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特許7586911無線通信システム、基地局装置および無線通信方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】無線通信システム、基地局装置および無線通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04J 3/00 20060101AFI20241112BHJP
   H04W 72/0446 20230101ALI20241112BHJP
【FI】
H04J3/00 A
H04W72/0446
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022529995
(86)(22)【出願日】2020-06-12
(86)【国際出願番号】 JP2020023236
(87)【国際公開番号】W WO2021250897
(87)【国際公開日】2021-12-16
【審査請求日】2022-10-31
【審判番号】
【審判請求日】2024-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗山 圭太
(72)【発明者】
【氏名】福園 隼人
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 正文
(72)【発明者】
【氏名】林 崇文
【合議体】
【審判長】土居 仁士
【審判官】高野 洋
【審判官】衣鳩 文彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-56938(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0139752(US,A1)
【文献】国際公開第2018/174522(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0269490(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04J3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複信方式に時分割多重を用いる端末局装置と基地局装置との間に伝搬遅延がある無線通信システムにおいて、
前記基地局装置または前記端末局装置の少なくとも一方は、前記端末局装置と前記基地局装置との間の前記伝搬遅延を算出する遅延算出部を有し、
前記基地局装置または前記端末局装置は、前記遅延算出部が算出した前記伝搬遅延に応じて、前記端末局装置から前記基地局装置への上りフレームと、前記基地局装置から前記端末局装置への下りフレームと、の切り替えに要する待機時間がより短くなるように、前記上りフレームまたは前記下りフレームの少なくとも一方のフレーム構成を変更する制御部を有し、
前記基地局装置または前記端末局装置の少なくとも他方は、前記基地局装置または前記端末局装置の少なくとも一方から受信した、前記伝搬遅延を測定するための予め決められた測定信号である伝搬遅延測定信号を折り返して出力する信号折り返し部を有し、
前記遅延算出部は、
前記伝搬遅延測定信号を送信した時刻と、前記伝搬遅延測定信号が前記信号折り返し部によって返送される時刻とを取得して、受信時刻と送信時刻との差を往復の前記伝搬遅延として算出し、
前記伝搬遅延測定信号のスライディング相関を取ることにより前記伝搬遅延測定信号が遅れて受信される遅延波の遅延時間を取得し、
算出した前記伝搬遅延と取得した前記遅延時間とに基づいて前記待機時間を算出する ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信システムにおいて、
前記制御部は、前記上りフレームまたは前記下りフレームの少なくとも一方のフレームのペイロード長を延伸する
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項3】
請求項2に記載の無線通信システムにおいて、
前記制御部は、前記ペイロード長の延伸による伝送容量の増加分に応じて、変調方式または符号化方式の少なくとも一方を変更する
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項4】
複信方式に時分割多重を用いて端末局装置と無線通信を行う基地局装置において、
前記端末局装置と前記基地局装置との間の伝搬遅延を算出する遅延算出部と、
前記遅延算出部が算出した前記伝搬遅延に応じて、前記端末局装置から前記基地局装置への上りフレームと、前記基地局装置から前記端末局装置への下りフレームと、の切り替えに要する待機時間がより短くなるように、前記上りフレームまたは前記下りフレームの少なくとも一方のフレーム構成を変更する制御部と
を有し、
前記端末局装置が、前記基地局装置から受信した、前記伝搬遅延を測定するための予め決められた測定信号である伝搬遅延測定信号を折り返して出力する信号折り返し部を有する場合、
前記遅延算出部は、
前記伝搬遅延測定信号を送信した時刻と、前記伝搬遅延測定信号が前記信号折り返し部によって返送される時刻とを取得して、受信時刻と送信時刻との差を往復の前記伝搬遅延として算出し、
前記伝搬遅延測定信号のスライディング相関を取ることにより前記伝搬遅延測定信号が遅れて受信される遅延波の遅延時間を取得し、
算出した前記伝搬遅延と取得した前記遅延時間とに基づいて前記待機時間を算出する
ことを特徴とする基地局装置。
【請求項5】
複信方式に時分割多重を用いる端末局装置と基地局装置との間に伝搬遅延がある無線通信方法において、
前記基地局装置または前記端末局装置の少なくとも一方は、前記端末局装置と基地局装置との間の前記伝搬遅延を算出する遅延算出処理を行い、
前記基地局装置または前記端末局装置は、前記遅延算出処理で算出した前記伝搬遅延に応じて、前記端末局装置から前記基地局装置への上りフレームと、前記基地局装置から前記端末局装置への下りフレームと、の切り替えに要する待機時間がより短くなるように、前記上りフレームまたは前記下りフレームの少なくとも一方のフレーム構成を変更する制御処理を行い、
前記基地局装置または前記端末局装置の少なくとも他方は、前記基地局装置または前記端末局装置の少なくとも一方から受信した、前記伝搬遅延を測定するための予め決められた測定信号である伝搬遅延測定信号を折り返して出力する信号折り返し処理を行い、
前記遅延算出処理では、
前記伝搬遅延測定信号を送信した時刻と、前記伝搬遅延測定信号が前記信号折り返し処理によって返送される時刻とを取得して、受信時刻と送信時刻との差を往復の前記伝搬遅延として算出する処理と、
前記伝搬遅延測定信号のスライディング相関を取ることにより前記伝搬遅延測定信号が遅れて受信される遅延波の遅延時間を取得する処理と、
算出した前記伝搬遅延と取得した前記遅延時間とに基づいて前記待機時間を算出する処理と、を行う
ことを特徴とする無線通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局装置と端末局装置とが複信方式に時分割多重を用いて通信を行う無線通信システムにおいて、基地局装置と端末局装置との間に伝搬遅延がある場合の伝送容量の向上技術に関する。
【背景技術】
【0002】
複信方式に時分割多重(以降、TDD(Time Division Duplex)と称する)を用いる無線通信システムでは、基地局装置から端末局装置への下りリンクの信号(DL)と端末局装置から基地局装置への上りリンクの信号(UL)との切り替えが必要である。DLとULの切り替え時に信号の衝突を防ぐためのガードタイム(待機時間)が設けられる。ここで、DLとULとの間に伝送距離に対する伝搬遅延よりも長いガードタイムを設けることにより、DLとULの衝突が回避される。例えば、想定される伝搬遅延に応じて、ガードタイムを決定する方法が考えられている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】鵜澤 史貴, 光山 和彦, 池田 哲臣, “双方向FPUに向けたTDD方式の一検討”, 2011年映像情報メディア学会年次大会, 13-10, 2011(https://doi.org/10.11485/iteac.2011.0_13-10-1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基地局装置と端末局装置とが複信方式に時分割多重を用いて通信を行う無線通信システムにおいて、想定される伝送距離に対する伝搬遅延が大きい場合、設定されるガードタイムも大きくなる。ところが、実際の伝搬遅延よりも想定される伝搬遅延が大きい場合、実際の伝搬遅延に対するガードタイムが過大となり、DLとULとの切り替え時に余分な待機時間が生じ、伝送容量の低下が問題となる。
【0005】
本発明は、複信方式に時分割多重を用いる基地局装置と端末局装置との間の伝搬遅延に対するガードタイムが過大となる場合に、フレーム構成を変更することにより、余分な待機時間を短くし、伝送容量を向上できる無線通信システム、基地局装置および無線通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複信方式に時分割多重を用いる端末局装置と基地局装置との間に伝搬遅延がある無線通信システムにおいて、前記基地局装置または前記端末局装置の少なくとも一方は、前記端末局装置と前記基地局装置との間の前記伝搬遅延を算出する遅延算出部を有し、前記基地局装置または前記端末局装置は、前記遅延算出部が算出した前記伝搬遅延に応じて、前記端末局装置から前記基地局装置への上りフレームと、前記基地局装置から前記端末局装置への下りフレームと、の切り替えに要する待機時間がより短くなるように、前記上りフレームまたは前記下りフレームの少なくとも一方のフレーム構成を変更する制御部を有し、前記基地局装置または前記端末局装置の少なくとも他方は、前記基地局装置または前記端末局装置の少なくとも一方から受信した、前記伝搬遅延を測定するための予め決められた測定信号である伝搬遅延測定信号を折り返して出力する信号折り返し部を有し、前記遅延算出部は、前記伝搬遅延測定信号を送信した時刻と、前記伝搬遅延測定信号が前記信号折り返し部によって返送される時刻とを取得して、受信時刻と送信時刻との差を往復の前記伝搬遅延として算出することを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、複信方式に時分割多重を用いる端末局装置と基地局装置との間に伝搬遅延がある無線通信システムにおいて、前記基地局装置または前記端末局装置の少なくとも一方は、前記端末局装置と前記基地局装置との間で通信される信号のガードタイム内の無信号区間を検出する検出部を有し、前記基地局装置または前記端末局装置は、前記検出部が検出した前記無信号区間に応じて、前記端末局装置から前記基地局装置への上りフレームと、前記基地局装置から前記端末局装置への下りフレームと、の切り替えに要する待機時間がより短くなるように、前記上りフレームまたは前記下りフレームの少なくとも一方のフレーム構成を変更する制御部を有し、前記制御部は、前記上りフレームまたは前記下りフレームの少なくとも一方のフレームのペイロード長を延伸し、前記ペイロード長の延伸による伝送容量の増加分に応じて、変調方式または符号化方式の少なくとも一方を変更し、前記変調方式および前記符号化方式の組み合わせは、MCS(Modulation and Coding Scheme)インデックスとして与えられ、前記制御部は、前記ペイロード長の延伸による前記伝送容量の増加分だけ前記MCSインデックスを小さくすることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、複信方式に時分割多重を用いて端末局装置と無線通信を行う基地局装置において、前記端末局装置と前記基地局装置との間の伝搬遅延を算出する遅延算出部と、前記遅延算出部が算出した前記伝搬遅延に応じて、前記端末局装置から前記基地局装置への上りフレームと、前記基地局装置から前記端末局装置への下りフレームと、の切り替えに要する待機時間がより短くなるように、前記上りフレームまたは前記下りフレームの少なくとも一方のフレーム構成を変更する制御部とを有し、前記端末局装置が、前記基地局装置から受信した、前記伝搬遅延を測定するための予め決められた測定信号である伝搬遅延測定信号を折り返して出力する信号折り返し部を有する場合、前記遅延算出部は、前記伝搬遅延測定信号を送信した時刻と、前記伝搬遅延測定信号が前記信号折り返し部によって返送される時刻とを取得して、受信時刻と送信時刻との差を往復の前記伝搬遅延として算出することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、複信方式に時分割多重を用いて端末局装置と無線通信を行う基地局装置において、前記端末局装置と前記基地局装置との間で通信される信号のガードタイム内の無信号区間を検出する検出部と、前記検出部が検出した前記無信号区間に応じて、前記端末局装置から前記基地局装置への上りフレームと、前記基地局装置から前記端末局装置への下りフレームと、の切り替えに要する待機時間がより短くなるように、前記上りフレームまたは前記下りフレームの少なくとも一方のフレーム構成を変更する制御部とを有し、前記制御部は、前記上りフレームまたは前記下りフレームの少なくとも一方のフレームのペイロード長を延伸し、前記ペイロード長の延伸による伝送容量の増加分に応じて、変調方式または符号化方式の少なくとも一方を変更し、前記変調方式および前記符号化方式の組み合わせは、MCS(Modulation and Coding Scheme)インデックスとして与えられ、前記制御部は、前記ペイロード長の延伸による前記伝送容量の増加分だけ前記MCSインデックスを小さくすることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、複信方式に時分割多重を用いる端末局装置と基地局装置との間に伝搬遅延がある無線通信方法において、前記基地局装置または前記端末局装置の少なくとも一方は、前記端末局装置と基地局装置との間の前記伝搬遅延を算出する遅延算出処理を行い、前記基地局装置または前記端末局装置は、前記遅延算出処理で算出した前記伝搬遅延に応じて、前記端末局装置から前記基地局装置への上りフレームと、前記基地局装置から前記端末局装置への下りフレームと、の切り替えに要する待機時間がより短くなるように、前記上りフレームまたは前記下りフレームの少なくとも一方のフレーム構成を変更する制御処理を行い、前記基地局装置または前記端末局装置の少なくとも他方は、前記基地局装置または前記端末局装置の少なくとも一方から受信した、前記伝搬遅延を測定するための予め決められた測定信号である伝搬遅延測定信号を折り返して出力する信号折り返し処理を行い、前記遅延算出処理では、前記伝搬遅延測定信号を送信した時刻と、前記伝搬遅延測定信号が前記信号折り返し処理によって返送される時刻とを取得して、受信時刻と送信時刻との差を往復の前記伝搬遅延として算出する処理を行うことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、複信方式に時分割多重を用いる端末局装置と基地局装置との間に伝搬遅延がある無線通信方法において、前記基地局装置または前記端末局装置の少なくとも一方は、前記端末局装置と前記基地局装置との間で通信される信号のガードタイム内の無信号区間を検出する検出処理を行い、前記基地局装置または前記端末局装置は、前記検出処理で検出された前記無信号区間に応じて、前記端末局装置から前記基地局装置への上りフレームと、前記基地局装置から前記端末局装置への下りフレームと、の切り替えに要する待機時間がより短くなるように、前記上りフレームまたは前記下りフレームの少なくとも一方のフレーム構成を変更する制御処理を行い、前記制御処理では、前記上りフレームまたは前記下りフレームの少なくとも一方のフレームのペイロード長を延伸し、前記ペイロード長の延伸による伝送容量の増加分に応じて、変調方式または符号化方式の少なくとも一方を変更する処理を行い、前記変調方式および前記符号化方式の組み合わせは、MCS(Modulation and Coding Scheme)インデックスとして与えられ、前記制御処理では、前記ペイロード長の延伸による前記伝送容量の増加分だけ前記MCSインデックスを小さくする処理を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る無線通信システム、基地局装置および無線通信方法は、複信方式に時分割多重を用いる基地局装置と端末局装置との間の伝搬遅延に対するガードタイムが大きい場合に、フレーム構成を変更することで余分な待機時間を短くし、伝送容量を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】各実施形態に共通の無線通信システムの構成例を示す図である。
図2】フレーム構成を変更しない場合の比較例を示す図である。
図3】ULおよびDLのフレーム構成の変更例を示す図である。
図4】DLのみのフレーム構成の変更例を示す図である。
図5】第1実施形態に係る基地局装置および端末局装置の構成例を示す図である。
図6】第1実施形態に係る無線通信システムの処理手順例を示す図である。
図7】第2実施形態に係る基地局装置および端末局装置の構成例を示す図である。
図8】第2実施形態に係る無線通信システムの処理手順例を示す図である。
図9】第3実施形態に係る無線通信システムの処理手順例を示す図である。
図10】第4実施形態に係る基地局装置および端末局装置の構成例を示す図である。
図11】第4実施形態に係る無線通信システムの処理手順例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明に係る無線通信システム、基地局装置および無線通信方法の実施形態について説明する。
【0015】
図1は、各実施形態に共通の無線通信システム100の構成例を示す。
【0016】
図1において、無線通信システム100は、基地局装置101および端末局装置102を有する。
【0017】
基地局装置101は、アンテナ201を有し、端末局装置102のアンテナ301との間で無線通信を行う。なお、無線通信システム100は、複信方式にTDDが用いられ、ダウンリンク(DL)の信号とアップリンク(UL)の信号とが時分割多重される。
【0018】
以降で説明する各実施形態では、基地局装置101と端末局装置102との間の想定される伝搬遅延が実際の伝搬遅延よりも大きい場合、想定される伝搬遅延に対して設定されたガードタイムが実際の伝搬遅延に対して過大となる場合に有効である。
【0019】
図1において、基地局装置101は、アンテナ201と端末局装置102のアンテナ301との間で無線通信を行い、そのときの伝搬遅延はTである。
【0020】
例えば、基地局装置101と端末局装置102との間の距離が9kmの場合、基地局装置101と端末局装置102との間の片方向の伝搬遅延Tは約30μsecとなる。基地局装置101と端末局装置102とがTDDにより通信を行う場合、ULとDLの切り替え時にフレームが衝突しないように、伝搬遅延に合わせてガードタイム(GT)を設定する必要がある。ところが、基地局装置101と端末局装置102との間の伝搬遅延を想定して予め設定されたガードタイムが実際の伝搬遅延に対して過大となる場合、ULのフレームとDLのフレームとの間に余分な待機時間が生じ、伝送容量が低下するという問題がある。
【0021】
そこで、後述の各実施形態で説明する無線通信システム100は、予め設定されたガードタイムが実際の伝搬遅延に対して過大となる場合、余分な待機時間を短くして、伝送容量が低下しないようにフレーム構成の変更を行う。具体的には、ULとDLの衝突が起きない範囲で余分な待機時間が短くなるように、ペイロード長を延伸する。
【0022】
[比較例のフレーム構成例]
図2は、フレーム構成を変更しない場合の比較例を示す。比較例では、フレーム構成を変更せずに通信を行うので、予め設定されたガードタイムが実際の伝搬遅延に対して過大となる場合、余分な待機時間が発生する。
【0023】
図2において、基地局装置101は、端末局装置102との間でDLのフレームとULのフレームとをTDDにより通信を行う。
【0024】
図2の例では、DLのフレームおよびULのフレームは、共にヘッダを含む7個のサブフレームで構成され、GTを含むDLの期間TDLとGTを含むULの期間TULは、同じであり、交互に繰り返される。
【0025】
期間TDLにおいて、基地局装置101のアンテナ201から送信されるDLのフレームは、端末局装置102のアンテナ301で受信され、そのときの伝搬遅延はTである。一方、期間TULにおいて、端末局装置102のアンテナ301から送信されるULのフレームは、基地局装置101のアンテナ201で受信され、そのときの伝搬遅延はTである。
【0026】
ここで、図2の例において、実際の伝搬遅延Tが予め想定した伝搬遅延よりも短い場合、GTは、実際の伝搬遅延Tに対して過大となり、余分な待機時間が生じる。例えば、想定した伝送距離が50kmの場合、伝搬遅延は約170usecとなるが、実際の伝搬遅延Tが30usecであった場合、余分な待機時間Tは140usecとなる。なお、実際には、待機時間Tのうち、DLとULとの切り替え時に必要な最低限のマージンを除いた時間が余分な待機時間となる。
【0027】
このように、図2に示す比較例では、予め設定されたガードタイムが実際の伝搬遅延に対して過大となる場合、余分な待機時間が生じ、伝送容量が低下するという問題がある。
【0028】
[各実施形態に共通のフレーム構成例]
図3は、ULおよびDLのフレーム構成の変更例を示す。ここで、図3の例は、比較例の図2と同様の図であり、以降で説明する各実施形態に共通のフレーム構成の変更例である。
【0029】
図3において、基地局装置101は、端末局装置102との間でDLのフレームとULのフレームとをTDDにより通信を行う。
【0030】
図3の例では、図2で説明した余分な待機時間を短くするために、基地局装置101から端末局装置102へのDL、および端末局装置102から基地局装置101へのULのそれぞれのフレーム構成が変更される。図3では、基地局装置101から端末局装置102へのDL、および端末局装置102から基地局装置101へのULのそれぞれのフレームは、図2のフレーム(7個のサブフレーム)から9個のサブフレームに延伸される。なお、サブフレームには通信データが格納されているので、サブフレームの延伸はペイロード長の延伸と等価であり、伝送容量が向上する。
【0031】
ここで、GTを含む下りリンクの期間TDLとGTを含む上りリンクの期間TULは、図2の比較例と同じであり、固定の周期で交互に繰り返される。つまり、期間TDLと期間TUL図2の比較例と同じであるが、各期間のフレームのペイロード長が延伸されるので、期間TDLおよび期間TULにおけるそれぞれの伝送容量は図2の比較例よりも向上する。
【0032】
このように、図3の例では、端末局装置102のGTを短くして、DLおよびULのフレームのペイロード長を延伸することにより、期間TDLおよび期間TULにおける余分な待機時間を短くすることができる。これにより、ペイロード長が延伸されるので、伝送容量が向上するという効果が得られる。
【0033】
ここで、基地局装置101は、ペイロード長の延伸による伝送容量の増加分に応じて、変調方式または符号化方式の少なくとも一方をデータ誤りに強い方式に変更するようにしてもよい。これにより、無線通信システム100における通信品質および信頼性が向上する。なお、変調方式および符号化方式の組み合わせは、MCS(Modulation and Coding Scheme)インデックスとして与えられ、例えばMCSインデックスが小さいほど伝送容量は小さくなるがデータ誤りに強くなる。そこで、ペイロード長の延伸による伝送容量の増加分だけMCSインデックスを小さくすることにより、伝送容量を変えずに通信品質および信頼性の向上が可能である。
【0034】
図4は、DLのみのフレーム構成の変更例を示す。ここで、図4の例は、図3と同様に、以降で説明する各実施形態に共通のフレーム構成の変更例であり、基地局装置101と端末局装置102はTDDにより通信を行う。なお、図4では、DLのみのフレーム構成が変更される例について説明するが、ULのみのフレーム構成が変更されるようにしてもよい。
【0035】
図4の例では、端末局装置102から基地局装置101へのUL2のフレーム構成は、図2の例と同じであり、変更されないが、基地局装置101から端末局装置102へのDL2のフレーム構成のみが変更される。図4の例では、UL2のフレームが7個のサブフレームであるのに対して、DL2のフレームは11個のサブフレームに延伸される。なお、図3で説明したように、通信データが格納されているサブフレームの延伸はペイロード長の延伸と等価であり、伝送容量が向上する。
【0036】
ここで、図3の場合、(DL+GT)の期間TDLと(UL+GT)の期間TULは、共に同じ長さの期間であったが、図4の場合、(DL+GT)の期間TDLと(UL+GT)の期間TULは異なる。なお、GTは同じである。また、期間TDLと期間TULは、固定の周期で交互に繰り返される。なお、図4における期間TDLと期間TULの和は、図2および図3における期間TDLと期間TULの和と同じである。つまり、期間TDLと期間TULとの和は図2の比較例と同じであるが、期間TDLのフレームのペイロード長が延伸されるので、期間TDLにおける伝送容量は図2の比較例よりも向上する。また、期間TDLと期間TULとの和は図3の例と同じであるが、期間TDLのフレームのペイロード長は図3の例よりも延伸されるので、期間TDLにおける伝送容量は図3の例よりも向上する。
【0037】
このように、図4の例では、DLおよびULのGTを短くして、DLのみのフレームのペイロード長を延伸することにより、端末局装置102のDLのフレームの末尾の余分な待機時間を短くすることができる。同時に、期間TDLが長くなった分だけ、期間TULが短くなるので、ULのフレームの末尾の待機時間も短くすることができる。これにより、以降で説明する各実施形態では、DLのフレームのペイロード長が延伸されるとともに、DLおよびULの余分な待機時間が短くなるので、伝送容量が向上するという効果が得られる。
【0038】
特に、図4の例は、ストリーム系のコンテンツの閲覧など、ダウンリンクの伝送容量がアップリンクの伝送容量よりも大きい非対称の通信に高い効果が得られる。なお、図4では、ダウンリンクのフレーム構成を変更する例を示したが、アップリンクのフレーム構成を変更するようにしてもよい。この場合、例えば、撮影画像のアップロードなど、アップリンクの伝送容量がダウンリンクの伝送容量よりも大きい非対称の通信に高い効果が得られる。
【0039】
[第1実施形態]
図5は、第1実施形態に係る基地局装置101および端末局装置102の構成例を示す。
【0040】
(基地局装置101の構成例)
図5において、基地局装置101は、アンテナ201、送受信部202、制御部203、遅延測定信号生成部204、遅延算出部205、フレーム構成通知部206およびデータ通信部207を有する。
【0041】
アンテナ201は、送受信部202が出力する高周波信号を電磁波に変換して端末局装置102に送信する。逆に、アンテナ201は、端末局装置102が送信する電磁波を高周波信号に変換して送受信部202に出力する。
【0042】
送受信部202は、端末局装置102への送信信号を高周波信号に変換してアンテナ201に出力し、アンテナ201から入力する高周波信号を端末局装置102からの受信信号に変換する。
【0043】
制御部203は、予め記憶されたプログラムにより動作するコンピュータで構成され、基地局装置101全体の制御を行う。例えば、制御部203は、基地局装置101と端末局装置102との間の伝搬遅延を測定して、図3または図4で説明した余分な待機時間が短くなるように、フレーム構成を変更する処理を行う(制御処理に対応)。
【0044】
遅延測定信号生成部204は、制御部203の指令により、伝搬遅延を測定するための予め決められた測定信号(伝搬遅延測定信号と称する)を生成し、送受信部202に出力する。なお、伝搬遅延測定信号は、例えばM系列符号などが用いられる。ここで、伝搬遅延測定信号は、データ通信開始前に送信してもよいし、データ通信の間に送信してもよい。また、通信データのフレームの先頭に伝搬遅延測定信号を付加して、データ通信中に随時測定する方法については後述する。
【0045】
遅延算出部205は、端末局装置102から受信する情報に基づいて、基地局装置101と端末局装置102との間の伝搬遅延を算出する(遅延算出処理に対応)。そして、遅延算出部205は、算出した伝搬遅延を制御部203に出力する。図5の例では、基地局装置101が伝搬遅延測定信号を送信し、端末局装置102は基地局装置101から受信する伝搬遅延測定信号を折り返して基地局装置101に返送する。遅延算出部205は、伝搬遅延測定信号を送信してから戻ってくるまでの時間を測定して、伝搬遅延を算出する。例えば、送受信部202がM系列符号を送信した時刻と、端末局装置102から返送されるM系列符号を受信した時刻とを測定して、受信時刻と送信時刻との差が往復の伝搬遅延として算出される。なお、M系列符号は、同じM系列符号と相関を取ることにより、容易に検出することができる。
【0046】
フレーム構成通知部206は、制御部203がフレーム構成を変更した場合、変更されたフレーム構成の情報を端末局装置102に通知する処理を行う。ここで、フレーム構成の情報を端末局装置102に通知する方法として、通信データのヘッダにフレーム構成の情報を格納して端末局装置102に送信する方法が考えられる。あるいは、通信データとは別に、通信開始前に、フレーム構成の情報を独立した制御データで端末局装置102に送信する方法が考えられる。
【0047】
データ通信部207は、制御部203が出力するフレーム構成に基づいて、例えば外部に接続されるネットワークや通信機器から入力する通信データを送信信号に変換して端末局装置102に送信する。また、データ通信部207は、端末局装置102から受信する受信信号を通信データに変換して、外部に接続されるネットワークや通信機器に出力する。ここで、先に説明したように、通信データのヘッダにフレーム構成の情報を格納して端末局装置102に送信する場合、データ通信部207は、フレーム構成通知部206から出力されるフレーム構成の情報を通信データのヘッダに格納する。
【0048】
このようにして、基地局装置101は、端末局装置102との間の伝搬遅延を測定して、端末局装置102との間の通信データのフレーム構成を変更することにより、図3または図4で説明した余分な待機時間を短くすることができる。
【0049】
(端末局装置102の構成例)
図5において、端末局装置102は、アンテナ301、送受信部302、信号折り返し部303、フレーム構成変更部304およびデータ通信部305を有する。
【0050】
アンテナ301は、送受信部302が出力する高周波信号を電磁波に変換して基地局装置101に送信し、基地局装置101が送信する電磁波を高周波信号に変換して送受信部302に出力する。
【0051】
送受信部302は、送信信号を高周波信号に変換してアンテナ301に出力し、アンテナ301から入力する高周波信号を受信信号に変換する。
【0052】
信号折り返し部303は、送受信部302が受信した伝搬遅延測定信号を折り返して送受信部302に出力する。
【0053】
フレーム構成変更部304は、基地局装置101から受信するフレーム構成の情報に基づいて、データ通信部305に送信データおよび受信データで用いるフレーム構成を指示する。ここで、先に説明したように、基地局装置101が通信データのヘッダにフレーム構成の情報を格納して送信する場合、フレーム構成変更部304は、データ通信部305の受信データからフレーム構成の情報を抽出し、データ通信部305にフレーム構成を指示する。あるいは、基地局装置101が、通信開始前または通信の間に、通信データとは別の制御データでフレーム構成の情報を送信する場合、フレーム構成変更部304が制御データを受信して、データ通信部305にフレーム構成を指示する。なお、フレーム構成変更部304の機能は、データ通信部305に含めてもよい。
【0054】
データ通信部305は、フレーム構成変更部304から指示されたフレーム構成に基づいて、送信データを送信信号に変換して送受信部302から基地局装置101に送信する。また、データ通信部305は、送受信部302が基地局装置101から受信する受信信号を受信データに変換する。
【0055】
このようにして、端末局装置102は、基地局装置101が往復の伝搬遅延を測定できるように、基地局装置101から受信する伝搬遅延測定信号を折り返して返信する。そして、端末局装置102は、基地局装置101から通知されるフレーム構成に基づいて、基地局装置101との間で送信データおよび受信データを通信することができる。
【0056】
なお、基地局装置101の機能と端末局装置102の機能とを逆にして、端末局装置102から伝搬遅延測定信号を送信して、基地局装置101から折り返し、端末局装置102が伝搬遅延を算出するようにしてもよい。
【0057】
(処理手順例)
図6は、第1実施形態に係る無線通信システム100の処理手順例を示す。なお、図6で説明する処理は、図5で説明した基地局装置101および端末局装置102により実行される。
【0058】
ステップS101において、基地局装置101の遅延測定信号生成部204は、伝搬遅延測定信号を生成して、送受信部202から端末局装置102に送信する。
【0059】
ステップS102において、端末局装置102の信号折り返し部303は、基地局装置101から伝搬遅延測定信号を受信する。
【0060】
ステップS103において、端末局装置102の信号折り返し部303は、基地局装置101から受信した伝搬遅延測定信号を折り返して基地局装置101に送信する。
【0061】
ステップS104において、基地局装置101の遅延算出部205は、端末局装置102から折り返して送信される伝搬遅延測定信号を受信して、伝搬遅延を算出する。
【0062】
ステップS105において、基地局装置101の制御部203は、ステップS104で取得した伝搬遅延に基づいて、余分な待機時間を算出する。例えば、図2の場合、待機時間Tのうち、マージンを除いた時間が余分な待機時間となる。
【0063】
ステップS106において、基地局装置101のフレーム構成通知部206は、ステップS105で算出された余分な待機時間に基づいて、フレーム構成の変更を行い、変更されたフレーム構成の情報を端末局装置102に送信する。例えば、先に説明した図3の場合、端末局装置102のDLのフレームおよびULのフレームのペイロード長が2つのサブフレーム分だけ延伸される。あるいは、先に説明した図4の場合、端末局装置102(2)のDLのフレームのペイロード長が4つのサブフレーム分だけ延伸される。
【0064】
ステップS107において、端末局装置102のフレーム構成変更部304は、基地局装置101から通知されるフレーム構成の情報に基づいて、フレーム構成を変更する。
【0065】
ステップS108において、基地局装置101のデータ通信部207は、ステップS106で変更したフレーム構成を用いて、端末局装置102との間で通信を行う。
【0066】
ステップS109において、端末局装置102のデータ通信部305は、ステップS107で変更したフレーム構成を用いて、基地局装置101との間で通信を行う。
【0067】
このようにして、第1実施形態に係る無線通信システム100では、基地局装置101が端末局装置102との間の伝搬遅延を測定して、図3または図4で説明したような余分な待機時間が短くなるように、フレーム構成を変更する。これにより、図2で説明した余分な待機時間が短くなり、ペイロード長が延伸されるので、伝送容量が向上するという効果が得られる。
【0068】
なお、図5および図6では、基地局装置101側で往復の伝搬遅延を測定する例を示したが、基地局装置101と端末局装置102の機能を逆にして、端末局装置102側で伝搬遅延を測定してもよい。あるいは、基地局装置101から端末局装置102へのDL、端末局装置102から基地局装置101へのULの伝搬遅延をそれぞれ測定してもよい。
【0069】
[第2実施形態]
図7は、第2実施形態に係る基地局装置101aおよび端末局装置102aの構成例を示す。ここで、第2実施形態に係る無線通信システム100aの構成は、図1に示した無線通信システム100と同じであり、図1において、基地局装置101は基地局装置101aに、端末局装置102は端末局装置102aにそれぞれ置き換えることができる。
【0070】
(基地局装置101aの構成例)
図7において、基地局装置101aは、アンテナ201、送受信部202、制御部203、遅延測定信号生成部204、遅延算出部205a、フレーム構成通知部206およびデータ通信部207を有する。
【0071】
ここで、基地局装置101aの構成は、第1実施形態に係る基地局装置101の構成と基本的に同じなので、動作が異なる遅延算出部205aについて説明する。
【0072】
遅延算出部205aは、基地局装置101aから送信される伝搬遅延測定信号の端末局装置102aでの検出タイミングに関する情報を端末局装置102aから受信する。なお、検出タイミングの情報は、例えば基地局装置101aから送信される伝搬遅延測定信号の端末局装置102aでの検出時刻の情報である。この場合、基地局装置101aと端末局装置102aとの間において、GPS(Global Positioning System)などにより、時刻同期が確立されているものとする。一方、遅延算出部205aは、遅延測定信号生成部204から伝搬遅延測定信号の送信時刻の情報を取得できる。そして、遅延算出部205aは、端末局装置102aから通知される受信時刻と送信時刻との差を伝搬遅延として算出する(遅延算出処理に対応)。遅延算出部205aが算出した伝搬遅延は、制御部203に出力される。制御部203は、遅延算出部205aが算出した伝搬遅延に基づいて、フレーム構成を変更する。
【0073】
以降の処理は、第1実施形態に係る基地局装置101と同じである。
【0074】
このようにして、基地局装置101aは、端末局装置102aとの間の伝搬遅延を測定して、通信データのフレーム構成を変更することにより、図3または図4で説明した余分な待機時間を短くすることができる。
【0075】
(端末局装置102aの構成例)
端末局装置102aは、アンテナ301、送受信部302、フレーム構成変更部304、データ通信部305、遅延測定信号検出部311および検出タイミング通知部312を有する。
【0076】
ここで、アンテナ301、送受信部302、フレーム構成変更部304およびデータ通信部305の処理は、第1実施形態に係る端末局装置102と同じであり、重複する説明は省略する。第2実施形態に係る端末局装置102aは、第1実施形態に係る端末局装置102の信号折り返し部303が無く、遅延測定信号検出部311および検出タイミング通知部312を有する。
【0077】
遅延測定信号検出部311は、送受信部302が受信した伝搬遅延測定信号を検出し、検出タイミング(検出時刻)を検出タイミング通知部312に出力する。
【0078】
検出タイミング通知部312は、遅延測定信号検出部311から入力する検出タイミングの情報を送受信部302から基地局装置101aに送信する。ここで、通信データのヘッダに検出タイミングの情報を格納して基地局装置101に送信してもよいし、通信データとは別の制御データにより、検出タイミングの情報を基地局装置101に送信してもよい。
【0079】
このようにして、端末局装置102aは、基地局装置101aが伝搬遅延を測定できるように、基地局装置101aから受信する伝搬遅延測定信号の検出タイミングを基地局装置101aに通知する。そして、端末局装置102aは、基地局装置101aから通知されるフレーム構成に基づいて、基地局装置101aとの間で通信データの送受信を行う。
【0080】
(処理手順例)
図8は、第2実施形態に係る無線通信システム100aの処理手順例を示す。なお、図8で説明する処理は、図7で説明した基地局装置101aおよび端末局装置102aにより実行される。
【0081】
図8において、ステップS101、ステップS105からステップS109までの処理は、図6で説明した同符号のステップと同じであり、重複する説明は省略する。
【0082】
ステップS102aにおいて、端末局装置102aの遅延測定信号検出部311は、基地局装置101aから受信する伝搬遅延測定信号を検出し、検出タイミング(検出時刻)を検出タイミング通知部312に出力する。
【0083】
ステップS103aにおいて、端末局装置102aの検出タイミング通知部312は、遅延測定信号検出部311から入力する検出タイミングの情報を基地局装置101aに送信する。
【0084】
ステップS104aにおいて、基地局装置101aの遅延算出部205aは、端末局装置102aから検出タイミングの情報を受信して、端末局装置102aごとの伝搬遅延を算出する。
【0085】
以降、ステップS105からステップS109までの処理は、図6と同様に行われ、基地局装置101aは、算出した余分な待機時間に基づいて、フレーム構成の変更を行う。そして、基地局装置101aは、第1実施形態の基地局装置101と同様に、フレーム構成の変更を端末局装置102aに通知して、変更したフレーム構成を用いて端末局装置102aと通信を行う。
【0086】
このようにして、第2実施形態に係る無線通信システム100aでは、基地局装置101aが端末局装置102aとの間の伝搬遅延を測定して、図3または図4で説明したような余分な待機時間が短くなるように、フレーム構成を変更する。
【0087】
これにより、図2で説明した余分な待機時間が短くなり、ペイロード長が延伸されるので、伝送容量が向上するという効果が得られる。
【0088】
ここで、第2実施形態では、データ通信開始前に伝搬遅延測定信号を送信して伝搬遅延の算出が行われる例を示したが、通信データのフレームのヘッダに伝搬遅延測定信号を格納して、データ通信中に随時、伝搬遅延を測定するようにしてもよい。
【0089】
なお、図7および図8では、基地局装置101aから端末局装置102aに伝搬遅延測定信号を送信してDLの伝搬遅延を測定する例を示したが、端末局装置102aから基地局装置101aに伝搬遅延測定信号を送信してULの伝搬遅延を測定してもよい。あるいは、基地局装置101aおよび端末局装置102aの両方から伝搬遅延測定信号を送信して、DLおよびULの両方の伝搬遅延を測定してもよい。
【0090】
[第3実施形態]
図9は、第3実施形態に係る無線通信システム100bの処理手順例を示す。
【0091】
なお、第3実施形態に係る無線通信システム100bは、図1に示した無線通信システム100と同じであり、図1において、基地局装置101は基地局装置101bに、端末局装置102は端末局装置102bにそれぞれ置き換えることができる。
【0092】
また、第3実施形態に係る基地局装置101bおよび端末局装置102bは、第1実施形態の図5と基本的に同じブロックで構成されるが、遅延算出部205および制御部203の動作が少し異なる。第3実施形態では、図5において、遅延算出部205は遅延算出部205bに、制御部203は制御部203bにそれぞれ置き換えて説明する。
【0093】
第3実施形態では、基地局装置101bと端末局装置102bとの間で通信される伝搬遅延測定信号の相関を計算し、伝搬遅延だけではなく、マルチパスなどによる遅延波の遅延時間も算出する。そして、基地局装置101bは、遅延波の遅延時間を考慮して、フレーム構成を変更する。具体的には、直接波のフレームの末尾ではなく、遅延波のフレームの末尾がDLとULとの間の切り替わり時に衝突しないように、フレーム構成を変更する。
【0094】
図9において、ステップS101からステップS103までの処理、およびステップS106からステップS109までの処理は、図6で説明した同符号のステップと同じであり、重複する説明は省略する。ここでは、図6と異なる処理について説明する。
【0095】
ステップS104bにおいて、基地局装置101bは、端末局装置102bから折り返して送信される伝搬遅延測定信号を受信して、端末局装置102bごとの伝搬遅延を算出する。さらに、端末局装置102bから受信する伝搬遅延測定信号がマルチパスなどにより遅れて受信される遅延波の遅延時間を取得する。なお、遅延時間は、基地局装置101bが受信する伝搬遅延測定信号のスライディング相関を取ることにより、取得可能である。
【0096】
ステップS105bにおいて、基地局装置101bは、ステップS104bで取得した伝搬遅延と遅延波の遅延時間とに基づいて、余分な待機時間を算出する。例えば、図2の場合、直接波のフレームの末尾から余分な待機時間が算出されるが、本実施形態では、遅延波のフレームの末尾から余分な待機時間を算出する。なお、複数の遅延波がある場合、例えば、比較的影響が大きいと考えられる第1遅延波などに限定してもよい。あるいは、遅延波のレベルを測定して、レベルが予め決められた閾値以上の遅延波のみを考慮するようにしてもよい。
【0097】
以降、ステップS106からステップS109までの処理は、図6と同様に行われ、基地局装置101bは、算出した余分な待機時間に基づいて、フレーム構成の変更を行う。そして、基地局装置101bは、フレーム構成の変更を端末局装置102bに通知して、変更したフレーム構成を用いて端末局装置102bと通信を行う。
【0098】
このようにして、第3実施形態に係る無線通信システム100bでは、基地局装置101bが端末局装置102bとの間の伝搬遅延と遅延波の遅延時間とを測定して、余分な待機時間を算出し、フレーム構成を変更する。
【0099】
これにより、図2で説明した余分な待機時間が短くなり、ペイロード長が延伸されるので、伝送容量が向上するという効果が得られる。
【0100】
[第4実施形態]
図10は、第4実施形態に係る基地局装置101cおよび端末局装置102cの構成例を示す。ここで、第4実施形態に係る無線通信システム100cの構成は、図1に示した無線通信システム100と同じであり、図1において、基地局装置101は基地局装置101cに、端末局装置102は端末局装置102cにそれぞれ置き換えることができる。
【0101】
(基地局装置101cの構成例)
図10において、基地局装置101cは、アンテナ201、送受信部202、制御部203c、フレーム構成通知部206、データ通信部207および無信号区間検出部211を有する。
【0102】
ここで、図10において、第1実施形態に係る基地局装置101と同符号のブロックは、基本的に同様に動作するので、異なるブロックについて説明する。
【0103】
無信号区間検出部211は、基地局装置101cから端末局装置102cに送信されるDLのGT内の無信号区間、端末局装置102cから基地局装置101cに送信されるULのGT内の無信号区間、をそれぞれ検出する(検出処理)。ここで、無信号区間は、図2の例では、時間Tに対応する。
【0104】
制御部203cは、無信号区間検出部211が検出した無信号区間に基づいて、基地局装置101cと端末局装置102cとの間の余分な待機時間を算出する。なお、無信号区間の全てが余分な待機時間となるわけではなく、DLとULとの切り替え時に必要な最低限のマージンを除いた時間が余分な待機時間となる。そして、制御部203cは、算出した余分な待機時間に基づいて、フレーム構成を変更する。
【0105】
以降の処理は、第1実施形態に係る基地局装置101と同じである。
【0106】
このようにして、基地局装置101cは、DLのGT内の無信号区間、ULのGT内の無信号区間、に基づいて、通信データのフレーム構成を変更することにより、図3または図4で説明した余分な待機時間を短くすることができる。特に、本実施形態では、伝搬遅延測定信号を送信して伝搬遅延を測定する必要が無く、通常のデータ通信中の無信号区間を検出して、余分な待機時間を短くすることができる。
【0107】
(端末局装置102cの構成例)
図10において、端末局装置102cは、アンテナ301、送受信部302、フレーム構成変更部304およびデータ通信部305を有する。
【0108】
ここで、図10に示すように、端末局装置102cは、第1実施形態に係る端末局装置102に搭載されるブロック以外に特別なブロックを有さない。つまり、端末局装置102cは、基地局装置101cとの間でデータ通信を行い、基地局装置101cからフレーム構成の変更が通知された場合に、データ通信のフレーム構成を変更するだけである。
【0109】
このようにして、端末局装置102cは、基地局装置101cからフレーム構成の変更通知を受けて、データ通信のフレーム構成を変更するだけでよく、他の実施形態のように、特別な機能は不要である。
【0110】
(処理手順例)
図11は、第4実施形態に係る無線通信システム100cの処理手順例を示す。なお、図11の処理は、図10で説明した基地局装置101cおよび端末局装置102cにより実行される。
【0111】
図11において、ステップS106からステップS109までの処理は、図6で説明した同符号のステップと同じであり、重複する説明は省略する。ここでは、図6と異なる処理について説明する。
【0112】
ステップS201において、端末局装置102cのデータ通信部305は、予め初期設定されているフレーム構成に基づいて、基地局装置101cとの間でデータ通信を行う。
【0113】
ステップS202において、基地局装置101cの送受信部202は、端末局装置102cからデータ通信の信号を受信する。
【0114】
ステップS203において、基地局装置101cの無信号区間検出部211は、端末局装置102cから受信するデータ通信のフレームの無信号区間を検出する。
【0115】
ステップS105cにおいて、基地局装置101cの制御部203cは、無信号区間に基づいて余分な待機時間を算出する。
【0116】
以降、ステップS106からステップS109までの処理は、図6と同様に行われ、基地局装置101cは、算出した余分な待機時間に基づいて、フレーム構成の変更を行う。そして、基地局装置101cは、フレーム構成の変更を端末局装置102cに通知して、変更したフレーム構成を用いて端末局装置102cと通信を行う。
【0117】
このようにして、第4実施形態に係る無線通信システム100cでは、基地局装置101cが無信号区間に基づいて、余分な待機時間を算出し、フレーム構成を変更する。これにより、図2で説明した余分な待機時間が短くなり、ペイロード長が延伸されるので、伝送容量が向上するという効果が得られる。
【0118】
なお、図10および図11では、基地局装置101c側で無信号区間を検出する例を示したが、基地局装置101cと端末局装置102cの機能を逆にして、端末局装置102c側で無信号区間を検出してもよい。あるいは、基地局装置101cから端末局装置102cへのDL、端末局装置102cから基地局装置101cへのULの無信号区間をそれぞれ検出してもよい。
【0119】
以上、各実施形態で説明したように、本発明に係る無線通信システム、基地局装置および無線通信方法は、複信方式に時分割多重を用いる基地局装置と端末局装置との間の伝搬遅延に対するガードタイムが過大となる場合に、フレーム構成を変更することにより、余分な待機時間を短くし、伝送容量を向上することができる。
【0120】
なお、図5から図11で説明した各実施形態に係る基地局装置101(基地局装置101a、基地局装置101b、基地局装置101c)が行う処理は、コンピュータとプログラムによっても実現可能である。なお、プログラムは、メモリなどの記録媒体に記録して基地局装置101に搭載してもよいし、ネットワークを通して提供するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0121】
100,100a,100b,100c・・・無線通信システム;101,101a,101b,101c・・・基地局装置;102,102a,102b,102c・・・端末局装置;201・・・アンテナ;202・・・送受信部;203,203c・・・制御部;204・・・遅延測定信号生成部;205,205a・・・遅延算出部;206・・・フレーム構成通知部;207・・・データ通信部;211・・・無信号区間検出部;301・・・アンテナ;302・・・送受信部;303・・・信号折り返し部;304・・・フレーム構成変更部;305・・・データ通信部;311・・・遅延測定信号検出部;312・・・検出タイミング通知部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11