リン酸架橋澱粉である、請求項12に記載のパイ用澱粉組成物。
【請求項14】
請求項12または13に記載のパイ用澱粉組成物を、前記加工澱粉質量換算で0.3質量%以上40質量%以下含む、パイ用組成物。
【請求項15】
パイ用生地であって、前記生地中に、請求項14に記載のパイ用組成物を、前記加工澱粉質量換算で0.1質量%以上20質量%以下含む、パイ用生地。
【請求項16】
可塑性油脂組成物を15質量%以上50質量%以下含む、請求項15に記載のパイ用生地。
【請求項17】
前記可塑性油脂組成物がチップ状可塑性油脂組成物を含む、請求項16に記載のパイ用生地。
【請求項18】
請求項15から17のいずれか一項に記載のパイ用生地の製造方法であって、
前記パイ用組成物を準備する工程と、
前記パイ用組成物、前記可塑性油脂組成物および水を混合する工程と、
を含む、パイ用生地の製造方法。
【請求項19】
請求項15から17のいずれか一項に記載のパイ用生地の製造方法であって、
前記パイ用組成物を準備する工程と、
前記パイ用組成物および水を混合し、ドウを得る工程と、
前記ドウにシート状可塑性油脂組成物を折り込む工程と、
を含む、パイ用生地の製造方法。
【請求項20】
請求項15から17のいずれか一項に記載のパイ用生地を加熱調理する工程を含む、パイの製造方法。
【請求項21】
前記加熱調理が油ちょうである、請求項20に記載のパイの製造方法。
【請求項22】
パイ用生地に、アセチル基を有しており、冷水膨潤度が1超15未満である加工澱粉を含み、前記加工澱粉のアセチル基含量が、0.3質量%超2.5質量%以下であるパイ用澱粉組成物を、前記生地中に前記加工澱粉質量換算で0.1質量%以上20質量%以下配合することを含む、パイの内層と外層の食感差を付与する方法。
【請求項23】
パイ用生地に、アセチル基を有しており、冷水膨潤度が1超15未満である加工澱粉を含み、前記加工澱粉のアセチル基含量が、0.3質量%超2.5質量%以下であるパイ用澱粉組成物を、前記生地中に前記加工澱粉質量換算で0.1質量%以上20質量%以下配合することを含む、パイの内層にもちっと感を付与する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、練りパイおよび折りパイなどに用いられるパイ用澱粉組成物、パイ用組成物およびそれらを含むパイ用生地などに関する。
【背景技術】
【0002】
パイは、サクサクとした独特の食感を有しており、人気の高い食品である。パイは、小麦粉、水および油脂を含む生地を加熱して得られるが、油脂の加え方によって食感の違いが生まれ、練りパイおよび折りパイとして区別されている。練りパイは、小麦粉、水および可塑性油脂組成物を混合し、生地に小片状の可塑性油脂組成物を分散させ、生地を加熱した時に生地に点在した可塑性油脂組成物が浮き上がることでサクサクとした食感が生まれるものである。一方、折りパイは、小麦粉と水を含むドウにシート状の可塑性油脂組成物を包み込むように積層し、圧延と折り畳みを繰り返すことで、生地内でドウ層と可塑性油脂組成物層とを交互に積層させ、生地を加熱した時に、可塑性油脂組成物が熱せられ、ドウに含まれる水分が蒸発し、その膨張力によって層の一枚一枚が浮き上がることで、サクサク、ホロホロと崩れるような食感が生まれる。
パイの有する独特の食感をより高めるため、生地に種々の添加剤を配合することが提案されている。例えば、特許文献1では、アルファー化したエステル化澱粉を生地に配合することで、生地焼成時に折りパイの浮きの良さと割れの起こり難さを高めることができたことが記載されている。また、特許文献2では、アセチル化澱粉または結晶セルロースを生地に配合することで、生地を焼成後、冷凍保存した後も、焼き上がり直後の折りパイのパリパリとした口当たりを保持できることが記載されている。また、特許文献3では、セルロースを生地に配合することで、生地焼成時に折りパイの膨張性と割れ難さを高めることができたことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-136311号公報
【文献】特開平4-316446号公報
【文献】特開2016-123388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記のような先行技術に関わらず、パイの食感をさらに高め、嗜好性に優れた製品を提供することが望まれている。
ところで、パイの食感と言えば前述のとおり、サクサクとした食感が特徴であるが、パイ内層の食感についてはあまり注目されていなかった。そこで、包餡パイなどの製品のみならず、スティック状パイなどのフィリングを内包しない製品においても、表面である外層側と内層側とで異なる食感を楽しむことができることは新たな魅力となりうる。
このような状況下、表面のサクサクとした食感を損なうことなく、内層側にもちっと感を付与したパイを提供できることが好ましい。パイの外層と内層の食感差を付与することができれば、それぞれの食感がより際立ち、嗜好性の高い製品を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下に示す練りパイ用澱粉組成物、練りパイ用組成物、練りパイ用生地、練りパイ用生地の製造方法、および練りパイの製造方法を提供しようとするものである。
[1]アセチル基を有しており、冷水膨潤度が1超15未満である加工澱粉を含む、練りパイ用澱粉組成物。
[2]前記加工澱粉の冷水膨潤度が1超5未満である、[1]に記載の練りパイ用澱粉組成物。
[3]前記加工澱粉のアセチル基含量が、0.3質量%超2.5質量%以下である、[1]または[2]に記載の練りパイ用澱粉組成物。
[4]前記加工澱粉が、アセチル化澱粉またはアセチル化リン酸架橋澱粉である、[1]から[3]のいずれか一項に記載の練りパイ用澱粉組成物。
[5][1]から[4]のいずれか一項に記載の練りパイ用澱粉組成物を、前記加工澱粉質量換算で0.3質量%以上40質量%以下含む、練りパイ用組成物。
[6]練りパイ用生地であって、前記生地中に[5]に記載の練りパイ用組成物を、前記加工澱粉質量換算で0.1質量%以上20質量%以下含む、練りパイ用生地。
[7]可塑性油脂組成物を15質量%以上50質量%以下含む、[6]に記載の練りパイ用生地。
[8]前記可塑性油脂組成物がチップ状可塑性油脂組成物を含む、[7]に記載の練りパイ用生地。
[9][6]から[8]のいずれか一項に記載の練りパイ用生地の製造方法であって、
前記練りパイ用組成物を準備する工程と、
前記練りパイ用組成物、前記可塑性油脂組成物および水を混合する工程と、
を含む、練りパイ用生地の製造方法。
[10][6]から[8]のいずれか一項に記載の練りパイ用生地を加熱調理する工程を含む、練りパイの製造方法。
[11]前記加熱調理が油ちょうである、[10]に記載の製造方法。
[12]前記練りパイが包餡パイであり、前記練りパイ用生地に餡を包む工程を含む、[10]または[11]に記載の製造方法。
【0006】
また、本発明は、以下に示すパイ用澱粉組成物、パイ用組成物、パイ用生地、パイ用生地の製造方法、およびパイの製造方法を提供しようとするものである。
[13]アセチル基を有しており、冷水膨潤度が5以上15未満である加工澱粉を含む、パイ用澱粉組成物。
[14]前記加工澱粉のアセチル基含量が、0.3質量%超2.5質量%以下である、[13]に記載のパイ用澱粉組成物。
[15]前記加工澱粉が、アセチル化澱粉またはアセチル化リン酸架橋澱粉である、[13]または[14]に記載のパイ用澱粉組成物。
[16][13]から[15]のいずれか一項に記載のパイ用澱粉組成物を、前記加工澱粉質量換算で0.3質量%以上40質量%以下含む、パイ用組成物。
[17]パイ用生地であって、前記生地中に[16]に記載のパイ用組成物を、前記加工澱粉質量換算で0.1質量%以上20質量%以下含む、パイ用生地。
[18]可塑性油脂組成物を15質量%以上50質量%以下含む、[17]に記載のパイ用生地。
[19]前記可塑性油脂組成物がチップ状可塑性油脂組成物を含む、[18]に記載のパイ用生地。
[20][17]から[19]のいずれか一項に記載のパイ用生地の製造方法であって、
前記パイ用組成物を準備する工程と、
前記パイ用組成物、前記可塑性油脂組成物および水を混合する工程と、
を含む、パイ用生地の製造方法。
[21][17]から[19]のいずれか一項に記載のパイ用生地の製造方法であって、
前記パイ用組成物を準備する工程と、
前記パイ用組成物および水を混合し、ドウを得る工程と、
前記ドウにシート状可塑性油脂組成物を折り込む工程と、
を含む、パイ用生地の製造方法。
[22][17]から[19]のいずれか一項に記載のパイ用生地を加熱調理する工程を含む、パイの製造方法。
[23]前記加熱調理が油ちょうである、[22]に記載のパイの製造方法。
【0007】
また、本発明は、以下に示すパイの内層と外層の食感差を付与する方法、およびパイの内層にもちっと感を付与する方法を提供しようとするものである。
[24]パイ用生地に、アセチル基を有しており、冷水膨潤度が1超15未満である加工澱粉を含むパイ用澱粉組成物を、前記生地中に前記加工澱粉質量換算で0.1質量%以上20質量%以下配合することを含む、パイの内層と外層の食感差を付与する方法。
[25]パイ用生地に、アセチル基を有しており、冷水膨潤度が1超15未満である加工澱粉を含むパイ用澱粉組成物を、前記生地中に前記加工澱粉質量換算で0.1質量%以上20質量%以下配合することを含む、パイの内層にもちっと感を付与する方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、パイの食感を改良することができる。
本発明の好ましい態様によれば、表面である外層側のサクサクとした食感を損なうことなく、内層側にもちっと感を付与したパイを提供することができる。また、本発明の好ましい態様によれば、加熱調理直後だけでなく、所定時間保管した後も、表面である外層側のサクサクとし、内層側はしっとりともちっとした食感を良好に維持することができる。本発明の好ましい態様によれば、パイの外層と内層の食感差を付与し、それぞれの食感を際立たせることができ、嗜好性の高い製品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
今般、本発明者らは、種々の添加剤を検討した結果、所定の冷水膨潤度を有するアセチル化澱粉を生地に配合することによってパイの食感を改良することができることを見出した。以下、本発明の各態様について説明する。
【0010】
まず、本発明の一態様である練りパイ用澱粉組成物、練りパイ用組成物、練りパイ用生地、練りパイ用生地の製造方法、および練りパイの製造方法について説明する。
【0011】
1.練りパイ用澱粉組成物
本発明の練りパイ用澱粉組成物は、アセチル基を有しており、冷水膨潤度が1超15未満である加工澱粉を含むことを特徴とする。本発明の練りパイ用澱粉組成物は、練りパイ用組成物または練りパイ用生地の添加剤として用いることができる。本発明の好ましい態様によれば、本発明の練りパイ用澱粉組成物を用いることで、練りパイの食感を改良することができる。また、本発明の好ましい態様によれば、加熱調理直後だけでなく、所定時間保管した後も、表面である外層側のサクサクとし、内層側はしっとりともちっとした食感を良好に維持することができる。
【0012】
ここで、「冷水膨潤度」とは、以下の方法により測定される数値をいう。
(a)試料を、130℃で加熱乾燥させて水分測定し、得られた水分値から乾燥物質量を算出する。
(b)この乾燥物質量換算で試料1gを25℃の水50mLに分散した状態にし、30分間25℃で撹拌する。
(c)撹拌後、以下の式(1)から算出される相対遠心力が1609.92(×g)となる遠心分離法にて10分間遠心分離し、沈殿層と上澄層に分ける。
(1)相対遠心力(×g)=1118×遠心半径(cm)×(回転数(rpm))×10-8
(d)上澄層を取り除き、沈殿層質量を測定し、これをB(g)とする。
(e)沈殿層を乾固(105℃、恒量)したときの質量をC(g)とする。
(f)BをCで割った値を冷水膨潤度とする。
【0013】
前記加工澱粉の冷水膨潤度は、1超15未満であり、内層のもちっと感および内層と外層の食感差を付与する観点から、1超12未満が好ましく、1超10未満がより好ましく、1超5未満がさらに好ましい。冷水膨潤度が上記範囲であることで、練りパイの食感を改良することができる。また、本発明の好ましい態様によれば、冷水膨潤度が上記範囲であることで、表面である外層側のサクサクとした食感を損なうことなく、内層側にしっとりとした、もちっと感を付与することができる。また、練りパイの外層と内層の食感差を付与することで、食感が豊かになり、前記練りパイ用澱粉組成物を配合して得られる練りパイの嗜好性を高めることができる。
【0014】
本発明に用いられる加工澱粉は、アセチル基を有しており、所定の冷水膨潤度を有していれば特に限定されない。
前記加工澱粉のアセチル基含量は、パイ外層のサクミを向上させる観点から0.3質量%超2.5質量%以下が好ましく、0.7質量%以上2.5質量%以下がより好ましく、1.5質量%以上2.1質量%以下がさらに好ましく、1.5質量%以上1.9質量%以下がさらにより好ましい。なお、前記加工澱粉のアセチル基含量の測定方法は実施例の項で後述する。また、本明細書において、数値範囲の上限値と下限値は、適宜組み合わせることができるものとする。
【0015】
前記加工澱粉としては、未加工澱粉に、アセチル化処理が施されているものが挙げられる。
【0016】
前記未加工澱粉としては、例えば植物由来の澱粉が挙げられる。前記未加工澱粉の由来となる植物の具体例として、レギュラートウモロコシ(デントコーン)、もちトウモロコシ(ワキシーコーン)、高アミローストウモロコシ、うるち米、もち米、小麦、甘藷、馬鈴薯、キャッサバおよびサゴヤシ等が挙げられ、好ましくは、レギュラートウモロコシ、もちトウモロコシ、高アミローストウモロコシ、うるち米、もち米、小麦、馬鈴薯およびキャッサバが挙げられ、より好ましくは、レギュラートウモロコシ、もちトウモロコシ、高アミローストウモロコシ、もち米、馬鈴薯およびキャッサバが挙げられ、さらに好ましくは、もちトウモロコシ、もち米およびキャッサバが挙げられ、さらにより好ましくはキャッサバである。
【0017】
また、前記加工澱粉は、アセチル化以外の加工処理が施されていてもよい。
アセチル化以外の加工処理としては、例えば、リン酸モノエステル化等のモノエステル化;リン酸架橋、アジピン酸架橋等の架橋;ヒドロキシプロピル化等のエーテル化;酸化;酸処理;アルカリ処理;酵素処理等の1種または2種以上が挙げられる。これらの中でも、モノエステル化、架橋、エーテル化、酸化および酸処理の1種または2種以上が好ましく、モノエステル化、架橋、エーテル化および酸化の1種または2種以上がより好ましく、架橋および酸化の1種または2種以上がさらに好ましい。
【0018】
これらの中で、本発明に用いられる加工澱粉としては、アセチル化澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化酸化澱粉が好ましく、アセチル化澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、アセチル化酸化澱粉がより好ましく、アセチル化澱粉およびアセチル化リン酸架橋澱粉が特に好ましい。
【0019】
また、前記加工澱粉としては、冷水膨潤度が上記範囲を満たしていれば、アルファー化処理が施されていてもよい。
ここで「アルファー化処理」とは、未加工澱粉および加工澱粉から選ばれる澱粉と水とを混合した澱粉スラリーを加熱糊化して、さらに乾燥させる処理をいう。必要に応じて、乾燥させる処理後に粉砕処理を行ってもよい。具体的には、上記アルファー化処理のうち加熱糊化は、オンレーター、ジェットクッカー、エクストルーダー等の機械を使用した方法を、乾燥はドラムドライヤー、スプレードライヤー、送風乾燥機等の機械を使用した方法を、それぞれ選択することが可能である。また、ドラムドライヤーを用いる場合は、澱粉スラリーを直接ドラムに塗布することで、加熱糊化と乾燥を一体で行うことも可能である。
【0020】
本発明の練りパイ用澱粉組成物において、前記加工澱粉の含有量は、0.5質量%以上100質量%以下が好ましく、5質量%以上100質量%以下がより好ましく、7質量%以上100質量%以下がさらに好ましく、10質量%以上100質量%以下がさらにより好ましく、20質量%以上100質量%以下がよりいっそう好ましく、50質量%以上100質量%以下が特に好ましい。すなわち、本発明の練りパイ用澱粉組成物は、前記加工澱粉単独であってもよいし、前記加工澱粉と、前記加工澱粉以外の1種または2種以上の他の添加剤との混合物であってもよい。
【0021】
他の添加剤としては、練りパイ用組成物に配合できるものであれば特に限定されない。例えば、前記加工澱粉以外の未加工澱粉および加工澱粉、穀粉、グルテン、膨張剤、食塩、甘味料、脱脂粉乳、風味パウダー、品質改良剤等の粉体原料が挙げられる。未加工澱粉および加工澱粉の具体例としては、前述したものが挙げられる(ただし、他の添加剤として用いられる加工澱粉は、アセチル化処理が施されていなくてもよい)。その他の添加剤の具体例としては、後述する「2.練りパイ用組成物」において述べたものと同じものが挙げられる。
【0022】
2.練りパイ用組成物
本発明の練りパイ用組成物は、前記練りパイ用澱粉組成物を、前記加工澱粉質量換算で0.3質量%以上40質量%以下含むことを特徴とする。本発明の練りパイ用組成物は、練りパイ用生地に用いられる粉体原料を含む粉状の組成物であることが好ましい。
【0023】
本発明の練りパイ用組成物において、前記練りパイ用澱粉組成物の含有量は、前記加工澱粉質量換算で0.3質量%以上40質量%以下であり、0.5質量%以上35質量%以下が好ましく、1.5質量%以上30質量%以下がより好ましく、3質量%以上28質量%以下がさらに好ましく、5質量%以上25質量%以下がさらにより好ましく、6質量%以上22質量%以下がよりいっそう好ましく、7質量%以上19質量%以下が特に好ましい。組成の異なる1種または2種以上の前記練りパイ用澱粉組成物を組み合わせてもよく、最終的に得られる本発明の練りパイ用組成物において、前記加工澱粉質量換算値が上記範囲を満たせばよい。
【0024】
本発明の練りパイ用組成物は、前記加工澱粉のほか、さらに穀粉およびグルテンからなる群より選ばれる1種または2種を含むことが好ましい。
【0025】
本発明に用いられる穀粉としては、小麦粉、米粉、大豆粉、ライ麦粉、大麦粉、とうもろこし粉等が挙げられる。
小麦粉としては、練りパイなどのパイに用いられるものであれば特に制限されなく、例えば、強力粉、中力粉、薄力粉およびこれらの組合せを使用できるが、強力粉を用いることが好ましい。
米粉としては、練りパイなどのパイに用いられるものであれば特に制限されなく、例えば、うるち米粉を使用できる。
大豆粉としては、練りパイなどのパイに用いられるものであれば特に制限されなく、例えば、全脂大豆粉、脱脂大豆粉およびこれらの組合せを使用できる。
ライ麦粉としては、練りパイなどのパイに用いられるものであれば特に制限されない。
大麦粉としては、練りパイなどのパイに用いられるものであれば特に制限されない。
とうもろこし粉としては、練りパイなどのパイに用いられるものであれば特に制限されない。
これらの穀粉は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
本発明の練りパイ用組成物において、前記穀粉の含有量は、練りパイ用組成物の全質量に対して、0質量%以上99.7質量%以下が好ましく、20質量%以上98質量%以下がより好ましく、30質量%以上94質量%以下がさらに好ましく、35質量%以上90質量%以下が特に好ましい。
【0027】
また、本発明の練りパイ用組成物において、前記グルテンの含有量は、練りパイ用組成物の全質量に対して、0質量%以上17質量%以下が好ましく、3質量%以上17質量%以下がより好ましく、6質量%以上17質量%以下がさらに好ましく、7質量%以上15質量%以下がさらにより好ましく、8質量%以上13質量%以下がよりいっそう好ましく、9質量%以上11質量%以下が特に好ましい。
【0028】
穀粉およびグルテンを組み合わせて使用する場合、本発明の練りパイ用組成物において、最終的に得られるグルテンの含有量が、上記グルテンの含有量の範囲を満たしていればよい。
また、本発明の練りパイ用澱粉組成物が穀粉およびグルテンからなる群より選ばれる1種または2種を含む場合、本発明の練りパイ用組成物において、最終的に得られる穀粉およびグルテンの含有量がそれぞれ、上記含有量の範囲を満たしていればよい。
【0029】
本発明の練りパイ用組成物は、このほか、膨張剤、食塩、甘味料、脱脂粉乳、風味パウダー、品質改良剤等の粉体原料の1種または2種以上をさらに含んでいてもよい。粉体原料の配合量は、用途および目的に応じて適宜決定すればよい。
膨張剤としては、練りパイ用生地に用いられるものであれば特に制限されなく、例えば、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、リン酸ナトリウムアルミニウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、硫酸ナトリウムアルミニウム、リン酸一カルシウムおよびこれらの組合せを使用できる。
甘味料としては、練りパイ用生地に用いられるものであれば特に制限されなく、グルコース、フルクトース、異性化糖等の単糖類、砂糖、マルトースおよびトレハロースなどの二糖類、オリゴ糖、還元澱粉分解物、蜂蜜、糖蜜、メープルシロップ、アステルパーム等の合成甘味料、ステビア等の天然甘味料およびこれらの組合せを使用できる。
練りパイ用組成物におけるこれらの粉体原料の配合量は、用途および目的に応じて適宜決定すればよい。
【0030】
本発明の練りパイ用組成物は、前記練りパイ用澱粉組成物および必要に応じてその他の粉体原料を混合して調製することができる。本発明の練りパイ用組成物は、各種練りパイ用生地に好適に用いることができる。
【0031】
3.練りパイ用生地
本発明の練りパイ用生地は、前記練りパイ用組成物を、前記加工澱粉質量換算で0.1~20質量%(すなわち、0.1質量%以上20質量%以下)含むことを特徴とする。
前記加工澱粉を上記範囲で含むことで、練りパイの食感を改良することができる。また、本発明の好ましい態様によれば、練りパイの表面である外層側のサクサクとした食感を損なうことなく、内層側にしっとりとした、もちっと感を付与することができる。また、本発明の好ましい態様によれば、加熱調理直後だけでなく、所定時間保管した後も、表面である外層側のサクサクとし、内層側はしっとりともちっとした食感を良好に維持することができる。また、練りパイの外層と内層の食感差を付与することで、食感が豊かになり、得られる練りパイの嗜好性を高めることができる。
【0032】
前記練りパイ用組成物の含有量は、前記練りパイ用生地の全質量に対して、前記加工澱粉質量換算で0.1質量%以上20質量%以下であり、0.31質量%以上16質量%以下が好ましく、0.5質量%以上13質量%以下がより好ましく、2質量%以上10質量%以下がさらに好ましく、2.5質量%以上8質量%以下がさらにより好ましく、3質量%以上7質量%以下が特に好ましい。
【0033】
本発明の練りパイ用生地は、前記練りパイ用組成物のほか、可塑性油脂組成物および水を含んでいてもよい。
【0034】
前記可塑性油脂組成物は、油脂組成物を可塑化したものである。可塑性油脂組成物は、一般的な方法で製造すればよく、例えば、コンビネーター、パーフェクター、ボテーターなどに代表される掻き取り式熱交換器を通すことで急冷・混捏した後、箱に充填し、保温庫にて一定時間保持する熟成工程(テンパリング)を経て得ることができる。
【0035】
前記可塑性油脂組成物に用いられる油脂は、特に限定されないが、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、オリーブ油、落花生油、カポック油、胡麻油、月見草油、カカオ脂、シア脂、サル脂、牛脂、乳脂、豚脂、魚油、鯨油等の各種油脂、並びにこれらに水素添加、分別およびエステル交換から選択される1または2以上の処理を施した加工油脂が挙げられる。本発明では、これらの中から選ばれた1種または2種以上を好ましく用いることができる。
【0036】
前記油脂の20℃における固体脂含量は、20%以上50%以下が好ましく、25%以上45%以下がより好ましく、30%以上40%以下がさらに好ましい。20℃における固体脂含量が上記範囲であると、可塑性油脂組成物が溶け出さず生地中に残りやすく、その結果良好な食感を有する練りパイが得られる。
【0037】
前記可塑性油脂組成物における油脂含量は、60質量%以上100質量%以下が好ましく、70質量%以上100質量%以下がより好ましく、80質量%以上100質量%以下がさらに好ましい。
前記可塑性油脂組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲であれば、通常用いられる成分を含んでいても良い。そのような成分としては、例えば、乳化剤、香料、着色料、乳成分等が挙げられ、これらの成分を、前記可塑性油脂組成物に適宜添加してもよい。
【0038】
前記可塑性油脂組成物の形状は特に限定されないが、練りパイ用生地に分散させやすいことからチップ状の形状であることが好ましい。チップ状はさらに具体的には例えば円柱状や直方体が挙げられ、それらの長辺が1cmから5cm程度の小片であることが好ましい。
【0039】
本発明の練りパイ用生地において、前記可塑性油脂組成物の含有量は、15質量%以上50質量%以下が好ましく、15質量%以上40質量%以下がより好ましく、20質量%以上35質量%以下がさらに好ましく、20質量%以上30質量%以下がさらにより好ましく、22質量%以上26質量%以下が特に好ましい。
【0040】
本発明の練りパイ用生地に用いられる水としては特に限定されなく、天然水や水道水が挙げられる。また、牛乳、卵、豆乳および果汁などの水含有液体を使用してもよい。ただし、粉体原料が含む水分はこれに含まれない。
本発明の練りパイ用生地において、水の含有量(水含有液体中の水分を含む)は、前記練りパイ用生地の全質量に対して、18質量%以上38質量%以下が好ましく、20質量%以上36質量%以下がより好ましく、22質量%以上34質量%以下がさらに好ましく、24質量%以上32質量%以下が特に好ましい。
【0041】
本発明の練りパイ用生地は、このほか、モルト、前記可塑性油脂組成物以外の油脂等をさらに含んでいてもよい。
【0042】
4.練りパイ用生地の製造方法
本発明の練りパイ用生地の製造方法は、
前記練りパイ用組成物を準備する工程と、
前記練りパイ用組成物、前記可塑性油脂組成物および水を混合する工程と、を含む。以下、各工程について説明する。
【0043】
まず、練りパイ用組成物を準備する。前記練りパイ用組成物については、前記「2.練りパイ用組成物」で述べたとおりであり、前記練りパイ用澱粉組成物と、必要に応じてその他の粉体原料を混合して調製することができる。
【0044】
次に、前記練りパイ用組成物、前記可塑性油脂組成物および水を混合する。前記可塑性油脂組成物および水、ならびにそれらの配合量については、前記「3.練りパイ用生地」で述べたとおりである。
【0045】
前記可塑性油脂組成物の混合前温度は特に限定されないが、-30℃以上10℃以下であることが好ましい。所定の温度で混合することで良好な食感を有する練りパイが得られる。
【0046】
前記可塑性油脂組成物以外の生地原料の温度は特に限定されないが、0℃超30℃以下が好ましく、0℃超25℃以下がより好ましい。前記生地原料の温度は、あらかじめ、添加する水の温度や粉体原料の温度を適宜調温することで所望の温度とすることができる。
【0047】
前記練りパイ用組成物、前記可塑性油脂組成物および水の添加順序は特に限定されない。前記練りパイ用組成物および水を混合してから、得られた混合物に前記可塑性油脂組成物を添加して混合してもよいし、前記練りパイ用組成物および前記可塑性油脂組成物を混合してから、得られた混合物に水を添加して混合してもよい。
【0048】
前記「3.練りパイ用生地」でも述べたとおり、生地中には、前記練りパイ用組成物、前記可塑性油脂組成物および水以外の添加成分、例えば、モルト、前記可塑性油脂組成物以外の油脂が配合されていてもよい。これらの添加成分は、前記練りパイ用組成物、前記可塑性油脂組成物および水と同時に添加して混合してもよいし、混合の途中段階または最終段階で添加して混合してもよい。
前記練りパイ用組成物、前記可塑性油脂組成物および水、さらには任意の添加成分を混合し、前記可塑性油脂組成物が生地中に均一に練り込まれない程度に軽く練ることにより、前記可塑性油脂組成物を生地中に分散させて前記可塑性油脂組成物の層が形成されるようにすることで、前記練りパイ用生地を得ることができる。前記練りパイ用生地は、さらに延展と折り工程を複数回おこなって、練り折りパイ用生地としてもよい。なお、本明細書では、「練り折りパイ」も「練りパイ」に包含されることとする。
【0049】
5.練りパイの製造方法
本発明の練りパイの製造方法は、前記練りパイ用生地を加熱調理する工程を含む。
前記練りパイ用生地を加熱調理することで、生地中に点在した可塑性油脂組成物が浮き上がり、練りパイの表面である外層側はサクサクとし、内層はしっとりともちっとした食感が得られる。加熱調理方法は、生地に熱を加えるものであれば特に限定されないが、「焼き」または「油ちょう」が好ましく、「油ちょう」が特に好ましい。加熱調理方法が「油ちょう」であると、水分と液油の置換が起こり、外層側はよりサクサクとして軽い食感が得られ、内層はよりしっとりと、もちっとした食感が得られる。
【0050】
加熱調理する際の加熱温度は、適宜選択すればよいが、油ちょうの場合、150℃以上200℃以下が好ましく、160℃以上190℃以下がより好ましく、170℃以上180℃以下がさらに好ましい。オーブン等での焼きの場合、150℃以上250℃以下が好ましく、170℃以上240℃以下がより好ましく、180℃以上220℃以下がさらに好ましい。
【0051】
前記練りパイ用生地は、加熱調理する前に所望の形状に成形することが好ましい。練りパイに餡を入れる場合、餡を入れる工程は練りパイ用生地の加熱調理の前後いずれでもよい。練りパイの形状は特に制限されなく、目的および用途に応じて適宜決定すればよい。
また、得られる練りパイは、スティック状パイ、リーフパイ、パルミエなどのパイ単体であってもよいし、パイの内層側にフィリングを包み込んだ包餡パイであってもよい。
【0052】
練りパイが包餡パイである場合、餡を包むタイミングは特に限定されなく、前記練りパイ用生地を加熱調理する工程の前であってもよく、加熱調理後に注入等しても良いが、前記練りパイ用生地を加熱調理する工程の前に前記練りパイ用生地に餡を包む工程を含むことが好ましい。
【0053】
包餡パイに用いられるフィリングは練りパイに包めるものであれば特に限定されない。例えば、餡子、チョコレート、ジャム、カスタード、チーズ、カレー、シチュー、ミートソース、グラタンなどが挙げられる。
フィリングの使用量は、練りパイに包める量であれば特に限定されない。
【0054】
練りパイが包餡パイである場合、前記フィリングを包み込んだ練りパイ用生地を加熱調理することにより、フィリングから蒸発した水分を吸収して、練りパイの内層側のしっとりと、もちっとした食感がより際立ち、練りパイの内層と外層の食感差をより感じられる。
【0055】
また、本発明の一実施態様において、本発明の練りパイの製造方法は、前記加熱調理工程の前に、前記練りパイ用生地を室温、冷蔵または冷凍で保持する保持工程を含んでもよい。保持工程は、冷凍での保持が好ましく、保持工程は、前記練りパイ用生地を成形後に行うことが好ましい。
【0056】
本発明の好ましい態様によれば、本発明の方法で得られる練りパイは、加熱調理直後だけでなく、ホッター(ホットショーケースまたは加温什器ともいう)または室温で所定時間保管した後も、表面である外層側はサクサクとし、内層側はしっとりともちっとした食感を良好に維持することができる。
例えば、本発明の方法で得られる練りパイは、ホッターまたは室温で4時間保管した後も、表面である外層側はサクサクとし、内層側はしっとりともちっとした食感を良好に維持することができ、練りパイの内層と外層の食感差を感じられる。
【0057】
本発明の方法で得られる練りパイをホッター等で保管する場合、保管温度は、好ましくは45℃以上80℃以下、より好ましくは50℃以上70℃以下である。また、本発明の方法で得られる練りパイを室温で保管する場合、保管温度は、好ましくは10℃以上45℃未満、より好ましくは12℃以上40℃以下、さらに好ましくは15℃以上35℃以下である
【0058】
次に、本発明の他の態様であるパイ用澱粉組成物、パイ用組成物、パイ用生地、パイ用生地の製造方法、およびパイの製造方法について説明する。
【0059】
6.パイ用澱粉組成物
本発明のパイ用澱粉組成物は、アセチル基を有しており、冷水膨潤度が5以上15未満である加工澱粉を含むことを特徴とする。本発明のパイ用澱粉組成物は、パイ用組成物またはパイ用生地の添加剤として用いることができる。本発明の好ましい態様によれば、本発明のパイ用澱粉組成物を用いることで、パイの食感を改良することができる。「冷水膨潤度」の測定方法は、前記「1.練りパイ用澱粉組成物」で述べたとおりである。
【0060】
前記加工澱粉の冷水膨潤度は、5以上15未満であり、6以上14未満が好ましく、7以上14未満がより好ましく、8以上14未満がさらに好ましい。冷水膨潤度が上記範囲であることで、パイの食感を改良することができる。また、本発明の好ましい態様によれば、冷水膨潤度が上記範囲であることで、表面である外層側のサクサクとした食感を損なうことなく、内層側にしっとりとした、もちっと感を付与することができる。また、パイの外層と内層の食感差を付与することで、食感が豊かになり、前記パイ用澱粉組成物を配合して得られるパイの嗜好性を高めることができる。また、本発明の好ましい態様によれば、加熱調理直後だけでなく、所定時間保管した後も、表面である外層側のサクサクとし、内層側はしっとりともちっとした食感を良好に維持することができる。
【0061】
本発明に用いられる加工澱粉は、アセチル基を有しており、所定の冷水膨潤度を有していれば特に限定されない。
前記加工澱粉のアセチル基含量は、0.3質量%超2.5質量%以下が好ましく、0.7質量%以上2.5質量%以下がより好ましく、1.5質量%以上2.1質量%以下がさらに好ましく、1.5質量%以上1.9質量%以下がさらにより好ましい。前記加工澱粉のアセチル基含量の測定方法は実施例の項で後述する。
【0062】
前記加工澱粉としては、未加工澱粉に、アセチル化処理が施されているものが挙げられる。また、前記加工澱粉は、アセチル化以外の加工処理が施されていてもよい。
未加工澱粉およびアセチル化以外の加工処理の具体例は、前記「1.練りパイ用澱粉組成物」で述べたものと同じである。
【0063】
本発明に用いられる加工澱粉としては、アセチル化澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化酸化澱粉が好ましく、アセチル化澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、アセチル化酸化澱粉がより好ましく、アセチル化澱粉およびアセチル化リン酸架橋澱粉が特に好ましい。
【0064】
また、前記加工澱粉としては、冷水膨潤度が上記範囲を満たしていれば、アルファー化処理が施されていてもよい。アルファー化処理の方法については、前記「1.練りパイ用澱粉組成物」で述べたとおりである。
【0065】
本発明のパイ用澱粉組成物において、前記加工澱粉の含有量は、0.5質量%以上100質量%以下が好ましく、5質量%以上100質量%以下がより好ましく、7質量%以上100質量%以下がさらに好ましく、10質量%以上100質量%以下がさらにより好ましく、20質量%以上100質量%以下がよりいっそう好ましく、50質量%以上100質量%以下が特に好ましい。すなわち、本発明のパイ用澱粉組成物は、前記加工澱粉単体であってもよいし、前記加工澱粉と、前記加工澱粉以外の1種または2種以上の他の添加剤との混合物であってもよい。
【0066】
他の添加剤としては、パイ用組成物に配合できるものであれば特に限定されない。例えば、前記加工澱粉以外の未加工澱粉および加工澱粉、穀粉、グルテン、膨張剤、食塩、甘味料、脱脂粉乳、風味パウダー、品質改良剤等の粉体原料が挙げられる。未加工澱粉および加工澱粉の具体例としては、前述したものが挙げられる。その他の添加剤の具体例としては、前記「2.練りパイ用組成物」において述べたものと同じものが挙げられる。
【0067】
7.パイ用組成物
本発明のパイ用組成物は、前記パイ用澱粉組成物を、前記加工澱粉質量換算で0.3質量%以上40質量%以下含むことを特徴とする。本発明のパイ用組成物は、パイ用生地に用いられる粉体原料を含む粉状の組成物であることが好ましい。
【0068】
本発明のパイ用組成物において、前記パイ用澱粉組成物の含有量は、前記加工澱粉質量換算で0.3質量%以上40質量%以下であり、0.5質量%以上35質量%以下が好ましく、1.5質量%以上30質量%以下がより好ましく、3質量%以上28質量%以下がさらに好ましく、5質量%以上25質量%以下がさらにより好ましく、6質量%以上22質量%以下がよりいっそう好ましく、7質量%以上19質量%以下が特に好ましい。組成の異なる1種または2種以上の前記パイ用澱粉組成物を組み合わせてもよく、最終的に得られる本発明のパイ用組成物において、前記加工澱粉質量換算値が上記範囲を満たせばよい。
【0069】
本発明のパイ用組成物は、前記加工澱粉のほか、さらに穀粉およびグルテンからなる群より選ばれる1種または2種を含むことが好ましい。穀粉およびグルテンについては、前記「2.練りパイ用組成物」で述べたとおりである。
【0070】
本発明のパイ用組成物において、前記穀粉の含有量は、パイ用組成物の全質量に対して、0質量%以上99.7質量%以下が好ましく、20質量%以上98質量%以下がより好ましく、30質量%以上94質量%以下がさらに好ましく、35質量%以上90質量%以下が特に好ましい。穀粉は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0071】
また、本発明のパイ用組成物において、前記グルテンの含有量は、パイ用組成物の全質量に対して、0質量%以上17質量%以下が好ましく、3質量%以上17質量%以下がより好ましく、6質量%以上17質量%以下がさらに好ましく、7質量%以上15質量%以下がさらにより好ましく、8質量%以上13質量%以下がよりいっそう好ましく、9質量%以上11質量%以下が特に好ましい。
【0072】
穀粉およびグルテンを組み合わせて使用する場合、本発明のパイ用組成物において、最終的に得られるグルテンの含有量が、上記グルテンの含有量の範囲を満たしていればよい。
また、本発明のパイ用澱粉組成物が穀粉およびグルテンからなる群より選ばれる1種または2種を含む場合、本発明のパイ用組成物において、最終的に得られる穀粉およびグルテンの含有量がそれぞれ、上記含有量の範囲を満たしていればよい。
【0073】
本発明のパイ用組成物は、このほか、膨張剤、食塩、甘味料、脱脂粉乳、風味パウダー、品質改良剤等の等の粉体原料の1種または2種以上をさらに含んでいてもよい。膨張剤および甘味料の具体例としては、前記「2.練りパイ用組成物」において述べたものと同じものが挙げられる。
パイ用組成物におけるこれらの粉体原料の配合量は、用途および目的に応じて適宜決定すればよい。
【0074】
本発明のパイ用組成物は、前記パイ用澱粉組成物および必要に応じてその他の粉体原料を混合して調製することができる。本発明のパイ用組成物は、各種パイ用生地に好適に用いることができる。
【0075】
8.パイ用生地
本発明のパイ用生地は、前記パイ用組成物を、前記加工澱粉質量換算で0.1~20質量%含むことを特徴とする。
前記加工澱粉を上記範囲で含むことで、パイの食感を改良することができる。また、本発明の好ましい態様によれば、パイの表面である外層側のサクサクとした食感を損なうことなく、内層側にしっとりとした、もちっと感を付与することができる。また、本発明の好ましい態様によれば、加熱調理直後だけでなく、所定時間保管した後も、表面である外層側のサクサクとし、内層側はしっとりともちっとした食感を良好に維持することができる。また、パイの外層と内層の食感差を付与することで、食感が豊かになり、得られるパイの嗜好性を高めることができる。
【0076】
前記パイ用組成物の含有量は、前記パイ用生地の全質量に対して、前記加工澱粉質量換算で0.1質量%以上20質量%以下であり、0.31質量%以上16質量%以下が好ましく、0.5質量%以上13質量%以下がより好ましく、2質量%以上10質量%以下がさらに好ましく、2.5質量%以上8質量%以下がさらにより好ましく、3質量%以上7質量%以下が特に好ましい。
【0077】
本発明のパイ用生地は、前記パイ用組成物のほか、可塑性油脂組成物および水を含んでいてもよい。
【0078】
前記可塑性油脂組成物としては、前記「3.練りパイ用生地」で述べたものと同じものが挙げられる。
【0079】
前記可塑性油脂組成物の形状は特に限定されなく、パイの種類に応じて適宜決定すればよい。
例えば、パイ用生地が練りパイ用生地である場合は、練りパイ用生地に分散させやすいことからチップ状の形状であることが好ましい。チップ状はさらに具体的には例えば円柱状や直方体が挙げられ、それらの長辺が1cmから5cm程度の小片であることが好ましい。
また、パイ用生地が折りパイ用生地である場合は、前記パイ用組成物および水を含むドウに折り込みやすいことから、シート状であることが好ましい。シート状可塑性油脂組成物の厚みは特に限定されないが、5mm以上30mm以下であることが好ましく、6mm以上20mm以下であることがより好ましく、8mm以上12mm以下であることがさらに好ましい。
【0080】
本発明のパイ用生地において、前記可塑性油脂組成物の含有量は、15質量%以上50質量%以下が好ましく、15質量%以上40質量%以下がより好ましく、20質量%以上35質量%以下がさらに好ましく、20質量%以上30質量%以下がさらにより好ましく、22質量%以上26質量%以下が特に好ましい。
【0081】
本発明のパイ用生地に用いられる水としては特に限定されなく、前記「3.練りパイ用生地」で述べたものと同じものを使用できる。
本発明のパイ用生地において、水の含有量(水含有液体中の水分を含む)は、前記パイ用生地の全質量に対して、18質量%以上38質量%以下が好ましく、20質量%以上36質量%以下がより好ましく、22質量%以上34質量%以下がさらに好ましく、24質量%以上32質量%以下が特に好ましい。
【0082】
本発明のパイ用生地は、モルト、前記可塑性油脂組成物以外の油脂等をさらに含んでいてもよい。
【0083】
9.パイ用生地の製造方法
パイ用生地の製造方法は、パイの種類(練りパイまたは折りパイ)によって異なる。以下、パイの種類ごとに説明する。
【0084】
(1)練りパイ用生地の製造方法
本発明の練りパイ用生地の製造方法は、
前記パイ用組成物を準備する工程と、
前記パイ用組成物、前記可塑性油脂組成物および水を混合する工程と、を含むことを特徴とする。以下、各工程について説明する。
【0085】
まず、パイ用組成物を準備する。前記パイ用組成物については、前記「7.パイ用組成物」で説明したとおりである。
【0086】
次に、前記パイ用組成物、前記可塑性油脂組成物および水を混合する。前記可塑性油脂組成物および水、ならびにそれらの配合量については、前記「8.パイ用生地」で述べたとおりである。
【0087】
前記可塑性油脂組成物の混合前温度は特に限定されないが、-30℃以上10℃以下であることが好ましい。所定の温度で混合することで良好な食感を有する練りパイが得られる。
【0088】
前記可塑性油脂組成物以外の生地原料の温度は特に限定されないが、0℃超30℃以下が好ましく、0℃超25℃以下がより好ましい。前記生地原料の温度は、あらかじめ、添加する水の温度や粉体原料の温度を適宜調温することで所望の温度とすることができる。
【0089】
前記パイ用組成物、前記可塑性油脂組成物および水の添加順序は特に限定されない。前記パイ用組成物および水を混合してから、得られた混合物に前記可塑性油脂組成物を添加して混合してもよいし、前記パイ用組成物および前記可塑性油脂組成物を混合してから、得られた混合物に水を添加して混合してもよい。
【0090】
前記「8.パイ用生地」でも述べたとおり、生地中には、前記パイ用組成物、前記可塑性油脂組成物および水以外の添加成分、例えばモルト、前記可塑性油脂組成物以外の油脂等が配合されていてもよい。これらの添加成分は、前記パイ用組成物、前記可塑性油脂組成物および水と同時に添加して混合してもよいし、混合の途中段階または最終段階などで添加して混合してもよい。
前記パイ用組成物、前記可塑性油脂組成物および水、さらには任意の添加成分を混合し、前記可塑性油脂組成物が生地中に均一に練り込まれない程度に軽く練ることにより、前記可塑性油脂組成物を生地中に分散させて前記可塑性油脂組成物の層が形成されるようにすることで、前記練りパイ用生地を得ることができる。前記練りパイ用生地は、さらに延展と折り工程を複数回おこなって、練り折りパイ用生地としてもよい。
【0091】
(2)折りパイ用生地の製造方法
本発明の折りパイ用生地の製造方法は、
前記パイ用組成物を準備する工程と、
前記パイ用組成物および水を混合し、ドウを得る工程と、
前記ドウに、シート状可塑性油脂組成物を折り込む工程と
を含むことを特徴とする。以下、各工程について説明する。
【0092】
まず、パイ用組成物を準備する。前記パイ用組成物については、前記「7.パイ用組成物」で説明したとおりである。
【0093】
次に、前記パイ用組成物および水を混合し、ドウを得る。
前記パイ用組成物および水の使用量については、前記「8.パイ用生地」で述べたとおりである。ここで、ドウには必要に応じて前記可塑性油脂組成物以外の油脂を添加することもできる。
前記パイ用組成物および水を混合し、捏ねることで粘弾性を有するドウが得られる。
本発明において、ドウは、ミキシングボウルなどの混合容器内で前記パイ用組成物および水を混合することで調製することができる。
【0094】
次に、前記ドウに、シート状可塑性油脂組成物を折り込む。シート状可塑性油脂組成物については、前記「8.パイ用生地」で述べたとおりである。
【0095】
前記シート状可塑性油脂組成物の混合前温度は特に限定されないが、前記シート状可塑性油脂組成物中の油脂の20℃における固体脂含量は、20%以上50%以下が好ましく、25%以上45%以下がより好ましい。
【0096】
前記シート状可塑性油脂組成物以外の生地原料の温度は特に限定されないが、0℃超30℃以下が好ましく、0℃超25℃以下がより好ましい。前記生地原料の温度は、あらかじめ、添加する水の温度や粉体原料の温度を適宜調温することで所望の温度とすることができる。
【0097】
前記「8.パイ用生地」でも述べたとおり、生地中には、前記パイ用組成物、前記シート状可塑性油脂組成物および水以外の添加成分、例えば、モルト、前記シート状可塑性油脂組成物以外の油脂が配合されていてもよい。これらの添加成分を混合するタイミングは特に限定されなく、ドウに混合してもよい。
【0098】
前記ドウで前記シート状可塑性油脂組成物を包み、延展と折り工程を複数回おこなうことにより、前記ドウにシート状可塑性油脂組成物を折り込むことができる。この工程後、薄いシート状可塑性油脂組成物が生地中に複数の層状(2層以上)の層状で存在していることが好ましい。前記ドウで前記シート状可塑性油脂組成物を包み、延展と折り工程を繰り返す回数は、特に限定されなく、用途および目的に応じて適宜決定すればよいが、一般的には、前記シート状可塑性油脂組成物の層が27層以上となることが好ましい。
【0099】
10.パイの製造方法
本発明のパイの製造方法は、前記パイ用生地を加熱調理する工程を含む。
前記パイ用生地が練りパイ用生地である場合、前記パイ用生地を加熱調理することで、生地中に点在した可塑性油脂組成物が浮き上がり、練りパイの表面である外層側はサクサクとし、内層はしっとりともちっとした食感が得られる。
また、前記パイ用生地が折りパイ用生地である場合、前記パイ用生地を加熱調理することで、シート状可塑性油脂組成物が熱せられ、ドウに含まれる水分が蒸発し、その膨張力によって層の一枚一枚が浮き上がることで、サクサク、ホロホロと崩れるような食感が得られる。
【0100】
加熱調理方法は、生地に熱を加えるものであれば特に限定されないが、「焼き」または「油ちょう」が好ましく、「油ちょう」が特に好ましい。加熱調理方法が「油ちょう」であると、水分と液油の置換が起こり、外層側はよりサクサクとして軽い食感が得られ、内層はよりしっとりと、もちっとした食感が得られる。
【0101】
加熱調理する際の加熱温度は、適宜選択すればよいが、油ちょうの場合、150℃以上200℃以下が好ましく、160℃以上190℃以下がより好ましく、170℃以上180℃以下がさらに好ましい。オーブン等での焼きの場合、150℃以上250℃以下が好ましく、170℃以上240℃以下がより好ましく、180℃以上220℃以下がさらに好ましい。
【0102】
前記パイ用生地は、加熱調理する前に所望の形状に成形することが好ましい。パイに餡を入れる場合、餡を入れる工程はパイ用生地の加熱調理の前後いずれでもよい。パイの形状は特に制限されなく、目的および用途に応じて適宜選択すればよい。
【0103】
前記パイ用生地が練りパイ用生地である場合、得られる練りパイは、スティック状パイ、リーフパイ、パルミエなどのパイ単体であってもよいし、パイの内層側にフィリングを包み込んだ包餡パイであってもよい。
【0104】
練りパイが包餡パイである場合、餡を包むタイミングは特に限定されなく、前記練りパイ用生地を加熱調理する工程の前であってもよく、加熱調理後に注入等しても良いが、前記練りパイ用生地を加熱調理する工程の前に前記練りパイ用生地に餡を包むことが好ましい。
【0105】
包餡パイに用いられるフィリングおよびその使用量については、前記「5.練りパイの製造方法」で説明したとおりである。
【0106】
前記フィリングを包み込んだ練りパイ用生地を加熱調理することにより、フィリングから蒸発した水分を吸収して、練りパイの内層側のしっとりと、もちっとした食感がより際立ち、練りパイの内層と外層の食感差をより感じられる。
【0107】
前記パイ用生地が折りパイ用生地である場合、得られる折りパイは、スティック状パイ、リーフパイ、パルミエなどのパイ単体であってもよいし、パイの内層側にフィリングを包み込んだ包餡パイであってもよい。
【0108】
折りパイが包餡パイである場合、餡を包むタイミングは特に限定されなく、前記練りパイ用生地を加熱調理する工程の前であってもよく、加熱調理後に注入等しても良いが、前記折りパイ用生地を加熱調理する工程の前に前記折りパイ用生地に餡を包むことが好ましい。
【0109】
包餡パイに用いられるフィリングおよびその使用料については、前記「5.練りパイの製造方法」で説明したとおりである。
【0110】
前記フィリングを包み込んだ折りパイ用生地を加熱調理することにより、フィリングから蒸発した水分を吸収して、折りパイの内層側のしっとりと、もちっとした食感がより際立ち、折りパイの内層と外層の食感差をより感じられる。
【0111】
また、本発明の一実施態様において、本発明のパイの製造方法は、前記加熱調理工程の前に、前記パイ用生地を室温、冷蔵または冷凍で保持する保持工程を含んでもよい。保持工程は、冷凍での保持が好ましく、保持工程は、前記パイ用生地を成形後に行うことが好ましい。
【0112】
本発明の好ましい態様によれば、本発明の方法で得られたパイは、練りパイであっても、折りパイであっても、加熱調理直後だけでなく、ホッターまたは室温で所定時間保管した後も、表面である外層側はサクサクとし、内層側はしっとりともちっとした食感を良好に維持することができる。
例えば、本発明の方法で得られたパイは、ホッターまたは室温で4時間保管した後も、表面である外層側はサクサクとし、内層側はしっとりともちっとした食感を良好に維持することができ、パイの内層と外層の食感差を感じられる。
【0113】
本発明の方法で得られるパイをホッター等で保管する場合、保管温度は、好ましくは45℃以上80℃以下、より好ましくは50℃以上70℃以下である。また、本発明の方法で得られるパイを室温で保管する場合、保管温度は、好ましくは10℃以上45℃未満、より好ましくは12℃以上40℃以下、さらに好ましくは15℃以上35℃以下である。
【0114】
11.パイの食感を改良する方法
以上に述べたとおり、本発明によれば、各種パイの食感を改良することができる。
本発明の好ましい態様によれば、表面である外層側のサクサクとした食感を損なうことなく、内層側にもちっと感を付与したパイを提供することができる。また、パイの外層と内層の食感差を付与し、それぞれの食感を際立たせることができ、嗜好性の高い製品を提供することができる。
【0115】
すなわち、本発明は、パイの内層と外層の食感差を付与する方法を包含する。
本発明によれば、パイ用生地に、アセチル基を有しており、冷水膨潤度が1超15未満である加工澱粉を含むパイ用澱粉組成物を、前記生地中に前記加工澱粉質量換算で0.1質量%以上20質量%以下配合することで、パイの内層と外層の食感差を付与することができる。
前記加工澱粉については、前記「1.練りパイ用澱粉組成物」で述べたものと同じものを用いることができる。
前記加工澱粉の配合量は、前記パイ用生地の全質量に対して、0.1質量%以上20質量%以下であり、0.31質量%以上16質量%以下が好ましく、0.5質量%以上13質量%以下がより好ましく、2質量%以上10質量%以下がさらに好ましく、2.5質量%以上8質量%以下がさらにより好ましく、3質量%以上7質量%以下が特に好ましい。
【0116】
本発明の好ましい態様によれば、本発明の方法により、練りパイであっても、折りパイであっても、加熱調理直後だけでなく、ホッターまたは室温で所定時間保管した後も、表面である外層側はサクサクとし、内層側はしっとりともちっとした食感を良好に維持することができる。
【0117】
また本発明は、パイの内層にもちっと感を付与する方法を包含する。
本発明によれば、パイ用生地に、アセチル基を有しており、冷水膨潤度が1超15未満である加工澱粉を含むパイ用澱粉組成物を、前記生地中に前記加工澱粉質量換算で0.1質量%以上20質量%以下配合することで、パイの内層にもちっと感を付与することができる。
前記加工澱粉については、前記「1.練りパイ用澱粉組成物」で述べたものと同じものを用いることができる。
前記加工澱粉の配合量は、前記パイ用生地の全質量に対して、0.1質量%以上20質量%以下であり、0.31質量%以上16質量%以下が好ましく、0.5質量%以上13質量%以下がより好ましく、2質量%以上10質量%以下がさらに好ましく、2.5質量%以上8質量%以下がさらにより好ましく、3質量%以上7質量%以下が特に好ましい。
【0118】
本発明の好ましい態様によれば、本発明の方法により、練りパイであっても、折りパイであっても、加熱調理直後だけでなく、ホッターまたは室温で所定時間保管した後も、パイの内層にもちっと感を良好に維持することができる。
【0119】
なお、これらの本発明の方法で食感が改良されたパイをホッター等で保管する場合、保管温度は、好ましくは45℃以上80℃以下、より好ましくは50℃以上70℃以下である。また、本発明の方法で得られるパイを室温で保管する場合、保管温度は、好ましくは10℃以上45℃未満、より好ましくは15℃以上40℃以下、さらに好ましくは15℃以上35℃以下である。
【実施例
【0120】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら制限されない。
【0121】
1.揚げ練り包餡パイの調製(その1)
表1に記載の組成で揚げ練り包餡パイを調製した。なお、加工澱粉としては、加工澱粉1を用いた。
まず、表1に示した原料のうち、加工澱粉、薄力粉、強力粉およびその他の粉体原料を混合し、練りパイ用組成物を得た。ただし、対照例のみ、薄力粉、強力粉およびその他の粉体原料を混合し混合粉を得た。得られた練りパイ用組成物(対照例のみ混合粉)、可塑性油脂組成物、全卵および水をミキサー(関東混合機工業株式会社製「カントーミキサーKTM-10」)を用いて、容器内にてフックで混合し、可塑性油脂組成物が生地中に均一に練り込まれない程度に軽く練ることにより、可塑性油脂組成物を生地中に分散させて、練パイ用生地を得た。前記練パイ用生地16gに対し、フィリング8gを手包餡し冷凍後、170℃、6分で油ちょうを行い、揚げ練り包餡パイを得た。
【0122】
得られた揚げ練り包餡パイの揚げ直後の外層のサクミ、もちっと感、および内層と外層の食感差の各項目について、専門パネラー5人により、下記の評価基準に従って5段階評価を行い、平均点を評価値とした。
【0123】
(1)パイ外層のサクミ
5点 非常にサクッとしている。
4点 かなりサクッとしている。
3点 ややサクッとしている。
2点 あまりサクッとしていない。
1点 全くサクッとしていない。
【0124】
(2)内層のもちっと感
5点 適度に弾力があり、とても心地良いもちっと感がある。
4点 やや弾力があり、心地よいもちっと感がある。
3点 ややもちっと感がある、またはすこし重めのもちっと感がある。
2点 ほとんどもちっと感がない、またはやや重めの餅のようなもちっと感や粘りがある。
1点 全くもちっと感がない、またはかなり重めの餅のようなもちっと感や粘りがある。
【0125】
(3)内層と外層の食感差
5点 内層と外層の食感差が非常に良い。
4点 内層と外層の食感差が良い。
3点 内層と外層の食感差がやや良い。
2点 内層と外層の食感差があまり良くない。
1点 内層と外層の食感差が悪い。
ここで、内層と外層の食感差を向上させるとは、本発明のパイをかじったとき、初めに歯が当たる外層のパイ部分がサクサクしており、且つ内層に歯が達したときには独特な程よく弾力のあるもちっと感が感じられる状態を言う。
【0126】
結果を表1に示す。
【0127】
【表1】
【0128】
表1に示したとおり、所定の冷水膨潤度を有するアセチル化澱粉である加工澱粉1を含むことで、加工澱粉1を含まない対照例と比べて、パイ外層のサクミ、内層のもちっと感、および内層と外層の食感差はいずれも向上した(実施例1から9)。
パイ外層のサクミの観点では、パイ粉体原料中、加工澱粉1を0.5質量%以上14.9質量%以下含有する場合良好であり、0.7質量%以上14.9質量%以下でより良好であり、1.7質量%以上14.9質量%以下でさらに良好であり、8.1質量%以上14.9質量%以下でさらに良好であった。内層のもちっと感の観点では、パイ粉体原料中、加工澱粉1を0.5質量%以上14.9質量%以下含有する場合、良好であり、0.9質量%以上8.1質量%以下でより良好であり、4.2質量%以上8.1質量%以下でさらに良好であり、5.8質量%以上8.1質量%以下でさらに良好であった。内層と外層の食感差向上の観点からは、パイ粉体原料中、加工澱粉1を0.5質量%以上14.9質量%以下含有する場合、良好であり、1.7質量%以上14.9質量%以下でより良好であり、4.2質量%以上14.9質量%以下でさらに良好であった。
パイ外層のサクミの観点では、パイ生地中、加工澱粉1を0.26質量%以上7.58質量%以下含有する場合良好であり、0.34質量%以上7.58質量%以下でより良好であり、0.84質量%以上7.58質量%以下でさらに良好であり、4.02質量%以上7.58質量%以下でさらに良好であった。内層のもちっと感の観点では、パイ生地中、加工澱粉1を0.26質量%以上7.58質量%以下含有する場合、良好であり、0.42質量%以上4.02質量%以下でより良好であり、2.07質量%以上4.02質量%以下でさらに良好であり、2.87質量%以上4.02質量%以下でさらに良好であった。内層と外層の食感差向上の観点からは、パイ生地中、加工澱粉1を0.26質量%以上7.58質量%以下含有する場合、良好であり、0.84質量%以上7.58質量%以下でより良好であり、2.07質量%以上7.58質量%以下でさらに良好であった。
【0129】
2.揚げ練り包餡パイの調製(その2)
前記「揚げ練り包餡パイの調製(その1)」と同様にして、表2に記載の組成で、揚げ練り包餡パイを調製した。
【0130】
得られた揚げ練りパイの揚げ直後、ホッター(60℃)保管4時間後、および室温(25℃)保管4時間後の外層のサクミ、もちっと感、および内層と外層の食感差の各項目について、専門パネラー5人により、前記評価基準に従って5段階評価を行い、平均点を評価値とした。結果を表2に示す。
【0131】
【表2】
【0132】
表2に示したとおり、所定の冷水膨潤度を有するアセチル化澱粉である加工澱粉1から6をそれぞれ含むことで、パイ外層のサクミ、内層のもちっと感、および内層と外層の食感差はいずれも良好であった(実施例10から15)。
他方、アセチル基を有していない加工澱粉7または8を用いた場合、外層のサクミ、もちっと感、および内層と外層のバランスのいずれも評価が悪かった(比較例1、2)。また、アセチル基を有していても、冷水膨潤度が高すぎる加工澱粉9を用いた場合も、外層のサクミ、もちっと感、および内層と外層の食感差のいずれも評価が悪かった(比較例3)。
【0133】
3.揚げ練り包餡パイの調製(その3)
揚げ練り包餡パイの調製(その3)においては、粉体原料全て、可塑性油脂組成物、全卵および水とを同時に容器内に加えたこと以外は、前記「揚げ練り包餡パイの調製(その1)」と同様にして、表3に記載の組成で、揚げ練り包餡パイを調製した。
【0134】
得られた揚げ練りパイの揚げ直後、任意にホッター(60℃)保管4時間後、および室温(25℃)保管4時間後の外層のサクミ、もちっと感、および内層と外層の食感差の各項目について、専門パネラー5人により、前記評価基準に従って5段階評価を行い、平均点を評価値とした。結果を表3に示す。
【0135】
【表3】
【0136】
表3に示したとおり、所定の冷水膨潤度を有するアセチル化澱粉である加工澱粉1を含むことで、パイ外層のサクミ、内層のもちっと感、および内層と外層の食感差はいずれも良好であった(実施例16から18)。生地中の可塑性油脂組成物の配合量が増加するにつれて、パイ外層のサクミ、内層のもちっと感、および内層と外層の食感差はより優れていた。
【0137】
なお、表1、2および3における各成分は下記のとおりである。
加工澱粉1(アセチルタピオカ澱粉):500mLセパラブルフラスコに、タピオカ澱粉(株式会社J-オイルミルズ製)を用い、澱粉160gにスラリー質量に対する澱粉乾物換算質量濃度が38%(dry starch weight/slurry weight)となるよう水を加えたスラリーを調製した。得られたスラリーの温度を30℃にした後、pH8.4で酢酸ビニル8.5gを加え、その後、適時水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、反応終了までpHを設定値±0.03以内に維持し、60分間反応させた。その後、スラリーに3質量%水酸化ナトリウムを添加してpH6まで中和し、洗浄脱水したのち乾燥させ、加工澱粉1としてアセチル化澱粉を得た。アセチル基含有量1.8質量%であり、冷水膨潤度は2.3であった。
【0138】
加工澱粉2(アセチルタピオカ澱粉):500mLセパラブルフラスコに、タピオカ澱粉(株式会社J-オイルミルズ製)を用い、澱粉160gにスラリー質量に対する澱粉乾物換算質量濃度が38%(dry starch weight/slurry weight)となるよう水を加えたスラリーを調製した。得られたスラリーの温度を30℃にした後、pH8.4で酢酸ビニル10.9gを加え、その後、適時水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、反応終了までpHを設定値±0.03以内に維持し、60分間反応させた。その後、スラリーに3質量%水酸化ナトリウムを添加してpH6まで中和し、洗浄脱水したのち乾燥させ、加工澱粉2としてアセチル化澱粉を得た。アセチル基含有量2.3質量%であり、冷水膨潤度は2.2であった。
【0139】
加工澱粉3(アセチルタピオカ澱粉):500mLセパラブルフラスコに、タピオカ澱粉(株式会社J-オイルミルズ製)を用い、澱粉160gにスラリー質量に対する澱粉乾物換算質量濃度が38%(dry starch weight/slurry weight)となるよう水を加えたスラリーを調製した。得られたスラリーの温度を30℃にした後、pH8.4で酢酸ビニル2.2gを加え、その後、適時水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、反応終了までpHを設定値±0.03以内に維持し、60分間反応させた。その後、スラリーに3質量%水酸化ナトリウムを添加してpH6まで中和し、洗浄脱水したのち乾燥させ、加工澱粉3としてアセチル化澱粉を得た。アセチル基含有量0.5質量%であり、冷水膨潤度は2.2であった。
【0140】
加工澱粉4(アセチル化リン酸架橋タピオカ澱粉):500mLセパラブルフラスコに、タピオカ澱粉(株式会社J-オイルミルズ製)を用い、澱粉160gにスラリー質量に対する澱粉乾物換算質量濃度が38%(dry starch weight/slurry weight)となるよう水を加えたスラリーを調製した。得られたスラリーの温度を30℃にした後、pH11.0でオキシ塩化リンを144mg加え、その後、適時水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、反応終了までpHを設定値±0.03以内に維持し、90分間反応させた。その後、pH8.4で酢酸ビニル7.3gを加え、適時水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、反応終了までpHを設定値±0.03以内に維持し、60分間反応させた。その後、スラリーに3質量%水酸化ナトリウムを添加してpH6まで中和し、洗浄脱水したのち乾燥させ、加工澱粉4としてアセチル化リン酸架橋澱粉を得た。アセチル基含有量1.7質量%であり、冷水膨潤度は2.2であった。
【0141】
加工澱粉5(アルファー化アセチル化リン酸架橋タピオカ澱粉):加工澱粉4の5%粘液(スラリー)を調製し、200℃で熱したホットプレートに前記スラリーを塗布し乾燥し、フィルム状になってきたらヘラで剥がし、恒温槽で乾燥(40℃、4時間)した。乾燥物を卓上粉砕機を用いて粉砕し、60Meshで篩別して、加工澱粉5としてアルファー化アセチル化リン酸架橋澱粉を得た。アセチル基含有量1.7質量%であり、冷水膨潤度は14.1であった。
【0142】
加工澱粉6(アセチル酸化タピオカ澱粉):500mLセパラブルフラスコに、タピオカ澱粉(株式会社J-オイルミルズ製)を用い、澱粉160gにスラリー質量に対する澱粉乾物換算質量濃度が38%(dry starch weight/slurry weight)となるよう水を加えたスラリーを調製した。得られたスラリーの温度を38℃にした後、300rpmで撹拌しながら次亜塩素酸ナトリウム水溶液を澱粉対乾物換算質量濃度3.0%となるように投入し、3質量%水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、pH8.25にした。その後、適時水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、反応終了までpHを設定値±0.03以内に維持し、酸化澱粉を得た。反応終了は、スラリーを少量サンプリングして飽和ヨウ化カリウム水溶液に滴下し、紫色を呈しなくなった時点とした。反応終了を確認後、37℃で、pH8.1で無水酢酸2.3gをゆっくり加え、その後、適時水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、反応終了までpHを設定値±0.03以内に維持し、10分間反応させた。その後、スラリーに3質量%水酸化ナトリウムを添加してpH6まで中和し、洗浄脱水したのち乾燥させ、加工澱粉6としてアセチル化酸化澱粉を得た。アセチル基含有量0.5質量%であり、冷水膨潤度は2.2であった。
【0143】
加工澱粉7(エーテル化タピオカ澱粉):株式会社J-オイルミルズ製「ジェルコールPOT-05」、アセチル基含有量0質量%であり、冷水膨潤度は2.3であった。
加工澱粉8:リン酸架橋タピオカ澱粉、株式会社J-オイルミルズ製「アクトボディーTP-2」、アセチル基含有量0質量%であり、冷水膨潤度は2.3であった。
【0144】
加工澱粉9(アルファー化アセチルタピオカ澱粉):加工澱粉1の5%粘液(スラリー)を調製し、200℃で熱したホットプレートに前記スラリーを塗布し乾燥し、フィルム状になってきたらヘラで剥がし、恒温槽で乾燥(40℃、4時間)した。乾燥物を卓上粉砕機を用いて粉砕し、60Meshで篩別して、加工澱粉9としてアルファー化アセチル化澱粉を得た。アセチル基含有量1.8質量%であり、冷水膨潤度は24.2であった。
【0145】
ここで、「冷水膨潤度」は、以下の方法により測定した。
(a)試料を、130℃で加熱乾燥させて水分測定し、得られた水分値から乾燥物質量を算出する。
(b)この乾燥物質量換算で試料1gを25℃の水50mLに分散した状態にし、30分間25℃で撹拌する。
(c)撹拌後、以下の式(1)から算出される相対遠心力が1609.92(×g)となる遠心分離法にて10分間遠心分離し、沈殿層と上澄層に分ける。
(1)相対遠心力(×g)=1118×遠心半径(cm)×(回転数(rpm))×10-8
(d)上澄層を取り除き、沈殿層質量を測定し、これをB(g)とする。
(e)沈殿層を乾固(105℃、恒量)したときの質量をC(g)とする。
(f)BをCで割った値を冷水膨潤度とする。
【0146】
ここで、「アセチル基含量」は、以下の方法により測定した。
(1)試料を水分計(研精工業株式会社製、電磁水分計:型番MX50)を用いて、130℃で加熱乾燥させて水分測定し、得られた水分値から乾燥物質量を算出した。
(2)乾燥質量換算で5gの澱粉試料に水50mLおよび数滴の1.0w/v%フェノールフタレインエタノール溶液を加えた。
(3)0.1N水酸化ナトリウム水溶液を液の赤色が消えなくなるまで加えた後、0.45N水酸化ナトリウム水溶液8mlを加え、室温で30分間激しく撹拌した。
(4)0.2N塩酸にて液の赤色が消失するまで滴定し、滴定値A(ml)を求めた。
(5)ブランクとして25mLの0.45N水酸化ナトリウム水溶液を同様に0.2N塩酸にて液の赤色が消失するまで滴定し、滴定値B(ml)を求めた。
(6)アセチル基含量は次式より算定した。
アセチル基含量=[(滴定値B-滴定値A)×塩酸規定度×0.43×100]÷試料質量
【0147】
可塑性油脂組成物1:株式会社J-オイルミルズ製「マイスターゴールドパレッツ」(形状:チップ状、20℃における固体脂含量:32%)
可塑性油脂組成物2:株式会社J-オイルミルズ製「マイスターパレッツ」(形状:チップ状、20℃における固体脂含量:30%)
可塑性油脂組成物3:株式会社J-オイルミルズ製「グランマスタープリメランパレッツ」(形状:チップ状、20℃における固体脂含量:37%)
【0148】
フィリング1(ビーフカレー):オリエンタル酵母工業株式会社「味わいビーフカレー」
フィリング2(ビーフシチュー):株式会社田中食品興業所社製「なめらかビーフシチュー」
フィリング3(カスタードクリーム):ソントン株式会社製「Fグランデカスタード」
フィリング4(豆乳フラワーペースト):株式会社田中食品興業所社製「プレミアム国産豆乳フラワーN」
【0149】
4.スティック状揚げパイ
表4に記載の組成でスティック状揚げパイを調製した。なお、表4中の成分は、表1から3で用いたものと同じである。加工澱粉としては、加工澱粉1を用いた。
【表4】
【0150】
実施例19および比較例4については、表4に記載の成分を容器内でフックによりミキシング後、4mmに延ばして練りパイ用生地を調製した。
一方、実施例20および比較例5については、表4に記載の成分を容器内でフックによりミキシング後、(i)3つ折り1回、4つ折り1回(リタード)、(ii)4つ折り1回、3つ折り1回(リタード)、その後(iii)4mmに延ばして練り折りパイ用生地を調製した。
得られた生地をそれぞれ、10cm×3cmにカット(ピケあり)して、170℃で、5分油ちょうした。
得られた練りパイまたは練り折りパイの揚げ直後の外層のサクミ、もちっと感、および内層と外層の食感差の各項目について、専門パネラー5人により評価とした。その結果、実施例19および20のいずれも、加工澱粉1を含まない比較例4および5と比べて、パイ外層のサクミに変化はないが、内層のもちっと感が格段に向上した。
【0151】
5.スティック状焼きパイ
表5に記載の組成でスティック状焼きパイを調製した。なお、表5中の成分は、表1から3で用いたものと同じである。加工澱粉としては、加工澱粉1を用いた。
【表5】
【0152】
実施例21および比較例6については、表5に記載の成分を容器内でフックによりミキシング後、4mmに延ばして練りパイ用生地を調製した。
一方、実施例22および比較例7については、表5に記載の成分を容器内でフックによりミキシング後、(i)3つ折り1回、4つ折り1回(リタード)、(ii)4つ折り1回、3つ折り1回(リタード)、その後(iii)4mmに延ばして練り折りパイ用生地を調製した。
得られた生地をそれぞれ、10cm×3cmにカット(ピケあり)して、200/200℃のオーブンで10分焼成した。
得られた練りパイまたは練り折りパイの焼き直後の外層のサクミ、もちっと感、および内層と外層の食感差の各項目について、専門パネラー5人により評価とした。
その結果、実施例21および22のいずれも、加工澱粉1を含まない比較例6および7と比べて、パイ外層のサクミに変化はないが、内層のもちっと感が向上した。なお、練り折りパイである実施例22の方が、実施例21に比べてボリュームが出た。